『ドリトル先生と不思議な蛸』




                第二幕  三重県へ

 先生が動物の皆と一緒に夏休みのはじめに鳥羽に行くと聞いてでした、王子は先生のお家でそれはというお顔になって言いました。
「いいいところに行くね」
「そうだね」
「三重県なんてね」
「三重県もいいところだね」
「その鳥羽にしてもね」
 それにというのです。
「伊勢もね」
「それでなんだ」
「夏休みになったら」
「すぐにだよ」
「鳥羽に行くんだね」
「そしてね」
「その蛸を探すんだね」 
 王子は先生に麦茶を飲みながら言いました、よく冷えている麦茶がとても美味しくてもう三杯目です。
「そうするんだね」
「そのつもりだよ」
「それでなんですが」
 トミーも先生に言ってきました。
「先生はもうその赤くない蛸のことは」
「ほぼ間違いないと思う位にね」
「察しがついておられるんですね」
「そうなんだ」
 もう既にというのです。
「間違いないという位にね」
「そうですか」
「ただね」
「ただ?」
「今回は危ないともね」
「思われていますか」
「だから皆にも言ったんだよ」
 動物の皆にもというのです。
「今回は特に気をつけて欲しいとね」
「そうなんですね」
「うん、学問には危険が共にある場合もあるから」
「それは言えますね」
「そうだね、危ない場所に行くこともあれば」
 先生はトミーに麦茶を飲みながらお話しました。
「危険な生きものに近付くこともあるし」
「危険なものにも」
「だからね」
 そうした時もあるからだというのです。
「気を付けないといけない時はね」
「気を付けてですね」
「しないといけないんだ」
「そういうことですね」
「だからね」
 それでというのです。
「今回はね」
「気を付けて」
「やっていくよ」
「そこがわかっているのも先生だね」 
 王子は笑顔で言いました。
「流石と言うべきか」
「いや、化学の実験で普通だからね」
 先生は王子にすぐに答えました。
「塩酸も硫酸も使うね」
「危険なものをね」
「火だって使うし」
「ニトログリセリンを作ったりもするね」
「そうしたものだし医学でもね」
 本職であるお医者さんのお話もします。
「命が関わっているから」
「危険なこともね」
「あるからね」
 だからだというのです。
「気を付けるべきことはね」
「気を付けてだね」
「そのうえでやらないといけないよ」
「そうしたものなんだね」
「そうだよ、だからね」 
「先生も気を付けるべき時は気を付ける」
「そうしているよ、命が関わるから」
 それだけにというのです。
「本当にね」
「気を付けないといけないね」
「自分の命だけでなく他の人も命も関わることもあるから」
「そうだね、じゃあ今回は」
「皆も僕もね」
 誰もがというのです。
「気を付けてね」
「やっていくんだね」
「そうしたものになるよ」
「そういえば日本人って蛸を怖いと思わないから」
 王子もこのことについて言います。
「警戒しないよね」
「世界で一番蛸を怖がらない人達だと思うよ」
「烏賊もだけれどね」
「もう食べものとしか思っていないから」
 蛸についてです。
「烏賊もだけれど」
「だから警戒していなくて」
「かえって危ないケースもあるんだ」
「そうなんだね」
「うん、蛸も色々だから」
 危険な蛸もいるというのです。
「そこは気を付けないとね」
「日本人も」
「ミズダコにしても人を襲うこともあるから」
「そのこともあるから」
「日本人でこのことを知ってる人は殆どいないからね」
「ミズダコって食べものって思ってますよ」
 トミーは少し笑って言いました。
「完全に」
「そうだね」
「どう考えても」
「もうたこ焼きにするか酢だこにするか」
「お刺身にしたりおでんに入れたり」
「唐揚げや天麩羅にしたり」
 そうした風にしてというのです。
「食べるね」
「ミズダコもそうで」
「本当にそんな生きものと知らないから」
 ミズダコが人を襲うこともあるということをです。
「蛸壺を置いて」
「それで捕まえて食べる」
「そうしたものでしかないよ」 
 日本人にとってはです。
「だからかえってね」
「危ないこともありますね」
「そうなんだ」
「そういえば蛸って牡蠣食べるね」
 ここで言ったのはジップでした。
「貝類をね」
「それで困ることもあるんだよね」
 チーチーも言います。
「牡蠣とかを大量に食べられて」
「そうなったら大変よ」
 ダブダブも言いました。
「本当にね」
「牡蠣は美味しいからね」
 ガブガブはその味を知っています。
「だから蛸に全部食べられたら困るよ」
「けれど日本人は両方食べるから」
 トートーはこのことを指摘しました。
「もうね」
「蛸が出ても困らないわね」 
 ポリネシアははっきりと言いました。
「どっちも食べるから」
「それも蛸は蛸壺を出して簡単に捕まえるから」
 こう言ったのはホワイティです。
「何も困らないね」
「欧州で蛸が沢山出たら大変だってなるけれど」
「貝類を食べられるから」
 チープサイドの家族も言います。
「どうしようかってなって」
「蛸をどうして捕まえるかってことから頭を抱えるのに」
「日本人は蛸壺を海に入れて終わり」 
 老馬は言いました。
「蛸を片っ端からそれで捕まえて蛸を食べる」
「勿論貝も食べる」
「そっちもね」
 オシツオサレツは二つの頭で言いました。
「そして楽しむ」
「それが日本人だからね」
「うん、そのことは凄いけれど」
 それでもと言う先生でした。
「怖い蛸もいる」
「ただ食べるだけじゃない」
「そのことは覚えないとね」
「日本人にしても」
「そこはね」
「命に関わる場合もあるしね」
 それだけにというのです。
「気を付けないとね」
「そうだよね」
「蛸も怖かったりする」
「そして学問も気を付ける時がある」
「そうだね」
「その通りだよ、しかしね」
 こうも言った先生でした。
「鳥羽に行くこと自体は楽しみだね」
「そうだね」
「じゃあ僕達と一緒にね」
「鳥羽に行きましょう」
「夏休みに入ったら」
「もうすぐに」
「是非ね」
 先生は笑顔で言いました、そうしたお話をしてです。
 麦茶を飲みました、そしてまた言うのでした。
「夏のこの麦茶がね」
「最高だよね」
 王子も飲みながら言います。
「何といっても」
「日本にいるとね」
「よく冷えた麦茶を飲んでね」
「そして西瓜を食べたりね」
「よく冷えた果物とか」
 そうしたというのです。
「水饅頭や水羊羹をね」
「食べるんだね」
「きなこ餅もいいね」
「ああ、あれも美味しいね」
「だからね」
 それでというのです。
「こうしてね」
「麦茶を飲んで」
「お菓子もね」
 これもというのです。
「楽しもうね」
「はい、お菓子があります」
 トミーがここで言ってきました。
「水羊羹が」
「ああ、それがなんだ」
「お抹があります」
「いいね、普通の羊羹もいいけれど」
 先生はトミーに笑顔で応えました。
「水羊羹もね」
「美味しいですよね」
「うん、あの甘さはね」 
 本当にというのです。
「よく冷えていてかつ優しい」
「そうした甘さですね」
「水羊羹の甘さはね」
「それがいいんですよね」
「凄くね、ではね」
「今からですね」
「水羊羹もいただこう」
 麦茶と一緒にです。
「そうしよう」
「それじゃあ」
 こうしたお話をしてです、皆は麦茶に水羊羹も楽しみました。そうした楽しい日常を過ごす中で、です。
 鳥羽に行く準備も進めます、その中で。
 先生のことを聞いて日笠さんが先生の研究室に来て尋ねました。
「鳥羽に行かれますか」
「はい、そうなりました」
 先生は日笠さんに笑顔で答えました。
「夏休みのはじめに」
「そうですか」
「そしてです」
 そのうえでというのです。
「蛸のことを調べてきます」
「蛸ですね」
「あちらに赤くない蛸が出たとか」
「赤くない蛸ですか」
 そう聞いてです、日笠さんは。
 どうかというお顔になってそうして言いました。
「それはまた」
「ご存知ですか」
「危険ですね」
 曇ったお顔になって言いました。
「それはまた」
「ですから」
 それでというのです。
「僕もです」
「気を付けてですね」
「調べます」
「そうされますね」
「凄く数の少ない蛸ですが」
 その蛸はというのです。
「ですが」
「それでもですね」
「危険ですから」
 その為にというのです。
「そうしていきます」
「くれぐれもそうして下さい」
「只でさえお水の中に入りますし」
 先生はこうも言いました。
「余計にです」
「気を付けられますね」
「はい」 
 そうだというのです。
「お水ですから」
「お水の中に入りますと」
 日笠さんも言います。
「実際にそうですね」
「潮干狩りの様な場所でも」
「やっぱり危ないですね」
「岩場で足を切ったりもしますし」
「ちょっとした深さで溺れます」
「ですから」
 そうなるからだというのです。
「本当にです」
「お水、海にもですね」
「気を付けます」
「それがいいですね」
「火よりも水の方が危ない」
 先生はこの言葉も出しました。
「そうも言いますね」
「時々言われますね」
「中国の古典、韓非子の言葉だったでしょうか」
 確かにというのです。
「確か」
「先生は中国の古典も読まれていますか」
「はい、中国語で読んでいます」
 そちらでというのです。
「漢文で」
「そうですか」
「はい、ですから」
 それでというのです。
「知っています」
「そうなのですね」
「いや、そうした本を読むことも面白いです」
「中国の古典を」
「論語等を」
「そうした本も読まれるなんて」
 日笠さんは目を丸くさせて言いました。
「凄いですね」
「そうでしょうか」
「それも中国語で」
「今の中国語でも読めますが」
「略体字の」
「昔の簡体字でもです」
 そちらの漢字でもというのです。
「読めます」
「そうですか」
「それで読んでいます」
「中国の古典も」
「史記も読みました」
「中国の歴史書ですね」
「史記の面白さは素晴らしいです」
 こう言って絶賛しました。
「もう歴史書といいますと」
「史記ですか」
「そう言っていいまでです」
「私は史記は読んだことがないのですが」
「読まれますと」
 そうすればというのです。
「多くのことが学べます」
「歴史のことを」
「そして人間のことを」
「そうなのですね」
「日本語のものも出ていますので」
 翻訳されたものもです。
「読まれて下さい」
「わかりました、私は理系で」
「生物ですね」
「中学生の時から理系が得意で」
 それでというのです。
「高校は理系のクラスに入り」
「大学もですね」
「生物学を学んでいて」
「動物園に入られて」
「もうずっと理系です」 
 学問はそちらだというのです。
「私は」
「理系も楽しいですね、日本では文系ばかり言って理系をやけに嫌う小説家さんもいますが」
「そうなのですか」
「随分おかしな人に思えます」
 この小説家さんはというのです。
「多くの作品がアニメになってもいますが」
「凄く売れている人ですね」
「おそらく日本の小説家では最もです」
「売れていますか」
「そうです」
 先生は答えました。
「はい、ですが」
「そんなことを言われていますか」
「文系と理系両方がです」
 まさにというのです。
「重要であり」
「どちらがどちらかではないですね」
「そうです、どちらが偉いということもなく」
「低いこともですね」
「ありません」
 先生は言い切りました。
「その人は他にもおかしなことを書いていますが」
「そのことがですか」
「僕は間違っていると言います」
「文系も理系も同じですね」
「そうです、共に素晴らしいのです」
「どちらが上でどちらが駄目かはないですね」
「そうなのです、むしろあの小説家さんの様なこと言えば」
 その時はといいますと。
「学問を学べないです」
「そこまでのものですか」
「正しい学問は」
「そう思います、学問は確かにそれぞれ違いますが」
 それでもというのだ。
「何がよくて何が駄目か」
「そういうことはないですね」
「文系でも理系でも」
「ではその小説家さんは」
「間違っています」
 先生は言い切りました。
「全く以て。ですから」
「史記等も読まれて」
「生物学も楽しんでいます」
「そうですか」
「はい、そして鳥羽では」
 そちらではというのです。
「蛸からです」
「生物学を学ばれますか」
「海洋生物学ですね」
「そちらを、危険があることを自覚しつつ。そして」
「そしてとは」
「鳥羽のお土産も持って来ますので」
 先生は日笠さんにこちらのお話もしました。
「楽しみにしておいて下さい」
「それは嬉しいです」
 日笠さんは先生のその言葉にこれまで以上に明るい顔になりました、そしてそのお顔で先生に言うのでした。
「それでは」
「はい、お土産は赤福餅でいいでしょうか」
「あちらの名物ですね」
「僕も八条百貨店で特産品で売られていた時に食べましたが」
 その時にというのです。
「美味しかったです」
「あのこし餡がいいですよね」
「お餅も」
「私も好きです」 
 こう言うのでした。
「あのお餅は」
「それでは」
「楽しみしています。お抹茶を用意して」
「お抹茶ですか」
「お抹茶は昔から好きでして」
 それでとです、日笠さんは先生に答えました。
「ですから」
「それで、ですか」
「楽しみにしています」
「そうですか」
「はい、それでは鳥羽に行ってきます」
「そうされて下さい」
 こうしたお話を日笠さんともしてでした。
 先生は鳥羽に行く準備を進めました、そのうえで。
 遂に夏休みがはじまり鳥羽に行く前日になりました、その時に王子とトミーが先生にお家でこんなことを言いました。
「僕は少し祖国に帰るから」
「僕は留守番をしながら学んでいきます」
「だからね」
「鳥羽には同行出来ないです」
「うん、今回は君達と一緒じゃないことが残念だけれど」
 先生もお二人に応えます。
「行って来るよ」
「そうしてきてね」
「鳥羽では皆のお話をよく聞いて下さいね」
「先生のサポートはやっぱり動物の皆が一番いいから」
「そうして下さい」
「そうさせてもらうよ、僕は家事とか世の中のことはさっぱりだからね」
 先生も二人に返します。
「だからね」
「先生は学問と人柄は素晴らしいよ」
 王子もこのことはよく知っています。
「けれど本当にスポーツとね」
「世の中のことはだね」
「苦手だからね」
「それも大のね。もう一つあるけれど」
「もう一つ?」
「まあそれは言わないけれど」 
 恋愛についてはです、先生のこのことについてのどうしようもない位の鈍感さについてはあえて言わないのでした。
「先生は得手不得手がはっきりしているからね」
「そのことはだね」
「皆がいてくれているから」
 その動物の皆を見ながら先生にお話します。
「宜しくね」
「そうしていくよ」
「うん、それなら僕達も安心だよ」
「皆がいてくれますと安心出来ます」
 トミーも笑顔で言います。
「先生は一人にしておけないですから」
「僕が一人だと」
「もうどうなるか」
 それこそというのです。
「わからないですから」
「それでだね」
「皆といつも一緒なので」
「安心出来てだね」
「今もです」
 まさにというのです。
「皆が一緒ですから」
「それでだね」
「安心出来ます」
「そうなんだね」
「じゃあ皆のお話を聞いて下さいね」
「先生、任せてね」 
 ガブガブが明るく言ってきました。
「周りのことは全部僕達がやるから」
「もう何の心配もいらないよ」
 ホワイティはガブガブの頭にいます。
「それこそね」
「学問のことは先生のお話を聞いて動くけれど」
「世の中のことは私達に任せて」
 チープサイドの家族はオシツオサレツの背中にいます。
「全部ね」
「アドバイスしていくよ」
「若し先生が困ったら」
 ここで言ったのはトートーでした。
「僕達が必ず動くよ」
「何があっても」
 それでもと言うジップでした。
「僕達が何とかするよ」
「三人いればっていうね」
「日本だとね」
 オシツオサレツは二つの頭でお話します。
「文殊の知恵っていうし」
「僕達はこれだけいるから」
「そしてそれぞれの特技があるから」
 ポリネシアはこのことをお話しました。
「それも使うしね」
「これまでピンチはいつもそうして乗り切ってきたから」
 チーチーは老馬の横から言いました。
「鳥羽でもそうしていこう」
「何かあっても騒がない慌てない」
 その老馬がいいます。
「先生はいつも僕達にそう言ってるね」
「私達もその通りにするし」 
 ダブダブはいつもの落ち着いた余裕のある態度です。
「何かあったら世の中のことは皆に任せてね」
「うん、頼りにしているよ」 
 先生も皆に言います。
「本当にね」
「頼りにしてね」
「いざという時はね」
「僕達がいるから」
「だからね」
「助けさせてもらうよ」
「そうだね、しかしね」
 ここでこうも言った先生でした。
「三重県は結構広い場所でもあるね」
「そういえばそうですね」 
 トミーもそうだと答えました。
「あちらは」
「うん、南北にね」
「そしてそれぞれの地域がありますね」
「鳥羽や伊勢もあればね」
「名張もあって」
「四日市市もあるし」
「伊賀や甲賀もでしたね」 
 トミーは忍者で有名なこの地域のお話もしました。
「三重県ですね」
「鈴鹿もだしね」
「県庁の津市もあります」
「あと松坂だね」
「地域性の強い県なんですね」
「うん、それぞれの地域でね」
 先生もこう答えました。
「三重県はそうだよ」
「それは昔からですか」
「そう、元々は伊勢と志摩と伊賀の三国だったしね」
 先生は日本の昔の国のお話もしました。
「地域性が強いんだ」
「それぞれで」
「長野県は盆地ごとがそれぞれの地域だったけれど」
「三重県は三重県で」
「地域性があってね」
 それでというのです。
「個性が強いんだ」
「それぞれの地域の」
「そうなんだ、たださっき伊賀や甲賀の名前が出たけれど」
 忍者で有名なです。
「そちらには行かないだろうね」
「そうですか」
「四日市や津市もそうだけれど」
 忍者の方もというのです。
「行くのは鳥羽だからね」
「ああ、伊賀とか甲賀と鳥羽は分かれているんだ」
 王子はここで、でした。
 日本の関西の地図を出しました、それで言うのでした。
「そういえば結構な距離があるね」
「同じ三重県でもね」
「そうだね」
「奈良県もそうだったね」
 先生は前に行ったその県のお話もしました。
「同じ県でも結構な距離があるね」
「うん、特に北と南でね」
「日本は日本人は狭いと言うけれど」
「実はイギリス本土より広いしね」
「そう、結構広い国だよ」
 日本という訓はというのです。
「これでね」
「住んでいて実感するよね」
「どうも日本人は日本を過小評価することが多いよ」
「実は広い国だし」
「外交は柔軟でバランスが取れているし」
「農業だってね」
 王子はこちらのお話もしました。
「かなりのものだよね」
「世界屈指のね」
「それでも駄目とか言ってるのはね」
「スーパーに行けばわかるよ」
 その真実はというのです。
「それだけでね」
「そうだよね」
「どれだけ日本の農産物が多いか」
 それこそというのです。
「もうね」
「それを見ればわかるね」
「日本の産業を学んでいるとね」
 勿論農業もです。
「それもね」
「わかる筈だよ」
「それがどうして駄目だって言われてきたのかな」
「何でも言い募るとね」
 先生は王子にお話しました、勿論他の皆にもです。
「それを人が信じるとね」
「ああ、それが常識になるんだね」
「それも皆が聞こえる場所で言い続けると」
「新聞とかテレビとか」
「それも学者さんとか権威がある人がね」
「するとそれがだね」
「事実になるんだ」
 そうなるというのです。
「真実はどうでもね」
「事実と真実は違うのかな」
「そうかもね、真実はね」 
 それはというのです。
「時として隠されるものだよ」
「それが事実にならないんだ」
「嘘を言い続けていたら」
「特に新聞やテレビで。特に日本は悪質なキャスターが昔から多いね」
「ああ、もういつもテレビにいるね」
 まさにとです、王子も頷きました。
「本当に昔から」
「だからね」
「それが事実になるんだ」
「日本の農業は駄目だともね」
「なるんだね」
「そう、けれどしっかりと学んだら」
 農業にしてもというのです。
「真実がわかるよ、そして地図でもね」
「しっかり学ぶとだね」
「日本が結構広い国だとわかって」
「そしてね」
 それにというのです。
「三重県もね」
「広くて」
「鳥羽と伊賀とかは結構離れているんだ」
「そうなんだね」
「だからね」
 今回はというのです。
「ちょっと無理だよ」
「そういうことだね」
「うん、ただ僕も忍者には興味があるから」
 だからだというのです。
「また別の機会にね」
「伊賀や甲賀にだね」
「行くよ」 
 こう言うのでした。
「実際にね」
「そうするんだね」
「うん、忍者も素晴らしいからね」
「八条学園にも忍術部あってね」
「そこで忍者のことを見ても」
 そうしてもというのです。
「素晴らしいと思うよ」
「だからだね」
「実際に伊賀や甲賀に行って」 
 そしてというのです。
「楽しむよ」
「そうするんだね」
「機会があればね」
 こうしたお話をしてでした。
 先生は次の日の朝早くに神戸から鳥羽に向かって動物の皆と一緒に出発しました。王子と執事さん、トミーが見送ってくれました。
 先生は彼等と駅で手を振り合って一時のお別れをして動物の皆と一緒に列車に乗りました、その列車はといいますと。
「今回は貨物列車だね」
「生きものを運ぶ為の」
「北海道に行った時も乗ったけれど」
「今回もだね」
「うん、これがね」
 先生は皆に答えました。
「一番快適だしね」
「同じ車両で皆と一緒に行ける」
「だからだね」
「先生にとってはいいね」
「そうしたことも」
「うん、そう思うよ」
 実施ァにというのです。
「僕もね」
「そうなんだね」
「先生にとってもだね」
「だから今回も生きものの貨物列車に乗って」
「それで鳥羽まで行くんだね」
「そうするのね」
「そして行く間はね」 
 その鳥羽にまで、です。
「皆でお弁当を食べながらね」
「行こうね」
「お茶も飲んで」
「そうして鉄道の旅を楽しもう」
「そうしましょう」
「鉄道の旅は素晴らしいものだよ」
 先生は貨物列車の中で目を細めさせています、間もなく出発するその中で皆と一緒に同じ車両にいてお話しています。
「日本でもね」
「その車両の旅がよくて」
「それでだね」
「今から楽しむね」
「そうするね」
「そうしてね」 
 そしてというのです。
「鳥羽まで行くんだ、途中停まる駅もあるけれど」
「それでもだね」
「そうした駅はあまりないね」
「人を乗せる列車よりもね」
「貨物列車はかえって少ないよね」
「移動の旅が多いね」
「駅に停まっても駅の風景を楽しめるけれど」 
 それでもというのです。
「車窓を楽しめる」
「そうそう、移動しながらの」
「その旅も楽しめるから」
「余計にいいね」
「じゃあ鳥羽まで」
「ゆっくり楽しもう」
「そうていこうね、そろそろだよ」
 先生は海中時計を取り出して時間をチェックしました、イギリスにいる時から使っている凄く古い時計です。
「列車が出発するよ」
「いざ鳥羽へ」
「今から出発だね」
「また旅がはじまるわ」
「僕達の素敵な旅がね」
「旅はいいね」
 先生は目を細めさせてこうも言いました。
「本当にね」
「うん、普段と違う日々」
「その日々を楽しめるからね」
「あんないいものはないわ」
「それじゃああね」
「今から出発するから」
「楽しもうね」 
 笑顔で言う先生でした、そして。
 列車が出発しました、するとです。
 先生は皆と楽しくお喋りをして車窓から見える景色を眺めてお弁当を食べました。そのお弁当はといいますと。
 それぞれの場所の駅弁です、先生はウイスキーを飲みながら駅弁達を食べてこんなことを言いました。
「駅弁をこうして食べることもいいね」
「先生駅弁も好きよね」
「日本のあらゆる駅弁が」
「今回も色々食べてるわね」
「そうしているね」
「だってね、どれも美味しいからね」
 それでというのです。
「もう列車の旅になったら」
「それならだね」
「駅弁を食べる」
「窓の景色を眺めて」
「私達と一緒にいて」
「そうしてね」
 まさにというのです。
「どんどん食べるよ、ただね」
「ただ?」
「ただっていうと?」
「先生どうかしたの?」
「いや、日本には食堂車両もあって」
 それでというのです。
「そちらでも食べられるんだよ」
「ああ、そうだったね」
「新幹線でもあったわね」
「駅弁以外にもね」
「そんなのがあったね」
「こちらはこちらでね」
 食堂車両もというのです。
「いいね」
「言われてみるとそうね」
「欧州でもあるけれどね、食堂車両」
「移り行く車窓の景色を眺めながらのディナー」
「あれもいいね」
「それを日本でも楽しめるね」
「日本はそちらもあるからね」
 食堂車両もというのです。
「いいね」
「確かにそうね」
「駅弁だけじゃない」
「そのこともね」
「日本の鉄道のいいところだね」
「そう、そしてこの駅弁も」 
 こちらもとです、先生は駅弁を食べながら言いました。
「素敵なんだよね」
「それでこうして食べて」
「ウイスキーも飲んで」
「そのうえで車窓からの景色も楽しむ」
「優雅な旅だよね」
「こうした旅も」
「素敵な旅だよ、この紙コップもね」
 ウイスキーを入れているそちらも見ます。
「風情があるね」
「何でもない様でね」
「鉄道の中でのコップといえばこれだし」
「それを使ってウイスキーを飲む」
「これはこれでねいいね」
「そう、病みつきになるよ」 
 これはこれでというのです。
「本当にね」
「イギリスにはないよね」
「こんな飲み方も」
「かなり独特のことよ」
「もう日本ならではの」
「そうだね」
「こうして何でもとんでもない方向に進化して」
 そうしてというのです。
「素晴らしいものになる国だね」
「日本という国は」
「もうイギリスより遥かに凄い鉄道大国になっていて」
「鉄道文化まで確立していて」
「凄いことになっているわね」
「この国は」
「そしてその鉄道の旅を最初に楽しんで」
 そのうえでというのです。
「そしてね」
「その次にだね」
「鳥羽に着いたら」
「それからは」
「鳥羽を楽しんで伊勢にも行って」
 先生は皆にお話します。
「楽しもうね」
「それじゃあね」
「是非そうしよう」
「鳥羽に着いたら」
「その時はね」
「是非ね」
 こう言ってでした。
 先生は駅弁をウイスキーと一緒に楽しみつつ列車での旅を続けました、列車は兵庫県から大阪府、奈良県と入って。
 遂に三重県に入りました、そこで先生は皆に言いました。
「さて、いよいよだよ」
「鳥羽だね」
「鳥羽に着くのね」
「目的地に」
「そう、いよいよだよ」
 まだ海は見えていません。山ばかりが見えます。ですが列車はその中を進み山に向かって行くのでした。








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