『ドリトル先生と奇麗な薔薇園』




                第二幕  園長さんの悩み

 次の日の午後です、講義を終えた先生のところにです。
 電話がかかってきました、その電話の主はといいますと。
「八条大学付属植物園の園長の松江という者ですが」
「あっ、園長さんですか」
「はい、昨日申し出られたそうですね」
「植物園の虫のことで」
 先生から園長さんにお話しました。
「そうさせてもらいました」
「その様ですね」
「そのことで、ですね」
「お話をお伺いしたいのですが」
 こう先生に申し出るのでした。
「宜しいでしょうか」
「はい」
 先生は園長さんに笑顔で応えました。
「それでは今から」
「では私からお伺いします」
「園長先生からですか」
「今時間がありますしお茶でも飲みながら」
「そういえばもう少ししたらティータイムですね」
 講義を終えたその時間は本当にそうした時間でした、用意をしていれば少し早いですがお茶を飲む時間になります。
「それでは」
「はい、先生の研究室にお伺いします」
「僕の研究室の場所はご存知ですか」
「私も大学の方にはよく出入りしていまして」
 それでというのです。
「医学部の場所、それも研究室がある棟もです」
「知っていてですか」
「すぐに行けます」
「それでは」
「はい、今からです」
「わかりました、それでは」
 先生は園長さんのお言葉に頷いて応えました。
「ティーセットを用意してお待ちしています」
「宜しくお願いします」
 こうしてでした、園長さんの方から先生をお伺いしてお話をすることになりました。この電話の後で。
 先生は動物の皆と一緒にお茶の用意をはじめました、今日のティーセットはといいますと。
「レモンティーにしようか」
「アメリカ風ね」
「そちらのティーセットね」
「うん、ドーナツも出してね」
 三段のセットもアメリカ風にというのです。
「チョコバー、そしてキャラメルにしよう」
「うん、アメリカだね」
「レモンティーってだけで一気にそうなるけれどね」
「ドーナツやそうしたお菓子も出すとね」
「余計にそうなるわね」
「そちらにしようね」
 こうお話してです、先生はアメリカ風のティーセットを用意してでした、そのうえで園長先生をお迎えしました。するとです。
 そのティーセットを見てです、園長先生銀髪を丁寧に後ろに撫で付けた五十代位のアジア系の整った顔立ちのスーツがとてもよく似合っている背の高い紳士然とした人はお部屋に入ってすぐに笑顔になりました。
「ドーナツですか」
「何がお好きかわかりませんでしたが」
「いえ、実は私ドーナツが大好きでして」
「そうだったのですか」
「そして紅茶は何でも好きです」
 こちらのお話もするのでした。
「これは有り難いです」
「ではこのティーセットでいいですか」
「はい」
 気品のある笑顔での返事でした。
「では今から」
「お話して下さい」
「そうさせてもらいます」
 こうしてでした、園長先生は席に着いてです。
 そのうえで先生に植物園の虫のことをお話しました、園長さんは甘いレモンティーを飲みつつ先生に困ったお顔でお話しました。
「植物園の様々な場所に出ていまして」
「そのせいで、ですね」
「はい、それで手入れが大変でして」
「虫の駆除まで人手がと聞いていますが」
「回っていません、実はこれまではやっていけていました」
 今の人手でというのです。
「それが今年は定年で辞める人が多く」
「定年退職ですか」
「しかもここ最近研修や出張に出る職員が多く」
「そのこともあってですか」
「慢性的な人手不足でして」
「だからですか」
「虫の駆除まで手が回っていないのです」
 そうした事情だというのです。
「本当に例年は普通にやっていけています」
「人手が足りていますか」
「海外から来てくれている人もいますし」
 植物園の勤務にです。
「このことは大学付属の他の施設と同じです」
「動物園や水族館と同じですね」
「そうです、博物館や美術館もですね」
 他には鉄道博物館や図書館もあります、八条大学の広大な敷地の中には実に沢山の施設があるのです。
「本来は人手が足りていますが」
「植物園は今年はですか」
「そうした事情で」
「人手が足りなくて」
「はい」
 そのせいでというのです。
「虫の駆除までは人手が回っていません」
「それであの状況ですが」
「深刻な状況にまで至っていないと思いますが」
「そうですね」
 先生はチョコバーを食べつつ園長先生に応えました。
「僕もそこまではです」
「至っていないとですね」
「思います」
「そこまでは出来ています」
 人手不足の中でもです。
「ですが植物園全体として見まして」
「無視出来ないレベルですね」
「そうです」
 そうした状況だというのです。
「どうにも」
「だからですね」
「私としても何とかしていたいと思っていまして」
「それで僕の申し出にですか」
「まさに渡りに舟です」
 こう考えているというのです。
「本当に」
「そうだったのですか」
「それでなのですが」
「僕の知恵をですか」
「借りたいのですが」
「はい、それではです」
 先生は園長さんにお話しました。
「まずやはり避けるべきはです」
「農薬ですね」
「そうです、どうしても植物や人体に影響が出ます」
「そこが問題ですね」
「特に植物園は温室が多いので」
 園長さんにもこのことをお話するのでした。
「ですから」
「農薬が室内に籠りますので」
 園長さんも応えて言います。
「よくないですね」
「はい、ですから」
「それで、ですね」
「農薬は使わずに」
「他の方法でいきましょう」
「他のですね」
「今それを考えています」
 こう園長さんにお話するのでした。
「必ずいい方法がある筈ですから」
「この問題を解決するにあたっての」
「はい、ですから」
 それ故にというのです。
「今考えています」
「妙案か名案か」
「そうではないかも知れないです」
 先生は園長さんの今のお言葉には謙遜して返しました。
「ですが必ずです」
「出してくれますね」
「はい、そうします」
 こう約束するのでした。
「期日はと言われると困りますが」
「早いうちにですね」
「そうさせて頂きます」
「わかりました、それではです」
「解決案をですね」
「お待ちしています」
 園長さんは先生に笑顔で応えました、こうしてでした。
 先生は正式に植物園の虫の問題を解決することになりました、園長さんはティーセットを楽しんでからです。
 満面の笑みで先生の研究室を後にしました、先生は園長さんを送ってから動物の皆に言ったのでした。
「さて、今からね」
「解決案だね」
 ジップがその先生に応えます。
「それを出すんだね」
「さて、いよいよ本格的にはじまったけれど」
 チーチーも言います。
「どうしようかな」
「それだね」
「虫の問題はね」
 チープサイドの家族は彼等の間でお話しはじめています。
「農業でもそうだし」
「難しいね」
「けれど先生ならね」
 トートーは先生を完全に信頼しているのでこう言えました。
「必ず名案を出してくれるよ」
「こうしたことは本当に得意な先生だから」
 ホワイティもこう言えました、先生を信頼しているので。
「絶対にだね」
「まあ急かすと先生も困るけれど」
 それでもと言ったのはポリネシアでした。
「絶対に出してくれるわね」
「さて、じゃあね」
「どんな知恵を出してくれるのかね」
 オシツオサレツも二つの頭でお話します。
「僕達も一緒に考えるけれど」
「期待してもいいかな」
「農薬を使ったら駄目っていう制約はあるけれど」
 ここで言ったのはガブガブでした。
「絶対に名案が出るよ」
「さて、どうなるか」
 最後に言ったのはダブダブでした。
「これからね」
「うん、どうも今回はね」
 先生は考えるお顔になって皆に応えて言いました。
「もうヒントになるかなっていう場所があるんだ」
「場所?」
「場所っていうと」
「いや、農業がよくお話に出てるよね」
 今回皆でお話している中で、です。
「そうだよね」
「あっ、そういえばね」
「しょっちゅう出て来るわね、農業が」
「考えれみれば同じ植物だしね」
「植物園のお花も農業の作物も」
「どちらもね」
「そう、植物だよ」
 まさにと言う先生でした。
「だからね」
「農業にだね」
「今回の問題解決のヒントがある」
「先生はそう思っているんだ」
「そうだよ、だからね」
 それでと言う先生でした。
「ちょっと農学部の方に行こうかな」
「今から?」
「今からそうするの?」
「うん、少しでも見ておくとね」
 それだけでというのです。
「違うからね」
「それじゃあきょうはもう講義もないし」
「それならだね」
「今から農学部の方に行くの?」
「大学のね、高等部の農業科もいいね」
 こちらもと言う先生でした。
「あちらに行ってもね」
「同じ農業だしね」
「確かにいいね」
「じゃあ今からね」
「大学の農学部に行こうね」
「それか農業科ね」
「あちらに」
 動物の皆も応えてでした、そのうえで。
 皆で研究室を後にしてそうして大学の農学部の方に行きました、その途中に森が左右にある道を通りましたが。
 その道を通りつつです、先生は動物の皆に言いました。
「ここに、だよね」
「そうそう、スズメバチが出たのよね」
「あの蜂の巣があって」
「襲われそうになった人がいて」
「大変だったらしいね」
「あの蜂は怖いからね」
 先生は皆に真剣なお顔でお話しました。
「蠍より怖いんだよね」
「先生よくそう言うよね」
「スズメバチは蠍より怖いって」
「毒蛇よりも怖いって言ったこともあったね」
「とにかく注意しないといけないって」
「近寄ったら駄目だって」
「まず毒が強いんだ」
 スズメバチはというのです。
「しかも何度も刺せるしね」
「それだよね」
「スズメバチって一回刺して終わりじゃないからね」
「ミツバチと違って」
「そこも怖いんだよね」
「そう、しかも凶暴で群れを為すから」
 この性質もあってというのです。
「刺すだけじゃなくて噛んでもくるしね」
「あの痛そうな牙でね」
「噛んでもくるんだよね」
「刺すだけじゃなくて」
「このことも怖いんだよね」
「そうだよ、しかも針の先から毒を霧みたいに出すことも出来るんだ」
 これもスズメバチが出来ることだというのです。
「だから本当にね」
「危険なんだね」
「蠍や毒蛇よりも」
「そうした生きものは飛ばないしね」
「まして群れも為さないし」
「凶暴さもスズメバチ程じゃないから」
「あんな危険な生きものはそうそういないよ」
 こうまで言う先生でした。
「だからね」
「迂闊には近寄らない」
「巣があったら速やかに何とかする」
「そのことが大事なのね」
「自然環境は大事にしないといけないけれど」
 生態系を守ることもこの中に入っています、だから無駄に命を奪うこともいいことではないのです。
「けれどね」
「それでもね」
「人がいる傍にスズメバチの巣があったら危険だから」
「刺されて死ぬ人もいるしね」
「だからだね」
「そう、だからね」
 本当にその為にというのです。
「スズメバチについてはね」
「迂闊には近寄らない様に注意して」
「人が住んでいる地域の近くに巣があったら駆除する」
「そうしていくことが大事なんだね」
「どうしても」
「そうだよ、この森にあった巣もすぐに駆除されたけれど」
 このことについてもお話する先生でした。
「とてもいいことだったよ」
「そうだよね」
「放っておいたら大変なことになるから」
「だからね」
「犠牲者が出ない様にね」
「すぐに対応しないとね」
「こうした時に慎重に対応を検討するとか言うと」
 そう言って中々動かないと、というのです。
「大変なことになるからね」
「そうだよね」
「悠長なことを言ってる間に犠牲者が出るかも知れないから」
「すぐに何とかしないとね」
「巣があるってわかったら」
「そう、ここですぐに動いてくれる学園だから」
 スズメバチの巣にも駆除班を送って即座に対応してくれたのです。
「いいんだよ、警察でもそうだね」
「うん、ストーカー被害聞いても対応が遅れてね」
「取り返しのつかないことになったってあるよね」
「早く動いていればってね」
「そんな時も多いよね」
「本当にそうなってからでは遅いんだ」
 こうした場合もあるというのです。
「だからね」
「スズメバチもだね」
「早いうちに何とかする」
「このことが大事だね」
「どうしても」
「そうだよ」
 本当にというのです。
「すぐに対応するのが大事だよ」
「慎重に対応を検討するとか言ってね」
「それで何もしない人もいるし」
「こうした人って大抵取り返しのつかないことしても責任取らないし」
「むしろ他の人に責任押し付けるから」
「そんな人は駄目だよ」
 絶対にと言う先生でした。
「責任転嫁なんてね」
「もっての他だよね」
「自分が何もしないで取り返しがつかないことになってね」
「それでそんなことするから」
「もう絶対にね」
「したら駄目だね」
「けれどする人がいるから」
 先生はお顔を曇らせて言うのでした。
「世の中にはね」
「そうだよね」
「酷い人がいるわよね」
「そんな人にはならない」
「なったら駄目ね」
「そうだよ」
 本当にというのです。
「僕達はね」
「だからだよね」
「スズメバチの巣についてもね」
「無責任に放っておかずに」
「すぐにちゃんとしないと駄目だね」
「そう、犠牲者が出る前に」
 本当にというのです。
「何とかしないとね」
「そうだよね」
「それが人としての正しい在り方よね」
「だから学園の理事長さんもすぐに動いてくれたのね」
「この森のお話を聞いて」
「そうだよ、だから今は安全だよ」
 この森もというのです。
「スズメバチの巣がなくなってね」
「一件落着だね」
「蠍や毒蛇より怖い存在がなくなって」
「やっぱり放置出来ないから」
「ちゃんとしないとね」
 動物の皆も言います、そしてでした。 
 先生達はその動物の皆と一緒に農学部の方に行きました、すぐ傍には高等部の農業科の校舎も見えます。そこでです。
 先生はビニールハウスや牧場、田畑を見て回りました。その中で。
 先生はすぐにです、こう言いました。
「うん、虫が凄く少ないね」
「やっぱり農薬使えるからね」
「そのお陰でだよね」
「やっぱり害虫が少ないんだね」
「そうだね」
「それもあるね、ただどうもね」
 ここでこうも言った先生でした。
「使っている農薬は強いものじゃないね」
「あっ、そうなの」
「昔の強い農薬みたいなのじゃないの」
「そうなんだね」
「沈黙の春のお話をしたけれどね」
 ここでまたこの本のことを出す先生でした。
「強過ぎる農薬も問題なんだよ」
「幾ら農薬は必要で人に凄くいいものを与えてくれても」
「害虫をやっつけてくれて」
「それでもだね」
「強過ぎると駄目なのね」
「強過ぎると劇薬になるね」
 他のお薬と同じくというのです。
「そして劇薬はね」
「うん、毒にもなるよね」
「お薬と毒は紙一重だからね」
「すぐに毒にもなるよね」
「調合の一つ次第で」
「劇薬なんて特にね」
「量が多いとそれこそ」
 動物の皆も思うことでした。
「確かに必要でもね」
「要は加減次第だよね」
「あまり強過ぎるとね」
「それを沢山使ったら危険ね」
「色々と問題が出るわね」
「問題がないと思ってもね」
 それでもというのです。
「後になって問題があるってわかったりするし」
「農薬にしてもね」
「そこが問題だね」
「ちゃんと考えていかないと」
「後で大変なことにもなるね」
「そう、だからね」
 それ故にとお話する先生でした。
「この大学の農学部は農薬を使っていてもね」
「そんなに強いものは使っていない」
「そうなんだね」
「色々と考えて」
「そうしてるのね」
「うん、確かに除草剤や殺虫剤は必要だよ」
 先生は農学者でもあります、だからこうしたものが農家の人達や農業という産業にどれだけ大事なのかもわかっています。
「使ってはいけないていうのは本当にね」
「現場がわかっていない人ね」
「そうした人の言うことね」
「よく知識人でそんなこと言う人いるけれどね」
「ああした人は何もわかってないのね」
「うん、日本ではテレビのコメンテーターがよく言うけれど」
 先生は曇ったお顔でこうした人達のことをお話に出しました。
「その人達は農業の専門家じゃないよね」
「ただテレビに出ているだけだよね」
「専門家とは限らないよね」
「色々な分野でそうだけれど」
「専門家じゃないよね」
「よく口髭を生やした漫画家さんや女性の小説家さんを観るけれど」
 そのテレビでというのです。
「ああした人達は本当にね」
「それぞれの分野で専門家か」
「そうとも限らないから」
「だからだね」
「その発言を鵜呑みにしてはいけない」
「そうなのね」
「その通りだよ、普段芸能人のことばかり偉そうに描いている漫画家さんが農業もしっかり勉強しているとはね」
 先生はそのテレビでよく出る人のうちの一人を思いました。
「思えないよね」
「ああ、いるよね」
「口髭生やした漫画家さんだよね」
「何か政治とかにも言うけれど」
「芸能人のこととか」
「自分は万能でしかも高みにいるみたいに」
「そんな風にね」
「あの人は演技もしないし政治を勉強もしていないんだよ」
 そうした人だというのです。
「それでドラマに偉そうに言えるのか、政治を語れるのか」
「そして野球もね」
「野球選手でもないしね」
「どんな分野でも偉そうに言うけれど」
「女性の小説家さんもそうだけれど」
「何も勉強してなくて上から目線で言ってても」
「専門家じゃないのに」
 またこのことを言う先生でした。
「そして何も勉強していない人の言うことを鵜呑みにするとね」
「大変なことになるよね」
「農業についても」
「そう思うとテレビって危険だね」
「何も考えないで観るとね」
「そうだよ、思うことはね」
 本当にと言う先生でした。
「自分でちゃんと学んでね」
「そうしてだよね」
「理解することだね」
「テレビに出て来る人が適当に偉そうに言うことを鵜呑みにしないで」
「自分で勉強することね」
「農業でもだよ」
 今皆でその目で見ているこの分野でもというのです。
「そうしないと駄目だよ」
「それで農薬についても考えないと駄目だね」
「ハウス栽培もだよね」
「先生ハウス栽培についての論文も書いていたけれど」
「自分で勉強しないと駄目なのね」
「そう、日本には変なテレビのコメンテーターも多いけれど」
 先生はこうした人達以外にもと困った人がいるというのです。
「料理漫画っていう漫画のジャンルがあるね」
「グルメ漫画だね」
「イギリスにはちょっとない分野よね」
「イギリスは本当に料理には疎いから」
「関心が薄くて」
「これもまた日本の文化の素晴らしいところだよ」
 そうしたジャンルの漫画があるということもというのです。
「けれど漫画は色々あるよね」
「そうそう、色々とね」
「料理漫画だってカレー専門とかラーメン専門とかあるし」
「料理勝負の漫画があったり、食戟とかで」
「九州のお父さんがお料理作る漫画とか」
「その中で一番有名な漫画の一つはね」
 その漫画のことをお話する先生でした。
「よくないね、ハウス栽培をそれを行いそれぞれの場所の土地柄や季節まで考えないで何処かからか出ている数値だけを出して批判したりとか」
「農業はそこまで考えないと駄目なのに」
「ただそうした数値だけ出してだね」
「それで批判するとか」
「よくないのね」
「この漫画は登場人物もおかしな人ばかりだけれどね」
 この時点で問題だというのです。
「変に短気で下品で野蛮な人ばかり出たり」
「先生と正反対ね」
「先生怒らないから」
「しかも紳士だし」
「暴力とも無縁だしね」
 皆は先生は間違ってもそうした人ではないと断言しました。
「何かそんな人ばかりっていうのも」
「ちょっとないよね」
「そんな登場人物ばかりとか」
「それも」
「しかも変な政治主張もやたら多くて」
 このことも問題にする先生でした。
「おかしなことばかりでネットでも評判悪いけれどね」
「その漫画のハウス栽培のことでもだね」
「おかしいんだね」
「土地柄や季節まで考えないで言ってるから」
「その時点が」
「お野菜も果物も旬のものが一番いいのは当然だよ」
 このことは言うまでもないというのです。
「けれどハウス栽培はどんな季節でも色々なお野菜が食べられるんだ」
「そう思うと凄いよね」
「画期的な農業よね」
「人類にそれをもたらしてくれた」
「本当に素晴らしいものね」
「そう思うよ、批判があるのは当然だけれど」
 それでもというのです。
「自分の変なイデオロギーの下適当な数字を出して批判するのはよくないよ」
「そういうことね」
「それじゃあだね」
「ハウス栽培もそうしたことを考えて」
「ちゃんとしていかないと駄目ね」
「そういうことね」
「そうだよ、あとね」
 ここで、です。先生はそのビニールハウス苺を栽培しているその中にお邪魔しました。そうしてでした。
 その中の苺達を見てそれで言いました。
「虫がいないね」
「そうだね」
 チーチーもその苺を見て言います。
「よく取ってあるね」
「ビニールハウスで農薬を使うと思えば」
「一旦ビニールを外した方がいいけれど」
 チープサイドの家族はビニールハウスの中に農薬がこもらない様にという配慮から考えて言っています。
「それは面倒だしね」
「結構な手間だし」
「係の人がよく手入れしてるのね」
 ダブダブはこう考えました。
「これは」
「ううん、細かいところまで見てるね」
 ジップも苺達を見て思うのでした。
「それで虫を取ってるね」
「係の人達が真面目だとね」
「虫もちゃんと取ってくれるんだよね」
 オシツオサレツも言います。
「お風呂に入って洗う感じで」
「作物もそうなるね」
「何かこうしたところにも国民性が出るのかしら」
 こう言ったのはポリネシアでした。
「日本人の」
「そういえばどの場所も虫少ないし」
 ホワイティも老馬の頭の上から言います。
「ちゃんとしてる人が多いんだね」
「虫ってすぐに増えるけれど」
 ガブガブは自分が好きなお野菜のことから思いました。
「凄いよく手入れしてるんだね」
「田んぼなんか特にだったね」
 老馬はこちらのことを思い出しました。
「奇麗だったね」
「そうそう、あそこは特に虫が少なかったね」
 最後にトートーが皆に応えました。
「いい感じだったよ」
「これはあれだね」
 先生は気付いたお顔になって言いました。
「鴨とかを使ってるの?」
「鴨?」
「鴨っていうと?」
「うん、日本でよく行われている農法でね」
 先生は皆にお話しました。
「アイガモを田んぼに放って害虫を食べてもらうんだ」
「あっ、鴨は虫を食べるから」
「その鴨に害虫駆除をしてもらうんだ」
「そうしたやり方があるね」
「そうよね」
「いいやり方だよ」
「そう、だからね」
 それでと言う先生でした。
「皆そうしてるんだよ」
「成程ね」
「面白い農法だね」
「日本の田んぼは水田だしね」
「鴨は水辺にいるしね」
「丁度いいわね」
「そこまで考えてなんだ」
 それでというのです。
「日本ではアイガモ農法をしているんだ」
「そういえば結構見るかな」
「日本のあちこちで」
「田んぼとかに鴨がいるのは」
「そういえば」
「そう、あれはね」
 まさにというのです。
「そのアイガモ農法だよ。あと育った鴨はね」
「ああ、食べるのね」
「害虫を食べてもらってそれで育てて」
「食べもする」
「そうするの」
「そうなんだ、まあ食べるのも日本人らしいかな」
 ちょっと動物愛護団体がどう言うかとか家鴨なのでアイガモとは親戚みたいなダブダブのことを思いつつ言う先生でした。
「このことも」
「結構以上に色々食べる人達だしね、日本人って」
「お魚もお肉もね」
「それで鳥だって」
「凄く色々食べるから」
「お野菜も果物もだしね」
 農作物、今自分達が見ているもののお話もする先生でした。
「そうだしね」
「それで鳥もで」
「アイガモも食べるから」
「それでなんだ」
「アイガモ農法のアイガモも食べるんだ」
「そういえばトミーも結構買ってきてるね、アイガモのお肉」
「王子も食べてるし」
 皆でアイガモのことをさらにお話していきます。
「そういえば」
「そうよね」
「じゃあね」
「そうしたことも考えてだね」
「アイガモ農法をやっているんだ」
「そうだよ、それでね」
 さらにお話をする先生でした。
「おそらくここでもやっているんだ」
「アイガモに虫を食べさせているんだ」
「そうしてるのね」
「だから虫も少ないの」
「そうなの」
「そうだと思うよ、合理的だしね」
 こうもお話した先生でした。
「鴨とかに虫を食べてもらうとね」
「餌にもなるしね」
「それで害虫も駆除出来るし」
「しかもその分農薬を使わなくても済むし」
「確かにいいわね」
「うん、だからね」
 こう言うのでした。
「これはいいやり方だよ」
「イギリスでもね」
「やれるならどんどんやったらいいね」
「農薬よりも食べてもらう」
「そうすればいいわね」
「うん、あと日本の田んぼはね」
 水田のお話をさらにするのでした。
「たにしや泥鰌、ザリガニもいるよね」
「ザリガニは田んぼを荒らすから困るらしいけれど」
「確かにいるね」
「この大学ザリガニの養殖もしてるけれど」
「そうした生きものもね」
「こうした生きものは食べることも出来るからね」
 たにしや泥鰌達もというのです。
「動物性蛋白質でもあるんだよ」
「成程ね」
「ただお米が採れるだけじゃないんだね」
「そうしたものも獲れるから」
「アイガモを育てられるだけじゃなくて」
「そうしたこともいいんだ」
 そうだというのです。
「水田はね」
「成程ね」
「そうしたことでもいいんだ」
「水田って凄いね」
「日本でお米はここから採れるけれど」
「僕もそう思うよ、しかしアイガモ農法はね」
 この農法についてまた言う先生でした。
「面白いね」
「そうだよね」
「餌にもなって害虫駆除にもなって」
「しかも食べられる」
「幾つもの意味でいい農法だね」
「そうだね」
「アイガモがお米を食べない様にしないといけなかったり他に餌も必要で農薬を使うことが難しくなることもあるけれど」
 田んぼに農薬を使うトアイガモに影響が出かねないからです。
「これもいいよ」
「そうだよね」
「ううん、じゃあね」
「こうしたことをしていけば」
「かなりいい?」
「農業は」
「そうだね、しかし日本はね」
 この国の農法のことをさらにお話する先生でした。
「農業でも面白いね」
「そうだね、色々やるよね」
「自給率が低いとか言われてたけれど」
「実際は違うみたいだし」
「実は農業大国でもあって」
「そちらでも面白い国よね」
「そうだね、この分野でもね」
 本当にという先生でした。
「面白い国だよ」
「というかね」
「日本の農業って凄いよ」
「いい作物どんどん作ってるし」
「お肉だってそうで」
「乳製品もね」
「日本のチーズは美味しいよ」
 先生ははっきりと言い切りました。
「それもかなりね」
「そうそう、欧州に負けてないよ」
「バターにしてもね」
「ヨーグルトも」
「そうだよ、日本人も長い間気付いていなかったけれど」
 それでも現実はというのです。
「実は日本は農業大国でもあってね」
「何か世界でも五番目位の」
「それ位だっていうね」
「それ凄いね」
「そうだよね」
「日本はそこでも」
「そうなんだ、しかしこの苺は」 
 あらためて苺を見て言う先生でした。
「美味しそうだね」
「そのまま食べてもね」
「そしてお菓子にしても」
「ケーキとかね」
「そっちにしてもよさそうだね」
「うん、見ているだけで」
 こうも言った先生でした。
「食べたくなるよ」
「そうそう、ジュースにしてもいいよ」
「物凄く甘いジュース飲めるよ」
「何かこうして見てると」
「苺食べたくなるね」
「そうなるね」
「そうだね、じゃあトミーに連絡して」
 そしてと言う先生でした。
「苺も買ってもらおうかな」
「そしてだね」
「その苺を皆で食べて」
「そうしてね」
「美味しい思いをしようね」
 皆も笑顔で応えます。
「今日のデザートはこれね」
「苺だね」
「苺を食べてね」
「それで楽しもう」
「そうしようね」
 先生も自然と笑顔になっています、そうしてでした。
 皆で農学部を後にしますがその先生達の近くに今度は鶏達が小屋の外の囲われている場所に出て動いていましたが。
 その彼等を見てです、先生はこうも言いました。
「そうそう、鶏君達もね」
「虫食べるわね」
「色々と」
「そうしてるわね」
「そうなんだよね、穀物も食べるけれど」
 その他にというのです。
「虫も食べるんだよね」
「鳥の多くの種類がそうだね」
「虫好きよね」
「害虫も食べるよ」
「そうね」
「だから彼等もね」
 鶏達もというのです。
「時々下をついばんだりしてるね」
「そこにいる虫食べてるのね」
「そうしてるんだね」
「ダブダブは食べないけれど」
 ダブダブは皆と同じものを食べているので虫を食べることはしません、そこは他の家鴨とは違います。
「それでもね」
「鶏は虫も食べるし」
「それも好物で」
「今だって食べてるね」
「そうだね、害虫も食べてくれるし」
「いいよね」
「そうした農法も」
「うん、とてもね」
 実際にと言う先生でした。
「いいと思うよ」
「今日はいいもの見たね」
「本当にそうだね」
「じゃあ今日のことを覚えておいて」
「そうして今後にだね」
「うん、僕の学問にも生かしていくよ」
 是非にと言う先生でした、そしてトミーにお願いして買ってもらった苺をお家でみんなで食べてみて言うのでした。
「うん、この苺もね」
「美味しいね」
「甘酸っぱくてね」
「こんないい苺もね」
「日本ならではだよね」
「全くだよ」
 笑顔で皆に応えて言う先生でした。
「日本のお百姓さんが作ってくれた最高の苺だよ」
「本当にね」
「それじゃあね」
「この苺も食べて」
「そうしてね」
「明日も頑張りましょう」
「是非ね」
「そうしようね」
 先生も笑顔で応えてです、そうしてでした。
 皆で苺も楽しみました、ただこの時先生はこの日のことが思わぬヒントになることは思っていませんでした。



植物園の園長からの相談。
美姫 「虫の事みたいね」
先生はどう対応するのか。
美姫 「次回も待っていますね」
ではでは。



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