『ドリトル先生と日本の鉄道』




               第十一幕  何人来ても

 鉄道博物館のディオラマは全てのチェックが終わって後は公開されるだけとなりました、そのことが決まってです。
 そうしてです、先生のところにも公開日のことが伝えられましたが。
 先生はその連絡を十時のティータイムの時にその連絡を受けてです、今飲んでいる中国茶の味を楽しみつつ言いました。
「遂にこの日が来たね」
「あっ、ディオラマの公開だね」
「その日が決まったのね」
「遂に」
「うん、完成してね」
 そしてというのです。
「ちゃんと動くか、SLや列車砲から出す火花は本当に安全か」
「全部チェックが終わって」
「それでだね」
「公開出来る様になったね」
「遂に」
「一週間後にね」
 その時にというのです。
「公開されるよ。じゃあ僕達もね」
「うん、観に行こうね」
「鉄道模型のディオラマが動くのを」
「宙が走る様になっているし」
「イルミネーションもあるし」
「それに列車砲もあるから」
「全部観ようね」
 先生はお菓子も食べつつ皆に言いました、今日のティーセットは月餅にごま団子そして桃饅頭で先生はそちらも楽しんでいます。
「リニアモーターカーもね」
「観ようね」
「今から楽しみだよ」
「一週間後の公開が」
「全部動くのを観ようね」
「そうしようね、それとね」
 ここでまた言う先生でした。
「ホームページでもこのことが公開されているみたいだよ」
「鉄道博物館のね」
「そこでもだね」
「公開されているんだね」
「そうなのね」
「後でそのことを確認しようね、ディオラマはね」
 他ならぬこれはというのです。
「あの博物館の目玉の一つだからね」
「それでだよね」
「観に来る人も多いね」
「色々な展示物を観に来る人もいるけれど」
「ディオラマも人気があるから」
「だからよね」
「沢山の人がホームページも観るのね」
「きっとね、それとね」
 さらに言う先生でした。
「やっぱり問題は」
「うん、列車砲の模型を観てね」
「それで変な反応する人がいるかもね」
「どうしても」
「そうした人が博物館に抗議しに来たら」
「その時は」
「僕が行くよ。今回の一番の懸念だよ」
 先生にとってはです。
「列車砲の模型があってもいいし出来も素晴らしいしね」
「それじゃあね」
「いいと思うのに」
「他の国なら問題なく展示出来るのに」
「日本だとね」
「クレーム付ける人がいることがね」
「困るよね」
 皆も言います、そしてです。
 先生の言葉からです、皆は言いました。
「けれど先生が、よね」
「そうした人達に説明してくれる」
「そうしてくれるのね」
「そうさせてもらうからね」
 だからとです、先生も言うのでした。
「安心していいよ」
「そうだね」
「それじゃあね」
「若しそんな人達が出て来ても」
「安心出来るわね」
「そうだよ、しかし迷彩服が戦争を思い浮かべるからイベントするななんて」
 先生はこのことにあらめて思うのでした。
「言論弾圧だよ」
「そうだよね」
「そうした人達って本当に何かあると民主主義って言うけれど」
「言論の自由を守れとかね」
「やたら言うけれど」
「その人達自身が言論弾圧するから」
「本末転倒だよ」
 皆で言うのでした。
「本当にね」
「この場合はどうなのかしら」
「民主主義をって言う人達がそんなことするって」
「おかしいよ」
「民主主義や言論への弾圧は政府がするとは限らないよ」
 先生も言うのでした。
「そうした個人や団体も行うよ」
「テロだってそうだよね」
「おかしな人達がやるし」
「政府が暴走して民主主義が否定される場合も確かにあるけれど」
「そうした人達の方が危険よね」
「民主主義や言論の自由については」
「僕は前からそのことがわかっていたつもりだけれど」 
 それでもというのです。
「特にね」
「日本に来てから」
「そのことがわかったんだね」
「沖縄でもいたしね」
「基地の前に」
「あの人達は不思議だよ」 
 先生はこうも言いました。
「平日の昼間に普通にいるけれどね」
「しかも沖縄の人じゃない人かなり多いし」
「本土から一杯来ていて」
「お仕事は?」
「あと何処に泊まってるの?」
「運賃も気になるし」
「考えれば考える程怪しいね、だからね」
 そうした事情もあってというのです。
「僕はああした人達を胡散臭く思っているよ」
「普通の人達じゃないよね」
「そうした人達の抗議で何かが中止になるとかね」
「あってはならないよね」
「絶対に」
「そう思うよ、そもそもね」
 先生は皆にこうしたお話もしました。
「ああした人達って共産主義を信じている人が多いね」
「今もね」
「実はって人ばかりよね」
「日本のああした人達って」
「学生運動やってた人達も多いし」
「まだ共産主義信じている人達が主流かしら」
「共産主義国家は全部徴兵制だったよ」
 このことも指摘するのでした。
「そうだったよ」
「あっ、ソ連とかね」
「北朝鮮は今でもそうだしね」
「あの国が共産主義国家かっていうと違うと思うけれど」
「看板はそうだし」
「平和勢力って言う意見もあったけれど」
 共産主義がです。
「実際はソ連は侵略国家だったし」
「そうそう」
「バルト三国とかフィンランドとか」
「アフガニスタンでもそうだったし」
「ハンガリーやチェコスロバキアも弾圧して」
「全然平和主義じゃなかったよ」
「昔の日本ではずっとそんなことも言われていたんだよ」
 共産主義、ソ連が平和勢力という主張がです。
「ソ連の言うままね、そうした国や主義を信じていてね」
「平和とか戦争反対って言っても」
「説得力ないよね」
「どうしても」
「そうよね」
「うん、ああした人達は今も考えが変わっていないし」
 ソ連がなくなって四半世紀以上経ってもです。
「自分達こそ平和じゃない」
「言論弾圧していて民主主義も否定している」
「自覚あるのかしら」
「というか自分達の主張を押し通すのが民主主義?」
「言論の自由とか思っているのかしら」
「そうかも知れないね、そうした人達が来たら」
 それでもというのです。
「僕が反論するよ」
「頑張ってね」
「その時はね」
「そんな時来ないに限るけれど」
「そもそもね」
「それが何よりだよ」
 心からこう思う先生でした。
「ああした人達が来ないこと自体がね」
「全くよね」
「博物館は学問の場所だし」
「抗議しに来る場所じゃないから」
「そもそも場違いだから」
 こう言ったのです、そしてでした。
 チープサイドの家族が最初に先生にこう言いました。
「沖縄でああした人達見たし」
「この目でね」
「どうした人達かわかっているから」
「充分に対すること出来るわね」
「暴れる様なら警備員さん呼べばいいし」
 トートーはこうした知恵を出しました。
「強制退去も止むを得なしだからね」
「まあ僅かなおかしな人達の変な抗議なんてね」
 そもそもと言うジップでした。
「気にしなくていいしね」
「多くの人が楽しく学べることが大事だよ」
 ホワイティもこう考えています。
「何よりもね」
「そもそもちょっとやそっとの抗議で中止とか」
 チーチーはこのことについて言及しました。
「その方がおかしいよ」
「そうした人達の常で自分達の意見が多数派とか言うみたいだけれど」
 老馬はこのことを指摘しました。
「それちゃんと統計とか出してるのかな」
「自分がそう思って言っているのなら」
「もうそれ自体がおかしいから」
 オシツオサレツも二つの頭で言います。
「そんな人達の言う通りにしていたら」
「おかしくなるばかりだよ」
「クレーマーはクレーマーに過ぎない」
 ダブダブは右の羽根を挙げて言い切りました。
「気にしていたら仕方ないわ」
「お店でもそうよね」
 ポリネシアもクレーマーと認識してお話をしました。
「そんな人の意見一々聞いていたらどうしようもないわ」
「そう、変な人達の意見を絶対多数の意見と認識したらね」
 先生もこう言います。
「事態は悪くなるだけだよ」
「本当にね」
「そうした人達って結局クレーマーね」
「ただ抗議するだけの」
「そうした人達よね」
「そうだよ、だから相手をしたら」
 それでというのです。
「列車砲どころか博物館の他の軍事関係を紹介しているコーナーもね」
「全部なくなるわよね」
「そこからどんどん言ってきて」
「絶対にそうなるよ」
「クレーマーの人って自分の意見が一旦通ったらどんどん言ってくるし」
「ここで止めないとね」
「そうだよ、だからね」
 それでというのです。
「ここで止めないとね」
「若し出てきたら」
「先生が応対して」
「そうしてだね」
「ことを収めるよ。もっともね」
 ここでこうも言った先生でした。
「この学園におかしな人達はね」
「若しぞろぞろプラカードとか持って来るとね」
「すぐにわかるし」
「嘘吐いて潜入してもね」
「抗議したらその時点でアウトだしね」
「僕が出ることにはならないかもね」
 こうも考えた先生でした。
「結果として」
「そうだよね」
「不審者になるからね」
「不審者は入られないしね」
「そうそう」
「だから大丈夫かな」
 先生は自分が出ることはないかもと思いました、そうして一週間後です。
 その公開されたディオラマを動物の皆、トミーと王子も一緒になって観に行きました。すると鉄道博物館には沢山の人達が来ていてです。
 ディオラマを観ていました、するとです。
 多くの模型が動いていました、宙の線路にも走っていてです。
 しかもそれだけでなくです、ドーラの模型もでした。
 動いています、王子はそのドーラを観て言いました。
「いや、この目で観るとね」
「凄いね」
「列車砲のお話は聞いていたけれど」
「模型もだね」
「観たことがなかったし」
 それにというのです。
「動くものなんてね」
「観たことがなかったね」
「それで観ているから」
 だからだというのです。
「嬉しいね」
「そうだね、よく出来ているしね」
「こんなの造るなんて」
 王子は先生ににこにことしてお話しました。
「鉄道博物館の人達も頑張ったね」
「プラモ部と軍事研究会の子達も協力してくれてね」
「それでだね」
「完成したんだ」
「ここまでのものが」
「そうだったんだ」
「いいことだね」 
 王子は笑顔のまま言いました。
「鉄道研究会の人達も協力したんだよね」
「勿論だよ、あの子達はね」
「ディオラマ全体にだね」
「博物館に部のOBの人達もいてね」
「それでここまで出来たんだね、知識と情熱があって」
 この二つがというのです。
「ここまで出来たんだね」
「そうだよ」
「その二つが合わさると」
「凄いものが出来るね」
「全くだよ、じゃあ僕の国も」
 王子は自国のことも思うのでした。
「是非ね」
「鉄道への知識と情熱を持ってだね」
「そうしてね」
「立派な鉄道を敷きたいね」
「そうしたいね、アフリカはまだまだね」
 王子のお国だけでなくこの大陸全体がというのです。
「鉄道はね」
「まだまだだっていうんだね」
「日本、他のアジア太平洋諸国と比べてね」
 それこそというのです。
「かなり遅れているよ」
「最近中国も東南アジアも鉄道に力を入れているからね」
「どの国も凄くなっているからね」
 そうした地域と比べると、というのです。
「アフリカはね」
「まだまだだからだね」
「僕の国もね、だからね」
「知識と情熱の二つでだね」
「鉄道を敷いて」 
 そしてというのです。
「国の発展に活かしていくよ」
「いい考えだよ、本当にね」
「鉄道は国家を発展させる原動力だよね」
「その一つになるよ」
「じゃあね」
「うん、是非ね」
「父上と母上にもお話してね」
「鉄道を敷くね」
「そうしていくからね」
 是非にと言う王子でした。
「僕の国もね」
「日本も最初は、でしたね」 
 トミーも先生に尋ねてきました。
「明治維新の頃は」
「そうだよ、東京から横浜に敷いてね」
「ほんの少しで」
「それがだよ」
 まさにというのです。
「今やね」
「鉄道大国ですね」
「イギリス以上と言っていいね」
「新幹線まである」
「そこまでなったんだよ」
「だから王子の国も」
「そう、知識と情熱を持って努力すれば」
 そうしていけばというのです。
「必ずね」
「日本みたいになれるよ」
「そうですよね」
「最初は何だってゼロだよ」
「ゼロからはじめてですね」
「進歩、進化していくから」
 だからだというのです。
「まずははじめることなんだ」
「そしてですから」
「そこからどんどんね」
「進歩、進化していくことですね」
「何でもまずははじめることだよ」
「はじめてこそですね」
「何かが出来るんだ、はじめないと」
 それこそというのです。
「本当にね」
「何も出来ないですね」
「はじめることには時として勇気がいるよ」
 先生はこのこともわかっていました。
「何も知らない分野に足を踏み入れることだからね」
「知らないということは怖いですからね」
「興味を持つと共にね」
「怖い、けれどですね」
「その恐怖に打ち勝つことは難しいよ」
「それで、ですね」
「その恐怖を自覚して」
 勇気とは恐怖を自覚することである、先生が来日して日本のある少年漫画石仮面が出て来る漫画を読んでよくわかった言葉です。
「そうしてね」
「勇気を克服して」
「そして打ち勝ってね」
 そのうえでというのです。
「はじめることがね」
「一番大事なんですね」
「そう、はじめることに一番力が必要だとも言われるしね」
「はじめることと終えることですね」
「創作はそうだよ」
「小説でも漫画でもですね」
「そう、はじめて終えることがね」
 この二つがというのです。
「一番大変だよ、けれどはじめないとね」
「何も出来ないですね」
「明治維新の日本人ははじめたんだ」
「鉄道を敷いて走らせることを」
「そこから今やね」
「鉄道大国ですね」
「そうなったからこそね」
 日本もそうだったからだというのです。
「王子もだよ」
「本格的にはじめることだね」
「そう、王子の国の隅から隅まで線路を敷いて」
 そしてというのです。
「列車を走らせる」
「そうすることですね」
「電車なら電力も必要だしね」
「そこも考えないと駄目だね」
 王子も言ってきました。
「実はアフリカは電気だけでなくね」
「ガスや水道もだね」
「他の地域に比べてね」 
 鉄道だけでなくというのです。
「そうしたこと、もうインフラ全般がね」
「遅れているんだね」
「だからね」
 王子は先生に言いました。
「全般を確かにすることも」
「考えているんだね」
「お金も技術も知識も人手もかなり必要だよ」
「その全てを揃えて」
「そしてだよ」
 そのうえでというのです。
「鉄道を敷いていくよ」
「そうしてくことをね」
「先生もだね」
「心から願っているよ」
「応援宜しくね。日本からの援助の約束をしてくれたし」
「それは大きいね」
「こうした時も日本って凄く頼りになるんだよね」
 王子の言葉はしみじみとしたものになっていました。
「本当にね」
「凄い援助をしてくれるからね」
「お金出してくれて技術を教えてくれて」
「教えてくれる人もね」
「そう、お国に派遣してくれて」
 そうしてくれてというのです。
「自分達で動いてくれてね」
「本当に助かるよね」
「だからね」
 それでというのです。
「日本が協力を約束してくれて嬉しいよ」
「それは何よりだね」
「それも快諾してくれたんだ」
 交渉の状況もお話する王子でした。
「首相さんがね」
「そうそう、日本はこうした時はね」
「すぐにどうぞ協力させて下さいって言ってくれてね」
「実際にそうしてくれるね」
「嬉しいことにね」
「王子のお国も随分と助けてもらっているね」
「これまでね」
 日本との交流の中で、です。
「本当に助けてもらっているよ」
「いいことだね」
「だから僕の国では日本は大人気だよ」
「それはいいことだよ」
「先生もそう思うんだね」
「うん、日本に住んで長くなったしね」
 思えばそうなっています、先生にしても。
「愛着も出て来ているしね」
「住んでもいい国だよね」
「とてもね。だから王子と王子の国の人達がそう思ってくれるとね」
「嬉しいんだね」
「そうだよ、まあ日本には変な人もいるけれど」
「変な人はどの国にもいるけれどね」
「マスコミや学校の先生や市民団体に多いからね」
 それでというのです。
「鉄道博物館のこともね」
「そうだよね」
「抗議とかしてきそうだしね」
「困るよね」
「ちょっとだけの変な人がとびきり変な国だよ」
「そこが残念だね」
「うん、けれどね」
 それでもとです、先生は王子にあらためて言いました。
「本当にいい国だよ」
「そのことは事実だよね」
「うん、心からそう思っているよ」
 先生は王子に笑顔で答えました。
「景色は奇麗で街は楽しくて人達は親切でね」
「しかも食べものもお酒も美味しい」
「その二つもいいよね」
「先生もすっかり食道楽になったね」
「イギリスにいた時と比べるとね」
「本当にそうなったね」
「イギリスはね」
 先生の祖国で何と言っても一番好きと言っていいお国です、先生も祖国への愛情はかなりのものです。
「食べものについてはね」
「お世辞にもだからね」
「そうだからね」
「というかいつも世界中に言われるね」
「イギリスの食事のことは」
「いいことは言われないよ」
 本当にというのです。
「その記憶はないよ」
「紅茶位かな」
「いた、紅茶もね」
 それもというのです。
「日本で飲む方が美味しいしね」
「悲しいね」
「今やアメリカも食事が美味しくなっているし」
「それも凄くね」
「だからね」
 それでというのです。
「余計に残念だよ」
「イギリスは結局、だよね」
 動物の皆も長い間イギリスにいただけに思うのでした。
「長い間繁栄の時代があったけれど」
「大英帝国って言われる位にね」
「十九世紀なんか凄かったけれど」
「それでも食べものについてはね」
「もう全然なんだよね」
「美味しくならなかったんだよね」
 こう皆で言うのでした。
「残念なことに」
「もう味についてはね」
「ずっと評判が悪いままで」
「今もそうでね」
「どうにかならないのかな」
「ルイス=キャロル氏の粗食は凄かったしね」
 先生は不思議の国のアリスや鏡の国のアリスで知られるこの作家さん本業は理系の学者であり紳士でもあったこの人のお話をしました。
「紅茶とビスケット位だったとかで」
「それ朝食だよね」
「おやつ?」
「まさかお昼御飯とかじゃないよね」
「そんな食事だと身体がもたないよ」
 皆も先生のお話に驚きます。
「そこまで食べないと」
「元気になれないよ」
「あの人そんなに粗食だったの」
「朝御飯でもかなりだけれど」
「その辺り覚えていないけれどね」
 ルイス=キャロルが何時そうした食事を摂っていたかはです。
「けれど本当に粗食だったんだ」
「ううん、確か生活は安定していたのに」
「オックスフォードの先生でね」
「それでもなのね」
「凄く質素な食生活だったのね」
「こうした人もいたし色々とね」
 本当にというのです。
「質素な食生活の人が多かったかな」
「イギリスはね」
「お金持ちの人でも美食家って聞かないね」
「日本や他の国程は」
「フランスと比べたら雲泥の差よ」
「それで先生もそうだったしね」
「それが今やね」
 ここで言ったのは皆の中で家事が一番得意なダブダブでした。
「先生も立派な美食家よ」
「好物は何か」
 ガブガブも言います。
「もうわからない位に多くなって」
「和食も中華も洋食も食べて」
 ジップが見てもそうです。
「食生活豊かになったね」
「ハンバーガーも食べるし」
 老馬はこの前先生がお店でそれを食べたことに言及しました。
「色々食べる様になったね」
「それも美味しいものをね」
 ホワイティも言います。
「そうなったね」
「お刺身とか大好きになったよね」
「そうそう、鯛とか鮃とかハマチとか」 
 チープサイドの家族は先生が日本に来てからすっかり大好きになったこのお料理のことに言及しました。
「あとお寿司もね」
「それも大好きだね」
「お刺身とお寿司どちらがより好きか」
 しみじみと言ったのはトートーでした。
「わからない位だし」
「海鮮丼とか鉄火丼も好きだしね」 
 ポリネシアもよく見てわかっています。
「海の幸の鍋だってね」
「すき焼きなんかも好きだね」
 チーチーは知っています、先生はこの鍋も大好きだということを。
「王子に日本に行く前にご馳走してもらってから」
「先生がここまで美食家になるなんて」
「想像していなかったよ」 
 オシツオサレツもそうです。
「日本酒も飲む様になって」
「中華も何でも食べる様になったしね」
「本当に先生の食生活は一変しましたね」
 トミーが見てもです。
「スパゲティにしましても」
「ナポリタンとか大好きだよ」
「日本のあのスパゲティも」
「うん、いいよね」
 ナポリタンについてもお話する先生でした。
「素敵な味だよ」
「本当にそうですよね」
「あんなのよく作ったよ」
「日本人のアイディアの一つですね」
「何でもあれはね」
 まさにと言った先生でした。
「アメリカ人が食べていたスパゲティを見てね」
「作ったものですね」
「第二次世界大戦後に出て来たものでね」
「比較的新しいんですね」
「そうなんだ、けれどあの味がね」
 先生にとってはです。
「凄くいいんだよね」
「先生の大好きなスパゲティの一つですね」
「そうだよ」
 実際にと答えた先生でした。
「あれは本当に美味しいね」
「他のパスタもお好きですしね」
「いや、イギリスにいたらパスタのこともね」
 ピザと並ぶイタリア料理の代表であるこの食材はというのです。
「ここまでよく知らなかったよ」
「フェットチーネやペンネやマカロニ、あとリングイネですね」
「そうしたものまでね」
「それも日本に来てからだね」
「日本にはイタリア料理のチェーン店もありますしね」
「全国に展開しているね」
「神戸や大阪にもお店のある」 
 先生が今住んでいる神戸そしてよく行く大阪にもです。
「あちらですね」
「ええと、カプリ何だったかな」
 王子はそのお店の名前は今一つ把握していませんでした、それで言葉を少し濁してしまいました。
「そのお店だよね」
「うん、大蒜とオリーブオイルを上手に使っていてね」
「美味しいんだね」
「そうなんだ」
 こう王子にもお話する先生でした。
「このお店もね」
「そうなんだね」
「馬鹿に出来ないよ」
「だから先生も好きなんだね」
「時々言っているよ」
「中華街にも行ってるよね」
「神戸にいるしね」
 神戸には中華街もあります、日本は他には横浜と長崎にもあります。
「だからね」
「中華街にも行って」
「美味しいものを楽しんでいるよ」
「中華街はイギリスにもあるよね」
「あるよ」
「世界中にあるからね」
 そう言っていい位多くの国にあります。
「欧州各国にもあって太平洋諸国だとね」
「どの国にもあるかな」
「韓国にはこの間までなかったけれどね」
「あっ、そうなんだ」
「うん、昔はあったけれど」
「昔って何時かな」
「第二次世界大戦が終わるまであったんだ」
 その頃まではあったというのです。
「日本が統治していた頃はね」
「そうだったんだ」
「それが長い間なくなっていてね」
「今になってだね」
「また出来たんだよ」
「そうなんだね」
「うん、けれど太平洋でもね」
 中華街はというのです。
「各国にあるよ」
「それで日本にもあって」
「そこでも楽しんでいるよ」
 そうしているというのです。
「味は日本人の好みに合わせているね」
「日本にあるとそうなるね」
「うん、お醤油とかもね」
 日本人には欠かせないこの調味料もというのです。
「日本人に合わせているよ」
「そうなんだね」
「それでもかなりの美味しさでね」
「先生も大好きなんだね」
「それでこちらも時々行ってるよ」
 神戸の中華街の方もというのです。
「麺類や炒飯そして飲茶が好きだよ」
「蒸し餃子とか韮餅とかだね」
「全部好きだよ」
「そして最近お気に入りは」
 ここでこうも言った王子でした。
「駅弁だね」
「そうそう、何といってもね」
「日本全国の駅弁全部食べる計画立てているよね」
「秘かにね。けれど多くてね」 
 その駅弁の種類がというのです。
「それでね」
「どうしてもだね」
「中々進んでいないんだ」
 そうだというのです。
「これがね」
「中々難しいことだね」
「だってね、日本はね」
「駅弁も凄いから」
「日本全国に色々な種類があるんだよ」
 文字通り都道府県もっと言えばそれぞれの駅にです。
「何百とあるかな」
「それだけあるから」
「全部食べきることは」
 それはというのです。
「中々難しいよ」
「先生も大変だね」
「うん、他の食べものも楽しんでいるし」
「じゃあ駅弁の制覇は」
「遥かに先だよ」
 自分でもこう思っているのでした。
「これはね」
「そうなるね、やっぱり」
「うん、けれどね」
 それでもと言う先生でした。
「少しずつでも食べていって」
「何時かはだね」
「制覇するよ」
「じゃあ旅行の時にでもね」
「食べていくよ」
 先生は王子に笑顔で答えました。
「これからもね」
「楽しんでいってね」
「そうするよ、しかし思うことは」
「思うことは?」
「日本は駅弁を作る会社も頑張っているから」
「産業にもなっているね」
「だから凄いんだ」
 そこで働いている人もいてというのです。
「この文化は産業にもなるしね」
「じゃあ大事にしていかないとね」
「そう、文化として皆を楽しませて豊かにしてくれて」
「産業として人を支えてくれるから」
「大事にしないとね」
「そうだね、文化と産業それに環境はね」
「三つ共一緒にあるべきだよ」
 それが一番いいというのです。
「どれか一つが崩れてもよくないよ」
「そうだよね」
「さて、駅弁もね」
「それもだね」
「食べて美味しさを味わって」
「買って会社や働いている人の利益にもなって」
「うん、そうしてね」
 そうしてというのです。
「何時かはね」
「制覇するんだね」
「そうするよ」
 笑顔で言ってです、そのうえでなのでした。
 先生達は皆と一緒にまた駅弁を食べようと提案しました、するとトミーも王子も動物の皆も言いました。
「いや、僕達よりも」
「他の人と一緒の方がいいよ」
「そうそう、それはね」
「一番相応しい人がいるから」
「あれっ、皆よりもっていうと」
 先生は皆の返事に目を瞬かせて応えました。
「誰なのかな」
「まあそれはですね」
「先生がそうしたいって言ったら来る人がいるから」
「その人と一緒に行ったらいいよ」
「先生がわからなくてもね」
「その人が来てくれたらね」
「一緒に行ってね」
 皆も先生がわかっていないことはわかっていて答えます。
「そうして駅弁食べてね」
「その人とね」
「そうしてその人と親睦深めてね」
「是非そうしてね」
「僕達はいいですから」
「そこがわからないけれど」
 本当にわかっていないのが先生です、ことこうしたことについては先生はとにかく鈍い人なのです。
「皆は遠慮するんだね」
「はい」
 トミーが皆を代表して答えました。
「そうさせてもらいます」
「それじゃあね」
「今度鉄道博物館に行かれる時は」
「皆とは駅弁を食べずに」
「その人とです」
 まさにというのです。
「そうして下さい」
「それじゃあ」
「色々食べてきて下さいね」
「そうさせてもらうね」
「このお話はそういうことで」
「じゃあね」
 このお話はこれで終わりでした、そして日曜の初披露からディオラマのことは話題になりました、ですが。
 先生の予想通りのお話をです、宮田さんは研究室に来て先生に困ったお顔でお話してきました。
「やはりです」
「市民団体が、ですか」
「インターネットからです」
「言い出していますか」
「はい」
 その通りだというのです。
「これが」
「そうなりましたね」
「こちらも予想していましたが」
「実際に騒いでいると」
「いい気持ちはしません」
「ホームページで趣旨はお話していますね」
「はい、ですが」
 それでもというのです。
「こうした騒がれ方をしますと」
「どうしてもいい気持ちはしませんね」
「その通りです、ですから」
「若しこうした人達が来たらですね」
「市会議員の人が来ても」
 そうしてきてもというのです。
「しっかりと反論します」
「そうしてですね」
「列車砲の模型の展示は続けます」
 それはというのです。
「もうこちらもわかっていましたから」
「抗議が来るとですね」
「わかっていますから」
「それでは」
「はい、このお話はです」
「受けて立ちますね」
「そして退きません」
 先生に鉄道博物館の考えを伝えるのでした、そして先生も鉄道博物館の決意を知ってでした。宮田さんにあらためて言いました。
「では僕も」
「これまでのお話通り」
「受けて立ちます」
 抗議が来たその時はというのです。
「疚しいことはないのですから」
「それだけにですね」
「はい、受けて立って」
 そうしてというのです。
「そしてです」
「退かれないですか」
「そのつもりです」
「かなり暴力的な行為もです」
「してきかねないですね」
「勝手にこけて暴力を振るわれたともです」
 そうした行為もというのです。
「してきますが」
「何、そうしたこともです」
「先生もですか」
「わかっているつもりなので」
「それでは」
「そうした時は動画として記録すれば」
 暴力を振るわれたと言われてもというのです。
「証拠として残っているので」
「勝手にこけられたりしてもですね」
「安心出来ます、ですから」
「彼等が来てもですね」
「安心して下さい、僕がまずです」
「前に出られますか」
「そうします、僕は確かにスポーツ勿論格闘技は全く出来ませんが」
 それでもというのです。
「知識と理論があります」
「その二つがですか」
「ありますので」
「彼等にもですね」
「対することが出来ます」
「先生の武器は学問ですね」
「そうなりますね、銃も剣も持ったことがありませんが」
 鞭もです、そうしたこととは無縁なのが先生です。
「武器となるとです」
「学問ですね」
「ペンは剣より強しではないですが」
「学問は暴力に勝りますね」
「はい、暴力は所詮小さな力です」
 先生はこう考えています、そもそも暴力というものに対して肯定的なものは一切持っていないのです。
「ですが学問は」
「無限の力がありますね」
「ですから」
「彼等が暴力やそれに準ずるものをと使っても」
「僕には学問があります」
「だから安心されていますね」
「ですから」
 実に落ち着いた穏やかなお顔で言う先生でした。
「ご安心下さい」
「それでは」 
 宮田さんも笑顔で応えました、そしてです。
 先生は今はことの状況を見守りました、若し何かが起こったらその時は動こうと心の中で決意しながら。








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