『ドリトル先生と沖縄の蛇達』




                 第九幕  ハイに会って

 先生達は森に向かいますがその途中で十時になってでした、森の中でティータイムとなりました。
 先生は安座間さんが出してくれたアイスミルクティーを飲みながら言いました、今日のティーセットはビスケットにシュークリーム、そしてオレンジです。
 そのオレンジを食べつつです、先生は真喜志さんに笑って言いました。
「暑い場所のオレンジはいいですね」
「はい、とても」
 真喜志さんもオレンジを食べながら先生に応えます。
「美味しいですね」
「そうですね、それとです」
「それと?」
「こうしたものもですね」
「持ってきていますので」
「お昼も三時のティーセットも持って来ていますので」
 安座間さんがにこりと笑って先生にお話しました。
「ご安心下さい」
「三時のものもですか」
「はい、今と同じお茶ですか」
「アイスミルクティーですね」
「それを持って来ています」
「有り難いですね」
「それと先生は」
 ここでまた言った安座間さんでした。
「アイスミルクティーも飲めるんですね」
「そうです」
 その通りという返事でした。
「日本に来てから」
「そうなったんですね」
「実はイギリスにいた時はミルクティーだけだったにしても」
「ほっとだけで」
「ホットミルクティーしか飲みませんでした」
 そうだったのです、かつての先生は。
「それが日本に来てから」
「こうしたお茶もですか」
「はい、飲む様になりました」
「他のお茶もですね」
「そうなりました」
 ミルクティーやお抹茶、中国のお茶もです。
「ロシアンティーも」
「ジャムを舐めながら飲む」
「あちらも飲む様になりました」
「それは何よりです、イギリスの方は」
「ホットミルクティーしかですね」
「飲まない方が多いので」
「冷たいものはです」
 ミルクティーでもです。
「飲まないですね」
「イギリスでは」
「はい、そうです」
「ですからどうかと思っていましたが」
「日本にいて変わったので」
「そういうことですね」
「そうです、それと」
 さらにお話する先生でした。
「今の僕は暑い時はです」
「冷たいものをですね」
「飲んでいます」
「そうですか」
「はい、そうです」
 その通りというのです。
「そうなりました」
「イギリスにおられた時と変わって」
「本当に変わりました」
 ご自身でも言うのでした。
「このことは」
「そうみたいですね」
「他のことも色々変わりました」
「お茶のこと以外も」
「こうしてスーツを着ることが常ですが」
 それでもというのです。
「家では作務衣を着ています」
「本土の服ですね」
「あのお坊さんが着る」
「はい、それを着ています」
 実際にというのです。
「そして浴衣も着る様になりました」
「それはまた変わられましたね」
「かなり」
「そして僕が住んでいた街には外国から来た人は少なくて」
 それでというのです。
「王子位しかイギリス人以外の知り合いは少なかったですが」
「今は、ですか」
「イギリス以外の国の人とも色々と」
「そうなったのですね」
「私達の様に」
「そうなりました」 
 実際にというのです。
「八条学園は世界中から人が来ていますので」
「そういえばそうですね」
 安座間さんは八条学園のこともお話しました。
「あちらは本当に世界中から留学生や先生が来ますね」
「僕もそうですし」 
 他ならない先生もです。
「そして世界中から人達とです」
「一緒にですね」
「楽しく過ごされていますね」
「はい、そうなりました」 
 先生はビスケットも食べながら笑顔でお話しました。
「嬉しいことに」
「それは何よりですね」
「本当に」
「全くです、それではお茶の後は」
「ハイにいる森にです」
「あちらに行きましょう」
 お二人は先生に明るく応えました、そのうえで。
 先生達は皆で、でした。ティータイムを楽しんででした。それから森に向けてあらためて出発しましたがその時にです。
 ふとです、先生に動物の皆が声をかけました。森に行く山道の中で。
「いよいよだね」
「ハイに会えるんだね」
「これから行く山の森に行くから」
「会えるよね」
「うん、会えるよ」 
 先生も皆に答えます。
「是非ね」
「そうだよね」
「いや、どんな蛇かな」
「会うのが楽しみだね」
「用心しないと」
 ここで言ったのはホワイティでした。
「駄目だね、蛇だから」
「どうしてもね」
「私達はね」
 チープサイドの家族もこう言います、彼等は蛇を天敵としている生きものなのでどうしても警戒しているのです。
「気をつけないとね」
「万が一ってあるから」
「その時は僕がいるから」
 蛇の天敵である梟のトートーの言葉です。
「安心してね」
「僕もいるよ」
 ジップです、犬も蛇には強いです。
「いつも通り僕の背中にいたらいいよ」
「ハイさん達に会う時はね」
 ポリネシアもホワイティ達に言います。
「そうしたらいいじゃない」
「僕達は蛇に会うことも多いから」
 チーチーはこれまでの経験からお話します。
「そうした時のいつもの通りでいいじゃない」
「むしろ十メートルとかある蛇じゃないから」 
 ダブダブは大蛇の方がというのです。
「安心していいよ」
「大蛇だともう先生がお話しないとね」 
 ガブガヴは動物をお話を出来る先生の特技に言及します。
「大変なことになりかねないわ」
「若し先生が動物とお話が出来なかったら」
「大変だった時は多いね」
 オシツオサレツはこの時のことを思い出しています。
「僕達ピンチも多かったから」
「これまでの旅でね」
「先生が動物の皆とお話が出来て学識と人格を備えているから」
 だからとです、老馬も言います。
「乗り越えたられたことも多かったね」
「僕がいたから」
「そうそう、先生が一緒にいなかったら」
「そう思う時も多かったよ」
「何かとね」
「先生がいてこそってね」
「僕は何も出来ないよ」
 先生は皆に笑ってお話しました。
「本当にね」
「いやいや、先生じゃないと」
「駄目だった時が幾つあったか」
「これまでのことを思うと」
「そうした場面これまで凄くあったよ」
「そうかな、僕は本当にね」
 自分ではこう思っている先生でした。
「皆がいないと何も出来ないから」
「それは家事や世の中のことだけで」
「学問のことなら先生だよ」
「それで先生の人格がね」
「いつも皆を助けてくれてるんだよ」
「そうだといいけれど」
 けれど自分ではそうは思っていない先生です、このとても謙虚な性格もまた先生の人格のいいところですが。
「僕が皆の役に立てているならね」
「うん、先生が一緒にいてこそだよ」
「本当に助かってるよ」
「ピンチの時はね」
「何かと」
「そして今回も」
「先生の特技が活きているね」
 動物とお話を出来るこの特技がです。
「波止場のハブの人達とお話をして」
「そしてね」
「行くことができるね」
「いよいよ」
「そうだね、さて」
 ここでまた言う先生でした。
「もうすぐその森に入るよ」
「いよいよ」
「そうなるね」
「うん、じゃあ行こうね」
 とても珍しい蛇に会えることにです、先生はうきうきとしています。その目はまるで小さな子供の様にきらきらとしています。
 お昼前に森に入りました、すると。
 先生はすぐにでした、傍にいた虫に尋ねました。
「ちょっといいかな」
「何かな」
「うん、ハイという蛇を探しているけれど」
 近くの木に停まっている虫に尋ねたのです。
「何処にいるかな」
「ああ、あの蛇さん達だね」
「知ってるんだね」
「僕あの蛇さんのうちの一匹と知り合いなんだ」
「あっ、そうだったんだ」
「よく会うんだ」 
 そうだというのです。
「この辺りに巣があってね」
「そのハイ君のだね」
「そうだよ」 
 こう先生に答えるのでした。
「それでハイさん達に用?」
「実は会いたくてね」
「それじゃあ」
 こうしてでした、虫さんは羽音を立てました。すると。
 一匹のハイが出てきました、安座間さんも真喜志さんもそのハイを見てびっくりしました。
「嘘、ハイが出て来たわ」
「探していたその蛇が」
「まさかもう会えるなんて」
「野生のハイなんてね」
「そうそう見られないのに」
「そうして見られるなんて」
 こうお話して驚いています、先生はその二人にお話をしました。
「僕が呼んでもらいました」
「あっそういえば今」
「虫とお話をしていましたね」
「だからですか」
「虫に呼んでもらったんですね」
「そうです」
 まさにその通りとです、先生は皆ににこりと笑ってお話しました。
「こうして」
「そうですか」
「いや、今回も先生の特技が活きましたね」
「お陰でもうです」
「ハイに会えました」
「何かこの人達凄く驚いてるね」
 事情を知らない虫はきょとんとして先生に尋ねました。
「どうしたの?」
「実は僕達の間ではハイ君達は珍しい蛇なんだ」
「あっ、そうなんだ」
「数がとても少なくてね」
「そういえばこの森でもハブさん達は多いけれど」
「ハイ君達は少ないね」
「そういえばそうかな」
 虫さんも言われて頷きます。
「ハイさん達はかなり少ないかな」
「この森でもね」
「確かにね、じゃあ僕はこれでね」
「他の場所に行くんだね」 
「そうさせてもらうよ」 
 こう言ってです、虫さんは枝から何処かに飛んでいきました。そして残ったハイはといいますと。
 先生達を見て何かと思っていましたが先生はそのハイにハブの言葉で声をかけました。
「いいかな」
「あっ、ひょっとしてドリトル先生?」
「うん、そうだよ」
 ハイにお顔を向けてにこりとお話します。
「僕のことを知ってるんだね」
「先生は有名人だからね」
 それでというのです。
「僕達もね」
「知ってるんだね」
「うん、知ってるよ」
 実際にというのです。
「この通りね」
「それは何よりだよ、実はね」
「実は?」
「君達に用があって来たんだ」
「僕達に」
「そう、ハイ君達にね」
 その彼等にというのです。
「用があって来てもらったんだ」
「用って」
「君達の中から十つがい、二十匹位移住してもらいたいんだ」
 そうだというのです。
「この森からね」
「移住って」
「他の場所に住んでもらいたいんだ、動物園でね」
「動物園?」
「狭いけれど天敵もいないよ、姿はよく見られるけれど」
「ううん、安全なんだ」
「それに場所も広い場所を用意しようと思えば可能な限り出来るから」
 先生はこうハイにお話します。
「安心していいよ」
「そうなんだ」
「とにかく安全だから」
「天敵がいなくて」
「あと雨も嵐もないよ」
「台風もだね」
「うん、一切ないよ」
 動物園にはです。
「このことは約束するよ」
「先生がだね」
「勿論僕が嘘を言っていると思っていいよ」
「いや、先生は絶対に嘘を言わない」
 ハイは先生にこう返しました。
「このことで有名な人だから」
「それじゃあ信じてくれるかな」
「うん、大丈夫だよ」
 笑顔で言った先生でした。
「そこはね」
「じゃあ」
「どうするかな」
「ううん、ちょっと皆を呼ぶね」
「他のハイ君達をだね」
「それで相談するから」
「じゃあそれで決まったら」
 先生はハイににこりと笑って応えました。
「宜しくね」
「じゃあ今から皆呼ぶから」
 ハイは彼等と先生だけがわかる声で皆を呼びました、すると森のあちこちから一杯ハイが出てきました。そのハイ達を見てです。
 安座間さんも真喜志さんも仰天してです、先生に言いました。
「あの、ここまでハイがいるとは」
「これだけの数を一度に見られるとは」
「なかったです」
「これまで」
「見ることすら稀なので」
「そうした蛇ですから」
 こう先生に言うのでした。
「いや、全く」
「よかったです」
「何よりです」
「本当に」
 二人でお話をするのでした、そして。
 ハイ達でお話をしました。
「動物園ねえ」
「狭いんだ」
「けれど安全なんだ」
「天敵がいないっていうね」
「雨も嵐もない」
「じゃあいい?」
「けれど森を離れるのは」
 生まれ育った森をというのです。
「それはちょっと」
「僕ここを離れたくないよ」
「私は動物園に行きたいけれど」
「最低で二十匹来て欲しいって言ってるね」
「十つがいで」
「じゃあ雄は十匹で」
「雌も十匹ね」
 ハイ達は鎌首をもやげてそうしてお話をします、そして。
 暫くお話をしてでした、先生に言いました。
「決まったよ、先生」
「動物園に移住したいっていう面子が」
「雄が十二匹、雌が十二匹」
「それだけだよ」
「そう、決まったんだね」
 そのお話を聞いて笑顔になった先生でした。その笑顔でハイ達に言います。
「じゃあ水槽を用意してあるから」
「そこに入って」
「そのうえで」
「これからだね」
「動物園に行くんだね」
「そうなるよ」
 実際にというのです。
「暫く時間がかかるけれどね」
「天敵がいないなら」
「それならね」
「雨も嵐もない」
「食べものにも困らない?」
「そうそう、食べものもね」
 こちらのこともお話した先生でした。
「困らないよ」
「よし、じゃあね」
「是非ね」
「行くよ」
「私達はね」
 その二十匹のハイ達が言います。
「その動物園に行くよ」
「先生がそう言うなら信じられるから」
「いい場所だってね」
「この森を離れることは辛いけれど」
「それでもね」
「うん、君達はその動物園に行って」
 そしてというのです。
「子供達とも一緒に過ごしてもらいたいんだ」
「動物園で」
「そうなの」
「実は君達に動物園に来てもらうには理由があるんだ」
 先生はハイ達にこのこともお話しました、隠すことは一切しないでそうして全てお話をするのが先生のやり方です。
「君達ハイは凄く数が少なくてね」
「そういえばそうだね」
「僕達よく言われるね」
「虫やハブさん達にも」
「何かと」
「実際にね」
 先生はさらにお話をします。
「いなくなるんじゃないかって心配されてもいて」
「だからなんだ」
「子供を作って欲しい」
「それで残って欲しいのね」
「僕達ハイという種族が」
「そうだよ」
 まさにその通りとです、先生はお話しました。
「だからいいね」
「うん、じゃあね」
「それじゃあね」
「僕達動物園に入ってね」
「そこで子供も作るね」
「後は代々」
「そうしてね、いや本当に」
 それこそとです、また言った先生でした。
「君達が来てくれて何よりだよ」
「そこまで喜んでくれるなんて」
「相当なことみたいだね」
「私達が動物園に行くことは」
「このこと自体が」
「君達の生活も見たいしね」
 動物園においてというのです。
「じゃあね」
「うん、色々とあるみたいだけれど」
「宜しくね」
「こちらこそ」
「何かと」
 動物園に行くことを決めたハイ達はそれぞれ先生に言ってそのうえで自分達から水槽に入って仲間とお別れをしてでした。
 動物園に向かうことになりました、その時に。
 真喜志さんは先生にです、こう言いました。
「お昼ですが」
「はい、今ですね」
「先生は決まった時間に召し上がられますよね」
「そうです」
 その通りとです、先生は真喜志さんに答えました。
「基本的には」
「そうですね、ですが」
「今がそのお昼で」
「ハイ達を早くヨットに連れて行きたいので」
 だからというのです。
「休んで食事は」
「それは、ですね」
「出来ないので」
「無作法ですが歩きながら食べるということで」 
 安座間さんも先生に言ってきました。
「宜しいでしょうか」
「それでは」
「お握りやサンドイッチがあります」
 ここで安座間さんは海苔に包まれた三角系のお握りを出しました、日本人なら誰もが好きそうなそれをです。
「如何でしょうか」
「お握りですか」
「先生もお好きでしょうか」
「大好物の一つです」
 先生は安座間さんににこりと笑って答えました。
「とてもいい食べものですね」
「それでは」
「はい、お握りを」
「どうぞ、動物の皆も」
 先生が連れている動物達も見ます、水槽は老馬の背中に固定されて乗せられていてとても安定しています。
「食べものを」
「それでは」
 動物の皆にもお握りやサンドイッチを手渡してでした。
 そしてです、皆で歩きながらお昼を食べます。
 その中で、です。先生は言うのでした。
「こうして歩きながら食べることは」
「先生殆どないよね」
「基本的にテーブルやちゃぶ台に座ってで」
「そうして食べるからね」
「歩きながら食べることは」
「先生は滅多にしないね」
「食事とか飲むことは座って食べる」
 先生は皆に答えました。
「イギリスではそこは厳しいからね」
「先生はお医者さんでね」
「それなりに立場があるからね」
「イギリスで立場がある人はね」
「そうしたお食事出来ないんだよね」
「そうだよ、マクドナルドみたいに立って食べることも」
 そうしたこともです。
「よくないんだよ」
「ましてや歩きながら」
「そうして食べることは」
「余計にだね」
「駄目だったんだね」
「うん、日本も礼儀に厳しい国だけれど」
 先生は皆にお握りを食べながらお話をします。
「こうしたことは比較的ね」
「何も言わないから」
「だからいいんだね」
「先生って呼ばれる人が食べても」
「それでも」
「そうだよ、いいんだよ」 
 日本ではと言う先生でした。
「気にしなくていいよ」
「うん、じゃあね」
「僕達もこうしてね」
「歩きながら食べようね」
「今回はね」
「そうしようね」
 動物の皆は先生に適度な大きさにしてもらってお口で受けながら食べています、そうして歩きながら食べて波止場に戻ります。
 その時にです、ふと。
 先生は皆にです、こんなことも言いました。
「ハイの皆が僕の言うことを信じてくれて嬉しいし」
「嬉しいし?」
「っていうと?」
「うん、その信頼には絶対に応えないとね」
 このことをお茶を飲みつつ言いました。
「やっぱり」
「信頼には応える、だね」
「何といっても」
「それが人として大事なことだから」
「絶対にそうしないといけないんだね」
「信頼を裏切ることは」
 このことはといいますと。
「僕はしたくないからね」
「よくないことだから」
「絶対にだよね」
「先生このことも気をつけてるよね」
「いつも」
「気をつけているんだ、日本でね」
 この国であったことをです、先生は動物の皆にお話しました。
「酷いお話があってね」
「酷い?」
「酷いっていうと?」
「どんなお話なの?」
「うん、日本のすぐ近くにとんでもない国があるよね」 
 このことからお話する先生でした。
「世襲制の独裁国家で軍隊と独裁者の贅沢にばかりお金を使って粛清と核兵器の開発に必死になっている」
「ああ、あの国だね」
「しょっちゅうテレビにで出てるね」
「何かと」
「悪いことばかりしてるね」
「酷い国だよね」
「昔その国に帰ろうっていう話があったんだ」
 先生は眉をとても曇らせて言いました。
「元々その国に国籍のある人がね」
「ああ、帰国だね」
「だから国に帰るんだね」
「そうなるんだね」
「うん、その時にあの国はとてもいい国だって」
 その軍隊や独裁者の贅沢にばかりお金をr使っている国がというのです。
「日本のマスコミや学校の先生や政治家の人が言っていたんだ」
「あの国が?」
「とてもいい国って?」
「そんなこと言ってたの?」
「粛清ばかりしていて食べるものが何もない」
「自由は一切ないんだよね」
「そんな国が?」 
 皆先生の言葉に首を傾げさせます。
「嘘だよね」
「全然いい国じゃないじゃない」
「自由にものが言えなくて」
「ちょっとしたことで家族全員収容所に連れて行かれて」
「酷い労働させられるんだよね」
「収容所からは生きて出られないっていうし」
「そんな国がいい国だなんて」 
 とてもというのです。
「有り得ないよ」
「そんなの絶対に嘘だよ」
「昔はどうだったか知らないけれど」
「昔から酷い国だったよ」
 実際にとです、先生は皆に答えました。
「あの国はね」
「やっぱりそうなんだ」
「昔から酷い国だったんだ」
「じゃあそんな国をいい国だって言って」
「帰ってもらっていたんだね」
「そして生きて日本に戻って来た人はね」
 それこそというのです。
「一人もいないよ」
「えっ、何それ」
「とんでもないことよ」
「いい国だって聞いて帰ったらとんでもない国で」
「生きて戻って来なかったって」
「詐欺よ」
「そんな酷いことないよ」
 動物の皆もこのことを聞いてびっくりしました。
「それで死んだ人多いだろうし」
「マスコミや政治家の人がそんなことしたら」
「もうどうしようもないよ」
「凄く悪いことだよ」
「僕もそう思うよ、こんなことはね」 
 先生としてもです、眉を曇らせて言いました。
「絶対にあってはならないことだよ」
「あんな国をいい国だって言って」
「それで帰ってもらって生きて帰って来なかったって」
「そんな酷い話があるなんて」
「日本にも」
「少年十字軍みたいな話だね」
 先生は十字軍で実際にあったことをお話しました、エルサレムを目指した子供達はその途中旅の厳しさで沢山死んでしかも皆最後は奴隷に売られたのです。
「これは」
「それと同じ位酷いお話だね」
「本当にね」
「その人達あの国のこと知ってたの?」
「知らないで言ってても酷いよ」
「知っていたと思うよ」
 あの国の実際の姿をです、その時からとんでもない独裁国家でものも何もない地上の楽園とは無縁の国家だとです。
「事実をね」
「それでそんなこと言ってたんだ」
「いい国だから帰って大丈夫だって」
「そうした風に」
「どうやらね、明らかに知っていたとしか思えない人もいたし」
 帰ろうと言っていた人達もです。
「そのうえでそう言ってたんだ」
「何かもうそれって」
「もうね」
 チープサイドの家族も唖然となっています。
「酷過ぎて」
「言葉もないわ」
「人間のすることじゃないね」 
 ダブダブもとても嫌そうな感じです。
「もうそれは」
「嘘を言ってそれで人が死んだら」
 ガブガブが言うには。
「最悪なことじゃない」
「犯罪にならなくても詐欺だよ」
 ジップも言います。
「そうしたことは」
「許されることじゃないわよ」
 ポリネシアも厳しい言葉で批判します。
「絶対に」
「そうしたことをしたら」
 絶対にとです、トートーも言います。
「普通は許されないけれど」
「何かそうした人とね」
 ホワイティが言うには。
「先生は全く違うね」
「先生はそんなことしないよ」
 チーチーは先生の性格をよく知っています、だからこそ言います。
「何があってもね」
「そんな人でない様なことは」
 老馬はこうまで言います。
「先生はしないから」
「そうそう、先生はね」
「そんなことをする人じゃないよ」
 オシツオサレツは二つの頭で断言します。
「例え何があっても」
「絶対にね」
「うん、僕もこの話を聞いてあんまりだと思ったから」
 だからだとです、先生も答えます。とても悲しいお顔になって。
「しない様にしたいよ」
「絶対に」
「何があっても」
「そうしたことは」
「しないに限るね」
「うん、さもないと」
 先生は真剣なお顔でお話をします。
「人でなくなる気がするから」
「ハイ君達にもだね」
「そんなことはしない」
「絶対になんだ」
「気を付けているよ」
 そこは絶対にとです、動物の皆に約束しました。
「そうしたことはね」
「知らなくて言っても許されないことだから」
「知っていてやっていたら余計に」
「だからだね」
「先生はしないんだね」
「誰に対してもね」
 今回のハイ達に対してした様にです。
「全部お話してね」
「真実をだね」
「そうして来てもらうんだね」
「先生は」
「そうするよ、本当にね」
 先生は自分にも誓っていました、こうしたことは人としてしてはならないこととだと自分自身にも強く誓いながら。
「しないよ」
「それが先生だね、ただそうしたことを言った人達って」
「あの国はいい国だって言って帰ってもらっていた人達は」
「このことで責任取ったの?」
「とても悪いことをしたけれど」
「責任取ったの?」
「うん、そんな人はいなかったね」
 それこそ一人もと答えた先生でした。
「あの国は拉致をやっていないって言った人もいたけれど」
「拉致やっていたしね」
「そうしたこともね」
「これも凄く悪いことだよね」
「許せないことだね」
「そう思うよ、けれどね」
 それでもというのです。
「その人達もなんだ、いい国だから帰っていいって言った人達と同じだったりするけれど」
「えっ、そうした人達一緒だったんだ」
「帰っていいって人達と拉致はないって言った人達は」
「一緒の人達だったんだ」
「そうだったんだ」
「うん、それでなんだ」
 だからというのです。
「そうしたことも言ってたんだ」
「人間として最低だね」
「何かもうね」
「許されない域を越えてるね」
「そこまでいくと」
「僕もそう思うからこそ」
 それ故にというのです。
「嘘はね」
「絶対に、なんだね」
「言わない様にしたい」
「事実を全部お話したうえで来てもらう」
「そうしているんだね」
「そうしているんだ、前からそうしているけれど」
 それでもというのです。
「日本に来てね」
「余計にだね」
「そうしたことに気をつける様にしている」
「そうなったんだね」
「そうだよ」
 実際にというのです。
「このことを知ってからね」
「何か本当に日本ってね」
「学校の先生とかマスコミに酷い人いるね」
「そうした人達が支持している政治家の人達も」
「とんでもない人がいるね」
「どんな嘘を吐いても平気な人が」
「そう、そうした人達を嫌うなら」
 それならというのです。
「間違っていると思うならね」
「絶対にだね」
「そんな人達みたいにはならない様にする」
「間違っていると思う人達と同じ人間にはならない」
「それが大事だね」
「そう思っているよ」 
 これもまた先生の考えです。
「そんな人になったらいけないよ」
「そう考えてこそ先生だよ」
「そして実際にそうしてこそ」
「だからこそ皆先生が好きだしね」
「間違っていることはしてはいけないってわかってるし」
「嘘は言わないしね」 
 先生は誰に対しても誠実です。
「騙すこともしないからね」
「そうしている様に気をつけているよ」
 先生は皆に言いました、そして。
 またお握りを食べてです、今度言うことはといいますと。
「しかしね」
「しかし?」
「しかしっていうと?」
「今度はどうしたの?」
「一体」
「いや、お握りはね」
 こちらのお話でした。
「こうした時に食べてもいいね」
「美味しいよね」
「サンドイッチも美味しいけれど」
「お握りもね」
 動物の皆も言います。
「いいよね」
「というか日本にいるとね」
「お握りが一番美味しいね」
「沖縄でもお米だからね」 
 主食はそちらです。
「お握りが美味しいね」
「そうだよね」
「ここで食べてもね」
 森の中で食べてもです、それも歩きながら。
「美味しいね」
「とてもね」
「何か爽やかな感じもして」
「飽きないよ」
「日本に来て知った味の一つだよ」
 お握りもまた然りです、先生はイギリスではお寿司は知っていてもお握りは見たことも聞いたこともありませんでした。
ですが今ではなのです。
「この味はね」
「とてもいいよね」
「むしろパンよりもいいかも」
「サンドイッチよりも」
「そちらも決して悪くないけれど」
 サンドイッチもです、先生は否定しませんでした。
 ですがそれでもです、今はお握りを食べて言うのでした。
「今はね」
「お握りだね」
「こちらだね」
「全くだよ」
 こう言うのでした。
「沖縄でもね」
「そういえば真喜志さんも安座間さんもね」
「美味しく食べてるね」
「お二人共ね」
「それも凄く」
「そうだね、お握りはね」
 沖縄でもというのです。
「日本で食べると何処でも美味しいね」
「日本以外ではね」
「何か違うんだよね」
「同じお握りを食べても」
「それでも」
「お米が違うからね」 
 ここからお話した先生でした。
「日本のお米はジャポニカ米だね」
「そうだよね」
「日本だけって言っていいよね」
「ジャポニカ米は」
「このお米は」
「大抵の国のお米はインディカ米なんだ」
 こちらのお米になります、日本以外の殆どの国では。
「こちらのお米で作るお握りは違うんだ」
「どう違うのかだね」
「このことについても」
「そう、インディカ米は細長くて粘りが弱いんだ」
 これがインディカ米だというのです。
「ジャポニカ米は短くて粘りがあるんだ」
「ああ、粘りがあるからね」
「お握りにしてもいけるんだ」
「お握りは固まるから」
「だからジャポニカ米がいいんだね」
「そうだよ」
 その通りだというのです。
「お寿司もそうだけれどね」
「お米の質なんだ」
「粘り気のあるお米だね」
「それが合うのね」
「そうだよ、だから炒飯やピラフやカレーにはね」 
 こうしたお料理にはといいますと。
「インディか米がよくてね」
「お握りやお寿司にはジャポニカ米」
「こちらになるんだね」
「そうだよ、だから美味しいんだ」
 今食べているお握りもというのです。
「こうしてね」
「成程ね」
「お握りはお米によるんだね」
「そうなんだね」
「そうだよ、あと最近は」
 さらにお話をする先生でした。
「麦飯のお握りもあるね」
「ああ、白い御飯の中に麦を入れてね」
「そうして炊いた御飯だね」
「そこからお握りにした」
「それだね」
「これも美味しいんだよね」
 麦飯のお握りもというのです。
「コンビニで売っていたりするけれど」
「若芽とかチリメンが一緒に入っていてね」
「確かにあのお握りもいいよね」
「麦飯のお握りも」
「あちらもね」
「僕はあちらも好きだよ」 
 その麦飯のお握りもというのです。
「最近よく食べているよ」
「そうなのね」
「それじゃあまた今度ね」
「麦飯のお握りも食べましょう」
「そちらもね」
「そうしようね、それと」
 さらにお話をした先生でした。
「船に戻ったら出港して」
「本島に戻るね」
「そうなるね」
「そして明日は久米島に行って」
 明日のこともお話するのでした。
「そちらのハイともね」
「お話をして」
「来てもらうんだね」
「そうなるよ」 
 こう皆にお話しました。
「明日は明日でね」
「そうなんだね」
「明日もだね」
「またハイさん達と会って」
「来てもらうんだね」
「そうなるよ、そして動物園で」
 そちらでというのです。
「暮らしてもらうよ」
「そうなるね」
「ちゃんとお話をしたうえでね」
 そして納得してもらってです、先生は相手が誰であろうとペテンにかけることはありません。このことは明日も同じでした。



ハイに会う事が出来たようだな。
美姫 「先生がいるからね」
他の人たちは驚いていたけれどな。
美姫 「すんなりと動物園へ行く子たちも決まったし」
次は久米島に行くみたいだな。
美姫 「そっちでもすぐに見つかるかしらね」
どうなるのか、次回も待っています。
美姫 「待っていますね〜」



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