『ドリトル先生と山椒魚』




                第十二幕  論文も書いて

 日笠さんはこの日先生のお昼の四限目の講義が終わった時にです。
 先生の研究室にお邪魔しました、そうしてブランデーのバウンドケーキとうんと甘くしたスコーンそれに小さなチョコレートの三段のティーセットをです。
 ミルクティーと一緒にご馳走になりつつ先生に笑顔で言いました。
「先生のティーセットはいつも美味しいですね」
「皆が用意してくれまして」
 先生は日笠さんに周りにいる動物の皆を見つつお話しました。
「それで、です」
「こうしてですか」
「いつも楽しくです」 
「ティータイムにはですね」
「飲んで食べています、やっぱりお昼はです」
 基本三時講義がある時はそれが終わってからというのです。
「ティータイムですね」
「それは絶対ですか」
「僕にとっては」
「それで毎日ですね」
「楽しんでいます、これがないと」
 ティータイムがというのです。
「僕としてはです」
「どうにもならないですか」
「そうなんです」
 向かい合って座る日笠さんにお話します。
「三度のお食事とです」
「ティータイムはですね」
「欠かせないです、ただお茶は」
 今はミルクティーを飲みつつ言います。
「ティータイムでなくてもです」
「飲まれていますね」
「そうしています」
 こう日笠さんにお話します。
「いつも」
「そうなんですね」
「一番よく飲むのは」
「ミルクティーですか」
「やはりそうなりますね」 
 そのミルクティーを飲みながら言うのでした。
「日本に来てからエットボトルでも飲む様になりました」
「ああ、あのミルクティーですね」
「ストレートもレモンティーも飲みますが」
 ペットボトルでもというのです。
「特にです」
「ミルクティーですね」
「そちらが一番好きです」
「ではです」
 日笠さんがここまで聞いて笑顔で言いました。
「私も最近自分で煎れて飲んでいますので」
「そうなのですか」
「よければ先生にも」
「ご馳走してくれますか」
「駄目でしょうか」
「嬉しいお言葉です」
 笑顔で、です。先生は日笠さんに答えました。
「それではです」
「その時はですね」
「いただかせてもらいます」
「それではその時は」
「はい、お願いします」
「楽しみにしています。それでなのですが」
 ここで日笠さんは先生にあらためてお話しました。
「オオサンショウウオの夫婦ですが」
「元気で仲良くですね」
「過ごしています」
「それは何よりです」
「時期が来れば産卵もです」
 こちらもというのです。
「期待出来ます」
「それは何よりですね」
「はい、先生のアドバイスも受けて」
 そうしてというのです。
「今はです」
「順調ですか」
「おおむね」
「それは何よりですね」
「全てがそうではないですが」
「やはり全部順調とはいかないですね」
「思わぬことが起こったりします」
 先生は少し真面目なお顔になってお話します。
「どうしても」
「それは仕方ないですね、何ごともです」
 先生は日笠さんに穏やかで落ち着いたお顔でお話しました。
「アクシデントは付きものです」
「そうですね、お仕事でもプライベートでも」
「全て順調にいく筈もなく」
「アクシデントそしてトラブルはですね」
「常にです」
 まさにというのです。
「あります」
「そうしたものですね」
「僕もです」
 先生はご自身のお話もしました。
「これまでの旅、冒険ですね」
「イギリスにおられた時の」
「はい、もうです」
 それこそというのです。
「アクシデントやトラブルの連続で」
「大変でしたか」
「その度に皆に助けておらって」 
 そうしてというのです。
「乗り越えてきました」
「そうでしたか」
「はい」
 まさにというのです。
「日本に来てからは冒険と呼べる様なことはないですが」
「かつてはですね」
「もうです」
「大変なですか」
「アクシデント、トラブルばかりで」
 思わぬというのです。
「そうしてです」
「大変でしたか」
「はい」
 そうだったというのです。
「今思うと楽しいですが」
「そうだったんですね」
「ですから」
「アクシデントはですか」
「起こるものとです」
 その様にというのです。
「僕は考えています」
「ご自身の経験からですか」
「はい、日本に来てです」
 今のお話もするのでした。
「そして暮らして国籍もです」
「日本になられましたね」
「そうなったこともです」
「突然だったそうですね」
「これはアクシデントやトラブルではないですが」
 それでもというのです。
「突然でしたし」
「物事が突然起こることはですね」
「もうです」
 既にというのです。
「僕はあるとです」
「お考えですね」
「歴史でも思わぬことがです」
 その時生きていた人にしてみればです。
「起こることがです」
「普通ですね、そういえば」
「僕自身の経験を振り返ってもそうで」
「歴史を学んでもですね」
「そして世の中を見ても」
「思わぬことはですね」
「常に起こります」
 そうなりますというのです。
「ですから」
「それで、ですね」
「オオサンショウウオの夫婦もです」
「全てが全てですね」
「順調である筈がなく」
 そしてというのです。
「突然の出来事はです」
「付きものですね」
「その様に考えてです」
 そしてというのです。
「ことを進めていきましょう」
「それでは」
「はい、また何かあれば」
 先生はバウンドケーキをフォークに取って食べてから言いました。
「お話して下さい」
「こちらにですね」
「呼んで頂ければ」
 その時はというのです。
「僕から行かせてもらいます」
「そうですか、では」
「その時は」
「お願いします」
 日笠さんは笑顔で応えました、そうしてオオサンショウウオのお話をさらにして日笠さんは動物園に戻りました。
 その後で、です。皆は先生に言いました。
「日笠さんとのお話だけれど」
「まあね、これからよね」
「いつも通りにしても」
「日笠さんの背中押した方がいいかも」
「そうよね」
「背中?どうしてかな」 
 わかっていない返事は相変わらずでした。
「一体」
「だからそれはね」
「もう先生いつも言ってるじゃない」
「そこを何とかしようって」
「そうね」
「全くわからないよ、まあ兎に角ね」
 先生は紅茶を見つつ言いました。
「お話は終わったからいよいよね」
「論文終わらせるんだね」
「オオサンショウウオの論文を」
「そうするのね」
「そうすうりょ、それでね」
 そのうえでというのです。
「終わったらね」
「次の論文だね」
「それにかかるね」
「井伏鱒二さんのものに」
「そうするよ」
 笑顔でお話するのでした。
「次はね」
「わかったよ、しかし先生っていつも論文書いてるけれど」 
 ホワイティが言ってきました。
「こんなに論文書く人いないよね」
「一年で二十以上は書いてる?」
 こう言ったのはチーチーでした。
「もうね」
「それ位は書いてるね」
 ダブダブはチーチーの言葉に頷きました。
「見ていたら」
「色々な分野の論文書いて」
 ガブガブも言います。
「それ位は書いているわね」
「いや、こんなに多くの論文発表するなんて」
「凄いわよ」
 チープサイドの家族も言います。
「中には何十年も書いてない人もいるのに」
「学者さんでもね」
「それでも学者だって公言している人もいるのに」 
 ジップも言います。
「先生は一年で二十以上だからね」
「もう学者と言わずして何と言うか」
 ポリネシアは思いました。
「わからないわ」
「先生が論文を書かないと」
 トートーは思いました。
「果たしてどうなのか」
「イギリスにいた時は違ったけれど」
 老馬はその時からお話しました。
「日本に来てからはそんな調子だからね」
「今の先生は立派な学者さんだね」
「論文を書くと言う意味でもね」
 オシツオサレツは二つの頭で言いました。
「本当にね」
「凄いね」
「学者は学んで研究してね」
 先生も言います。
「論文を書くことがお仕事だしね」
「若しそうしないと」
「そうであるなら」
「先生としては学者じゃない」
「そうなるかな」
「そうだね」
 先生も否定しません。
「だから僕は論文を書いているよ」
「今もだね」
「オオサンショウウオの論文を書いて」
「そしてそれが終わったらね」
「今度は井伏鱒二さんについてだね」
「書くよ」
 実際にというのです。
「そうするよ、ただね」
「ただ?」
「ただっていうと?」
「まだあるのかな」
「どうも今回は太宰治さんのこともね」 
 井伏鱒二さんのお弟子さんだったこの人のこともというのです。
「書くだろうね」
「そうした論文なんだ」
「先生の次の論文は」
「井伏さんのことを書いて」
「太宰さんのこともなんだ」
「書くだろうね」 
 こう皆にお話します。
「お互いに与え合った影響とかね」
「それあるんだ」
「師弟関係だけあって」
「そうだったんだ」
「うん、太宰さんは芥川さんからかなり影響を受けているよ」
 作品はというのです。
「やっぱりね」
「芥川龍之介さんだね」
「終生敬愛していただけあって」
「それでだね」
「そうだよ、けれどね」
 それでもというのです。
「太宰さんは井伏さんとも絆が深かったしね」
「というか太宰さん芥川さんとは会ってないよね」
「活躍した年代違うし」
「芥川さんが自殺したのって太宰さんが学生の頃で」
「同じ時代に生きていても」
「活躍した時代は違うね」
「それはね」
「そうだよ、会ったことはね」
 芥川さんと太宰さんはというのです。
「本当にね」
「なかったね」
「一度も」
「芥川さんは太宰さんのことすら知らないね」
「作品を読んだこともないね」
「そうだよ、けれどね」
 それでもというのです。
「やっぱり太宰さんはね」
「芥川さんの影響が大きいね」
「何と言っても」
「あの人から影響を受けて」
「それでだね」
「書いていったのね」
「そうだよ、けれどね」
 そうした人でもというのです。
「太宰さんは学生時代に井伏さんの作品を読んで」
「物凄く感銘を受けて」
「それでだよね」
「上京してね」
「大学に進んで」
「そこからだね」
「すぐに井伏さんのところに行ってね」
 そうしてというのです。
「弟子にして下さいってなったから」
「それじゃあね」
「作品に影響を受けていないかっていうと」
「絶対にあったね」
「そうだね」
「そうだよ、そして井伏さんもね」
 この人もというのです。
「ずっと太宰さんと一緒にいて亡くなってからも気にかけていた」
「それじゃあね」
「太宰さんが自殺してからもとなると」
「それじゃあね」
「絆あるよね」
「やっぱり」
「そうだよ」 
 その通りだというのです。
「受けていない筈がないよ」
「太宰さんの作品から」
「井伏さんも太宰さんの作品に触れて来たから」
「しかもお師匠さんだったから」
「尚更だね」
「間違いなくね、お二人の作品はね」 
 それぞれというのです。
「間違いなくだよ」
「影響を受けていた」
「そうなんだ」
「お互いに」
「全くないとは考えられないよ」
 それはというのです。
「決してね」
「そしてそのことをだね」
「先生は書いていくかも知れないんだね」
「これから」
「そうなるかもね、ただ太宰さんのお顔を見ていると」
 残された写真のとです、先生はこうも思いました。
「整っているね」
「あっ、それね」
「確かにそうだよね」
「太宰さんって男前だよ」
「今風に言うとイケメンよ」
「芥川さんもそうだけれど」
「そう、お二人は日本の近現代の文学ではね」
 そちらではというのです。
「お顔立ちでもね」
「有名だよね」
「お二人共美形だからね」
「女性にもてたっていうけれど」
「それも当然だね」
「あと中原中也さんも結構で」 
 詩人のこの人もというのです。
「志賀直哉さんや三島由紀夫さんもね」
「その人達も整ってるね」
「確かにそうだね」
「何か三人とも太宰さんと接点あったらしいけれど」
「面白いことに」
「中原さんは飲んでいる時に太宰さんにつっかかってね」
 この人はそうだったというのです。
「太宰さんは嫌いだったらしいね」
「何か酒癖は悪かったんだよね」
「中原さんはそうした人で」
「それでだね」
「そして志賀さんは戦後志賀さんの文学に反発していたからね」
 太宰さんはそうだったというのです。
「そうした意味でだよ」
「接点あったね」
「それで三島さんはだね」
「学生時代太宰さんに会う機会があって」
「太宰さんの文学は嫌いだって言ったのよね」
「そうだよ、三人共否定的な意味だけれど」
 それでもというのです。
「面白いことにね」
「接点はあったね」
「そうだね」
「その人達と」
「太宰さんは意外と交流が広かったんだ」
 そうした人だったというのです。
「これがね」
「暗いイメージがあったけれど」
「そうでもなかったんだ」
「意外と社交的?」
「そんな人だったんだ」
「鬱になると暗くて」
 そうなってというのです。
「死にたいと言ってね」
「自殺しようとしたね」
「実際に何度も」
「けれどだね」
「明るい時もあったのね」
「躁鬱とするなら躁の時はね」
 この時はというのです。
「結構ふざけたり明るくて」
「それでなんだ」
「人ともお付き合いしていたんだ」
「そうした人だったんだ」
「うん、それで井伏さんとも戦争が終わるまではね」
 この時まではというのです。
「疎遠じゃなかったし」
「疎遠になったのは戦後で」
「それからで」
「それまでは親しかった」
「そうだったから」
「影響を受けていたよ、尚太宰さんの方から距離を置いていて」
 戦後はというのです。
「井伏さんはずっとね」
「太宰さんを気にかけていて」
「心配していた」
「そうだったんだ」
「あの人は」
「そうだよ、太宰さんのことを主に話してるけれど」
 今はというのです。
「けれどね」
「井伏さんだね」
「あの人のことを書くんだね」
「今度の論文では」
「そうするよ」
 実際にというのです。
「僕はね」
「じゃあね」
「そっちも頑張ってね」
「井伏さんの論文も」
「そちらもね」
「そうするよ」
 先生は笑顔で約束しました。
「書きはじめたらね」
「それじゃあね」
「今回も応援させてもらうよ」
「そして身の回りのことは任せてね」
「家事とかはね」
「いつも通り私達がするわね」
「宜しくね」
 先生は皆に笑顔で応えました、そうしてです。
 まずはオオサンショウウオの論文を書いていきます、そしていよいよ終わろうと言う時になのでした。
 王子の別荘日本の彼のお家にトミーそれに動物の皆と一緒に招待してもらって色々なお料理をご馳走になる中で、です。
 先生は蛙の唐揚げを見て笑顔で言いました。
「蛙もあるんだね」
「うん、今回は鰐のステーキもあるよ」
「鰐もだね」
「焼き鳥もあるし」
「鶉のグルルもあるね」
「鴨のロースもあるよ」
「そうだね、どれも美味しいね」
 笑顔で、です。先生は応えました。
「本当に」
「そうだね、そういえばだけれど」
 ここで王子は言いました。
「蛙も鰐も鶏肉に近いよね」
「その味はね」
「そうだよね」
「そうなんだ、両生類や爬虫類はね」
 こうした生きものはというのです。
「実は脂身が少ないし」
「味もだね」
「鶏肉に近くてね」
 そうした味でというのです。
「美味しいんだ」
「そうだよね」
「カロリーも少ないし栄養もあるから」
「いいんだね」
「食べるとね」
「そうだね、ただ蛙が鶏肉に近いなら」
 その味ならとです、王子は思いました。
「オオサンショウウオもね」
「うん、どうもね」
 先生は王子に応えて言います、大きなテーブルの上にある様々なお料理を見ながら王子にお話しています。
「美味しいらしいよ」
「そうなんだね」
「言われていることではね」
「意外だけれど」
「いや、両生類だからね」
 蛙と同じくというのです。
「その味はね」
「悪くないんだね」
「そうだよ」
「成程ね」
「けれど今はね」
 先生は真面目なお顔で言いました。
「天然記念物だから」
「ああ、食べられないね」
「そうだよ、食べた人はね」
「あくまで昔の人だね」
「そうなんだ」
 こう王子にお話しました。
「そのことはね」
「覚えておかないとね」
「やっぱり希少な生きものはね」
「食べたら駄目だね」
「乱獲になるから」
 だからだというのです。
「それは駄目だよ」
「法律で禁じられているしね」
「法律は守らないとね」
 先生はこうも言いました。
「若し法律を守らないのなら」
「ヤクザ屋さんになるね」
「そうだよ、国家なら」
「北朝鮮だね」
「ああなるよ」
「わかりやすいね」
 王子はここまで聞いて頷きました。
「それは」
「そうだね」
「うん、法律を守らないとどうなるか」
「ヤクザ屋さんか北朝鮮になるよ」
「どっちも酷いね」
「見ていてもそうだね」
「受ける印象は最悪で」 
 そしてというのです。
「恰好悪いよ」
「ソクラテスさんと全く違うね」
「悪法もまた法だね」
「そう言って法律を守って死んだよ」
 死ぬことを求められて自ら毒を飲んでそうしました。
「この人は恰好いいけれど」
「ヤクザ屋さんなんてね」
「恰好悪いね」
「北朝鮮もだよ」
「法律を破って守らないことはね」
「悪いことで」
「そして恰好悪いんだよ」 
 そうだというのです。
「だからオオサンショウウオについても」
「食べたら駄目だね」
「そうだよ」
 絶対にというのです。
「そのことはね」
「守らないとね」
「そういうことだよ、無許可に捕まえることもね」
「よくないね」
「さもないと絶滅しかねないからね」 
 この心配があるというのです。
「冗談抜きにね」
「そのこともあるね」
「そうだよ、あるよ」
 本当にというのです。
「これまでそうした事例もあったしね」
「歴史の中で」
「そうもなってきたから」
 それでというのです。
「そんなことを繰り返さない様に」
「僕達はだね」
「法律も守って」
「オオサンショウウオを捕まえたら駄目だね」
「ましてや食べるなんて」
 そうしたことはというのです。
「駄目だよ」
「そういうことだね」
「では今からね」
「うん、食べようね」
「サラダや野菜スティックもあるし」
 野菜料理もあります。
「楽しくね」
「食べようね」
「そうしていこうね」
 笑顔でお話してでした。
 皆で蛙や鰐、鳥のお料理にサラダ等を食べお酒も楽しみます。先生はジョッキでビールを飲んでから言いました。
「唐揚げとビールもいいね」
「日本の居酒屋の定番だよね」
「あの場合は鶏だけれど」
「蛙でもね」
「いいよね」
「そうだね、焼き鳥もね」
 先生は今度はそれを食べています、腿肉と葱の組み合わせが最高です。
「いいね」
「そうだよね」
「焼き鳥にビールもね」
「日本の居酒屋の定番だよ」
「そちらも」
「そう思うよ、この美味さは」
 本当にというのです。
「素敵だよ、今度は鰐を食べようかな」
「何かね」
 ここで言ったのはダブダブでした。
「日本のビールって随分美味しいみたいだね」
「そうよね」
 ポリネシアはダブダブの言葉に応えました。
「お話を聞いてると」
「先生も美味しそうに飲むしね」
「ビールを飲む時はね」
 チープサイドの家族もお話します。
「イギリスの時よりもね」
「美味しそうだしね」
「飲む勢いもかなりだね」
 ホワイティも言います。
「ぐいっという感じで」
「それ見たら美味しいんだよね」
 チーチーも言います。
「間違いなく」
「そうだね」 
 ジップも言いました。
「見ていたら」
「ビールも国によって味が違って」
 ガブガブはジップに続きました。
「日本のものはかなりなのね」
「先生本当に美味しそうに飲むからね」
「日本のビールもね」
 オシツオサレツも二つの頭で言います。
「それ見たら」
「本当に美味しいのかな」
「冷えていることも大きいかもね」
 老馬は思いました。
「日本ってビール冷やして飲むし」
「今のビールも冷えてるし」
 トートーも知っています。
「それじゃあかな」
「うん、味自体がよくてね」
 先生も皆に飲みつつお話します。
「そして冷えているから」
「尚更だね」
「美味しいのね」
「味がよくて冷えている」
「この組み合わせがいいんだ」
「ビールといえばイギリスではアイルランドだね」
 こう言いました。
「南北含めて」
「そこ複雑だけれどね」
「イギリスってね」
「北はイギリスでね」
「南は独立していてね」
「それで南北と言ったけれど」
 アイルランドについてはです。
「イギリスになるからね」
「そうそう、北アイルランドは」
「今でもイギリスだからね」
「そのお話をすると複雑で長くなるけれど」
「それでもね」
「イギリスでビールはアイルランドで」 
 それでというのです。
「欧州ではドイツにチェコだね」
「その二国が有名だね」
「ビールって言うとね」
「アイルランドにドイツにチェコ」
「欧州だとね」
「その欧州のビールにもだよ」
 先生は鰐のステーキに鴨のロースそして鶉のグリルも食べます、兎の塩焼きも来てそれにも注目しつつです。
 ビールも飲んでです、そうして言うのでした。
「日本のビールは負けていないよ」
「そう、だからなんだ」
 王子もビールをジョッキで飲みつつ言いました。
「僕は今日はね」
「お酒はビールにしたんだね」
「日本のね」
 まさにというのです。
「そちらにしたんだ」
「そうなんだね」
「いや、幾ら飲んでもね」
 そうしてもというのです。
「本当にね」
「飲める位だね」
「美味しいね、冷やすと」
「尚更だね」
「多くの国ではお酒冷やして飲まないけれどね」
「けれど日本ではこうしてよく飲んでね」
「そしてね」
 それでというのです。
「またこの飲み方がね」
「いいよね」
「美味しいよ」
「とてもね」 
 飲みつつ言います、そしてです。
 トミーも焼き鳥とビールを楽しんで言いました。
「恐ろしいまでに合いますよね」
「こうしたお料理とビールはね」
「そうですよね」
「日本ではじめて出会って」
「それで驚きました」
 焼き鳥を食べてです。
 それからビールを飲んで、です。トミーは言うのでした。
「ソーセージはありますが」
「欧州でもね」
「焼き鳥はなくて」
 それでというのです。
「日本ならではで」
「それを食べてね」
「はい、ビールを飲みますと」
「最高だよ」
「全くですね」
「日本に来て」
 そうしてというのです。
「僕が出会った中でもね」
「かなりいい組み合わせですね」
「そうだよ、焼き鳥を食べて」
 今の様に都です、先生はその焼き鳥皮のそれを食べて言います。
「そうしてね」
「それで、ですね」
「冷たいビールを飲む」
「本当にいいですね」
「全くだよ、蛙も鰐も兎もよくて」 
 先生は今度は兎を食べて言いました。
「最高だよ、しかしね」
「しかしといいますと」
「世の中おかしな人もいてね」
 それでとです、先生は残念そうにお話しました。
「オオサンショウウオについてもね」
「天然記念物で捕まえること自体がですよね」
「法律で禁止されていても」
「食べようという人もですね」
「いてね」
 そうしてというのです。
「それでだよ」
「注意しないといけないですね」
「あらゆる生きものについてね」
「その7問題がありますね」
「密漁はね」
「日本でもありますね」
「禁猟区、禁漁の場合もあるね」
 海や河川の場合もあるというのです。
「そうしたところでね」
「密猟や密漁をして」
「売ってもうけたりね」
「食べたりですね」
「する人がいるよ」
「最近問題になっていますね」
「実は田畑を荒らす生きものを捕まえるにも」
 その場合もというのです。
「法律の許可が必要だから」
「注意しないといけないですね」
「そうだよ」 
 まさにというのです。
「例えばヌートリアを獲ってね」
「あの生きものも畑荒らしますね」
「日本に持ち込まれてね」
「そうなっていますね」
「それを獲って」
 そうしてというのです。
「食べてもね」
「法律の許可がないとですね」
「罪に問われるよ」
「そうなりますね」
「法律は守ってこそだから」
「法治ですね」
「法律を決めるのは人間でも」
 それでもというのです。
「その法律を好き勝手に人間が解釈してね」
「変えたりですね」
「破ったりはね」
「駄目ですね」
「ちゃんと話し合って」
 そうしてというのです。
「変えるもので今の法律はね」
「守るもので」
「そうしたこともね」
「ちゃんとしてですね」
「そしてね」
 そのうえでというのです。
「天然記念物そして獣害についてもね」
「法律を守ってですね」
「対処しなければならないんだ」
「そうですね」
「だからそうした意味でもね」
 法律上の観点からもというのです。
「天然記念物は保護して」
「禁猟それに禁漁の場合は守って」
「そして害獣を捕まえる場合も」
「許可を得る」
「そうしていかないとね」
 絶対にとです、先生はビールを飲みつつ言いました。
「駄目だね」
「そしてその中にですね」
 トミーは先生に応えて言いました。
「オオサンショウウオもですね」
「入っているよ」
「だからこれからもですね」
「そう、オオサンショウウオを保護して」
 天然記念物として、というのです。
「守っていこうね」
「そうあるべきですね」
「そうだよ、それで動物園での飼育もね」
 こちらもというのです。
「いいことだよ」
「種の保存にですね」
「そして学問としての研究や調査の為にもね」
 この為にもというのです。
「いいよ」
「そうですね」
「動物園での飼育は虐待か」
「檻やケースに入れてのことなので」
「それはね」
 決してというのです。
「違うよ」
「そうですね」
「そこを誤解している人がね」
 先生は焼き鳥を食べつつ言いました。
「いるからね」
「残念ですね」
「だからね」
 それでというのです。
「僕としてはね」
「そのことをですね」
「わかって欲しいとね」
 その様にというのです。
「思ってるよ」
「そうですね」
「そのこともね」
「お話していって」
「わかってもらわないとね」
 楽しいパーティーをしつつそうしたお話をしました、そしてこのパーティーがあった次の日にでした。
 サラが来日してきてです。
 先生のお家にお邪魔して先生のお話を聞いて言いました。
「そんな生きものいるのね」
「日本にはね」
「日本も色々な生きものいるわね」 
 先生からオオサンショウウオのことを聞いて言いました。
「つくづくね」
「生態系も面白いね」
「ええ、ただね」
「ただ。どうしたのかな」
「兄さんその生きものの論文を書いたのよね」
「昨日遂に脱稿したよ」
 居間で妹さんにちゃぶ台を囲んでお話します、勿論動物の皆も一緒でお茶とお菓子を楽しみながらお話をしています。
「嬉しいことにね」
「よかったわね、しかしね」
「しかし?」
「兄さんのお話を聞いてたら」
 サラは微笑んで言いました。
「私も色々な生きものを知ることが出来るわ」
「そうなんだ」
「一緒に暮らしていた時もだったけれど」
「今の方がかな」
「そうなったわ」
 先生に笑顔でお話しました。
「嬉しいことにね」
「そう言ってくれるんだ」
「ええ、それに兄さんつくづく日本に来てよかったわね」
「いいことばかりでね」
「満喫しているわね」
「人も親切だしね」
「真面目で勤勉でそうした人が多いわね」
 サラが見てもです。
「そのこともいいわね」
「そうだね」
「日本に来ていつも思うわ」
「じゃあ今度ね」
「今度?」
「サラもじっくり日本にいればいいよ」
 こうお誘いするのでした。
「ご主人とね」
「そうね、その機会があったらね」
 サラもにこりとして応えます。
「私もね」
「そうするんだ」
「ええ」
 是非にというのです。
「そうしたいわ、それで自然も観て回って」
「それがいいよ、その時はね」
「兄さんも案内してくれるのね」
「そうさせてもらうよ」
 サラに微笑んでお話しました。
「是非ね」
「じゃあその時はね」
「案内させてもらうよ」
「それで今はね」
 サラはお兄さんである先生の言葉を受けて笑顔でいいました。
「動物園に行って」
「そのオオサンショウウオの夫婦をかな」
「観たいけれどいいかしら」
「いいよ、それではね」
「今からね」
「案内させてもらうよ」
 兄妹でお話してでした。
 先生はサラを動物園に案内しました、動物の皆も一緒です。トミーが留守番をしてくれてお仕事を終えたサラのご主人も加えてオオサンショウウオの夫婦を観に行くのでした。


ドリトル先生と山椒魚   完


                     2022・9・11








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