『ドリトル先生の競馬』




               第十幕  神事を成功させて

 先生はお家で皆とお話した次の日に乗馬部の方に行って武田さんに乗馬部の競技前のお食事のことを聞きました。
 するとです、武田さんはこう先生に答えました。
「競技前は特別に」
「競技に出る子達はですね」
「控えの子も含めて」
 それでというのです。
「皆炭水化物中心にしてもらっています」
「寮の子達はですね」
「自宅の子達も」
 彼等もというのです。
「本人に話して」
「そうしてですね」
「自宅での食事を替えてもらっています」
「炭水化物ですね」
「そちらを中心に」
「そうしてですね」
「動きを軽くしてもらって」
 そのうえでというのです。
「競技に参加してもらっています」
「レースにですね」
「そうしてもらうと」
 それでというのです。
「本当に動きが違いますから」
「そのことは大きいですね」
「スポーツは食事も大事です」
 武田さんは先生にしっかりとした口調で答えました。
「ですから」
「それで、ですね」
「そこも考えて」
「食べてもらっていますか」
「寮の食事はチェックしましたが」
「栄養バランスをですね」
「量も。量はどの量も基本ビュッフェ方式ですが」
 だからというのです。
「問題ないですが」
「問題は栄養バランスですね」
「メニューを調べたら常にです」
「バランスがよかったですか」
「どの寮もよく考えて」
 そしてというのです。
「料理を出しています」
「そうですか」
「ですから普段は問題ないですが」
「それでもですね」
「競技前は」
 その時はというのです。
「メニューを特別にです」
「替えてもらっていますか」
「これは他のレースとか走ったり」
「そうした部活でもですね」
「競技前はそうしてもらっています、あと個人が申請すれば」
 その時もというのです。
「替えてもらっています、宗教のこともありますし」
「イスラム教徒ですと豚肉は駄目ですしね」
「ユダヤ教徒の人もいますね」
「そうですね、この学園には」
「ユダヤ教の人達は豚肉だけでなく」
 それに加えてというのです。
「例えばチーズバーガーは食べられないですね」
「日本の親子丼もですね」
「親子の組み合わせは戒律に触れますので」
「食べられないですね」
「はい、そして」
 それでというのです。
「そこも考えて」
「寮のメニューは考えられていますね」
「菜食主義者の人もいます」
「ヒンズー教徒の人に多いですね」
「キリスト教にもそうした宗派がありますので」
「何かとですね」
「あるので」 
 それでというのです。
「八条学園の寮の食事は」
「色々とありますね」
「そうです、そして」
 武田さんは先生にさらにお話しました。
「競技前はです」
「炭水化物中心にですね」
「四日前からしてもらって」
 そうしてというのです。
「競技の時は」
「身軽にですね」
「なってもらっています」
「そこまで考えられていますね」
「寮でも。そして」
「自宅の子もですね」
「そうしてもらっています」
 まさにというのです、そしてです。
 先生は部活の状況を見ました、するとホフマン君もいて流鏑馬の動きの練習を見ています。その動きを見てオシツオサレツが言いました。
「もう完全にだね」
「流鏑馬の動きになってるね」
「いいね、あのままいくと」
「的に当てられそうね」
「的まで用意して」
「そこに弓矢を放つ練習までして」
 チープサイドの家族もその練習を見てお話します。
「当てているし」
「いいね」
「馬の速度は駆けさせていても遅めだね」
 このことはトートーが指摘しました。
「弓矢を使うから」
「弓を使う時は両手を使うから手綱使えないし」
 このことはジップが言いました。
「危ないしね」
「足腰だけで馬に乗るとか」
 ダブダブが見てもです。
「かなり難しいよ」
「乗馬って只でさえ難しいのに」
 ホワイティも言います。
「両手が使えないなら本当に難しいよ」
「それで弓矢も使うんだから」
 ポリネシアも思うことでした。
「それだけでもかなり難しいし」
「弓矢も当てるとなると」
 チーチーも言いました。
「凄く難しいよ」
「だからこそホフマン君も必死ね」
 ガブガブはその練習しているホフマン君を見ました。
「あれだけ練習してるし」
「まだ確実に当てていないから」
 だからと言ったのは老馬です。
「心配だろうね」
「確実に当てないと駄目だから」 
 流鏑馬の本番の時はとです、先生は言いました。
「余計に心配だろうね」
「そうだよね」
「絶対に当てられる様にしないと」
「本番どうなるか」
「そこが問題だからね」
「実際に」
「だからだよ」 
 本当にとです、また言った先生でした。
「彼も必死だよ、必死に努力しているからには」
「絶対にだね」
「成功させて欲しいね」
「流鏑馬を」
「本番では」
「そう思っているよ、努力は必ず実るけれど」
 このことは確かでもというのです。
「それが何時になるかは」
「そのことは」
「果たしてどうか」
「それでだね」
「先生も心配なんだね」
「うん、こうした時は」
 先生は真剣に言いました。
「やっぱりね」
「神様だね」
「神様にお願いする」
「お祈りして」
「そのうえで」
「神様のお力を借りることだよ」
 これが先生が是非にと言うことでした。
「ここまで来たら」
「どうしても確実なものってないからね」
「人の力だけだと」
「限界があるから」
「だからだよね」
「もう極限のことは」
「九十九パーセントの確率はね」
 これはというのです。
「人間の限界だとしたら」
「その一パーセントだね」
「一パーセントの力が欲しい」
「今のホフマン君がそうした状況だし」
「だからだね」
「そうした時こそ」
 まさにというのです。
「神様なんだよ」
「そうだよね」
「こうした時こそ神様がおられるから」
「助けて下さるから」
「お願いをすることね」
「困った時の神頼みという言葉があるね」
 先生はこの言葉も出しました。
「日本には」
「あるある」
「よくそう言うわね」
「日本だとね」
「そう言われるけれど」
 この言葉はというのです。
「少し極端かも知れないけれど」
「その通りだね」
「困った時こそ神様がおられる」
「だからだね」
「神様を頼ればいいね」
「そうだよ、だから僕もお願いするし」
 それでというのです。
「そしてね」
「それで、だよね」
「ホフマン君自身もだね」
「教会に行ってもらって」
「神様のお力も借りるんだね」
「そうしてね」
 そのうえでというのです。
「流鏑馬を成功させてもらおうね、ただ教会だけじゃないね」
「ああ、神道だからね」
「日本のね」
「だったら神社にもね」
「そちらにもお参りすべきだね」
「彼のこのこともお話しよう」
 そして実際にでした、先生は練習を終えたホフマン君のところに行ってそのうえで彼に流鏑馬の前に教会と神社にそれぞれお参りをしてどちらの神様のお力も頼る様にアドバイスしました、するとホフマン君もです。
 先生に言われるよりもという感じで先生にこう答えました。
「教会には毎日行っています」
「そちらにはだね」
「この学園にはプロテスタントの教会もありますし」
 それでというのです。
「毎日お祈りして」
「そうしてだね」
「流鏑馬のことをお願いしています、そして」
「神社にもだね」
「先週の日曜日行きました」
「そうだったんだ」
「それも流鏑馬の行われる八条神宮で」
 そちらでというのです。
「お願いしました、そして流鏑馬の直前にも」
「お参りするんだね」
「あちらの宮司さんにお聞きしましたけれど」
 ホフマン君はさらに言いました。
「神道はどんな宗教の人もお参りしていいんですね」
「そうした宗教なんだ」
「それで神様にお願いしてもですね」
「いいんだよ」
「その辺りは寛容なんですね」
「そうだよ、だからね」
 それでとです、先生はホフマン君に笑顔で答えました。
「君もだよ」
「お参りしてもですね」
「いいんだ」
「そうなんですね」
「そしてね」
 ホフマン君はさらに言いました。
「君は直前にもだね」
「お参りをします」
「そうするね」
「そしてです」
「日本の神様にもね」
「お力を借ります」
「そうするといいよ、キリスト教の神様も助けてくれて」
 先生は温厚な笑顔のままさらに言います。
「日本の神様もね」
「助けてくれますね」
「そうしてくれるからね」
「是非ですね」
「お参りするといいよ」
「わかりました、そういえば」 
 ここでホフマン君はこうも言いました。
「一つ気になることは」
「何かな」
「八条大社の神様はどういった神様でしょうか」
「あそこは色々な神様が祀られているよ」
「そうなんですね」
「第一は伊邪那岐と伊邪那美の二柱の神々でね」
「日本を作った」
「そう、そしてね」
 それでというのです。
「他にも大勢の神様を祀っているんだ」
「そうですか」
「そう、そしてね」
 それでというのです。
「源氏の君も祀られているよ」
「源氏物語の」
「架空の人物ではあっても」
「神様としてですか」
「祀られているんだ」
 八条大社ではというのです。
「文化や恋愛の神様としてね」
「あの主人公は神様にもなっていますね」
「そう、そしてね」
 それでというのです。
「他の神様も大勢いるんだ」
「日本の神様は多いですしね」
「伊達に八百万とは呼ばれていないからね」
「だからこそですね」
「あの神社にも大勢の神様が祀られているんだ」
「そして今回の流鏑馬は」
「源氏の君へ捧げるものだよ」
 この源氏物語の主人公にというのです。
「そうなんだ」
「そうでしたか」
「八条大社は基本芸術や学問、恋愛と豊作のね」
「神様達がですか」
「おられてね」
「それぞれの神事もあるんですね」
「そうだよ、ただ」
 先生はさらにお話しました。
「戦いの神様はこの神社にはいないからね」
「そうなんですね」
「弓を使ってもね」
「それはあくまで神事としてですね」
「やるものでね」
 それでというのです。
「軍事とは無縁だよ」
「そうなんですね」
「この辺りで源義経さんが活躍したけれどね」
「一ノ谷の戦いですね」
「馬を使って見事な戦いをしたけれど」
「あの人は祀られていないんですね」
「うん、確かあの人も神様になっていたと思うけれど」
 それでもというのです。
「あの人はあの大社には祀られていないよ」
「神社によって祀られている神様は違いますね」
「この辺りギリシアや北欧と同じだよ」
「どちらも神殿によって祀られている神様が違いますね」
「そのことと同じでね」
「日本でもですね」
「そうなっているんだ」
 先生はこのこともお話しました。
「例えば大阪の住吉大社は素戔嗚尊を祀っているね」
「日本の神話で大暴れする」
「あの神様で伊勢神宮ではね」
 今度はこちらのお話をしました。
「天照大神だしね」
「日本の神社はそれぞれ違いますね」
「そうなんだ、だからね」
「八条大社でもですね」
「そうなっているんだ」
「伊邪那岐と伊邪那美の二柱の神々に」
「源氏の君にね」
 この人にというのです。
「それにね」
「他の神様達もですね」
「祀られているんだ」
「そうなんですね」
「そして」
 先生はさらにお話しました。
「今度の流鏑馬ではね」
「源氏の君にですね」
「捧げるものだからね」
「あの人は何か」
 ホフマン君は源氏の君については少し苦笑いになってそのうえで先生にお話しました、そのお話することはといいますと。
「節操がないですね」
「女の人のことだね」
「物凄いですよね」
「まあね、物語のこととはいえね」
「どれだけの女の人と恋愛を重ねたか」
「その恋愛遍歴だがね」
「僕の目から見ますと」
 どうにもというのです。
「無節操にです」
「思えるんだね」
「はい、ただ」
「ただ?」
「何か日本の恋愛ゲームみたいですね」
「源氏の君が主人公でだね」
「小説ですが」
 それでもというのです。
「ゲームの主人公みたいな」
「そうしたところがあるっていうんだね」
「そう思いますけれど」
「そう言われるとそうだね」
 先生も否定しませんでした。
「僕はそうしたゲームはしないけれど」
「ああした感じですね」
「そうだね、本当に」
「日本には昔からああした主人公がいたんですね」
「そうなるね、もっと凄い作品もあるしね」
「日本にはですか」
「源氏物語より遥かに露骨だしね」
 先生はこうも言いました。
「凄い作品があるよ」
「その作品は何ですか?」
「好色一代男だよ」
 この作品だというのです。
「井原西鶴のね」
「教科書にも出ていますね」
「もう女の人も美少年も手当たり次第でね」
「源氏の君以上にですか」
「そう、そしてね」
 それでというのです。
「最後は理想郷みたいな場所に向かうけれど」
「どういった理想郷か」
「酒池肉林の」
「やっぱりそうし場所ですか」
「そこに行ってね」
 そしてというのです。
「終わるんだ」
「そうですか」
「日本のそうしたハーレム作品というジャンルは」
「相手が沢山いる恋愛作品が昔からですね」
「あったんだよ」
「そうなんですね、そして」
 ホフマン君はさらに言いました。
「僕は源氏の君の神事で」
「流鏑馬をするんだ」
「そのこともわかりました」
 こう先生に答えたのでした、そしてです。
 当日先生はトミーと王子そして動物の皆を一緒に神社に行って流鏑馬を見ることにしました、その中で。
 王子は先生にお顔を向けてこう言いました。
「いよいよだね」
「うん、流鏑馬がね」
「行われるね」
「そうだよ、競技も大変だけれど」
「こちらもだよね」
「凄くね」
 本当にというのです。
「大変なものでね」
「やるとなるとね」
「だから彼も必死に練習して」
「そしてだよね」
「神様にお願いもしたから」
「絶対にだね」
「成功するよ」
 まさにと言うのでした。
「彼は」
「じゃあその成功する場面をだね」
「今から見ようね」
「それじゃあね」
 二人でお話してです、そうしてでした。
 先生は皆でホフマン君の流鏑馬を見守りました、流鏑馬の武士を思わせる着物姿で馬に乗っている彼はとても凛々しかったです。
 その彼が馬に乗って弓矢を構えて。
 的を見事に射抜きました、すると先生も他の皆も観衆の人達もです。
 拍手喝采です、そうして歓声をあげました。その後でトミーが先生に言いました。
「神様にお願いしたこともですね」
「うん、やっぱりね」
 先生はトミーにも答えました。
「よかったよ」
「そうですよね」
「彼も嬉しいだろうね」
「嬉しくない筈がないよ」
 まさにというのです。
「本人さんがね」
「やっぱりそうですよね」
「そう、そしてね」
「そして?」
「今は絶対にほっとしているよ」
「無事に成功して」
「それでね、彼と会ったら」
 その時はとです、先生は笑顔でお話しました。
「そのお顔が見られるよ」
「それは何よりですね」
「何かをやり遂げたら」
「その時はですね」
「誰でもほっとするからね」
 だからだというのです。
「そうなるよ」
「そういうことですね」
「彼は次は競技に出るけれど」
「それでもですね」
「一つの大きなことを終えて」 
 それも成功させてです。
「ほっとしているよ」
「絶対にそうですね」
「僕が若し彼と同じ状況だったら」
「今はほっとしていますね」
「絶対にね」
 そうなっているというのです。
「だからね」
「それで、ですよね」
「僕達は彼を祝福してあげよう」
「無事に成功させられたので」
「そうしようね」
 こうしたお話をしていると、でした。
 先生の携帯にホフマン君から連絡が来ました。流鏑馬をした人の休憩場所に来て欲しいとです。それで、です。
 皆と一緒にそこに行くとでした。流鏑馬姿のホフマン君がほっとしたお顔でパイプ椅子に座っています。そうしてです。
 先生達にお茶を出してこんなことを言いました。
「よかったです」
「的を射抜けてだね」
「はい、それが出来て」
 それでというのです。
「本当に」
「そうだね、僕もそう思うよ」
「そうですか、先生も」
「何度も練習した介があったね」
「神様も成功に導いてくれましたし」
「だから神様にもだね」
「感謝しています」 
 こうも言うのでした。
「心から」
「そうだよね」
「はい、ただ」
「ただ?」
「このことにほっとしながら」
 そしてというのです。
「次に向かいます」
「競技にだね」
「暫くしたら」
「そちらの方のだね」
「練習をしていきます」
「そうするんだね」
「また食べるものも切り替えます」
 そうもするというのです。
「炭水化物中心に」
「そうなるね」
「あとお酒も」
 こちらもというのです。
「競技前は控えていて実は」
「今回もだね」
「数日前から控えていました」
「そうしてだね」
「お酒の影響が身体に出ない様にして」
 そしてというのです。
「流鏑馬に挑みました」
「お酒は身体を酔わせてね」
「カロリーもありますしね」
「飲むとね」
 その分というのです。
「カロリー摂取になるから」
「競技とかそうしたことの前はです」
「飲まない様にしているんだね」
「はい、特にビールが大好きですが」
 ホフマン君は先生に笑ってお話しました。
「それでもです」
「ビールもだね」
「飲まない様にしています」
 そうした風にしているというのです。
「気をつけて」
「考えているね」
「部活の中でもお酒のことは言われますが」
「競技前の時とかは控える様にだね」
「言われていますが」
 それでもというのです。
「僕達は自分からです」
「控える様にしているんだね」
「むしろ、さもないと」
「本当に競技に支障が出るからね」
「余計な肉がついて」
 お酒からカロリーを摂取した分です。
「そうなりますから」
「気をつけているんだね」
「そうしています、そして」
 ホフマン君は先生に笑顔でお話しました。
「今日は飲みますが」
「まただね」
「控える様にします、そうした時は」
「今みたいだね」
「お茶を飲みます、それか」
「コーヒーだね」
「コーヒーも大好きですから」
 それでというのです。
「そちらを楽しみます」
「そうするんだね、僕も日本に来てからコーヒーを飲む様になったよ」
 その時からというのです。
「時々だけれどね」
「コーヒーをですね」
「イギリスにいた時は紅茶だけだったけれど」
「それもミルクティーですね」
「それだけだったよ、けれどね」
「それがですね」
「日本に来てからね」
 どうなったかといいますと。
「コーヒーを飲む様になったし他のお茶もね」
「飲まれますか」
「紅茶ならレモンティーも中国茶も飲んで」
 そうしてというのです。
「日本の色々なお茶もね」
「飲む様になったんですね」
「そうなんだ」
「本当に来日されてからですね」
「変わったよ」
「そして楽しまれていますね」
「凄くね、そして」
 先生は皆にさらにお話しました。
「今もだよ」
「このお茶もですね」
「美味しいからね」
 だからだというのです。
「楽しませてもらってるよ」
「それは何よりですね」
「うん、それと競技の時は」
「はい、県の競技場で行われるので」
「だからだね」
「よかったら来て下さい」
「そうさせてもらうよ」
 流鏑馬を終えたホフマン君ににこりと笑って答えました、そうしてです。
 先生はホフマン君と笑顔で別れた後でお家に帰って論文を書いてです、晩ご飯は王子も入れて皆で食べますが。
 この時はご飯はそこそこでビールを楽しみました、缶ビールをわざわざ大きなジョッキに入れてぐびぐびと飲みますが。
 その先生に動物の皆が言いました。
「ビールにソーセージ」
「それはわかるよ」
「僕達もね」
「それにベーコンも」
「どっちも炒めて食べる」
「そのことはね」
「けれど」
 先生が今食べている枝豆を見てさらに言うのでした。
「枝豆も食べるんだね」
「今の先生は」
「来日してからそうなったね」
「ビールの時は枝豆もよく食べるね」
「それも美味しそうね」
「ソーセージもいいけれど」
 こちらも確かにというのです。
「けれどね」
「枝豆もだね」
「ビールによく合うから」
「だからだね」
「皆もそうしている通りだよ」
 見れば動物の皆もソーセージやベーコンだけでなく枝豆も食べています、そうしてそういったものを肴にビールを飲んでいます。
「美味しいね」
「これは最高の組み合わせの一つよ」
 ポリネシアは言い切りました。
「お酒のね」
「あっさりしていて食べやすいんだよね」
 老馬も枝豆を食べています、それも美味しく。
「そしてこの味がビールに本当に合うんだよ」
「日本独特の食べものだけれど」
「これがいいのよね」
 チープサイドの家族は枝豆をついばみつつ笑顔になっています。
「幾らでも食べられる感じが」
「実にいいね」
「最近イギリスにも入ってきているみたいだけれど」 
 トートーはこのことを知っています。
「やっぱり日本独特のお料理よね」
「こんな豆料理があるなんて」
 ジップも食べながら言います。
「日本が羨ましいよ」
「こんな美味しい豆料理他にないんじゃないかな」
「そうかも知れないね」
 オシツオサレツは舌鼓を打ちつつ言いました。
「ちょっと他の国にはないよね」
「ここまで美味しいものは」
「お豆腐もとても美味しいけれど」
 ダブダブはこの食べものも大好きです。
「こちらはこちらで物凄く美味しいよ」
「あっさりしていてビールにも合うから」
 チーチーはこの二つを交互に楽しんでいます。
「病みつきになるね」
「しかもお豆だから健康にもいいわよ」
 ガブガブはこのことをしてきました。
「尚更いいわ」
「ううん、日本に来て色々美味しいもの知ったけれど」 
 それでもと言うホワイティでした。
「これはその中でも最高のものの一つかも知れないね」
「全くだよ、お陰でビールが進んで」
 先生は実際にビールをごくごくと飲みながら皆に応えます。
「幾らでも飲めるよ」
「先生もう三リットルは飲んでるよ」
 王子は先生と同じちゃぶ台を囲んで座って飲みつつ言いました、もう王子もお顔がかなり酔った感じになっています。
「それでもだよね」
「あと二リットルはね」
「飲めるんだね」
「普通にね」
「美味しいからだね」
「枝豆が本当にね」
「ソーセージとビールもいいですが」
 トミーはこちらも楽しんでいますが勿論枝豆もです。
「枝豆は本当に」
「合うよね、ビールに」
「恐ろしいまでね」
「多分今夜は彼もね」
「ホフマン君もですね」
「ビールを飲んでいるだろうけれど」
「そんなことも言ってましたね、彼」
 トミーはここでこのことを思い出しました。
「そういえば」
「そうしてね」
「彼も枝豆をですか」
「楽しんでいるかも知れないよ」
「今の僕達みたいに」
「ソーセージやベーコンもいいけれど」
 このことは確かだというのです、見れば先生達はそちらの二つもしっかりと食べて楽しんでいます。
 けれどです、その枝豆を食べつつ言うのでした。
「この枝豆の魔力にはね」
「勝てないですか」
「ちょっと以上にね、そしてビールも」
「日本のビールですね」
「いい味だね、飲みやすいよ」
「そうですよね」
「ビールはアルコール度も低くてね」
 先生から見ればです、五パーセント位のアルコール度ではウイスキーも好きな先生からしてみればかなり低いものです。
「かなり飲んでもね」
「酔わないですね」
「うん、ただカロリーはあるから」
「ホフマン君とこのこともお話してましたね」
「お酒は全部そうだけれど」
「飲み過ぎると太りますね」
「そしてね」
 先生はさらに言いました。
「痛風にもね」
「なりますね」
「彼のお国のドイツは痛風の人が多いけえど」
「ビールのせいですね」
「そうだよ」
 まさにというのです。
「何といってもね」
「ドイツって朝からビールだしね」
「生卵をビールに入れて飲むとかね」
「食欲のない時するから」
「これはかなり」
「先生も言ってるけれど」
「エネルギー補給にはなっても」
 それでもとです、先生は皆に飲みつつお話しました。
「痛風にはね」
「よくないよね」
「どうしても」
「そちらには」
「そうなんだ、だから気をつけないとね」
 先生はここで胡坐をかいている自分の足の親指のところを見ました、痛風になるとそこが痛くなるからです。
「こちらについては」
「若し痛風になったら」
「その時はね」
「どれだけ痛いか」
「先生そちらの診断もしたけれど」
「患者さん皆とても痛そうだったし」
「ならないに越したことはないね」
 皆もこう言います。
「最初から」
「本当に風が吹いただけで痛いっていうし」
「それだけ痛い思いするなら」
「最初からだよね」
「そこは僕もわかっていて」
 それでとです、トミーが飲みながら言ってきました。
「プリン体がないものを買ってきました」
「最近そうしたビールもあるよね」
「うん、だからね」
 トミーは王子の答えました。
「健康のことを考えて」
「そうしてだね」
「そうしたビールを買って来て」
「出しているんだね」
「そうなんだ、有り難いよね」
「ビールを飲んでも痛風にならないなら」
 それこそとです、王子も言います。
「有り難いよ」
「さっきドイツでは多いって言ったけれど」
 先生はこのお話に戻りました。
「歴史的にもそうなんだ」
「ずっとビールを飲んできたから」
「そのせいでよね」
「歴史的にも痛風の人が多いんだ」
「どうしても」
「神聖ローマ皇帝カール五世とマルティン=ルターは宗教上の理由で対立したけれど」
 それでもというのです。
「二人共痛風だったんだ」
「やっぱりビールを飲んで」
「そのせいでだね」
「痛風だったんだ」
「そうよね」
「そうだよ、二人共ビールが好きで」
 皆の言う通りにというのです。
「カール五世は朝からごくごく飲んでルターは講義の後何杯も飲んでいたから」
「それで痛風になったんだ」
「当然のことにしても」
「カトリックとプロテスタントで対立したのに」
「同じ病気になるなんて」
「それで二人共随分苦しんだらしいよ」
 痛風、この病気にというのです。
「本当にね」
「日本でもなる人いるしね」
「それで言われているし」
「ドイツ程じゃなくても」
「結構困ってる人多いよね」
「だからプリン体ゼロのビールも出来て」
 そしてというのです。
「日本でも飲まれているんだよ」
「そういうことだね」
「痛風に気をつけているから」
「その為に」
「その健康のことから見ても」
 また枝豆を食べてお話する先生でした。
「枝豆はいいよ」
「お豆でね」
「栄耀の塊だから」
「食べて損はないね」
「今だって」
「そうだよ、美味しくてビールに合うだけじゃないから」
 栄養のことから考えてもというのです。
「いいんだよ」
「それが枝豆だね」
「だからどんどん食べていいのね」
「私達も」
「そうだよ、だからね」
 先生はご自身が食べつつ皆に言いました。
「皆で楽しもう」
「それじゃあね」
「皆で食べて」
「そうしてね」
「飲んでいきましょう」
「夏は終わったけれど」
 それでもというのです。
「ビールも枝豆も美味しいままだね」
「ビアホールもいいけれど」
 王子も言います。
「その季節が終わってもね」
「美味しいものだね」
「そうだよね、ソーセージもベーコンも」
「そしてビールも枝豆も」
「どれもね」
「凄く美味しいよ」
「だから僕も」
 王子は執事さんにも飲む様にジョッキを勧めましたが執事さんはお仕事中ですからと断ります、それなら仕事が終わってからとお話してまた飲んで先生にも言いました。
「こうしてね」
「飲むね」
「そうするよ、何処までもね」
「飲み過ぎかな、皆」
「それで明日の朝はね」
「二日酔いだろうね」
「またしてもね」
 王子は自分で笑って言いました。
「そうなるね」
「けれどもうね」
「それはそれでね」
「今は飲もう」
「それがいいね」
「しこまた飲んで」
 そうすると、というのです。
「後はね」
「二日酔いを受け入れてだね」
「その朝は苦しんで」
 その二日酔いでというのです。
「お風呂に入るんだよ」
「ああ、二日酔いに凄くいいよねお風呂」
「だからね」
 それでというのです。
「大丈夫だよ」
「あれがまた気持ちいいんだよね」
 王子は先生に笑って応えました。
「二日酔いをお風呂で解消することも」
「そうだよね」
「それも楽しみにして」
「そう、今はね」
「飲むんだね」
「そうしようね」
 是非にと言ってです、先生はまた飲みました。
 そしてそのうえでまた言うのでした。
「日本のビールは本当に美味しいね」
「イギリスのも美味しいけれどね」
「エールの方も」
「そちらもね」
 皆も飲みつつ先生に応えます。
「けれどね」
「日本のビールも美味しくて」
「どんどん飲めるね」
「ソーセージやベーコンも美味しいし」
「そして枝豆も」
「そちらの方も」
 いいとです、そうしたお話をしながらでした。
 先生達はこの夜はビールを楽しみました、そうしてそのうえで次の日の朝二日酔いになってお風呂も楽しむのでした。








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