『ドリトル先生と山椒魚』




              第一幕  両生類

 この時ドリトル先生はご自身の研究室で論文を書いています、動物の皆はその先生に対して尋ねました。
「今度は何の論文を書いてるの?」
「この前は物理のだったけれど」
「今度は何なの?」
「何の論文を書いているの?」
「両生類の論文だよ」 
 先生は書きながら皆に笑顔で答えました。
「それを書いているんだ」
「蛙とかイモリとか」
「あと山椒魚とか」
「そうした生きものの論文なんだ」
「それを書いているんだ」
「そうなんだ」
 こう皆にお話します。
「今回はね」
「そうなんだね」
「そうだよ、そしてね」
 先生は皆にさらにお話しました。
「明日動物園に行くよ」
「動物園?」
「っていうと学園の中にある」
「あの動物園?」
「あそこに行くのね」
「八条学園の中にある動物園は色々な生きものがいて」
 そうしてというのです。
「両生類も沢山いるからね」
「それでだね」
「実際に生きもの達を見て」
「それで学ぶのね」
「そうするんだね」
「そうだよ」
 実際にというのです。
「僕もね」
「動物園に行くのも学問だね」
「実際の生きもの達を見ることも」
「だからこの学園には動物園があるし」
「先生も行くね」
「そうだよ、そしてね」
 先生はさらに言いました。
「一つ大事なことがあるんだ」
「大事なこと?」
「大事なことっていうと」
「動物園に生きものがいるとな」
 そうすると、というのです。
「その種の保存にもなるんだ」
「ああ、確かに」
「動物園にいたら守れるからね」
「それで種の保存になるね」
「確かに」
「残念ながら絶滅が心配されている生きものは多いよ」 
 先生は悲しいお顔で言いました。
「この日本でもね」
「そうなんだよね」
「何かといるね」
「そして絶滅した生きものもいるね」
「日本でもね」
「僕が発見したニホンオオカミも」
 この生きものもというのです。
「一度言われたね」
「うん、絶滅したってね」
「そう言われていたね」
「そうだったね」
「乱獲されたのと」
 それと共にというのです。
「ジステンバーでね」
「ジステンバー怖いよ」 
 ジップはそのジステンバーに悩まされている犬として言いました。
「だから予防接種をしているし」
「それ絶対だね」 
 ホワイティはジップに応えました。
「犬だと」
「狂犬病も怖いけれど」
 チーチーも言います。
「あの病気も怖いね」
「犬だけじゃないからね」
「ジステンバーが怖いのは」
 オシツオサレツは二つの頭で言います。
「狼もなんだよね」
「狼はそもそも犬の元だしね」
「だからジステンバーに気をつけないとね」
 ダブダブも今は真剣に言います。
「駄目だけれど」
「野生だと予防接種なんてしないから」
 老馬は言いました。
「流行ったんだよね」
「それでニホンオオカミは絶滅した」
 ガブガブは悲しそうに言いました。
「残念なことよ」
「乱獲も問題だったけれど」
「病気が一番だったってことね」
 チープサイドの家族の言葉もしんみりとしたものです。
「ニホンオオカミの場合は」
「まさにね」
「それで一度絶滅したって言われたから」
 トートーは思いました。
「ジステンバーがどれだけ怖いかだよ」
「というか蚊は侮れないわ」
 ポリネシアはジステンバーの元であるこの虫のお話をしました。
「他にも病気をもたらすし」
「その蚊によってだよ」
 先生はまた言いました。
「ニホンオオカミは絶滅したとされていたんだ」
「そうだよね」
「けれど動物園にいたら」
「予防接種も出来るし」
「繁殖も可能だし」
「種の保存にいいね」
「そうだよ、だからね」 
 その為にというのです。
「動物園での飼育はいいんだよ」
「学問にもなるし」
「行ってそのうえで見て飼育の中で研究して」
「それでどんな生きものか学ぶ」
「それが出来て」
「しかも種の保存になる」
「そうした場所だからいいんだ、動物園以外にもね」
 さらに言う先生でした。
「水族館や植物園もだよ」
「いいよね」
「学問にも種の保存にも」
「だからあるべきだね」
「そうした場所なのね」
「そうだよ、僕はそう考えているよ」
 先生はというのです。
「本当にね」
「先生の言う通りだよ」
「生きもののことを考えたら」
「学問に種の保存に」
「とてもいいよ」
「けれど飼育は虐待とかね」
 その様にというのです。
「少しでも意見が出たら」
「それで駄目になるよね」
「誰かがそう言ったら」
「それで動物園自体がだめになるね」
「水族館や植物園も」
「他のことでもだね」
 先生は眉を曇らせて言いました。
「除夜の鐘でも運動会の応援でも何でもね」
「そうそう、五月蠅いってね」
「誰かが言ったら」
「それで止めになるんだよね」
「他のあって欲しいっていう意見は無視されて」
「その人の意見が通るのよね」
「商品だってそうだね」
 お店のそうしたものもというのです。
「誰かが食べにくいとか言ったら」
「小さくなるよね」
「一人が言ったら」
「他の人の意見が無視されて」
「そうなるね」
「大抵の人は満足していたら言わないよ」
 特にというのです。
「けれどだよ」
「そうしたこと言う人ってね」
「もう言うことが目的で」
「何でもかんでも言うね」
「それで自分の意見を通そうとする」
「そうだね」
「そうだよ、もう何でも言う人はね」 
 実際にというのです。
「世の中にいるよ」
「そうそう」
「所謂クレーマー」
「そんな人っているから」
「そんな人の意見がまかり通るとね」
「何でもおかしくなるわ」
「だから動物園や植物園廃止なんて意見もね」
 こうしたものもというのです。
「通ったら」
「学問と種の保存にとんでもない影響を与えるね」
「それも悪影響を」
「だから駄目だね」
「そんな意見を無批判に通してはいけないね」
「どんな意見も尊重すべきでも」 
 このことは事実でもというのです。
「けれど検証しないでね」
「こんな意見が出たから通す」
「クレームは面倒だから素直に聞く」
「そんな風だとね」
「絶対に駄目ね」
「そうだよ、どんな意見も検証して」
 そうしてというのです。
「そのうえでね」
「採用すべきだね」
「それが例え抗議だとしても」
「その内容を検証する」
「そしておかしいと思ったら採用しない」
「そうだよ、考えてみたらいいよ」 
 先生は論文を書きながらこうも言いました。
「動物園がなかったら」
「もうね」
「その時はね」
「本当に学問や種の保存にとんでもない悪影響が出るわ」
「水族館も植物園も」
「とんでもないことになるよ」
「少数の暴論が何の検証もなく採用され続けたら」
 そうなると、というのです。
「それもまた民主主義じゃないよ」
「全くだね」
「多くの正論が無視されて」
「少数の暴論がまかり通るなら」
「もう民主主義じゃないわ」
「民主主義ってのは結局多数決で」 
 それで決まるものでというのです。
「少数の意見も検証されるべきでも」
「少数が正しいかというと」
「常にそうとは限らないね」
「逆に多数も常に正しいとは限らないけれど」
「少しの暴論を採用したらいけないね」
「僕は動物園廃止論が多数派になっても違うと言うよ」
 先生はそうだというのです。
「さっき言った通りにね」
「それが正しいと思うから」
「学問や種の保存にとって」
「それでそう主張するのね」
「動物園はあるべきと」
「水族館や植物園もでね」
 こうした施設もというのです。
「そう考えてるよ」
「少数の暴論も通してはいけなくて」
「暴論が多数になっても違うと言う」
「何か難しいね」
「何かと」
「世の中は難しいよ、けれど僕はね」 
 先生はといのです。
「そうした考えだよ」
「それで明日だね」
「動物園に行くんだね」
「それで両生類達を見て」
「それで学ぶんだ」
「そうするよ。図鑑で見るよりも」
 その生きもの達をというのです。
「何と言ってもね」
「実物をその目で見る」
「その生きもの自体を」
「これが一番だね」
「何と言っても」
「そうだよ、だから行くんだ」
 明日動物園にというのです。
「そうするよ」
「じゃあ僕達もご一緒するね」
「いつも通りに」
「そうさせてもらうわね」
「宜しくね、いつも皆が一緒だから」
 先生はにこりと笑って答えました。
「僕も嬉しいよ」
「じゃあそうしましょう」
「明日は皆で動物園」
「そっちに行こうね」
「そうしようね」
 笑顔で言ってでした。
 先生はこの日は帰るまで論文を書きました、そうしてお家に帰ってお風呂に入って晩ご飯を食べますが。
 この日先生のお家に呼ばれて晩ご飯を一緒に食べている王子は晩ご飯のサラダ素麺を食べながら言いました。
「蛙は食べても美味しいんだよね」
「ああ、それを言うんだ」
「駄目かな」
「駄目じゃないよ、僕も食べたことがあるしね」
 先生は和風ドレッシングで味付けされたお素麺をお野菜と一緒に食べながら答えました。そのお素麺もとても美味しいです。
「蛙は」
「ウシガエルとかだね」
「アメリカでは結構食べるね」
「そうそう」
「中国でも蛙は食べるし」
「フランスとかでも食べるし」
「王子のお国でもだね」
 そちらでもというのです。
「食べるね」
「そうしているよ」
「そうだね」
「それでね」
 王子はお素麺をすすりつつ言いました。
「僕結構好きなんだ」
「その蛙がだね」
「煮ても焼いても揚げてもね」
「好きなんだね」
「特に足がね」 
 蛙のこの部分がというのです。
「好きだよ」
「そうだね、あと王子は他の両生類も食べるね」
「うん、僕の国ではね」
「そうだね」
「爬虫類も食べて」
 こちらの生きもの達もというのです。
「両生類もだよ」
「そうだね」
「それが美味しいから」
 だからだというのです。
「よく食べるよ、ただ生ではね」
「食べないね」
「僕の国では元々生は食べないしね」
「果物以外はそうだね」
「だからね」 
 そうした食文化でというのです。
「僕もだよ」
「生は食べないね」
「日本ではお刺身やお寿司を食べるけれど」
 そして好物です、王子はよくこうしたお料理を楽しんでいます。
「サラダもね」
「今はお素麺と一緒に食べているね」
「そう、けれどね」
「お国ではだね」
「生ではね」
「食べないね」
「そしてそれがいいんだね」
 先生に尋ねました。
「川のものだから」
「そうだよ、前も何度かお話しているけれど」
 先生は王子に確かな声でお話しました。
「川のものはね」
「そうそう生で食べたら駄目だね」
「信頼出来るお店以外ではね」
「そうだよね」
「お魚もそうで」
「タニシや蟹もで」
「両生類もだよ」
 今お話している生きもの達もというのです。
「やっぱりね」
「生ではだね」
「食べたらいけないよ」
「そうだね」
「若し食べたら」
 生でというのです。
「寄生虫がいるからね」
「とても危険だね」
「そうだよ」
「鯉もそうですしね」 
 トミーも言ってきました、彼も生きものの皆もサラダ素麺を食べています。
「日本では鯉のあらいを食べますが」
「そうだよ、迂闊にはね」
「生で食べないことですね」
「そうするべきだよ」
「それで蛙もですね」
「生で食べることはね」
「慎重にですね」
 先生に言いました。
「あくまで」
「そうすべきだよ」
 こう言うのでした、先生も。
「後が怖いからね」
「寄生虫は」
「命にも関わるから」
「本当にそうですね」
「脳に至ったりね」
「それで身体の動きに影響が出たり」
「内臓に異常をきたしたりね」
 その機能にというのです。
「それで目に至ったら」
「失明しますね」
「それで本当にね」
「命に至りますね」
「そうだよ」
 先生は言いました。
「だから怖いんだ」
「そういえばジステンバーも寄生虫だね」
 ここで生きものの皆は研究室でお話したことを思い出しました。
「そうだったね」
「そうだよね」
「蚊の幼虫が犬や狼の心臓で繁殖して」
「それで身体に悪影響を及ぼす」
「そして命すら脅かす」
「そんなとんでもないものよ」
「その通りだよ」
 先生もその通りだと答えます。
「だからだよ」
「危険でね」
「充分に注意しないといけないね」
「ジステンバーも」
「寄生虫だから」
「寄生虫を軽く見たらね」
 若しそうしたらというのです。
「こんなに危ないことはないよ」
「だからだね」
「蛙を食べる時でも」
「ちゃんと健康には気を付けて」
「生で食べるなら慎重に」
「そうしないと駄目だね」
「それがいいよ、ある漫画で奇食に凝っていて」
 所謂ゲテモノ食いにというのです。
「それで身体中に寄生虫がいる人がいたけれど」
「それ危ないよ」
「僕達が聞いても」
「命に支障きたすよ」
「冗談抜きで」
「勲章と思っていると言ってたけれど」
 その漫画の登場人物はというのです。
「後で目に至ってね」
「失明したんだ」
「さもありなんね」
「そんな風だと」
「一緒に食べている人で死んだ人も出ていたけれど」
 それでもというのです。
「そして失明してもね」94
「まだなんだ」
「そうしたもの食べているんだ」
「寄生虫がいるのね」
「こんなことは絶対に勧められないよ」
 先生はというのです。
「そもそも僕は医者だからね」
「お医者さんとしたらね」
「当然よね」
「そんな命に関わることをするなんて」
「絶対に勧めないね」
「失明もするし内臓に異常をきたすし」
 これまでお話した様にです。
「脳にも至るから」
「それじゃあね」
「お医者さんとしてはね」
「お勧め出来ないね」
「危ないとわかっているから」
 それだけにというのです。
「もうだよ」
「それはしない」
「出来ない」
「そうしたものだね」
「まさにね」
 その通りだというのです。
「こうしたことは」
「そうですね」
 トミーも頷きました。
「何があってもです」
「そうだよ、だからね」
「川のものはですね」
「豚肉もね」
 こちらもというのです。
「本当にしっかりだよ」
「火を入れるべきですね」
「そうすべきだよ」
「そうですね、そういえば」
 ここでトミーはこうしたことをお話しました。
「昔ナメクジを食べて」
「生でだね」
「それでもう動けなくなって」
「最後はお亡くなりになっているね」
「そうした人がいましたね」
「冗談で食べてね」
 ナメクジを生で、です。
「そうなったんだ、ナメクジにも虫がいるから」
「確か住血吸虫の一種ですね」
「それが入ってとんでもないことになるから」
「絶対にやったら駄目でしたね」
「そうだったよ」
 まさにというのです。
「絶対にやったら駄目なことをしたよ」
「その人は」
「昆虫やそうした生きものも危険で」
 生で食べると、です。
「実はジョロウグモはチョコレートそっくりの味がするけれど」
「生ではですね」
「食べるものではないよ」
「そうですね」
「それで生のお魚や豚肉は」
「しっかり冷凍するか」
「火を入れるかをしてね」
 そのうえでというのです。
「食べるべきだよ」
「そうですよね」
「だから中華料理はよく火を使うし」
 王子が言ってきました。
「イスラム教でも豚肉を食べないね」
「ユダヤ教でもそうだね」 
 先生は王子に応えました。
「豚肉を食べないね」
「キリスト教では食べるけれどね」
「それはちゃんとした理由があるんだ」
「あたりやすいからだね」
「まさにその寄生虫がね」
 豚肉のそれがというのです。
「危険だから」
「ユダヤ教ではイスラム教では食べないね」
「そうなんだ、コーランで禁じられていることは」 
 イスラム教の聖典であるこの本はというのです、先生はイスラム教のこともしっかりと学んできています。
「ちゃんとした根拠があるんだ」
「理由がだね」
「豚肉だってそうだよ」
「犬の唾液は狂犬病だしね」
「だから犬の唾液は不浄とされているし」
 それにというのです。
「豚肉を食べないこともだよ」
「そうした理由があるね」
「そうなんだ」
「そうだね」
「僕はキリスト教徒でもね」 
 信仰はそうでもというのです。
「けれどだよ」
「それでもだね」
「イスラム教は認めているよ」
「その素晴らしさを」
「だから今ね」
「僕のお話にも応えてくれてるね」
「そうだよ、だからね」
 それでというのです。
「豚肉についてもね」
「お話してくれるね」
「そういうことなんだ、それで両生類を火を通して食べることは」
「いいことだね」
「うん、高タンパク低カロリーで」
 そうした食べものでというのです。
「しかも鶏肉みたいな味で食べやすい」
「いいものだよ」
「ゲテモノと言う人がいるかも知れないけれど」
「実は違うよ」
「いい食べものだよ、食べものにも偏見なくで」
 それでというのです。
「食べていくべきだよ」
「好き嫌いなくね」
「そうだよ、じゃあね」
「うん、明日はだね」
「皆と一緒に動物園に行ってきてね」
「両生類を見ていくね」
「そうするよ」
 笑顔でお話してでした。
 先生はこの時は皆と一緒にサラダ素麺を楽しみました、そしてまた学問に励んでそうしてからぐっすりと寝ました。
 朝起きるとすぐに朝ご飯を食べてです。
 動物の皆と一緒に登校します、するとです。
 お家の玄関のところに一匹の小さな緑色の蛙がいました、皆はその蛙玄関の郵便ポストの上に寝ているのを見て言いました。
「アマガエルだね」
「日本じゃよく見る蛙だね」
「何処でもいるよね」
「こうしたお家のところにも」
「そうだね、日本で一番よく見る蛙かもね」
 先生もアマガエルを見て微笑んで言います。
「見ていると愛嬌があるよね」
「そうだよね」
「小さくて目が大きくて」
「その目が結構動くし」
「コミカルな感じもして」
「愛嬌があるね」
「この蛙もね」
 先生はさらに言いました。
「僕は好きだよ」
「そうだよね」
「先生って蛙も好きだけれど」
「アマガエルも好きだよね」
「日本によくいるこの蛙が」
「そうよね」
「見ていて愛嬌があるからね」
 今お話した通りにというのです。
「好きだよ」
「そうだね」
「じゃあそのアマガエルも見たし」
「それじゃあね」
「気持ちよく大学に行けるね」
「これから」
「そうなるよ、それに大学に行ってもアマガエルはいるね」
 この蛙はというのです。
「八条大学は水辺も多いからね」
「学園全体にお池があって」
「幅は狭いけれど運河もあるし」
「しかも草木も多いから」
「アマガエルは何処でもいるね」
「だからまた会えるかも知れないよ」
 学園に行ってもというのです。
「そして会ったらね」
「その時はだよね」
「アマガエルを見て楽しく」
「この愛嬌ある姿を」
「そうするわね」
「そうするよ」
 こう皆にお話してからでした。
 先生は大学に向かおうとしましたがそのアマガエルが先生に言ってきました。
「先生、挨拶がまだだったね」
「おっと、そうだったね」
 先生も言われて気付きました。
「君とはね」
「あらためておはよう」
「こちらこそね」
 先生はアマガエルに帽子を取ってお辞儀をして挨拶を返しました。
「挨拶が遅れて御免ね」
「今したからいいよ、ただね」
「ただ?」
「一つ言っておくことがあるよ」
 こう先生にお話するのでした。
「今日は夜から雨だよ」
「そうなんだ」
「だからね」 
 それでというのです。
「用心しておいてね」
「夜から雨だから」
「朝までね、その間は出歩かない方がいいよ」
「僕は夜はお外に出ないよ」
「なら先生は大丈夫ね」
「うん、ただ王子はわからないから」
 この人はというのです。
「後で連絡をしておくよ」
「それじゃあお願いね」
「うん、しかし君は雨が何時来るかわかるんだね」
「だって僕はアマガエルだよ」 
 アマガエルは先生に笑って返しました。
「漢字で書くと雨蛙だからね」
「雨が降ると元気になるね」
「蛙は元々雨が好きだね」
「お水自体がね」
「その中でも特に僕達アマガエルはね」
 自分から先生にお話するのでした。
「お水それに雨が好きだから」
「雨が何時降るかわかるんだね」
「そうなんだ、だから今夜からがね」
 アマガエルは嬉しそうに言いました。
「楽しみだよ」
「雨が降るから」
「本当にね」 
「それじゃあ今夜は」
「雨が降るからね」
「王子に伝えておくよ」
「そうしたらいいよ」
 大学に行く前の先生にお話しました、そしてです。
 そのお話の後で、です。先生はあらためて皆と一緒に大学に向かいました。そして大学の構内に入ってです。
 皆は周りを注意して見ました、すると。
「蛙多いね」
「特にアマガエルがね」
「大学の敷地内のあちこちにいて」
「それぞれ暮らしているわ」
「一体どれだけいるか」
「わからないよ」
「人間の周りにはいつも沢山の生きものがいるよ」
 先生は皆にお話しました。
「虫や鳥に蛇、トカゲにね」
「蛙だね」
「蛙もいるね」
「あちこちに」
「普段は意識していないから気付かないけれど」
 それでもというのです。
「よく見ればね」
「沢山の生きものがいて」
「そうしてだね」
「蛙も沢山いるのね」
「アマガエルにしても」
「そうだよ、あとアマガエルは皮膚の色が変わるね」
 自分の研究室のある棟に向かって歩きながらお話します。
「そうだね」
「そうそう、緑が基本でも」
「濃い灰色にもなるわ」
「同じアマガエルでもね」
「色が変わるよ」
「それもいいね、そうして周りから見えにくくして」
 そうしてというのです。
「自分を守っているんだ」
「保護色だね」
「要するに」
「それだね」
「身体の色を変えられるのはカメレオンだけれど」
 爬虫類のこの生きものが有名でもというのです。
「それでもね」
「両生類にもそうした生きものがいて」
「そこには蛙もあって」
「アマガエルもそう」
「そうだね」
「そうだよ、そうしたことを学ぶことも」
 先生は皆に言います。
「面白いよね」
「そうだよね」
「アマガエルが一体どんな色になるか」
「それを見るのもね」
「大事だよ」
「両生類のそうしたところも」
 体色が変わることもです。
「今調べているしね」
「じゃあ丁度よかったわね」
「アマガエルに注目して」
「そうもして」
「全くだよ」 
 先生はにこりと笑って応えました、そうしてです。
 皆と一緒に研究室に入りました、すると皆は先生に急かす様に言いました。
「先生行こう」
「動物園行こう」
「そうしようよ」
「それで両生類の皆を見ようよ」
「ははは、まだ開園していないよ」
 先生は逸る皆にミルクティーを飲みながら応えました。
「もう少し後だよ」
「ちょっと今日は早く来たし」
「それじゃあだね」
「開園はまだ先だから」
「落ち着くことね」
「そうしたらいいよ、動物園は逃げないよ」
 紅茶を飲みながら笑顔で言います。
「安心していいよ」
「そうだね、そこでそう言うのが先生だよね」
 トートーは先生のそのお言葉に頷きました。
「いつも落ち着いているのが」
「先生は何があっても焦らないね」
 ダブダブも言います。
「そこが先生だよ」
「だから開園時間もちゃんと把握していて」
 ポリネシアは研究室の時計の時間をチェックしました、見れば実際に開園にはまだ時間があります。
「待つのね」
「そうだね、ここは待とう」
 ジップも言います。
「今行ってもどうしようもないよ」
「それじゃあ紅茶を飲んだらね」
「論文を書くか本を読むのね」
 チープサイドの家族もお話します。
「インターネットでも調べる」
「そうするんだね」
「待ってる間もすることがあるし」
 チーチーも言います。
「何かとしていればいいね」
「私達も私達ですることあるわよ」
 ガブガブが言ってきました。
「お掃除しましょう」
「研究所全体のね」
 ホワイティはガブガブの言葉に応えました。
「それをしようね」
「毎日していることだしね」
「早速皆でしよう」 
 オシツオサレツは二つの頭で言いました。
「これからね」
「それが研究室に来てまずすることだし」
「よし、皆ではじめよう」 
 最後に老馬が言いました。
「これからね」
「毎日悪いね」
 お掃除はおろか家事は全く駄目な先生はお掃除にかかった先生に応えました、そのうえでまた言うのでした。
「研究室を奇麗にしてもらって」
「それはいいよ」
「僕達のお仕事だからね」
「先生の身の回りのことをすることは」
「先生は学問は何でも出来るけれど」
「ことスポーツと家事になると」
 こうしたことはとです、皆も言います。
「どうしてもね」
「からっきしだから」
「そうした欠点も愛嬌だけれどね」
「先生のいいところだよ」
「学問は何でも出来るし紳士だけれど」
「凄くいい人だけれど」 
 それでもというのです。
「スポーツと家事はからっきし」
「そこがまたいいのよ」
「そんな先生だからね」
「僕達も一緒にいられるんだよ」
「そうなんだね、じゃあ僕は開園まで両生類の本を読むから」
 そうするからというのえす。
「紅茶を飲みながらね」
「そうしようね」
「それじゃあだね」
「先生は学問に励んで」
「僕達はお掃除に励もう」
 こうお話してでした。
 皆は研究室の隅から隅までお掃除しました、すると研究室は何処までもピカピカの埃一つないまでに奇麗になりました。
 先生はそうなった研究室の中で学問をして紅茶を飲みました、その紅茶を一杯飲んだあと時計を見ますと。
 先生はお掃除を終えた皆にです、こう言いました。
「さて、そろそろね」
「いよいよだね」
「動物園に行くんだね」
「これから」
「そうするのよね」
「時間が来たからね」
 だからだというのです。
「今出発したらね」
「丁度動物園の入り口に着いた時にだね」
「開園だね」
「その時間だね」
「そうだよ、だからね」
 そうなるからだというのです。
「そろそろ出発しよう、ゆっくりとね」
「そしてゆっくりと歩く」
「焦らないで」
「そうしてだね」
「そのうえでだね」
「動物園に行こうね」 
 こう言ってでした。
 先生は皆と一緒にでした、研究室を出ました。そうしていつものペースで歩いて動物園まで向かうとでした。
 その正門に着いた時にです。
「今から開園です」
「丁度よかったね」
「はい、日笠さんもおられるので」
 入口の受付の人は先生に笑顔でお話しました。
「どうぞ」
「日笠さんは昨日お休みだったね」
「ご存知でしたか」
「実は日笠さんから連絡があったんだ」
「そうなんですか」
「昨日の朝ね」
 その時にというのです。
「今日はお休みなので」
「メールで、ですか」
「僕のスマートフォンにね」
 そちらにというのです。
「お話してきたんだ、だから動物園には」
「昨日はですか」
「僕が来るなら残念だってね」 
 その様にというのです。
「メールで言ってたよ」
「そうですか、ですが今日はです」
「日笠さんはおられるんだね」
「はい」
 明るい笑顔での返事でした。
「そうです、しかしです」
「しかし?」
「日笠さんとメールのやり取りは毎日ですか」
「うん、日笠さんの方からね」
 先生は受付の人に素直に答えました。
「毎日送ってきてくれるよ」
「それは有り難いですね」
「だから僕もね」
 先生もというのです。
「喜んでお返事をね」
「送っておられますか」
「そうしているんだ、毎日ね」
「日笠さんも頑張ってますね」
 受付の人はこのことがわかって余計に笑顔になりました。
「それは何よりです」
「日笠さんは素敵なお友達だよ」
 先生は純粋な笑顔でこうも言いました。
「本当にね」
「先生、それはないから」
「全く」
「何でそこでそう言うのかしら」
「先生はそこがね」
「最大の欠点だよ」
 動物の皆は純粋な笑顔になった先生に困ったお顔で言いました。
「こうしたことに気付かない」
「どうしてもね」
「何でいつも気付かないのかな」
「こうしたことに」
「絶対に」
「気付いてない?」
 そう言われてもでした、先生は。
 首を傾げさせてです、こう言うのでした。
「僕が何にかな」
「いや、皆気付いてるよ」
「というかはっきりわかってるから」
「先生の周りの誰もが」
「それこそね」
「それで僕だけが気付いていないとなると」
 先生はまた首を傾げさせて言うのでした。
「何かな」
「まあもうそれは置いておいてね」
「先生がわからないことはいつもだし」
「それじゃあね」
「もういいよ」
「いいんだ、何かわからないままだけれどそれならいいよ」
 皆がそうならと応える先生でした。
「それじゃあ僕はね」
「うん、行こう」
「そうしよう」
「今からね」
「動物園の中にね」
「そうしようね、じゃあ日笠さんに今から入るってね」
 その様にというのです。
「連絡するよ」
「早くそうしてね」
「というまだしてないんだ」
「普通もうしてるよ」
「こうしたこと本当に駄目だから」
「やれやれよ」
「いつも思うことにしても」 
 呆れて言う皆でした。
「本当にね」
「まあ連絡するならいいよ」
「しなかったら今頃僕達が言ってるよ」
「早くしてってね」
「そうね」
「そうなんだね、まあ兎に角ね」
 先生はご自身のスマートフォンを手に応えました。
「今からだよ」
「動物園に入ろうね」
「楽しみにしていたし」
「日笠さんと一緒にね」
「そうしよう」
 皆はやれやれと思いつつです。
 動物園の門が開くのを見ました、そうしてその先生と一緒に開かれた門を潜って中に入ったのでした。








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