『ドリトル先生と奇麗な薔薇園』




               第四幕  虫が多いのは

 八条学園は様々な設備がある学園で動物園や植物園もあります、その植物園にです。
 先生は今動物の皆と一緒に向かっていました、その途中に皆は先生に対して周りから尋ねたのでした。
「ちょっといい?」
「先生今凄く晴れやかなお顔してるけど」
「何かいいことあったの?」
「そうだったの?」
「いいことはこれから起こるんだ」
 これが先生のお返事でした。
「そうなるんだ」
「というと」
「一体何が起こるのかな」
「先生今にこにことしてるけど」
「それがわかるよ、いや本当にね」
 先生は皆にその笑顔で言うのでした。
「ヒントというのは面白い場所にあるものだね」
「ううん、まあね」
「先生にヒントが見つかったならいいよ」
「植物園の問題解決の為のそれがね」
「だったらいいよ」
「そうだね、じゃあ行こうね」
 こう言ってです、先生は皆と一緒に植物園に行って園長先生とお会いしました。すると園長先生の方から言ってきました。
「虫問題解決の方法が見付かったんですね」
「はい、ヒントを得ました」
「ではそのヒントは」
「鳥か虫ですね」
「鳥か虫、ですか」
「虫を食べてもらえばいいんです」
 先生は園長先生ににこりとしてお話をしました。
「そうすればです」
「あっ、寄生虫を食べる鳥や虫達をですね」
「はい、植物園の中に入れれば」
 そうすればというのです。
「お花や草木に付いている虫達を食べてくれますよ」
「そうですね、それならです」
「農薬も使いませんね」
「それでいて寄生虫を駆除出来るので」
「かなりいい方法ですね」
「はい、アイガモ農法の様ですね」
「実は大学の農学部で見まして」
 先生は園長先生にこのこともお話しました。
「アイガモ農法を」
「実際にですか」
「はい、見ましたし高等部の農業科でも」
 こちらのお話もするのでした。
「蜻蛉や蜘蛛を養殖して外に放って」
「それで蠅や蚊達を食べさせてですか」
「駆除しているのを見ましたので」
 それでというのです。
「ヒントを得ました」
「成程、いい考えですね」
「ではですね」
「はい、そうしてみましょう」
「鳥でしたら」
「農学部のアイガモに来てもらえますね」
「それに鶏達も」
 園長先生もすぐにここまで考えられました。
「そうですね」
「農学部にお願いをして」
「あちらに知り合いがいます」
「そうですか」
「はい、では私から連絡をして」
 そうしてというのです。
「お願いをしてみます」
「それでは」
「それで足りないなら」
 さらにお話をする先生でした。
「虫ですね」
「蜻蛉や蜘蛛をですか」
「蜘蛛は女性で怖いという人が多いので」
 植物園に入って楽しむお客さん達の中には女の人も多いです、園長先生はそうした人達のことも考えています。
「蜻蛉ですね」
「あの虫ですね」
「はい、蜻蛉かもっと小さな害虫を駆除出来る」
「そうした虫をですね」
「放ちますか」
「そうしてですね」
「問題を解決してもらいましょう、あとです」
 さらにお話する園長先生でした。
「問題は今すぐですね」
「今すぐ虫を駆除する」
「それはもうですね」
「アイガモ君や鶏君達に来てもらいますか」
「はい、そしてです」
「食べてもらいますか」
「そうさせてもらいます」
 農学部にお願いしてというのです。
「そして飛ぶ害虫は」
「アイガモ君や鶏君は飛ぶことは」
「アイガモは飛べますが」
「はい、鶏君達も一応飛ぶことは出来ますが」
 実はそうなのです、鶏さん達も少しなら飛ぼうと思えば飛べるのです。このことは先生は当然知っています。
「あまりです」
「不得意なので」
「飛ぶ虫達については」
「それなら僕が呼びますが」
「その鳥達をですか」
「僕は動物の言葉を喋ることが出来ます」
 それで動物語の世界的な権威でもあるのです。
「ですから」
「飛ぶ鳥達を呼んでくれますか」
「雀君や燕君達に来てもらえば」
 そうしてもらうと、とです。先生はチープサイドの家族をちらりと見てから園長先生に答えました。
「いいかと」
「成程、そうしてですね」
「彼等に飛ぶ虫達を食べてもらいましょう」
「それではですね」
「その様にして」
「害虫駆除をすればいいですね」
「どうでしょうか」
 園長先生にあらためてお話しました。
「この問題については」
「はい」 
 園長先生は先生に笑顔で答えました。
「それでは」
「その様にですね」
「しましょう」
 まさに即決のお返事でした。
「そうしてです」
「植物園の虫達をですね」
「駆除させて頂きます」
「それでは」
「すぐに農学部にお願いをしますので」
 こう言ってです、園長先生は先生に深く感謝してでした。そうして先生にこうも言ったのでした。
「お礼と言っては何ですが」
「何でしょうか」
「実は私の秘蔵のお酒がありまして」
 すぐにです、園長先生は園長室の棚からあるものを出しました。何とそれは最高級のワインでした。
「トカイです」
「あのハンガリーの」
「はい、そのトカイでも最高級の」
「そのワインをですか」
「お贈りします、そして植物園いえ学園全体にです」
「このことをですか」
「お話させて頂きます」
 先生が植物園の害虫問題解決の為に尽力してくれたことをというのです。
「是非。そうすれば学園全体の総理事長から特別ボーナスも出ます」
「特別ボーナスですか」
「そうです、私個人から出すと色々言われますが」
 今の日本はそうしたことに厳しくて、というのです。
「ですが」
「総理事長からですか」
「出ますので」
 そのボーナスがというのです。
「ご期待下さい」
「悪いですね、トカイにボーナスにと」
「当然のことです」
「問題解決の為にヒントを出したことが」
「はい、そうです」
 まさにというのです。
「これ位は」
「そうなのですか」
「仕事には報酬があります」
 当然としてというのです。
「そうしたものですね」
「僕は当然のことをしたまでで」
「その当然のことにです」
「報酬があることがですか」
「世の中のルールです、では」
「トカイにボーナスを」
「お受け取り下さい」
 こう言ってです、先生はまずは園長先生とかトカイを受け取りました。そうしてそのうえでなのでした。
 一旦ご自身の研究室に戻りますがトカイはお家に帰ってから飲むことにして論文を書こうとした時にです、皆に言われました。
「よかったね、先生」
「問題が解決しそうで」
「しかもお礼のワイン貰えて」
「ボーナスも貰えそうだし」
「いいこと尽くしじゃない」
「最高のハッピーエンドだね」
「うん、本当にこれで解決出来たらね」
 それならとです、先生も皆に応えます。
「最高だね」
「そうだよね」
「これで終わったら」
「害虫達が駆除されるなら」
「これは多分成功するよ、ただね」
 ここでこうも言った先生でした。
「世の中問題はあらゆる形で次から次に起こるね」
「まあね」
「それも世の中の摂理だね」
「あらゆる問題があらゆる場所であらゆる形で常に起こる」
「世の中は問題も一杯」
「それも事実だね」
 動物の皆も納得することでした、そして先生はまた言いました。
「害虫だけが問題じゃないからね」
「また別の問題が起こるのね、植物園にも」
 ポリネシアが言ってきました。
「今回の問題が解決しても」
「それでまた知恵や力を使わないといけないんだね」
 ジップも言いました。
「その時に」
「そしてその問題を解決しないといけない」
 ホワイティも言いました。
「そういうものだね」
「ううん、まあ問題はね」
 どうしてもと言うトートーでした。
「その都度それぞれの対処方法で解決していかないとね」
「一つの問題を放置すると大きくなるし」
 老馬は賢明にもこのことがよくわかっています。
「手がつけられなくなるからね」
「解決出来るうちに解決する」
 ダブダブは少しぴしっとした口調で言いました。
「そうしないと手遅れになるわね」
「そしてまた別の問題が起こってね」
「余計に大変になるから」
 チープサイドの家族も言います。
「その都度すぐに解決しないと」
「駄目だね」
「そして今回の植物園の問題は解決出来たけれど」
「また別の問題が起こるのは絶対だね」
 オシツオサレツの二つの頭もこのことがわかっています。
「そしてその時もね」
「問題を解決しないとね」
「とりあえず今回の問題はこれでクリアーかな」
 チーチーはまずはこれをよしとしました。
「そういうことでね」
「うん、このことを素直に喜んで」
 最後に言ったのはガブガブでした、
「次の問題が起こったらそれはそれだね」
「そういうことだね、じゃあ今は鳥君達に頑張ってもらおう」
 彼等に害虫を食べてもらってというのです。
「そうしてもらおうね」
「アイガモさんや鶏さん達に」
「雀さんや燕さん達に」
「この学園にはどの鳥も多いしね」
「それに夜は蝙蝠さん達もいるし」
「うん、皆を総動員してね」
 お昼も夜も虫を食べてもらえばというのです。
「問題を解決しようね」
「それじゃあね」
「植物園の虫問題は解決ね」
「今回一気に全部食べてもらって」
「これからもね」
「鳥さん達に食べてもらえばいいね」
「そうだよ、あと鳥君達には僕も注意するよ」
 動物とお話が出来てあらゆる動物達のお友達である先生がというのです。
「虫は全部食べていいけれどね」
「お花や草木は傷つけない」
「そのことはだね」
「ちゃんとお話するんだね」
「そうするんだね」
「そうだよ、これでね」
 まさにというのです。
「万全だと思うよ」
「そうだね」
「じゃあそうしてね」
「問題を解決して」
「それも見届けようね」
「是非ね、まあ今回は別に動物園の鳥君達の助っ人はいらないかな」
 彼等はと思った先生でした。
「孔雀君やキツツキ君達はね」
「あっ、孔雀さんも虫食べたね」
「それも毒虫をね」
「毒蛇だって食べるし」
「虫の天敵でもあるんだね」
「そうなんだ、蛇に強いだけじゃなくてね」
 実は孔雀は猛毒を持つ恐ろしい蛇を襲って好んで食べるのです、こうした一面から孔雀明王という仏様になったとも言われています。
「悪い虫も食べるから」
「だからだね」
「孔雀さん達を呼ぶこともだね」
「考えていたんだ」
「そうだったの」
「いや、今思っただけだよ」
 前から考えていた訳ではないというのです。
「そこは違うよ」
「そうなんだ」
「まあとにかくだね」
「アイガモさんや鶏さん達に来てもらって」
「雀さんや燕さんも呼んで」
「それでも足りないなら夜は蝙蝠さん達を呼んで」
「植物園の虫達を食べてもらおうね」 
 あらためてです、先生は皆にお話しました。
「是非ね」
「そういうことでね」
「じゃあ後は実行ね」
「考えは決まったし」
「それじゃあ」
「うん、実践も学問だよ」
 こちらもというのです。
「ただ考えて答えを出すだけじゃなくてね」
「その答えが正しいか」
「実践してこそだよね」
「本当に正しいかわかるし」
「それならね」
「今回は」
「そう、実際にやってみて」
 鳥達を使ってというのです。
「実行に移そうね」
「よし、じゃあね」
「先生も実践に関わるし」
「虫を食べてもらう様にね」
「そうしてもらいましょう」
 皆でお話してです、そしてでした。
 先生は実際に鳥さん達に植物園に来てもらって中にいる害虫達を食べてもらいました。するとです。
 実際に彼等は虫達を見てすぐに先生に言いました。
「一杯いるね」
「この虫達食べていいんだね」
「そうしていいんだね」
「うん、ただお花や草木は傷つけないで」
 このことも言う先生でした。
「あと定期的にここに来てもらうから」
「虫食べていいんだ」
「どの虫達も」
「そうすればいいんだ」
「これからも決まった時期に」
「食べてね、むしろそうしてくれると有り難いから」
 植物園の事情もお話しました。
「食べてね」
「うん、わかったよ」
「じゃあ今から食べさせてもらうね」
「それもお腹一杯ね」
「植物園の中にいる虫達を」
 鳥さん達は先生に笑顔で応えてでした、実際に植物園の中の虫達を食べていきました。そして夜もでした。
 先生は蝙蝠さん達に植物園の中に入って食べてもらいました、蝙蝠さん達も虫達を見て言うのでした。
「じゃあ今からね」
「この虫達を食べさせてもらうわ」
「そうさせてもらうね」
「是非ね、お昼は鳥君達が食べてくれたけれど」
 それでもというのです。
「まだね」
「僕達にもだね」
「ここに呼んでくれて」
「食べさせてくれるんだね」
「そうしていいのね」
「そうだよ、もう全部ね」
 まさに一匹残らずというのです。
「食べていいからね」
「うん、じゃあね」
「実際に食べさせてもらうわ」
「それも美味しく」
「そうさせてもらうわ」 
 蝙蝠さん達も頷いてでした、皆で植物園の虫達を超音波を放って飛びながら食べました。こうして一日で、でした。
 植物園の虫達は全部食べられていなくなりました、園長先生は先生にこの状況に満面の笑顔でこう言いました。
「有り難うございます、これで」
「植物園の虫の問題はですね」
「なくなりました」
 まさにというのです。
「とりあえずは、そして」
「これからもですね」
「定期的にです、これから人手も増えますが」
 植物園の職員の人達を多く採用してです。
「しかし」
「それでもですね」
「これは非常にいい方法なので」
「定期的にですね」
「アイガモや鶏達に来てもらって」
 植物園の中にというのです。
「食べてもらいます」
「それでは」
「はい、ただ」
「ただ?」
「糞が問題ですね」
 見れば結構鳥や蝙蝠の糞が落ちています、園長先生はそうしたものを見て少し苦笑いになってしまいました。
「お掃除をして」
「そしてですね」
「奇麗にしないと、ですが」
「それでもですね」
「糞の後始末はすぐに終わります」
 こちらはというのです。
「ですが虫は」
「そうはいきませんね」
「はい、汚れている部分を奇麗にするだけでなく」
「探してその都度駆除しないとですからね」
「大変ですから」
 だからだというのです。
「虫の害を思えば」
「糞位はですね」
「何ともありません、通路に落ちている糞を何とかして」
「植物のところに落ちていれば」
「それはかえって栄養になりますので」
 お花や草木達にとってです。
「肥料ですから」
「だからですね」
「そちらはいいです」
「ではこれからですね」
「はい、通路を奇麗にして」
 職員の人達でというのです。
「終わりましょう」
「それでは」
「いや、千世のお考え通りでしたね」 
 それで上手くいったというのです。
「お陰でこれで」
「虫の問題が解決して」
「これからもどうすればいいか」
 そこまでというのです。
「はっきりしました」
「それでは」
「総理事長にお話をしますので」
 学園の最高責任者であるその人にというのです。
「それでは」
「はい、そうしてですね」
「虫のことで先生も」
「特別ボーナスですか」
「それが出る筈です」
 間違いなくというのです。
「ですから」
「それをですね」
「結婚資金にでもされて下さい」
 先生に笑顔で言うのでした。
「是非」
「結婚資金ですか」
「失礼ですが先生は独身ですね、まだ」
「はい」
 このことはその通りと答えた先生です。
「そうですが」
「それならです」
「ボーナスはですか」
「結婚資金にされて下さい」
「いえ、それはないです」
 先生は園長先生に笑って返しました。
「僕には」
「結婚はですか」
「恋愛もです」
 こちらもというのです。
「一度もです」
「ないですか」
「はい、ありません」
 こう言うのでした。
「そうした人間ですから」
「結婚はですか」
「絶対にです」
 それこそというのです。
「ありません、ですから」
「それで、ですか」
「ボーナスは嬉しいですが」
「結婚資金にはされず」
「はい」
 そしてというのです。
「普通に貯金します」
「そうですか、しかし」
「しかし?」
「私が思うにです」
 園長先生は先生を見て言うのでした。
「先生は素晴らしい方なので」
「だからですか」
「いい人が必ず前に出られて」
 そうしてというのです。
「素敵な恋愛をされて結婚も」
「するのですか、僕が」
「はい、そして結婚生活も」
 それもというのです。
「素敵に過ごされる筈です」
「そうでしょうか」
「はい、間違いなく」
 太鼓判を押している言葉でした。
「そう思いますが」
「そうでしょうか」
「立派な人は外見ではなく中身を見ます」
 その人のです。
「それは男の人も女の人も同じです」
「それで、ですか」
「はい、必ずです」
「いい人がですか」
「先生の内面を見られて」
 そうしてというのです。
「先生と共にです」
「恋愛をしてですか」
「結婚もされて」
「結婚生活もですか」
「送られる筈です」
 確信を以ての言葉でした。
「私はそう思います」
「ですが本当にです」
「先生はですか」
「そうしたことに縁がないのです」
 全く、というのです。
「これまでの人生で」
「誰からもですか」
「ラブレターをもらったことも告白をされたことも」
 そのどちらもというのです。
「一度もです」
「ないのですか」
「勿論デートもです、ただ」
「ただ?」
「女性に言われて登下校のガード等は結構しています」
「ガードですか」
「校内でもありました」
 ボディーがーどとして一緒に歩くことはというのです。
「それはしています」
「そうですか」
「学生時代も今も。ですが」
「それでもですか」
「からかいの手紙や言葉ばかり言われて」
 先生はこう思っています。
「本当に学生時代は幸い友人には恵まれていましたが」
「恋愛はですか」
「ありません」
 それこそ一度もというのです。
「僕は」
「そうでしょうか」
「そうでしょうかとは」
「花には蝶が寄りますね」
 ここでこうも言った園長先生でした。
「いい人はいい人と一緒になる」
「確かによく言われますね」
「はい、ですから先生も」
「いい人とですか」
「付き合えます、あと」
「あと?」
「先生はもう少しご自身に自信を持たれるべきですね」
 先生を見てのお言葉です。
「本当に」
「自信をですか」
「自惚れは禁物ですが」
 それでもというのです。
「ご自身をよく見て」
「そしてですか」
「自信を持たれるべきです」
「そうすればですか」
「はい、恋愛もです」
 こちらもというのです。
「素晴らしいものが開けると思います」
「だといいですが」
「必ずです、本当に先生は」
 さらにお話をする園長先生でした。
「自信を持たれて周りを御覧になれば」
「それで、ですか」
「世界が全く変わります」
 園長先生は断言しました。
「間違いなく」
「恋愛についても」
「そうです、ですからボーナスは」
 こちらはといいますと。
「結婚資金にです」
「置いておくといいですか」
「是非」
 園長先生は先生に言います、ですがそれでもです。
 先生は園長先生のそのお話だけは信じずそうしてでした、お礼はそのまま受け取りました。そうして研究室に戻ってです。 
 ミルクティーを飲みつつこう言いました。
「結婚資金は絶対にないね」
「うん、先生がそう思ってるならね」
「先生の中だけではそうね」
「僕達は違う考えだけれど」
「それも全くね」
 これが動物の皆の返事でした。
「そこはそう思うよ」
「けれどね」
「結婚資金にしておくといいわよ」
「特別ボーナスは」
「そのことは」
「皆がそう言うならね」 
 それならと言った先生でした。
 そしてです、そのうえで。
 皆にです、話題を変えてこうも言ったのでした。
「何はともあれ植物園の虫の問題はこれでね」
「うん、解決しそうだね」
「先生の知恵のお陰で」
「今回もね」
「先生の功績の一つになったわよ」
「僕の功績はいいとして」
 こうしたことに誇らないのも先生です。
「植物園のお花や草木はこれで助かるよ」
「害虫の害からね」
「解放されたわね」
「じゃあ薔薇もね」
「あのお花も大丈夫だね」
「きっとね」
 そうなるというのです、そしてです。オシツオサレツが言いました。
「また薔薇を観に行こうね」
「皆でね」
「もう虫に荒らされないだろうし」
「そのことも安心だね」
「奇麗な薔薇を観られるね」
 トートーもにこにことしています。
「これで」
「そうだね、棘があっても」
「やっぱり薔薇は奇麗なものだし」
 チープサイドの家族も言います。
「薔薇が虫に荒らされて奇麗さが損なわれていないと」
「余計に嬉しいよ」
「明日にでも行く?」
 ポリネシアはこう提案しました。
「植物園の薔薇園に」
「いいわね、紅い薔薇も黄色い薔薇も観て」
 ダブダブもかなり乗り気です。
「皆で楽しみましょう」
「あの香りもいいんだよね」
 ジップは犬のお鼻でいつもその香りを最高に楽しんでいます。
「薔薇は」
「うん、かぐわしくてね」
 ホワイティもその香りについて言及します。
「何時までもあの香りの中にいたくなるね」
「勿論他のお花もいいけれど」
 今言ったのはチーチーでした。
「薔薇は別格だよ」
「やっぱり明日観に行く?」
 老馬はもうそのつもりでいます。
「そうする?」
「皆でだね」
 ガブガブは老馬に応えました。
「薔薇園に行くんだね」
「皆がそう言うなら」
 それならと応えた先生でした。
「明日の午前のティータイムはあそこにしようか」
「うん、それじゃあね」
「明日薔薇園に行きましょう」
「そして薔薇を観ながらね」
「お茶を楽しもうね」
「そうしようね、薔薇園でのティータイムは」
 笑顔で言う先生でした。
「本当に素晴らしいよ」
「そうだよね」
「外で行うティータイムは素敵だけれど」
「その中でも薔薇園で行うと」
「特に素敵だよ」
「だからね」
 それでというのです。
「皆で楽しもうね」
「そうしましょう」
「虫もいなくなったし」
「そのことも喜びながら」
「薔薇を観つつ紅茶を飲んで」
「ティーセットも食べてね」
「そしてティーセットはね」
 その中身のこともお話した先生でした。
「薔薇はイギリスの国花だし」
「イギリスね」
「あの国のティーセットだね」
「それにするんだね」
「日本人ならね」
 この人達ならといいますと。
「薔薇園でもお抹茶で素敵に楽しみそうだけれど」
「うん、日本人なら出来るね」
「そして和歌も詠むんだよ」
「日本の人達ご自身は無理と言っても」
「あらゆるお花を愛でられる人達だから」
「間違いなくね」
「それも出来るよ、イギリスの薔薇じゃなくてね」
 このイメージからです。
「日本の薔薇にね」
「桜みたいにね」
「梅や桃みたいに」
「そう出来るね」
「桜のお花見なんてのもしそうね」
「そしてお抹茶を茶道で飲みながら眺めて」
「和歌にもしてね」
 動物の皆も言います。
「出来る筈よ」
「薔薇の和歌もいいかも」
「季語がどうなるかも気になるし」
「素敵よね」
「全くだよ、そういうのも見たいね」
 こうも言った先生でした。
「そう思ったよ」
「全くだね」
「じゃあそうしたことも思いながらね」
「明日は薔薇園に行こうね」
「そしてそこでお花見ね」
 動物の皆も応えます、そしてです。
 先生はミルクティーを一口飲んでまた言いました。
「ローズティーがいいかな」
「飲むお茶はだね」
「薔薇園で」
「それがいいかな」
 こう思ったのです。
「ここは」
「そうだね、いいかもね」
「薔薇だからね」
「薔薇の紅茶だね」
「それを飲むんだね」
「うん、いいかな」
 こう言うのでした。
「それも」
「いいんじゃない?」
「悪くないと思うわよ」
「さっき言ったけれど」
「それでもね」
「ローズティーでも」
「そちらの紅茶でも」
「そうだね、今はミルクティーを飲んでるけれど」
 それでもというのです。
「ローズティーも考えておこう」
「そうして考えるのも面白いし」
「何かとね」
「そうしたことも楽しんで」
「明日に向かいましょう」
「是非ね、それとね」 
 さらに言う先生でした。
「薔薇は食べられるんだよね」
「そうそう、実はね」
「薔薇は食べられるから」
「あのお花が」
「そのこともいいことだよね」
「薔薇を使ったお料理はね」 
 そのお話もする先生でした。
「昔からあるからね」
「確かローマ帝国の頃から」
「あの頃からだよね」
「薔薇のお料理はあるよね」
「あのお料理は」
「うん、その頃からあるんだ」
 二千年前からというのです。
「それでネロも好きだったんだよ」
「あの暴君で有名な」
「とんでもない皇帝だったっていう」
「あのネロも?」
「実は暴君だったかというと」
 先生は皆にネロという皇帝のお話もしました。
「実は違っていたんだ」
「あっ、そうなの?」
「ネロって暴君だと思っていたら」
「実は違うの」
「そうだったの」
「うん、結構ムラのある性格だったみたいだけれど」
 それでもというのです。
「ローマの大火災の時も自ら先頭に立って対策にあたったり解放奴隷に慈悲深かったりね」
「へえ、そうだったんだ」
「暴君って悪名高いけれど」
「実はそうした人だったんだ」
「うん、内政も結構しっかりしていてローマ全体を考えて政治をしていてね」
 そうしてというのです。
「市民に気前がよくてね、ただキリスト教徒を弾圧していたから」
「そのせいでなんだ」
「暴君って言われていて」
「当時は普通の皇帝だったんだ」
「軍隊を指揮したことがなくてそこを衝かれて叛乱を起こされて追い詰められて自殺したけれど」
 そうした結末だったけれどというのです。
「それでもね」
「別に暴君でもなくて」
「普通に皇帝として政治をしていて」
「悪い皇帝じゃなかったんだ」
「死んでからも懐かしがられてお墓にはお花が絶えなかったし」
 こうしたこともあったというのです。
「当時皇帝の権威、つまりローマ帝国を否定するキリスト教徒を弾圧していたからだよ」
「暴君って言われてるんだ」
「キリスト教を弾圧していたから」
「そのせいでなんだね」
「そうだよ、皇帝としては確かに軍隊を指揮出来なかったけれど」
 こうした欠点があってもというのです。
「それなりの皇帝だったんだ」
「ふうん、成程ねえ」
「よく言われていることと違って」
「悪い皇帝じゃなくて」
「それどころかわりかしいい皇帝だったんだ」
「うん、当時としてはね。そしてね」
 さらにお話する先生でした。
「そのネロも薔薇が好きでね」
「薔薇のお料理を食べていたんだ」
「そうだったんだ」
「薔薇の香りがするお水を飲んでね」
 そしてというのです。
「薔薇のお花が入ったサラダや薔薇のプティングを食べていたんだ」
「本当に薔薇が好きだったんだ」
「暴君は実は普通の皇帝で」
「しかも薔薇が好きだったんだ」
「そう、芸術と薔薇が好きだったんだ」
 暴君と言われたネロの素顔はというのです。
「そうした人だったんだ」
「そしてその頃からだね」
「薔薇は食べられていたんだね」
「そうなのね」
「そう、日本で言うと菊だね」
 このお花になるというのです。
「菊も食べられるよね」
「うん、そうだね」
「あのお花もね」
「実は食べられるのよね」
「そうなんだよね」
「だからね」
 それでというのです。
「薔薇のお菓子もいいかな」
「明日のティータイムは」
「薔薇のティーセットなの」
「それを楽しみたいのね、先生は」
「そうも考えているよ」
 実際にというのです。
「今はね」
「いいかもね」
「薔薇をそこまで楽しむのも」
「それも」
「そうだよね、じゃあね」
 そうしたお菓子もというのです。
「考えていこうね」
「いいわね」
「薔薇の紅茶に薔薇のお菓子」
「しかも薔薇園で楽しむ」
「最高よね」
「薔薇尽くしでいくとね」
 それこそというのです。
「もうこんないいことはないよね」
「ええ、本当に」
「イギリスの薔薇園ではないけれど」
「日本にいてもね」
「楽しめるわね」
「そうだね、そして日本で薔薇というと」
 今度はこんなことを言った先生でした。
「ベルサイユのばらもあるね」
「ああ、あの漫画ね」
「フランス革命を舞台とした」
「男装の麗人が主人公の」
「あの漫画だね」
「あの漫画は面白いね」
 先生は漫画も積極的に読んでいるのです。
「時代考証もストーリーも確かでね」
「描き込み凄いよね」
「派手なドレスを細かいところまで描いてて」
「キャラクターの心理描写も見事ね」
「まさに隙がない」
「そんな作品だよ」
「あれは名作だよ」
 まさにというのです。
「漫画界に残るね」
「だから今も読まれていて」
「舞台にもなっていて」
「人気があるのね」
「古典的名作と言っていい位に」
「うん、あの作品の薔薇は二つあるね」
 こう見ている先生でした。
「まず赤薔薇は王妃様だよ」
「マリー=アントワネットね」
「ハプスブルク家から嫁いできた」
「あの人が赤薔薇で」
「そしてもう一つの薔薇は」
「主人公だよ」
 まさにその人だというのです。
「白薔薇だよ」
「あの人はそちらね」
「白薔薇なのね」
「そして二つの薔薇が咲いて」
「そのうえで散っていくのね」
「その散る時もね」
 作品の結末を思い出している先生でした。
「最高の名場面なんだよね」
「そうよね」
「あの漫画は結末も素敵よね」
「バスチーユでのあの場面も」
「あの時まで」
「あの革命は実は奇麗なものじゃなかったけれど」
 先生は歴史学者でもあるのでこのことも知っています、フランス革命は実は謀略と暴走と虐殺に彩られたものだったのです。
「けれどあの漫画はね」
「立派な名作よね」
「そのタイトルに相応しい」
「とても素敵な作品よね」
「何よりも」
「僕もそう思うよ、それではね」
 ここでこうも言った先生でした。
「あの漫画も読みかえしてみようかな」
「いいね」
「あの作品は読みごたえあるし」
「無駄に長くもないしね」
「きちんとストーリーを組み立てているから」
「何もかもをね」
 作品の全てをというのです。
「緻密に考えて描いていっているね」
「だからあそこまでの作品になったんだね」
「ただ美形キャラが出て衣装や宮殿が奇麗なだけじゃなくて」
「性格描写も恋愛もちゃんと描いてて」
「時代検証も確かで」
「全てに凄く配慮して描いていっていて」
「ストーリーもね」
 こちらもというのです。
「無駄に長くないのよね」
「ちゃんとキャラクターの年齢を経ることも描いてて」
「それに従って成長していっていて」
「時代も進んでいっているから」
「あるよね、無駄にだらだら続いている作品が」
 先生はこうした作品も知っています。
「アニメ化して主題歌とか予告を抜いた二十分を殴り合いだけで終わらせているとか」
「そんな作品あるの?」
「その作品三十分のアニメよね」
「実質二十四分なのに」
「そのうちの二十分それって」
「酷いね」
「そうした無駄な引き延ばしばかりしている作品もあるけれど」
 日本にも残念ながらこうした大ヒット作があります。
「ベルサイユの薔薇は違うから」
「安心して読めるね」
「そうしたことからも」
「だから読んでいくよ」
 作品の方もというのです、日本では薔薇はこうしたジャンルの文化にも影響を及ぼしていることに素晴らしさを感じている先生でした。








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