『ドリトル先生と日本の鉄道』




               第三幕  鉄道と野球

 先生は動物の皆とお家に帰ってからトミーにその日の午前中に巡った鉄道博物館のことをお話しました。
 するとです、トミーはこう先生に言いました。
「あそこも凄いですよね」
「うん、充実してるよね」
「鉄道のことなら何でもですよね」
「日本の京都の鉄道博物館にも負けていないよ」
 まさにと言った先生でした。
「あそこは」
「そうですよね」
「そう、そしてあそこでね」
「鉄道のことをですね」
「学んできたよ」
「そうでしたね」
「そう、駅弁も食べたしね」
 先生はトミーにこのこともお話しました。
「鉄道模型も観たし」
「あれもですね」
「よかったよ、そして午後はね」
「いつも通りですね」
「講義に出たよ」
 そうしたというのです。
「充実していたよ」
「先生は学問なら何でもされますしね」
「だから鉄道もね」
「楽しんで、ですね」
「学んでいたんだ」
 まさにというのです。
「そうしていたけれど」
「いいことですね」
「うん、しかし最近鉄道のことに縁があるね」
「王子ともお話していましたし」
「そうだね」
「日本は全土に路線がありますし」
 トミーはこうも言いました、今から晩御飯ですがその時のことです。もうちゃぶ台にはピザやサラダ、それにカツレツといったものが置かれています。ただ主食は御飯です。
「それじゃあですね」
「日本にいればだね」
「どうしても縁がありますね」
「そうだね、そういえば」
 ここでこうも言った先生でした。
「阪神タイガースも親会社はね」
「鉄道会社ですね」
「八条鉄道も球団持ってるしね」
「八条リーグの中で」
 先生が働いている八条学園を経営している八条グループが運営している日本のプロ野球リーグです。
「鉄道会社が野球チーム持っていることも」
「日本ではね」
「特徴の一つですね」
「そうだね、八条鉄道もそうだしね」
「阪神もですね」
「他には西武もそうだね」
「パリーグのチームですね、そして」 
 トミーは先生にさらに言いました。
「昔はもっと多かったんですよね」
「そう、今は二球団だけれどね」 
 鉄道会社が親会社のプロ野球チームはです。
「昔はもっと多かったんだよ、トミーの言う通りにね」
「阪神は昔からで」
「阪急、南海、近鉄、西鉄、国鉄とね」
「多かったですよね」
「東急も持っていた時期があったし」
 東京の方のこの鉄道会社もです。
「何かと多かったんだ」
「それと映画会社がですね」
「映画会社は東映と大映が親会社だったんだ」
 先生はトミーにこのこともお話しました。
「本当にね」
「親会社が鉄道会社であるプロ野球チームが多かったんですね」
「それだけ日本の鉄道文化は栄えていてね」
「野球にも及んでいたんですね」
「そうだよ、これをはじめたのは小林一三さんという人だったんだ」
 先生はレタスやセロリ、トマトにアスパラガスが山盛りになっているサラダにイタリアンドレッシングをかけつつお話しました。
「阪急グループの総帥だったね」
「あれっ、その人ってね」
「そうそう、宝塚の人よね」
「あそこを創設した人だね」
「そうだったね」
 動物の皆は小林さんのお名前を聞いて口々に言いました。
「あの劇場はね」
「その人が創設して」
「今みたいな豪華絢爛な世界がはじまった」
「そうだよね」
「そうだよ、小林さんはあの劇場を開いて」
 そしてとです、先生は動物の皆にもお話しました。
「野球にも進出したんだ」
「そうだったんだ」
「宝塚だけでなく野球にもなんだね」
「あの人は進出したんだね」
「阪急ブレーブスという球団をね、そこから鉄道会社が野球のチームを持つ様になっていったんだよ」
 先生はサラダを食べつつ皆にお話しました。
「そして近鉄の佐伯さん、南海の川勝さんもね」
「その人達もだね」
「野球に進出しようと決めた」
「そうした流れなんだね」
「そうだよ、まあ球団が出来たのは阪神の方が先だったけれど」
 阪急よりもです。
「本格的にはじめたのはね」
「小林さんだったんだ」
「その人だったんだ」
「日本の偉大な経営者の一人でもあるんだ」
 先生は小林さんについてこうも言いました。
「鉄道会社が鉄道会社に留まらずね」
「劇場を持って」
「球団を持って」
「そうして色々なことをしていって」
「鉄道文化にも貢献したんだ」
「そうなんだ、百貨店やテーマパークも出来ていって」
 鉄道会社が進出してです。
「今に至るんだ」
「そういえば八条グループも八条鉄道の存在大きいよね」
「日本全土に路線持っていてね」
「百貨店も駅前にあるし」
「テーマパークとかだってそうだし」
「鉄道は市民の重要な足でね」
 それでというのです。
「そこから色々な場所に行けるね」
「だから駅前に百貨店を置いたら」
「そしてテーマパークも」
「劇場に球場も」
「そうなっていったんだ」
「しかも球団を持つとね」 
 先生は皆にさらにお話します。
「毎日新聞やテレビ、今はネットでも毎日名前が出るね」
「そうそう、試合結果とかね」
「あと入団とかトレードとかキャンプとか」
「毎日名前出てね」
「皆が知っていく様になるね」
「その企業の最高の宣伝にもなるんだ」
 チームの名前が毎日メディアやネットに出てです。
「だからいいんだよ」
「そういえば阪神なんてね」
「名前を聞かない日ないわね」
 チープサイドの家族も気付きました、このことに。
「勝っても負けてもね」
「派手に言われてるしね」
「他のチームだってそうだし」
「そうそう、パリーグの方もね」
 オシツオサレツも二つの頭でお話します。
「そうしてね」
「凄く宣伝されるね」
「八条リーグのチームだってそうだし」
 ジップはこちらのリーグのお話をしました。
「サッカーもバスケもそうにしても」
「球団持つのってそうした意味もあるんだね」
 ガブガブもしみじみとして述べました。
「そうなんだね」
「毎日日本全土に名前出たら」
 まさにと言ったホワイティでした。
「これだけでどれだけ凄い宣伝か」
「言うまでもないわね」
 ダブダブははっきりと言いました。
「もうそれだけで」
「商売にもいいよね」
 トートーは鉄道会社もお仕事であることから述べました。
「しかも野球とかだといいイメージだしね」
「最高のプラスの宣伝ね」
 ポリネシアは今そのメリットを実感していました。
「阪神だってそうだし」
「阪神は常に何かあるチームだけれど」
 チーチーはこのことが少し残念ではあります。
「それでも親会社にはいい宣伝ね」
「成程、小林さんはそのことがわかっていてだね」
 老馬はここで小林さんの考えがわかった気がしました。
「宣伝に力を入れたんだね」
「そうだよ、企業のことも考えて」
 そしてと言った先生でした。
「小林さんは野球にも進出したんだよ」
「成程ね」
「そのことがわかったよ」
「そう思うと小林さんは凄い人ね」
「立派な経営者だわ」
「だから僕もこう思うんだ」
 小林さんは日本を代表する立派な経営者の一人だとです。
「そして近鉄の佐伯さん、南海の川勝さんもね」
「その人達もだね」
「立派な経営者だね」
「そうだよ、昭和の関西経済界の重鎮だったんだ」
 この人達はというのです。
「まさにね」
「今もそうした人がいて欲しいね」
「全くだね」
「そうした立派な人達がいてくれたら」
「日本の経済はもっとよくなるから」
「本当にね、今もいい経営者の人達は沢山いるけれど」
 それでもと思う先生でした。
「日本の鉄道界にまた小林さんみたいな人が出てくれたら」
「先見の明があってね」
「文化にも理解が深い」
「そうした人が出たら」
「日本の鉄道界はもっともっとよくなるよ」
 先生はこう言いました。
「だからこの方面でもね」
「日本の鉄道界には頑張って欲しいのね」
「是非」
「そう思っているんだ」
 先生にしてもです、先生はカツを食べつつ言いました。
「いい経営者の人がいるとん」
「そうそう、それだけでね」
「全然違うのよね」
「何といっても」
「それだけで」
「だからだよ」
 先生はまた言いました。
「是非ね、小林さん達の様なね」
「立派な経営者が日本の鉄道会社に出て欲しい」
「まただね」
「先生としては」
「心から思っているよ。さもないとね」
 こうも言う先生でした。
「小林さんも佐伯さんも川勝さんも悲しむよ」
「今の鉄道文化を築いた人達でもあるのに」
「もっとよくならないと」
「そうじゃないと」
「だからこそね」
 先生の言葉は切実なものでした。
「頑張って欲しいんだけれどね」
「ううん、そうなって欲しいね」
「けれど経営者って一朝一夕に生まれないし」
「やっぱりちゃんとね」
「育てていくものだっていうし」
「そう、経営者も教育あってこそだよ」
 先生はまさにとです、皆に答えました。
「経営者としてはどうあるべきかってね」
「学んでいって」
「それで立派な教育者になる」
「前の人が後継者を育てもして」
「そうしてなっていくものなんだね」
「何でもそうだよ。モーツァルトだって楽譜が書けなかったら」 
 天才と言われたこの人でもというのです。
「何も出来なかったしエジソンもね」
「発明の下地がないとね」
「幾ら努力してそこに閃きが加わらないと」
「あそこまでの発明は出来なかった」
「そうなるんだね」
「マラドーナやペレもサッカーを知らなかったら活躍出来なかったよ」
 この偉大なサッカー選手達にしてもというのです。
「ベーブ=ルースもサイ=ヤングもね」
「野球を知らなかったら」
「野球への教育を受けていなかったら」
「若しそうだったら」
「そう、だから教育は誰にでも必要なんだ」
 どんな天災でもというのです。
「何かが出来る様には何かを知らなくてはいけないからね」
「だから経営者もだね」
「まずは経営を知ること」
「そして経営を学ぶことだね」
「そうなんだ、だかまた小林さん達みたいな人達が出るには」
 日本の鉄道会社にです。
「教育が必要だよ」
「経営者を育てる教育」
「それがだね」
「若しそれをしないと」
「いい経営者は出ないんだね」
「小林さんも佐伯さんも川勝さんも戦前からの人だけれど」
 日本の時代区分からお話する先生でした、第二次世界大戦前からだというのです。日本にとってこの戦争は非常に重要なのです。
「その頃はやっぱりね」
「経営者になる教育がよかったのかな」
「そういえば渋沢栄一さんも出て来たし」
「三菱の岩倉弥太郎さんだってね」
「教育あってだとしたら」
「明治維新までの幕末も教育もよくてね」
 先生は渋沢栄一や岩倉弥太郎のお話もしました。
「そしてそれからもね」
「経営者を育てる教育がよくて」
「そうした立派な人達が出て来たんだ」
「日本にも」
「阪急も近鉄も南海もそれをしてくれる人達がいて」
 それぞれの企業にというのです。
「そしてだったみたいだね」
「小林さん達みたいな人が育ったんだ」
「そしてそれぞれの企業を経営して」
「立派な鉄道文化も築いたんだね」
「そうみたいだね、三人共大学で教わるより」 
 それよりもというのです。
「企業に入ってね」
「就職してから」
「それから学んで」
「そうしてそこまでになったんだ」
「そうみたいだよ、経営者としてのセンスが開花したんだ」
 それぞれの会社に入って教育を受けてです。
「そして宝塚や球団が出来たんだ」
「百貨店やテーマパークも」
「そうしたものもだね」
「出来ていったんだね」
「住宅も出来ていったしね」
 こちらもというのです。
「駅前にお家が一杯出来ると交通も楽だしね」
「そっちのこともあるね」
「駅のところに住宅街があったら便利だしね」
「そこにお店も出来ていくし」
「丁度いいね」
「そうしたことまで考えていたんだ」
 鉄道会社の経営者の人達はというのです。
「そのうえでだからね」
「ううん、頭が下がるね」
「日本の鉄道会社の経営者の人達って凄いね」
「そこまで考えてなんて」
「鉄道を敷いて駅を置くけれど」
「そこに住宅街を置いたり」
 動物も皆も言っていきます。
「百貨店も建てて」
「テーマパークに球場に劇場」
「まさに何でもだね」
「凄いよ、日本の鉄道会社は」
「只球団を持っているだけじゃないのね」
「そこからさらにだったんだ」
「そうだよ、その凄さたるやね」
 まさにとです、先生は言いながらです。
 サラダを食べ終えたのでカツを食べつつピザにも目を移しています。もうご飯を食べ終えたので赤ワインを飲みはじめています。
 そうしつつです、皆にさらにお話していきます。
「日本ならではだよ」
「ならではっていうかね」
「よくそこまでしたわね」
「鉄道がそこまでなるなんて」
「蒸気機関車が出来た時から思うと」
「どれだけの違いか」
「日本の凄いところの一つだね」
 こうも言った先生でした。
「鉄道会社のこの経営の仕方もね」
「何かここまでなるって」
「どうなの?」
「幾ら凄い経営者の人達が凄くても」
「ある意味天才ですね」
 トミーも先生に言いました。
「ここまでの経営は」
「そうだね、僕も調べていてね」
「驚かれましたか」
「日本の鉄道会社の発展の仕方にはね」
 まさにというのです。
「こんなに凄いのかってね」
「やっぱりそうですよね」
「まさに芸術というか」
 こうまで言う先生でした。
「その域に達しているかな」
「経営も芸術ですか」
「そうも言えるんじゃないかな。そして勿論ね」
「鉄道もですね」
「これも芸術だよ」
「そうなんですね」
「一気に人やものを運ぶ電車からね」
 とにかくこのことが大きいというのです。
「はじまってだよ」
「産業は発展しますけれど」
「日本では商業にもレジャーにもね」
「発展したんですね」
「そう、そして色々な車両も出て来たんだよ」
 またこのお話をする先生でした、赤ワインを飲んでからカツの最後の一切れをとても美味しそうに食べました。
「日本全土でね」
「企業も多くて」
「その企業ごとにね」
「車両を作っていって」
「それでなんだ」
 その結果というのです。
「そちらも凄くなっているんだ」
「関西だけでもそうですね」
「むしろ関西はね」
「特にですか」
「私鉄が栄えているからね」
 それだけにというのです。
「余計になんだ」
「車両が凄いんですね」
「その種類がね。そしてタイプもね」
「二階建てがあったり」
「内装が豪華だったりね」
 そうした様々なタイプがあってというのです。
「そうしていてね」
「色々となっているんですね」
「そうなんだ、関西の私鉄はね」
「特に凄いんですね」
「当然関東も他の地域も凄いよ」 
 他の地域の鉄道会社の車両もというのです。
「それぞれ企業努力もしないといけないしね」
「だからですね」
「日本はそちらも凄いんだ。ただね」
「ただ?」
「日本は結構広い方の国だけれど」
 先生は世界的に見て日本の国土面積のことをお話しました。
「島国だからね」
「あっ、他の国に行ったりしないので」
「鉄道の旅をするにも限られていてね」
「欧州みたいに何日もの旅はないですね」
「それはないからね」
「ああした楽しみ方は出来ないですね」
「ブルートレインはあったけれど」
 それでもというのです。
「鉄道の長旅はね」
「そうしたことには疎いですね」
「そうなんだ」
「そこは日本の鉄道ではですね」
「楽しめないね」
「そこは残念なことですね」
「残念というか仕方ないね」
 日本は島国故にというのです。
「そこはね」
「そうなりますね」
「うん、けれどそのことを抜いても」
 それでもというのです。
「日本の鉄道文化はいつも話している通り」
「凄いものですね」
「そうだよ、この凄さには本当に脱帽だよ」
「世界屈指の鉄道大国ですね」
「勿論他にも凄い国はあるけれど」
「日本は日本で、ですね」
「凄い鉄道大国だよ」
 先生は赤ワインを飲みつつまた言いました。
「ただね」
「ただ?」
「最近鉄道の旅の時にこうしてね」
「お酒をですか」
「そう、ワインをサービスしてね」
 そのうえでというのです。
「出してくれる車両もあるんだ」
「ワインも飲めるっていうのが凄いですね」
「欧州ではよくありますが」
「日本ではですね」
「そう、考えられなかったね」
「けれどそれがですね」
「楽しめる様になったんだ」
 こうワインを飲みつつ言うのでした。
「そこも工夫だね」
「そうですね、あとピザの後はです」
「デザートだね」
「今日はトルテをお出しします」
 そちらをというのです。
「是非楽しんで下さい」
「それではね」
 先生は笑顔で頷いてそうしてでした。
 皆に鉄道のことをさらにお話していきました、それはとても楽しいものでお酒とデザートと一緒に楽しみました。
 その翌朝です、先生はです。
 大学の研究室で次の論文の為に資料を読んでいるとです、そこに王子が来てそれで先生にこう言ってきました。
「先生、今度面白いイベントがあるらしいよ」
「イベント?」
「そう、鉄道博物館でね」
「昨日僕動物の皆と一緒に行ったよ」
「そうだったんだ」
「あそこで何があるのかな」
 先生は王子に尋ねました。
「それで」
「うん、リニアモーターカーの模型が入るらしいんだ」
「あそこにはディオラマがあるね」
「今度リニアモーターカーのそれが出来て」
 それでというのです。
「それが走るらしいんだ」
「そうなんだ」
「先生も行く?」
「鉄道模型も昨日観たけれどね」
「じゃあいいんだ」
「いや、模型でもリニアモーターカーが動くなら」
 それならとです、先生は王子に答えました。
「それならね」
「行ってだね」
「観に行くよ」
「そうするんだね」
「うん、ただね」
「ただ?」
「リニアモーターカーの実用はね」
 先生は実際のリニアモーターカーのお話もしました。
「何時かな」
「あと少しかな」
「そうだと思うけれどね」
「夢みたいな技術だよね」
「けれどその夢がね」
「現実のものになるんだね」
「そうだよ」
 まさにと言う先生でした。
「夢は現実になるものだよ」
「夢で終わらないね」
「そうだよ、夢だと諦めることはね」
「科学じゃないね」
「そして学問でもないよ」
 こちらでもというのです。
「夢は実現しないものじゃないんだ」
「実現するものだね」
「だからね」
「リニアモーターカーもだね」
「実現するよ」
 必ずというのです。
「そうなるんだよ」
「そうだね」
「そして模型が出来るなら」
 それならというのです。
「必ずね」
「実物がだね」
「走る様になるよ」
「そうなるんだね、もうあっという間に」
「そう、遠い場所に行けるんだ」
「新幹線よりもだね」
「速くね」
 まさにというのです。
「行けるんだよ」
「僕の国じゃ新幹線もね」
「それを言ったら僕の国でもだよ」
 先生は王子に笑って返しました。
「あの鉄道はね」
「夢みたいなものだね」
「昭和の時点でこんなのがあるんだって驚いていたら」
 それがというのです。
「今はね」
「もっと凄くなって」
「あんなことになっているからね」
「さらに進歩したから」
「イギリスから見ても」
 それこそというのです。
「あんな凄いものはないよ」
「恐ろしい国だよね、つくづく」
「そうだね」
「あの新幹線の技術や運用を導入出来たら」
 その時のことも言う王子でした。
「どれだけ凄いか」
「考えるだけでも」
「夢みたいだよ」
「ではその夢をね」
「実現することだね」
「皇子の国もね、そうすべきだよ」
「そこでそう言うんだね、しかし」
 ここでまた言った王子でした。
「昔はドイツがね」
「鉄道大国だったんだよね」
「うん、それでドイツという国が出来たともね」
「言えるよね」
「それでドイツを作る戦争にも勝って産業も発展させたしね」
「オーストリアやフランスとの戦争にだったね」
「鉄道で多くの人やものを即座に戦場に送れたから」
 まさに敵が来て集まるより先にです」
「勝ったしね」
「産業もだね」
「鉄道で発達したからね」
 これを使ってというのです。
「あの国がね」
「鉄道大国だったね」
「かつてはね。けれどね」
「今はだね」
「日本になったね」
 しみじみとして言う先生でした。
「自動車大国でもあるけれど」
「鉄道でもだね」
「文句なしだからね」
「その日本にはだね」
「ドイツも敵わないかな」
 今はというのです。
「流石にね」
「私鉄も凄いしね。ただ」
「ただ。何かな」
「今の日本は鉄道は戦争にはね」
「使っていないね」
「そうだよね」
「うん、昔は兵隊さんや物資の移動に使っていたけれど」
 先生は戦争前の日本のお話からはじめました。
「けれどね」
「それでもだね」
「今は自衛隊用の鉄道はないしね」
 所謂軍用鉄道はです。
「空とか船でね」
「移動しているんだね」
「そして車だね」
 こちらもと言う先生でした。
「自衛隊はトラックが多いからね」
「そういえば物凄く多いね、自衛隊のトラックは」
「あれなら一気だから。それにジープもあるし」
「ああ、ジープもなんだ」
「あちらもあるから」
「鉄道はだね」
「個人個人は移動に使っていても」
 それでもというのです。
「軍用のものはね」
「ないんだね」
「そうなっているよ」
「というか自衛隊ってかなりハイテクだよね」
 ここで言ったのはガブガブでした。
「他の国の軍隊と比べても」
「あの装備かなりよくない?」
 トートーも言います。
「陸空海どれもね」
「航空機も戦車もどれも凄くて」 
 ホワイティも唸ります。
「船だってね」
「設備も充実しているし」
 ポリネシアは先生と一緒に行ったことのある海上自衛隊や航空自衛隊の基地を思い出して言います、実はそうした場所も学問としてお邪魔しているのが先生なのです。軍事もまた学問であるからです。
「世界屈指のハイテク軍隊よ」
「そのハイテクさの前では」
 ダブダブはきっぱりと言いました。
「鉄道を使わなくてもいい?」
「ものは空や海から運べるし」
「トラックもあるから」
 チープサイドの家族もお話します。
「特に空からなら鉄道よりも早く人やものを届けられるし」
「沢山なら船が使えるから」
「自衛隊は鉄道よりも他の手段」
 ジップもお話に入ってきました。
「そうなっているのかな」
「何というか」
 老馬が言うにはです。
「他の移動、輸送の手段が充実しているって凄いね」
「鉄道も大事だけれど」
 チーチーはまずこれを軸に置いています。
「他もあるとね」
「そうしたものを使って」
「それで運んでもいいんだね」
 最後にオシツオサレツが二つの頭で言います。
「日本でも」
「それでもいいんだね」
「結論から言えばそうだよ、日本の強みは鉄道が発達しているけれど」
 それでもというのです。
「他の移動、輸送手段も充実しているからね」
「車も船も空も」
「全部だね」
「充実しているから」
「だからいいんだね」
「そう、日本の強みだよ。正直自然災害の多い国だからね」
 先生はこのことを困ったこととして述べます、とにかく日本は災害については色々と悩まされている国です。
「若し陸路、線路や道路に何かあっても」
「空にだね」
「海もあるね」
「そうしたものを使って」
「そしてだね」
「人やものを送られるよ、例えばヘリを使えば」
 それでというのです。
「多少足場の悪いところでも着陸出来るしね」
「そこから人やものも届けられる」
「そこもいいんだね」
「鉄道以外の移動や輸送の手段が充実していると」
「それだけで」
「そうだよ、日本はそこまで考えてね」
 そうしてというのです。
「様々な移動、輸送手段があるから」
「強いんだね」
「災害にもすぐに対応出来るんだね」
「自衛隊の人達も」
「その一面もあるよ、よく日本人は日本の政治はどうかと言うけれど」
 それでもというのです。
「よく見るとね」
「悪くはないね」
 王子が答えました。
「客観的に見て」
「そうだよね」
「特に自然災害に対してね」
「よく考えられているね」
「鉄道は確かに素晴らしいけれど」
 王子も是非に自分の国に最新のものをと思う位です。
「けれどね」
「それでもだね」
「若し線路が脱線でもしたら」
 それが一ヵ所でもです。
「終わりだからね」
「石でも置かれたらね」
「終わりだよね」
「車両が脱線するよ」
 そうなってしまうというのです。
「そしてね」
「大惨事になるね」
「そこが問題だよ」 
 先生もこう言います。
「これはどの鉄道でも一緒だよ」
「災害で線路が少しでも壊れたら」
「もうそれでね」
「鉄道は動けないね」
「これが鉄道最大の弱点なんだ」
 線路が壊れると走れないことがというのです。
「勿論線路がないとね」
「その場所は走られないしね」
「幾ら速くて素晴らしくても」
「このことはどうしようもないね」
「万全の車両と万全の線路があってね」
 この両方がです。
「鉄道ははじめて走ることが出来るんだ」
「そうだよね」
「だから災害には弱いからね」
「日本では災害のことも考えているんだね」
「鉄道自体もこれでもかという程ね」
 まさにそれ位にというのです。
「システムからもね」
「災害対策は充実しているんだね」
「そうなっているよ」
「日本ならではだね」
「そうだよ、災害が多い国だけに」
 日本の人達だからこそこのことがよくわかっていてというのです。
「対策はね」
「これでもかとだね」
「為されているんだ」
「それも凄いね」
「政治でもやっていて企業の方でもやっていて」
「鉄道会社でもだね」
「災害が起こったらすぐに運行を見合わせたり」
 そうして大変なことにならない様にしているのです、これも安全の為です。
「復旧作業もね」
「すぐに取り掛かれる様にだね」
「しているんだ」
「色々考えているんだね」
「寒い場所では雪も多いね」
「そうそう、日本って東北とか北陸の雪凄いね」
 まさにとです、王子は先生に応えました。
「北海道も」
「冬はとんでもなく積もるね」
「寒さ自体は欧州の方が厳しいけれど」
「雪はね」
「結構凄いからね」 
 東北とか北陸はというのです。
「だから鉄道もだね」
「そうしたことも考えてね」
「設計されてだね」
「動かされているよ」
「そうなんだね」
「ラッセル車も用意してあるしね」
 除雪用の車両もというのです。
「これを使ってね」
「雪をどけてそのうえで」
「進んでいるんだ」
「そこも知恵だね」
「日本人のね、日本で怖いのは」
 かなり真剣にお話する先生でした。
「戦争ではないね」
「このことは有り難いけれどね」
「それでもだね」
「地震、大雨、洪水、大雪、雷、台風ってね」
「最近は竜巻もあるしね」
「自然災害の宝庫だね」
「特に地震と台風かな」
 日本の災害の中でとりわけ怖いものはです。
「日本で怖いのは」
「鉄道についてもだね」
「というか日本地震が多過ぎるよ」
 王子はぼやく様に言いました。
「何でっていう位にね」
「それ僕も思うよ」
「イギリスって地震殆どないからね」
「グレートアースクェイクっていっても」
 イギリスにあったこの地震もというのです。
「日本ではね」
「何でもないものだね」
「そのマグニチュードを日本で言ったら」
 日本の人達にです。
「全然だからね」
「もう警戒すべきじゃないね」
「そんな軽い地震だよ」
「その程度だね」
「文字通りその程度だから」
 日本人から見ればグレートアースクェイクもというのです。
「所詮ね」
「そんなものだね」
「そんな国で鉄道を走らせているんだから」
「その対策もだね」
「凄いんだよ、台風だってね」 
 こちらもというのです。
「毎年来るしね」
「これは結構色々な国でも来るよね」
「うん、それこそね」
「けれど日本でもだね」
「多いからね」
 現実問題としてというのです、こちらもまた。
「そちらの対策もね」
「忘れていないんだね」
「日本にいたら災害から逃れられないよ」
 これはどうしてもです。
「だからね」
「僕の国も災害対策は忘れたらいけないね」
「うん、そうしないとね」
「折角走らせてもね」
「何かあったらね」
「ちょっとした災害で止まったりしたら」
「どうしようもないよ」
 それではというのです。
「もうね」
「そうだよね、何かリニアモーターカーからね」
「災害のこともだね」
「学べたよ、日本は災害が多いだけに」
「災害のことも考えてね」
「鉄道を敷いて動かしているんだね」
「国土の隅から隅までね」
「山も多いのにね」
 このことについても言った王子でした。
「というか日本っていう国は」
「四方は海の島の集まりでね」
「どの島も山だらけで」
「本来は鉄道を敷くのに向いていないんだ」
「そうした地形だね」
「それがだよ」
「今みたいにだね」
「国の隅から隅までね」
 先生は今ご自身がお話したことをお話しました。
「線路を敷いてね」
「鉄道が動いているんだね」
「そうなんだ」
「地形をものともせず災害のことも考えて」
「そうしているんだ」
「凄い努力だね」
「努力をして」
 まさにそうしてというのです。
「今に至るんだ」
「凄い地道な努力をしてきたんだろうね」
「そう、その地道な努力こそがね」
 先生はそこに重点を移して王子にお話しました。
「日本の鉄道を作ってね」
「日本人もだね」
「しっかりとね」
 まさにというのです。
「そうしてきたんだよ」
「地道な努力を続けてきたんだね」
「少しずつでも休まず着々と積み上げていって」
「凄いものを造り上げるのがだね」
「日本の本当の強みでね」
「それが鉄道にも出ているから」
「凄いんだよ」
 こう王子に言いました。
「日本はね」
「よくわかったよ、鉄道は地道だね」
「そして産業全体がね」
「地道だね」
「線路だって少しずつ敷いていくね」
「確実にね」
「そうしていって長い線路を敷くからね」
 そうするからこそというのです。
「山に敷くんだったら山を切り開いてでも」
「そうして敷いていって」
「それからだからね」
「そう、そしてね」
「線路を敷くんだね」
「そうだよ、線路を敷いていったんだよ」
「凄いことだね」
「地道にやっていってこそ」
 そうしてというのです。
「鉄道は動いていくんだよ」
「地道だね」
「そう、一つ一つのことを確実にやっていく」
「それが鉄道なんだね」
「だから日本人にはね」
 まさにというのです。
「元々向いていたのかもね、ただ」
「ただ?」
「誰でも出来るから」
「鉄道を敷くことは」
「そう、勿論王子の国もだよ」
「地道にやる様にしていけばいいんだね」
「そうだよ、線路を確実に敷いていって」
 そしてというのです。
「車両も作ってね」
「運転士の人達も育てて」
「駅も用意してね、時刻表も考えて」
「本当にやることが多いんだね」
「地道なね。じゃあそうした風にね」
「僕達の国もやっていくよ、そして」
 王子は先生に確かな声で言いました。
「絶対にね」
「鉄道を上手に動かしていくね」
「そうしていくよ」
「その意気だよ、鉄道は少しずつ確実に進めていくものということはね」
「頭の中に入れて」
「そしてやっていこうね」
「それじゃあね」
 王子は強い声で頷きました、そしてでした。
 先生とさらにお話していきました、王子は鉄道のことがまたわかったと思って心の中で喜んでいました。








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