『ドリトル先生の落語』




                第六幕  落語家さんの方から

 先生はいつも通り論文を書いていきます、今学んでいるものの本を読んでそして次またその次の論文になる落語の本もです。
 さらに読んでいきます、そんな中で研究室で動物の皆に言われました。
「いつも通り学問に熱心だね」
「次の論文の本も読んで」
「その次の落語の本も読んでるね」
「本当にどんどん本を読んで」
「論文も書いていっているね」
「そうしているよ、しかしね」
 先生は本を読みつつ皆に言います、見れば読む速さはかなりのものでページをぱらりぱらりと読んでいっています。
「落語は読めば読む程ね」
「奥が深くて」
「それでだね」
「学んでいて楽しい」
「そうだっていうんだね」
「そうだよ」
 笑顔での返事でした。
「だからどんどん学べるよ」
「それはいいことだね」
「先生にとって学問は生きがいだけれど」
「もう何よりも楽しい」
「だからだね」
「学んでいくね」
「これからも。そして」
 そのうえでというのです。
「いい論文を書くよ」
「そうするね」
「今もそうして」
「これからもだね」
「学んでいくね」
「そうしていくよ」
 こう言って本をどんどん読んでです。
 パソコンで論文を書いていきます、そして三時になると先生の大好きなティータイムとなりますがこの日はといいますと。
 日本の熱いお茶に三色団子におたべそれにわらび餅です、先生は和風の三段ティーセットを前にして目を細めて言いました。
「この和風のね」
「組み合わせもだよね」
「素敵よね」
「本当に」
「落語のお話をしていてだし」
「丁度いいわよね」
「そう思うよ」 
 実際にと答える先生でした。
「僕もね」
「そうだよね」
「私達もそう思うわ」
「最近日本のお笑いのお話よくするし」
「落語もだし」
「それじゃあね」
「和風が嬉しいよ」
 お茶を飲んででした。
 先生は皆に応えました、そして三色団子を食べてまた言いました。
「このお団子美味しいね」
「そうだよね」
「おたべも美味しいし」
「わらび餅もね」
「お茶にも合って」
「最高だよ」
 皆も笑顔で言って食べています、そのうえでの言葉です。
「和菓子のよさときたら」
「優しい甘さで」
「しかも繊維質が多くて健康で」
「本当にいいね」
「そう、和菓子はお菓子の割に糖分も控えめで」
 先生は今度はおたべを食べてお話しました。
「繊維質も多いんだ」
「小豆とかきな粉とか使ってるからね」
「他にもそうした素材だから」
「甘くても」
「それでもだね」
「健康的なんだ」
 そうだというのです。
「これがね」
「そうだよね」
「そう考えると素敵だね」
「和菓子って」
「美味しくて健康的だなんて」
「素晴らしいよ、まあお酒には合わないけれどね」
 笑ってこうも言う先生でした。
「日本酒にはね」
「日本でお酒好きな人辛党っていうしね」
「それって塩辛いもので」
「お酒のおつまみなのよね」
「だからお酒好きな人は甘いものが苦手」
「そうなるんだよね」
「そうだよ、そこはね」
 どうしてもという先生でした。
「日本の一つの法則だよ」
「そうだね」
「お酒が好きな人は辛党」
「少なくともお酒を飲んで同時に甘いものは食べないわ」
「どうしてもね」
「そうだよ、ただ甘いものが好きでお酒も好きな人もね」 
 そうした人もというのです。
「同時に楽しまなくてもね」
「いるよね」
「そうした人もね」
「中にはね」
「ちゃんといて」
「楽しんでいるね」
「そうだね、けれどやっぱりこうしたものを食べて」
 和菓子をというのです。
「同時にお酒は飲めないね」
「日本だとね」
「どうしてもね」
「それはないね」
「やっぱり」
「そうだね」
 実際にという先生でした。
「僕もそれはしないしね」
「先生ってお酒飲みながら甘いものも食べるけれど」
 ジップは先生の食生活からお話しました。
「日本酒飲みながらアイスクリームとか食べないしね」
「ビールもないね」
「そっちのお酒もね」
 オシツオサレツも言います。
「ないよね」
「ケーキやクッキー食べながら飲まないね」
「ワインとか杏酒とかね」
 そうしたものでと言うポリネシアでした。
「甘いお酒と一緒に楽しんでるわね」
「甘いお酒と甘いお菓子」
 その組み合わせと言うのはガブガブです。
「それはあるね」
「あと桂花陳酒とかブランデーとか」
 チーチーはこうしたお酒もと言いました。
「そうしたお酒で杏仁豆腐やプリン食べるね」
「けれど日本酒になると」
「先生は甘いもの食べないわ」
 チープサイドの家族はそれはと言いました。
「合わないって言って」
「絶対にね」
「本当に日本酒って甘いものに合わないのね」
 ダブダブもしみじみと思いました。
「辛いものと合うよね」
「そういえば日本のおつまみって皆辛いよ」
 ホワイティはしてきしました。
「塩辛とかお漬けものとかね」
「それで和菓子の味も食感も」
 トートーはそちらを思い出しました。
「日本酒には合いそうもないね」
「先生の食べものの組み合わせってオーソドックスだし」
 老馬はしみじみと思いました。
「それなら当然だね」
「うん、若し和菓子を食べつつお酒を飲むとすれば」
 それならとです、先生はわらび餅を食べて言いました。
「赤ワインとかだね」
「そういうのだよね」
「赤ワインって甘いものに合うのよね」
「ケーキやクッキーでも」
「他の甘いものにもで」
「和菓子にもなんだよね」
「そうなんだよね、ただ和菓子はね」 
 先生はさらにお話しました。
「元々お茶と一緒に楽しむもので」
「お酒とじゃないよね」
「元々は」
「日本のお酒って昔は日本酒ばかりで」
「ワインとかなかったしね」
「ワインを飲む様になったのは明治からだよ」
 この頃からというのです。
「本格的にはね」
「それまでは舶来品の凄く高価なもので」
「物凄く限られた人しか飲んでなかったね」
「お大名でもかなりの人で」
「出島とかから仕入れていたね」
「そうだったよ、南蛮貿易があった頃も」
 この頃もというのです。
「ワインなんてね」
「欧州とかだとワインとケーキ同時ってあるけれど」
「普通にね」
「そうだけれどね」
 それがというのです。
「日本ではね」
「日本酒がそうだから」
「仕方ないね」
「お菓子とお酒は別」
「そうした風になってるね」
「そうだよ、だからお坊さんもね」
 お寺の人達もというのです。
「あくまで表向きはお酒飲めなくてね」
「そうだよね」
「般若湯と言って飲んでたけど」
「まあそれはご愛敬で」
「そうなっていてね」
「お酒は飲まなくて」
「それでお茶を飲んでいて」
 それでというのです。
「お茶を飲むとね」
「それならお菓子」
「そうなるね」
「実際仏教ではお菓子は禁止されていないし」
「食べてよかったね」
「だからお寺からお菓子が発達した面もあるんだ」
 日本ではというのです。
「これがね」
「そうだよね」
「日本はね」
「そうした国だね」
「そうだね」
「そうだよ、ちなみに今般若湯のお話をしたけれど」
 先生はお団子を食べながら皆に笑って言いました。
「お坊さんのそうしたお話も落語ではネタになってるよ」
「へえ、そうなんだ」
「お坊さんがこっそりお酒を飲んだりすることも」
「そうしたこともなんだ」
「ネタになるんだ」
「そうだよ、お坊さんのそうしたお話もね」
 まさにというのです。
「ネタになるよ」
「まあ日本のお坊さんって結構ね」
「そうしたところあるよね」
「ご愛敬で」
「それでね」
「戒律破りもね」
 これもというのです。
「日本ではね」
「ご愛敬なところあるね」
「本当は駄目だけれど何処か憎めない」
「そんな風だよね」
「日本では」
「だって日本では皆飲んでいて」
 民百姓の人達がです。
「お坊さんもその中にいて」
「勧められるしね」
「そうもなるしね」
「だからだよね」
「どうしてもね」
「飲んだりもするよ、それで般若湯とも言って」
 お酒をです。
「あとお魚とかもね」
「こっそり食べて」
「他にも奥さんがいたり」
「それでお子さんがいたりね」
「まあこれ位はね」
 さらにお話する先生でした。
「いいんだよ、そこも面白いよね」
「日本はね」
「おおらかなところもあって」
「そうしたところも笑い話で済ます」
「落語のネタにもするからね」
「僕はそうしたところも好きだよ」
 こうしたことをお話してでした。
 先生は今はお茶と和風のティーセットを楽しみました、そしてその後でまた本を読んで論文を書きました。
 お家に帰ってからもそうしていてです、お風呂に入って晩ご飯を食べてまた論文を書いて寝てでした。
 翌日朝起きてご飯を食べて登校しますと。
 先生の研究室にお電話がかかりました、それに出ますと。
「すいません、私八条芸能の上林という者ですが」
「上林さんですか」
「はい、実はこの度ドリトル先生にお話がありまして」
 それでというのです。
「お電話させて頂きました」
「僕にですか」
「先生は日本文化にもお詳しいですね」
 こう先生に言うのでした。
「日本についての論文を多く書かれているとか」
「それはそうですが」
「それでなのですが」
 そのお話を聞いてというのです。
「先生にお願いがありまして」
「そうなのですね」
「実はうちの所属の春雨亭春琴ですが」
「ああ、イギリス出身の女流落語家の」 
 先生はその芸名を聞いてすぐに応えました。
「あの人ですね」
「ご存知でしたか」
「実は先日少し落語を聞きまして」
「春琴のですか」
「そうしまして」
 それでというのです。
「イギリス人の女性の落語家さんがいると知ったのです」
「そうだったのですね」
「最近のことですが」
「それは有り難い、実はです」 
 上林さんという人は電話の向こうから言ってきました。
「春琴も先生のお話を聞いて日本文化にお詳しいと知りまして」
「それで、ですか」
「同じイギリス人ということで」 
「僕にですか」
「お会いして」
 そしてというのです。
「そのうえで、です」
「お話したいとです」
「春琴さんが言われていますか」
「春琴は今日本の落語のことを学んでいまして」
「落語家だけあって」
「そうしてです」
 そのうえでというのです。
「先生からも日本のことをです」
「お聞きしたいと」
「それで、です」
「僕とですか」
「お会いしたいと」
 そしてお話したいと、というのです。
「そう言っていますが」
「でしたら今度大阪にお伺いします」
 先生は自分から言いました。
「時間がある時に」
「いえ、それには及びません」
 上林さんは確かな声で答えました。
「それでしたら春琴からです」
「こちらにですか」
「大阪と神戸でしたら」
 それならというのです。
「もう目と鼻の先なので」
「だからですか」
「それに八条大学は彼女の出身校ですし」
「そうらしいですね」
「はい、春琴も是非です」
 そうした感じでというのです。
「訪問してです」
「そしてですか」
「母校も観たいとです」
「言っておられますか」
「そして何よりも」
「僕とですね」
「自分が行くのが礼儀と言っていて」
 それでというのです。
「伺うとのことです」
「そうなのですね」
「ですから」
 それ故にというのです。
「先生はです」
「待っていればいいのですね」
「はい、では何時が宜しいでしょうか」
「土日でしたら」 
 こうした曜日はとです、先生は答えました。
「何時でもです」
「いいのですか」
「はい」
 そうだというのです。
「ご安心下さい」
「それでは」
 上林さんも応えてでした。
 先生と春琴さんが来る日時のスケジュール調整を行いました、お話はすぐに整って終わってなのでした。
 先生は春琴さんとお会いすることになりました、それで上林さんとのやり取りが終わってそのうえで。
 先生は皆にまさかというお顔でお話しました。
「聞いたと思うけれどね」
「うん、春琴さんとだね」
「あの人とお会いするね」
「そうなったね」
「予想外のことだよ」
 驚きを隠せないで言う先生でした。
「イギリス人の女性の落語家さんがいるって思ったら」
「それでその人の落語聞いて」
「いいと思っていたら」
「そこでだからね」
「その人から会いたいって」
「そう言ってきてね」
「意外も意外だよ」
 こう言いました。
「本当にね」
「世の中何があるかわからないけれど」
「今回もだよね」
「本当にそうよね」
「何があるかわからないわ」
「全く以てね」
「若しかして」
 先生は考えるお顔になって言いました。
「これも縁かな」
「ああ、先生が春琴さんのことを知って」
「その人の落語を聞いた」
「それは縁だったんだね」
「今回の」
「人からは偶然に見えて思えても」
 それでもというのです。
「これは実はね」
「縁だね」
「神様のお導きだね」
「そうだね」
「偶然は世の中にないという人もいるよ」 
 実際にというのです。
「実は全て必然だって」
「運命ともいうね」
「この世にあるものは偶然じゃなくてね」
「神様の導きだって」
「誰かと誰かが出会うことも」
「それでそれぞれの人生に影響を及ぼすことも」
「その全てがね」
 まさにというのです。
「運命だという人もいるよ」
「そうだよね」
「それで先生はそうした考えだよね」
「人と人が巡り会うのは縁でね」
「運命であって」
「神様の導きだって」
「そう思うよ、僕の場合はキリスト教の神様でね」
 先生がクリスチャンだからです、信仰も確かに持っているのが先生です。ただ来日してから食べる前はいただきますになっています。
「その神様のだよ」
「お導きだね」
「それで春琴さんとも会うことになった」
「その前にあの人の落語も聞いた」
「そうなったんだね」
「そうだよ、きっとね」
 まさにというのです。
「あの時からだよ」
「巡り会うことになっていた」
「神様がそう決めた」
「そういうことね」
「流石に運命は全部決まっているとはね」
 人のそれはというのです。
「僕は思えないけれどね」
「予定説だよね」
「カルヴァンさんの」
「あの人の考えだよね」
「予定説といえば」
「予定説では何もかもがだよ」 
 人の一生はというのです。
「決まっているとされているけれどね」
「それはないね」
「先生の考えには」
「予定説は」
「国教会の教えにはないからね」
 先生の宗派にはです。
「だからだよ」
「そうだね」
「それで先生は予定説信じてないね」
「運命は信じていても」
「全部最初から決まっている」
「そうした考えはないわね」
「そうだよ、運命は変わるよ」
 全部決まっていないというのです。
「あらゆる出来事でね」
「そうした考えだね」
「運命は絶対じゃない」
「変わりもする」
「そうだよね」
「そうだよ、その都度変わるものだから」
 それでというのです。
「努力していってまたいい人ともね」
「会うことだよね」
「お話したり一緒にお仕事をする」
「そうすることだよね」
「何といっても」
「予定説でも努力は絶対にすべきと言っているしね」
 人の運命は神様が決めていて変わることはないというこの考えもとです、先生は皆に対して言うのでした。
「自分に与えられたお仕事を熱心に頑張る」
「真面目にね」
「そして信仰も行っていく」
「そうしろっていうよね」
「あちらの考えも」
「もう決まってるから何をしても無駄じゃないんだ」 
 そうした考えではないというのです。
「自分が今いる場所で真面目に頑張る」
「そうしなさいっていう考えでね」
「何をしても無駄じゃないね」
「そうした考えじゃなくて」
「救われると信じて努力する」
「そうしたものだね」
「そうだよ、何にしても努力をして真面目に生きることだよ」
 このことが大事だというのです。
「本当にね」
「そうだよね」
「それが大事だよね」
「先生もいつもそうしているし」
「予定説でもだよね」
「そうだよ、では春琴さんともね」
 落語家さんであるこの人ともというのです。
「お会いしようね」
「そうしようね」
「是非ね」
「ここはね」
「そうしようね」
 こう言ってそうしてでした。
 先生は学問を続けつつ春琴さんの来訪を待ちました、そしてその日になりますと。 
 大学のキャンバスで細面で黒髪を右で分けた眼鏡の痩せたスーツの中年男性の人と波がかったブロンドの髪を長く伸ばしてツインテールにして青い目と小さな顔に赤い唇と細い眉を持っている一六〇センチ位の背の赤茶色の着物の白人の女の人と会いました、場所はキャンバス内にある喫茶店の中です。
 挨拶をしてからです、着物の女の人は自己紹介をしました。
「はじめまして、春雨亭春琴です」
「上林翔太といいます」
 スーツの人も名乗りました。
「マネージャーを勤めています」
「貴方が先日お電話してくれた」
「はい、そうです」 
 その通りという返事でした。
「宜しくお願いします」
「そうですか、ジョン=ドリトルです」
 先生も名乗りました。
「職業は医師であり学者です」
「左様ですね、それでなのですが」
「もうご存知やと思いますが私落語家やってまして」
 春琴さんも言ってきました。
「それで日本文化も勉強してまして」
「落語家だからですね」
「はい、日本に留学して」
 そしてというのです。
「それから日本が大好きになりまして」
「それで日本文化もですね」
「めっちゃ好きになりまして」
「落語家になられたんですか」
「部活はずっと落研で」
 落語研究会でというのです。
「事務所のオーディションを受けまして」
「それで、ですか」
「所属になりまして師匠の下で修行させてもらって」
 そうしてというのです。
「今は落語家としてです」
「活動されてますか」
「そうです、ちなみに大阪に友達と一緒に住んでます」
 このこともお話するのでした。
「好きな食べもんはオムライスときつねうどん、たこ焼きに焼きそばです」
「そうしたものがお好きですか」
「趣味は読書と食べ歩きと銭湯巡り、阪神タイガースの応援です」
「それでこの度です」
 上林さんも言ってきました。
「先生が日本文化のことを書かれていて」
「論文で、ですね」
「日本文化に造詣が深いイギリス出身の方なので」
「来られたのですね」
「それでお話を聞きに来ました」
 そうだというのです。
「この度は」
「そうですか」
「はい、そして」
 そのうえでというのです。
「具体的には文学のお話を」
「私の芸名ですけど」
 また春琴さんが言ってきました。
「春琴って春琴抄ですよね」
「谷崎潤一郎の作品ですね」
「それから取られてるんです」
「そうなんですね」
「師匠があの人のファンでして」
 谷崎潤一郎のというのです。
「師匠お弟子さんにはあの人の作品にちなんだ名前付けるんで」
「それで貴女はですね」
「春琴になりました、本名はジェーン=オリビアっていいまして」
 本名のお話もするのでした。
「ロンドン生まれなんですが」
「芸名はですか」
「春琴です」
 こちらのお名前だというのです。
「それで活動させてもらってまして」
「谷崎潤一郎のお話をです」
 上林さんも言いました。
「春琴にお話してくれませんか」
「あの人のお話をですか」
「そうです、イギリスの方から見た」
「僕も谷崎潤一郎は読んでいます」
 先生は微笑んで答えました。
「日本を代表する文豪の一人ですね」
「左様ですね」
「独特の耽美がいいですね」
「はい、師匠もそれが好きでして」
 春琴さんも言います。
「落語のネタには使えへんですけど」
「お笑いにはですね」
「あまり、まあ美食倶楽部なんて作品はです」
 この作品のお話もするのでした。
「おもろいですけど」
「それでもですね」
「耽美とはまたちゃうので」
「それで、ですね」
「あの人のそうしたお話を聞きたいんですが」
「あの人のプライベートでも」
「それで他にも日本のお笑いのことを」
 こちらもというのです。
「同じイギリス生まれとして」
「聞きたいのですね」
「はい、お願い出来ますか」
「僕でよければ」
 笑顔で応えた先生でした、それで谷崎潤一郎や先生が観た日本のお笑いのことをお話しました、そのお話の後で。
 春琴さんは唸ってです、喫茶店のミックスジュースを飲みつつ言いました。
「いや、谷崎潤一郎って色々あったんですね」
「はい、美食家で大食漢でして」
「料亭で出版社の人達にご馳走になって」
「それで執筆のお話しようと思ったら」
 出版社の人達がです。
「食べさせてもらっただけだと思って」
「意気揚々として帰ったんですね」
「そうでした」
「そんなことがあったんですね」
「これは落語のネタになりますね」
「はい、これはええです」
 春琴さんは笑顔で応えました。
「私古典落語もやりますけど」
「創作落語もですね」
「してまして」
 それでというのだ。
「いや、そうしたお話はです」
「落語のネタになりますね」
「しかも私の芸名がです」
「春琴さんなので」
「丁度ええです」
 まさにというのです。
「ほんまに」
「そうですか」
「それで日本のお笑いのことも詳しいですね」 
 このことにも感心する春琴さんでした。
「いや、ほんまにです」
「このこともですね」
「感服しました、また教えてもらってええでしょうか」
「はい、お互い時間に都合がつけば」
「その時にですね」
「お話しましょう」
「ほな宜しく頼んます」
「こちらこそ。しかし随分流暢な関西弁ですね」
 先生は春琴さんのこのことに感服して言いました。
「春琴さんの日本語は」
「学生時代に留学してからずっとこっちにいますさかい」
「関西にですね」
「学生時代は神戸にいて」
「今は大阪ですね」
「それで師匠にこう言われたんです」
 春琴さんははきはきとした口調でお話しました。
「頭の中で考える言葉は英語からです」
「日本語にですね」
「変えろと、日本語で落語をするなら」
「頭の中で使う言葉もですね」
「日本語にしろと」
 その様にというのです。
「言われまして」
「それで、ですか」
「実際にそうしてましてもう今では普段もずっとです」
「頭の中で使う言葉はですね」
「関西弁です」 
 日本語のというのです。
「そうなってます」
「それで話すお言葉もですね」
「日本語です」
「そうなんですね」
「はい、そうです」
 そうなっているというのです。
「私は」
「そうですか」
「はい、そして」 
 それにというのです。
「落語もです」
「関西弁ですね」
「そうです、よかったら私の寄席もです」
「それもですか」
「聞いて下さい」
「実はユーチューブで聞いていますが」
「いえ、ナマで」
 笑って言うのでした。
「宜しくです」
「実際の寄席をですね」
「その目で頼みます」
「ではそうさせて頂きます」
 先生もそれはと応えました、こうしたお話を大学の中の喫茶店でしてです。春琴さんは上林さんと一緒に先生に挨拶をして帰りました。
 その後で先生は研究室に戻りましたが喫茶店でも一緒だった動物の皆は読書をしている先生に言いました。
「面白い人だったね」
「落語家らしくね」
「口調も明るくて」
「お笑いのことも真剣に考えていて」
「そうだったね、あの人はいい落語家さんになるよ」
 先生は断言しました。
「今以上にね」
「しかしね」
「凄い関西弁だったね」
 オシツオサレツは二つの頭で思いました。
「流暢でね」
「それではきはきした」
「お嬢様みたいな外見だけれど」
 それでもと言うジップでした。
「中身は完全に大阪の人だったね」
「もう仕草もだったね」 
 ホワイティはそちらのお話をしました。
「大阪の若い娘さんって風だったね」
「気さくで飾らなくて」
 老馬はその仕草を具体的に言いました。
「明るくてね」
「好きな野球チームは阪神タイガースだったしね」
 チーチーはこのことをお話しました。
「応援が趣味だっていうし」
「好きな食べもの全部大阪のものっていうのも」
 食いしん坊のガブガブはこのことを指摘しました。
「オムライスを含めてね」
「ロンドンって感じしなかったね」
「生まれはそうだって言ってたけれど」
 チープサイドの家族も言います。
「それでもね」
「大阪って感じだったね」
「着物の着こなし奇麗だったわね」 
 ダブダブはそこを見ていました。
「歩き方もね」
「それがまた庶民的で」
 それでというトートーでした。
「大阪な感じだったね」
「頭の中で使う言葉も関西弁だって言ってたし」
 ポリネシアは思いました。
「完全に大阪の人になっているのね」
「そう、頭の中で使う言語は凄く重要なんだ」
 先生は皆に言いました。
「そこから色々出て来るからね」
「文化とかね」
「あと考え方とか」
「何かと出るよね」
「そうだよね」
「僕も今は頭の中では日本語で考えてるよ」
 先生もというのです。
「日本に来て暫くは英語だったけれど」
「それが変わったね」
「先生にしても」
「日本にずっといて」
「それでだよね」
「そう、変わったんだ」
 そうなったというのです。
「日本にいるうちにね」
「徐々にね」
「そうなったね」
「先生にしても」
「そうだね」
「そうだよ、そしてね」
 それでというのです。
「そうした意味でも日本人になったね」
「国籍もそうなって」
「日本語を話して日本文化に親しむ」
「日本の中にいて」
「それと共にだね」
「そうなったよ、日本語で考えもしてね」
 そうもしてというのです。
「日本人になったね」
「イギリス系日本人だね」
「先生の場合は」
「イギリス生まれの日本人」
「そうなったね」
「僕はね、それで春琴さんは」
 この人はといいますと。
「落語家だから余計にね」
「日本語で考える様にしてるんだね」
「落語を日本語でするから」
「日本の人達が聞いているから」
「それでだよ、それでね」 
 そのうえでというのです。
「意識して変えて」
「日本語から英語に」
「そしてだね」
「落語をしてるんだね」
「そういうことだね」
「そうだね、実際落語もね」
 ユーチューブで観たそれもというのです。
「そうだったしね」
「流暢な関西弁でね」
「正座してやってたね」
「イギリス人とは思えない位よかったね」
「見事だったよ」
「うん、日本語は本当に難しいけれど」
 それでもというのです。
「実によく使ってるよ」
「そうだよね」
「日本語みたいに難しい言語そうそうないけれど」
「それでもね」
「ちゃんと使ってるね」
「このことも凄いね、あのおうどんの落語は」
 春琴さんがしていたそれはといいますと。
「仕草もよかったね」
「そうそう、まさにおうどんを食べる」
「それだったね」
「きつねうどんをね」
「よかったわよ」
「細かい仕草もね」
 食べるそれもというのです。
「よかったよ、あと噛んでたけどね」
「おうどん噛むよね」
「そうして食べるよね」
「東京じゃお蕎麦は噛まないそうだけれどね」
「こっちじゃそうよね」
「その噛むことまでね」
 このことまでというのです。
「ちゃんとしていてね」
「よかったね」
「いや、細かいね」
「その細かいところをちゃんとやっている」
「そこで大きく違うね」
「そうだね、ただね」
 ここで先生は微妙なお顔でこうも言いました。
「春琴さん落語以外のお仕事もしてると言ったね」
「何かグラビアもやってるってね」
「そう言ってたね」
「見たら奇麗だったしね」
「スタイルもよかったし」
「もうグラビアのお仕事はね」
 これはといいますと。
「タレントさんの基本みたいになってるね」
「アイドルの人達なんか絶対だしね」
「必須のお仕事だしね」
「水着になったりね」
「そう、写真集も出してるそうだよ」
 先生は言いました。
「水着になってね」
「落語家なのにね」
「そうしたお仕事もしてるんだね」
「落語以外にも」
「そうなんだね」
「実際春琴さんも嫌じゃないみたいだね」
 グラビアのお仕事もというのです。
「これが」
「そうなんだ」
「水着になったりするのもなんだ」
「春琴さん嫌じゃないんだ」
「そうなんだね」
「そこから人気も出るからね」
 グラビアからというのです。
「それでお仕事だからね」
「あっ、収入にもなる」
「そうなるね」
「実際に」
「そうだね」
「そのこともあってね」
 それでというのです。
「ちゃんとね」
「グラビアもだね」
「そちらのお仕事もするんだね」
「しかも嫌じゃない」
「そうなんだね」
「そうみたいだね、まあ春琴さん自身がいいなら」
 それならというのです。
「構わないね」
「グラビアのお仕事もね」
「春琴さん自身がいいなら」
「それならね」
「そうだよ、しかし昔はね」
 先生はかつての日本のお話をしました。
「外国生まれの女性の落語家さんもいなくて」
「落語家さんがグラビアのお仕事やるとか」
「それもなかったよね」
「全くね」
「そうだったよね」
「日本ではね、けれど奇麗でスタイルもいいから」
 それでというのです。
「グラビアのお仕事もね」
「してるんだね」
「ああして」
「そうだね」
「そこからも人気が出たそうだしね」
 グラビアの方からもというのです。
「アイドルの人みたいにね」
「そうそう、グラビアというとアイドル」
「もう定番だよね」
「何といってもね」
「アイドルの必須のお仕事よ」
「歌やダンスと並ぶね」
「グラビアのお仕事をして水着姿になるのも」
 このこともというのです。
「アイドルになるんだったら」
「水着にならないアイドルの人ってね」
「まずいないよね」
「昔からね」
「アイドルだったらなるよね」
「女優さんもね」
 このお仕事の人達もです。
「まずなるね」
「そうそう」
「いいか悪いか別にして」
「それがお仕事だからね」
「人気も出るし」
「いいよね」
「逆にグラビアのお仕事が出来ないなら」
 それならというのです。
「その分ね」
「人気出ないね」
「注目されないわね」
「どうしても」
「日本でもそうで他の国々でもね」 
 先生は言いました。
「もうそれはね」
「仕方ないね」
「芸能界だとね」
「美人でスタイルがいいなら」
「グラビアのお仕事あるわね」
「そうだよ、男の人もそうだし」
 性別に関係なくです。
「もうそこは受け入れるしかないんだろうね」
「女の人は特にね」
「しかも春琴さん美人だし」
「尚且つスタイルもいい」
「しかも笑顔がいいし」
「グラビアのお仕事が来て」
 そのお話がというのです。
「それが注目されるのもね」
「当然だね」
「そうなるわね」
「そちらも」
「そうだよ」
 こう皆に言うのでした、そのうえで先生は落語のことも他の学問のこともさらに学んでいくのでした。








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