『ドリトル先生と山椒魚』




               第九幕  奇麗なお水

 先生はこの日はまたオオサンショウウオの研究施設に行きました、そうしてこの生きものを学びますが。
 動物の皆以外にお静さんも一緒です、お静さんはこんなことを言いました。
「私猫又でしょ」
「うん、そうだね」
 先生もその通りだと頷きました。
「お静さんはね」
「猫又ってあれなにょ」
「あれっていうと?」
「人と一緒に暮らしてるでしょ」
 こう先生にお話するのでした。
「そうでしょ」
「街でね」
「元々が猫だからね」
 猫が五十年生きると猫又になります、お静さんも長生きしてそうなっています。
「それで今もよ」
「酒屋さんのご家族でね」
「お店で働いているのよ」
「そうしているね」
「だから山に行くことは」
「あまりないね」
「妖怪同士のお付き合いで行くこともあるけれど」
 それでもというのです。
「やっぱり普段はね」
「街で暮らしているね」
「そうしているから」
 だからだというのです。
「こうしたね」
「山の生きものとはだね」
「あまりね」
 それこそというのです。
「縁がないわ」
「そうだね」
「川魚も好きだけれど」
「そこの生きものもだね」
「ええ、けれど山に行くことはね」
 どうしてもというのです。
「あまりないわ」
「そうなのね」
「そう、だからね」
 それ故にというのです。
「オオサンショウウオを見ることも」
「滅多にだね」
「なかったのよ」
「そうなんだね」
「いることは知っていても」
「見ることはなくて」
「こうしてじっくり学問として見るなんて」
 そうしたことはというのです。
「これまでなかったと言っていいわ」
「街の妖怪だとそうなるね」
「ただ妖怪としてのオオサンショウウオとはね」
「ハンザキだね」
「こちらとはご存知よ」
「そうなんだね」
「山奥にいてね」
 そうしてというのです。
「そこでよ」
「会ったことがあるんだ」
「あるわよ、お付き合いで山に入ることもあるって言ったわね」
「今確かにね」
「そこでお会いするのよ」
「この兵庫県にもいるんだね」
「十メートルあるのよ」
 お静さんはその妖怪の大きさもお話しました。
「凄く大きいから」
「その妖怪さんとは知り合いなんだ」
「あと大きな蟹や蛙の妖怪ともね」
 彼等ともというのです。
「知り合いよ」
「そうなんだね」
「日本じゃ生きものが長生きしたら妖怪になるわね」
「お静さんだってそうだしね」
「それでオオサンショウウオもそうでね」
 それでというのです。
「蟹さんや蛙さんもよ」
「そうなるね」
「そしてね」
 妖怪になってというのです。
「大きさもね」
「変わるんだね」
「お水の生きものって大きくなる傾向があるわね」
 妖怪になると、というのです。
「獺さん達は違うけれど」
「日本だとだね」
「あらゆる生きものが妖怪になって」
 そうしてというのです。
「大きくもね」
「なるね」
「変化もしてね」
「そうだね」
 先生はその通りだと頷きました。
「日本の特徴の一つだね」
「そういえば日本って生きものが妖怪になること多いね」
「そうそう、凄くね」
「狐さんや狸さんに」
「アナグマさんもで」
「他の生きものもそうで」
「まさに全部の生きものがなる感じだね」
 先生は動物の皆に応えました。
「そうだね」
「そうだよね」
「もうどんな生きものも妖怪になる」
「その可能性があるよね」
「生きものの系列の妖怪も多いし」
「そうしたお話かなり多いよ」
「日本は八百万の神々の国だね」
 先生はここでこうも言いました。
「そうだね」
「よく言われるね」
「日本はそうした国だって」
「あらゆるものに神が宿っている」
「神様が司っているって」
「古事記や日本書紀を読んでもね」
 そうもしてというのです。
「次から次に神様が出て来るしね」
「滅茶苦茶多いよね」
「世界一神様が多いって言うけれど」
「実際にそうでしょうね」
「神道の神様は」
「そこに仏教の仏さんも入るしね」
「そして神様が少し変わるとね」 
 そうなってというのです。
「妖怪になるよ」
「イギリスにもそうしたお話あるね」
「神様が妖精になった」
「そう言われるね」
「僕達の祖国でも」
「それは日本でも同じでね」 
 イギリスだけでなくというのです。
「神様は妖怪にもなるんだ」
「森羅万象に神様がいって」
「八百万って言われる位多くて」
「それで妖怪も多い」
「そうなんだね」
「そしてあらゆるものが妖怪になるんだ」
 そうもなるというのです。
「日本ではね」
「神様がそうなって」
「そして妖怪もだね」
「だからあらゆる生きものが妖怪になる」
「そういうことね」
「ものだってそうだね」
 生きものだけでなくというのです。
「付喪神ってあるね」
「そうそう、それもあったよ」
「日本ではね」
「どんなものも長く使っていると魂を持って」
「それで妖怪になるね」
「そうだよ」
 まさにというのです。
「そうなるからね」
「そうしたお国だから」
「妖怪多いんだ」
「生きものの妖怪も」
「そうなってるんだね」
「そういうことだよ、妖怪の多さもね」
 まさにこのこともというのです。
「日本の特徴だね」
「増えていってるしね」
 トートーは笑って言いました。
「今だってね」
「そういえばそうだね」 
 ジップはトートーの言葉に頷きました。
「妖怪は昔のものでなくて」
「アニメや漫画でも出てるし」
 こう言ったのはガブガブです。
「人気もあるしね」
「日本は妖怪の国でもあるね」 
 老馬は断言しました。
「まさに」
「色々な人がいて生きものがいて」
「神様もそうでね」
 チープサイドの家族もお話します。
「仏様もいて」
「そして妖怪もだね」
「色々豊富過ぎて」
 ダブダブは思いました。
「もう一度に頭に入らない位だよ」
「妖怪だけで数えきれない位分厚い本一杯あるしね」
 ホワイティはこう言いました。
「どれだけ多いか」
「生きものやものがなった妖怪も多くて」
 チーチーは考えて発言しました。
「その他の妖怪も多いしね」
「いや、不思議に満ちていてね」
「楽しい国だね」 
 オシツオサレツは二つの頭で思いました。
「何かと色々あって」
「退屈とは無縁だね」
「先生にとっては最適の国かしら」
 ポリネシアは先生を見て言います。
「まさに」
「そうかもね。生物学だけを取っても」
 先生も皆に答えました。
「素敵過ぎる国だよ」
「全くだね」
「この国に来てよかったね」
「先生としては」
「そう思ってるよ、しかしこうしてね」
 先生はオオサンショウウオの資料を見つつお話しました。
「こうした生きものが妖怪になるとね」
「迫力あるよね」
「外見もそうだし」
「只でさえ大きいのに」
「これが十メートル位になったら」
「けれどのんびりして大人しいのよ」 
 お静さんは妖怪になったオオサンショウウオのお話をしました。
「凄くね」
「元々そうした生きものだからだね」
「そうよ、人を襲うお話があるけれど」
 それでもというのです。
「そうしたこともね」
「実際はだね」
「ないしね」
 そうしたこともというのです。
「至ってね」
「大人しくてだね」
「むしろ大きくなっても」 
 十メートル位にというのです。
「人を見ると隠れるのよ」
「そうするんだね」
「シャイなのよ」 
 お静さんは笑ってこうも言いました。
「これがね」
「元々の性格がそうで」
「この兵庫県でもいるけれど」
 オオサンショウウオの妖怪がというのです。
「よかったら紹介するわよ」
「そうしてくれるんだ」
「どうかしら」
「じゃあお願い出来るかな」
 すぐにです、先生は応えました。
「僕もお会い出来るならね」
「それじゃあここを観終わったら」
「もうなんだ」
「丁度この近くに住んでいてね」
 そうしていてというのです。
「私の妖力で飛んで行けばよ」
「すぐになんだ」
「そうよ、どうかしら」
「お言葉に甘えていいかな」
「遠慮は無用よ」
 お静さんはにこりと笑って答えました。
「先生がいいなら」
「それならだね」
「私はいいわよ」
「それではお言葉に甘えて」
「ええ、ここの後はね」
「妖怪のオオサンショウウオさんとだね」
「お会いしましょう」
 こうお話してでした。
 皆は研究所の後はです。
 お静さんの妖力でお空を飛んで兵庫県の山奥それこそ人が滅多に行くことのない様なところに行ってです。
 そのうえでそこにある川に行きますが。
 川の中に向けてです、お静さんは声をかけました。
「半次郎さんいる?」
「その声はお静さんかな」
「そうよ」
 川の岸辺である岩場から声をかけます、川の周りはそうなっていて石も沢山あってその周りは森になっています。
「私よ」
「何の用かな」
「あんたに会って欲しい人がいるのよ」
「僕にかい?」
「ドリトル先生よ」
 お静さんは川の中に向かって告げました。
「今一緒よ」
「へえ、ドリトル先生が来てくれたんだ」
「私が案内したの」
 お静さんはこうも答えました。
「先生とお話してね」
「一度お会いしたいと思っていたけれど」
「じゃあ丁度いいわね」
「そうね、それじゃあね」
「今から出て来てくれるかしら」
「そうさせてもらうよ」
 お静さんの言葉に応えてでした。
 声の主は川からぬっと出て来ました、それはです。
 濃い焦げ茶色の身体で十メートルはあるオオサンショウウオです、お静さんに半次郎さんと呼ばれた彼は川から上半身を出してです。
 先生達がいる岩場の前にお顔を出してそうして挨拶をしてきました。
「はじめまして、貴方がドリトル先生だね」
「はじめまして、そうだよ」 
 先生は半次郎さんに帽子を取って一礼してから答えました。
「僕がドリトルだよ」
「お話は聞いてたよ」
 半次郎さんは先生ににこりとして応えました。
「あらゆる生きもののお友達で学問が大好きでね」
「僕のことをそう聞いているんだ」
「それで妖怪ともお友達だって」
「そうよ、姫路城の姫様ともお友達よ」
 お静さんは半次郎さんにお話しました。
「あの方ともね」
「へえ、あの方ともなんだ」
「それでパーティーも催したのよ」
「そんなことがあったんだ」
「あの時あんたずっと寝ていたからね」
「冬眠したままだった時があったね」
「一年位ずっと寝ていたから」
 その時はです。
「パーティーにお誘い出来なかったけれど」
「そんなことがあったんだね」
「姫路城でね」
 お姫様がいるそのお城で、です。
「そうしたことがあったのよ」
「そうだったんだね」
「そのパーティーのプランを立ててくれたのもよ」
「先生なんだ」
「そうよ」
 その通りだというのです。
「先生はあらゆる学問で博士号を持っていてね」
「それだけじゃなくてだね」
「そうしたことも出来るのよ」
「多才な人だね」
「いやいや、とんでもないよ」 
 先生はお静さんと半次郎さんのお話に驚いて言いました。
「僕はおてもね」
「多才じゃないのかな」
「そうだよ、身体を動かすことはからっきしでね」
 それでというのです。
「家事や世事のことは全くだから」
「それでなんだ」
「多才なんてね」
 それこそというのです。
「全くだよ」
「そうなんだ」
「そうだよ、だからそのことは言っておくよ」
「そうなんだね、先生は謙虚だね」
「それに紳士でしょ」
 お静さんは半次郎さんにあらためてお話しました。
「そうでしょ」
「そうだね」 
 半次郎さんもそれはと返します。
「礼儀正しい人だね」
「私ともお友達でね」
「じゃあ僕ともかな」
「あんた人見知りするけれどいい?」
「先生のお話は聞いてたよ」
 半次郎さんはお静さんに答えました。
「昔からね」
「いい人とかしら」
「勿論だよ、噂通りの人だね」
 即ちいい人だというのです。
「その先生にお会い出来るだけでも嬉しいのに」
「それに加えてよ」
「お友達にもなれるんだね」
「そうよ、どうかしら」
「是非お願いするよ」
 半次郎さんはお静さんに答えました。
「それじゃあね」
「ええ、先生もいいかしら」
「お友達が増えるなら嬉しいよ」
 先生は笑顔で答えました。
「僕はね」
「お互いいいのなら」
「それならだね」
「今からお友達よ」
 先生と半次郎さんはというのです。
「そうなったわ」
「そうだね、じゃあね」
「先生これから宜しくね」
 先生と半次郎さんは笑顔でお話してでした。
 そのうえで握手もしました、半次郎さんは大きな前足を出してそうしました。
 その握手の後で、です。先生は半次郎さんに尋ねました。
「君は幾つかな」
「四百五十二歳だよ」
 半次郎さんは答えました。
「その間ずっとここにいるんだ」
「そうなんだね」
「ほら、兵庫県には昔黒田官兵衛さんがいたね」
「あの人は元々こちらの人だからね」
「元々は小寺って苗字でね」
 それでというのです。
「ここで暮らしていたけれど」
「お会いしたことあるのかな」
「あの人にはないよ、又兵衛さんにお会いしたことがあるよ」
「後藤又兵衛さんだね」
「うん、大坂の陣で活躍したね」 
 半次郎さんは先生に昔を懐かしむ暖かい笑顔でお話しました。
「あの人は元々黒田家の家臣でね」
「こちら出身だったね」
「けれど黒田家を出てね」
 そうなってというのです。
「あちこち旅をしていた時もあって」
「その時になんだ」
「故郷に寄ったことがあって」
「ここにも来たんだ」
「そうしてきてね」
 それでというのです。
「ここに釣りに来たこともあったんだ」
「そうだったんだ」
「それでお会いしたんだ」
 その後藤又兵衛さんと、というのです。
「釣りに来てね」
「ここまでなんだ」
「そうなんだ、僕に気付いたけれど」
「どうだったのかな」
「どうだ調子はってね」
 その様にというのです。
「豪快な笑顔で言ってきたよ」
「そうだったんだね」
「いい人だったよ」
 後藤又兵衛さんはというのです。
「僕は釣らないと言ったし釣るのも食べる分だけで」
「弁えている人だったね」
「そうだったよ」
 こう先生にお話します。
「僕が見る限りね」
「あの人大坂の陣で戦死したっていうけれど」
 お静さんも言ってきました。
「実は違うのよね」
「奈良県の方に逃れたというね」
 先生はすぐに応えました。
「そうだね」
「ええ、そうよね」
「宇陀の方に逃れて」
 そうしてというのです。
「そこに桜が残っているよ」
「又兵衛桜ね」
「伝説だけれどね」
「あそこまで逃れて」
「そうして生きていたのよね」
「そうみたいだね」
「大坂の陣のお話は僕も聞いてるよ」
 半次郎さんも言ってきました。
「羽柴家負けたね」
「今羽柴家と言ったね」
「言ったよ、豊臣家とはね」
「言わないね」
「だってあれ本姓だから」
 その為にというのです。
「僕もだよ」
「そうは呼ばないね」
「それを呼ぶのは失礼だからね」
 その為にというのです。
「普通の姓のね」
「羽柴氏の方でだね」
「呼んだよ、それで右大臣さんともね」
「秀頼さんを呼ぶね」
「秀頼さんというのは諱だからね」
「普通では呼ばないお名前だから」
「呼ばないよ」
 半次郎さんもというのです。
「僕の名前だってね」
「普通の名前でね」
「今も使っているけれどね」
「君は諱はあるかな」
「ないよ、武士の待遇じゃないからね」
 だからだというのです。
「それでも礼儀としてね」
「そこはちゃんとしているね」
「又兵衛さんにしてもね」
「基次さんとは呼ばないね」
「そうしているんだ」
「そうだね、昔の日本人の名前は本姓と諱があったからね」 
 この二つがというのです。
「豊臣秀吉さんも実はそう呼ばれたことなかったしね」
「そうそう、羽柴藤吉郎」
「そう呼ばれていてね」
「諱が秀吉さんで」
「本姓は豊臣さんになったのよね」
「当時あの人を豊臣秀吉さんと呼ぶ人はいなかったよ」 
 動物の皆にもお話します。
「決してね」
「それで方広寺の鐘もだよね」
「国家安康君臣豊楽ってね」
「家康さんを切っていて」
「豊臣家が栄えるってあるけれど」
「こんな言いがかりはしなかったよ」
 幕府もというのです。
「普通に使わないからね」
「諱も本姓も」
「どっちもね」
「当時の人なら」
「若しかして使ってるかって幕府も豊臣家に聞いたかも知れないけれど」
 それでもというのです。
「そこで戦になるとはね」
「ないよね」
「大坂の陣はそれで起こらなかった」
「幕府もそこまで言わなかったのね」
「確認は取っても」
「豊臣家もそんなことはないって答えるし」
 絶対にというのです。
「それで終わったよ」
「ああ、大坂の陣だね」
 半次郎さんもそのお話に入ってきました。
「僕当時生きてたし聞いてるし姫路城の姫様からも聞いたけれど」
「まさにその時代も生きていたからね」
「うん、あの寺のお話じゃないよ」
 方広寺のというのです。
「羽柴家が切支丹を認めて」
「それでだね」
「幕府としてはね」
「それは認められないでね」
「戦になったんだ」
 そうした経緯だったというのです。
「当時切支丹って人を他の国に売って奴隷にしていたからね」
「それで秀吉さんも禁止したね」
「太閤さんもね」
 半次郎さんは今も諱を使いません。
「そうしたんだ、けれどね」
「羽柴家は認めたね」
「お袋さんがね」
 この人がというのです。
「今人は淀殿って呼んでるけれど」
「あの人がだね」
「認めて」 
「そうしてだね」
「幕府としては日本の人達を奴隷にするなんて許せないから」
「戦になったね」
「そうだったんだ、あの戦でお袋さんは死んだよ」 
 淀殿はです。
「けれど右大臣さんとご子息はね」
「生きていたんだ」
「僕も大坂から来た妖怪に聞いたし姫路のお姫様からもね」
「聞いたんだ」
「お二人は真田源次郎さんに護られて」
「信繁、幸村さんとも言うね」
「うん、あの人に鹿児島の方までね」
 当時薩摩といったあちらまでというのです。
「落ち伸びたよ、それでご子息はね」
「あの人もだね」
「実は木下家の分家の人がね」
 まさにこの人がというのです。
「そうだったんだ」
「その実はだね」
「うん、処刑されたとか言われてるけれど」
 それでもというのです。
「実はね」
「そうなっているね」
「そして又兵衛さんもだよ」
 この人もというのです。
「僕当時そのことを知って凄く嬉しかったよ」
「大坂の陣でどうなったかわからなくなっていて」
「それが大和まで落ち伸びて生きているとわかって」
 それでというのです。
「本当にほっとしたよ」
「いい人だったからだね」
「ずっと生きて欲しかったから」
 だからだというのです。
「生きていてね」
「よかったね」
「本当にね」 
 実際にというのです。
「そう思ったよ、ただもう又兵衛さんもお亡くなりになったね」
「うん、人間の寿命だとね」
「大坂の陣に関わった人達は皆ね」
「今はこの世にいないよ」
「おられても幽霊だね」
「そうなっているよ」
「そうだね、後で又兵衛さんも鹿児島に行ったらしいね」
 そうしたというのです。
「聞いた限りだと」
「そうなんだね」
「このことは歴史でわかってるかな」
「いや、又兵衛さんは宇陀に逃れてね」
 そうしてとです、先生は半次郎さんに答えました。
「そこで天寿を全うしたというし公には大坂の陣で」
「戦死したとだね」
「なっているからね」
「右大臣さんも源次郎さんもだね」
「皆あの戦いで死んだとだよ」  
 その様にというのです。
「言われているよ」
「そうなんだね」
「人の歴史ではね」
「歴史の本ではそうね」
 お静さんも言ってきました。
「右大臣さんも幸村さんも又兵衛さんもね」
「皆だね」
「大坂夏の陣でね」
 この戦いでというのです。
「右大臣さんは落城の時自害して」
「幸村さんと又兵衛さんは討たれたね」
「そう言われているわね」
「そしてそれが歴史書になっているから」
「人の歴史ではよね」
「それが公つまりね」 
 即ちというのです。
「事実にね」
「なっているわね」
「そうだよ」
 まさにとううのです。
「そうなっているよ」
「そうよね」
「けれど歴史は学べば学ぶ程だよ」
 その様にしていけばというのだ。
「真実がわかってね」
「真実即ち事実が変わるのね」
「そうなるよ、だからね」
「大坂の陣のこともなのね」
「事実がわかる日もね」
「来るかも知れないわね」
「そうかもね」
 実際にというのです。
「これからは」
「そうなればいいわね」
「僕は学問のことはわからないけれど」
 それでもとです、半次郎さんは言いました。
「先生には嘘を吐いているつもりはないよ」
「君が聞いたことをだね」
「ありのまま言ってるよ」
 まさにというのです。
「姫様も嘘を吐かれる方じゃないし」
「兵庫県の妖怪の棟梁だけあってだね」
「そうだよ、だからね」
「君としてはだね」
「嘘は吐いていないよ」
「そのことはわかるよ」
 先生もにこりと笑って答えました。
「君はそんなことしないよ」
「そうだね、それじゃあね」
「今日の君のお話は覚えておくよ」
「そうしてくれるんだね」
「君自身と共にね」
 半次郎さんに笑顔でお話します、それから彼と楽しくお話をしてです。
 そのうえでお静さんの妖力で研究所に戻ってです、そうしてからお家に戻ってまた論文を書きますが。
 お静さんはお家に帰る時に先生に尋ねました。
「先生半次郎さんに言われたことは」
「歴史学で調べるよ」
 オオサンショウウオのことを調べつつ答えます。
「そうするよ」
「そうするのね」
「うん、実際に昔から言われてるしね」
「又兵衛さん達のことは」
「実は逃げ延びていたってね」
「あの戦いで死なないで」
「特に僕は思うに」
 温厚ですが真剣な言葉でした。
「秀頼さんの息子さんは本当に木下家のね」
「分家になっていたの」
「木下家は秀吉さんの正室さんの実家で」
「ねねさんね」
「岸和田藩として江戸時代ずっとあったけれど」
 そうしたお家でというのです。
「一子相伝で藩主の人が跡継ぎさんに秀頼さんは薩摩に逃れたと伝えていて」
「それは信憑性あるわね」
 お静さんが聞いてもです。
「かなり」
「木下家の秘密の抜け道を使って逃れたそうなんだ」
「そうだったの」
「当時実際に生存説がかなり言われていたから」
 大阪の陣が終わった直後にです。
「それでご子息はね」
「木下家でよね」
「お家の息子さんということにしてもらって」
 そうしてというのです。
「成人すると分家させてもらって」
「大名になったのね、抜け道とか一子相伝は私も知らなかったけれど」
 それでもとです、お静さんは答えました。
「分家してというのはね」
「聞いていたね」
「そうだったわ、妖怪仲間では間違いないと言われてるわ」
「そうなんだ」
「ええ、しかし幕府もよく許したわね」
「公で死んだと言うとね」
 それならというのです。
「幕府としてもだよ」
「そうだとしか言えないのね」
「そうだよ、秀頼さんは自害してね」
「ご子息は処刑したのよね」
「そうしたって言ったからね」
 幕府はです。
「例え生きていても相手がそれを隠していたら」
「見て見ぬふりね」
「相手もそれを言ったら大変なことになるってわかってるし」
「もうそこは言わないで」
「お互いにね」
「それでやっていったのね」
「そうだよ」
「ううん、日本的だね」
 ここまで聞いてです、老馬は言いました。
「もう根こそぎとかしないんだね」
「相手が黙ってるならそれでいい」 
 ポリネシアも言いました。
「そういうことね」
「まあ粛清とかよりずっといいね」
 ダブダブは日本のそうした考えをよしとしました。
「怪しいと根こそぎじゃないのはね」
「見るからに怪しいけれど別に謀反を考えてないし」
 それならとです、ホワイティも言いました。
「問題ないね」
「豊臣家は滅んだ」
 一言で、です。ガブガブは公のことを言いました。
「じゃあ木下家の分家の人も違うわね」
「鹿児島にも逃れていない」
 こう言ったのはトートーでした。
「大坂城が落城した時に死んでるしね」
「ならそれで問題なしだね」
「そうなるわね」 
 チープサイドの家族もお話します。
「木下家も言わないし」
「どれだけ怪しくても公ではそうなっているし」
「そもそも江戸幕府って凄く血を嫌ったね」 
 このことはジップが言いました。
「どうにも」
「そうなんだよね」
 チーチーはジップの言葉に頷きました。
「当時から見たらかなり人道的なんだよね」
「死刑は老中や大坂城代が判断して」
「拷問するにしても一番厳しいのはそうでね」
 オシツオサレツは二つの頭で言いました。
「判決は軽くする」
「それが習わしだったしね」
「そう、幕府は血を好む政権じゃなかったんだ」 
 先生もこのことを指摘しました。
「それじゃあ秀頼さんの息子さんが木下家の分家さんでも」
「公には死んでいる」
「豊臣家は滅んでるし」
「そうなっていたら」
「幾らその人の素性が怪しくて」
「どう見てもそうにしても」
「まあ噂位はね」  
 この程度はというのです。
「何とでも言えるということで」
「意識しない」
「そうだね」
「そこはもう放っておく」
「噂は噂だね」
「それで済ませるしね、何しろ歌舞伎で忠臣蔵を上演されても」 
 そこに幕府の政治を批判するものがあることは言われていますが。
「江戸時代じゃないからね」
「作品の舞台がね」
「室町時代になってて」
「それで人も違うし」
「それならね」
「幕府は何も言わなかったしね」
 自分達を直接言わないと、というのです。
「そうした寛容さを持っていたから」
「幾ら怪しくても」
「どう見てもその人でも」
「それで噂になっていても」
「謀反を考えていないなら」
「よかったんだ、それにその人が秀頼さんの息子さんでも」
 例えそうでもというのです。
「幕府の世は定まったね」
「そうだったね」
「大坂の陣で勝ったし」
「その前に幕府を開いてからずっと地盤固めして」
「天下泰平を定めんとしていたからね」
「それで幕府の世は定まっていたから」
 そうした政治もしてきた結果というのです。
「だからね」
「それでだね」
「もう豊臣家の人が生き残っていても」
「徳川家の統治は覆せない」
「そうなっていたから」
「あえて何もしなかったんだ」
 木下家の分家の人達にというのです。
「どうもね」
「それでその人は天寿を全うしたんだね」
「木下家の分家の人として」
「石高は少ないけれどお大名として」
「生きていったんだね」
「そうみたいだね、そうした意味でも江戸幕府はいい政権だったよ」 
 先生は微笑んでお話しました。
「産業も文化も発展する世の中にして」
「しかも長い間平和で」
「治安もよくて」
「しかも寛容で」
「血も好まないなら」
「真の王道を目指した政権と言えるけれど」
 江戸幕府はというのです。
「まさにね」
「それを実現した」
「そうだね」
「それが江戸幕府だね」
「素晴らしい政権よね」
「そうだよ、日本では最近まで何かと言われたけれど」
 批判的なことをです。
「調べれば調べる程だよ」
「そのよさがわかるのね」
「豊かで平和でいい時代だった」
「そうだったって」
「そうだよ、だからね」
 それでというのです。
「僕は江戸幕府が大好きだよ」
「そうだよね」
「先生幕府をいつも評価してるね」
「それもかなり高く」
「そうだね」
「そうせずにいられないよ」
 まさにというのです。
「僕としてはね」
「いや、先生にそう言ってもらって嬉しいわ」
 お静さんはここまで聞いてです、笑顔で言ってきました。
「日本のことを認めてくれてね」
「公平に学ばせてもらってだよ」
「そう言ってるのね」
「そうだよ」
 こうお静さんに答えます。
「僕もね」
「公平でその評価なの」
「そうだよ」
「現代の日本についても」
「まさにね、自然だってね」
 こちらもというのです。
「公平に見てだよ」
「素晴らしいのね」
「実にね」
 まさにというのです。
「最高だよ」
「オオサンショウウオさんについても」
「素晴らしい生きものだとね」
 その様にというのです。
「言えるよ」
「そうなのね」
「うん、そして他の生きものもね」
「皆素晴らしいのね」
「緯度もあって様々な地形もあるから」
 だからだというのです。
「山に海に川にね」
「山は森ね」
「そこに本当に色々な自然があるから」
「生きものも沢山いて」
「様々な種類のね、だから学ばせてもらっているし」
「論文も書いて」
「そして動物園の方にもね」
 そちらにもというのです。
「喜んでだよ」
「協力させてもらっているのね」
「そうだよ、この自然は大事にしていきたいね」
 先生はこうも言いました。
「これからも」
「そう言ってくれることも嬉しいわ」
「お静さんとしては」
「ええ、本当に日本の全てが好きなのね」
「いや、どうかという部分もね」
「あるの」
「マスコミや学校の先生は酷過ぎるから」
 それでというのです。
「そうしたところはね」
「先生は駄目だって思うのね」
「あんまりにもだからね」
 そこまで酷いからだというのです。
「それでだよ」
「そうしたところは駄目だって」
「僕も言うよ」
 そうだというのです。
「本当にね」
「そうしたところは」
「うん」
 まさにというのです。
「僕はよくないと言うよ」
「けれどそれ以外は」
「別にね」 
 これといってというのです。
「言わないよ」
「悪いところはないから」
「そう思っているからよね」
「そう、だからね」
 その為にというのです。
「言わないよ」
「そうなのね」
「そうしたところがあっても日本はね」
「素晴らしい国ね」
「いい人も生きものも妖怪も沢山いるしね」
「そこに私も入っているのかしら」
「勿論だよ」 
 先生は笑顔で答えました、そうしてです。
 この日も楽しく過ごしました、先生の日本での生活は毎日がとても楽しいものでこの日もなのでした。








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