『ドリトル先生と日本に来た仲間達』
第四幕 懐かしい祖国
程なく夏休みになりました、夏休みに入ってすぐに先生は皆に言いました。
「では明日にはだよ」
「大阪の空港に行って」
「そこからだね」
「イギリスに行くね」
「まずはロンドンに」
「そうなるよ、ロンドンもね」
動物の皆にお家でくつろぎつつお話をします。
「随分と久し振りだね」
「全くだね」
「思えばね」
「どれだけ行っていないか」
「日本に来た時以来だから」
「本当に久し振りだよ」
皆に微笑んでお話します。
「だから行ってみるのが楽しみだよ」
「あの石造りの街がね」
「ロンドン塔にベーカー街」
「そうしたものも観たいね」
「是非ね」
「ロンドンを少し観光して」
そうしてというのです。
「そのうえでね」
「パドルビーに行こう」
「そうしよう」
「是非ね」
「僕達がずっといた街に」
「それでこちらに戻るのは」
何時かとです、トミーが言ってきました。
「決まっていますね」
「うん、私達がイギリスにいるのは七月の間でね」
先生はトミーにも答えました。
「八月になるとね」
「こちらに戻られますね」
「そうなるよ、スケジュールは決まっているから」
「それに従ってですね」
「移転は進められて」
そうしてというのです。
「八月には終わってね」
「そうしてですね」
「私達もこちらに戻って来るよ」
「神戸にですね」
「うん、ただね」
こうも言う先生でした。
「大阪の空港から行くけれど」
「飛行機で、ですね」
「神戸の空港はね」
そちらはといいますと。
「私達は使わないよ」
「そうですね」
「関西で空港というとね」
「大阪ですね」
「新空港だね」
「そうですね」
「そのことはね」
どうしてもというのです。
「第一でね」
「神戸の方はですね」
「負けるね、ただ今後自衛隊が使うというお話もあるし」
「自衛隊がですか」
「あるとね」
そうであるならというのです。
「いいと思うよ」
「空港は使い様ですね」
「そうだよ、自衛隊もね」
「空港が欲しいですね」
「やはりね」
「三つの自衛隊全部が使うので」
「だからね」
そうであってというのです。
「自衛隊が使うのなら」
「神戸の空港もいいですね」
「うん、そして明日は朝早く起きて」
「大阪に行かれて」
「そしてね」
そのうえでというのです。
「新空港に行くよ」
「そうされますね」
「そしてイギリスに行くよ」
「それでは」
こうしたお話をしてでした。
先生はこの日は晩ご飯にハンバーグとほうれん草のおひたしに茸とお豆腐のお味噌汁を食べました、そのうえで朝もお味噌汁を飲みましたが。
お家を出る時にです、先生はトミーとお別れの挨拶をしてマグ氏の車で大阪まで送ってもらう中で言いました。
「しばらくお味噌汁やご飯ともお別れだね」
「言うのはそのことですか?」
マグ氏は運転しながら笑って言いました。
「イギリスに行くにあたって」
「うん、もっと言えば梅干しやめざしともね」
先生はマグ氏に返しました。
「お別れだね」
「今朝の献立ですか」
「夜はハンバーグとほうれん草のおひたしでね」
「ハンバーグはイギリスにもありますね」
「けれどね」
それでもというのです。
「他のものはないね」
「イギリスには」
「おうどんやお好み焼きもね」
「そうしたものもですね」
「焼きそばもないしたこ焼きもね」
「ははは、日本は色々ありますね」
「そうしたものとしばらくお別れだね」
先生は笑ってお話しました。
「お豆腐やお刺身、枝豆や卵焼きで一杯」
「日本ならではですね」
「そうしたものともお別れだね」
「勿論すき焼きともですね」
「河豚なんてとてもだよ」
このお魚のお料理はというのです。
「ないよ」
「そういうことが残念ですね」
「どうもね」
そうだというのです。
「畳のお家ともお布団とも」
「ああ、先生のお家は日本のものが多いですからね」
「うん、畳も気に入っているけれど」
「そちらもないですね」
「私はお家の中ではいつも作務衣だけれど」
日本に来てからのことです。
「そちらは持って来たよ」
「そうですね」
「いや、全く以てね」
それこそというのです。
「日本を離れると」
「いささか寂しいですね」
「何かとね」
「こんな独特な国ないですからね」
マグ氏は運転をしつつ笑って言いました。
「確かに日本語は難しいですが」
「それでもね」
「親しむと」
「それでずっといたくなるね」
「そうですよね」
「その日本に親しんで」
そうしてというのです。
「しばらくでも離れるとなると」
「そうなるとですね」
「寂しいよ、日本に帰ったら」
その時はといいますと。
「もうね」
「その時はですね」
「ご飯を食べて」
「他の和食もですね」
「楽しむよ」
「その時は日本酒を飲んで」
「いいね、お刺身も食べよう」
是非にと応える先生でした。
「そうしたことも考えながらね」
「イギリスに戻られますね」
「しばらくの間ね」
大阪に向かう途中そんなお話をしました、そして空港に着くと王子が執事さんと一緒に見送りに来ていました。
「丁度大阪に用事があってね」
「見送りに来てくれたんだ」
「そうなんだ」
王子は笑顔で応えました。
「僕はね」
「そうなんだね」
「そう、そして」
それでと言う王子でした。
「これから大阪市の市長さんと会って」
「お話をするんだ」
「その時にね」
王子は嬉しそうに言いました。
「お好み焼きを食べるよ」
「いいね、さっきマグ氏とお話をしていたけれど」
それでもというのです。
「日本に帰ったら」
「その時はだね」
「お好み焼きも食べたいね」
「じゃあそのことも楽しみにするのかな」
「そしてね」
そのうえでというのです。
「楽しくね」
「イギリスに行くね」
「そうするよ」
こうお話してでした。
先生は王子達に見送りを受けて空港に入りまして。
そしてです、飛行機に乗りますが。
「随分久し振りだね」
「飛行機に乗るのってね」
チープサイドの家族は飛ぶ飛行機の中の窓から外を見つつお話します。
「何時以来かしら」
「果たしてね」
「先生も僕達も好きじゃなかったからね、飛行機は」
老馬はそれでと言いました。
「ずっと乗っていなかったしね」
「日本にいる間は電車か車で移動していたから」
「飛行機に乗る機会もなかったよ」
オシツオサレツは日本にいる今のことをお話します。
「ずっとね」
「そうだったしね」
「飛行機とは縁がなくて」
ダブダブは考えるお顔で言いました。
「本当にずっと乗っていなかったわ」
「日本も飛行機で移動したら速いけれど」
それでもと言うホワイティです。
「僕達はずっとそうだったね」
「特に電車での移動が多かったね」
トートーもこれまでのことを振り返って言います。
「特に」
「本当に鉄道が発達しているからね、日本って」
チーチーはそれ故にと言います。
「僕達も利用しているね」
「しかも自動車で移動しても便利だから」
ポリネシアはそちらのお話をします。
「どっちかってなるわね」
「それで途中の車窓の景色もいいしね」
ガブガブはそれでと言いました。
「ついついってなったね」
「日本のあちこちに行ってきても」
ジップもこれまでの日本での旅を思い出しています。
「いつも鉄道や自動車でだったからね」
「飛行機はほぼなかったね、特に鉄道が多かったね」
先生も言います。
「移動は」
「そうそう」
「僕達皆鉄道好きだしね」
「特に日本の鉄道はね」
「最高だからね」
「駅弁もいいしね」
「そう、日本は鉄道大国で」
まさにと言う先生でした。
「色々な種類の車両があって」
「設備も充実していて」
「景色も奇麗で」
「何といいからね」
「駅だってね」
「イギリスの鉄道をね」
それをというのだ。
「最早ね」
「完全に超えたね」
「日本の鉄道は」
「そこまでに至ってるね」
「つくづく」
「その鉄道を利用して」
飛行機の中で皆にお話します。
「それか自動車で」
「日本は自動車もいいから」
「車道だってね」
「恐るべき日本車」
「そう言うしかないし」
「だからだよ」
それでというのです。
「こちらでの移動も多いね」
「そうそう」
「船もよく乗るしね」
「日本は周りは海だし」
「四方を囲まれていて」
「そうであってね」
だからだというのです。
「船もあるしね」
「そう考えると」
「こうして飛行機に乗る機会なくて」
「こうして乗るとね」
「違和感もあるね」
「うん、けれどこうして乗ったら」
飛行機にとです、先生は言いました。
「いいね」
「そうだね」
「こうして乗ると」
「考えてみると滅多に落ちないしね」
「飛行機は」
「それに落ちることを言うと」
飛行機がというのです。
「船だって沈むし」
「鉄道も自動車も事故がある」
「そうだしね」
「危険はあるね」
「鉄道も今も稀に大きな事故があるね」
先生はお話しました。
「日本でもね」
「十数年に一度位で」
「やっぱり間違いってあるあるし」
「どうしても」
「飛行機も同じでね」
そうであってというのです。
「それでね」
「事故がある」
「どれも同じだね」
「言ってしまうと」
「そうなんだよね、思えば私達は蛾に乗って月に行ったし」
この時のことをお話します。
「飛行機に乗ることだって」
「平気だね」
「月なんてお空どころじゃないし」
「宇宙に行ったから」
「そんなものじゃないよ」
「だからね」
そうした経験も経ていたからだというのです。
「もうね」
「そうだよね」
「飛行機に乗る位はね」
「今更だね」
「うん、じゃあイギリスまでね」
是非にというのでした。
「行こうね」
「そうだね」
「船で行くより速いしね」
「それもずっと」
「それでイギリスに行ったら」
「まずはロンドンだよ、そして」
それでというのでした。
「今からね」
「そうそう、お昼だよ」
「これからね」
「一緒に食べよう」
「飛行機の中でね」
「まさかね」
先生は皆と一緒にいる中で言いました、見れば飛行機の中はとてもくつろげるリビングルームの様です。
「八条家の飛行機を出してくれるなんてね」
「チャーターでね」
「僕達も乗れる様に」
「自家用機みたいなのを用意してくれるなんて」
「嬉しいね」
「理事長さんのご厚意でもね」
それでもというのです。
「過ぎたものだよ」
「そうだね」
「そう思うことだね」
「本当にね」
「このことは」
「どれだけ素晴らしいか」
「全くだよ」
本当にというのです。
「恐縮するよ」
「僕達だってだよ」
「ここまでしてもらえるなんて」
「特別にこんな飛行機を用意してくれて」
「それで行くなんてね」
「しかもね」
さらにお話する先生でした。
「お食事もなんて」
「これ位何でもないですよ」
お食事を作るシェフの人が言ってきました、シェフの服を着た少し恰幅のいい身体つきの中年の男の人です。
「お気になさらずに」
「いえいえ、とんでもない」
先生は恐縮したまま答えました。
「ここまでしてもらえるなんて」
「先生のことを思えば。私の愛猫も治療してくれましたし」
「足を怪我してですね」
「はい、あの時にです」
まさにというのです。
「治療してもらったんで」
「それで、ですか」
「先生には感謝していますし他の人達もです」
「私に感謝してくれていますか」
「はい、ですから」
それでというのです。
「これ位はです」
「何でもないですか」
「人徳です」
先生のというのです。
「まさに。それでなのですが」
「はい、お昼ですね」
「何がいいでしょうか」
「カツ丼できますか?」
先生はこのお料理をと言いました。
「お味噌汁と」
「カツ丼ですか」
「イギリスにはないですから」
「そうですよね、あのお料理は」
「他にも色々とそうしたお料理はありますが」
「カツ丼もそうで」
「ですから」
それでというのです。
「お昼はです」
「カツ丼とお味噌汁ですね」
「お願いします」
「お味噌汁は何にしますか」
「お任せします」
そちらはというのです。
「何でもです」
「いいですか」
「そちらは」
「では色々なお野菜を入れた」
「そうしたですか」
「豚汁みたいな」
そうしたというのです。
「お味噌汁にしますね」
「そうしてくれますか」
「はい、そして」
シェフの人はさらに言いました。
「お漬けものもです」
「出してくれますか」
「そうしますね」
「嬉しいですね」
先生はとても嬉しそうに答えました。
「本当に」
「それでは」
「はい、お願いします」
「実はお肉は用意してあります」
「既に」
「そうです、お味噌汁の具もです」
こちらもというのです。
「ありまして。卵や調味料もです」
「ありますか」
「そうです、では今から作らせて頂きます」
シェフも人も笑顔で応えてでした、そのうえで早速調理にかかりました。その手際は流石はプロというもので。
あっという間に皆が食べるカツ丼とお味噌汁それに切られた色々な種類のお漬けものが出され先生も皆も心から楽しんで食べました。
その日本の昼食を食べてです、先生達は上機嫌のままロンドンの空港に降り立ってそこからロンドンの街に出ました。
その懐かしい街を見てです、先生はこうも言いました。
「とても美味しいカツ丼もお味噌汁にお漬けものを食べて」
「しばらくは本格的な日本料理とお別れだけれど」
「いいものをご馳走になったわね」
「とても美味しかったよ」
「本当にね」
「うん、いい一時のお別れだったよ」
笑顔で言う先生でした。
「そしてこれからね」
「うん、ロンドンに来たし」
「この街の観光も楽しもう」
「パドルビーに行く前に」
「そうしよう」
皆も笑顔で応えます、そしてです。
ロンドンの名所を巡ります、議事堂にロンドン塔にベイカー街に。
その中で先生はある建物の前を通って言いました。
「そうそう、ここなんだよね」
「あれっ、何かあるね」
「ええと、夏目漱石さんのことが書いてあるね」
「何かね」
「あの人がここにいたんだ」
「そうなんだ、あの人はイギリス留学をしていてね」
それでというのです。
「その時ここで暮らしていたんだ」
「そういえばそんなお話聞いたよ」
「あの人イギリス留学していたって」
「それでロンドンにいたって」
「本にも書いていたね」
「それでそのことをご自身でも書いていて」
漱石さんご自身がというのです。
「丁度ここにいたんだ」
「成程ね」
「日本の文豪の人生の中にあるんだ」
「ロンドンも」
「そうだったのね」
「残念ながらいいものじゃなかったけれどね」
漱石さんのイギリス留学はというのです。
「気候も文化も合わなくて」
「漱石さんに」
「完全な異国だしね」
「ましてイギリスっていつも天気悪いし」
「ロンドンだって雨と霧ばかりで」
「そうしたところに入って」
そうしてというのです。
「すっかり塞ぎ込んでね」
「ああ、鬱になったんだね」
「漱石さんも」
「あの人鬱だったそうだし」
「それでだね」
「そうだよ、あまりにも塞ぎ込んで」
ロンドンにおいてというのです。
「死んだじゃないかともね」
「言われたんだ」
「それは相当だね」
「そこまで言われるなんて」
「漱石さんの鬱も」
「そうなってね」
それでというのです。
「日本に帰った時もね」
「まだ鬱で」
「大変だったの」
「そんな状況だったんだ」
「被害妄想も持ってしまってね」
このこともあってというのです。
「精神的にかなり大変でそこからだよ」
「ああ、小説書く様になったんだ」
「それで日本を代表する文豪になったんだ」
「そういうことね」
「そうだよ、ロンドンでの漱石さんは大変だったけれど」
そうであることは事実だったにしてもというのです。
「そこから日本でも屈指の文豪になったからね」
「そう考えるとね」
「ここに漱石さんがおられたことは大きいね」
「記念として書かれる価値はあるね」
「そうだね」
「そうだよ、ここにも日本文学の歴史があるんだ」
ロンドンのこの場所にもというのです。
「そのことは面白いね」
「全くだね」
「漱石さんは元々英語の先生だったけれど」
「ロンドンにもその足跡があるんだね」
「覚えておくわ」
皆もそれではと頷きました、そしてこの日はロンドンにある八条グループのホテルに一泊しましたが。
夕食のメニューの一つビーフシチューを食べてです、先生は言いました。
「懐かしい味だね」
「そう、イギリスのビーフシチューもね」
「懐かしいよね」
「日本ではよく食べてるけれど」
「イギリスのものも食べても」
「懐かしい味がするね」
「全くだよ」
こう言うのでした。
「食べてみるとね」
「このビーフシチューがね」
「日本では肉じゃがになるし」
「そのことも面白いね」
「思わぬことだよ」
「そう、東郷さんのね」
先生はこの人のことも思い出しつつお話します。
「縁でそうなったよ」
「あの時のこと思い出すね」
「海上自衛隊の基地にお邪魔した時のことを」
「あの時も楽しかったわ」
「色々なことを学ばせてもらったし」
「ビーフシチューの調味料を変えたら」
そうなればというのです。
「肉じゃがになるからね」
「そうそう、牛肉にジャガイモに人参に玉葱」
「それをお醤油とみりんで味付けしたら」
「何と肉じゃがになる」
「あれは驚いたよ」
「そうなるからね」
だからだというのです。
「面白いんだ、そしてね」
「それでだよね」
「今その肉じゃがの元を食べてるね」
「僕達は」
「そうしているわね」
「サラダも卵料理も食べて」
先生は他のメニューのお話もしました。
「ローストビーフも食べてパンもね」
「そう、食べてね」
「楽しんでるね」
「そしてデザートも食べて」
「コースを満喫しましょう」
「皆でね。そしてお酒もだよ」
飲んでいるお酒はウイスキーです。
「楽しんでいるしね」
「今では普通に飲めるけれど」
「ウイスキーもね」
「昔は日本ではね」
「そうはいかなかったね」
「輸入するには高くてね」
そのウイスキーを飲みつつお話します。
「日本では中々飲めなかったよ」
「イギリスのウイスキーは」
「ジョニ黒やジョニ赤も」
「そしてスコッチも」
「イギリスのウイスキーは」
「長い間ね、しかし今は飲めるから」
日本でもというのです。
「嬉しいね」
「全くだね」
「じゃあそのウイスキーも楽しんで」
「そのうえでね」
「今夜は楽しみましょう」
「そうしようね」
笑顔でお話してでした。
先生はホテルのディナーも楽しみました、それが終わると後はお風呂に入って寝ました、そうしてホテルの朝食の後で。
ホテルを後にしてパドルビーに行く電車に乗りました、その電車に乗ると皆はまた上機嫌で言いました。
「さて、これからね」
「パドルビーに行くわよ」
「懐かしの故郷に」
「長い間暮らしていたあの街に」
「そうしよう、そして」
そのうえでというのです。
「お仕事をすることになるよ」
「昔は日本からイギリスへの行き来なんて何ヶ月もかかって」
それでと言う老馬でした。
「大冒険だったね」
「まさに世界一周だったわよ」
ポリネシアは老馬に言いました。
「それこそね」
「八十日で世界一周出来る様になって」
それでと言うトートーでした。
「物凄い話題になったね」
「実際に出来るかどうか」
「無理だっていう人が多かったわ」
チープサイドの家族もこのお話をします。
「それでもやってみせて」
「凄いって言われてたよ」
「あの頃は鉄道もまだまだで」
それでと言うガブガブでした。
「馬での移動が主流で」
「船も今みたいなエンジンじゃなくて」
チーチーも言います。
「遅かったしね」
「飛行機なんてとてもなかったわ」
まさにと言うダブダブでした。
「あの頃は」
「いや、そう思うと」
「本当に日本まで何ヶ月もなんて」
ホワイティもその頃を思い出しています。
「覚悟していないと駄目だったよ」
「それが今ではね」
「飛行機で半日でイギリスに着くから」
オシツオサレツは二つの頭で言いました。
「凄いよ」
「全く違うよ」
「蝸牛に乗って海の底を進んでいた時よりもずっと速いね」
ジップは笑ってその時のお話をしました。
「本当に」
「うん、文明はどんどん進歩して」
それでと言う先生でした。
「今ではだよ」
「そうしてだよ」
「あっという間に日本とイギリスを行き来出来るわ」
「あの頃は遠い異国で」
「本当に行くのに何ヶ月もかかったのに」
「今ではそうでね」
先生は車窓の景色を楽しみつつ皆にお話します。
「日本も近くなったね」
「実際今では僕達の第二の祖国だしね」
「国籍がある」
「そうなっているからね」
「私は動物園やサーカス団や郵便局やキャラバンをやっていた時は」
先生は微笑んでその頃を思い出してお話しました。
「まさかね」
「日本で暮らすなんて思わなかったし」
「とても」
「日本のことも殆ど知らなくて」
「先生にしても」
「最初聞いた時は」
日本のことをというのです。
「何とも不思議な国だと思ったよ」
「そうそう、魔法みたいな」
「別世界にあるみたいな」
「そんな不思議な国があるのかって」
「想像の範囲外の国だったわ」
「そうだよ、アジアの果てにある」
その場所にというのです。
「イギリスと同じ島国だけれど」
「皆ちょん髷を結っていて」
「刀を腰に下げたお侍さんがいる」
「和歌を詠うお公家さんもいて」
「忍者もいる」
「しかも木造の神社やお寺があって」
「色々な宗教があるって」
皆もお話します。
「生のお魚も食べて」
「ライスが主食で」
「着物なんていう服を着ている」
「そんな不思議な国だって」
「インドには行ったことがあっても」
それでもと言う先生でした。
「日本にはなくてね」
「聞けば聞く程不思議で」
「わからない国だったよ」
「そんな国が本当にあるんだって」
「想像の範囲外だったわ」
「アメリカや中国も遠い国で」
当時はというのです。
「行くのに時間をかけていたけれど」
「日本はもっとで」
「まさにイギリスから見れば地球の裏側」
「世界の果てにある」
「一体全体どんな国かって感じだったけれど」
「その日本も近くなって」
今ではというのです。
「何ヶ月どころか半日で来られる」
「本当に変わったよ」
「文明が進歩して」
「地球一周も一日で出来るし」
「飛行機を使ったら」
「そうなったしね、そして今からパドルビーに行って」
先生は笑顔で言いました。
「それからだよ」
「移転のアドバイスをするんだね」
「先生自身が」
「動物園とかを日本に移転する」
「その為のアドバイスを行うね」
「そうだよ、そしてね」
先生はさらに言いました。
「あの時お別れした皆ともね」
「再会して」
「そのうえでね」
「神戸に来てもらうのね」
「今僕達が暮らしている街に」
「そうなるよ」
先生は今も笑顔でした。
「皆とも再会出来るよ」
「思えば日本に行く時そうしてよかったかも」
「八条グループの人達にお話して」
「動物園の皆も一緒にって」
「そうね」
「今はそう思うけれどあの時はそこまで考えられなかったね」
先生は日本に移住する時を思い出してお話しました。
「とても」
「そうだったね」
「皆で日本に移住する」
「先生が日本の大学で教授さんになる」
「お家もあちらになるってことで」
「もう何かと忙しくて頭も一杯になって」
引っ越しのというのです。
「その中でグループの人が動物園とかの管理を申し出てくれて」
「それでだったね」
「お願いしますってなって」
「それでお話が整って」
「僕達は日本に旅立ったね」
「むしろ驚く位だよ」
そう言っていいまでにというのです。
「あの時は万事スムーズにお話が進んだね」
「八条グループの人達が何でもしてくれて」
「法律のことだって」
「先生は世事のことに疎いけれど」
「そうしたことまでね」
「本当に何でもしてもらって」
そしてというのです。
「お話はとんとん拍子に進んで」
「その結果だよ」
「先生は日本に移住したわ」
「僕達も一緒にね」
「その中でのことだから」
だからだというのです。
「もうね」
「それこそだね」
「動物園とかのことまで頭が回らなかったね」
「本当に」
「あの頃は」
「そうだったよ、けれど」
それがというのです。
「今はね」
「ようやくだね」
「こうしてパドルビーに戻って」
「そのうえでね」
「日本に来てもらうわね」
「皆が」
「その時が来たんだ、皆のことは忘れていなかったけれど」
動物園のというのです。
「けれどね」
「それでもだよね」
「日本で何かと忙しかったし」
「やることが多くて」
「色々と学問に励んで生きものを助けて」
「何かとあったからね」
「ようやくね」
そうした風にというのです。
「その話になったね」
「皆寂しかっただろうね」
「そう考えると悪いことをしたけれど」
「先生も本当に忙しかったからね」
「日本は忙しい国って聞いていたけれど」
「想像以上にそうでね」
「イギリスにも来られなくて」
そうであってというのです。
「それでね」
「今やっとだよ」
「イギリスに戻って来られたし」
「それじゃあね」
「皆にも会って」
「日本に来てもらいましょう」
「是非ね」
先生は微笑んで言いました、そしてです。
そうしたお話をしつつです、車窓を見てこんなことも言いました。
「この景色も懐かしいね」
「イギリスの風景がね」
「緑と農園があって」
「牧場に羊達がいて」
「薔薇やマーガレットが咲いている」
「平地が多い」
「これが日本だとね」
今暮らしている国はといいますと。
「水田が何処までも広がっていて」
「緑の山が連なっている」
「そこに桜や菊が咲いている」
「そうなっているよ」
「川や湖も」
そうした場所もというのです。
「日本は小川が多くて」
「お水の流れが速いね」
「山が多いせいで」
「上から下に流れる感じが強くて」
「そうでね」
「日本とはまた違った」
そうしたというのです。
「のどかな自然があるね」
「そうそう」
「イギリスの自然だよ」
「今ここにあるのが」
「牧場の羊だってね」
「羊がいないんだよね」
日本ではというのです。
「こんなに沢山ね」
「牧場はあっても」
「北海道とか涼しいところにあって」
「こうして普通にないしね」
「しかもいるのは牛さんが多いよ」
「羊さん達は少ないわ」
「羊には馴染みが薄い国だからね」
日本はというのです。
「これが」
「そうそう、考えてみると」
「馴染みが薄いんだよ」
「日本は羊にはね」
「お肉もあまり食べないし」
「うん、食べることも少ないね」
日本で羊はです。
「これがね」
「驚く位だよね」
「他の国と比べたら」
「お魚はよく食べるけれど」
「牛肉や豚肉も」
「鶏肉だって」
「そうした国だから」
それでというのです。
「牧場に羊もだよ」
「そう、いなくて」
「山羊だってね」
「普通に見られないんだよね」
「風景にもいないよ」
「そこが違うね、そのせいで」
先生はさらにお話しました。
「日本では狼は怖がられていないよ」
「むしろ有り難い存在だよね」
「『おおかみ』つまり『大いなる神様』だから」
「畑を荒らす獣を獲って食べてくれる」
「農業を守ってくれる生きものだったね」
「そんな生きものだよ、だから私が発見して」
ニホンオオカミ達をというのです。
「今懸命にね」
「もう一度日本全土に広める」
「そうなる様にしているね」
「日本全土で」
「そうなっているよ」
まさにというのです。
「本当にね」
「そうだよね」
「絶滅したと思われていたのが」
「先生が発見して」
「そしてね。北海道でもね」
こちらでもというのです。
「どうもエゾオオカミがだよ」
「絶滅したと思われていたら」
「それがだね」
「いるかも知れないんだね」
「若しかしたら」
「偶然だけれど」
それでもというのです。
「自動車のドライブレコーダーに映っていたんだ」
「へえ、そうだったんだ」
「北海道を走っていたら」
「そうしたことがあったんだ」
「それでね」
先生は皆にさらにお話しました。
「私もその映像を検証したけれど」
「そうだったんだ」
「それでどうだったの?」
「検証した結果」
「エゾオオカミだったの?」
「私はそう見るよ、エゾオオカミは独特だからね」
こうも言う先生でした。
「イヌ科の生きものの中でも」
「ああ、エゾオオカミってニホンオオカミの亜種で」
「ニホンオオカミと同じ様な身体だね」
「ニホンオオカミって独特の種類で」
「骨格も違うから」
「だからね」
そうであるからだというのです。
「そうしたことを観ると」
「わかるんだね」
「特に先生だと」
「生きもののことなら先生だから」
「うん、エゾオオカミではという生きものの部分を拡大もして」
映像の中のというのです。
「じっくりとね」
「検証したら」
「エゾオオカミだったんだ」
「犬じゃなくて」
「犬とも違うからね」
エゾオオカミはというのです。
「確かに日本の犬の多くはニホンオオカミの血が濃いけれどね」
「元々犬は狼だしね」
「狼が家畜になったのが犬だから」
「日本の犬も同じで」
「ニホンオオカミからなっているから」
「だからね」
それでというのです。
「日本の犬はエゾオオカミにも似ているけれど」
「エゾオオカミはニホンオオカミの亜種で」
「それなら似ているね」
「けれど似ていても」
「先生ならわかるね」
「じっくり検証したよ」
先生もです。
「そしてその結果ね」
「わかったんだね」
「先生は」
「エゾオオカミだって」
「そうだね」
「そう、だからね」
それでというのです。
「私は言えるよ」
「エゾオオカミもいる」
「絶滅していない」
「ニホンオオカミと同じで」
「そうだって」
「そのことを主張するよ」
皆に笑顔でお話します、懐かしいパドルビーの街に向かう中で先生は皆に対してそんなお話もするのでした。