『ドリトル先生の競馬』




               第四幕  ホフマン君の悩み

 先生は日曜日も論文を書いています、それはお家にいても同じで今は脳医学の論文について書いていますが。
 お昼にです、トミーにこう言いました。
「いや、脳はまだまだね」
「わかっていないことが多いんですね」
「よく言われることだけれど」
 こう前置きしてトミ―にお話します。
「人間は脳の全体の三十パーセント位しか使っていないんだよ」
「学説によってはさらに小さいですね」
「そう、だからね」
 それでというのです。
「百パーセント使えないのは何故か」
「そのこともですね」
「色々言われてるね」
「そうですよね」
「それで僕は思うけれど」
 トミーにちゃぶ台を囲んだうえでお話をします、今日のお昼はお素麺でよく冷えたそれを梅肉を入れたおつゆで食べています。
「若しもね」
「脳を百パーセント使えたら」
「人間はどうなるかとね」
「使い過ぎてよくないという人もいれば」
「大きな可能性があるという人もいるね」
「そうですよね」
「いいという人がいればね」
 先生はお素麺、ガラスの大きな容器の氷水の中にあるそれをお箸で自分のおつゆが入っているお椀の中に入れつつ食べながらトミーに言いました。
「よくないという人もいるね」
「そこはそれぞれですね」
「そう、けれどね」
「一体どうなるか」
「そこは知りたいね」
「若し悪い結果になるなら」
 トミ―もお素麺を食べつつ言います。
「その時は」
「置いておいてね」
「いい結果になるならですね」
「百パーセント使える様にする」
「そうするといいですね」
「うん、ただここで問題なのは」 
 先生はトミーにお話しました。
「絶対に悪用しないことと」
「そのことと」
「そう、そしておかしな引き出し方はしない」
「脳を百パーセント使うことに対して」
「それも大事だよ」
 こうトミーに言うのでした。
「絶対にね」
「覚醒剤みたいにですか」
 トミーは先生に言いました。
「ああしたことは」
「そう、覚醒剤は打つとね」
 先生も覚醒剤のお話をしました。
「一週間寝ないでね」
「それ位動けますね」
「もう身体が活性化してね」
「力が引き出される感じがしますね」
「実際に力を引き出しているよ」
 覚醒剤はというのです。
「だから覚醒って付いているんだよ」
「名前にですね」
「そう、けれどね」
「覚醒剤は無理に引き出していますね」
「使った人の身体からね」
「言うなら自分の身体を燃やしている」
「そう、そんな風だから」
 そうした力の引き出し方だというのです。
「物凄く問題なんだ」
「そうですよね」
「あれは使ったらね」
 覚醒剤はというのです。
「それだけ寿命を縮めているんだ」
「身体の力を無理に引き出させているので」
「本当に身体を燃やす感じでね」
「しかも禁断症状とか常習性が酷くて」
「あんなもの、麻薬全体がそうだけれど」
 先生は今度はこちらのお話をするのでした。
「とんでもないことになるよ」
「そうですよね」
「煙草は寿命を縮めるっていうけれど」
「覚醒剤はですね」
「その煙草より遥かに悪質だから」
 それでというのです。
「絶対に使ったら駄目で」
「ああした風なもので、ですね」
「脳の力を引き出す様なことをするなら」
「絶対に使っては駄目ですね」
「医学にもやっていいことと悪いことがあるよ」
 先生はこのことがよくわかっています、そうしたことがわかっているからこそ先生はいいお医者さんなのです。
「麻薬はね、鎮痛剤でモルヒネは使っても」
「基本は、ですね」
「使ったらね」
「絶対に駄目なものですね」
「麻薬は日本語では魔薬と書いてもね」
 その様にしてもというのです。
「いいよ」
「それ位のものですね」
「そう、あとね」
 先生はさらにお話しました。
「日本の漫画であったけれど」
「日本の、ですね」
「頭に針とかを刺してツボを突く様な」
「そうして百パーセント引き出すこともですか」
「止めておいた方がいいだろうね」
「確か吸血鬼とかスタンドとかの漫画でしたね」
 トミーもこの漫画を知っていて応えます。
「あれは石仮面を被って」
「そうなっていたね」
「あれは確かにです」
「とんでもないことになるね」
「ああしたことで脳の力を引き出しても」
「よからぬものであることは間違いないよ」 
 先生はその漫画から感じたことを思い出しつつトミーにお話しました。
「だからね」
「それで、ですね」
「脳の力を百パーセント引き出すにしても」
「人間にとっていいか悪いかも問題で」
「引き出し方もね」
「問題なんですね」
「これからの脳医学はそこをより考えていくべきかもね」
 こうトミーに言うのでした。
「本当に」
「そういうことですね」
「僕はね」
 先生はこうもお話しました。
「絶対に百パーセントは使っていないね」
「脳をですか」
「そう思っているよ」
「脳は身体全体を動かすものですね」
「もう運動は」
 こちらはというのです。
「全然駄目だからね」
「それで、ですか」
「そう思っているよ。まあ脳のお話はこれ位にして」
 それでと言う先生でした。
「お昼のお話をするけれど」
「お素麺作ってみました」
「そうだね」
「日本の夏はお素麺ですよね」
「よく言われるね」
「はい、ですから」
 それでというのです。
「今日のお昼はこれにしました」
「いや、美味しいよ」
「先生の食べる姿も様になってるわよ」
 勿論動物の皆も一緒に食べています、それでガブガブもお素麺を食べながらそのうえで言うのでした。
「ちゃぶ台のところに座ってるし」
「しかも作務衣姿だし」
 ジップはこのことを指摘しました。
「余計にだね」
「お箸の使い方も上手で」
 トートーはこのことを見ています。
「本当に日本人みたいだね」
「先生日本語も凄く上手だし」
 ダブダブから聞いてもです、もう先生の日本語は日本人と同じ位上手になっています。そうなってもう久しいです。
「余計にだね」
「しかもお素麺のおつゆに梅も入れるとか」
 ホワイティはこのことに注目しています。
「本当に日本的だね」
「あとこの前ざるそばを食べていたけれど」
「天婦羅と一緒にね」
 チープサイドの家族はこの時の先生のお話をします。
「その時もだったわね」
「随分と絵になっていたよ」
「今も本当に絵になっていて」
 ポリネシアが見てもです。
「日本の夏に完全に入っているわ」
「デザートは西瓜だったね」
 老馬はそちらのお話をしました。
「それも日本的だよ」
「いや、先生はね」
「何処までも日本的だよ」
 最後にオシツオサレツがお話しました。
「お素麺を食べている姿も」
「見事に日本だよ」
「そうなったね、いやイギリスにはないからね」
 先生は皆に笑顔で応えました。
「お素麺なんてものは」
「そうそう、イギリスの夏も違うしね」
「日本の夏と」
「だからお素麺を食べてもね」
「全然違うんだよね」
「けれど日本では」
 日本の夏ではと言う先生でした。
「こうしてだよ」
「お素麺だね」
「これが合うね」
「特にお昼には」
「この時には」
「こうしてお素麺を食べると」
 本当にというのです。
「最高だよ」
「しかもお素麺は三輪素麺です」
 トミーがまた言ってきました。
「奈良の」
「桜井のだね」
「はい、そちらのお素麺です」
「お素麺でも一番いいというね」
「そこのものでして」
「だから余計に美味しいんだね」
「そう思います、沢山ありますから」
 お素麺がというのです。
「茹で過ぎた位で」
「沢山食べていいね」
「残さない様にしましょう」
「そうだね、こうしてお素麺を食べて」
「その後は西瓜です」
「もう切ってあるからな」
「それで冷蔵庫に入れています」
 そうして冷やしているというのです。
「冷蔵庫には麦茶もありますから」
「余計にいいね」
「それとです」
「それと、とは」
「晩ご飯はサラダと冷たいお野菜のスープと」
 トミーは晩ご飯のお話もしました。
「コールドチキンです」
「それとご飯だね」
「そうです、ご飯ですが」
 主食はこちらでもというのです。
「ちょっとイギリス風にしてみました」
「それもいいね」
「あと明日はジャガイモが安かったので」
「沢山買ったんだ」
「それでジャガイモ料理を作ります」
 そうするというのです。
「大蒜もありますから」
「それも使ってだね」
「食べましょう」
「明日も楽しみだね」
「そうですよね」
「ジャガイモもいいよね」
「そちらは季節に関係ないしね」
 こうしたお話もしてです、先生はお昼を楽しく食べてそうしてからでした。午後も夜も論文を書きました。
 その次の日は大学に行きましたが。
 大学に行く時にホフマン君と会いました、彼は丁度寮から高等部に行く途中でしたがその時にです。
 彼が暗いお顔になったのを見て声をかけました。
「どうしたのかな」
「はい、何かです」
「夏バテかな」
「日本の夏はどうも」
 少し困ったお顔で言うのでした。
「湿気が高くて気温もです」
「高いね」
「ドイツの夏と比べると」
 それこそというのです。
「全く違っていて」
「馴染めないんだね」
「他の季節は大好きです」
 春や秋、冬はというのです。
「本当に。ですが」
「夏はだね」
「この季節だけは」
 どうしてもというのです。
「駄目です」
「それでだね」
「今日は部活の朝の練習はないですが」
「疲れている感じがすることは」
「夏バテですね」
 自分から先生にお話しました。
「絶対に」
「そうだね」
「去年も参りました」
「日本の夏には」
「早く終わって欲しいです」
 こうも言うのでした。
「本当に」
「そうだね、けれどね」
「日本の夏はですね」
「こうしたものだから」
 湿気も気温も高いというのです。
「もうこのことはね」
「仕方ないですか」
「それを受け入れて」
「やっていくしかないですね」
「よく寝て」
 そしてというのです。
「身体にいいものをね」
「沢山食べることですね」
「そう、あとお水もよく飲む」
「そのことも大事ですね」
「そうだよ」
「幸い八条町は町の条例で高校生でもお酒飲めますよね」
「うん、この町ではね」
 実際にとです、先生も答えます。
「出来るよ」
「それで朝食欲がなくても」
「ビールだね」
「ビールに生卵を入れて」
 そうしてというのです。
「飲んでいます」
「ドイツの朝食だね」
「食欲のない時は」
「そうしてだね」
「何とかエネルギーを補給して」
「やっていっているんだね」
「寮の朝食がどうしても入らない時は」
 食欲がなくてです。
「その時はです」
「うん、そうしてね」
「エネルギーを補給すべきですよね」
「何も食べないとね」
 それこそというのです。
「夏バテに一番駄目だから」
「いいことですか」
「そう、ビールは飲むパンともいうし」
 先生はこの言葉も出してホフマン君にお話しました。
「だからね」
「食欲がない時は」
「飲むといいよ」
「そうですね」
「これが日本人だとね」
「お酒に弱い人が多いですね」
「だからどうもね」
 日本人にはというのです。
「薦められないけれど」
「それでもですね」
「ドイツではそれが普通だしね」
「ですから僕もです」
「ドイツにいた時みたいにだね」
「そうしてです」
 お酒を飲んでというのです。
「エネルギーを補給しています」
「そう、とにかくね」
「日本の夏に参らない為には」
「何といってもだよ」
「栄養補給ですね」
「それが第一だよ」
 何といってもというのです。
「それがいいよ」
「そうですね」
「それとね」
 先生はさらにお話しました。
「ビールと生卵でエネルギーは補給出来ても」
「普通に食べる日もあります」
「そうだね、けれどこの組み合わせは」
 ビールに生卵はというのです。
「コレステロールが高くなるからね」
「それで、ですね」
「痛風になりやすいから」
「実はドイツは痛風が多いです」
「国民病になっているね」
「結構深刻な問題になっています」
「それは食生活に関係しているね」
 このことは間違いないというのです。
「やはりね」
「ビールですね」
「あと卵もよく食べるし」
「ソーセージやベーコンとか」
「そうしたものをよく食べるから」
 それでというのです。
「痛風が多いんだよ」
「そうですよね」
「特にビールだね」
 これが問題だというのです。
「何といっても」
「そちらですね」
「ドイツ人はビールをよく飲むね」
「皆大好きで本当にです」
「よく飲むね」
「僕も飲める年齢になってです」
 ホフマン君自身もというのです。
「そうしてです」
「よく飲んでいるんだね」
「だからですね」
「そう、痛風はね」
 本当にというのです。
「気をつけてね」
「そうですよね」
「僕はなったことはないけれど」
 それでもとです、先生は皆にホフマン君にお話しました。
「かなり痛いらしいからね」
「周りにも多くて」
「ドイツだからだね」
「はい、皆ビールをよく飲むので」
「日本人よりも遥かにだね」
「僕の基準ですと」
 ドイツ人としてです、ホフマン君はお話しました。
「日本人はビールを飲む量が少ないですね」
「そうだね、イギリス人の僕から見ても」
「日本人はあまり飲んでいないですね」
「他のお酒も一杯あるし」
「そもそもお酒を飲む量自体が」
「少なくて」
 それでというのです。
「ビールもとなっていますね」
「そうなっているね、実際に」
「それでとにかくビールを飲むので」
「痛風も多いね」
「そうなっていまして」
「君も痛風のことは知っているんだね」
「苦しんでいるのをよく見てきました」
 痛風の痛み、それにです。
「足の親指の付け根がです」
「万力で締め付けられた様にだね」
「痛んでそうして」
「日本語で書く通りにね」
「少しの風でも痛くて仕方ない」
「そうなるみたいですね、歴史でも」
 ホフマン君はこちらからもお話しました。
「ドイツでは苦しんだ人が多いです」
「マルティン=ルターもそうだったしね」
「あの人もビールが大好きでしたから」
「そしてカール五世もだったね」
「それでかなり苦しまれたそうですね」
「あの人もビール好きだったみたいだからね」
「宗教改革のはじまりの人も皇帝も」
 そうした人達もというのです。
「随分とです」
「痛風には苦しんでね」
「苦労したと聞いています」
「そう、だからね」
 先生はホフマン君に言いました。
「君は若いけれど」
「それでもですね」
「痛風にはね」
「今から気をつけるべきですね」
「さもないとね」
「苦しむことになりますね」
「やっぱりドイツ人は食生活、特にビールでね」
 とにかくこのお酒が問題だというのです。
「痛風が多いからね」
「だからですね」
「気をつけないとね」
「そうしていきます」
「是非ね、それと」
 さらにお話した先生でした。
「和食はいいものだよ」
「美味しいですね」
「うん、だからね」
「こちらも楽しむといいですね」
「そう、ただね」
 先生はこのこともお話しつつです、少し考える表情になってホフマン君に対してこうも言ったのでした。
「やっぱり故郷の味もね」
「ドイツ料理もですね」
「食べたくなるね」
「どうしても」
「だったらね」
 その時はというのです。
「この学園の食堂に入るといいよ」
「この学園は人が多くて」
「そう、食堂も多いね」
「色々な食堂もありますね」
「それでね」
「ドイツ料理が食べられる食堂もありますね」
「本格的なね」
 先生はホフマン君ににこりと笑って答えました。
「そちらもあるから」
「だからですね」
「そうしたものも食べて」
「体力を回復させるべきですか」
「気力からね」
「故郷の味ですね」
「そう、故郷の味はね」
 何といってもとです、先生はホフマン君に笑顔のままお話しました。
「何と言っても違うからね」
「味に馴染んでいるから」
「それを食べると」
「気力からですね」
「体力も回復して」
「夏バテにもいいですね」
「だからね」
 是非にというのです。
「そちらも楽しんでね」
「夏バテに向かうべきですね」
「そうしたらどうかな」
「では今度そうした食堂にも行ってみます」
「それで食べるといいよ」
「僕スパゲティも大好きですし」
 ホフマン君はにこりと笑って言いました。
「そちらも食べます、これまで以上に」
「君もスパゲティが大好きなんだね」
「僕もですか」
「そう、ドイツ人はイタリア料理が好きだね」
「そうした人が多いね」
「だからそう言われたんですね」
 ホフマン君もこのことがわかりました。
「僕もと」
「うん、それでだよ」
「そうですか、ですが本当に」
 実際にというのでした。
「僕はスパゲティが大好きでイタリア料理も」
「だったらそちらもだよ」
「スパゲティだけでなくピザやラザニアも」
「食べるといいよ」
「それならそうさせてもらいます」
「ではね」
 先生はホフマン君にこうお話してでした、そのうえで。
 ご自身の研究室に入って論文を書いて講義をしてです、一日を過ごしました。そして三時のティ―タイムの時に。
 動物の皆にです、こう言われました。
「さっき故郷の味って言ったけれど」
「先生あまり、だよね」
「イギリス料理食べてないよね」
「日本に来てから」
「色々な料理を食べているけれど」
「いや、故郷の味はいつも楽しんでいるよ」
 先生は皆に笑って答えました。
「こうしてね」
「ああ、ティータイムだね」
「ティーセットをいつも楽しんでいる」
「これが故郷の味なんだ」
「イギリスの味なんだね」
「このミルクティーに」
 実際にそのミルクティーを飲みつつ言いました。
「上段のスコーン、中段のサンドイッチ、下段のケーキとね」
「その三段のセットがなんだ」
「三段のセットがなんだ」
「それがなんだ」
「故郷の味なんだ」
「そうだよ、いつも楽しんでいるよ」
 まさにというのです。
「僕もね」
「とはいってもね」
「イギリスっていうと」
 オシツオサレツが言ってきました。
「お料理についてはね」
「評判が悪いからね」
「世界一まずいとか」
 その様にともです、トートーが言いました。
「言われることもあるね」
「インターネットだといつも笑われているよ」
 こう言ったのはホワイティでした。
「まずいとか盛り付けが駄目とか」
「ニシンのパイとかロブスターのお料理も」
 こうしたものを挙げたのはダブダブでした。
「評判が悪いね」
「鰻のセリーもフィッシュアンドチップスも」
 ガブガブも言います。
「よくないっていうわね」
「朝食はいいっていうけれど」
「それ以外はね」
 チープサイドの家族もお話します。
「どうもね」
「散々な評判だよ」
「世界一お料理で叩かれる国?」
 ジップは首を傾げさせつつ言いました。
「若しかしなくても」
「そんな中でもね」
 老馬も苦しい口調です。
「ティーセットは評判がいいし」
「先生もいつも飲んで」
 チーチーもその紅茶を飲んでいます、他の皆もです。
「故郷の味を楽しんでいるんだ」
「何というか」
 最後に言ったのはポリネシアでした。
「そう言われると先生もいつも楽しんでいるね」
「そうだよ、こうして毎日ね」
 それこそというのです。
「故郷の味を楽しんでいるよ」
「そういうことだね」
「言われてみればそうだね」
「こうして毎日紅茶を飲んでいるから」
「それで故郷を忘れていないんだ」
「そうだよ、とはいっても我が国のお料理は」
 イギリス料理のこともです、先生は言いました。
「実際お世辞にもよくないしね」
「紅茶も日本で飲んだ方が美味しいとかね」
「先生も言うしね」
「イギリスはどうしてもね」
「お料理はよくないね」
「例えばだよ」
 先生はスコーンを食べつつお話しました。
「ローストビーフもね」
「それもだね」
「イギリスの代表的なお料理にしても」
「そっちもだね」
「日本で作って食べた方が美味しい」
「そうなんだよね」
「僕が思うにね、とにかくね」
 また言う先生でした。
「イギリス料理はお世辞にもだよ、けれど」
「故郷の味自体はだね」
「先生も楽しんでるね」
「ちゃんと」
「そうしているんだね」
「そうしているよ」 
 こう言うのでした。
「今みたいにね」
「そうなんだね」
「毎日のティ―セットで」
「十時と三時の」
「その時に」
「そうしているよ、まあ日本やアメリカや中国のね」
 先生はここでは少し苦笑いで言いました。
「そちらのティーセットも楽しんでいるけれどね」
「そうだよね」
「先生はね」
「そちらも時々飲んでるね」
「実際に」
「うん、こちらもね」
 他の国の趣のティーセットもというのです。
「僕は好きだよ」
「来日してから知ったけれど」
「アメリカのレモンティーも日本茶も中国茶も」
「それにロシア風の紅茶も」
「コーヒーも飲む様になったしね」
 イギリスにいた時は完全な紅茶派だった先生がです。
「このことも変わったね」
「全くだね」
「そこも大きな変化よ」
「インスタントコーヒーでも飲んでるし」
「豆のコーヒーも」
「インスタントコーヒーもいいね」
 こちらもとです、先生は頷いて応えました。
「あれは素晴らしい発明だよ」
「日本人の発明の中でも」
「かなりのものよね」
「先生曰くインスタントラーメンと並ぶ」
「そこまでのものよね」
「うん、あれだけ素晴らしいものは」
 本当にというのです。
「滅多にないよ。インスタントラーメンにしても」
「あれもね」
「インスタントラーメンもだね」
「素晴らしい発明だね」
「手軽に食べられて」
「保存もきいて」
「しかも美味しいしね」
 先生はサンドイッチを食べつつ皆にお話しました。
「あんないいものはないよ」
「お酒にも合うし」
「先生寒い時はよくインスタントラーメン肴にしてるわね」
「来日してからね」
「そうもしてるね」
「ビールとか発泡酒とか日本でよく売っている炭酸系のお酒とかとね」
 そうしたものと、というのです。
「合うからね」
「それでよね」
「インスタントラーメンも食べて」
「肴にして飲んでいる」
「そうなのね」
「そうだよ、本当にね」
 実際にというのです。
「あれはいいものだよ」
「全くだね」
「侮れない食べものだよ」
「インスタントコーヒーもそうだけれど」
「インスタントラーメンもね」
「戦後日本の偉大な発明品の一つで」
 どちらもというのです。
「あれでどれだけ沢山の人が助けられたか」
「もうインスタントコーヒーがあれば代用コーヒーもいらない?」
「若しかすると本物のコーヒーより美味しいし」
「そう考えたらね」
「代用コーヒーもいらない」
「そうかも知れないね」
「そうだね、代用コーヒーは冷やせば日本人が好きになりそうでも」
 麦茶と同じ味だからです。
「それでもね」
「若しインスタントコーヒーの方が美味しいなら」
「それならだね」
「代用コーヒーよりも飲まれる様になる」
「そうなるかも知れないんだね」
「そうかもね、ちなみに代用コーヒーは蒲公英等から造るから」
 先生は代用コーヒーの造り方もお話しました。
「身体にはいいよ」
「あっ、蒲公英ならね」
「蒲公英って実は食べられるし」
「寒い場所だとビタミンの供給源だし」
「いいんだよね」
「味はドイツ人好みでないけれど」
 それでもというのです。
「健康にはいいんだよ」
「そうなのね」
「味はあちらの人達には好まれなくても」
「身体にはいいのね」
「そちらは」
「そうだよ、じゃあ今はね」
 先生は紅茶のお代わりをしました、カップにティ―パックを入れてそこにお湯を注ぎ込んでからです。
 お砂糖とミルクを入れます、そうしてミルクティーを飲みつつ言うのでした。
「ミルクティーを飲もうね」
「今はね」
「そうするのね」
「じゃあ故郷の味を楽しんで」
「それからだね」
「また論文を書くよ」
 こう言ってです、先生は実際にティータイムの後は論文を書きました。
 そして夕方にお家に帰ってです、トミーに晩ご飯の時に尋ねられました。
「ジャガイモのスープどうですか?」
「とても美味しいよ」
 冷やした白いスープを飲みつつです、先生はにこりとして答えました。
「やっぱりジャガイモはいいね」
「他のジャガイモ料理もありますし」
「ジャーマンポテトもあるね」
「それにマッシュポテトも」
「本当にジャガイモ沢山買ったんだね」
「安かったんで」
 とにかくそれに尽きるというのです。
「それで、です」
「そうなんだね」
「一杯食べましょう」
「そうしようね、これだけジャガイモを食べたら」
 先生はスープを飲みつつこうも言いました。
「元気が出るよ」
「他の食材はあえてです」
「今日は置いてだね」
「明日に回して」
 それでというのです。
「今日はです」
「ジャガイモ料理をだね」
「楽しみましょう」
「そうだね、ご飯もね」
「ご飯にはジャガイモは入れていないですが」
「それはないね」
「ですがカレーはありますね」
 こちらはというのでした。
「日本ではカレーにジャガイモを入れますね」
「あれも美味しいね」
「近いうちにカレーも作りますから」
「そちらもいいね」
「何かイギリスではカレーばかり食べますね」
「そうなんだよね、何かイギリス人はね」
 先生はお家でもイギリス料理のお話をすることになりました。
「カレーを凄く食べるね」
「そうなりましたよね」
「インドを統治したことがあった関係からね」
「それでカリーが入って」
「カレーになってね」
「それからですね」
「日本にはイギリス経由で伝わったけれど」
 先生は今度はマッシュポテトを食べます、その潰されて味付けされたものを食べながら言うのでした。
「日本でも凄くよく食べるけれど」
「イギリスでもですよね」
「よく食べるね」
「実際にそうですよね」
「あれはすぐに食べられて」
 そしてというのです。
「栄養補給も簡単に出来るし」
「味もいいので」
「日本でもイギリスでもね」
「よく食べますね」
「そうだね、カレーは若しかすると」
 こうも言った先生でした。
「イギリスの数少ない誇れる料理かな」
「そうなりますか」
「元々はインドのものでもね」
 このことは事実でもというのです。
「それでもね」
「そう考えるとですね」
「うん、少し救われるね」
「イギリスはとにかくお料理の評判はよくないので」
「ビーフシチューはあってもね」
「あれもイギリス料理ですしね」
「それが日本ではね」
 笑いながらです、先生はこうも言いました。
「肉じゃがにもなるけれど」
「あれは凄い変化ですね」
「同じ食材を使っても」
「調味料を違えば」
 それでというのです。
「あそこまで変わるんですね」
「そういうことだね」
「そうですね」
「それにしても最近ジャガイモのことといい」
 ジャーマンポテトのベーコンを食べてそれでご飯を食べながらです、先生は自分のお箸を食べつつトミーにお話しました。
「ドイツと縁があるね、僕は」
「あっ、高等部の乗馬部のですね」
「彼ともお話をしているし」
「ドイツと縁が出来ましたか」
「どうもね、じゃあ今日のお酒は」
 笑いながらこうも言いました。
「モーゼルワインにしようかな」
「ビールじゃないんですか」
「ビールもいいけれど」
「それでもですか」
「確か冷蔵庫にチーズがあったね」
 このことからお話するのでした。
「そうだね」
「はい、あります」
「ならだよ」
「ワイン、それもですか」
「丁度あるから」
 モーゼルワイン、それがというのです。
「だからね」
「そちらをですか」
「飲ませてもらうよ」
「じゃあ後で空けますね」
「僕が空けるよ」 
 ワインはというのです。
「そうするよ」
「そうですか」
「だからね」
「僕は僕で、ですね」
「好きなことをしていいから」
「それじゃあ僕も飲みますね」
 トミーは先生の言葉を受けてこう答えました。
「そうしますね」
「それじゃあトミーもかな」
「はい、ワイン飲みます」
「モーゼルかな」
「そのワインを飲みます」
 こう先生に答えるのでした。
「そうさせてもらいます」
「じゃあ一緒に飲もうか」
「そうしましょう。じゃあ僕は僕のワインをですね」
「空けることになるね」
「そうなりますね」
「是非ですね、それと」
 せんせいはさらに言いました。
「チーズですね」
「それで飲もうね」
「いいですね、そういえば」
 トミーは先生の言葉に頷きつつこうしたこともお話しました。
「夏なので」
「この季節だからかい?」
「ビアホールもやっていますね」
「ああ、それもあったね」
 先生は言われて思い出しました。
「日本の夏にはね」
「そうでしたね」
「じゃあ今年もね」
「一度行かれますか」
「そうしようか、日本の夏は色々あって」
「楽しいですよね」
「確かにこの暑さと湿気には参るけれど」
 それでもとです、先生はトミーに笑顔でお話しました。
「それでもだよ」
「このお素麺に西瓜に」
「後は花火もあるしね」
「夏祭りもですね」
「そしてビアホールもだから」
「色々あって」
「楽しめるよ、もっとも他の季節もね」
 春や秋、冬もというのです。
「色々と楽しめるものがあるね」
「四季ごとに」
「日本は四季があってね」
「その四季をどれも楽しむ国なので」
「それでだよ」
「夏もですね」
「楽しめることが色々とあるんだ」
 トミーにお素麺を食べつつお話しました。
「じゃあ今度ね」
「ビアホールもですね」
「行くよ、それと今度夏祭りもあるね」
「そちらもですね」
「行ってね、それで」
「そちらもですね」
「楽しむよ、八条神社での夏祭りだから」
 それでというのです。
「出店も沢山出るしね」
「それにお酒も」
「そちらも出るし」
 それでというのです。
「皆で楽しもうね」
「そうしますね」
「王子も呼んで」
「皆でお祭りに行ってそうして」
「楽しくやろう」
「わかりました」
 トミーは先生の提案に笑顔で頷きました、そうしてこの日は西瓜を食べた後はモーゼルワインとチーズを楽しみました。








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