『ドリトル先生とラーメン』




               第三幕  中華街のラーメン

 先生は皆に言われて日笠さんが勤務している学園内の動物園に事前に連絡をしてからお昼休みに伺ってです。
 日笠さんに中華街でラーメンを食べにいきませんかと言いますと。
「宜しくお願いします」
「いいんですか」
「はい、行きましょう」
 ぱっと明るいお顔になって言うのでした。
「そうしましょう」
「それでは何時にしますか」
「日曜はどうでしょうか」
 日笠さんから提案してきました。
「お昼に」
「その時にですか」
「はい、そして」
 それにというのです。
「中華街でどうされますか?」
「ラーメンを食べに行きませんか」
 まさにその目的を言いました。
「あちらで」
「ラーメンですか」
「如何でしょうか」
「実はラーメン好きでして」
 日笠さんはその通りだと答えました。
「それならです」
「いいですか」
「はい」
 まさにというのでした。
「尚更です」
「僕と一緒にですか」
「中華街に行きたくなりました」
「そうですか」
「ラーメンでしたら」
 この食べものならというのです。
「中華街にもいいお店を知っています」
「そうなんですか」
「紹介させてもらいますね」
 日笠さんの方から言うのでした。
「是非」
「そのお店をですか」
「私の方から」
「実はインターネットや神戸のラーメンの紹介本をチェックしてです」 
 先生は日笠さんにお話しました。
「どのお店がいいか」
「見ておられたんですか」
「はい、ですが日笠さんは」
「ラーメンが好きなので」
 それでというのです。
「神戸のあちこちのお店に行っていて」
「中華街もですね」
「よく行っていまして」
「ラーメンを召し上がられていますか」
「そうしていますので」
 だからだというのです。
「何店かです」
「何店もですか」
「美味しいお店を知っています」
「それは素晴らしいですね」
「ですから」
 それでというのです。
「紹介させて頂きますね」
「わかりました」
 先生も頷きました、そしてです。
 先生は研究室に入ると動物の皆に言われました。
「これで決まりだね」
「むしろ日笠さんの方が乗り気だったし」
「そうなると思ってたけれど」
「いい展開だね」
「そうなんだね、いや断られるとね」
 先生はミルクティーを飲みながら言いました。
「思っていたけれどね」
「だから断られないから」
「それはないから」
「ちょっとね」
「先生の場合は」
 皆ここでももてないと思っている先生について思うのでした。
「またもてないって言うんだ」
「そうなんだ」
「その外見と運動音痴で」
「そのせいで」
「あのね、先生」 
 ガブガブが言ってきました。
「先生は自分を知らなさ過ぎるのよ」
「そうだよ先生」
 ダブダブも言います。
「もっと自分をよく見るんだよ」
「そうすればわかるよ」
 ジップはガブガブとダブダブに続きました。
「本当にね」
「全く。何でも冷静に広く見る人なのに」
「こうしたことは全くなのよね」 
 チープサイドの家族もやれやれとなっています。
「何がどうなっても気付かないから」
「困るよ」
「世の中先生位いい人そうはいないよ」
 こう言ったのはトートーでした。
「僕達が断言するよ」
「先生いつも大事なのは性格だって言ってるじゃない」
 ホワイティが指摘しました。
「そうだね」
「それなら先生は言うことなしだよ」
 老馬はホワイティを背中に置いて言いました。
「まさにね」
「そんな先生だとどうかしら」 
 ポリネシアは先生に問う様に言いました、
「果たしてね」
「もう答えは出ているよ」
「既にね」 
 オシツオサレツは二つの頭で言いました。
「言うまでもないよ」
「僕達も」
「後は先生次第だよ」 
 チーチーはきっぱりと言いました。
「ちょっと見ればわかるよ」
「ううん、皆の言うことはわからないけれど」
 やっぱりこう言う先生でした。
「兎に角日曜行って来るよ」
「わかってないし」
「まあ絶対にそうだって思ってたけれどね」
「いや、それでもだよ」
「先生行って来てね」
「それじゃあね」
 先生は皆の言葉に頷きました、そうしてです。
 お家でもトミーそれにお邪魔していた王子に対して日笠さんのことをお話すると二人にも言われました。
「日笠さんは絶対にと思ってました」
「頷いてくれるってね」
「ですが先生ちょっと」
「よくないね」
「日笠さんのことになるといつも皆から言われるけれど」
 先生はお家の中でもどうかというお顔で応えました。
「二人もだね」
「それは言いますよ」
「言わずにいられないよ」
 二人で先生にさらに言いました。
「本当にね」
「そうしないでいられないです」
「先生が全く気付かないから」
「そうですから」
「気付かないんだ、しかしね」
 それでもというのでした。
「日笠さんは随分嬉しそうだったね」
「それはそうですよ」
 トミーは日笠さんがそうであることを当然と返しました。
「もう」
「そうなんだね」
「そうですよ、そうならない筈がないです」
「あの先生本当にね」
 王子も言ってきました。
「皆が言うけれどもっと周りをね」
「見ることなんだ」
「特に日笠さんをね」
 他ならないこの人をというのです。
「そうするんだよ」
「そうなんだ」
「そしてね」
 そのうえでというのです。
「わかるんだよ」
「わかる、ね」
「そうだよ」
「それに先生はご自身のことがわかっていないです」
 トミーの口調は咎めるものになりました。
「残念ですが」
「そう言うんだ、トミーも」
「多少己惚れてもいい位ですよ」
「いやいや、己惚れは絶対に駄目だよ」
 先生はそれは断りました。
「何があっても」
「それは町外の元ですね」
「そうなるからね」
 だからだというのです。
「それはね」
「駄目ですね」
「うん、己惚れたら」
 それこそというのです。
「何でもね」
「失敗につながりますね」
「そうなるからね」
 だからだというのです。
「本当にね」
「よくないですね」
「己惚れ、慢心の類はね」
 先生はさらに言いました。
「失敗の原因だよ」
「うん、慢心しないのは先生の長所だよ」
 王子はそのことはいいとしました。
「だから先生は謙虚で学問にも励んでいるね」
「いつも自分にそうした気持ちを持たない様に言い聞かせているよ」
「けれど自分を否定することはね」 
 このことはというのです。
「本当にだよ」
「よくないんだ」
「そう、だからね」 
 それでというのです。
「己惚れや慢心は駄目でも」
「それでもなんだ」
「自信というか自己否定はね」
 これはというのです。
「本当にね」
「よくないんだ」
「そうだよ」
 本当にというのです。
「何でもね、そのうえでね」
「周りを見るんだ」
「特に日笠さんをね」
「そうすればいいんだね」
「そのうえでね」
 さらに言う王子でした。
「日がさんさんと中華街に行って来てね」
「それじゃあね」
 先生もこのことには頷きました、そうしてです。
 先生は日曜日に日笠さんと中華街に行くことになりました、その朝にご飯を食べて歯を磨いてお顔を洗ってお髭も剃った先生にです。
 動物の皆は強い声でこう言いました。
「僕達今日は行かないから」
「お家で待ってるからね」
「お二人で楽しんできてね」
「そうしてきてね」
「いつも一緒なのに」 
 先生は皆にどうしてかとなりました。
「訳がわからないよ」
「誰だってそうしますよ」
 トミーが言ってきました。
「本当に」
「そうなのかな」
「そうですよ、こうした時は」
「一緒にラーメンを食べに行くんだよ」
 特に何もないといった口調でのお言葉でした。
「だったらね」
「特にですね」
「皆が一緒でもね」
 トミーの後ろにいる皆を見て言います。
「いいと思うけれど」
「全然よくないから」
「保護者同伴と一緒よ」
「こうした時に親御さん一緒とかね」
「ある筈ないから」
「先生わかってないにも程があるよ」
「そうかな。けれどね」
 それでもと言う先生でした。
「二人でいいんだね」
「全然いいから」
「日笠さんとね」
「だからもうあれこれ言わないで」
「先生行って来てね」
「待ち合わせ場所までね」
「それじゃあね」
 先生は頷きました、そして行こうとすると王子は笑って言いました。
「こうした時先生がいつも正装でいいよ」
「僕は外出の時はね」 
 先生は笑って応えました。
「いつもだよ」
「スーツと帽子でね」
「そして革靴だよ」
「ネクタイも締めてね」
「しかも皆がアイロンかけて磨いた」
 手入れもしたというのです。
「きちんとしたね」
「身なりだね」
「だったらこうした時もね」
 まさにと言う王子でした。
「本当にね」
「いいんだ」
「そうだよ」
 こう言うのでした。
「申し分ないよ」
「お家の中だとくつろぐけれどね」
「作務衣姿でね」
「けれどね」 
 それでもというのです。
「外出の時は僕はね」
「絶対にスーツだね」
「それで出るからいいんだ」
「こうした時もね」
「そうなんだね、それじゃあ」
「行って来てね」
「そうさせてもらうよ」
 皆に笑顔で行って来るよと言ってでした。
 先生は日笠さんとの待合場所に一人で赴きました、そしてそこには膝までの奇麗な赤いスカートと白いブラウスを着て髪の毛をセットしていつも以上にメイクもして赤いヒールを履いた日笠さんがいました。
 先生はその日笠さんを見て驚きました。
「待合時間の十分前ですが」
「そうですね」
 先生は懐中時計で日笠さんは腕時計で時間をチェックして言いました。
「まだ」
「そうですが」
「実は早く来てしまいました」 
 日笠さんは少し苦笑いで答えました。
「五分位待ちました」
「そうなんですか」
「はい、気が逸ってしまいましたね。ただ」
「ただ?」
「先生も十分前に来られましたね」
「人を待たせることは礼儀に反しますので」
「だからですか」
「はい」
 それでというのです。
「十分前にです」
「来られましたか」
「そうです、ではこれから」
「少し早いですが」
 それでもというのです。
「中華街に行きますか」
「そうしましょう」
 二人でお話してでした。
 先生は日笠さんと一緒に中華街に行きました、それが一体どういったものであるのかご自身では気付かないまま。
 そして中華街に着くと日笠さんは早速言いました。
「お店が開くまで時間がありますね」
「そうですね、食べものの」
 先生も頷きました。
「どうも」
「それなら街の中を歩いて」 
 中華街のというのです。
「観て回りませんか」
「いいですね」
 先生も笑顔で頷きました。
「それもまた」
「そうですね、それでは」
「これからですね」
「色々見て回りましょう」
「案内させて頂きますね」
 日笠さんから言ってでした。
 そうして中華街の中を見て回ってです、そして。
 お土産のお店に入ると先生は言いました。
「あの、何かです」
「何でしょうか」
「欲しいものはありますか?」
 何も気付かないまま言うのでした。
「何でしたら」
「買って頂けるのですか」
「はい、日笠さんさえよければ」
 にこりと笑って言うのでした。
「そうさせて頂きます」
「そうですか」
「ですから」
 それでというのです。
「これからです」
「私が欲しいものをですか」
「買わせて頂きます」
「それはです」
 日笠さんはお顔を真っ赤にさせて言いました。
「遠慮させて頂きます」
「そうですか」
「はい、ですから」
 それでというのです。
「お気遣いなく」
「そうですか」
「お気持ちだけで」
「それでは」
「私よりもです」
 日笠さんは先生にこう返しました。
「出来ればです」
「出来れば?」
「はい、お家の人達にです」
「お土産をですね」
「買われては」
 こう提案するのでした。
「そうされてはどうでしょうか」
「そうですか」
「はい、どうでしょうか」
 先生に言うのでした。
「今回は」
「そうですね」
 人のお話を聞く先生はそれならと頷きました。
「日笠さんの言われる通りに」
「してくれますか」
「はい」
 微笑んで答えました。
「その様に」
「それは何よりです、本当にです」
 日笠さんはここでまたお顔を赤くさせて言いました。
「お気持ちが嬉しいです」
「僕のですか」
「本当に」
 こうも言ったのでした。
「充分です」
「そうですか、ただ」
「ただ?」
「いえ、日笠さん大丈夫でしょうか」
 先生のお顔を見て言うのでした。
「一体」
「何がでしょうか」
「風邪でしょうか」
 こう言うのでした。
「ひょっとして」
「いえ、別に」
「違いますか」
「風邪でしたら」
 それならというのです。
「体温は普通です」
「そうですか」
「本当に」
「ならいいですが」
「心配は無用です」
 慌てて言う日笠さんでした。
「本当に」
「そうですね、言われてみればお顔は赤いですが」 
 先生はお医者さんとして日笠さんを見て言いました。
「動きもです」
「問題ないですね」
「はい、全く」
 このことがわかりました。
「咳もくしゃみもなくこれといってです」
「おかしくないですね」
「それを見ますと」 
 それならというのです。
「風邪でも何でもです」
「ないですか」
「大丈夫ですね、では」
「はい、今日はですね」
「中華街で楽しい時間を過ごしましょう」
「ラーメンも食べて」
「そちらが本題ですし」
 明るくお話してでした。
 先生は日笠さんと皆へのお土産の品を選んで買いました、そこで日笠さんにもちゃんと中華風のハンカチを買いますと。
「いいんですけれど」
「いえいえ、折角ですし」
 紳士である先生は微笑んで言うのでした。
「ですから」
「それで、ですか」
「はい、折角ご一緒させて頂いていますから」
「だからですか」
「どうぞです」
 こう言ってでした。
 日笠さんにハンカチを渡しました、すると日笠さんはとても嬉しそうでした。
 そしてお買いものの後で日笠さんが紹介するお店に一緒に入ってです。
 ラーメンを注文しました、そしてお醤油のスープのそれを食べますと。
「美味しいですね」
「そうですよね」
 二人用の席に向かい合って一緒に食べてです、日笠さんは笑顔で応えました。
「このお店本当にです」
「美味しいんですね」
「ラーメンだけでなくです」
「他のお料理もですね」
「そうなんです」
「このお店は広東料理ですし」
 こちらの中華料理でというのです。
「それならです」
「広東料理ならですか」
「点心も注文しますか」
 ラーメン以外にというのです。
「そうしますか」
「点心もですか」
「蒸し餃子や焼売や睨餅を」
 こうしたお料理をというのです。
「どうでしょうか」
「飲茶ですか」
「そちらも楽しみませんか」
「いいですね」
 日笠さんは先生の提案に笑顔で応えました。
「それならです」
「これからですね」
「はい、点心もです」
「注文しましょう」
「そうしましょう、ラーメンも美味しいですが」 
 そのラーメンを食べつつ言うのでした。
「しかしです」
「それだけでなくですね」
「他のお料理もです」
「楽しんで、ですね」
「いただきましょう」
 こうお話してでした。
 二人でラーメンの後もです。
 楽しみました、色々な点心を注文してお茶と一緒に楽しみました。それが終わってからマンゴープリンを注文しましたが。
 マンゴープリンを食べつつです、日笠さんは言いました。
「最後の甘いものもです」
「いいですね」
「はい」
 こう言うのでした。
「とてもいい甘さです」
「僕もそう思います、こうしてです」
「甘いものもですね」
「いただいて」
 そうしてというのです。
「最高の気持ちになれますね」
「そうですね、ラーメンもいいですが」
 先生も言います。
「それとです」
「デザートもですね」
「美味しいです」
 本当にというのです。
「まことに」
「ラーメンだけではないですね」
「ラーメンもいいですが」
「デザートもですね」
「そちらもまた。実はです」
 先生はさらに言いました。
「僕は三時はです」
「ティータイムは欠かせないですね」
「これなくしてです」
「先生は、ですね」
「やっていけないです」
 そこまでのものだというのです。
「本当に」
「そうですか」
「イギリスにいた時からそうでして」
「今もですね」
「今はです」
 日本に来てからはというのです。
「日本やアメリカそして中国風のです」
「ティータイムをですか」
「楽しんでいます」
「そうですね」
「それで今日は中華街ですし」
 こちらにいるからだというのです。
「ですから」
「それで、ですね」
「中華風のティータイムをです」
「楽しまれたいですか」
「中国茶に」
 それに加えてというのです。
「中国のお菓子で」
「ティータイムにされますか」
「そう考えています」
「それならです」
 日笠さんは先生のお話を受けて笑顔で提案しました。
「これから三時まで中華街を散策して」
「そうしてですね」
「それからです」
「ティータイムにですね」
「お店に入りましょう」
「甘いもののお店もご存知ですか」
「はい、この街にはよく来ていますので」
 それでというのです。
「ですから」
「甘いもののお店もですか」
「知っています」
「それは有り難いですね、僕もここには何度か来ていますが」
 先生は笑顔で応えました。
「しかしです」
「それでもですか」
「いつも皆が一緒で」
 動物のというのだ。
「彼等が何もしてくれて」
「それで、ですね」
「僕一人では」
 それではというのです。
「何処にどんなお店があって何がいいのか」
「わからないのですか」
「頭には入っていますが」 
 それでもというのです。
「足ではです」
「おわかりにならないですか」
「実は」 
 そうだというのです。
「これが」
「そうなのですね」
「何分世間知らずなもので」
 このことを自覚している先生でした。
「お恥ずかしいことに」
「いえ、でしたら」
 それならとです、日笠さんは先生に応えて言いました。
「皆さんがおられない時は」
「その時はですか」
「何でもです」
 先生に強い声で言うのでした。
「私にお話して下さい」
「そうですか」
「はい、ですから」 
 それでというのです。
「今回もこれからも」
「何かとですか」
「お話して下さい」
「有り難うございます、日笠さんは素晴らしい方ですね」
 先生は心から思いました。
「何かと助かります」
「いえ、好きでやっていることですから」
 これが日笠さんの返事でした。
「ですから」
「だからですか」
「特に何もです」
 これといってというのです。
「思われないで下さい」
「そうですか」
「それとです」
 さらにお話する日笠さんでした。
「食べましたら」
「はい、三時までですね」
「中華街を歩いて」
 その中をというのです。
「そしてです」
「散策と見物をですね」
「して」 
 そうしてというのです。
「そのうえで、です」
「三時にですね」
「ティータイムにしましょう」
「それでは」
 先生も頷きました、それで二人でお勘定となりましたが先生が全部出そうとすると日笠さんはワリカンでと言ってでした。
 それで支払ってそれからです。
 二人で三時まで中華街の中を散策しました、その間日笠さんはずっと先生の隣にいてティータイムの時もでした。
 マーラーカオに杏仁豆腐、桃饅頭の中華風ティーセットに中国茶を前にしてです、先生に言いました。
「あの、これからですが」
「ティータイムの後ですね」
「ご予定はありますか?」
「はい、お家に帰りまして」
 先生は微笑んで答えました。
「次の論文の為の読書に」
「資料のですか」
「そして皆とです」 
 家族と、というのです。
「晩ご飯をいただきます」
「そうなんですね」
「その予定です」
「そうなのですね」
「ですからティータイムが終われば」
 今のというのです。
「中華街の門のところで」
「お別れですか」
「今日は」
「そうですか。あの」 
 日笠さんは何処か必死そうに言いました。
「よかったらです」
「それならですか」
「はい、ティータイムの後もと考えていましたが」
「そうでしたか、では予定を汲まなかったらよかったですね」
 先生は申し訳なさそうに応えました。
「それなら」
「いえ、お気遣いなく」
 日笠さんは残念そうに応えました。
「予定がおありでしたら」
「そうですか、では」
「はい、ティータイムが終わって」
 今度は残念そぷに言う日笠さんでした。
「中華街の入り口まで」
「そうでした、お家まで送りますね」
 先生はここで紳士のマナーを出しました。
「お友達ですから」
「だからですか」
「そうさせてもらいます」
「お友達ですね、ですが有り難うございます」
 嬉しそうでいて残念そうな、そんな笑顔でなのでした。
 日笠さんは応えました、そしてティータイムの後は日笠さんのお家まで一緒でした。先生は日笠さんを送ってからです。
 お家に帰ってこの日のことをお話しましたが。
 まずはです、王子がやれやれとなって言いました。
「そうなると思ったよ」
「全くだよ」 
 チーチーは王子と同じ口調でした。
「予想通りだよ」
「こんな予想通りになるなんてね」
 ホワイティも言います。
「ある意味凄いよ」
「先生らしいっていうかね」
「がっかりするよ」 
 オシツオサレツは実際にがっかりしている感じです。
「もうね」
「予想通り過ぎてね」
「何でこうなのか」 
 ジップは呆れています。
「先生ってね」
「普通こうした展開だとね」
 老馬はこう言いました。
「お友達とか言わないし」
「そこでそう言うのが先生なんだよね」
 ダブダブは先生をじっと見ています。
「本当にね」
「それで今から本読むんだ」
「次の論文の為に」
 チープサイドの家族はそちらのお話をしました。
「それ予定?」
「今の時点だと自由時間だよ」
「僕達との晩ご飯なんてね」 
 トートーも呆れています。
「携帯で今日はちょっと、って連絡したらいいし」
「何でいつもこうなのかしらね、先生って」
 ガブガブの口調は何処かお母さんめいたものになっています。
「紳士なのは最高だけれど」
「紳士で律儀で礼儀正しくても」
 それでもと言うポリネシアでした。
「がっかりするわ」
「全くだね、まあ皆こうなるって思っていたし」 
 王子はまた言いました。
「お家まで送ることをね、お友達として」
「お友達なら当然だよね」
 先生は皆の反応がどうしてそうなっているのかわからず応えました。
「そうだね」
「うん。そうだよ」
 王子もその通りだと答えました。
「まさにね」
「日笠さんは女性だしね」
「そうした気遣いは素晴らしいよ」
「僕も心掛けているよ」
「けれどね」
 それでもというのでした。
「はっきり言って今回は失格だから」
「失格?」
「もう零点だよ」
「零点って酷いよ」
「赤点どころかね」
 そのレベルで済まずにというのです。
「文句なしのね」
「零点なんだ」
「これも予想通りだけれどね」
「予想通りの零点って」
「全く。先生が今以上に幸せになるには」
 王子は心から思って言いました。
「もっと努力が必要かな」
「僕達もね」
「そうしないと駄目かな」
「こうなるしね」
「先生だけだとね」
「いや、僕は今で最高に幸せだから」
 今度は無欲さを出した先生でした。
「もういいけれどね」
「その考えは美徳ですが」 
 無欲であって満足を知っていることはとです、トミーもやれやれとなりながら先生に対して言いました。
「ですが」
「それでもなんだ」
「はい、幸せに際限はなくて」
「僕もなんだ」
「これまで以上にです」
 まさにというのです。
「幸せになれますよ」
「そうなんだ」
「確実に」
「今以上の幸せってあるのかな」
 先生は首を傾げさせて思いました。
「果たして」
「僕達がいて素敵なお家があってお仕事があってですね」
「美味しいものを食べられて好きなだけ学問が食べられるんだよ」
 これだけ揃っているからだというのです。
「もうね」
「最高にですね」
「幸せだけれどね」
「ここで奥さんとか」
「だから僕にはね」
「無縁ですね」
「そちらはね」
 明るく笑って言うのでした。
「何しろ恋愛はね」
「無縁ですね」
「それが僕だからね」
 だからだというのです。
「もうね」
「そちらのことはですね」
「ないよ」
 絶対にというのです。
「本当にね」
「そうなんですね」
「そうだよ、結婚しなくても」
 奥さんがいなくてもというのです。
「僕は最高にね」
「幸せなんですね」
「そうだよ」
 またトミーに言いました。
「もうね」
「だからですか」
「これ以上の幸せなんて」 
 それこそというのです。
「絶対にね」
「ないんですね」
「満足しているしね」
 今の状況にというのです。
「本当にね」
「そうですか」
「うん、このままね」
 さらに言う先生でした。
「皆と一緒にね」
「楽しく暮らされますか」
「お仕事と学問を続けながらね」
「先生今お金もあるしね」
 王子はこのことを言いました。
「大学の教授さんだから」
「安定した収入も得られる様になったよ」
「そうだよね」
「そのこともあるしね」
「幸せなんだね」
「うん、とてもね」 
 ここでも笑顔で言うのでした。
「僕は」
「それで満足なんだね」
「日本に来てね」 
 そうしてというのです。
「僕は最高に幸せになったよ」
「日本に来てよかったね」
「もうずっとこの国に住みたいよ」
 こうまで思っているというのです。
「本当にね」
「それは何よりだけれど」
 それでもと言う王子でした。
「ちょっとね」
「駄目なんだ」
「先生がすぐに満足して」
 そうしてというのです。
「最高に幸せだって言うのはね」
「よくないのかな」
「この場合はね」
「わからないんだけれど」
「それがわからないのがね」 
 まさにというのです。
「本当にね」
「駄目なんだ」
「そうだよ」
 こう言うのでした。
「僕達皆がそう思っているよ」
「その通りよ先生」
「僕達いつも言ってるけれど」
「今が最高じゃないよ」
「まだこれからもだよ」
「幸せはあるよ」
「そうなのかな」
 やっぱりわかっていない先生でした。
「僕はまだなんだ」
「幸せになれるよ」
「これからもね」
「さらにね」
「そうだよ」
 こう皆で言うのでした。
「これからもね」
「幸せになっていく様にしよう」
「今以上にね」
「今が最高と思わないで」
「そのうえでね」
「あるのかな」
 今以上の幸せがとです。
「果たして」
「あるからね」
「安心してね」
「全く、いつもそう言うから」
「先生はもどかしいわ」
「僕達にしても」
 皆はそんな先生にやれやれです、ですがその目はとても暖かくてです。
 先生の傍にいるのでした、そして先生を今以上に幸せにしようと思うのでした。








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