『ドリトル先生と桜島 第六幕』




                第七幕  種子島に来て

 先生は皆と一緒に船に乗りました、皆は鹿児島の海を観ながら先生に尋ねました。
「今度は何処に行くの?」
「船に乗ったけれど」
「まだ鹿児島県にいるよね」
「そうだよね」
「うん、種子島に行くんだ」
 先生は皆に笑顔で答えました。
「あの島にね」
「あっ、宇宙開発で有名な」
「それで鉄砲も伝来した」
「あの島だね」
「歴史的にも重要で」
「現代の宇宙開発でも重要な場所だね」
「そうだよ、非常に面白い島でね」
 種子島はというのです。
「一度行ってみたいと思っていたし」
「これを機会にだね」
「種子島に行って」
「鉄砲と宇宙開発のことを学ぶんだね」
「その両方を」
「そうだよ」
 先生は皆に笑顔で答えました。
「これからね」
「それじゃあね」
「是非そうしよう」
「今から種子島に行って」
「鉄砲と宇宙開発を学ぼう」
 皆も先生に笑顔で応えてでした。
 そのうえで種子島に向かいました、その途中です。
 先生は船の中で皆と一緒にミルクティーを飲みながらお話しました。
「鉄砲が戦国時代を変えたね」
「そうそう、あっという間に日本全土に普及して」
「新しい武器になって」
「戦の在り方も変わって」
「物凄いことになったね」
「織田信長さんが有名だね」
 鉄砲と言えばというのです。
「鉄砲を沢山揃えたね」
「三千丁もだね」
「長篠の戦いで使って」
「武田家に勝ったんだったね」
「そうだよ、ただあの戦いは鉄砲だけで勝ったんじゃないんだ」
 先生は皆にお話しました。
「他にも色々な条件があったんだ」
「そうだったんだ」
「鉄砲で勝ったと思ったら」
「それが違ったんだ」
「うん、まずは武田家の倍以上の戦力を用意してね」
 まずはそうしてというのです。
「別動隊を出して武田家の後方を脅かして」
「そうもしたんだ」
「倍以上の戦力を用意したうえで」
「そうしたこともしたんだ」
「それで長篠で戦わざるを得なくさせたんだ」 
 武田家の軍勢がというのです。
「そして戦場では迎え撃つ陣を整えていたんだ」
「用意周到だね」
「倍以上の戦力を揃えただけでも大きいのに」
「別動隊を出して後ろを脅かして」
「武田家を戦わざるを得なくさせてでなんて」
「川を前にして」
 先生はその具体的な陣のお話もしました。
「その後ろに柵を作ったんだ」
「それでその後ろから鉄砲を撃ったんだ」
「ただ鉄砲を使うだけでなく」
「そうもしてなんだ」
「信長さんは戦ったんだ」
「武田家も何とか勝とうとね」
 戦うからにはです。
「半分以下の戦力で戦わざるを得ないなら」
「そのことがわかっていたらね」
「武田家も必死だよね」
「自分達の劣勢は明らかだから」
「武田家の総大将勝頼さんも迷ったんだ」
 この人もというのです。
「織田家の強さもわかっていたしね」
「愚かな人じゃなかったんだよね」
「よく悪く言われてるけれど」
「その実はね」
「結構優秀な人だったのよね」
「そうだよ、事実徳川家康さんには一度も負けていないよ」
 この人にはというのです。
「長篠の後も滅びるまでずっとね」
「家康さんには勝っていたんだね」
「家康さんも強かったけれど」
「その家康さんにもなんだ」
「そうだよ、家康さんは武田家とその家臣だった真田家にはね」
 この二つのお家にはというのです。
「結局勝ったことがないんだ」
「大坂の陣でもね」
「あれは負けてるしね」
「冬の陣でも夏の陣でも」
「どちらでもね」
「夏の陣の時は危なかったしね」
 真田幸村さんの最後の攻撃の前にです。
「三方ヶ原では散々に負けてね」
「あの戦い有名よね」
「家康さんが惨敗した戦いだって」
「そうね」
「そう、そしてね」
 そのうえでというのです。
「長篠の戦いの後でもね」
「勝ってないんだ」
「武田家には」
「その戦いでかなり弱まったのに」
「そうだったんだ、それだけ強かったんだ」
 武田家はというのです。
「勝頼さんもね」
「そう思うと侮れないね」
「勝頼さんも強かった」
「決して愚かではなかった」
「そうした人だったのね」
「そうだよ、だから劣勢を察して撤退も考えたけれど」 
 織田家は自分達の倍以上の戦力を擁していると知ってです。
「そこで後ろを攻められて」
「啄木鳥だね」
「叩いたところから出た虫を食べる」
「その要領だね」
「川中島でお父さんの信玄さんがしようとした戦術をね」
 上杉謙信さんに対してというのです。
「時と場所は違うけれどね」
「信長さんもしたんだね」
「長篠の戦いにおいて」
「そうしたのね」
「それで勝頼さんも戦わざるを得なくなって」
 そうなってというのです。
「それならもう一気に敵軍をね」
「叩く」
「その布陣を敷いたんだね」
「けれどその武田家に対して」
「織田家、つまり信長さんは」
「三千丁の鉄砲だけでなくね」
 これに加えてというのです。
「川を前にして」
「それで武田家の突撃を防ぐ」
「川があると障害物になるから」
「まずそれがあるね」
「そこにさらに柵も造ったからね」
 このこともあってというのです。
「木のね」
「二重だね」
「二重の守りだね」
「まさに」
「そうだよ、そのうえで鉄砲を使って」 
 そうしてというのです。
「弓や槍も使ったんだ」
「ああ、鉄砲だけじゃないんだ」
「そうした武器も使ったんだ」
「鉄砲だけじゃなくて」
「そうだよ、そしてね」 
 それでというのです。
「織田家の圧勝だと思うね」
「あれっ、違うの?」
「長篠の戦いって織田家の圧勝でしょ」
「それで武田家は惨敗だよね」
「それがね、確かに武田家は多くの名立たる家臣の人達を失って」 
 そうなってというのです。
「足軽、兵隊の人達もそうなったけれど」
「織田家もなんだ」
「圧勝じゃなかったんだ」
「その実は」
「有名な家臣の人達は死んでないけれど」
 それでもというのです。
「結構な損害が出ているんだ」
「へえ、そうなんだ」
「倍以上の戦力で川と柵で守りを固めても」
「鉄砲も用意して」
「弓や槍を使っても」
「そう、やはり武田家も強くて必死だったからね」
 その為にというのです。
「損害も大きかったんだ」
「何か色々違うね」
「言われていることとは」
「全くね」
「史実を調べるとね」
 そうすると、というのです。
「色々面白いことがわかるんだ」
「先生よくそう言うけれどね」
「長篠の戦いもそうなんだね」
「織田家の圧勝でなくて」
「勝っても損害も大きかったんだ」
「そうだよ、鉄砲は確かに役に立ったけれど」
 それでもというのです。
「それだけじゃなかったんだ」
「鉄砲だけかっていうと」
 ガブガブは考えるお顔で言いました。
「違うなんてね」
「戦争は数だって言うけれどね」 
 ホワイティはこの言葉を出しました。
「この戦いでもだったんだね」
「相手を戦わざるを得なくする」
「別動隊を使って後ろを攻めて」 
 チープサイドの家族もお話します。
「そうして決戦を挑む」
「相手に勝つ為にね」
「しかも川を挟んでね」
 トートーは思いながら言いました。
「柵まで使ってなんて」
「信長さんは用意周到ね」
 しみじみとです、ポリネシアは思いました。
「ただ革新的なだけじゃなかったのね」
「色々慎重な人だったんだね」 
 ジップもしみじみと思いました。
「せっかちかと思ったら」
「勝利の為の準備に余念がなかったのね」
 ダブダブも言いました。
「信長さんって人は」
「そういえば信長さんのイメージも」
 チーチーは信長さんのことを言うのでした。
「結構実際と違うみたいだしね」
「せっかちで怒りっぽくてね」
「残酷な一面もあるってね」
 オシツオサレツは二つの頭で言いました。
「そんなイメージだよね」
「信長さんって」
「けれど実はどうか」
 老馬は言いました。
「かなり違うみたいだね」
「うん、信長さんは実は我慢強い人だったよ」
 短気ではなかったというのです。
「それで必要な時以外血を流さなかったし」
「残酷でもなかったんだね」
「その実は」
「よく言われているけれど」
「無駄な殺生はしなくて」
 それでというのです。
「人々の為に善政を敷いていたしね」
「何か独裁者みたいでね」
「恐れられてたいたかというと」
「違ったんだ」
「悪い人は容赦せず罰してね」 
 そうしてというのです。
「年貢も重くなかったし産業も盛んにさせて」
「国を豊かにして」
「民の人達もなんだ」
「そういう風にしていたんだ」
「そうだよ、兵農分離でお百姓さんを兵隊にすることもしなかったし」
 それもなかったというのです。
「もうね」
「何かとだね」
「民にはいいお殿様だったんだ」
「信長さんは」
「だから慕われていたんだ」
 民衆の人達からはというのです。
「それこそ元服して政治をはじめたら」
「すぐになんだ」
「民衆の人達は信長さんを慕ったんだ」
「そうなったの」
「そうだよ」
 まさにというのです。
「秀吉さんの奥さんに優しいお手紙を送ったりね」
「それも意外だね」
「前にもお話してくれたと思うけれど」
「人を人と思わない人じゃなくて」
「思いやりのある人だったんだね」
「そうだよ、あとお酒を飲まなかったことがね」
 信長さんのこのこともお話するのでした。
「皆意外に思うね」
「甘いものが好きで」
「それで茶道も嗜んで」
「普及させたんだね」
「そうなんだ、そして信長さんを無神論というのは」
 それはといいますと。
「本当に間違いだからね」
「信長さんなりに神仏を信じていて」
「否定していなかった」
「そのことも大事だね」
「何か信長さんのイメージってね」
「これまでの物語と違うのよね」
「そしてお寺も焼いてないからね」
 その実はというのです。
「信長さんの実像は冷酷で残酷な独裁者じゃなくて」
「無神論者でもなくて」
「民衆のことを考えて思いやりもある」
「それで神仏も信じている」
「甘いものが好きな人だったんだね」
「そうだよ、だから人もついてきたんだ」
 そんな信長さんだからだというのです。
「僕も調べてわかったよ」
「とても魅力的な人だね」
「その実は」
「優しさもあって」
「そうなんだ、ただ鉄砲を沢山使ったことは事実で」 
 このことはというのです。
「その鉄砲を学ぶ為にもね」
「うん、種子島行きましょう」
「今からね」
「そうしようね」
「是非ね」
 笑顔でこうお話してでした。
 先生は皆と一緒に種子島に来ました、そこにも八条グループの旅館があってそこに入ってからでした。
 皆にです、こう言いました。
「種子島から帰ったらまた鹿児島のホテルに戻るよ」
「そうなってるんだね」
「ちゃんと」
「もう予定組んでるんだね」
「そうだよ、けれど種子島にいる間はね」
 皆にお話します。
「この旅館で寝泊まりするよ」
「わかったよ、それじゃあね」
「ここを拠点としてね」
「種子島では活動しよう」
「そうしましょう」
「是非ね」 
 こうお話してでした。
 皆で一緒に旅館から種子島の外に出ました、すると皆種子島の風景を見つつこんなことを言うのでした。
「ここも暑いね」
「景色は南国だね」
「むしろ鹿児島にいる時よりもそうかも」
「南国って感じがするよ」
「うん、ちょっと歩くと」
 先生も言いました。
「暑くなる位だね」
「うん、冬はいいね」
「過ごしやすいわ」
「けれど夏はね」
「色々大変かもね」
「鹿児島以上にね」
 そうかもと言うのでした。
「これは」
「そしてこの種子島で」
「宇宙開発をしていて」
「それに鉄砲が伝来したんだね」
「かつて」
「南蛮、ポルトガルの人達が来てね」
 この種子島にというのです。
「伝わったよ」
「火縄銃だね」
「それが伝来して」
「日本でも造られる様になったね」
「信長さんにしても」
「この島を治めていた種子島家は島津家の家臣だったから」
 それでというのです。
「鉄砲は島津家でも大々的に使われていたよ」
「織田家みたいにだね」
「多く使われていたのね」
「島津家でも」
「そうなんだ、それが島津家の強さの秘密の一つだったんだ」
 鉄砲を沢山使っていたこともというのです。
「これがね」
「ううん、何かね」
「凄い鉄砲の使い方してたんだろうね」
「島津家だと」
「凄かったよ、突撃しながらね」
 そうしつつというのです。
「撃ったり足止めに死を覚悟して座って撃つとかね」
「それも凄いね」
「命捨ててるね」
「流石島津家って言うか」
「聞いて驚くよ」
「そうした使い方をしていたんだ」
 島津家ではというのです。
「薩摩隼人の人達はね」
「成程ね」
「それは凄いね」
「勇敢どころじゃないよ」
「命懸けどころか命を捨ててるね」
「そう、命を最初から捨てて戦うのがね」
 それがというのです。
「薩摩の人達でね」
「薩摩隼人だね」
「あの人達だったんだね」
「鉄砲も使う時もね」
「そうしていたんだね」
「そうなんだ、その勇敢さがね」
 それがというのです。
「幕末そして維新でも生きていたんだ」
「だから西南戦争でもなんだ」
「物凄い勇敢だったそうだけれど」
「それでとんでもなく激しい戦いだったらしいけれど」
「そうした戦いになったんだね」
「西郷さんは担ぎ上げられた時皆に命を預けると言って」 
 そうしてというのです。
「最後の最後まで立派に戦ってね」
「それで死んだんだよね」
「怪我をして首を討ってもらって」
「そうしてだね」
「立派にね、大久保さんもずっと命を捨ててね」
 そのうえでというのです。
「討幕も維新の後の政治もね」
「幕末なんかそうだよね」
「もう綱渡りのやり取りばかりで」
「一歩間違えば大久保さん殺されてたとか」
「そんな場面多かったね」
「そこで腹を括っていたから」
 大久保さんもというのです。
「あそこまでのことが出来たんだよ」
「命を捨ててまでやる」
「最初からそうしてかかる」
「それは本当に凄いね」
「何と言っても」
「それが出来たのは」
 先生は皆にお話しました。
「やはり西郷さんも大久保さんもね」
「薩摩隼人だったんだね」
「最初から命を捨てている」
「そのうえで動く人だったから」
「命は最大の私だとも言えるからね」
 先生はこうした考えも言いました。
「日本いや仏教的になるのかな」
「ううん、ちょっと他の国にはないね」
「武士道の考え?」
「禅宗かしら」
「鎌倉武士の人達は禅宗の人多かったらしいけれど」
「武士道そして禅の考えかな」
 皆も先生と一緒に考えました。
「こうした考えって」
「そうかもね」
「禅宗の考えでね」
「武士道なのかな」
「その命という私を捨てて」
 それでというのです。
「ことを為すのならね」
「私がない」
「完全に公しかないから」
「だからことが為せる」
「そうかのかな」
「そうじゃないもってね」
 その様にというのです。
「考えているよ」
「ううん、難しいお話だね」
「先生日本に来てから日本の考えも学んできてね」
「そちらへの造詣も凄くなったけれど」
「それでもね」
「今はだね」
「よくわからないよ、命を最初から捨ててことにあたる」
 それはというのです。
「僕にはとても出来ないしね」
「全くだね」
「僕もだよ」
「私もよ」
「それはね」
「本当にね」
「そう、これはね」
 本当にとです、先生は真剣に考えてなのでした。
 皆にお話していきました、そしてそのお話の後で、です。
 皆で鉄砲の博物館である鉄砲館に生きました、するとです。
 そこには多くの火縄銃とそれが展示されている沢山のものがあってです。鉄砲伝来の歴史も書かれてていました。そうしてです。
 先生は皆と一緒にそれを見てこう言うのでした。
「火縄銃と言ってもね」
「色々あるわね」
「中には大砲みたいなのもあるね」
「凄いのあるね」
「こんなので撃たれたらね」
「只じゃ済まないね、ただね」
 ここで先生は皆にお話しました。
「火縄銃は命中率も威力もね」
「あっ、昔の銃だからね」
「それも数百年も前の」
「そうした銃だから」
「そうしたものは」
「そう、実はね」
 そうしたことはというのです。
「相当低かったんだ」
「やっぱりそうだね」
「命中率も威力もね」
「今の銃と比べると」
「かなり低いね」
「実は相当近くで撃たないとね」 
 相手をというのです。
「倒せなかったんだ、今の銃と比べると」
「今は何キロあっても命中して」
「敵をやっつけられるけれど」
「火縄銃はだね」
「とてもだね」
「そうだよ、まあ二百メートルが精々で」
 命中して倒せる距離はというのです。
「それに火薬も問題だったよ」
「火薬?」
「火薬もなんだ」
「そちらも問題だったんだ」
「そう、銃には火薬が必要だけれど」
 それでもというのです。
「当時は黒色火薬だったんだ」
「あっ、黒い煙が出る」
「使ったらね」
「その火薬だったんだ」
「火縄銃は」
「だから撃ったらね」 
 そうしたらというのです。
「黒い煙がだよ」
「鉄砲から出たんだ」
「それって結構厄介だよね」
「撃ってもばれるし」
「煙で視界が遮られてね」
「それで何千丁も使ったらね」
 戦の場で一度にというのです。
「もう煙がね」
「凄いことになってたね」
「それこそ」
「そうだよね」
「考えてみれば」
「それこそね」
「そう、だからね」
 それ故にというのです。
「その煙をどするか」
「戦ではそのことも大事だったんだ」
「鉄砲を撃って煙をどうするか」
「そのことも」
「そう、だからね」
 それでというのです。
「僕達が考えていた戦いとはね」
「また違うね」
「本当に」
「そこはね」
「全くだね」
「そうだよ、だからね」 
 それでというのです。
「調べて考えていくとね」
「色々わかるね」
「面白いことが」
「本当に」
「そうだよ、あと鉄砲は織田家や島津家以外の家でも沢山使っていて」
 先生はさらにお話しました。
「武田家も持っていてその凄さはわかっていたんだ」
「ちゃんとだね」
「鉄砲に負けたけれど」
「その武田家でもだったんだ」
「ちゃんと鉄砲隊を持っていてね」
 そうしてというのです。
「もっと多く欲しかったけれど」
「駄目だったんだ」
「それは出来なかったんだ」
「甲斐、山梨県は堺から遠いね」
 地理的なお話をここでしました。
「鉄砲を多く変えた、あと鉄砲鍛冶の人達がいる場所からも遠くて」
「ああ、遠いとなるとね」
「どうしても買いにくいね」
「それだけで」
「しかもね」 
 このことに加えてというのです。
「堺とかそうした場所を信長さんが押さえて」
「ああ、鉄砲を独占したんだ」
「信長さんが」
「買い占めたんだね」
「それで欲しくてもね」
 武田家がというのです。
「手に入らなかったんだ」
「そうした状況だったのね」
「成程ね」
「それはどうしようもないわね」
「武田家にしても」
「鉄砲が凄いってわかっていたから」
 信長さんも武田家もというのです。
「この場合は距離とね」
「買占めだね」
「それがものを言ったんだね」
「そうだったのね」
「そうなんだ」 
 先生は皆にお話しました。
「これがね」
「そうなんだね」
「鉄砲からそうしたこともわかるんだね」
「距離とか買占めのことも」
「そうしたことも」
「そうだよ、あと日本は鉄砲は凄く多かったけれど」 
 先生は皆に笑ってお話しました。
「大砲は少ないね」
「あれっ、そういえば」
「そうよね」 
 チープサイドの家族が気付きました。
「言われてみれば」
「鉄砲はこんなに多いのに」
「同じ時期に入った筈なのに」
 それでもと言う老馬でした。
「何でか日本って大砲は少なかったね」
「殆どなかったんじゃないの?」
 こう言ったのはチーチーでした。
「その頃の日本にはね」
「欧州は結構使ってたよ」
 ジップは自分達が住んでいた地域のことを思い出しました。
「これがね」
「そうそう、オスマン=トルコなんかね」
 トートーはこの強かった国のことを言いました。
「十五世紀の中頃には使っていたしね」
「大砲と鉄砲を使っていたからね」
 ダブダブは両方をと言いました。
「あの国は強かったのよ」
「中国だってそうだったね」 
「そうそう、明代なんかね」 
 オシツオサレツは二つの頭でお話しました。
「色々な銃があってね」
「大砲もかなりあったよ」
「それなのに日本は鉄砲ばかりで」
 ホワイティは首を傾げさせました。
「大砲はかなり少なかったね」
「関ケ原や大坂冬の陣で使っていたわよね」 
 ポリネシアはホワイティとは逆方向に首を傾げさせました。
「けれど他の戦いではなかったわね」
「何でかな」
 ガブガブも思いました。
「日本では大砲が少なかったのは」
「どうも大きくて重くて運びにくくて」
 それでとです、先生は皆に答えました。
「それがね」
「日本ではだね」
「どうかってなって」
「それでなんだ」
「大砲は使われなかったのね」
「他の国みたいに」
「あと城攻めも」
 この時もというのです。
「他の国では城塞都市だね」
「そうそう、街を壁が囲んで」
「それで守ってるからね」
「他の国では城は街だよ」
「そうなってるよ」
「けれど日本は違うね」
 この国ではというのです。
「そうだね」
「城下町だね」
「日本だとね」
「小田原とかは違ったけれど」
「惣構えっていったね」
「そうしたお城はあってもね」
 それでもというのです。
「少なかったね」
「ごく限られた」
「そうしたお城だけで」
「日本は大抵お城はお城だけ」
「他の国で言う砦だね」
「そんなものだったわ」
「だから攻める時もね」
 この時もというのです。
「普通にね」
「鉄砲で攻めていたね」
「鉄砲で一斉射撃を行って」
「それで攻撃しながらね」
「攻めていたね」
「そうしていたからね」
 だからだというのです。
「そのこともあったのだろうね」
「お城が違う」
「城塞都市じゃなくて城下町」
「街を攻めるんじゃなくて」
「砦だったから」
「相当大規模なお城でもないとね」
 さもないと、というのです。
「使わなかっただろうね、それに高価だったから」
「ああ、それ大きいね」
「あまりないとね」
「どうしても高価になるね」
「日本は鉄砲の大量生産でね」
 それに入っていてというのです。
「大砲の方はね」
「他の国と違って」
「殆ど造ってなくて」
「それで高価で」
「尚更だったのね」
「そうかもね、ただ大砲の威力を認識したら」 
 その時はといいますと。
「当時の日本もね」
「沢山造ってたんだね」
「鉄砲と並んで」
「そうしていたのね」
「まさに」
「そうだと思うよ、そしてね」
 それでというのです。
「かなり使っていただろうね」
「城攻めは鉄砲で足りても」
「その威力を知ったら」
「その時は」
「実際城攻めで使ったら」 
 そうしたらというのです。
「大坂の陣でそうしていたね」
「そうそう、冬の陣」
「さっきお話に出たけれど」
「使っていたからね」
「実際に」
「大坂城のお堀は広くて」
 それでというのです。
「砲弾は城内に中々届かなかったけれど」
「それが届いたね」
「しかも大坂城の実質的な主淀殿さんがいた場所に」
「それで淀殿さんが肝を冷やして」
「停戦を申し出たんだね」
「そこで大坂城の内堀まで埋めたね」
 停戦の時にというのです。
「淀殿さんは外堀だけと思ったら」
「幕府の文面よく読まないで」
「勝手に解釈して」
「それでだったね」
「これで大坂城は殆ど丸裸になって」
 本丸だけになってというのです。
「それまでの天下一の守りがね」
「全くなくなって」
「戦うとしたら外でするしかなくなった」
「そうなったね」
「あれはもう何が何でもね」
 それこそというのです。
「家康さんは豊臣家を大坂から出したかった」
「それで大坂を幕府のものにしたかった」
「そうした考えだったんだよね」
「先生が調べたところ」
「そうだったね」
「そうだったけれど」
 それがというのです。
「まあね、淀殿さんがね」
「ああした人で」
「全くわかってなくて」
「何もかもで」
「それでね」
 そのうえでというのです。
「ああしてね」
「夏の陣になって」
「それでだね」
「豊臣家は滅んで」
「前にお話した通りになったわね」
「それを見てもわかる通りにね」
 まさにというのです。
「大砲もね」
「役に立つ」
「日本でも」
「それがわかったら」
「沢山造って」
「そのうえで」
「使っていたね」 
 先生は言いました。
「おそらくだけれど」
「沢山造ったらね」
「その分安くなるしね」
「それがものの原理だしね」
「そうだから」
「それでね」
 そのうえでというのです。
「僕もそうだったと思うけれどね」
「成程ね」
「そこは戦い方の違いもあったかもね」
「ちょっと色々観るべきかも」
「学問の対象かもね」
「戦争はないに越したことはないけれど」
 それでもと言う先生でした。
「こちらもまたね」
「学問だね」
「その一環だね」
「そのことは事実だね」
「やっぱり」
「そうだよ。戦争即ち軍事もね」
 この分野もというのです。
「科学や組織についてのね」
「学問になるんだね」
「その重要なテーマに」
「そうなるんだね」
「文化にもね」
 こちらにもというのです。
「なるよ、ランドセルや制服だってね」
「あっ、そうだったね」
「元々軍隊からだったしね」
「そうしたものが出たのって」
「元はね」
「詰襟の学生服もブレザーもセーラー服もだよ」
 学校の制服もというのです。
「元は軍服だね」
「ブーツだってそうで」
「トレンチコートにフロックコートも」
「全部ね」
「日本の学校の先生でね」
 このお仕事でというのです。
「詰襟とかセーラー服は元軍服とか言って」
「嫌ってたんだ」
「日本の学校の先生って軍隊嫌いな人いるから」
「そうした人で」
「そうだったんだ、けれどそれを言ったら」 
 それこそというのです。
「ブレザーも駄目でランドセルもで」
「ブーツもで」
「トレンチコートやフロックコートも」
「全部だね」
「駄目になるよ」
 こう言うのでした。
「もうね」
「そうなんだよね」
「もうそれこそ」
「軍事、軍隊を否定したらね」
「文化のかなりの部分も否定するよ」
「そうなってしまうよ」
「お侍さんの髷だってね」
 これもというのです。
「兜を被る時に蒸れない様にね」
「ああした髪型にしたんだったね」
「結ったり剃って」
「そうしたね」
「それは遊牧民族の辮髪もだけれどね」
 この髪型もというのです。
「独特の文化だけれど」
「どちらもね」
「一見すると奇妙だけれど」
「ちゃんと理由があるのよね」
「そうだよ、その髪型にもね」
 こう皆にお話するのでした。
「その先生は詰襟が駄目ならブレザーもランドセルも否定してね」
「フロックコートもだね」
「ブーツもだし」
「あとベレー帽もかな」
「ピケ帽もだけれど」
「何でも駄目だよ、しかもこうした先生の常で」
 それでというのです。
「否定する軍隊は自衛隊でね」
「そうそう、それでね」
「昔あったソ連軍はよくて」
「人民の軍隊とか平和勢力とか言って」
「それでいいって言って」
「北朝鮮の軍隊はいいからね」
 そうした考えだからだというのです。
「筋が通らないよ」
「全くだね」
「もうその時点でね」
「自衛隊は駄目、詰襟は駄目で」
「北朝鮮の軍隊はいいのなら」
「全くおかしな話だよ、僕は平和主義者のつもりだけれど」
 それでもと言う先生でした。
「決してね」
「軍隊も戦争も否定しないね」
「そちらから生まれた文化も」
「そうよね」
「そうだよ、軍隊から文化や科学が発展することも事実だから」
 そうした一面があるというのです。
「平和が第一にしても」
「そうしたものは否定しない」
「公平に学ぶ」
「学問の対象とするね」
「それが先生よね」
「だから今こうして鉄砲も学んでるし」
 この武器のこともというのです。
「そして次はね」
「ロケットだね」
「宇宙に飛ぶ」
「そちらのことも学ぶわね」
「そうするよ」
 笑顔でこう言ってでした。
 先生は鉄砲館を皆と一緒に観て回りました、そのうえでその歴史と文化をしっかりと学ぶのでした。








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