『ドリトル先生北海道に行く』




                 第四幕  日本の中の西洋

 先生達は王子が貸し切っている車両に乗せてもらって電車で函館から一気に小樽まで行きました。すると。
 その小樽の街を見てです、動物の皆はここでも驚いて言いました。
「何、この街」
「本当に日本!?」
「欧州の何処かの街!?」
「けれど欧州のどの街よりも奇麗で」
「こんな奇麗な街欧州の何処にもないよ」
「それこそ」
「この街はね」
 先生は息を呑む皆にお話します。
「明治維新の時に銀行を集めてね」
「そういえばね」
「何か銀行多いね」
「そうだよね」
「西洋風の建築のね」
「そして産業も興してね」
 その産業はといいますと。
「ガラスとかのね」
「それでなんだ」
「こうした街並になったんだ」
「それでなんだ」
「この街はこうした感じなんだ」
「西洋風の街なんだね」
「そうだよ、明治維新に入った西洋文化がね」
 まさにというのです。
「特に強く入って根付いた街なんだ」
「神戸以上にそれが強いね」
「どうやらね」
「この街はね」
「そうなんだね」
「そうだよ、だからね」
 先生もその街を見つつ言います。
「この街はこうした街なんだ」
「ううん、日本にいるのに」
「欧州にいるみたいだね」
「けれど欧州のどの国でもないわ」
「何か独特の西洋ね」
「日本人が見た西洋だよ」
 明治の頃の日本人がです。
「それがこの小樽なんだ」
「これで冬は、だよね」
 また王子が言ってきました。
「この街は雪に包まれるんだよね」
「そうだよ」
 先生は王子にも答えました。
「そうなるんだ」
「そうなったら余計に奇麗だろうね」
「雪に合っている街だね」
「うん、函館もそうだけれどね」
「北海道だからね」
「寒くて雪が多い場所の街だから」
「例え夏に来ていてもね」
 そして夏の街並みを見てもなのです。
「そう思えるんだ」
「そうなんだね」
「まあ冬に来たら」
 少し苦笑いになって言った先生でした。
「移動に苦労するよ」
「雪に邪魔されてだね」
「そう、それでね」
「そうだね、雪は奇麗でも」
「障害にもなるから」
 だからというのです。
「冬の小樽は辛いよ」
「北海道自体も」
「それに寒いからね」
「ううん、寒いとね」
 王子は寒いと聞いてこう言いました。
「夏でこれだけ涼しいとね」
「北海道の冬は凄いよ」
「イギリスみたいかな」
「そうだね、あれ位かな」
「神戸の冬でも辛いのに」
 王子にとってはです。
「そこまで寒いとね」
「もう嫌だよね」
「僕はアフリカ生まれだから」
 暑い場所で生まれ育ってきたのです、ですから王子は暑い場所は平気でも寒い場所になると逆に、なのです。
「だからね」
「それじゃあだね」
「うん、遠慮したいよ」
 冬の北海道はというのです。
「やっぱりね」
「そうだね、それじゃあね」
「夏に行くべきだね」
 今の季節にです。
「僕は」
「僕もそう思うよ」
「じゃあ今度来る時もね」
「夏にだね」
「行きたいね」
「それがいいね」
 先生もこう応えます。
「王子にとっても」
「それじゃあね」
「さて、それでだけれど」
 先生は西洋の趣の街を歩きつつ皆に言いました。
「この街を歩いてね」
「この街を歩いて」
「どうするの?」
「運河も歩こう」
 そこもというのです。
「この小樽のね」
「あっ、小樽は運河もありましたね」
 トミーは旅行前に勉強したことを思い出しました。
「それでその運河も」
「凄く奇麗と評判だからね」
「行ってですね」
「見よう」
 こう言うのでした。
「この煉瓦の街を見てからね」
「それじゃあ」
「しかしね」
 先生は街を見たままこうも言いました。
「日本で煉瓦の街並を見るとね」
「不思議な感じがするよね」
「何かね」
「場違いなのに」
「それでもね」
「妙に合っていて」
「それが不思議で」
 動物の皆も言います。
「合っていない様で合っている」
「それが不思議よ」
「煉瓦は西洋のものなのに」
「それが合ってるなんて」
「それもうね」
「信じられないよ」
「取り入れ方がいいんだね」 
 何故合っているのか、先生は考えて言いました。
「それでなんだよ」
「だからなんだ」
「日本人の西洋文化の取り入れ方が上手だから」
「それでなんだね」
「こんなに合っているんだ」
「日本に」
「そうだね、若しね」
 ここでこうも言った先生でした。
「イギリスで日本の屋敷をそのまま入れるとね」
「そのまま?」
「そのままっていうと」
「今僕達が神戸で住んでいるみたいな」
「そのお家をそのままイギリスに入れたら」
「そうしたら」
「こうはいかないね」
 到底、というのです。
「そのまま入れたらね」
「西洋の趣を保って」
「そうして日本に入れるのは」
「難しいのに」
「それを出来たのはね」
「凄いよね」
「そう思うよ」
 実にと言う先生でした。
「出来るかな、イギリスで」
「難しいね」
「それも相当に」
「ちょっと以上にね」
「やっぱり」
「うん、考えてみたけれどね」
 先生も言います。
「そのままは無理だろうね」
「イギリスの中に日本のお屋敷はね」
「そのまま入れることはね」
「やっぱり難しいよね」
「どうしても」
「だからそこはね」
 どうするのかをです、先生は言いました。
「アレンジを加えてね」
「イギリスに合う様に」
「日本のお屋敷をアレンジして」
「そうして入れるべきであって」
「そのままだとどうしてもなんだね」
「住むことも難しいし場違いになるね」
 小樽の煉瓦の街並と違って、というのです。
「そこはね」
「そこを合わせないといけな」
「ただ建てるだけじゃないんだね」
「そこが難しくて」
「どう合わせるかが問題なんだね」
「そうだよ、そこが難しいね」 
 こう言うのでした。
「けれどそれが出来たのが日本人なんだよ」
「この小樽がそうだよね」
「ただ西洋の建物を日本に入れたんじゃなくて」
「こうして自然にそこにある様にした」
「完全に日本に入れられたんだね」
「よく只の物真似と言われるけれど」
 明治維新のその西洋を学んでいった日本はです。
「そこは違うんだ」
「日本に合う様にアレンジして」
「学ぶ中で」
「そして完全に日本に入れた」
「自分達の中に入れたんだね」
「日本人はそうしたことが凄く上手なんだ」
 先生は手放しで賞賛しました、日本人のその資質を。
「この小樽でそのことをあらためてわかったよ」
「うん、確かに凄いよね」
 王子も運河を見つつ言います、西洋風でありながら完全に小樽のものになっているその見事な運河をです。
「この小樽にしても」
「そうだよね」
「しかもね、この小樽ってね」
「何かあるのかな」
「西洋だけじゃないんだよね」
「というと」
「先生も知ってると思うけれど」
 にこにことしてです、王子は先生にお話しました。
「この小樽の名物はね」
「お寿司だね」
「そう、ここはお寿司が名物なんだよ」
 先生にこのことをお話するのでした。
「日本なんだよね」
「うん、そうした街だね」
「じゃあお寿司も食べるよね」
「そうしたいね」
「はい、お寿司は夜に食べましょう」
 ここでトミーが言いました。
「お昼はお昼でもう考えています」
「というと」
「はい、実はこの小樽にはいいホテルがありまして」
「何ていうホテルかな」
「グランドパーク小樽といいます」
 それがそのホテルの名前だというのです。
「そこで食べましょう」
「お昼はだね」
「そこでビュッフェ、バイキングをやっていますので」
「そこでお昼を食べてだね」
「晩はお寿司にしましょう、あとです」
「あと?」
「小樽にはいいスーパー銭湯もありますから」
 トミーは先生ににこにことしてお話していきます。
「そこにも入りましょう」
「お昼の後で」
「はい、そうしましょう」
「いいね、美味しいものにお風呂もあるなんてね」
 小樽の奇麗な街並だけでなくです。
「小樽は最高の場所だね」
「先生本当にお風呂好きになったよね」
「毎日じっくり入る様になって」
「日本に来てそのことも変わったわ」
「お風呂のこともね」
「そうなんだよね」
 ご自身でも言う先生でした。
「小樽に来てそのことも変わったよ」
「うん、お湯のお風呂にサウナ風呂」
「水風呂や薬湯も好きになって」
「温泉も行ってね」
「有馬もいいね」
 有馬温泉です、先生が今住んでいる神戸と近いので結構行っているのです。
「あと城崎もね」
「確か城崎は小説にもなっていましたね」
 トミーがこのことを言ってきました。
「確か」
「そうだよ、志賀直哉の作品だよ」
「あの人の代表作の一つでしたね」
「そしてその志賀直哉を敬愛していたのがね」
 先生は運河の澄んだお水を見ています、夏の運河は静かに流れていてそこに奇麗な緑を見せています。
「この小樽に生まれた小林多喜二なんだ」
「あのプロレタリア文学の」
「うん、まあプロレタリアとかの話は置いておいてね」
 先生はその小林多喜二についてもお話するのでした。
「彼はこの街に生まれたんだ」
「北海道にですね」
「そしてこの街にね」
「そうなんですね」
「小林多喜二の名前は今も残っていてね」
 そしてというのです。
「この小樽でも知られているよ」
「文学にも縁がある街なんですね」
「そうなんだ、この小樽は」
「奇麗な街並と食べものだけじゃないんですね」
「そうした街なんだよ」
「そうした意味でもいい街ですね」
「そうだよね」
 先生はこうトミーにお話してです、動物の皆も言います。
「いや、本当にね」
「この街はいい街だよ」
「奇麗でしかも涼しくて」
「いて気持ちがいいね」
「自然とね」
「足が進むよ」
「そうだね、僕もだよ」
 夏の小樽もいいというのです、煉瓦の運河は静かな流れを見せ続けていました。そしてその景色を楽しんでからでした。
 皆でそのホテルに行きました、とても奇麗なテーブルが沢山置かれているレストランに入ってです、先生達はビュッフェの食事を獲りました。
 牛肉に鳥肉、豚肉にです。魚介類やお野菜が和食に中華料理、フランス料理にイタリア料理にとです。色々な国のお料理で調理されていてです。
 果物やお菓子のデザートもふんだんにあります、そのメニューを前にしてです。
 王子はにこにことしてです、先生に言いました。
「本当に美味しそうだよね」
「うん、しかも飲みものもね」
「飲み放題だよね」
「そうだよ」
「最高だね」
 本当にと言う王子でした。
「じゃあ食べようか」
「皆でね」
「小樽は魚介類が有名ですけれど」 
 トミーも言います。
「色々な食材がありますね」
「うん、お肉もお野菜もあってね」
「それがこのビュッフェでも出ていますね」
「そうだね」
「このホテルのサイトを見て是非行きたいと思って来ましたが」
「トミーの予想以上なんだね」
「はい」
 まさにそうだというのでした。
「本当に」
「では皆で食べよう」
「はい、特別に皆入れてもらいましたし」
 動物の皆もです、ホテルの人が先生をご存知でしたので先生の家族の彼等ならと特別にレストランに入れてくれたのです。
「では皆で食べましょう」
「ううん、いい匂いがしてたまらないわ」
 ポリネシアはお料理の匂いを嗅いで今から楽しみにしています。
「このホテルのお料理は本当に美味しいわね」
「そうだね、僕にもわかるよ」
 食いしん坊のダブダブは余計にでした。
「早く食べたいよ」
「焦ったら駄目よ」
 ガブガブはそのダブダブを注意します。
「落ち着いてね」
「そうだね、僕達のマナーが悪いと先生にも迷惑をかけるし」
 ホワイティもそのことは注意します。
「礼儀正しく落ち着いて飲んで食べよう」
「さて、では皆でね」
 老馬も言います。
「美味しく食べようね」
「先生、僕達は用意されたお部屋で待ってるからね」
 特別に用意してもらったそこで皆で食べるのです、ジップがそのことを言いました。
「悪いけれどお料理持って来てね」
「僕達は何でも食べるから」
「食べられるものなら」
 チープサイドの夫婦も言います。
「先生が好きなものを持って来て」
「それで皆で食べようね」
 チーチーもにこにことした感じです。
「楽しく」
「さて、それじゃあ」
 トートーが言うことはといいますと。
「僕達は今からお部屋に行こう」
「そうしてね」
「お行儀よく待って」
 オシツオサレツも二つの頭で言います。
「そしてね」
「皆で食べようね」
「うん、皆の分もどんどん持って来るからね」
 先生はその皆に笑顔で応えました。
「楽しく食べよう」
「よし、それじゃあね」
「皆で食べようね」
「そして飲んで」
「楽しくいこうね」
「ジュースも持って来るよ」 
 先生は皆に飲みもののお話もしました。
「じゃあ食べよう」
「お酒もあるのがいいね」
 王子はこのことを楽しみにしています。
「今日も楽しくいこうね」
「王子も函館で飲んでいたのかな」
「実はそうなんだ」
 王子はトミーの質問に答えました。
「日本酒をね」
「函館の海の幸を食べながら」
「そうしていたよ」
 実際にというのです。
「函館も楽しかったよ」
「そうなんだね」
「そして小樽でもね」
「うん、美味しいものも食べようね」
「是非ね」
 こうお話してでした、皆は楽しく食べはじめました。その色々なお料理が揃っているビュッフェのそのご馳走をです。
 そのお料理を食べてです、先生はすぐにこう言いました。
「うん、ここのお料理もね」
「美味しいですね」
「凄くね」 
 こうトミーにも答えます、フォークとナイフそれにお箸で食べながら。
「美味しいね」
「そうね、本当にね」
「このお料理はね」
「幾らでも食べられる感じだよ」
「函館でもそうだったけれど」
「いや、小樽もね」
「食べものが美味しいね」
 動物の皆も舌鼓を打っています。
「これならね」
「食べられるよ」
「それでどんどん食べて」
「どんどん飲むんだね」
「そうしよう、しかし」
 先生は牛肉をトマトや玉葱と一緒にじっくりと煮たそのお料理を食べながらです、そのうえで先生に対して言うのでした。
「これだけ美味しいとね」
「食べ過ぎちゃうよね」
「先生としても」
「どうしても」
「うん、そうだね」
 本当にというのです。
「僕もそう思うよ」
「確かに太り過ぎはよくないですが」
 トミーはパスタを食べつつ言います、ペスカトーレのフェットチーネです。
「ですが」
「それでもなんだね」
「ここのメニューといいますか北海道のお料理は」
「栄養バランスがだね」
「いいですから」
 それで、というのです。
「多少食べてもいいですね」
「そうなんだね」
「はい、やっぱり日本のお料理はです」
「栄養のバランスがいいね」
「全体的に」
 確かに先生は太っています、ですがなのです。
「思ったより太らないです」
「そうなんだね」
「何しろ先生は確かに日本に来られてかなり食べることが好きになって」
 それにというのです。
「お食事の量も増えましたけれど」
「体重は痩せたんだよね」
「脂肪率も減って」
 むしろそうなっているのです、日本に来られてから。
「健康になっています」
「うん、僕も自分でチェックしたけれど」 
 お医者さんなのでそれは自分でも出来るのです。
「そうなっているね」
「あれだけ食べましても」
「そうだね」
「はい、どうして日本人は痩せた人が多いのか」
「それがわかるんだね」
「食事の状況がいいのです」
 ただ美味しいだけでなく栄養的にもです。
「とても」
「それで僕がイギリスにいる時よりも食べる様になっても」
「むしろ健康になってますね」
「そうだね」
「それにです」
「それに?」
「先生日本に来られてから運動量が増えています」
 トミーは先生のこのことも指摘しました。
「歩く量が」
「仕事をしてだね」
「はい、毎日大学まで通勤されて」
 そしてというのです。
「大学の中でも歩かれていますね」
「何かとね」
「動物園や水族館も行かれて」 
 そうしてというのです。
「歩いていかれていますので」
「ううん、そういえば毎日結構歩いてるね」
「ですから」
 それでというのです。
「先生は健康になっています」
「そうなんだね」
「はい」
 とてもというのです。
「そうした意味でも来日されてよかったですね」
「何か日本に来たことは僕にとって」
「とてもよかったですね」
「そうだね」
「そう、本当に」
 それにというのでした。
「何もかもがよくなってきている」
「そんな感じだね」
「本当に、来られてよかったですね」
「僕は日本と巡り合わせがいいのかな」
「徳ですね」
 それだというのです。
「やっぱり」
「それがだね」
「ありますから」
 それでというのです。
「先生は日本で徳にそれがよく出ていて」
「それでなんだ」
「はい、全てがよくなっているんですよ」
「神様が僕に幸運をもたらしてくれるんだね」
「日本では特に」
「そうなるんだね」
「僕はそう思います、それじゃあ」
「うん、美味しいものを食べてね」 
 先生はここでワインを飲みました、ロゼの甘いワインをです。ワインのその甘くてとても飲みやすい味とかぐわしい香りを味わってです。
 先生はにこりとしてです、こう言いました。
「これは小樽のワインかな」
「はい、そうです」
 ここで答えたのはレストランのウェイターさんでした。
「この小樽ではワインも作っていまして」
「小樽で採れた蒲萄で」
「はい、それから作ったワインでして」
「いい甘さで」
「それに香りもですね」
「素晴らしいですね」
「そちらもお楽しみ下さい」
 小樽のそのワインもというのです。
「是非」
「そうさせてもらいます」
「ワインは身体にもいいですし」
 ウェイターさんは先生にこうもお話しました。
「是非お飲み下さい」
「そうですね、ワインは身体にもいいですね」
「はい」
 ウェイターさんはにこりとしてお話します。
「ですからそのこともご安心下さい」
「それでは」
 先生は笑顔になってワインを一杯飲んででした、それからまた飲みました。そうしてお料理もお酒も楽しんでです。
 デザートも食べました、そして小樽の奇麗な街に戻りました。
 街はお昼も奇麗な感じです、独特の無機質な様でいて趣のある色彩の煉瓦の建物が左右に並んでいます。
 下の道も整っていて靴で歩くとコツコツという音が聞こえてきます、老馬の蹄の音も周りによく響いています。
 そしてです、そのうえで。
 お空は青く澄んでいます、先生はその青いお空も見て言いました。
「煉瓦の建物の間に見えるお空もね」
「奇麗だよね」
「何処までも澄んでいて」
「空が海みたいだよ」
「空色の海だね」
「僕は残念だけれどね」
 こうしたことも言った先生でした。
「詩人でも小説家でもないから」
「詩はだね」
「こうした奇麗な場所の中にいても書けない」
「そうなんだね」
「そうしたことは出来ないんだよね」
 本当に残念そうに言うのでした。
「僕は」
「そういえば先生は詩は好きだけれど」
 王子も先生に言います。
「詩を作ることはしないね」
「しないというか出来ないんだ」
「そうなんだね」
「それが残念だね、今は」
 そうだというのです。
「本当にね、ただ」
「ただ?」
「いや、詩は作れなくても景色は楽しめるね」
「うん、それ自体はあね」
「じゃあそれでいいね」
 こう言って満足するのでした。
「それでね」
「そういうことだね」
「本当にね、じゃあ」
「それじゃあだね」
「今度はお風呂に入るんだね」
「はい、そうです」
 トミーが先生に答えます。
「そうなります」
「それじゃあ」
「うん、じゃあね」 
 こうお話してでした、先生達は。
 今度はお風呂屋さんに向かいますがふとでした、先生は皆に言いました。
「そうだ、お風呂の後はね」
「お寿司の前にだね」
「その前にですね」
「お土産を買っていこう」
 こう言うのでした。
「是非ね」
「あっ、そうだね」
「小樽のお土産もですね」
「皆の為にね」
「買いましょう」
「小樽はお土産もいいから」
 だからというのです。
「ガラス細工がね」
「ガラスいいね」
 王子はガラスと聞いて述べました。
「気をつけないと壊れるけれど」
「落としたりしたらね」
「けれど凄く奇麗だから」
「うん、是非ね」
 それこそと言うのでした。
「買っていこう、サラ達にね」
「そういえばサラさん最近は」
 ここでこう言ったトミーでした。
「皆ガラス細工の品に凝ってるんですよね」
「そうだね」
「じゃあサラさんにも」
「買おうね、他の皆にもね」
「お父さんとお母さん、それに王宮の他の皆にも」
 王子も言います。
「買おうか」
「それじゃあね」
「うん、是非ね」
 こうお話してでした、皆で。
 まずはそのスーパー銭湯に行きました、そうしてでした。
 皆で一緒にです、こう言ってでした。 
 後はです、皆でなのでした。
 お湯やサウナを楽しみます、そして。
 先生は湯舟の中で言うのでした。
「お酒を飲んだ後はよくないけれどね」
「はい、お風呂は」
「本来はね」
「けれどいいね」
 こう王子とトミーに言うのでした。
「本当にね」
「お風呂いいですよね」
 トミーも言います。
「それこそ、ただ」
「ただ?」
「ここでお酒がです」
 お酒のことをです、トミーは言いました。
「抜けますから」
「うん、いいことだね」
「お酒を沢山飲んですぐはです」
「お風呂に入ったらよくないね」
「ですが僕達結構歩いていてです」
「飲んでから時間も経っているしね」
「そのこともありますから」
 だからというのです。
「いいと思います、ただ」
「すぐにサウナに入るとね」
「それはよくないです」
 絶対にという口調でした。
「飲んですぐに、かなり酔っている状態でサウナに入りますと」
「身体に悪いからね」
「絶対に止めた方がいいです」
「うん、イギリスにいた時は気にしていなかったけれどね」
「大体イギリス人はお酒に強いですしね」
「日本人よりもね」
 先生もこのことについて言及しました。
「アルコールの分解が早いね」
「エールを毎日飲んで慣れてもいますし」
「そう、だからね」
 それでというのです。
「僕達も日本人から見れば相当に飲んでるけれどね」
「あまり酔っていませんし」
「こうしてお風呂にも入られるね」
「そうです、ですが」
「サウナはね」
「もっとお酒を抜いて」
 そしてというのです。
「すっきりしてから入りましょう」
「アルコールを抜いてね」
「それからです」
「そういえば日本人はね」
 王子も言います。
「すぐに酔っ払う人多いよね」
「そうだね」
「僕から見てもね」
「日本人は縄文系の人と弥生系の人が混血しているんだ」
 先生は王子にこのことからお話しました。
「それで弥生系の人は身体の中にアルコールを分解するものがなくてね」
「お酒に弱いんだね」
「そうなんだ」
「そういうことなんだね」
「例えば織田信長さんはお酒を全く飲めなかったんだ」
 戦国時代の英雄です。
「あの人はね」
「へえ、如何にも相当飲みそうな人なのに」
「実はお酒は本当に駄目で」
 それでだったというのです。
「甘いものが好きだったんだよ」
「意外だね」
「そうだね、けれど実際にそうだったらしいんだ」
「織田信長さんはお酒に弱かったんだね」
「そうだよ」
「成程ね」
「織田信長さん以外にもそうした人が結構いてね」
「弥生系の血が強い人がだね」
 王子もこのことを理解して言いました。
「お酒に弱いんだね」
「そうだよ」
「わかったよ、そのことも」
「うん、僕達とはそこが違うんだ」
「確か三河町の親分もそうだったし」
 王子は捕物帳のお話を出しました。
「あの人もね」
「あれっ、王子そうした本も読むんだ」
「最近銭形平次とか人形佐七とか好きでね」
「読んでいるんだ」
「うん、そういえば銭形の親分もあまりお酒は飲まないね」
 王子はこの銭を投げさせたら右に出る人はいない方の名前も出しました。
「煙草は凄いけれど」
「あの人も飲まないんだ」
「あまりね」
「僕達とそこが違うんだね」
「とにかくね」
 何はともあれという口調で言った先生でした。
「日本人は僕達に比べてお酒を飲まない人が多いね」
「弱い人が多いんだね」
「僕達はお昼みたいに飲んでもこうして大丈夫でも」
「日本人はそいうはいかない」
「そうなんだ」
 こうお話しながらです、先生達はお風呂で身体を奇麗にして心もリフレッシュしてお酒も抜いてです、お風呂を心ゆくまで楽しんで。
 そしてです、待っていた動物の皆と合流してでした。
 夜まで小樽の街を歩いてです、それから。
 お寿司を食べに行きました、今度は皆で王子が推薦するお店に入りました。その小樽のお寿司を食べるとです。
 先生はにこりとしてです、こう言いました。
「うん、確かにね」
「美味しいね」
「これはいいね」
「うん、最高だよ」
「小樽のお寿司凄く美味しいよ」
「全くだよ」
 動物の皆にも言うのでした。
「噂通りの美味しさだよ」
「海の幸がよくて」
「その味が素敵だよね」
「御飯もいいしね」
「職人さんの腕も」
「ここの職人さんはいいね」
 先生も職人さんのことを言いました。
「凄く腕がいいよ」
「素材を活かしているね」
「そうだよね」
「御飯のお酢も効いてて」
「握り具合もよくて」
「これならね」
「幾らでも食べられるよ」
 こうそれぞれ言いながらです、皆は食べています。
 そしてです、王子もそのお刺身を食べながら言いました。
「函館もそうだけれど小樽も漁港でね」
「美味しい海の幸が一杯入って」
「それで美味しいんだね」
「そうだよ、鮭に烏賊にほたて貝にね」
 皆当然こちらのお寿司も食べています。
「それに蟹もね」
「これだよね」
 トミーが実際に今食べている蟹の握りを食べながら言いました。
「このネタだね」
「そう、ズワイガニとか毛蟹とかね」
「北海道は蟹も有名なんだよ」 
 そのズワイガニや毛蟹がというのです。
「それも食べたいね」
「札幌でも食べられるね」
 先生は王子にこのことを尋ねました。
「そうだったよね」
「勿論だよ」 
 これが王子の返答でした。
「札幌でも食べられるよ」
「よし、じゃあ蟹は札幌で食べよう」
「明日から札幌だったね」
「それで二日いるよ」
 札幌にはというのです。
「その二日の間に食べよう」
「そうするんだね」
「うん、札幌では忙しくなりそうだね」
 先生はにこにことして言いました。
「それもかなりね」
「ラーメンにですね」
 トミーはまずはこちらの名物を出しました。
「ジンギスカン鍋に」
「それに蟹だからね」
「どちらの蟹を食べますか?」
「難しいところだね」
 ズワイガニか毛蟹かというと、というのです。
「それはね」
「そうですか」
「どちらの蟹も評判だからね」
「それなら両方食べようよ」
 これが王子の提案でした。
「ズワイガニも毛蟹もね」
「どっちもなんだ」
「そうしようよ」
「確かに両方食べればね」
「悩むこともないよね」
「そうだね、じゃあ」
「お金もあるし」
 両方の蟹を食べるだけはです、先生にも王子にも。
「いいと思うよ」
「どちらかで迷ったら」
「お金と時間に余裕があったらね」
 その時はというのです。
「両方にすればいいんだよ」
「それが王子の考えだね」
「そうそういつも出来ることじゃないけれどね」
 どちらかと言われて両方選ぶことはです。
「けれどそれが出来る時はね」
「両方だね」
「選べばいいじゃない」
 こう笑って言うのでした。
「欲張ってね」
「王子は欲張りじゃないけれど」
「確かにね。お金や土地やお宝にはそうでも」
「食べることにはなんだ」
「そうなんだ」
「そんなに食道楽でもなかったのに」
「それが変わったんだ」
 イギリスにいた時とは違ってというのです。
「日本に来てからね」
「食べることが大好きになったんだね」
「そうだよ」
 まさにその通りといった返事でした。
「今の僕はね」
「じゃあ明日からの札幌では」
「どっちの蟹も食べようね」
「ラーメンもジンギスカン鍋も食べて」
「そうしてね」
「そうそう、デザートですけれど」
 王子はこちらのお話も忘れていません。
「函館からメロンや乳製品を食べていますけれど」
「それとだね」
「はい、そちらも楽しみましょう」
「札幌でもね」
「勿論このお店でもです」
「デザートはだね」
「メロンか乳製品か」
「そういうのをだね」
「お昼もメロンありましたね」
 ホテルでのビュッフェで、です。
「夕張メロンが」
「あのメロンはやっぱり美味しいね」
「ですから今度は乳製品ですね」
「ヨーグルトやチーズケーキだね」
「そうしたものを食べましょう」
「最後はね」
「このお寿司も美味しいけれど」
 数の子のお寿司を食べつつ言う王子でした。
「デザートも楽しみだね」
「全くだね」
「じゃあ先生、札幌までも電車で行くよ」
「王子が一両全部借り切ってる電車でだね」
「それで行ってね」
 札幌までというのです。
「また楽しくやろうね」
「それじゃあね」
 こうお話してでした、先生達はお寿司を楽しみました、そして最後にデザートを楽しむ前にお酒も楽しんでいた皆にです。
 お店の旦那さんがあるものを出してきました、それは。
 お茶漬けでした、ですが普通のお茶漬けではありません。
 御飯の上にとろりとしていてです、烏賊や昆布、数の子にほたて貝の干したものが沢山入っています。それは何かといいますと。
「これは松前漬けだね」
「北海道のお漬物?」
「それなんだ」
「うん、それのお茶漬けだよ」
 こう動物の皆にお話します。
「それだよ」
「そうなんだ」
「北海道にはこうしたものもあるんだ」
「普通のお茶漬けよりもね」
「さらに美味しそうだね」
「うん、美味しいよ」
 先生は皆ににこりとしてお話しました。
「ではこれも食べてね」
「それからデザートだね」
「それを食べるんだね」
「そうしようね」
 にこりとして言った先生でした、そして。
 その最後に美味しい松前漬けのお茶漬けを食べてからです、デザートのアイスクリームを食べました、それからそれぞれのホテルに戻って休みました。
 その朝にです、先生達は朝早くホテルをチェックアウトしました、そうしてホテルから出ると丁度朝日が出るところでした。
 その朝日を見てです、先生はこれまたにこりとして言いました。
「いい感じだね」
「うん、朝日が出てね」
「その朝日を見ながらの出発なんてね」
「凄くいいよね」
「本当にね」
「じゃあ今から駅まで行って」
 先生はご自身と一緒に朝日を見て喜ぶ皆に言いました。
「王子と合流してね」
「そしてだね」
「札幌に行くんだね」
「そうするよ」
「わかったよ、ただ僕お腹が空いたから」
 ここで言ったのはダブダブでした。
「何か食べたいね」
「コンビニでお握りでも買う?」
 トートーはダブダブの言葉を聞いて提案しました。
「駅前の」
「そうね、コンビニで何か買ってね」
 ガブガブも言います。
「朝御飯を食べればいいわね」
「北海道のお握りなら」
 ジップが言うには。
「鮭かな」
「鮭のお握りなら何処にもあるよ」
「そうよ」
 チープサイドの家族がジップに突っ込みを入れます。
「それなら」
「別に北海道だけでもないよ」
「ううん、北海道のお握りなら」
 チーチーが連想したそれはといいますと。
「イクラ、ちょっと保存が難しいね」
「それだとお寿司じゃない」
 ポリネシアはチーチーのイクラのお握りに言います。
「昨日食べたわよ、それなら」
「ううん、ジャガイモはどうかな」
 老馬が言うのはお握りではありませんでした。
「北海道そちらも有名だしね」
「コーンとかね」
 ホワイティはこちらでした。
「そういうのかな」
「まあとにかくね」
「何か食べよう」
 オシツオサレツはこんな感じでした。
「朝御飯も食べないとね」
「ちゃんとね」
「そうだね、まあとにかく駅まで行こう」
 先生はそちらが先だと皆に言いました。
「駅の中でも何か買えるしね」
「じゃあまずは王子と合流して」
「そのうえで」
「朝御飯をどうするか」
「そのことを考えればいいね」
「うん、じゃあ行こうね」
 こう言ってでした、先生はトミーと動物の皆を小樽駅まで導くのでした。もっとも駅までの地図はトミーが持っていて方向音痴の気がある先生を案内しました。



小樽観光。
美姫 「今回は動物たちが結構、はしゃいでいたわね」
だな。先生も楽しんだみたいだし。
美姫 「休日を満喫しているようで良かったわね」
だな。このまま、ゆっくりと楽しんで欲しいな。
美姫 「次は札幌なのね」
どんな反応があるか楽しみだな。
美姫 「次回も待っています」
ではでは。



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