『ドリトル先生と姫路城のお姫様』




               第八幕  ヒント

 先生は皆と一緒に姫路城のお姫様から頼まれた宴のことを考えていました、その中で王子と冬の花火のことから向日葵や朝顔のことをお話してです。
 翌朝です、先生は動物の皆に研究室で言いました。
「冬の花火は今は奇麗だし意味がある」
「今の日本ではそうだね」
「元々供養とかの意味でだよね」
「日本の夏に打ち上げられる様になったんだよね」
「お盆もあるし」
「そうした宗教行事でもあって」
「そうだったから冬の花火はね」
 それはというのです。
「意味がないとか場違いとか合わないとか」
「そうした意味になってたよね」
「昨日王子とお話していたけれど」
「昔はそうだったね」
「かつては」
「うん、けれどね」
 それでもと言う先生でした。
「ここから閃いたよ」
「宴のことで?」
「そのことでだね」
「先生閃いたんだね」
「そうなんだね」
「そうなったよ」
 実際にというのです。
「ここでね」
「それでどんな閃きかな」
「一体」
「閃いたっていうけれど」
「その閃きはどんなの?」
「宴の時に花火も打ち上げるんだ」
 歌や舞、能や歌舞伎だけでなくというのです。
「こちらもね」
「ああ、今の季節でも」
「夏じゃないけれど」
「スキー場みたいに打ち上げる」
「そうするのね」
「お姫様達は昔から日本におられるから」
 それも何百年とです。
「だから花火は夏という意識が強いね」
「最近の日本のことは知っていても」
「それでもだね」
「その意識が強いけれど」
「そこをあえてだね」
「そう、打ち上げるんだよ」
 その花火をというのです。
「是非ね」
「ああ、それはいいね」
「花火は奇麗だしね」
「それじゃあね」
「提案しようね」
「これはいいね」
 笑顔で言う先生でした。
「太宰治からいいヒントを貰ったよ」
「こうしたことからも考えると本っていいね」
「やっぱり読むべきね」
「本を読むと得られるものが多いね」
「本当に」
「全くだよ、太宰さんの本を読んで」
 そしてというのです。
「その結果だね」
「それでだね」
「今回のヒントも出たね」
「いやあ、太宰治さんに感謝しないとね」
「そう思えるわね」
「全くだね、ここはさくらんぼをプレゼントしようかな」
 先生は笑ってこうも言いました。
「太宰にね」
「あれっ、何でさくらんぼ?」
「どうしてなの?」
「さくらんぼって」
「何で先生お話に出したの?」
「太宰治の命日は昭和二十四年六月十三日なんだ」
 このことからお話する先生でした。
「愛人の人と東京の玉川上水で自殺したんだ」
「ヘビーね」
「心中なんて」
「それも愛人の人がいたとか」
「お顔がよくてお金持ちの家の人で人柄も悪くなかったそうだから」
 そうした要素があってというのです。
「結構もてたそうだからね」
「そういえば太宰治さんの写真って」
「この研究室にも太宰さんの本あってね」
「太宰さんの写真も載ってるけれど」
「確かに結構な美形よね」
「芥川龍之介さんもだけれど」
「二人共美形でも有名だね」
 実際にとです、先生も答えました。
「顔立ちのよさでも」
「そうだよね」
「二人共顔もよくてね」
「頭もいいしね」
「それならもてない筈ないね」
「それで太宰はなんだ」
 愛人の人と自殺したとです、動物の皆もお話しました。
「自殺して」
「そしてだね」
「その日が昭和二十四年六月十三日」
「この日なんだ」
「そうだよ、それでその日を桜桃忌というけれど」
 これがというのです。
「桜桃というのはさくらんぼのことだよ」
「だからなんだ」
「先生今さくらんぼって言ったんだ」
「成程ね」
「そういう理由だったんだ」
「そうだよ、これは作品の名前だよ」
 桜桃というのはというのです。
「太宰のね」
「へえ、そうなんだ」
「桜桃っていう作品も書いていたんだ」
「そうだったのね」
「それが命日の名前にもなって」
 そしてというのです。
「芥川もそうだよ」
「何か昨日王子とお話してたけれど」
「ここでも太宰と芥川って重なるね」
「不思議なことに」
「美形で自殺したことといいね」
「そうなんだよね、ちなみに芥川の命日は河童忌だよ」
 この名前だというのです。
「河童という作品も書いていてね」
「ううん、何かに合うかな」
「芥川さんが河童っていうと」
「太宰さんの桜桃忌もそうで」
「そこも同じだね」
「本当にこの二人って重なるね、そういえば芥川は」
 ふと思い出した先生でした。
「羅生門を書いていたけれど」
「あっ、羅生門っていったら」
「京都のあそこじゃない」
「僕達跡地に行ったけれど」
「あそこを舞台にした作品も書いていたんだ」
「そういえばそうだったよ」
 動物の皆も気付きました。
「いやあ、文学って近くにあるね」
「姫路城は泉鏡花さんで」
「さくらんぼは太宰治さん」
「羅生門は芥川龍之介さんね」
「文学は人の身近にあるものだよ」
 また言う先生でした。
「奈良に行ったら何処もかしこも和歌に詠われていたしね」
「そうだったね」
「あれは凄かったね」
 オシツオサレツもその時のことを思い出して言います。
「大和三山も平城京も」
「何処でもだったから」
「万葉集の世界だったわ」
 ダブダブもこう言います。
「奈良は」
「明日香村にいたら」
 しみじみとして言うトートーでした。
「どれだけの万葉集の歌があったか」
「そして京都だと古今和歌集」
 こう言ったのはホワイティです。
「そうなってるね」
「平安神宮に行ったら和歌とお花が一杯で」
「もう嘘みたいに奇麗だったわね」
 チープサイドの家族はその平安神宮に行った時のことを思い出しています。
「あんな素敵な場所があるなんて」
「この世界にね」
「奈良も京都も和歌の世界だね」
 老馬の言葉もしみじみとしたものです。
「まさに」
「いやあ、そのことを思い出すと」
 ジップも深く思うのでした。
「あちこちの場所が文学の舞台だね」
「本当にそうだね」
 チーチーはジップの言葉に頷きました。
「先生の言う通りだよ」
「金閣寺なんか三島由紀夫の小説になってるね」
 ガブガブは和歌からあえて離れました。
「そうだしね」
「そうだね、場所もそうで食べものそうでね」
 先生はまたさくらんぼのお話をしました。
「今度太宰治にね」
「お供えだね」
「そうするんだね」
「さくらんぼを」
「今回のお礼に」
「そうするよ、太宰の霊にお供えをして」
 そしてというのです。
「それからはね」
「僕達で食べるんだね」
「そうするんだよね」
「それは絶対だよね」
「やっぱりそうだよね」
「このことはね、お供えをしたものは」
 まさにというのです。
「その後でね」
「しっかりと食べる」
「そうするからね」
「だからだね」
「さくらんぼを太宰さんにお供えしたら」
「その後は皆で食べようね」
「そうしようね、そしてこれでまた一ついい提案が出来たけれど」 
 考えるお顔になって言う先生でした。
「もう一つ何かないかな」
「もう一つ?」
「先生まだアイディアが必要と思ってるんだ」
「そうなの」
「そうなんだ、折角の姫路城の宴だから」
 あのお城で行われるからだというのです。
「あのお城の奇麗さと雄大さをさらに活かした」
「その様なだね」
「その様なことも考えているんだ」
「そうなんだ、けれど何がいいかな」
 また言う先生でした。
「一体」
「そこは難しいね」
「どうにもね」
「何かいい考えが出るかな」
「花火みたいに」
「そうなればいいけれど」
「ううん、もっと本を読んでみようかな」
 先生は皆に考えるお顔で述べました。
「お城のことも調べると言ったしね」
「そうそう、日本のお城ね」
「天守閣のことね」
「それも姫路城と一緒で五層の天守閣」
「そうしたお城からだね」
「調べてヒントをって思っているけれど」
 それでもと言う先生でした。
「どのお城がいいかな」
「大阪城かな」
「関西のお城で他に有名なのはあのお城だしね」
「あのお城も五層だし」
「丁度よくない?」
「大阪城も悪くないね、そういえば」
 皆のお話を聞いてでした、先生はあることを思い出しました。その思い出したことはといいますと。
「黄金の茶室があったよ」
「あっ、豊臣秀吉さんの」
「あの人が造らせたね」
「折り畳み式で組立てられる茶室ね」
「あの茶室をなんだ」
「流石に全部金色は妖怪のお姫様でも無理かな」
「どうかしらね」
 皆先生に口々に言います。
「お姫様兵庫の妖怪さん達の棟梁だから」
「相当なお力持ってるけれど」
「それでもね」
「流石にああした茶室はすぐに出来ないかしら」
「けれどお茶自体はいいかも」
「それ自体はね」
 こちらも宴の中に入れていいのではというのです。
「催しと催しの間に休憩で入れるとか」
「そういうのもよくない?」
「悪いことないと思うよ」
「それもね」
「そうだね、じゃあ茶道の時間も入れて」
 こちらもというのでした。
「お話してみようか」
「来週の日曜ね」
「お姫様にそうしてみせましょう」
「ここはね」
「そうしましょう」
 皆で先生はお話してでした、そのうえで。
 宴に花火と茶道の時間も入れてお姫様に提案することにしました、そしてこのお話が終わってでした。
 その後で、です。先生は今度はこんなことを言いました。
「しかし太宰治は愛人がいたというけれど」
「ああ、愛人の人と心中してるし」
「もてたんだよね」
「そうよね」
「奥さんもいたし」
「お顔がよかったこともあって」
「それについてどうかということは」 
 先生としてはです。
「僕は実体験では出来ないね」
「そこでそう言うのね」
「自分はもてないからって」
「そうくるのね」
「実際のことだからね」
 それだけにというのです。
「だから客観的に見て」
「そうしてだね」
「書いていくだね」
「愛人の人とのことは」
「そうしていくんだね」
「そうなるよ、愛人の人どころか結婚さえも」
 まさにというのです。
「無縁だね」
「だからそうしたことは言わないの」
「人は外見じゃないでしょ」
「先生だってそうだし」
「そもそも太宰さんも芥川さんもそうか」
「それだけじゃないでしょ」
 その人達にしてもというのです。
「そもそも」
「そうでしょ」
「違うの?」
「それはね。二人共人間として無道ではなかったし」
 人の道は踏み外していなかったというのです。
「太宰は何度か心中をしてるけれどね」
「それで女の人一人死んでるね」
「そうした事件は起こしてるけれどね」
「それでもだよね」
「極悪人かっていうと」
「違うよね」
「そう、だからね」
 それでというのです。
「人柄もあってもてたんだよ」
「じゃあ先生もじゃない」
「自分は恋愛とは無縁だと決めつけないで」
「それでよ」
「やっていけばいいじゃない」
「それでね」
「そうだといいね、お姫様も言っておられたけれどね」 
 このことについても言う先生でした。
「僕はとてもいい相をしていてね」
「もてるって言ってたでしょ」
「実際に」
「それじゃあよ」
「先生は絶対にいい人がいるから」
「自分は無縁とか思わないの」
「僕達も確信しているし」
 皆はあくまで自分がわかっていることのお話をします。
「全く。いつもそうだから」
「本当にちゃんとしないと」
「それこはね」
「そうだね、じゃあ今はもう言わないよ」
 そうするとした先生でした。
「このことは」
「それもいいかも知れないわね」
「言っても仕方ないし」
「そして今はね」
「これからどうするかだけれど」
「今日は講義がないから」
 それでと言うのでした。
「研究に専念するよ、医学の方をね」
「この前心臓の本読んでたわね」
「心臓の病状について」
「先生今度は心臓のこと勉強しているんだ」
「そうしているのね」
「そうなんだ、心臓は人間の中で一番大事な場所の一つだね」 
 先生は皆にお話しました。
「若しここがどうにかなるとね」
「大変だよね」
「脳もそうだけれどね」
「若し心臓がどうかなったら」
「どれだけ大変か」
「それで調べているんだ、心臓の詳しい構造とかも調べてね」
 先生は本を取り出しました、そしてその本を読みながら動物の皆に対してこう言いました。
「考えているんだ」
「前に心臓の論文書いてなかった?」
「そうしてたよね」
「それでまた書くの?」
「そうするの?」
「そうしようかな」
 実際にと言う先生でした。
「ここは」
「それも悪くないかな」
「論文を書いて発表する」
「それが学者さんだからね」
「小説家が小説を書くことと同じで」
「それが学者さんのやることだからね」
「理系の論文も書いているけれど」
 その中でというのです。
「やっぱり僕はお医者さんだね」
「そうそう、先生はね」
「本職はお医者さんだよ」
「医学者だよ」
「ちゃんと博士号も持ってるし」
「先生はお医者さんだよ」
「だからね」
 お医者さんだからだというのです。
「心臓のことはね」
「まさに専門分野だからね」
「そっちのことの研究も続けているね」
「そうだね」
「そうだよ、外科と内科はね」
 こちらの分野はというのです。
「僕の専門中の専門だからね」
「そうそう、イギリスにいた時からね」
「先生のお医者さんとしての専門分野だから」
「この二つは詳しいね」
「特にね」
「そう思ってるよ、自分でもね」
 まさにというのです。
「内科と外科だね、ただ心臓外科もするけれど」
「難しいよね」
「心臓移植とか特にね」
「臓器移植自体がそうだけれど」
「心臓はね特によね」
「何といっても」
「だから余計に気をつけているんだ」
 心臓のことにはというのです。
「僕もね」
「そうだよね」
「それで研究も怠らないね」
「そうしてるんだね」
「その通りだよ」
 こう言って心臓の本も読む先生でした、見ればその本はフランス語です。フランスで出された医学の専門書です。
 その本を読んでから今度はでした。
 先生は日本のお城の本、日本語のそれを読みつつ皆にこんなことを言いました。
「織田信長さんが滋賀県に築いた安土城だけれど」
「ああ、あの凄かったっていう」
「一番上が漆塗りでね」
「緊迫も使ってて」
「青瓦も奇麗だったんだよね」
「そうみたいだね、今は別の場所に再建されているけれど」
 その安土城の天主閣がです。
「見事なものだね」
「姫路城も確かに立派でね」
「大阪城や熊本城もだけれど」
「安土城も凄かった」
「そうだよね」
「もうその見事さときたら」
 先生は本にある安土城のイラストを観つつ動物の皆にお話します。
「他のお城とは違うよ」
「中は吹き抜けだったんだよね」
「それで色々な宗教のことが襖とかに描かれていて」
「お寺や神社みたいでもあった」
「キリスト教も入っていたんだね」
「織田信長は無神論者だったと言われているけれど」
 先生は安土城を築いたこの人のこともお話しました。
「実は違ったみたいだね」
「ちゃんと宗教も信じていたんだ」
「神様のことも」
「そうだったんだ」
「だからね」 
 それが為にというのです。
「安土城はそうだったんだ、そして石垣に使ったお地蔵さんや墓石は」
「何でもないから使ったんじゃないんだ」
「只の石だとか言ってたとか言うけれど」
「実は違ったんだ」
「そうだったのね」
「うん、そこにある霊的な力を使って」
 そうしてというのです。
「結界にしようと思っていたみたいだよ」
「ああ、そうだったんだ」
「神仏を恐れないんじゃなくてその力を知っていて」
「だからお城の結界にしようとしていた」
「そうだったんだ」
「そうみたいだよ、元々織田家は神主の家だったしね」
 織田信長のお家のこともお話するのでした。
「越前、今の福井県の方の」
「それで愛知県に移ってだったんだ」
「戦国大名になったの」
「そうだったんだ」
「そうしたルーツだったし」
 神主のお家だったこともあってというのです。
「名古屋の熱田神宮に桶狭間の戦いの前に参拝しているしね」
「ああ、あの有名な戦いね」
「織田信長さんっていったらあの戦いだけれど」
「あの戦いの前になんだ」
「あの神社にお参りしているんだ」
「そうしたこともしていたの」
「そうみたいだよ、そして比叡山や本願寺と戦ったことは」
 このことはといいますと。
「あの人達が逆らったし一向一揆を起こしてしかも戒律を結構破っていたから」
「仏教の戒律破ってたんだ」
「その頃の比叡山や本願寺は」
「そうだったんだ」
「うん、特に比叡山はそのことが昔から問題になっていてね」
 それでというのです。
「織田信長は破戒僧を懲らしめた」
「そうした見方も出来るんだね」
「よく神聖なお寺を焼き討ちしたとか言われるけれど」
「また違うんだ」
「十字軍みたいに無茶苦茶はしていないから」
 このことは重要だというのです。
「織田信長はね」
「十字軍って酷かったからね」
「エルサレムに攻め込んだ時とかね」
「同じキリスト教のビザンツ帝国に攻め込んだり」
「もうやることも滅茶苦茶で」
「南フランスのアルビジョワ十字軍とかね」
「とんでもなかったね」
 動物の皆はかつて先生に教えてもらったことを思い出しました。
「何ていうかね」
「人間ここまで出来るのかってね」
「そう思える位酷くて」
「問題外だったね」
「十字軍は」
「本願寺との戦いも比べものにならなかったよ」
 十字軍と比較すると、というのです。
「本当にね」
「じゃあ全然違うんだ」
「よく第六天魔王って言われるけれど」
「実際の信長さんは違うんだ」
「魔王じゃなかったんだ」
「魔王というか新しい時代を切り開いた人だよ」
 それが織田信長という人だというのです。
「それで安土城はね」
「奇麗なだけじゃなくて」
「あの人の宗教についての考えも出ていて」
「凄いお城だったんだね」
「天主閣も」
「そうだよ、その天主閣たるや」
 まさにというのです。
「この世のものとは思えない」
「そこまでのもので」
「壮麗そのものだったんだね」
「今はもうないけれど」
「そしてね」
 先生は本を読みつつこうも言いました。
「お城も飾ったりしていたよ」
「その安土城を?」
「そうしたこともしていたの」
「そうだったんだ」
「うん、天主閣の提灯を幾つも付けて夜に照らしたこともあったそうだよ」
 このこともお話するのでした。
「あの人は」
「それライトアップね」
「凄いことしてたんだ」
「イルミネーションみたいね」
「それはまた」
 このことには動物の皆もびっくりでした。
「四百年以上昔のライトアップとか」
「織田信長さんってそんなこともしていたんだ」
「色々凄いって思ってけれど」
「そんなことまでしていたんだ」
「只の英雄じゃなかったんだね」
 チーチーはしみじみとして思いました。
「そうしたセンスもあったんだ」
「芸術家の一面があったのかも」
「そうよね」
 チープサイドの家族もお互いでお話します。
「天主閣も凄いけれど」
「その天主閣のライトアップとか」
「少なくとも普通の人じゃないね」
 トートーもこう言います。
「織田信長さんは」
「時代の先駆者に相応しい人だったのね」
 ポリネシアが思う織田信長はそうした人です。
「まさに」
「ただ政治家や軍人として凄いんじゃなかったんだ」 
 ガブガブも呻ります。
「そんなことまで考えてしていたんだ」
「そのライトアップ見たいね」
 ホワイティは心から思いました。
「是非共」
「そうだね、滋賀県に再建されないかな」
 ジップは是非にも思って言いました。
「大阪城みたいに」
「姫路城も凄いけれど安土城も凄かったんだったら」
 ダブダブも普段より興奮しています。
「観たいわね、この目で」
「それもライトアップして夜に」
 老馬も希望を述べます。
「観たいものだよ」
「今の時代の僕達にそう思わせるから」
「それだけも偉大だよ」
 オシツオサレツも二つの頭で言います。
「織田信長さんって人は」
「物凄い人だね」
「僕もそう思うよ」
 まさにと言うのでした、先生も。
「こんなお城、こんな人がいたんだね」
「日本にはね」
「ゲームや漫画や小説の主人公にもなってるし」
「ドラマでもよく題材にされてるわね」
「日本で一番有名な人の一人かもね」
 織田信長という人はというのです。
「本当に。ただね」
「ただ?」
「ただっていうと」
「先生どうしたの?」
「何かあったの?」
「いや、安土城を飾った提灯は」
 この安土桃山時代のライトアップから言うのでした。
「面白いね、これは使えるかな」
「あっ、姫路城の宴に」
「それにだね」
「使えるかも知れないっていうんだね」
「それに」
「どうかな」
 こう皆に言うのでした。
「これは」
「そうだね」
「これ使えるかもね」
「姫路城も奇麗だしね」
「本当にね」
「それじゃあね」
 皆も先生に応えます。
「お姫様に提案してみる?」
「そうしてみる?」
「夜の姫路城を照らし出す」
「そうする?」
「天守閣もいいけれど」 
 さらに言う先生でした。
「お城全体をね、さらにね」
「それだけじゃないんだ」
「先生の考えは」
「まだあるんだ」
「ライトアップに加えて」
 それだけでなく、というのです。
「イルミネーションもね」
「それもなんだ」
「イルミネーションも飾るんだ」
「それもやるんだ」
「そうするんだ」
「うん、そうすれば」
 まさにというのです。
「違うと思うからね」
「その通りだね」
「じゃあやってみよう」
「面白そうだし」
「イルミネーションも提案してみよう」
「イルミネーションで映し出すのは」
 さらに言う先生でした。
「お城にお姫様や妖怪さん達、そして天守物語がいいかな」
「あのお話に出て来た場面とか」
「そういうのを出すんだ」
「イルミネーションには」
「それがいいかな」
 先生は皆に考えつつお話しました。
「ここは」
「そうだね」
「じゃあそのことも提案してみよう」
「何か色々だけれど」
「アイディアはどんどん出してこそだし」
「そうしていっていいわね」
「そうも思うし」
 それだけにというのです。
「日曜にはね」
「このこともお姫様に提案だね」
「ライトアップやイルミネーションのことも」
「このことも」
「そうしようね。洋食に」
 お料理にというのです。
「花火にお茶に」
「ライトアップとイルミネーション」
「そうしたものを提案する」
「そうするんだ」
「そうしよう、アイディアが出るか不安だったけれど」
 それがというのです。
「これがね」
「結構出てるね」
「いい具合に」
「いいことだね」
「本当に」
「そうだね、よかったよ」
 笑顔も浮かべる先生でした。
「このことは」
「全くだね」
「果たしてアイディアが出るか不安だったけれど」
「出たわね」
「それも五つも」
「そうなったよ、神様に感謝しないとね」
 先生も信仰を出しました、先生は敬虔なクリスチャンでもあります。そして他の宗教も尊重しています。
「やっぱり」
「これもいつも先生が学問に励んでいるからだね」
「本を読んでフィールドワークもして」
「色々な物事を知ってるから」
「アイディアも出て来るのだろうね」
「若し何も知らないと」
 その場合はどうなのか、先生はお話しました。
「何も出ないよね」
「そうだよね」
「まずは何かを知らないとね」
「そこから出ないよね」
「アイディアにしても」
「そうだね、太宰治に豊美秀吉に織田信長」
 今回のアイディアの元となった人達のことも思うのでした。
「その人達のことを知らないと」
「花火は出なかったし」
「お茶やライトアップもね」
「イルミネーションだってそうで」
「そうならなかったから」
「あと洋食もだね」
 このアイディアもというのです。
「出なかったね」
「そうだよね」
「イタリア料理やフランス料理を知らないと」
「すべイン料理だってね」
「そうだったね」
「本当に知っていないと」
 また言う先生でした。
「何も出なかったよ」
「ううん、お姫様も先生が博識だから知っていて」
「それでだね」
「お願いしたんだね」
「そうだね」
「そうだったら嬉しいね、じゃあ日曜に」
 この日にというのです。
「皆でまた姫路城に行こうね」
「うん、是非ね」
「そうしてお姫様にお話しようね」
「宴で何をするか」
「そのことを」
「そうしようね」
 まことにと言うのでした、そしてです。
 ティータイムには紅茶も楽しみました、ですがここで先生は皆にこんなことを言ったのでした。
「このティータイムもね」
「宴に出来る?」
「そうなる?」
「ひょっとして」
「それが出来る?」
「そうかもね、まあこのことは提案するつもりはないよ」
 ティータイムはというのです。
「茶道を提案するから」
「だからだね」
「ティータイムは提案しないの」
「こちらは」
「そうするんだ」
「うん、提案しても」
 例えそうしてもというのです。
「被るからね」
「茶道もお菓子出るしね」
「和菓子がね」
「じゃあ提案してもね」
「仕方ないわね」
「だからだよ」
 それ故にというのです。
「このことは提案しないよ」
「そうするのね」
「まあお茶ばかり飲む宴もあるけれど」
「そうした宴でもないし」
「止めておこうね」
「ティータイムの提案はね」
「そうしようね」
 こう言ってでした、先生はお茶を飲みます。そのうえで。
 先生は今度は泉鏡花の論文を書くことをはじめました、天守物語のそれをです。そうしつつ思うのでした。
「奇麗な物語だね」
「姫路城もお姫様も」
「独特の奇麗さがあるんだね」
「日本的な」
「そうなんだ、だから調べていても」
 そうしていてもというのです。
「幽幻の世界の美かな」
「それを感じるんだ」
「先生も」
「そうなの」
「うん、日本独特の美があるね」
 天守物語にはというのです。
「そしてね」
「それを読んで」
「そしてだね」
「そのうえでね」
「論文を書いていくのね」
「今も」
「うん、これはまた機会があれば」
 その時はというのです。
「この人の作品について書きたいね」
「よっぽど泉鏡花さんが好きになったのね」
「日本の文学の中でも」
「先生の場合は」
「うん、色々な作家さんがいるけれど」
 その中でもというのです。
「泉鏡花は素晴らしい作家だよ、海外にもっと伝えたい位だよ」
「じゃあ英語とかでも論文書くのね」
「そうして世に伝えるのね」
「そうしていくのね」
「そうしていこうかな」 
 先生は微笑んで言いました、そうしてです。
 論文も書きました、そしてお昼ご飯の後で研究室に来たトミーに言いました。
「お姫様に言うことは決まったよ」
「そうなんですね」
「洋食と花火、茶道、ライトアップとイルミネーションだよ」
「その五つだね」
「そう、その五つをね」
「お姫様に提案するんですね」
 トミーも応えます。
「そうされるんですね」
「これはどうかってね」
「いいですね、ただ」
「ただ?」
「よくそこまで考えられましたね」 
 トミーは先生に感心している顔で言うのでした。
「本当に」
「いや、色々考えてね」
「そうしてですか」
「どうかって考えていって」
「そうしてですか」
「太宰治や日本のお城のことを調べていて」
「出たアイディアですか」
「洋食はお姫様達がいつも和食だって思って」
「趣向を変えてですね」
「どれもそこから出ているから」
 だからだというのです。
「そこまでとかいうとね」
「違いますか」
「またね、アイディアはこれまでにあるものから出るね」
「先生の場合も」
「それで僕の知識の中から」
 まさにというのです。
「出てきたものだよ」
「そうですか」
「うん、それとね」
 先生はトミーにさらに言いました。
「来週の日曜日だから」
「また姫路城に行く日は」
「その日はね」
「また皆で、ですね」
「姫路城の天守閣に行こうね」
「わかりました」 
 トミーも笑顔で応えました。
「また行きましょう」
「是非ね」
「そうしましょう」
「そういうことでね」
「来週の日曜ですね。ただ」
 ここでトミーは先生にこうも言いました。
「やっぱり本は読むべきですね」
「知識があるとね」
「そこからヒントも出るので」
「そう、だからね」
 それが為にというのです。
「本を読んでフィールドワークもする」
「それが大事ですね」
「特に学者ともなるとね」
「つまり先生みたいな人はですね」
「本を読んでフィールドワークもする」
「そうすべきですね」
「絶対にね、ただ安土城だけれど」 
 このお城のことをまた言う先生でした。
「滋賀県にあるけれど」
「それが何か」
「いや、滋賀県に今度行きたいね」 
 安土城のあるこの県にというのです。
「そして琵琶湖で研究したい生物がいるから」
「琵琶湖にですか」
「そう、ビワコオオナマズっている鯰がいるんだ」
「あっ、確か一メートルにもなる」
「日本最大の淡水魚でね」
「凄く貴重なお魚でしたね」
「そのお魚をね」
 まさにというのです。
「調べたいんだ」
「だからですね」
「行きたいね」
 その琵琶湖がある滋賀県にというのです。
「是非ね」
「生物学の研究ですね」
「それをしたいね」
「琵琶湖はただ大きいだけじゃないんですね」
「生態系も面白いからね」
「行かれたいんですね」
「そう思っているよ、あと歴史や宗教も学べるから」 
 滋賀県はというのです。
「安土もあったしかつては都もあったしね」
「飛鳥時代ですね」
「天武帝に攻め滅ぼされているけれどね」
 そうなったにしてもというのです。
「それでもね」
「都があったことは確かですね」
「そうだよ、それに小谷城や佐和山城もあったね」
「戦国時代ですね」
「浅井長政や石田三成所縁だよ」
 こうした人達に縁がある場所だというのです。
「そうした場所もあって何といっても比叡山だね」
「あのお寺ですね」
「比叡山は凄いお寺だからね」
 先生は比叡山についてこうも言いました。
「長い間都を守護してきて多くの経典や書を蔵していてね」
「有名な仏教の僧侶の人を多く出している」
「日本の学問の中心でもあった場所だから」
「機会があればですね」
「行きたいね」
 滋賀県にもというのです。
「三重県にもと思っているけれどね」
「そちらにもですね」
「そう、行ってね」 
 そしてというのです。
「学びたいね」
「そうですね、じゃあその時は」
「トミーも皆もだね」
「ご一緒出来ればいいですね」 
 トミーは先生ににこりと笑ってお話しました。
「そうなれば」
「そうだね、じゃあね」
「はい、滋賀県に行く時は」
「皆で行こうね」
 先生も笑顔で応えました、そのうえで今は泉鏡花の論文を書くのでした。








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