『黄金バット』




                   第四話  メンインブラック来日

 宿敵ナゾー博士に黒バットが復活した黄金バット、このことでピンチになったかといいますといつもと変わらずです。
 人々のピンチの時に高笑いと共に出て来てです、そのうえで。
 人々を救っています、ですがその黄金バットがいる日本にです。
 またしてもでした、悪い人が出て来たのです。
 スカイツリーの頂上にです、恐ろしい人が立っていました。
「ま、まさかあれは」
「あの男が日本に来たのか?」
「全てが謎に包まれたあの男」
「メンインブラックが」
 見れば黒いスーツにズボン、そして靴に帽子という黒づくめの格好にです。
 それにです、お肌は夜の様に黒くて。
 彫りの深い顔立ち、高いお鼻に薄い唇は不気味に微笑んでいます。波がかった黒髪は長く目は闇の様です。
 その男の人を見てです、皆は言うのです。
「まさか生きていたなんて」
「そして日本に来るなんて」
「ナゾー博士や黒バットだけでも大変なのに」
「あの男も来たなんて」
「はじめましてと言っておこう」
 こうです、メンインブラックも言うのでした。
「日本の諸君、私がメンインブラックだ」
「やっぱりそうか」
「メンインブラックか」
「アメリカから日本に来たのか」
「この国は素晴らしい国だ」
 メンインブラックは妖しい笑みでこうも言いました。
「私が動くには」
「動く、ではやはり」
「この国を滅茶苦茶にするのか」
「そのつもりか」
「明日のこの時間に」
 そのメインインブラックがたからかに言います。
「このスカイツリーを跡形もなく消してみせよう」
「何っ、スカイツリーを!?」
「スカイツリーを消し去る!?」
「そんなことが出来るのか!?」
「けれどメインインブラックなら」
「そうだ、あの男は恐ろしい力を持っているんだ」
 皆はここでこのことを思い出しました。
「瞬間移動も出来るし手も足も動かさずビルを引き抜いたこともあるぞ」
「山火事を起こしたこともある」
「とんでもない超能力の持ち主だ」
「そんな奴だ」
「あいつならやるぞ」
 まさにというのです。
「スカイツリーだって消し去ってしまう」
「その超能力で完全に」
「これは恐ろしい」
「とんでもないことになるぞ」
 皆スカイツリーを消されると聞いて気が気でありません、ましてやメンインブラックがこれまでしてきたことを考えるとです。
 本当にしてしまうことがわかっています、、ですから。
「これは何とかしないと」
「メンインブラックをやっつけないと」
「自衛隊を呼ぶんだ」
「警察もだ」
 日本はあっという間に大騒ぎになりました、総理大臣もです。
 そのスカイツリーにいるメンインブラックの姿をテレビで観てです。首相官邸の中で官僚の人達に言うのでした。
「これは非常事態だ」
「はい、ですから」
「ここは自衛隊を動員しましょう」
「スカイツリーを囲み」
「メンインブラックを倒しましょう」
「そうする、すぐにでもだ」
 ことは一刻を争う状況です、ですから。
 すぐに自衛隊の人達に警察の人達が動員されることになりました、ですがメンインブラックはツリーの上において。
 不敵な笑みを浮かべてです、こう言いました。
「今は十二時、私は明日のこの時にまたこの場に出て来て」
「そしてか」
「そのうえでスカイツリーを消すのか」
「そう言うのか」
「それじゃあ明日の十二時に」
「メンインブラックをやっつけよう」
「そうしないと本当に消されるぞ」
「スカイツリーが」
 皆はメンインブラックが姿を消してからもです、このことをお話するのでした。ですが。
 総理もです、メンインブラックについて蒼ざめたお顔で言うのでした。
「メンインブラックのこれまでのことを観ていると」
「とてもですね」
「自衛隊や警察では」
「相手にならないですか」
「残念ながら」
「そう思いたくないが」
 それでもというのです。
「街を一つ壊せるだけの超能力を持っているな」
「山火事も起こしましたし」
「何もせずに高層ビルを空高く飛ばしたこともあります」
「その正体はわかりませんが」
「恐ろしい者であることは確かです」
「そうだな、自衛隊や警察にもだ」
 総理は自分の席で項垂れた様にして言うのでした。
「超能力者がいれば」
「対抗出来ましたが」
「とてもですね」
「今は」
「無理か、しかし私が諦めてはだ」 
 ここで総理は顔を上げました、そして何とか気を保っているお顔で、です。官僚の人達に強い声で言いました。
「何にもならない、だからだ」
「はい、ここは」
「何としてもですね」
「メンインブラックを倒しスカイツリーを守る」
「そうしますね」
「そうだ、やはり自衛隊と警察は動員する」
 このことはするというのです。
「スカイツリーとその近辺の一般市民は避難だ」
「すぐにですね」
「そうしますね」
「そうだ、明日の十二時までにだ」
 何としてもというのです。
「全員避難だ、そしてだ」
「自衛隊と警察の総攻撃で」
「メンインブラックを倒しましょう」
「そして何としても」
「スカイツリーを守りましょう」
 官僚の人達も何とかです、自分自身を奮い立たせてです。
 スカイツリーを守ろうと決意するのでした。そしてです。 
 スカイツリーは立ち入り禁止になりその周りもです。一般市民の人達が避難してでした。ツリーの周りを自衛隊と警察の人達が囲んで、です。
 お空はジェット機が飛びヘリが一杯ホバリングしています、そうしてまるで怪獣を対する様に囲んでなのでした。
 十二時を待ちます、その間皆気が気でありません。
「本当にメンインブラックを倒さないと」
「そうしないと大変なことになるぞ」
「そうだ、スカイツリーが消されてしまう」
「早く何とかしないと」
「自得体の人達も警察の人達も頑張ってくれ」
「あの人達に全てがかかっているんだ」
「そして」
 皆はここで思いました、同じことを。
「黄金バット、来てくれ」
「そしてスカイツリーを守ってくれ」
「皆が大事にしているのあのツリーを」
「どうか」
 あの人のことを思うのでした、そうしてです。
 皆必死にです、スカイツリーを守って欲しいと願うのでした。メンインブラックを倒す力を持っていないっ人達は心から残念に思いつつ。
 その間にも時間は進んでいきます、無慈悲なまでに的確に。
 夜が更けて朝になります、その朝日を観ても皆気持ちが晴れません。
「今日の十二時か」
「夜の十二時だな」
「その時間にまたメンインブラックが出て来て」
「そしてスカイツリーを消すのか」
「今はいないけれど」
「それでも」
 メンインブラックは出て来るというのです。
「何とかしないと」
「十二時に出て来た時に倒そう」
「本当に」
 ニュースも新聞もネットも何処も話題はメンインブラックのことばかりです、掲示板を見てもその話題で持ちきりです。
 自衛隊や警察の人達もです、誰もが。
 スカイツリーを十重二十重で囲んでなのでした。
 強張った顔で十二時を待っています、そのスカイツリーを見上げて。
 そうしつつです、完全武装の機動隊の巡査さんが巡査部長の中年の人に尋ねました。
「あの、部長」
「メンインブラックのことか」
「はい、十二時にですよね」
「出て来ると言っている」
「その時までは、ですか」
「俺達は何も出来ない」
 とてもというのです。
「奴が出て来るまではな」
「本当にそうですよね」
「相手がいてこそだ」
 部長さんは苦い顔で言うのでした。
「逮捕も出来れば」
「撃つこともですね」
「出来るんだがな」
「肝心の相手が出て来ないと」
「どうしようもない、だから今はな」
「今は?」
「緊張し過ぎるな」
 これが部長さんの言葉です。
「いいな、肝心の十二時に何も出来なくなるぞ」
「疲れてですね」
「そうだ、だから今はな」
「休むべきですか」
「そうだ、休め」
 こう巡査さんに言います。
「いいな」
「そうすべきですか」
「警戒はしていてもな」
 緊張し過ぎずにというのです。
「落ち着いて飯を食ってな」
「栄養も補給してですか」
「ゆっくりともしろ」
「じゃあ寝てもですか」
「交代で休んでいる間にな」
 その時にというのです。
「寝ることもいい」
「食事と睡眠も必要ですか」
「十二時が勝負だ」
 まさにその時がというのです。
「だから今はな」
「休んでそして」
「十二時に挑むんだ」
「そのメンインブラックが出た時に」
「働くぞ、俺もな」
「部長もですか」
「腹一杯食ってな」
 そしてというのでした、部長さんも。
「寝る」
「休憩の間に」
「そうして十二時になればな」 
「勝負を挑まれるんですね」
「そうするからな」
 こう言ってでした、実際にです。
 部長さんはお握りやパン等の配られた食べものをあえて必死にお腹一杯に食べてでした。そのうえで、です。
 お茶も飲んで寝ました、それを見てです。
 巡査さんもそうしました、見れば警官の人も自衛隊の人もです。
 皆です、十二時に向けて英気を養ってもいました。緊張の中で。その様子を官邸のテレビの実況で観てでした。
 総理は確かな笑み浮かべて言いました。
「これでいいんだ」
「ゆっくりと休んで、ですね」
「そうしてですね」
「十二時に備える」
「それでいいですね」
「そうなんだよ、まだ十二時には時間があるんだ」
 だからだというのです。
「その間に食べて寝て」
「英気を養って」
「そしてなんですね」
「十二時になれば」
「メンインブラックと」
「そう、戦えばいいんだよ」
 まさにその時にというのです。
 そして総理はです、こう言うのでした。
「私もここで」
「総指揮にあたられる」
「そうされますね」
「そうする、とはいっても全ての指揮を執る私は」
 総理自身はといいますと。
「休む訳にはいかないがね」
「そうですか、総理はですか」
「十二時まで、ですか」
「ここで全ての指揮を執られる」
「そうされますか」
「そうする、食事は摂るがね」
 それでもというのです。
「万全の手を打っていこう」
「そしてスカイツリーをですね」
「何としても」
「守る、皆の愛するスカイツリーを」
 こう言ってでした、総理は首相官邸から休むことなく全ての指揮を執るのでした。そして自分の責任のことも言いました。
「若し何かあってもその時は」
「その時はですか」
「私が責任を取る」
 このことも言うのでした。
「そうする、だから自衛官の皆も警官の皆も」
「思う存分ですか」
「やれと」
「君達もだ、何かあっても全ての責任は私にある」
 はっきりとです、総理はまた言いました。
「だから何としてもスカイツリーを守るんだ」
「わかりました」
「では私達もです」
「万全を尽くします」
「スカイツリーを守ります」
 皆誓います、そして。
 十二時に何としてもです、スカイツリーを守ろうとするのでした。皆の大好きなそれを。
 時間はさらに過ぎていきます、朝からお昼になって。 
 お日様は下り夕方になり遂に。
「夜か」
「夜になったな」
「そして十二時になれば」
「その時は」
 まさにです、その時になのです。
「メンインブラックが来て」
「そして」
「スカイツリーを消す」
「そうするんだ」
「やらせるものか」
 絶対にとです、皆気を張りました。
「そんなことやらせるか」
「絶対にだ」
「メンインブラックなんかに負けてたまるか」
「ナゾー博士でも黒バットでもだ」
「フー=マンチュー博士にも負けないぞ」
 皆十二時の決戦に備えるのでした、夜になっていよいよ。
 ツリーの周りは夜になっていよいよ飛行機もヘリコプターも増えてでした、決戦の時を待っています。そして。
 遂にでした、十二時になり。
 ツリーの頂上にです、メンインブラックがまた出て来ました。
「待っていたか、諸君」
「出て来たか」
「メンインブラック」
「遂にな」
「この時が来たんだな」 
 皆彼の姿を見て言いました。
「それじゃあな」
「いよいよな」
「やるか」
「戦いだ」
「スカイツリーを賭けた」
「私は約束を守る」
 絶対にもとです、メンインブラックは言うのでした。
「絶対に」
「だからか」
「スカイツリーを消す」
「そうするというのか」
「そうだ」
 如何にもというのです。
「十二時になれば」
「狙撃兵に連絡しろ」
 総理は実況を観て言いました。
「すぐにだ」
「メンインブラックをですね」
「これより」
「そうだ、射殺を許可する」
 総理は迷っていませんでした。
「スカイツリーを守りだ」
「そして、ですね」
「そのうえであの怪人も倒す」
「そうするのですね」
「メンインブラックは危険だ」
 総理はこのことがよくわかっていました、彼がこれまで何をしてきたのかをよく知っているからこそなのです。
「ここで何としてもだ」
「射殺してそのうえで」
「スカイツリーを守り」
「そして、ですね」
「以後の憂いも取り除くのですね」
「そうだ、危険だ」
 あまりにもというのです、メンインブラックは。
「ナゾー博士や黒バットもそうだがな」
「そうですね、では」
「これよりですね」
「狙撃兵により射殺を」
「責任は私が持つ」
 総理はここでもこう言いました。
「ではいいな」
「わかりました」
 官僚の人達は総理に確かな声で答えました、そしてでした。
 すぐに狙撃兵が狙撃用意に入りました、狙撃兵の人達はビルの屋上やヘリの中からです。メンインブラックに照準を当てました。
 今まさに十二時になろうとするです、その時に。
「ハハハハハハハハハハ!」
「!?この笑い声は」
「まさか」
「黄金バット!」
「来てくれたのか!」
 見ればです、自衛隊のヘリのうちの一機の上、ジャイロのそこにです。
 黄金バットが立っていました、闇夜の中に黄金に光輝く身体と髑髏のお顔を浮き上がらせてです。裏が赤い黒マントをたなびかせて両手を腰の横にやって立っています。
 それを見てです、皆言うのでした。
「何という場所にいるのだ」
「何時の間にそこに」
「まさに神出鬼没だな」
「今も」
 こうしてでした、誰もがです。
 黄金バットの突然の登場に驚きました、ですが。
 メンインブラックはその黄金バットを見てです、こう言いました。
「黄金バットか」
「・・・・・・・・・」
 黄金バットはメンインブラックの言葉にです、無言で頷いて答えました。メンインブラックはその彼の頷きを見てです。
 メンインブラックはあらためてです、こう言いました。
「そうか、噂は聞いている」
「・・・・・・・・・」
「悪と戦う日本の戦士、会いたいと思っていた」 
「?一体」
「何を言っているんだ?」
「黄金バットを見てか」
 その場にいる自衛隊の人達も警察の人達もです、そして実況を観ている誰もがです。驚いてこう言うのでした。
「彼と話をしているのか」
「そうなのか」
「しかしこれは」
「どういったことなんだ?」
「黄金バットが来た理由はわからないが」
 総理もここで言うのでした。
「しかし今はだ」
「はい、ここはですね」
「狙撃兵にですね」
「このまま」
「働いてもらう」
 こうしてでした、そのうえで。
 狙撃兵の人達にあらためてです、メンインブラックへの狙撃を行わせようとしました、ですがここでメンインブラックはまた黄金バットに言いました。
「貴様が来た理由はわかっている」
「・・・・・・・・・」
「私を止めに来たな、ならばだ」
 それがわかっているからだというのです。
「私と勝負するのだ、貴様が勝てば退こう」
「スカイツリーへの破壊を止めるのか」
「そうするというのか」
「その時は」
「今はっきり言ったな」
「ああ、言ったぞ」
 現場の人達も実況を観ている人達も言いました。
「間違いなくな」
「それじゃあ黄金バットが勝てば」
「スカイツリーは救われるんだな」
 このことをです、皆確かに聞きました。皆その聞いたことをわかってです。
 そしてでした、すぐに黄金バットに言うのでした。
「黄金バット頑張れ!」
「勝ってくれ!」
「メンインブラックをやっつけてくれ!」
「スカイツリーの為に!」
 大人も子供です、それこそ誰もがでした。黄金バットに叫びました。皆の声を受けた黄金バットはヘリの上からでした。
 宙に入りスカイツリーの上にいるメンインブラックに向かいました、まるでエイが海の中を優雅に泳ぐ様に。
 メンインブラックもです、その黄金バットにです。
 その場を駆って宙に舞いでした、空中戦に入りました。
 二人の怪人、いえ超人達は空中を飛びながらです、それぞれの杖と手から衝撃波や雷を出してなのでした。
 激しい攻防に入ります、そこで。
 黄金バットは手にしている杖のダイアの部分をメンインブラックに向けてでした、衝撃波や雷を出してです。
 攻撃をします、メンインブラックもです。
 その両手の平を黄金バットに向けて突き出して。そして。
 衝撃波と雷で、でした。
 次々に攻撃します、二人は宙を舞いながら攻撃し夜空をそれぞれの攻撃で染め上げます。その激しい攻防の中で。
 少しずつです、黄金バットは。
 メンインブラックを追い詰めていっていました、そしてメンインブラックがです。
 その全身に雷を落としてその雷を黄金バットに向けて放ったのをひらりとかわしてからです、右手に持っていた杖から。
 これまで以上の衝撃波を出しました、それがです。
 メインインブラックの胸を撃ちました、それを受けてです。
 メンインブラックはまだ生きていました、ですが攻撃を止めて黄金バットに言いました。
「今回は私の負けだ」
「・・・・・・・・・」
「約束だ、スカイツリーは消さない」
 こう言うのでした。
「去ろう」
 そしてこうも言ってでした、メンインブラックはすっとです。瞬時に姿を消したのでした。後に残ったのは黄金バットだけでした。
 それを見てです、皆は言いました。
「また黄金バットに助けてもらったな」
「そうだな、本当にな」
「今回もな」
「助けてもらったな」
 こう言うのでした、そして総理もです。
 ほっとした顔で、です。官僚の人達に言いました。
「また助けられたな、黄金バットに」
「そうですね、本当に」
「今回も助けてもらいました」
「何処からか出て来て誰もその正体を知らない」
「しかし我々の味方である彼に」
「そうだ、黄金バットに感謝しよう」
 しみじみとしてです、総理は言うのでした。
 そしてでした、世の人達も黄金バットに心から感謝するのでした。
「本当によくやってくれた」
「今回もな」
「黄金バット有り難う」
「心から感謝するよ」
 皆で言うのでした、そしてでした。
 黄金バットは皆の熱い感謝の言葉を受けてです、空から何処かに飛んで行きました。その後には夜空が、漆黒の夜空だけがありました。


第四話   完


                         2015・4・13



またも現れたのは新たな敵。
美姫 「メンインブラックは超能力者なのね」
みたいだな。今回は黄金バットが勝ったけれど。
美姫 「これで諦めてくれれば良いんだけれどね」
だよな。色んな敵が現れるけれど、黄金バットには頑張って欲しいな。
美姫 「今回のお話も楽しませてもらいました」
投稿ありがとうございます。



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