『ドリトル先生と沖縄の蛇達』




                 第十二幕  さらば沖縄

 沖縄を発つ日となりました、先生は空港に向かいますがその途中どうにも浮かないお顔です、見送りで同行している安座間さんと真喜志さんもです。 
 その先生のお顔を見てです、こう言いました。
「奄美大島に行かれる時もでしたね」
「先生飛行機は苦手でしたね」
「はい、どうにも」
 先生のお顔は少し苦笑いでした。
「ですから」
「ですが先生」
 ここで真喜志さんが言うことはといいますと。
「船も結局は」
「同じですね」
「はい、板下一枚はといいますね」
「歌舞伎の言葉でしたね」 
 先生は真喜志さんに返しました。
「白浪五人男の」
「そうです、ですから」
「それはそうなのですが」
「飛行機は、ですか」
「船はまだ沈んでも海に浮かぶことが出来ますし」
「泳ぐことも出来るからですね」
「はい、まだ」
 先生は泳ぐことは出来ます。
「ですから」
「安心出来ていますか」
「はい、しかし」
「それでもですか」
「飛行機は墜落したら終わりなので」 
 だからというのです。
「どうしてもです」
「抵抗がありますか」
「少しは慣れましたが」
 それでもというのです。
「抵抗が残っています」
「やはりそうですか」
「どうしても」
 こうお話をするのでした。ですが安座間さんも先生に言います。
「では飛行機に乗られている間は」
「本を読むなりですね」
「食事等を楽しまれて」
「はい、実際そうしてです」
「気を紛らせておられますか」
「そうしています」
 実際にというのです。
「今回もそのつもりです」
「そうですか」
「本を読んでいますと」
 読書家でもある先生ならではのお言葉です。
「それだけで」
「気が、ですね」
「晴れます」
「それではです」
「はい、本を読んで」
「過ごされて下さい」
「そうさせてもらいます」 
 安座間さんにもこう言いました、そして。
 動物達はです、こんなことを言いました。
「沖縄楽しかったね」
「ずっといたい位にね」
「いい場所だよね」
「食べものは美味しくて景色もよくて」
「独特の文化や生きもので」
「凄くいい場所だったわ」
 こう言うのでした、安座間さん達は彼等の言葉はわかりませんが。その皆を見て生きものということからヒヤンやハイ達のことを思い出して言いました。
「そういえばですが」
「はい、何か」
「ヒヤンやハイ達ですが」
 その彼等はというのです。
「これからもです」
「動物園で、ですね」
「幸せに過ごしますので」
「そしてそこで」
「生態をさらに研究されて」
「繁殖もですね」
「行われます」
 そうしたこともというのです。
「しっかりとした保護が行われます」
「素晴らしいことですね」
「全くです、本当に」
「動物の保護は」
「忘れてはなりません」
 絶対にというのです。
「稀少な生物は特に」
「絶滅しない様に」
「細心の注意が必要ですが」
「ヒヤンやハイ達もですね」
「そうです、沖縄には珍しい生きものが多いので」
 先生も今回のことであらためて認識したことです、沖縄は珍しい生きものが本当に一杯いる地域でもあるのです。
「こうしたことにも力を入れないと」
「駄目ですね」
「はい、ですから」
「ヒヤンやハイについても」
「そうです、今回のことで」
 まさにというのです。
「かなり助かりました」
「よかったですね」
「先生のお陰です」
 ヒヤンやハイ達を保護出来たことはというのです。
「まことに」
「いえ、僕は全く」
「何もですか」
「していません」
「ですが先生がおられないと」
 安座間さんは自分の功績を功績と思わない先生にお話します。
「本当にです」
「ここまではですか」
「出来ていませんでした」
 そうだったというのです。
「まことに」
「その通りですよ、先生がおられなかったら」
 真喜志さんも先生にお話します、空港に向かいつつ。
「今回のことはここまでスムーズに進んでいませんでした」
「そうでしたか」
「有り難うございます」
 二人で先生にお礼を言いました。
「今回は」
「そう言って頂けると何よりです」
「今度沖縄に来られたら」
 ふとこんなことも言った安座間さんでした。
「ご一緒に海も行きたいですね」
「そうですね、その時はビーチでティータイムを楽しみましょう」
「そうしましょう、そして一緒に泳いだり」
「僕は泳げますが積極的にお水に入ることは」
「されないですか」
「水着も持っていないので」
 水泳はしないというのです。
「スーツのままでいいでしょうか」
「はい、それでも」
 一緒に泳ごうとお誘いをかけたことは空振りで。安座間さんは残念に思いました。
 ですがそれでもです、気を取り直して言うのでした。
「お願いします」
「それでは」
 明るくお話をしてでした、先生達は。
 空港に着くと笑顔で手を振り合ってお別れをしました、先生は飛行機に乗っている間は実際に本を読むことに集中してです。
 苦手な飛行機での時間をやり過ごしました、そのうえで。
 大阪の新国際空港に着いてです、飛行機から降りて動物の皆と合流して言うのでした。
「いや、ここまでね」
「長い旅だったね」
「長く楽しい旅」
「それだったね」
「そうだったね」 
 実際にと答えた先生でした。
「今回の旅もね」
「うん、沖縄よかったよ」
「また行きたいね」
「そして色々なものを観て」
「色々なことも学びたいね」
「僕もそう思うよ、ここで思うことは」
 それは何かといいますと。
「また沖縄に行きたい、だね」
「まさに」
「そうなんだね」
「僕達もそう思うよ」
「またね」
「そうだね、それとね」 
 ここでこんなことをお話した先生でした。
「僕達はこれから大阪に入るけれど」
「それがどうかしたの?」
「大阪に入ることが」
「どうかしたの?」
「実は大阪には沖縄から移住した人が多いんだ」
 皆にこのこともお話するのでした。
「あの街にはね」
「へえ、そうだったんだ」
「沖縄から来てる人が多いんだ」
「そうだったんだ」
「そうだよ」
 実際にというのです。
「あの街は」
「意外だね」
「そうした街だったなんて」
「いや、ちょっとね」
「私達知らなかったわ」
「大阪はって」
「うん、だから大阪にはね」
 この街にはというのです。
「沖縄文化も結構見られるんだ」
「じゃあ沖縄料理も」
「あれも食べられるんだね」
「そうなんだね」
「そうだよ、そちらのお料理もね」
 大阪にはというのです。
「あるからね」
「じゃあ沖縄料理を食べたくなったら」
「大阪に行けばいいんだね」
「沖縄に行けなくても」
「僕達は」
「そうだよ、神戸から沖縄はすぐだからね」
 まさに目と鼻の先です。
「沖縄料理を食べたくなったら」
「その時は」
「すぐに」
「そうだよ」
「何かね」
「そうだよね」
 オシツオサレツが二つの頭で言います、自分同士でお話をして。
「すぐそこにも沖縄があるって」
「嬉しいね」
「うん、それじゃあね」
「大阪にも行きましょう」
 チープサイドの家族もお話をします。
「沖縄料理を食べたくなったら」
「その時は」
「八条学園にも沖縄料理は一杯あるし」 
 ダブダブはこのことを言いました。
「学校に行ってもいいね」
「八条学園は本当に世界中のお料理が集まっていて」 
 チーチーも言います。
「南国の果物まであってね」
「沖縄の果物も美味しかったわ」
 ポリネシアはその味を思い出しています。
「凄くね」
「そうしたものも食べられるし」
 トートーの言葉です。
「学園では」
「あの学園は何でもあるわね」 
 ガブガブはこのことを有り難く思っています。
「本当に」
「そして大阪も」
 ホワイティはこの街に注目しています。
「そうなんだね」
「じゃあ大阪も学園も」
 ジップはどちらにも言いました。
「行けばいいね」
「行きたい場所に行って」 
 最後に老馬が言います。
「沖縄を楽しもう」
「そうしようね、やっぱり本場が一番にしても」
 それでもと言う先生でした。
「大阪や学校でもね」
「沖縄を楽しもうね」
「動物園にも沖縄の動物がいるし」
「ハブとかヤンバルクイナとかアマミノクロウサギとか」
「植物園にもあるしね、沖縄の植物」
「水族館にもいるしね」
 沖縄の海の生物達がです、こうしたお話もしてでした。
 先生達は空港から電車に乗って大阪に入ってそのうえで神戸に戻りました、久し振りに戻った我が家はとても懐かしい感じがしました。
 トミーが迎えてくれて先生達のお話を聞いて言いました。居間でお茶を飲みながら。
「よかったですね、ただ」
「ただ?」
「沖縄にはそんな蛇もいるんですね」
「ヒヤンやハイだね」
「そうした種類の蛇達も」
「案外知られていないみたいだね」
 先生はトミーに答ました。
「彼等は」
「僕も知りませんでした」
「珍しい蛇っていうのはね」
「お話してくれた通りですね」
「そうだよ、ヒヤンは赤くてね」
「それでニジヘビともいうんですね」
「オキナワニジヘビとね」
 この名前だというのです。
「またの名を言うんだよ」
「そうですか」
「それでね」
「個体数が少なくて」
「地元でも見た人が少ない位だから」
「僕が知らなくても」
「それもまた普通だよ」 
 とにかく珍しい蛇だというのです。
「動物図鑑でも爬虫類の専門の図鑑でないと」
「そうそうは、ですか」
「載っていないかもね」
「それも凄いですね」
「そうした蛇だよ」
 ヒヤンやハイ達はというのです。
「トミーが知らなくても道理だよ」
「別に気にすることはないですか」
「そうだよ、彼等に会えて保護も出来たし」
「本当によかったですね」
「全くだよ、最高の旅だったよ」
「それは何よりです、ただ」
「ただ?」
「学問のことはいいですが」
 勿論旅行のこともです。
「何かそれだけですか」
「安座間さん、真喜志さんというお友達も出来たよ」
「お友達ですか」
「そうだよ、お友達だよ」
 あくまでこうとしか認識していない先生です。
「それが何か」
「わかりました」
 トミーはここまで聞いてよく認識しました、この人も動物の皆と同じ認識を持ちました。先生とは違うそれを。
「そういうことですか」
「?そういうことって」
「いえ、先生が春に気付かれるのは」
 このことはとです、苦笑いで言うのでした。
「先ですね」
「春って」
「はい、春に」
「沖縄は常夏だよ」
「そういうのじゃないですから」 
 苦笑いがさらに強くなりました。
「まあそういうことで」
「言ってる意味がわからないけれど」
「先生だけはね」
「そうだよね」
「全く、本当に」
「どうしたものかしら」
 動物の皆もやれやれです、ですが。 
 トミーは先生のお土産のちんすこうを食べてこちらについては苦笑いではなく素直に言うことが出来ました。
「美味しいですね」
「そうそう、沖縄のお菓子でね」
「甘くて」
「お茶にも会ってね」
「凄くいいですね」
「どんどん食べてね」
 先生ご自身も食べつつトミーに応えます。
「王子や日笠さんにも送ってるけれど」
「そうですか」
「お付き合いのある人達にはね」
「それは何よりです」
「いや、ちんすこうはね」
 本当にとです、先生も言います。
「美味しいね」
「沖縄はお菓子も美味しいってことですね」
「まさにね、甘いものもね」 
 そちらもというのです。
「最高だったよ」
「とにかく何でもですね」
「うん、楽しんできたよ」
 こうトミーにお話します。
「何かとね」
「それは何よりです、本場の沖縄料理もですね」
「堪能してきたよ」
「お酒も含めて」
「カレーもね」
 そちらもというのです。
「よかったよ」
「日本にいますと」
 カレーと聞いてです、トミーは先生に言いました。
「何処でもカレーのお店がありますね」
「そうそう、本当にね」
「何処にでもあって」
「食べられるね」
「どのお家でも作りますし」
「カレーはね」
 日本ではとです、先生もトミーに応えます。
「日本人の国民食だね」
「イギリスでもよく食べますけれど」
「日本はそれ以上にだね」
「色々なカレーもあって」
「いいね、それじゃあ今日は」
「晩御飯ですね」
「カレーでどうかな」 
 先生は微笑んでトミーに提案しました。
「オムライスにルーをかけて」
「オムライスはチキンライスじゃなくて」
「そう、ドライカレーにしてね」
 そのドライカレーを薄いオムレツの生地で包んで、です。
「そしてね」
「ルーをかけるんですね」
「どうかな」
「いいですね」 
 トミーも先生の提案に笑顔で応えます。
「それじゃあ」
「うん、それでね」
「晩御飯は決まりですね」
「そうしようね」
「何か先生もね」
「そうだよね」 
 動物の皆もここでお話をしました。
「カレー好きだよね」
「よく食べるよね」
「日本に来てさらにね」
「そうなったね」
「うん、日本に来てからね」
 実際にとです、先生も答えます。
「カレーをよく食べるようになったね」
「カツカレーとか海老フライカレーもね」
「あとハンバーグカレーも好きだし」
「ソーセージやベーコンのカレーもね」
「よく食べるね」
「シーフードカレーも」
「それと野菜カレーも」 
 とかくカレーならです、先生は。
「とてもね」
「先生カレー好きだね」
「色々なカレーが」
「そうだよ、好きだよ」
 まさにというのです、そしてです。
 先生はこの夜もカレーを食べることになりました、トミーはそのカレーの付け合わせにゴーヤのお浸しを出しましたが。
 そのゴーヤを見てです、先生が言いました。
「ゴーヤね、これがね」
「そうそう沖縄のね」
「代表的なお野菜なのよね」
 チープサイドの家族も言います。
「あっちでも食べたけれど」
「沖縄はこれね」
「思い出すね」
 ジップの尻尾は横に振られています。
「沖縄にいた時を」
「うん、ゴーヤも結構食べたね」
 トートーはゴーヤの味自体を思い出しています。
「苦くて独特の美味しさがあるんだよね」
「イボがまたね」 
 ポリネシアはゴーヤのそのイボを見ています。
「食欲をそそるのよね」
「見ているとね」
 ホワイティもゴーヤのイボを見ています。
「美味しさを思い出すんだよね」
「そうそう、ゴーヤ自体のね」
 チーチーも言います。
「その美味しさを」
「ゴーヤを見るとその味を思い出す」
 まさにとです、ポリネシアはゴーヤの緑色も見ています。
「深い緑まで素敵ね」
「素敵というか」
 老馬もゴーヤを見ています。
「もうゴーヤ料理を思い出して仕方ないよ」
「そうそう、ゴーヤを見てるとね」
「ゴーヤチャンプルとか思い出すね」
 オシツオサレツも沖縄の味の思い出に浸っています。
「あれは美味しかったね」
「このお浸りもよさげだけれどね」
「じゃあこのお浸しもね」
 ダブダブはもう食べたくて仕方ない感じです。
「食べようね」
「うん、是非ね」
 先生も皆に笑顔で応えます。
「食べようね」
「そう言うと思いまして」
 それでとです、トミーも言いました。
「ゴーヤを用意してたんですよ」
「そうだったんだ」
「はい、日本ではカレーにらっきょか福神漬けですが」
「そこをあえてだね」
「ゴーヤのお浸しにしました」
「沖縄の思い出を思い出す様に」
「いい思い出を」
 まさにそれをというのです。
「それで用意したんです」
「有り難う、気遣ってくれて」
「いえいえ、けれどまた行く機会がありますね」
「多分ね」 
 この辺りは今一つわからないという返事です。
「そうなると思うよ」
「そうですか」
「うん、また学会かお呼びがあれば」
「その時はですね」
「行くことになるよ」
「そうですね、それじゃあ」
 ここでまた言ったトミーでした。
「今度行かれたら」
「今度?」
「いえ、沖縄の海には」
 そこにはというのです。
「海底遺跡があるとか」
「神殿みたいなだね」
「先生はそちらの学問もされていますね」
「世間で不思議と言われることについてね」
「そうですよね」
「今度はだね」
「そこに行こうかと」
 こんなことを言ったのでした。
「思いませんでした?」
「ううん、そこまではね」
「思われていないですか」
「機会があればだけれど」
「海の底にはですか」
「スキューバダイビングが出来ないと無理ですね」
「そうなんだよね、海の底だから」
 その海底遺跡に行くにはです。
「無理なんだよ」
「そこが難しいですね」
「そうだよ、行くにしても」
 それでもというのです。
「僕の場合潜水艇じゃないとね」
「自由にはですね」
「行くことは難しいよ」
「それじゃあ」
「うん、潜水艇があれば」
 心から言う先生でした。
「有り難いね」
「学問にはですね」
「その場に行くことも必要だけれど」
 それでもというのです。
「海の底となると」
「スキューバが大事で」
「そこが無理なんだ」
「そうですね、じゃあ」
「潜水艇がないと」 
 先生は困ったお顔で言いました。
「あそこに興味がないと言うと嘘になるけれどね」
「じゃあ出来たら」
「行きたいね」 
 こう言ってでした、先生はカレーを食べました。そして。
 そのうえで、です。また言ったのでした。
「沖縄はそうしたところもね」
「いい場所ですね」
「不思議なところもあって、そして」
「だからこそですね」
「また行きたいよ」
「そうですね、ただ」
 ここでトミーは先生に尋ねました。
「一つ思うことは」
「ただ?」
「海底遺跡は実際何なんでしょう」
「うん、かつては地上にあったね」
 それでというのです。
「今は海の中に沈んだ」
「そうしたですね」
「そうした場所だという説もあるし」
「ただ海の潮とかで、ですね」
「ああした形に自然となった」
「そうした説もありますね」
「そこは諸説あるんだ」
 実際にというのです。
「そこは色々とあるんだ、それでもね」
「そこをですね」
「確かめることが学問だからね」
「それで、ですね」
「調べることは必要だよ」 
 海底遺跡にしてもです。
「不思議というのは事実がわかっていないという意味でもあるから」
「それじゃあ」
「そう、そこを確かめることも」
 まさにというのです。
「したいね」
「そういうことですね」
「うん、日本本土にもそうした場所はあるね」
「そういえばそうですね」
「徐福という人のお墓もあるし」
「始皇帝の不老不死のお薬を探していた」
「あの人についてもね」
 秦の始皇帝に不老不死の霊薬を見付けて来ると言って海を渡った人です、伝説では日本に渡ったと言われています。
「調べたいしね」
「あの人は実際に日本に来たんでしょうか」
「そうみたいだけれど」
「それでもですか」
「まだ真実はわかっていないよ」
「そうですよね」
「ただ、彼が日本に来ていた可能性はね」
 それはといいますと。
「高いね」
「東の海を渡ったから」
「そうも言われているよ」
「確か和歌山の方にお墓がありましたっけ」
「あの辺りに移住してそこで色々な技術を伝えたという伝説があるよ」
「成程」
「和歌山にも面白い場所があるからね」
 その徐福が入ったと言われている場所もです。
「高野山にしても」
「ああ、あそこですね」
「あそこも凄い場所だよ」
 日本でもとりわけ有名なお寺がある場所です。
「あそこもね」
「詳しく見て回りたいね」
「そうですか、それと比叡山も」
「高野山と並ぶだね」
「名刹ですよね」
「そうだよ、本当に並ぶ存在だよ」  
 高野山と比叡山はというのです。
「だからね」
「どちらも詳しくですね」
「学びたいよ、それじゃあ」
 ここで、でした。先生は。
 カレーを一口食べてそれからまた言いました。
「沖縄については」
「機会があれば」
「海底遺跡にも行きたいね」
「潜水艇本当に必要かも知れないですね」
「そうかもね」
 こうしたお話をカレーとゴーヤのお浸しを食べつつ楽しくするのでした、先生は次の日から学校に復帰して教授としてのお仕事を再開してです。
 日笠さんともお話をしました、日笠さんはヒヤンやハイのお話を聞いて驚いて言いました。
「本当にどの種類も二十匹以上ですか」
「はい、つがいで」
「そうですか、動物園に連れて行くことが出来ましたか」
「来てもらって何よりです」
「凄いですね、ヒヤンやハイのことは私も聞いていましたけれど」
 それでもというのです。
「見掛けることすら滅多にないという」
「そうした蛇ですね」
「そのヒヤンやハイをですか」
「それだけ来てもらいました」
「では彼等を動物園で」
「保護して飼育が出来ます」
 先生は日笠さんに穏やかな声でお話しました。
「何よりです」
「先生のお手柄ですね」
「いえいえ、彼等が来てくれたので」
 それでというのです。
「僕は何もしていません」
「ですが先生がおられないと」
「いえいえ、先生が彼等とお話が出来たからです」
 日笠さんはにこにことして先生に言うのでした。
「全ては」
「だといいのですが」
「本当に先生は素晴らしい方です」
 こうしたことも言う日笠さんでした。
「あらためて思いました」
「それは言い過ぎですよ」
「そうは思いません」
 日笠さんは先生を心から褒めるのでした、先生はあくまで謙虚でそんなことはありませんと言いますが。
 ですが八条動物園の爬虫類のコーナーの人もこう言います。
「やがては我が動物園にもです」
「ヒヤンやハイがですか」
「来てくれるかも知れないです」
 こう先生にお話するのでした。
「勿論他の動物園にも」
「各地の動物園に」
「広まって」
「彼等の数がですね」
「増えます」
 そうなるというのです。
「嬉しいことに」
「そうですか」
「野生のヒヤンやハイはです」
 その彼等はといいますと。
「非常に個体数も少ないですが」
「飼育して保護をして」
「個体数を増やせます」
「種が守られますね」
「そうなりますので」
 だからこそというのです。
「今回のことはお手柄ですよ」
「そう日笠さんにも言ってもらいましたが」
「いえいえ、先生はです」
「実際にですか」
「このことは大きいです、まことに有り難うございます」
「そう言われますと」
 気恥ずかしくなる先生でした、ですが。
 爬虫類係の人はまたこう言いました。
「ですが」
「はい、やがては」
「この動物園にもです」
「ヒヤンやハイ達がですか」
「来る日になるかも知れません」
 こうしたことを笑顔で言うのでした、そうして。
 この人も先生を褒めるのでした、そうしたことをお話してでした。
 先生はお仕事の後は普通に過ごすのでした、そしてサラが来た時にヒヤンやハイのお話をするとサラはこんなことを言いました。
「そんな変わった蛇もいるのね」
「そうなんだよ」
「日本には」
「うん、面白いよね」
「そうね、珍しい蛇いて」
「他にもね」
 先生はサラにさらにお話します。
「ヤンバルクイナとかね」
「あとアマミノクロウサギ?」
「イリオモエヤマネコもいてね」
「その沖縄という場所には色々な珍しい生きものもいるのね」
「そうなんだよ」
「じゃあいい研究が出来たのね」
「楽しかったよ」
「そのことはわかったわ」
 サラは自分が今座っているちゃぶ台の向こう側にいる先生に対して答えました。
「よくね、ただね」
「ただ?」
「いや、沖縄って女の人はどうなの?」
「可愛い娘が一杯いるよ」 
 そうだとです、先生はサラに答えました。
「そうだったよ」
「それだけ?」
「それだけって?」
「だからそれだけ?」
 サラは先生の目を見て尋ねました。
「本当に」
「?どうしたのかな」
「だからそれだけなの?」
 サラはさらに尋ねます。
「兄さんは」
「何が言いたいのかな」
「そこで女の子に声をかけたりとかは」
「僕はそうしたことはしないよ」 
 何でそんなことをとです、先生は目を丸くさせて言いました。
「サラも知ってるよね」
「南国で解放的になってとか」
「だから僕はそうしたことは」
「全く、っていうのね」
「それがどうしたの?」
「あらためて言うわ」
 ここまで聞いてのサラの言葉は。
「やれやれよ」
「やれやれって」
「だからやれやれよ」
 またこう言うサラでした。
「全く」
「何か凄く呆れた言い方だけれど」
「呆れてるのよ」 
 実際にという返事でした。
「兄さんらしいけれど」
「いつもそんなことを言うね」
「それで日笠さんとは?」
「あの人のことかな」
「そうよ、あの人とはどうなの?」
「どうって。いつも通りだよ」
「お友達ってこと?」
「そうだよ」
 何でもないといった返事でした。
「というか他に何があるのかな」
「そこでそう言うのがアウトなのよ」
 呆れたお顔のままのサラでした。
「これじゃあ先が思いやられるわ」
「何をそんなに言うのかな」
「だからね、先生」
「安座間さんのこともあるし」
「特に日笠さん」
「そこで今も全く、っていうのがね」
「先生の駄目なところなの」
 動物の皆もここで先生に言います。
「サラさんの言う通りだから」
「またご主人のお仕事で来日してね」
「そのついでに先生に会いに来たのに」
「それでも何の進展もなし」
「それも全く」
「呆れるのも道理だよ」
「あのね、兄さん」
 また言うサラでした。
「男の人も女の人も顔じゃないの」
「心だよね」
「模範解答よ、じゃあね」
「僕はもてないよ」
「そこでそう言うのは不正解よ」 
 模範解答とは正反対だというのです。
「折角答えて百手満点中三十点とかは言わないけれど」
「それを言う先生は駄目な先生だね」
「生徒のやる気を削ぐね」
 そしてこうした先生程変に難しいテストを作ったり授業が遅れている遅れていると言うのです。生徒に教えるつもりではなく自己満足でやっているので。
「駄目な先生みたいには言わないけれど」
「それでもなんだね」
「今の返事は不正解よ」
「そうかな」
「そうよ」
 まさにというのです。
「兄さんはだから駄目なの」
「全然わからないけれど」
「もう既に答えは出ているわよ」
「人は顔じゃない」
「それよ」 
 まさにというのです。
「誰でもそうよ」
「ううん、僕は性格もね」
「駄目だ駄目だでは前に進まないでしょ」
「それはね」
「だったらよ」
 サラは先生の背中を言葉で押しました。
「自分に自信を持って」
「そのうえで」
「そう、このこともよ」
「もっと前向きになって」
「いくのよ、日本では」
 日本のことからもです、サラは先生にお話しました。
「源氏物語があるけれど」
「源氏の君だね」
「あの主人公とは違うけれど」
 先生がそうしたタイプでないこともです、サラは指摘しました。ですがそれと共に先生に対してこうも言ったのです。
「兄さんも駄目じゃないの」
「もてもてじゃないけれど?」
「少なくとも嫌われる人じゃないわよ」
「だとすれば有り難いね」
「有り難いなら」
 それならというのです。
「兄さんもね」
「もっとだね」
「そっちにも積極的によ」
「学問に対するみたいに」
「そういうことよ、急がなくてもいいけれど」
 先生がそうしたタイプではないこともわかっています。
「いいわね」
「自分を駄目と思わずに」
「積極的によ」
「何かそういうことは僕も」
「兄さん自身言ってるでしょ」
「学問についてはね」
「だったらよ」
 それならというのです。
「学問以外のこともそうで」
「恋愛もだね」
「駄目と思わないことよ、いつも学生さん達に言ってるみたいに」
 先生はいつもこう言って学生さん達を穏やかに励ましています、駄目だと無理だと思わずにまずやってみるべきだとです。失敗してもいいからと。
「絶対に兄さんもいい人に会えるから」
「サラみたいにだね」
「春は桜を見る時にはもうはじまってるわ」
「ああ、日本ではね」
「だったらよ」
「励んでだね」
「頑張るのよ」
「それじゃあ」
 先生も頷きますが、しかし。
 先生は前を向くと決めても言うのでした。
「駄目とはもう思わないけれど」
「それでも?」
「果たして僕はもてるのかな」
「気付かないだけよ、兄さんが」
 またこう言ったサラでした。
「ただそれだけのことよ」
「だといいけれど」
「とにかくそちらも頑張ってね」
 サラは先生が出してくれた沖縄のお茶を飲みつつ先生に言いました、常夏の沖縄から帰った先生に対して。
 そして王子とトミーもです、サラから言われたことを先生にお話してもらって先生に言いました
「その通りだね」
「僕もそう思います」
「自分を駄目って思わず」
「少しずつでも前に進んで下さいね」
「そちらの方もだよ」
「頑張って下さい」
「二人もそう言うね、僕はどうしても自分が女の人に人気があるとは思えないけれど」
 先生はどうしてもそうは思えないです。
「とりあえず駄目だとは思わないことにするよ」
「自信過剰と自信がないことは同じだよ」
 王子は先生に言いました。
「違う様でね」
「うん、実はそうなんだよね」
 先生もこのことはわかります。
「どちらも見えるべきものが見えなくなるからね」
「だからだよね」
「うん、適度な自信を持って」
「恋愛もだね」
「見ていくよ」
「そうしてね、とにかく沖縄から無事に帰って来られたし」
 王子は先生にこうも言いました、微笑んで。
「よかったよ」
「お疲れ様でした」
 トミーも言います、先生の周りにはいつも通り動物の皆がいます。大学の研究室でいつも通り仲良くしています。
「それじゃあ今日も」
「うん、学問を楽しくね」
「していきましょう」
「是非ね」
 笑顔で応えた先生でした、沖縄から帰った先生の学問はこの日も行われるのでした。


ドリトル先生と沖縄の蛇達   完


                        2016・9・12



沖縄での活動も終わって。
美姫 「無事に家へと帰った先生たち」
妹のサラや王子とお話を。
美姫 「例のよって先生の鈍感さが」
まあ、こればっかりは本当に仕方ないかな。
美姫 「本当にいつになったら、なのかしら」
ともあれ、今回も面白かったです。
美姫 「投稿ありがとうございました」



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