『黄金バット』




              第十三話  ナゾー博士広島の電人

 この日の夕方にでした、ナゾー博士はいきなりテレビに出てきました。
「ロ〜〜ンブロンゾ〜〜」
「ナゾー博士か!」
「また出て来たか!」
「今度は一体何をするつもりだ!」
 テレビはジャックされていました、どのチャンネルにもナゾー博士の四つの目がある覆面の顔があります。皆その博士を見て言います。
「ナゾー博士がこうした時に出て来るとだ」
「絶対に悪事の予告だ」
「何をする気だ、今回は」
「また破壊行為を働くつもりか」
「私は諸君に挑戦する」
 博士は日本の皆に言いました。
「広島に巨大ロボットを送り込み街を全て破壊する」
「今度はロボットか」
「広島の街を破壊するだって!?」
「またとんでもないことをするな」
「広島は百万もの人がいる大きな街だぞ」
「あの辺りで一番大きな街なんだぞ」
 ですがその広島をというのです。
「巨大ロボットで破壊するなんて」
「相変わらずとんでもない奴だ」
「そんなことを許してたまるか」
「絶対に防ぐぞ」
「思い通りにさせるものか」
 誰もが言います、ですが博士はさらに言うのでした。
「三日後の午後の八時だ」
「八時にか」
「広島に巨大ロボットが来てか」
「破壊するのか」
「海から送る、楽しみにしていたまえ」
 最後にこう言ってでした、博士はテレビから消えました。そしてそれを見てです。
 内閣総理大臣はすぐに全ての大臣を召集してです、閣議で言いました。
「自衛隊と海上保安庁、警察も全て動員しよう」
「はい、そしてですね」
 官房長官が応えます。
「広島を守りましょう」
「そうしないと、広島の街と人達を守るんだ」
 総理は強い声で言いました。
「私も広島に行く、そして」
「ナゾー博士の企みをですね」
「絶対に打ち砕く」
 こう言ってです、総理は自衛隊も保安庁も警察もです。
 広島に動員出来るだけ動員して集めてでした、そのうえで。
 八時と告げてきたナゾー博士の攻撃に備えました、自分自身広島に入ってそうしてナゾー博士に向かうのでした。
 夜の広島の街中においてです、総理は周りの報告を聞いていました。
「海上自衛隊の呉の艦艇を全て配置完了です」
「空に戦闘機を三十機展開させています」
「海岸線に陸上自衛隊の師団を一個布陣させました」
「警察官は一万人います」
「海上保安庁の瀬戸内海の艦艇を全て集めました」
「うん、あと一時間したら」
 総理は報告を聞きつつ言います。
「八時だ、そうしたら」
「海からです」
「ナゾー博士の巨大ロボットが来ます」
「あの博士も怪人です」
「怪人ですから」
「怪人は言ったことは必ず行う」
 総理もこのことを知っています。
「八時になれば」
「はい、絶対にです」
「海から巨大ロボットが来ます」
「博士が造ったそれが」
「必ず」
「そうなる、だから」
 それ故にと言う総理でした。
「総員巨大ロボットが出たならば」
「攻撃ですね」
「一斉攻撃ですね」
「責任は私が取るよ」
 このことも言う総理でした。
「だから皆安心して」
「巨大ロボットをですね」
「絶対に」
「倒してくれ、上陸する前に」
 まさにその前にというのです。
「絶対に」
「わかっています」
「巨大ロボットを必ず倒します」
「例えどの様なロボットが出て来ても」
「我々の手で」
「総理」
 ここで東京からです、携帯電話で留守を守っている官房長官が言ってきました。
「いざという時はです」
「各地からだね」
「応援を送りますので」
「その手筈は」
「全て整えました」
 こう総理に言うのでした。
「ですからご安心下さい」
「うん、いざという時も」
「例え一度敗れてもです」
 そうなってもというのです。
「我々は巨大ロボットと戦えます」
「それじゃあ」
「はい、必ず」
「広島の人達と街を守ろう」
「何があろうとも」
 二人共覚悟を決めていました、何があろうとも広島の人達と街を守ろうとです。このことを誓ってそのうえで、でした。
 八時を待ちます、その間誰もが時間がとてもゆっくり過ぎていくと感じていました。あまりにも緊張しているので。
 ですが時間は必ず動くものです、それで遂にでした。
 八時になりました、すると再びでした。
 テレビにナゾー博士が出てきました、博士はその赤と青、黄色と緑のそれぞれの色の目を禍々しく輝かせながら言いました。
「諸君、待たせた」
「また出て来たか」
「八時になって」
「やっぱりな」
「出て来たか」
 皆博士を見て言います。
「やっぱりな」
「怪人だからな」
「言った通りの時間に出て来たな」
「この辺り怪人ということか」
「自分が言ったことは守る」
「何があろうとも」
 このことを再認識するのでした。
 そして博士はです、テレビからさらに言うのでした。
「では諸君、いいだろうか」
「これからだな」
「巨大ロボットを出すんだな」
「そうしてくるか」
「私が造り上げたロボットの力を見るのだ」
 実際に博士はこう言いました、するとです。 
 瀬戸内海からでした、銀色のとてつもなく大きな百メートルはあるロボットが出てきました。そのロボットはといいますと。
「蛸か!」
「蛸のロボットだ!」
「ナゾー博士は蛸のロボットを造ったのか!」
「それを送り込んできたのか!」
「さあ諸君防いでみるのだ」
 博士は蛸のロボットが出てから再び言ってきました。
「私のロボットをな」
「総攻撃だ」
 総理はすぐにこの命令を出しました。
「そうして広島の街を守ろう」
「了解です」
「わかりました」
 周りの自衛隊や警察、保安庁の人達も応えてでした。
 すぐに総攻撃がはじめられました、海と空と陸からです。
 ロボットに激しい攻撃が加えられました、ですが。
 ロボットはびくともしません、それどころかです。 
 足で飛んできたミサイルを掴んで握り潰してしまいます、総理はその状況を観て驚きましたが何とか冷静さを保って言いました。
「ミサイルを掴んで破壊するなんて」
「恐ろしいですね」
「とんでもないことしますね」
「これは強いです」
「それもかなり」
「これはね」
 本当にと言った総理でした。
「強いね、けれど」
「はい、ここはです」
「新兵器を使いましょう」
「自衛隊で開発されていたレールガン」
「あれを」
「そう、用意は出来ているかな」
 総理は自衛隊の将、自分のすぐ傍にいた緑の制服の人に尋ねました。
「沿岸に配備していたね」
「はい、何時でもです」
 将、陸将の人は敬礼をして答えました。
「攻撃可能です」
「それじゃあね」
「レールガンで攻撃ですね」
「数百発のミサイルも砲撃も全く効果がないから」
 だからだというのです。
「こうなったら」
「レールガンで」
「倒そう」
「わかりました」
 陸将さんは応えてでした、そして。
 レールガンの砲台にエネルギーが回されてでした、砲身から光がです。
 ロボットに一直線に放たれました、総理はその状況を一部始終観ていました。これで倒して欲しいと願いながら。
 光がロボットを直撃しました、ですが。
 その光を受けてもでした、ロボットは。
 少し身体が揺れましたがそれでもでした。
 動きを止めません、総理も他の人達も驚いて言いました。
「レールガンを受けてもダメージを受けていないなんて」
「何て強さだ」
「恐ろしいロボットだ」
「はっはっは、レールガンを開発したことは見事」
 博士が笑ってです、驚く総理達に言いました。
「しかしそれで倒される程だ」
「このロボットは弱くはない」
「そう言うのか」
「私が造ったのだよ」
 右手の三本の指、左手の二本の指を得意げに動かす博士でした。
「レールガンですら倒せるとは思わないことだ」
「くっ、何ということだ」
「レールガンですら効かないなんて」
「一体どうすればいいんだ」
「あのロボットをどうして止めればいいんだ」
 誰もが歯噛みしました、ですが。
 総理は諦めませんでした、ここで諦めればです。
「広島の人達、街を守らないといけない」
「市民の方々は避難しています」
「安全な場所まで」
「ですが街は」
「立派な広島の街を」
「何としても守ろう、無敵の存在はないから」
 だからというのです。
「このまま攻撃を続け」
「ロボットが上陸する前に」
「何とか」
「倒しましょう」
「絶対に」
「引き続き総攻撃だ」
 総理はまた命令を出しました。
「これまで以上の」
「ミサイル、砲撃に」
「そして再びレールガンも使い」
「魚雷も使いますか」
「潜水艦から」
「そうしよう」
 実は潜水艦まで近海に配備しています、それで。
 潜水艦の魚雷まで使うことにしました、とにかく何が何でもロボットを破壊して広島の街を守るつもりでした。
 そして総攻撃をはじめようとしましたが、先程以上の。
 突如です、レールガンの砲台の上にでした。眩い光が現れ。
「ハハハハハハハハハハハハハハハハハ!」
「この笑い声は!」
「まさか!」
「来てくれたのか!」
 黄金の身体と髑髏の顔、黒いマントを羽織った黄金バットがいました。黄金バットは腰に両手を当ててそこにいました。
 総理はその黄金バットを見て言いました。
「まさかここで出て来てくれたとは」
「いつも何処からともなく出て来ますが」
「今回もですね」
「出て来てくれましたね」
「そうしてきましたね」
「黄金バットが出て来てくれるとは有り難い、しかし」
 それでもと言う総理でした。
「他力本願では駄目だ」
「自分達の国は自分達で守る」
「街もそこにいる人達も」
「守るのは私達ですね」
「他ならない」
「そう、だから」
 それ故にというのです。
「我々も攻撃を続けよう」
「黄金バットと協力して」
「そのうえで」
「そうしよう」
 こう周りの人達に言ってでした、総理は攻撃を続けることを決意しました。すると黄金バットはです。
 総理のその決意を知ったのか不意にでした、レールガンの上から夜空に舞い上がり杖をロボットに向けて。
 額に光を当てました、金色の円錐形の光がその額に当たりました。
 それを見てです、総理はすぐに気付きました。
「まさかあそこが」
「はい、あのロボットの弱点ですね」
「そうですね」
「黄金バットは我々にそれを教えてくれましたか」
「まさかと思いますが」
「そうかも知れない、それなら」
 総理はさらに言いました。
「額に照準を当てて」
「はい、そして」
「そのうえで」
「総攻撃を行いましょう」
「あらためて」
「そうしよう」
 総理は決断を下しました、そして。
 レールガンもミサイルも砲撃もです、巨大ロボットの額に向けられました。潜水艦も魚雷ではなくミサイルで。
 ロボットの額を狙いました、ロボットは八本の腕で防ごうとしますが。
 攻撃があまりにも多く無理でした、その結果額に攻撃を受け続け。 
 遂にです、動きを止めてでした。
 大爆発を起こしました、テレビのナゾー博士はその爆発を見て言いました。
「今回は私の負けだ」
「おお、勝ったのか」
「日本が勝ったんだな」
「自衛隊と保安庁と警察が」
「そして黄金バットが」
「次は別のやり方で君達に挑戦する」 
 敗北を認めたうえでの言葉です。
「その時まで待っていたまえ」
「消えたか」
「また急に消えたな」
「何処から出て何処に消えるんだ」
「怪人は一体何だっていうんだ」
 皆テレビから消えた博士を見て思います、ですが。
 ロボットは確かに消えました、広島の街も人達も守られました。
 そうしてです、総理も言いました。
「今回も黄金バットに助けられたよ」
「はい、そうですね」
「今回もです」
「黄金バットが出て来てくれてロボットの弱点を示してくれて」
「本当に助かりました」
 まさにというのでした。
「若し黄金バットが出て来てくれなかったら」
「その時は」
「広島の街はどうなっていたか」
「わかりません」
「全くだ、黄金バットにお礼を言おう」
 こうも言うのでした。
「ここは」
「はい、皆で」
「黄金バットにお礼を言いましょう」
「今回も助けてくれたことを」
「是非共」
「そうしよう、有り難う黄金バット」
 総理がはじめに黄金バットにお礼を言いました。
 そして周りの人達も皆もです、口々にでした。
「黄金バット有り難う!」
「今回も助けてくれて有り難う!」
 お礼を言います、ですが。
 黄金バットは彼等の顔を見て何も言わずにです、何処かに飛び去っていきました。人々の感謝の念を背中に受けながら。
 その黄金バットを見てです、総理は感嘆の言葉を出しました。
「おそらく黄金バットは」
「黄金バットは?」
「彼はといいますと」
「我々にロボットの弱点は教えてくれたけれど」
 それでもというのです。
「我々の手で守ることを願っていたんだ」
「そういえばそうですね」
「弱点は示してくれましたけれど自分では攻撃しませんでした」
「何も」
「そうしたことは全くしませんでした」
「そうしていた、だからね」
 それでというのです。
「そこも期待してくれていたんだ」
「そうですね」
「そこはですね」
「ちゃんとわかってくれていて」
「自分は攻撃しないで」
「我々を助けてくれたんですね」
「そうなんだ、これはね」
 まさにと言う総理でした。
「黄金バットはわかっていてくれてたよ」
「光を示してくれた」
「そして我々はそれに応えた」
「黄金バットはそこもわかっていた」
「全て」
「そうだと思うよ、そして我々はロボットを倒した」
 このことも言う総理でした。
「よかったよ、本当にね」
「全くですね」
「ナゾー博士の今回の行動は黄金バットだけじゃない」
「我々も防いだ」
「むしろ我々がですね」
「メインでやれましたね」
「うん、このことを喜ぼう」
 最後にこう言った総理でした、そして。
 作戦成功を意気揚々として宣言しました、広島の街と人達を防げたことを心から喜びながら。


第十三話   完


                         2016・8・23



ナゾー博士が登場。
美姫 「でも、黄金バットによって助けられたわね」
ああ。しかも、直接倒すんじゃなくて。
美姫 「アシストという形だったわね」
だな。今回もまた無事に撃退できた。
美姫 「良かったわね」
ああ。投稿ありがとうございました。
美姫 「ありがとうございます」



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