『ドリトル先生と月から来た猫』




                第一幕  月の思い出

 ドリトル先生はこの時研究室で日笠さんとお話をしてました、日笠さんは先生に色々とお聞きしていましたが。
 その中でです、先生に月のことを尋ねました。
「今言われている月とです」
「私がお話する月は違いますね」
「はい、全くです」
 こう言うのでした。
「アポロ十一号が着地した月とはです」
「私もそう思います」
 先生ご自身もです。
「あの時聞きまして」
「先生が行った月とはですね」
「違います、どうやアポロ十一号が生きものがいない場所に行きましたね」
「だからですね」
「あの様にです」
「何もない風に見えたのですね」
「そうかと。ですが実はです」
「月にも生きものがいて」
「はい」
 そうしてというのです。
「大きいです」
「月の特徴ですね」
「巨人が一人いまして」
「先生が治療されましたね」
「リウマチだったでしょうか」 
 先生はこの辺りの記憶は少し曖昧でした。
「痛風だったか」
「そうした病気でしたね」
「兎に角治療しまして」 
 そうしてというのです。
「私自身大きくなっていました」
「地球に戻られても少しの間は」
「はい、そうでした」
 先生はにこりと笑って答えました。
「まことに」
「凄いことですね」
「素晴らしい思い出の一つです」
「そうなっておられますか」
「私にとって」
「そうなのですね。しかし」 
 こうも言った日笠さんでした。
「巨大な蛾に乗って月に行かれたことも」
「凄いことですか」
「他の誰も経験したことのない」
 そうしたというのです。
「凄いことですね」
「私もまさかです」  
 先生ご自身もです。
「月に行くことになるとはです」
「思われなかったですね」
「はい」
 そうだったというのです。
「月に行く直前までは」
「夢の様なお話でしたね」
「しかし信じられないことが現実になるのも」
「世の中ですね」
「世の中は不思議に満ちています」
 先生は明るい笑顔で言いました。
「ですから月に行くこともです」
「有り得ますね」
「海底を進みまして」 
 この経験もお話します。
「そしてです」
「そのうえで、ですね」
「月もですから」
「先生は不思議な経験を多くされていますね」
「海底も月もとても不思議な世界でして」
 そうしてというのです。
「私からすると日本もまたです」
「海底や月の様にですか」
「不思議に満ちています」 
「そうなのですか」
「あまりにも独特の文化を持ち」
 そうであってというのです。
「歴史もそうで地理も風土もです」
「不思議ですか」
「とても。生態系もです」
 これもというのです。
「不思議です。今の日本もです」
「不思議ですか」
「近代的な高層ビルが立ち並び」
 それと共にというのです。
「古くからある神社やお寺がありますね」
「はい、そして」
 そうであってというのです。
「妖怪も多く暮らしています」
「先生は確か」
「はい、縁がありまして」
 それでというのです。
「猫又のお静さんとお友達で」
「そうしてですね」
「姫路城のお姫様ともです」
「天守閣で暮らしている」
「あの方ともお友達です」
「今はそうですね」
「そして大阪では」
 この街ではというのです。
「織田作之助さんともお友達になりました」
「確か幽霊になられていますね」
「今は」 
 そうだというのです。
「大阪に行った時よくお会いしています」
「そうですか」
「妖怪や幽霊も共に暮らしていまして」
 そうであってというのです。
「とてもです」
「不思議なのですね」
「日本は。その日本に暮らしていてです」
「実感されていますか」
「そうです、ですが思えば月は」
 あちらはというのです。
「行ってよかったです」
「とても不思議な場所であって」
「そしてです」 
 それと共にというのです。
「出会いもありました」
「巨人それに月の生きもの達と」
「ですから」
 それでというのです。
「行ってよかったです」
「そうなのですね」
「心から思っています」
 笑顔で言うのでした、そしてです。
 先生は日笠さんにさらにお話していきます、そのお話はどれも日笠さんにとっては非常に不思議で素晴らしいものでした。
 そのお話を聞き終えてです、日笠さんは名残惜しそうに職場の動物園に帰りました。そうしてなのでした。
 それまで黙っていた皆は先生が論文の執筆に入ったところで言いました。
「いや、思えばね」
「先生の旅って不思議なものばかりだね」
「海底に行ったりね」
「月に行ったり」
「世界のあちこちも行って」
「不思議だったね」
「そうだね、しかし月から帰って」
 先生は皆にその時のことを振り返って言います。
「あの時も何かとあったね」
「そうそう」
「先生が巨人になっていて」
「あの時のイギリスでは小柄な方だったのが」
「巨人になっていて」
「お家に入られるどころじゃなくて」
「お外にいたわね」
「貴重な経験だったよ」
 笑って言う先生でした。
「本当にね」
「うん、そうだね」
「普通経験出来ないからね」
「月に行って巨人になる」
「そうして帰るなんてね」
「そうはないよ、そして」
 そうであってというのです。
「あの時王子は一旦祖国に帰ったね」
「そうだったね」
「それで一旦お別れして」
「イギリスに戻って来るまで少し時間があったわ」
「あの時は」
「そのことが寂しかったね」
 王子とお別れしてです。
「本当にね」
「別れは寂しいね」
「どうしても」
「僕達もそうで」
「先生もだね」
「そうだったよ、けれど今はね」
 先生はです。
「その王子も一緒だしね」
「よかったよね」
「イギリスで再会してね」
「また会えたけれど」
「日本に行ってね」
「僕達を招待してくれて」
「今日本で暮らしているからね」
 だからだというのです。
「出会いも不思議だよ」
「場所だけでなくて」
「それでだよね」
「出会いもだね」
「先生のそれは不思議だね」
「いや、出会いは誰のものでも不思議だよ」
 先生は皆に言いました。
「思わぬところで思わぬ人に出会うからね」
「そして人生が変わるよね」
 ダブダブが応えました。
「思わぬ風に」
「確かに不思議よ」
 ガブガブも言います。
「人と人の出会いは誰でもね」
「まさに神様のお導きっていうか」 
 ポリネシアは考えるお顔で言いました。
「そうとしか思えないものがあるわ」
「何でこんなところにこんな人が」
「そんなことあるから」 
 チープサイドの家族もお話します。
「本当にね」
「運命どころか歴史が変わったりとかね」
「初対面でもあるね」
 チーチーは言いました。
「擦れ違ってそこから知り合ってとか」
「これはもう神様のお仕事としか思えないよ」
 ホワイティは言いました。
「擦れ違って初対面からお話して何かがなるとかね」
「それは人だけじゃないから」
「僕達だってそうだしね」
 オシツオサレツも二つの頭で言います。
「先生と出会ってだし」
「他の皆ともね」
「偶然出会ったにしても」
 それでもと言うジップです。
「それは神様のお仕事だね」
「何ていうか」
 そしてと言うトートーです。
「僕達先生と出会ってなかったらどうなってたかな」
「わからないよ」 
 老馬はまさにと言いました。
「もうね」
「うん、私も皆と出会えて今があるからね」
 先生は論文を書きつつ皆に応えました。
「だからね」
「それでだよね」
「出会いが不思議だって思うね」
「科学では説明がつかない」
「神様のお仕事だって」
「そう思うよ」 
 こう言うのでした、そしてです。
 先生は論文を書いていきますが見るとです。
「月だね」
「月についての論文ね」
「それを書いているんだね」
「先生は月に行ったことがあるし」
「おあつらえ向きだね」
「そうだね、ただ行ったのは一度だけで」 
 月にというのです。
「フィールドワークとしては足りないね」
「いや、一度でも凄いから」
「月に行くなんてね」
「他に誰も経験していないから」
「アポロ十一号以外はね」
「お話ではあるけれど」
「実際に行った人は私位かな」
 わかっている限りではというのです。
「もうね」
「そうだよ」
「先生位だよ」
「はっきりわかっている人はね」
「月に行った人は」
「そうだね、世界各地にお話があるけれど」 
 月に行ったというのです。
「はっきりしているのは私位かな」
「そうだよ先生」
「歴史上でもね」
「本当に先生位だから」
「一度でも行った人はね」
「一度でも凄いよ」
「そうはないわよ」
 皆で先生に言います。
「足りないなんてね」
「言えないわよ」
「一度でも凄いから」
「また行きたいって気持ちがあっても」
「滅多に行けないよ」
「そうだけれどね」 
 先生もわかっています。
「学問でフィールドワークは欠かせないからね」
「だからだね」
「先生はそう言うんだね」
「一度は足りない」
「そうなのね」
「わかっていてもね」
 普通は絶対に行けない場所にしてもというのです。
「思うよ」
「そういうことだね」
「まあ二度行ったら凄いね」
「まさに夢だよ」
「本当にね」
「そう思うよ」
 こうお話します、そしてです。
 先生はさらに論文を書きますがそれはかぐや姫についてで今度はそのかぐや姫について言うのでした。
「今書いているかぐや姫もね」
「かぐや姫は実は月の人で」
「月に帰るんだよね」
「お話の最後で」
「そうなるのよね」
「本当に題名は竹取物語といってね」  
 かぐや姫のお話です。
「何から何まで不思議なお話だね」
「お爺さんが竹を切りに行くとある竹の節が光っていて」
「切ると赤ちゃんがいて」
「それでお爺さんとお婆さんが育てて」
「すくすくと育ってとても奇麗なお姫様になって」 
 そうしてというのです。
「五人の貴公子に求愛されて」
「そしてこの世にない宝物を求めて」
「そのどれもなくて」
「最後は帰る時が来て」
「月からお迎えの使者が来て帰るからね」
「とても幻想的でね」 
 そしてと言う先生でした。
「悲しいね」
「お爺さんお婆さんと別れて」
「ずっと育ててくれた」
「愛情を注いでくれたのに」
「いつも傍にいてくれたのに」
「育ての親御さん達だったのに」
「その人達と別れて」
 そしてというのです。
「帰るからね」
「悲しいね」
「言われてみると」
「どうもね」
「そう思うよ、奇麗でもね」 
 そう言うべきお話でもです。
「悲しさもある」
「そうした作品でもあるね」
「どうして竹にいたのか不思議だけれど」
「帰る時が来たってわかってることも」
「何かとね」
「そしてどうなったか」
 先生は論文を書きつつ遠い目になってお話しました。
「月に戻ったかぐや姫は」
「気になるね」
「幸せに暮らしていたらいいけれど」
「お爺さんお婆さんとお別れしても」
「それでも」
「そうも思うよ、ただ」
 こうも言った先生でした。
「若しかして」
「若しかして?」
「若しかしてっていうと?」
「かぐや姫は今も月にいるのかな」
 遠い目のまま言うのでした。
「ひょっとして」
「物語じゃなかったら」
「先生も行った月に」
「お爺さんお婆さんと別れてから」
「今もなの」
「月の何処かでね」
「私達は会わなかったけれど」
 それでもというのです。
「けれどね」
「月の何処かにね」
「御所みたいなところがあって」
「平安時代の日本の」
「それで暮らしているのかしら」
「今も」
「そうなのかもね」 
 こんなことを言います、そしてです。
 先生は皆とお話をしながら論文を書いていきます、そして帰る時間になるとお家に帰ったのですが。
 お家では王子が執事さんと一緒にいて先生に言いました。
「先生月のお話をしていたんだ」
「日笠さんそれに皆とね」
 先生は王子にもお話しました、お家の今でちゃぶ台を囲んで作務衣姿になってそのうえでお話しています。
「そうしていたんだ」
「成程ね、僕も機会があったら」
「月に行きたいね」
「そう思うよ」
 笑顔での返事でした。
「滅多に行けないからね」
「だからだね」
「まだね」
 王子はさらに言いました。
「人類はそこまでの文明を持っていないね」
「月に行けるだけのね」
「月に行って」 
 そうしてというのです。
「月を色々調べて」
「私みたいにだね」
「そして月に街を築いて」
「そこで暮らすとだね」
「もうね」 
 そうしたことが出来ればというのです。
「夢みたいだよ」
「漫画やアニメでよくあるね」
「うん、月の街で暮らせるなら」
 それならというのです。
「未来だね」
「未来の夢の一つだね」
「人類のね」
 こう言うのでした。
「そう思うよ」
「だからだね」
「一度行きたいね」
 月にというのです。
「それで一泊でもね」
「月の街にいたいんだね」
「そう思っているよ」
「成程ね」
「是非文明が進歩して」
「人類が月に行ける様になって」
「街を築いてね」
 今お話している様にというのです。
「さらにね」
「暮らせる様になればいいね」
「全くだよ」
「文明は進歩するよ」
 そうなるというのです。
「これからもね」
「そうだね」
「停滞している様に見ても」
 その実はというのです。
「水面下ではね」
「進歩しているね」
「そうだよ」
 そうなっているというのです。
「文明はね」
「停滞しているかというと」
「常に進歩していてね」
「やがてそれが表に出るね」
「そして文明は科学だけじゃないんだ」
「そうだよね」
「科学は確かに素晴らしいものであって」 
 それでというのです。
「科学を否定してもね」
「いいことはないね」
「非科学的より科学的であった方がいいよ」
 そうだというのです。
「やはりね、けれどね」
「科学が全てじゃないね」
「万能でもなくてね」
 そうであってというのです。
「文明の全てじゃないよ」
「それなら」
 王子は先生のお話を受けて言いました。
「十九世紀の欧州は」
「産業革命が起こってね」
「それで科学の力を手に入れて」
「凄く進歩したね」
「その中で社会変革も起こって」
 そうなってというのです。
「民主主義や女性の社会進出、キリスト教がね」
「正しいとなったね」
「文明でね」
「そうだったね、けれどそういったものが絶対の正義か」
「それはだね」
「また別で他のものもね」
 今挙げられた十九世紀の欧州文明にあるものはというのです、先生は王子に明朗そのもののお顔と声でお話します。
「絶対でそれ以外は文明じゃないのか」
「違うよね」
「十九世紀の日本や中国もね」
「立派な文明があったね」
「そうだよ、科学はね」 
 この技術はといいますと。
「素晴らしいものであっても万能じゃなくて」
「否定するものでもないね」
「そうだよ、科学を否定することはよくなくても」
 それでもというのです。
「科学を知らないことを馬鹿にすることはよくないよ」
「知らないなら学べばいいね」
「そうであってね」
「その文明に科学がなくても遅れてはいないね」
「未開でもないよ」
「知らないなら学ぶことだね」
「そうだよ、ただ女性は男性と変わらなくて」 
 優劣はないというのです。
「民主主義はあった方がいいよ」
「そうだね」
「そしてキリスト教だけじゃない」
「他にも多くの宗教があるね」
「他の宗教を認めないとね」
 そうでないと、というのです。
「むしろその方がだよ」
「非文明的だね」
「そうして野蛮だよ」
「そういえば先生この前イスラムの論文書いていたね」 
 ここでチーチーが言ってきました。
「今現在のね」
「それで発表したね」  
 ジップも言います。
「学会で」
「公平そのものって言われたね」
「僕達も聞いたよ」
 オシツオサレツは論文の評価のお話をしました。
「第三者の目で書いていて」
「偏見がなかったって」
「偏見はよくないよね」
 ガブガブはまさにと指摘しました。
「本当に」
「先生はキリスト教徒でもしっかりと学ぶからね」
 ホワイティはそれでと言いました。
「公平で冷静だしね」
「だからいい論文になるね」
 老馬はまさにと頷きました。
「宗教についても」
「モスクに行ってイスラムの法学者戸の人ともお話して」
「ちゃんと学んでいたわ」
 チープサイドの家族もお話します。
「真面目にね」
「細かい部分まで調べて」
「お食事のことも調べて」
 そしてと言うトートーです。
「それでだったからね」
「いい論文になる筈よ」
 ポリネシはきっぱりと言いました。
「ちゃんと細かい部分まで公平に学んでいるから」
「イスラム教はちゃんとした宗教」
 ダブダブもきっぱりと言います。
「そうよね」
「そうだよ、ただ最近ね」
 先生は眉を曇らせて首を傾げさせて言いました。
「日本で無闇にイスラム教を否定する人がいるね」
「ごく一部ですが」
 執事さんが言ってきました。
「いますね」
「日本でも」
「おかしなことです」
「イスラムはおかしな宗教じゃないです」
 先生は執事さんに答えました、それは先生がイスラム教について確かな知識を持っているからこそ言えることです。
「文明的です」
「そうですね」
「むしろ非常に文明的な」
 そうしたというのです。
「立派な宗教です」
「全くですね」
「食事の在り方もそうで」
 そうであってというのです。
「モスクもです」
「あるべきですね」
「若しモスクで賛美歌やお経を意図的に口にするなら」
「間違っていますね」
「最低の行いです」
 先生は眉を顰めさせて言いました。
「他の宗教を認めず悪意ある行動を行う」
「間違った行動ですね」
「若しそうしたことを行うなら」
 モスクの中で他の宗教の歌や教えを口にするならというのです。
「その人の人格や品性は最低です」
「他の宗教や信仰、文化を認めない」
「文明を認めない」
 そうしたというのです。
「非常識極まりない人です」
「まことにそうですね」
「他文化との共生が出来ないというなら」
 そうした人のお話もしました。
「その人が日本人なら着物しかです」
「着られないですね」
「漢字もアルファベットも使えないです、若し西洋文明や文化はいいと言うなら」
 他文化そして文明を否定してというのです。
「差別です」
「そうだよね」
 王子も否定するお顔で応えました。
「どう見ても」
「西洋文明は素晴らしいと根拠なく思ってね」
「日本もだね」
「他の文明を蔑んでいるね」
 そうしたというのです。
「差別主義者だよ」
「そうだね」
「若し堂々と差別を肯定して主張するなら」
「その人は相手にしたら駄目だね」
「その発言を間違っているとね」
 その様にというのです。
「本人に何故間違っているかを指摘することだよ」
「その通りだね」
「もっともそうした人は攻撃的で野蛮で」 
 差別する人はというのです。
「人の意見なんてね」
「聞かないね」
「自分しかなくてどんな悪いこともだよ」
「するね」
「嘘を吹聴して人を騙すことなんてね」
「平気だね」
「そして自分だけが利益を得ようとするから」
 だからだというのです。
「悪人の中でもね」
「最低だね」
「最も卑怯で卑劣な」
 そうしたというのです。
「絶対にそうはあってはいけない悪人だよ」
「その通りだね」
「そしてそうした悪人がね」 
 先生はさらにお話します。
「ごく僅かだけれど日本にもいるね」
「本当にそうだね」 
 王子も嫌そうに頷きます。
「嫌なことにね」
「全くだね」
「その僅かな連中が騒いでね」
「碌でもないことになっているよ」
「そうだね」
「だからね」
 それでというのです。
「許してはいけないよ」
「最低の悪人だから」
「放っておくと差別や憎しみを吹聴して煽ってね」
 そうしてというのです。
「他の国や宗教の人を攻撃してね」
「利益を得るね」
「そうしたことをするから」
 だからだというのです。
「許したらいけないよ」
「間違っていると指摘することだね」
「そして暴力を振るっても」
 そうしてもというのです。
「それに屈しない」
「そのことが大事だね」
「暴力には法律だよ」
「そうだね、法律があれば」
 まさにとです、王子も頷きました。
「暴力を抑えるよ」
「暴力は感情に基づいて振るわれるもので」
 先生はご自身の暴力についての考えを言いました。
「法律はそれによって人が傷付くことを防ぐよ」
「暴力から人を護るね」
「武力も使ってね」
「武力は法律に基づいて行われる力だね」
「暴力と違ってね」
「そこには理性があるね」
「そう、法律は理性によって動かされるものだから」
 それ故にというのです。
「力もね」
「統制が利くね」
「そしてね」
 それでというのです。
「法治国家、文明社会で法律がどれだけ強いか」
「法律で動くからね」
「だからね」
 それでというのです。
「暴力には法律だよ」
「それで抑えるね」
「無法者が力を持っても」
「法律で対することだね」
「そうすべきだよ、私は法律も学んでいて」
「法学者でもあるね」
「日本の法律も学んでいるから」
 だからだというのです。
「そうした人達が暴力を振るっても」
「法律で対してだね」
「抑えるよ、悪人には法律だよ」
 先生は強い声で言いました。
「事実そうした人が逮捕されているね」
「めでたくね」
「そうした碌でもない人がいても」
 今の日本にはです。
「しっかりとね」
「法律は生きているね」
「そしてそんな悪人はごく僅かで」
「殆どの人は良識があるね」
「そうだよ、けれどこれ以上は増えない様にね」
「することだね」
「うん、僅かでも害だから」
「誰にとってもね」
 そうだというのです。
「他の国や宗教の人達に」
「多くの日本人にも日本にもだね」
「そうだよ、自分の偏見だけで動く」
「碌でもない連中で」
「差別や偏見を嘘を吐いて吹聴して」
 そしてというのです。
「世の中を悪いことで覆ってね」
「自分はそれに乗っかっていい目を見ようとするね」
「そうした悪人だから」
 最低最悪のというのです。
「許したらね」
「いけないね」
「そうだよ、私はそうした悪人も見て来たからね」
 これまでの人生でというのです。
「世界のあちこちにどれだけいたか」
「イギリスでもね」
「そして日本でもね」
 今先生達がいる国でもというのです。
「いるんだよ、ただ彼等がもう何を言ってもね」
「聞かないことだね」
「聞いたら駄目だよ」
「差別や憎しみを煽るから」
「しかも嘘だからね」 
 それでというのです。
「聞かないことだよ」
「自分達は日本の為に動いているって言うね」
「それも嘘だよ」 
 その主張もというのです。
「それならもっと真っ当に動いて働いているよ」
「差別や偏見を煽らないで」
「そしてね」
 そのうえでというのです。
「しっかりと学んでね」
「動くね」
「大体そんな人達が差別や偏見以外のことを言ったり考えているかな」
「世の中のことをだね」
「言わないよ、色々見て主張すべきことがあるのに」
 それでもというのです。
「全くね」
「言わないね」
「身体が弱かったり困っている人なんて」
 そうした人達はといいますと。
「徹底的に切り捨てて排除するから」
「弱い人は死ねだね」
「そうだよ、身体が悪くてもね」
「そう言うんだね」
「邪魔とか醜いとか言ってね」
「それって人間の屑の言うことだね」
「見たらアウトローの人が言っていたりするんだ」
 そうした主張をというのです。
「日本の為と言ってね」
「ヤクザ屋さんじゃないよね」
「ヤクザ屋さんよりもっと性質が悪いね」
「半グレかな」
「もう見えるところに刺青を入れている様な」
 そうしたというのです。
「見るだけで柄の悪い」
「酷い連中だね」
「そんな連中が言うんだよ」
「弱い人困っている人は切り捨てろって」
「障害者や生活保護の人達をね」
「思いやりもないんだね」
「ないよ」 
 全くという口調で、です。先生は言いました。
「そうした人達はね」
「理性も品性もなくてだね」
「知性もね、まともな本は読まないし」
「まともな人とも付き合っていないね」
「そうだよ」 
 まさにというのです。
「そうした人はね」
「いいところがないね」
「人は誰でもいいところがあるよ」
 先生は言いました。
「けれどそれは人や生きもので」
「その底を抜けたら」
「もうね」
「いいところはなくなるね」
「今お話している連中となると」
「底を抜いていて」
「いいところなんてないよ、仏教で言うと餓鬼で」
 そう言われる存在でというのだ。
「それでね」
「いいところがないんだね」
「そうだよ、人間の美徳を全て備えていない」
「人間でなくなった連中だね」
「だから会話も成り立たないし」
「悪いことしかしなくて」
「そうそう変わらない」
 そうしたというのです。
「餓鬼は変わらないからね」
「餓鬼を救うことは人間では不可能に近いね」
「それが餓鬼だよ」
「仏教で言う」
「人が救えるのは人や生きもの位で」
 そうであってというのです。
「餓鬼にまでなると」
「救えないね」
「どれだけ立派な人が素晴らしい宗教や哲学を説いてもね」
「救えないね」
「馬の耳に念仏と言ってもね」
「馬には届くね」
「馬も救えるよ、届いていない様に見えて」 
 馬に念仏はというのだ。
「魂にはね」
「届いているね」
「そう、けれどね」
「餓鬼にはだね」
「何もね」 
 それこそというのです。
「届かないよ、聞きもしないよ」
「今お話している悪人がそうだね」
「もう人ではなくなっているんだ」
「餓鬼だね」
「だからね」 
 それでというのです。
「もう法律でね」
「抑えるしかないね」
「私はそう思うよ」
「先生も救えないね」
「無理だよ」
 まさにと言う先生でした。
「とてもね」
「そうなんだね」
「餓鬼はね」
「何ていうか」
 ここまで聞いて思う王子でした。
「ああした悪人は倒す」
「それしかないとね」
 その様にというのです。
「私は思うよ、さもないとね」
「悪事を続けて」
「害悪を撒き散らすから」
 それでというのです。
「放っておいたら駄目だよ」
「成敗するしかないんだね」
「現実にそうした悪人が存在して」
「何処でもいるね」
「そうなんだ」 
 まさにというのです。
「これがね」
「嫌なことだね」
「うん、けれど私達は絶対にね」
「そんな悪人になりたくないね」
「そう思うことも大事だよ」
 まさにというのです。
「否定して法律て抑えて成敗して」
「自分達はそうはならない」
「それがね」
 まさにというのです。
「大事だよ」
「反面教師だね」
「餓鬼を見て嫌に思うね」
「絶対にね」
 王子はすぐに答えました。
「なりたくないよ」
「そう思ってね」
「自分を律することだね」
「努力もしてね」
 そうもしてというのです。
「ならないことだよ」
「絶対に」
「ああはなるまいと思うことだよ」
「わかったよ先生」 
 王子は確かな顔と声で頷きました、そしてです。
 決してそんな悪人達を許さずかつなってはならないと誓いました、そうしたお話をしているうちに晩ご飯の時間になりまして。
 皆でトミーとダブダブが作った晩ご飯を食べます、そのメニューはといいますと。
「クスクスなんだ」
「はい、そうです」
 トミ―は先生に答えました。
「それとワンタンもあります」
「イスラムと中華だね」
「どうでしょうか」
「面白いね」
 先生はにこりと笑って応えました。
「この組み合わせは」
「どちらも美味しいですよね」
「凄くね」
 先生はにこりと笑って答えました。
「いいお料理だよ」
「あと果物もあります」
「デザートだね」
「柿が」
 この果物がというのです。
「あります」
「デザートは日本だね」
「それとお酒は」
 こちらはといいますと。
「実はバーボンが安くて」
「買ってくれたんだ」
「そうです」
 まさにというのです。
「そちらがあるので」
「アメリカだね」
「そうですね」
「お料理は中国でね」
 先生はにこりと笑って言いました。
「デザートは日本でね」
「お酒はアメリカですね」
「イギリスとアフリカから来た僕達がね」
「面白いですね」
「はっきり言うよ」
 先生は厳しいお顔になって言いました。
「そんなに外国人が嫌いならね」
「そうした人って白人には言わないですよね」
「例え素行が悪くてもね」
「そうですよね」
「そんな人に相応しい国があるから」
「そこに行くべきですか」
「北朝鮮にね」 
 この国にというのです。
「行くべきだよ」
「あの国ですか」
「あの国は外国人がいないね」
「鎖国していますからね」
「そう、だからね」
「外国人がいませんね」
「彼等は経済的にも排他的なことしかいわないし」
 そうであってというのです。
「国際交流も嫌いだし」
「貿易もですね」
「そんな考えだからね」
「北朝鮮が相応しいですね」
「そうだよ、日本にいるよりも」
 それよりもというのです。
「北朝鮮にいた方がいいよ」
「あの人達に会っていますね」
「凄くね、彼等は北朝鮮が嫌いだけれど」
「それでもですね」
「彼等の主張に一番適している国は何処か」
 それはといいますと。
「北朝鮮でね」
「そうであって」
「それでね」
「北朝鮮に行けばいいですね」
「そこでどうなるか知らないけれど」
 それでもというのです。
「あそこに行けばいいよ」
「大嫌いな外国人がいない国に」
「大嫌いな他文化も他宗教もないから」
「まさに理想の国ですね」
「彼等にとってね」 
 こう言うのでした、そして先生は皆と一緒に晩ご飯を食べました、その晩ご飯はデザートもお酒もとても美味しかったです。








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