『ドリトル先生と桜島』




               第八幕  宇宙への夢

 種子島宇宙開発センターに入れてもらってです、先生は感激を隠せないといった面持ちで言いました。
「鹿児島に行くことになってね」
「それでなんだね」
「先生絶対にここに来たかったのね」
「この宇宙開発センターに」
「そうだよ」
 まさにとです、先生は皆に満面の笑顔で答えました。
「本当にね」
「そうだよね」
「先生宇宙のことも学んでいて」
「論文も書いたことあるしね」
「宇宙にも興味があるね」
「そうよね」
「あるよ」
 先生ははっきりと答えました。
「僕はね」
「そうだね」
「だからだね」
「ここに来られてよかった」
「そうなんだね」
「鹿児島の地理を学んで」
 地質を調査してというのです。
「歴史や文化を学んでね」
「そのうえでだよね」
「科学も学ぶ」
「宇宙についても」
「だからだね」
「このセンターにも来たかったんだね」
「見学を申し出てね」
 そうしてというのです。
「認めてもらってね」
「嬉しかったんだね」
「先生も」
「そうだったんだね」
「そうだよ、では今からね」
 まさにと言う先生でした。
「見学しよう」
「それじゃあね」
「今からそうしよう」
「是非ね」 
 皆も是非にと応えてでした。
 そのうえで見学させてもらいました、そうしてです。
 その中で、です。皆は日本の宇宙開発の歴史のことを学んで思いました。
「失敗多いね」
「何かとね」
「もうしょっちゅう失敗して」
「躓いているね」
「順調に進んでいるかというと」
「それはね」
「そうだよ、宇宙開発は失敗の歴史だよ」
 先生はその通りだと答えました。
「まさにね」
「ううん、そうなんだ」
「宇宙開発の歴史ってそうなんだ」
「失敗の歴史なの」
「そうなんだ」
「そうだよ、いつも多くの予算と技術を投じて」
 そうしてというのです。
「そのうえでね」
「進歩していっているんだ」
「宇宙開発は」
「日本だけじゃなくて」
「他の国でもなんだ」
「人工衛星を飛ばすことでもね」
 このことでもというのです。
「やっぱりね」
「多くの失敗があった」
「そうだったんだ」
「そのことでも」
「そうなんだ、どの国もね」
 それこそというのです。
「どれだけ失敗したか、犠牲だってね」
「ああ、あったね」
「ソ連で最初に宇宙に跳び立ったのは犬だったわ」
「ライカ犬だったね」
「とても優しくて大人しい」
「そう、あの犬もね」
 そのライカ犬もというのです。
「とても尊いね」
「犠牲だったね」
「宇宙開発の中で」
「はじめて宇宙に飛び立ったけれど」
「宇宙で消えたね」
「そうなったね、またアポロ一号もスペースシャトルも墜落しているし」
 こうしたことのお話もするのでした。
「本当にね」
「宇宙開発には失敗もあって」
「多くの技術と予算を使って」
「犠牲も払った」
「そうしたものだね」
「だから止めようって言う人もいるよ」
 世の中にはというのです。
「けれど宇宙にはね」
「希望があるね」
「それも無限の」
「そうだね」
「言うなら大航海時代の海だよ」 
 宇宙はというのです。
「まだ全くわかっていないけれど」
「そこには無限の可能性があって」
「希望が存在している」
「そうした場所だね」
「それが宇宙だね」
「大航海時代があったからこそ」
 それ故にというのです。
「世界のことが知られてね」
「そしてだよね」
「多くのものが得られたね」
「海を乗り越えて」
「この大航海時代も多くの技術と予算を投じてね」
 そうしてというのです。
「多くの犠牲を払ったね」
「海が荒れるとね」
「津波や台風が起こったらね」
「当時の船はすぐに沈んだし」
「遭難しても危険だし」
「何もわかっていない場所なら」
 皆も言います。
「もうそれで終わりだったね」
「大海原の真ん中で」
「全く何もわかっていない場所で迷って」
「そうなって」
「そうだよ、食べものがなくなったら」
 大海原のど真ん中でというのです。
「もうね」
「終わりだったしね」
「こうしたことでどれだけの人が死んだか」
「壊血病とかもあったし」
「大変だったね」
「けれど多くのものが得られたね」
 大航海時代に海を踏破してというのです。
「これはバイキングも然りだよ」
「未知の欧州に出て」
「海や川を越えて」
「欧州各地を巡って」
「その場所を知って」
「沢山のものを得たね」
「大航海時代もバイキングも侵略だったにしても」
 そう言っていい行為だったとしてもというのです。
「やっぱりね」
「それがあってこそだね」
「欧州は発展したね」
「そうなったね」
「そうなったことは事実だよ」
 紛れもなくというのです。
「本当にね」
「そうだよね」
「大海原を踏破したからこそ」
「何もわかっていない場所に」
「そうしたからこそ」
「それが出来たんだ」
 まさにというのです。
「だから人類はね」
「宇宙もだね」
「踏破すべきだね」
「バイキングや大航海時代の様に」
「どれだけ失敗しても」
「技術や予算を使っても」
「駄目だ無理だだけでは何にもならないよ」
 それこそというのです。
「駄目ならどうするか、無理ならどうするか」
「出来るか」
「そう考えて」
「努力することだね」
「前に進むことね」
「そうだよ、確かに宇宙のことは何もわかっていないよ」
 まだというのです。
「人間は学びはじめたばかりだよ、けれどね」
「学んでいって」
「知っていって」
「宇宙開発も進めていって」
「そのうえで」
「そう、何時かね」 
 それこそというのです。
「アニメの様に月や火星、木星に移住して」
「そしてだね」
「そのうえでだね」
「さらにだね」
「先に進むんだね」
「太陽系からも出て」
 そうなってというのです。
「さらにだよ」
「先にだね」
「進むべきだね」
「さらに先へ」
「この広い銀河系の中を」
「そうしていくべきだね」
「そうだよ、ただ宇宙人との出会いはね」 
 これはといいますと。
「それがいいことでも悪いことでもね」
「どっちでもなんだ」
「それでもなの」
「滅多にないことだろうね」
 そうだというのです。
「これはね」
「よく宇宙人との戦争とかね」
「侵略とかのお話あるのね」
「友好的なものもあるけれど」
「そうしたお話は多いわ」
「けれど宇宙の多くの星で生命が生きられる様な星は僅かでね」
 そうであってというのです。
「そこから知的生命体が生まれるとなると」
「人間みたいな」
「それはなんだ」
「滅多にないんだ」
「そうなのね」
「そう、その僅かな中の」
 それこそというのです。
「さらにだよ」
「僅かなんだ」
「だからなのね」
「宇宙人と出会う可能性は少ないんだ」
「これからも」
「そうみたいだよ、かつて地球は恐竜が存在していたけれど」
 この生きものがというのです。
「文明は築かなかったのね」
「それには至らなかったね」
「長い間地球で繁栄したけれど」
「それでも」
「その前のカンブリア紀等でもね」 
 この時代でもというのです。
「色々な命が生まれて栄えたけれど」
「それでもだったね」
「知的生命体は誕生しなかったね」
「人間みたいな」
「それで文明は誕生しなかったわ」
「ずっとね」
「本当に生命が誕生するだけでね」 
 このことだけでもというのです。
「かなり珍しいことで」
「銀河系でも何千億って星があるけれど」
「それでもだね」
「その何千億の中で」
「生命が存在している星はっていうと」
「本当に僅かで」 
 それでというのです。
「そこからだよ」
「知的生命体が誕生して」
「そしてだね」
「文明まで至るか」
「それはだね」
「余計にだよ」
 尚更というのです。
「僅かでね」
「じゃあこの地球にもだね」
「人間がいて文明を築いていることも」
「奇跡的なことなのね」
「そうしたことなんだ」
「そうだよ、銀河系の星の中でどれだけ知的生命体が文明を築いているか」
 このことはといいますと。
「本当にどれだけかな」
「ううん、それじゃあね」
「宇宙人との遭遇もあっても」
「可能性はあっても」
「それでもだね」
「その時のことも考えないといけないけれど」
 それでもというのです。
「それは滅多にないことだとね」
「考えて」
「そのうえで開発を進めていく」
「そうすべきだね」
「そうだよ、ただ大事なことは」
 宇宙開発にあたってというのです。
「諦めないことだよ」
「幾ら失敗しても」
「それで足踏みしても」
「それでもだね」
「努力していくことだね」
「それが大事だよ、全く以てね」
 それこそというのです。
「諦めたらそれで終わりだよ」
「学問はそうだっていうけれど」
 トートーは先生のお話を聞いて言いました。
「宇宙開発は特にだね」
「そういうものなのね」
 ポリネシアも言いました。
「諦めたら駄目ね」
「幾ら失敗してもそうしていって」
 ダブダブはポリネシアに続きました。
「お金と技術を使っていって」
「成功していくことだね」
「失敗を糧にして」
 チープサイドの家族もお話します。
「沢山の失敗を糧として」
「成功すればいいね」
「一歩後退しても二歩進む」
 ホワイティも言いました。
「そうしたらいいね」
「一歩後退が失敗だったら」
 チーチーも言います。
「その糧で二歩進んだらいいね」
「例え二歩分の失敗をしてもね」
「それなら三歩進む糧にすればいいんだよ」
 オシツオサレツは二つの頭で言いました。
「それならね」
「どんな失敗をしてもいいね」
「失敗から学ぶことが大事であって」
 ジップも今言いました。
「失敗ばかりであることを駄目だって思うことはないね」
「ましてや宇宙開発なんて未知の世界に進むことだから」
 それでと言うガブガブでした。
「失敗も当然だよ」
「それで駄目だ無理だ止めようなんか言ったら」
 老馬も言います。
「人間は無限の夢を捨てることになるよ」
「夢を捨てるなんて絶対にしたら駄目だよ」
 先生は言いました。
「学問はその夢を手に入れる為のものでもあるからね」
「そうだよね」
「それならね」
「是非共ね」
「宇宙開発はしていかないと」
「失敗しても学んでいって」
「そのうえで」
「やっていくべきだよ」
 先生は言うのでした、そしてです。
 ロケットのことも学びます、見れば日本のロケットもです。
「凄いね」
「こんなに色々な技術が使われているんだ」
「最先端の技術が」
「そうなっているんだ」
「ロケットは最先端技術の塊だよ」
 先生はここでも皆に言いました。
「まさにね」
「そうだよね」
「無限の可能性が秘められた」
「そうしたものだね」
「そうした意味でも夢があるんだ」
 宇宙開発はというのです。
「本当にね」
「そう思うと素晴らしいね」
「宇宙開発は」
「そしてロケットは」
「そうだよ、あらゆる最先端技術が集められて」
 そうなっていてというのです。
「夢を適えるものだよ」
「人類の夢を」
「そうしてくれるものだね」
「それじゃあね」
「これからもね」
「開発していくべきだよ」
 こうお話して今度はあらためてです。
 ロケットの歴史も教えてもらいました、するとでした。
「そうそう、ドイツ軍のヴイロケットもね」
「一号も二号も」
「後で宇宙開発につながってるんだよね」
「フォン=ブラウン博士が開発したからね」
「そう、あの博士の功績は大きくて」
 先生はフォン=ブラウン博士のお話についても言いました。
「否定出来ないよ」
「確かにあのロケットはイギリスを攻撃したよ」
「僕達が生まれた国を」
「物凄く怖い兵器だったわ」
「けれどそのロケットがね」
「後になってね」
「宇宙開発につながるんだ、博士はドイツからアメリカに行って」
 そうしてというのです。
「そしてね」
「そのうえでだよね」
「アメリカでも開発を続けて」
「そうしてだね」
「遂に人類を月に送った」
「それを適えたね」
「ロケットにのみ情熱を注いでいて」
 そしてというのです。
「ナチスに関わったこともね」
「その為だったというけれど」
「そのことで批判を受けているけれど」
「それでもだね」
「人類が宇宙に行く大きな貢献を果たした」
 このことはというのです。
「紛れもない事実だよ」
「ナチスは酷いことをしたけれどね」
「何かと」
「けれどそのナチスに協力しても」
「あの人には功績もあるね」
「ことの善悪はね」 
 先生は皆にお話しました。
「天秤で測るとね」
「あっ、ギリシア神話だね」
「あの神話の女神様だね」
「星座の天秤座の」
「あの女神様の天秤だね」
「そう、あの天秤でもそうだしね」
 ことの善悪を測るものだというのです。
「エジプトの神々でもそうだね」
「人が死んだ時にね」
「ことの善悪測るね」
「それで悪い方に傾いたら心臓を食べられたりするね」
「あの国の神話だと」
「そう、人はいいこともすれば悪いこともするね」
 その両方を行うというのです。
「どうしても」
「あらゆる生きものがそうだね」
「いいことをすれば悪いこともするわ」
「その両方をね」
「どうしても」
「だからことの善悪が測られるんだ」
 そうなるというのです。
「ギリシア神話やエジプト神話ではね」
「それでフォン=ブラウン博士もだね」
「ことの善悪が測れるべきで」
「その善悪を測ると」
「どうなるか」
「ナチスに協力して兵器を開発したけれど」
 イギリスに沢山撃ち込まれたそれをです。
「人類を宇宙に送った」
「そして宇宙開発に多大な貢献を果たした」
「そのことは事実だから」
「それでだね」
「僕は善に傾いていると思うよ」 
 フォン=ブラウン博士はというのです。
「今の宇宙開発もあの人がいなかったらどうなっていたか」
「そう考えると」
「フォン=ブラウン博士の功績は大きいわね」
「実際にそうだね」
「人類に凄い貢献をしてくれたわね」
「そうだよ、だから日本のとあるアニメではね」
 先生は笑顔でお話しました。
「月にこの人の名前を冠した都市があったりするよ」
「ああ、あのシリーズだね」
「人型のロボットに乗って戦う」
「コロニーが落とされたりもして」
「リアルに戦争が行われている」
「あの世界だね」
「最初は機動戦士からはじまって」
 そうしてというのです。
「その機動戦士の頃だったかな」
「人類を月に送った人だから」
「それで月の都市に名前が冠されるんだ」
「そうなっていたんだね」
「そうだよ、しかしあのシリーズは面白いよ」
 先生はそのアニメ自体のお話もしました。
「凄くね」
「そうだよね」
「物凄く長く続いているシリーズだけれど」
「作品世界も変わったrしてね」
「設定とかも」
「面白い作品が多いよね」
「中にはどうも、っていうものもあったけれど」
「面白いね、だから今の作品も観ているしね」
 現在進行形でというのです。
「これからもね」
「うん、観ていきましょう」
「最後までね」
「そうしていこう」 
 笑顔でお話をしながらです。
 先生は皆と一緒にセンターの中を見学させてもらいました、そうして実に多くのものを学ばせてもらいました。
 その後で、です。先生は旅館に戻って皆にお話しました。
「鉄砲に宇宙開発に」
「色々学べたね」
「凄くね」
「それが出来たね」
「うん、だからね」  
 それでというのです。
「今も凄く満足しているよ」
「僕達もだよ」
「凄く色々な物事が学べたね」
「歴史に軍事に科学」
「宇宙開発と」
「この島に来てよかったよ」
 こうも言う先生でした。
「本当にね」
「全くだね」
「それじゃあね」
「その満足している気持ちでね」
「種子島から鹿児島に戻るのね」
「明日そうするんだね」
「そうするよ、それで今からお風呂に入って」
 旅館のそちらにというのです。
「それでね」
「お料理も楽しむね」
「そちらも」
「そうするね」
「そうだよ、こちらも楽しもうね」
 是非にと言うのでした。
「お酒もね」
「うん、いいね」
「それじゃあね」
「お風呂にも入って」
「飲んで食べましょう」
 こうしたお話もしてでした。
 皆でお風呂に入ってから旅館の晩ご飯を頂きました、お刺身を中心とした夕食でしたが先生はお刺身を食べて言いました。
「やっぱり海だとね」
「鹿児島でもだよね」
「この種子島でも」
「お刺身よね」
「日本だと」
「そうだよ、お刺身とね」
 そうしてというのです。
「他の幸も使ってね」
「網焼きとかお吸いものとか」
「和えものに天麩羅」
「酢のものだね」
「今も全部あるけれど」
「この献立がだよ」  
 まさにというのです。
「最高だね」
「本当にそうだね」
「じゃあ今夜はね」
「このご馳走を楽しみましょう」
「それにお酒もね」
「そうしようね」
 笑顔で言ってでした。
 皆で夕食を楽しみますがそこで、です。
 先生はお刺身のそのお魚を見て言いました。見ればそれは鯛ですが。
「種子島から来たに行くと豊後水道だね」
「あっ、瀬戸内海からね」
「そっちに行くわね」
「瀬戸内海って鯛もいいから」
「その鯛かしら」
「そうかもね、それでね」
 その鯛を食べながら言うのでした。
「美味しいね」
「そうだね」
「この鯛凄く美味しいよ」
「舟に乗せてるけれど」
「とてもね」
「いいね、満足出来るよ」 
 笑顔で言ってでした。
 皆で食べていきます、お酒も楽しんでこの夜はとても満足して寝ることが出来ました。そうしてなのでした。
 朝になると船に乗って本土に戻りますが。
「よかったね」
「うん、凄くね」
「種子島もよかったわ」
「本当にね」
「行きたかったし行ってね」
 それが出来てというのです。
「僕は満足しているよ、そして今日はね」
「うん、この足でだよね」
「鹿屋に行くのよね」
「そうするんだよね」
「そうだよ、あちらに行ってね」
 そうしてというのです。
「今度は自衛隊と海軍のことを学ぶよ」
「そうするね」
「今日は」
「そうするわね」
「あちらは海上自衛隊の基地があって」 
 鹿屋にはというのです。
「そして海軍の特攻隊の資料館もあるからね」
「それでよね」
「先生はあちらにも行きたかったね」
「前から」
「そう言ってたね」
「そう、だからね」
 それでというのです。
「こちらも楽しみだよ」
「そうだね」
「それじゃあね」
「今日は鹿屋に行きましょう」
「そうしましょう」
「皆でね」
 こうお話してでした。
 船が港に着いたのでそこに降りるとです、動物の皆はかなりご高齢のお爺さんお婆さんがお話している言葉を聞いてです。
 首を傾げました、それで言うのでした。
「あの、何か」
「日本語なのかな」
「あの言葉は」
「鹿児島の言葉?」
「そうなのかな」
「そんな感じはするけれど」
「何か違うんじゃないかな」
 こう言うのでした。
「何を言ってるかわからないよ」
「鹿児島の言葉も訛りが凄くてね」
「わかりにくいけれど」
「あの言葉何?」
「一体何かしら」
「あれが昔の鹿児島の言葉だよ」
 先生は皆に微笑んでお話しました。
「そのおいこらとかがあったね」
「あの西郷さん達がお話してた」
「その鹿児島の言葉なの」
「昔の」
「そうなのね」
「今じゃ殆ど喋られる人がいなくなったけれど」
 それでもというのです。
「かなりご高齢の人はね」
「まだ喋られるんだ」
「ああして」
「そうなんだ」
「うん、鹿児島弁は独特で」
 それでというのです。
「他の地域の人にはわかりにくいね」
「今の鹿児島の言葉もね」
「聞いていてもね」
「訛が凄くて」
「それでね」
「そうだけれど昔の鹿児島弁は」 
 そのお爺さんやお婆さんを見てお話します。
「ああした風だったんだ」
「ううんと、本当にね」
「わからないね」
「何を喋っているのか」
「全くね」
「他の地域の人が聞くとわからない」 
 全くというのです。
「その為にああした風になっているしね」
「自分達でわかる様になんだ」
「お話しても」
「その為の言葉なんだ」
「そう、例えば僕達が日本語に全く無知でね」
 今暮らしているお国でというのです。
「日本の人達があれこれお話していてもわからないね」
「うん、全くね」
「どうしても」
「それでもね」
「それと同じでね」
 それでというのです。
「昔の鹿児島の人達はね」
「敢えてだね」
「わからない言葉を作って」
「それで喋っていたんだ」
「だから他の場所の人達が来ても」 
 鹿児島にというのです。
「全くわからない様にしたんだ」
「何をお話しているか」
「そうしていたんだ」
「そのうえで秘密を守っていた」
「そうなのね」
「そうなんだ、薩摩藩の事情があって」
 それでというのです。
「そうした言葉で喋ってたんだ」
「事情?」
「事情っていうと」
「薩摩藩のそれって」
「前にお話していたね、薩摩藩は密貿易をしていたって」
 このことをお話するのでした。
「そうだったね」
「ああ、清とかオランダと」
「それをやっていて」
「それで利益を得ていたんだったね」
「薩摩藩は」
「何しろ八十万近い石高を定められたのに」 
 豊臣秀吉さんその後の幕府にです。
「実際は三十八万石位だよ」
「半分以下でね」
「その格式だって定められたら」
「その格式の行動をしないといけないし」
「お金もかかるね」
「しかもお侍が多かったし」 
 薩摩藩はというのです。
「五万もいたから」
「確か実際に百万石以上ある加賀藩で二万三千位」
「薩摩藩の半分以下だね」
「百万石以上で」
「そうなっていたわね」
「だから薩摩藩はね」
 この藩はというのです。
「お金に困っていたんだ」
「そこに幕府から何かと言われていたんだよね」
「普請を命じられたり」
「それで尚更だね」
「お金に困っていたね」
「愛知県と岐阜県の治水なんかもね」
 こちらもというのです。
「命じられて大変な人手とお金をかけて」
「やったんだ」
「そんなこともあったんだ」
「薩摩藩には」
「そうなんだ、密貿易に奄美大島産のお砂糖を売って」
 そうしてというのです。
「お金を手に入れていたけれど」
「その密貿易だね」
「若し幕府に見付かったらね」
「大変だよね」
「そして何かと普請とかを命じられたのはね」
 それはどうしてかといいますと。
「薩摩藩は幕府に敵視されていたんだ」
「そうだったんだ」
「それで普請とか言われて」
「それでなのね」
「お金や人手を使わさせられて」
 そうしてというのです。
「力を消耗させられていたよ、熊本城はね」 
 熊本県のこのお城はといいますと。
「薩摩藩への軍事基地でもあったんだ」
「熊本を治める拠点で」
「それでなんだ」
「軍事基地でもあったんだ」
「薩摩藩に対する」
「そうだよ、姫路城が豊臣家の大坂城への備えで西国への軍事基地であった様に」
 その様にというのです。
「熊本城はね」
「薩摩藩への備えだったんだ」
「軍事基地だったんだね」
「この藩への」
「それだけ幕府は薩摩藩を敵視していたんだ」
 そうだったというのです。
「長州藩や仙台藩と共にね」
「幕府の藩の中にあっても」
「薩摩藩はそうみなされていたのね」
「つまり幕府の仮想敵国だね」
「要するに」
「そうだよ、文字通りそうでね」 
 幕府から見てというのです。
「凄くね」
「敵視されていて」
「そうであって」
「それでだね」
「幕府から隠密もよく来たんだ」
 そうだったというのです。
「内情を調べる為にね」
「あっ、その隠密を見破る」
「その為にもなんだ」
「薩摩藩は言葉をわかりにくくした」
「そうだったんだ」
「そう、聞いてもわからない様にして」
 そうしてというのです。
「若し潜り込んできてもね」
「言葉でわかるね」
「そして若しも幕府の隠密なら」
「見破られたら」
「示現流や直新陰流の錆となったよ」
 そうなったというのです。
「まさにね」
「怖いね」
「まさに時代劇だね」
「時代劇のお話だね」
「隠密に抹殺とか」
「本当に」
「そう、密貿易を暴かれたりとか幕府に内情を知られたり隠密を見破る為にもね」
「薩摩の言葉はだね」
「ああして難しいものにして」
「聞いてもわからない」
「そうしていたんだね」
「そうだったんだ」
 まさにというのです。
「ああしてね」
「成程ね」
「よくわかったよ」
「そうした事情があったんだ」
「昔の鹿児島弁には」
「そうした訳があったんだね」
「そうだよ」 
 先生は皆に言いました。
「実はね」
「ううん、日本語がわかってもわからない言葉がある」
 ジップは思いました。
「そうなんだね」
「方言もわかりにくいものがあるしね」
 チーチーも言いました。
「どの国でも」
「イギリスでもコックニーはわかりにくいよ」
 ガブガブはこの言葉を思い出しました。
「英語がわかってもね」
「そういえば東北の言葉の訛も強いね」
 ホワイティはそちらに行った時を思い出しました。
「仙台も山形も」
「津軽の言葉が特にらしいね」
 老馬はこの言葉がと言いました。
「青森の」
「それで鹿児島の言葉もね」
「今も結構以上な訛だけれど」
 オシツオサレツは二つの頭で言いました。
「昔の鹿児島の言葉は」
「わからない様にしたんだね」
「それでだね」
「今私達が聞いてもわからないのね」
 チープサイドの家族は思いました。
「日本語なのね」
「僕達も日本語がわかるのに」
「いや、日本語の方言のバリエーションって凄いけれど」 
 ポリネシアはしみじみと思い言いました。
「そうした言葉もあるのね」
「いや、聞いて驚いたわ」
 ダブダブは実際驚いています。
「凄くね」
「特に僕達関西にいて」
 トートーは今暮らしている地域のことを思いました。
「そっちの言葉に慣れているしね」
「うん、日本語の方言はそれぞれ違っていてね」
「あえてわからない様に作った言葉もあったんだ」
「昔の鹿児島弁みたいに」
「そうであって」
「そうだったのね」
「そうだよ、わからない言葉は」
 本当にと言う先生でした。
「あるんだよ」
「その国の言葉を読み書き出来て喋れて」
「それでもだね」
「方言は色々あって」
「わからない言葉もあるんだ」
「そうなんだ、ちなみにね」  
 先生はさらに言いました。
「幕末京都で薩摩藩の人達の話はわからなくて」
「機密は保持出来たんだ」
「そのお陰で」
「そうだったのね」
「その意味はあったみたいだよ」
 実際にというのです。
「長州藩や土佐藩の人達の言葉とも違うしね」
「それ大きいね」
「ことを為すにあたって」
「とてもね」
 こう皆にお話します。
「よかったみたいだよ」
「そう思うと役に立ったんだね」
「昔の薩摩弁は」
「そうだね」
「そうだね、しかし僕もこの耳でははじめて聞いたけれど」
 それでもともです、先生は言いました。
「凄い言葉だね」
「そうだね」
「何を言ってる全くわからなくて」
「日本語とさえ思えないわ」
「そんな言葉だよ」
「だから戦争中にも使われたよ」
 この時もというのです。
「第二次世界大戦の時にね」
「ああ、あの戦争でもなんだ」
「イギリスが随分日本にもドイツもやられた戦争ね」
「イギリスは何とか勝ったけれどね」
「日本にもね」
「あの戦争で日本はアメリカ軍に情報を解読されていることがわかって」
 それでというのです。
「咄嗟に昔の薩摩弁に代えたんだ」
「そんなこともあったんだ」
「情報を解読されているから」
「それで昔の薩摩弁に代えて」
「対処したんだ」
「そうしたらアメリカ軍もわからなくて」
 それでというのです。
「やっと昔の薩摩弁だったわかった時は」
「その時は?」
「どうなったの?」
「一体」
「作戦が終わっていたんだ」
 昔の薩摩弁でやり取りしていたそれがというのです。
「そんなことがあったんだ」
「それは凄いね」
「戦争の暗号にも使われるなんて」
「物凄いね」
「そうしたお話もある位の言葉で」
 それでというのです。
「実際に聞くとね」
「物凄いね」
「本当にね」
「何が何かわからないよ」
「日本語かどうかさえもね」
「そうだね、もう使える人は殆どいないけれど」
 それでもと言う先生でした。
「何らかの形で記録してね」
「残しておきたいね」
「方言も文化だしね」
「貴重な言語だから」
「そうしていくべきだね」
 こうお話してでした。
 先生は鹿児島に戻りました、そして今度は鹿屋に向かうのでした。








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