『ドリトル先生の水族館』




                 第十幕  深海生物

 今日から深海生物への診察でした、その朝にです。
 先生は朝御飯を食べていましたがトミーです、こう言われました。
「今日からですね」
「うん、今日からだよ」
 まさにと答えた先生でした。
「深海生物のコーナーに行くよ」
「それで診察ですね」
「そうだよ、けれどね」
「先生もはじめてですよね」
「深海生物への診察はね」
「そうですよね。僕も」
 トミーもです、朝御飯を食べつつ微妙なお顔になっています。御飯の上には納豆がかけられていてお味噌汁は茸、おかずはアジの開きとお漬けものです。
「深海生物については」
「あまり知らないんだね」
「はい、アンコウとかは知っていますけれど」
 こうしたお魚はというのです。
「けれどそれも」
「食材としてだね」
「はい、日本に来てびっくりしました」
「こうしたお魚を食べるんだって」
「そうです、とても」
 それこそというのです。
「驚きました、しかも食べるとです」
「それが美味しいんだよね」
「アンコウ鍋ですね」
「あれは凄く美味しいね」
「それを思いますと」
 それこそというのです。
「不思議ですけれど」
「それでもだね」
「深海生物全体は」
「かなり特殊な世界だしね」
「よく知らないです」
 本当にというのです。
「あちらの生きもの達は」
「そうだね、けれどね」
「今日からですね」
「行って来るい」
「わかりました、頑張って来て下さい」
「まずは御飯を食べて」
 先生も朝御飯をしっかり食べています、納豆もです。
「行って来るよ」
「そう、まずはね」
「朝御飯を食べてからだよね」
「栄養をしっかりと摂って」
「そうしてね」
「一日をはじめないとね」
 今日も先生の周りにいる動物の皆に言います。
「僕達も食べてるし」
「皆でエネルギーを補給して」
「美味しいものを食べてね」
「そのうえで」
「まずは食べることだよ」
 先生も言います。
「そこからだよ」
「そうそう、だから余計にね」
「ダイオウグソクムシさんは不思議だよ」
「何年も食べずに生きている」
「それがね」
「凄いよ」 
「そのこともわかればいいね」
 先生は希望も述べました。
「彼等が何故何年も食べなくて平気なのか」
「その謎が解き明かされるのか」
「先生によって」
「果たしてどうなるのか」
「注目してるわよ、私達も」
「だから僕は注目されたりするのが苦手だから」
 ここでもこう言った先生でした。
「あまり注目しないでね」
「ああ、そう言うんだ」
「やっぱり先生は派手なことは苦手なんだね」
「イギリスにいた時と同じで」
「そうだよ、だからね」 
 それでというのです。
「そうしたことはいいよ」
「ただ学問をする」
「それだけなんだよね、先生は」
「贅沢も名声も興味なし」
「地位や権力もね」
「そうだよ、そうしたことは全く興味がないから」
 だからだというのです。
「いいんだ」
「そういうことだね」
「じゃあそういうことは考えないで」
「ただ診察をしていこうね」
「このままね」
 こうお話してでした、そのうえで。
 先生は朝御飯を食べ終えてでした、歯を磨いてお顔も洗ってです。そうして動物の皆と一緒に登校しました。
 学校に来るとまずは研究室に入ってでした、そこに荷物を置いてです。
 水族館に向かいました、水族館の何処に向かうのかはもう決まっていました。
 深海生物のコーナーです、そこに向かう中で皆は先生に言いました。
「もうどんな生きものいるかはわかってるよね」
「先生ここに何度も来てるし」
「だからね」
「どんな深海生物がいるかはわかってるよね」
「わかってるよ」
 先生はにこやかに答えました。
「どの子がいるかね」
「じゃあ話が早いね」
「それならね」
「それじゃあ今から行って」
「それで診察だね」
「最初はアンコウさんかな」
「そうだよ」
 その通りという返事でした。
「まずは彼女から聞くよ」
「ああ、彼女なんだ」
「そうなるんだ」
「そうだよ」
 先生はここでアンコウのお話もしました。
「僕達がよく見るあのお口の大きなアンコウは雌だからね」
「そうだよね、あのアンコウは雌でね」
「雄は凄く小さくて」
「雌にくっついてるんだよね」
「だからあのアンコウはね」
「彼女になるんだよね」
「そうだよ、けれどご主人もいるから」
 雄のアンコウもというのです。
「水槽の中には一緒にね」
「夫婦は揃ってるんだね」
「ちゃんとね」
「仲良く」
「一緒の水槽の中で暮らしてるのね」
「そうだよ。じゃあ行こうね」 
 こうお話してでした、そのうえで。
 先生達はまずはアンコウさん達のところに行きました、そのうえで先生は水槽のガラス越しにです。アンコウの奥さんに挨拶をしました。
「こんにちは」
「あら先生こんにちは」
「こんにちは」
 奥さんだけでなくです、奥さんにくっついている小さなご主人も先生に挨拶をしました。
「今日はどうしたの?」
「何か用かな」
「まずは君達への診察をしたいんだ」
 そこからと言う先生でした。
「いいかな」
「ええ、どうぞ」
「よく見てね」
 ご夫婦はにこりと笑って先生に答えました。
「先生ならね」
「好きなだけ診察していいよ」
 深海生物、アンコウさんのご夫婦にも慕われている先生でした。
「先生なら観てくれるだけで診察してくれるし」
「それならね」
「是非診察をして」
「今からお願いするよ」
「うん、それじゃあね」 
 先生はです、早速でした。
 ご夫婦を診察しました、そのうえでお二人に笑顔で言いました。
「夫婦共に健康だよ」
「それは何よりね」
「じゃあ大丈夫だね」
「うん、何の心配もいらないよ」
 また笑顔で言った先生でした。
「そのままいてもね」
「ええ、じゃあね」
「これからも夫婦で楽しく過ごさせてもらうね」
「そうしてくれると有り難いよ、それでだけれど」
 ここで、でした。先生はです。 
 アンコウさんのご夫婦です、こう言ったのでした。
「一つお願いがあるんだけれど」
「お願い?」
「お願いっていうと」
「実は君達以外の深海生物の診察もするんだけれど」
 それでもというのです。
「実は僕は全部の深海生物の言葉を知らないんだ」
「あら、そうなの」
「先生も知らないことがあるんだね」
「そうだよ、僕のいや人間の知識なんて僅かだよ」
 それこそというのです。
「皆に言ってるけれど大海の中のスプーン一杯だよ」
「先生みたいに博識な人いないのに」
「それでもなんだ」
「知らないことがあって」
「深海生物の言葉はなんだ」
「全部知らないんだ」
 またご夫婦に言うのでした。
「特にダイオウグソクムシ君のはね」
「あの何年も何も食べていない」
「彼の言葉をだね」
「彼の言葉を知ってるかな」
 あらためて尋ねた先生でした。
「君達は」
「僕が知ってるよ」
 ご主人が先生に答えました。
「それで他の深海生物の皆の言葉もね」
「あっ、そうなんだ」
「うちの人は博識なのよ」
 奥さんはにこりと笑って先生にご主人の自慢の言葉を言いました。
「深海の生きものの言葉ならね」
「全部知ってるんだ」
「この水族館にいる皆の言葉なら」
 それこそというのです。
「全部知ってるよ」
「それじゃあ教えてくれるかな」
「お安い御用だよ、それじゃあね」
 ご主人は先生に深海生物達の言葉を教えてあげました、先生はその言葉を英語の発音で書いてでした。
 覚えてです、ご主人に言いました。
「有り難う、それじゃあね」
「他の皆の診察もするんだね」
「そうさせてもらうよ」
「それじゃあね」
 こうしてでした、先生は深海生物の言葉も知ったのでした。そのうえで他の深海生物のコーナーに向かうのですが。
 動物の皆はです、こう先生に言いました。
「これでね」
「先生はまた知識を得たんだね」
「深海生物の言葉」
「それをなのね」
「うん、よかったよ」
 先生も笑顔で皆に応えます。
「これでグソクムシ君とも話が出来るよ」
「グソクムシっていうから」
 ガブガブが言いました、ここで。
「虫かって思ってたよ、僕」
「それで虫の言葉でだね」
「通じると思ってたけれど違うんだね」
「うん、ムシとつくけれどね」
 先生はそのダイオウグソクムシについてガブガブにお話します。
「また違うよ」
「そうなんだね」
「虫は身体の構造が決まってるんだ」
「確かあれだよね」
 こう言ったトートーでした。
「頭と胸、お腹でね」
「三つに別れてるんだ」
「それで足が六本だったね」
「そうだよ」
 先生はトートーにお話しました。
「そうなっているんだ」
「だから蜘蛛は違うのよね」
 ポリネシアはこの生きもののことをお話に出しました。
「足が八本だから」
「そうだよ」
「ダンゴムシもね」
「ダンゴムシやムカデは足が相当に多いね」
 だからというのです。
「虫じゃないよ」
「虫みたいだけれど虫じゃない」 
 ダブダブが言う例えはといいますと。
「ヤモリとイモリみたいね」
「ヤモリは爬虫類、イモリは両生類だね」
「そうよね」
「似ているけれど仲間じゃないんだ」 
 爬虫類と両生類、別々だというのです。
「昆虫の区分とはまた違うけれどね」
「それで青虫とかは虫なんだね」
 ホワイティは蝶々の幼虫を言いました。
「毛虫も」
「そう、大きくなって蝶々や蛾になるね」
「足が六本以上あっても」
「成虫になったらなくなるからね」 
 六本の足を除いてとです、先生は皆にこのこともお話しました。
「彼等はそれでいいんだ」
「その辺りが他の生きものと違うから」
 チーチーは考えるお顔になっています。
「そこがややこしいね」
「昆虫は成虫になると形が変わることもあるからね」
「変態だね」
「そうだよ、変態するからね」 
 幼虫から成虫にというのです。
「蛹になったりしてね」
「両生類だとおたまじゃくしから蛙になったりして形が変わるね」 
 老馬は両生類のお話をしました。
「それでも蛹にはならないね」
「成長するにつれて形が変わっていくね」
「次第にね」
「足が生えるけれどね、けれど昆虫は脱皮したりして変わっていくから」
「幼虫の時に身体が三つに別れていなかったり足が多かったりするんだね」
「そうしたこともあるんだ」
「そこが難しいんだよね」
「中々わかりにくいわ」
 チープサイドの家族も深く考えています。
「青虫が虫だったり」
「逆に蜘蛛が虫じゃなかったり」
「大差ないようでね」
「実は大きな差なのね」
「うん、生物学的には大きな差だよ」
「それでグソクムシさんもなんだ」
 ジップがダイオウグソクムシのことをお話しました。
「虫じゃないんだね」
「虫だけれどね」
「身体が三つに分かれていなくて足が六本じゃないから」
「そうだよ」
「ううん、というか」
「ダイオウグソクムシはね」
 オシツオサレツも二つの頭でお話します。
「身体は三つに分かれてないし」
「足は凄く多いね」
「それじゃあね」
「虫じゃないね」
「そうだよ、ムシという名前だけれど虫じゃないんだ」
 先生は生物学的な区分からお話するのでした。
「そのことは覚えておいてね」
「うん、それじゃあね」
「虫はそうしたものなんだ」
「身体が三つで足は六本」
「このことが大きな特徴だね」
「そうだよ」
 その通りだとです、また答えた先生でしたあ。
「虫はそこに特徴があるんだ」
「そのことを覚えていて」
「そうしてだね」
「虫と名前のつく生きものは見るべき」
「そうすればわかるのね」
「そうだよ、では皆を観ていこうね」
 深海生物の皆をです、こうお話してでした。
 深海生物の診察をしていきます、その中で。
 皆はあらためてです、こう言いました。
「ううん、やっぱりね」
「お話は聞いてたけれどね」
「皆ね」
「独特の姿だね」
「まあね」
 頭のところに二本の角が生えている蛸が水槽の中から皆に言ってきました。
「僕達はそれぞれ深海で進化したからね」
「そうだよね」
「そう言う君もね」
「角が生えてるしね」
「頭にね」
「僕はツノモチダコっていうんだ」
 蛸さんは自分の名前も名乗りました。
「深い海にいる蛸だよ」
「うん、ただね」
「何かここにいる皆は少し位でね」
「凄い形をしたお魚とかはね」
「まだいないね」
「飼育出来ないからだよ」 
 先生がここで皆にお話しました。
「あまり深いところのお魚はね」
「独特の形をした」
「あの大きなお口を持った鰻とか?」
「フクロウナギだったかな」
「ああしたお魚は」
「水圧も再現出来ないしね」
 深海のそれをです、水槽の中において。
「あと水族館まで連れて来るのも大変だし」
「深海からね」
「そうしたことも大変だから」
「それでなんだ」
「あまり深いところにいるお魚はなんだ」
「連れて来られないんだ」
「深海と一口に言ってもね」
 それでもというのです。
「実は色々なんだ」
「そう、僕達は深海といってもね」 
 ツノモチダコさんもお話します。
「比較的浅い場所にいるんだ」
「だから水族館でもだね」
「いられるんだね」
「君達みたいに」
「そうだよ、アンコウさんのご夫婦にしてもね」
 こう動物の皆にです、ツノモチダコさんは八本の足のうちの一本を人の腕みたいに動かしつつお話するのでした。水槽の中でくつろぎながらも。
「まだ浅いんだよ」
「五百とかね」
「千位だったかしら」
「そこから先はなんだ」
「いないんだ」
「大体千位でもう凄いよ」
 その深さが、というのです。
「だからね」
「君達もなんだね」
「そこから先はなんだ」
「いないんだ」
「そうだよ、千位になると形も凄くなって」
 そして、というのです。
「暮らし方もかなりのものになるんだ」
「自分より身体の大きな生きもの食べたり」
「やたら大きかったり」
「そうした形になっていくんだね」
「次第に」
「リュウグウノツカイさんみたいに」
「ああ、リュウグウノツカイさんね」
 ツノモチダコさんはこのお魚の名前を聞いてまた言いました。
「あのお魚さんのことはね」
「知ってる?何か」
「あのお魚さんのこと」
「何かと謎だけれど」
「何か知ってることあるかな」
「残念だけれど僕も知らないんだ」
 ツノモチダコさんは申し訳なさそうにです、皆に答えました。
「滅多に見ない人だし」
「同じ深海生物でもなんだ」
「同じ場所にいても」
「そうなんだね」
「いや、同じ場所じゃないよ」 
 深海と言ってもとです、ツノモチダコさんはまた皆に答えました。
「それがね」
「深海っていっても」
「そうなんだ」
「色々な場所があるんだ」
「深さの問題もあるし」
 ツノモチダコさんは今さっきお話したことをまた皆にお話しました。
「それに海って言っても広いよね」
「あっ、確かに」
「地球は海の方が陸よりずっと広かったね」
「それで深海もなんだ」
「場所が広いんだね」
「そうなんだ」
「あの人は外の海の方にいるんだ」
 つまり外洋の方にというのです。
「だから僕達とはね」
「会うことが少ない」
「そうなんだ」
「深海は深海でも」
「ツノモチダコ君達とはなんだ」
「また違うんだね」
「いる場所は」
「そうだよ、だからね」
 それで、というのです。
「僕達は滅多に会わないんだ」
「君達は日本の近くにいるんだね」
「日本近海に」
「そこにいるから」
「あのお魚さんとは会わないんだ」
「そうなんだよ、それでもっと深い場所には行かないしね」 
 もっと言うと行けないのです、ツノモチダコさん達は。
「そこも違うよ」
「そういうことなんだね」
「同じ深海でも住んでいる世界が違うんだね」
「深さや場所によって」
「そうなるんだね」
「そうだよ、ただ僕もダイオウグソクムシ君達はと話をしたりするよ」
 この子達とはというのです。
「ちゃんとね」
「あっ、そうなんだ」
「今も何も食べてないけれど」
「あの子とはなんだ」
「話をしたりするんだ」
「そうだよ、ただね」
 ツノモチダコさんはこうもお話しました。
「彼等は無口なんだよね」
「ふうん、そうなんだ」
「あの子達は無口なんだ」
「深海でも」
「そうなんだ」
「話しかけてもあまり言葉を返してこないし」
 それにとです、またお話したツノモチダコさんでした。
「一匹でいることも多いし、海の底で」
「そこでなんだ」
「一緒にいるから」
「だからなんだ」
「あの子がどうして食べないかは」
「ツノモチダコさんも知らないんだ」
「知ってることは知ってるけれど」
 それでもというのです、ツノモチダコさんはここで先生を見ました。そのうえでこうしたことを言ったのでした。
「先生が知っていること以上のことは知らないよ」
「そうなんだね」
「僕も彼等がどうしてあそこまで食べないのかは」 
 そのことはとです、ツノモチダコさんは先生にお話しました。
「僕も知らないよ」
「何年も食べていられない理由は」
「うん、知らないよ」
 実際にというのです。
「グソクムシ君達に聞いてもね」
「返事はどうだったのかな」
「食欲がないからって言われたよ」
「だから食べないんだ」
「それだけだってね」
「彼等は答えたんだね」
「そうなんだ」
 こう先生にもお話するのでした。
「彼等はね」
「成程、そうなんだね」
「あまり動かないし食べないし」
「動かないと」
 ここでこう言った先生でした。
「その分エネルギーを消費しないね」
「あっ、そうだね」
 ツノモチダコさんもこのおとに気付きました。
「僕も動かないとお腹減らないよ」
「そうだよね」
「そう、それはね」
「そのことはね」
 それはというのです、またお話したのでした。
「誰でもだよ」
「動かないとお腹空かないね」
「それで彼等もかな」
「その分お腹空かないのかもな」
「そう考えていいかもね」
 先生とツノモチダコさんはこうお話していきました、そしてでした。先生は腕を組んで考えるお顔になって言いました。
「ひょっとしたらそこに秘密があるのかな」
「グソクムシさんのだね」
「そう、食い溜めもあるし」
「食べておいてそれでそれを保存しておく」
「お腹の中でね」
「それが出来る生きものもいるから
「グソクムシ君もかな」 
 先生は腕を組んだまま言いました。
「食い溜めしてるのかな」
「あまり動かないうえに」
「だからかな」
「何年も食べなくても平気」
「そうなのかな」
 先生はこう言うのでした。
「だからね」
「そうなんだ」
「じゃあグソクムシさん達はなんだ」
 皆は先生とツノモチダコさんのお話を聞いて言いました。
「食い溜め出来て動かない」
「だから何年も食べなくても平気」
「そういうこと?」
「つまりは」
「そうかも知れないね」 
 先生も皆に応えて彼等にもお話しました。
「彼等は」
「そうした体質なのかな」
「元々ね」
「だからだったのかな」
「食べなくても平気なのかな」
「流石に生まれてから何も食べなくて済むとかはね」
「ないからね」
「仙人じゃないからね」 
 またこう言った先生でした。
「植物でもね」
「だから食べないといけない」
「どうしても」
「それが生物だから」
「グソクムシ君も生物だから食べないといけない」
「このことは絶対よね」
「そう、何年食べなくても平気でも」
 それでもというのです。
「生まれてから死ぬまでは有り得ないからね」
「それは絶対にない」
「どんな生きものでも」
「それだけはだね」
「食べものと水は必要だよ」
 この二つはというのです。
「海の中だからお水はあるけれどね」
「ええと、海の中には」
 考えるお顔で最初に言ったのはチーチーでした。
「プランクトンもいるよね」
「そうだよ」
「川や湖にもいるけれど」
「だったらプランクトンを食べているのかしら」
 ポリネシアも言います。
「普通の食べもの以外にも」
「そうした身体ではないみたいだよ」
「そうなの」
「プランクトンを食べたりしないで」
 首を傾げさせたのはホワイティでした、鼠のその小さな頭w。
「海の底にあるのばかり食べてるんだ」
「通称海の掃除屋だよ」
「そうなんだね」
「じゃあ海の底に落ちてるものを食べて生きている」
 こう言ったのはダブダブでした。
「そのことは間違いないのね」
「その通りだよ」
「やっぱり食べてるのね」
「けれど何年も食べなくて海の底が汚れない?」
「そうよね」 
 チープサイドの家族はこう疑問を述べました。
「それだと」
「そんな調子だと」
「普通にね」
「海の底が大変なことになるわ」
 海のお掃除屋さんが何もしない、つまり働かないとというのです。
 それで、です、ガブガブは先生に尋ねました。
「海の底って汚いの?」
「いや、グソクムシ君の他にも海の生きものがいるから」
「それでなんだ」
「そう、確かに彼等は殆ど食べないみたいだけれどね」
「大丈夫なんだね」 
 他の生きものもいるからとです、ガブガブは頷きました。
 そしてジップはです、こんなことを言いました。
「つまり働かないお掃除屋さんなんだ」
「悪く言うとそうなるかな」
「何年も食べないんだから」
「そう言っていいかもね」
「何かあまりよくない感じかな」
「そういえばアンコウさん達も海の底にいるし」
 トートーは深海生物の入口のことを思い出しました。
「グソクムシさん達がお仕事しなくても大丈夫かな」
「海の底にも生きものは多いしね」
「そういうことだね」
「けれど。グソクムシ君達は何か」
 老馬が言うことはといいますと。
「大きいんだよね」
「四十センチか五十センチあるからね」
「意外と大きいよね」
「うん、ムシっていう割には」
「大きいよね」
 オシツオサレツもお話をします、その二つの頭で。
「思った以上に」
「そうだよね」
「栄養どうしてるのかな」
「食べていないのに」
「実は深海生物は大型の生きものも多いんだ」 
 ここで先生は皆にこのこともお話しました。
「リュウグウノツカイもそうだしダイオウイカや深海鮫もね」
「大きいんだ」
「実はそうなんだ」
「あまり食べもの多そうじゃないのに」
「環境だって大変そうなのに」
 浅い海と比べるとです。
「それでもなんだね」
「大きな生きおものも多い」
「不思議なことね」
「このことも深海の謎と言われているんだ」
 暗く水圧も凄くてです、そのうえ食べるものも少ないであろう場所に大きな身体を持っている生きものがいることがというのです。
「大型の生きものが多いこともね」
「何か謎だらけだね」
「謎だらけの場所なんだね」
「何もかもがわかっていない」
「そうした場所なんだ」
「そうなんだ、だから余計に調査が必要なんだ」
 そう言われているというのです。
「僕もそう思うしね」
「ううん、謎が多いね」
「謎まみれの場所だね」
「本当にね」
「僕達じゃとても生きていられない場所だけれど」
「そこはどうなっているのか」
「謎が多いまだなんだね」
「そうした場所が地球にあるんだよ」
 今もというのです。
「宇宙といい人は知らないことが本当に多いんだ」
「学問は進んだけれど」
「それでもなんだね」
「まだまだ謎は多い」
「地球にしても」
「そうだよ、地上でもわかっていないことも多いしね」
 そちらもというのです。
「ジャングルにしても」
「そういえば」
「アマゾンだってね」
「まだまだ謎が多いんだよね」
「あそこにしても」
「人は常に全ての場所を見ることは出来ない」
 先生はこの真理もです、皆にお話しました。
「決してね」
「神様じゃないから」
「その目で見えるものしか見えないだね」
「今そこにあるものしか」
「それが人間だね」
「私達もそうだけれど」
「それでどうして全知全能と言えるのかね」
 先生もここで首を少し傾げさせました。
「そして偉大と言えるのか」
「わからない」
「先生にしてみれば」
「そうなのね」
「うん、そしてそれは誰でもだよ」
 神でないのなら、というのです。
「目に見えるものしか見えないんだ」
「だから知っているものも少ない」
「この世の中の僅かだね」
「そんな小さなものなのね、人間は」
「そして僕達も」
「何処の国の人もどの民族も。ひいてはどの生きものも」
 この世のあらゆる生きものがというのです。
「一緒なんだよ」
「人間も生きものも」
「同じなんだね」
「結局のところは」
「そうだよ、キリスト教では本来は人と他の生きものは分けられているけれど」
 それでもというのです、先生は神学者でもありますが先生ご自身の神学をあえて皆にお話してみせたのです。
「僕はそうは考えていないんだ」
「人も生きもの」
「僕達と同じ」
「そういうものなのね」
「全て神が創られたんだ」 
 あらゆる生きものはというのです。
「それならね」
「同じなんだね」
「誰もが」
「先生が言うには」
「僕と王子、トミーに違いはあるかな」
 先生は皆にこうも尋ねました。
「一体」
「ううんと、先生は太ってて」
「それで色々と知ってるわね」
「トミーは家事が得意でね」
「王子は次の王様でお肌が黒い」
「それ位?」
「他はね」
「変わらないかしら」
 動物の皆は三人の違いについてこうお話します。
「特にね」
「あまりね」
「変わらない」
「そうなるね」
「そう、人間それぞれの違いもね」
 多くの人が凄く意識するそれもというのです。
「結局のところはね」
「大した違いじゃないのね」
「結局のところは」
「広い目で見たら」
「そう、それは人間だけじゃなくてね」
 さらにお話した先生でした。
「他の生きものもなんだ」
「深海の皆も含めて」
「そうなのね」
「結局は皆一緒」
「そうなるんだ」
「そうだよ、仏教やヒンズー教の考えでは輪廻転生が人が生きもの、生きものが人に生まれ変わるよ」
 先生はこの考えも認めているのです。
「アメリカのパットン将軍はハンニバルの生まれ変わりと言ってたしね」
「僕達もなんだ」
「生まれ変わるんだ」
「仏教やヒンズー教の世界にいたら」
「そうなるのね」
「そう考えると余計に同じだよ」
 先生はここではキリスト教の世界、仏教やヒンズー教の世界がそれぞれ一緒に存在しているとしてお話するのでした。
「あらゆる生きものはね」
「魂が同じなんだね」
「姿形が変わっても」
「人でも生きものでも」
「そうなるんだ」
「そうだよ、それに大した違いもない」
 またこう言った先生でした。
「僕達とグソクムシ君もね」
「何年も食べないけれど」
「僕達からしてみれば凄い違いだけれど」
「それでもなんだ」
「実はなんだ」
「神様から見れば」
「大した違いじゃないんだ」
 そうした姿形や住んでいる場所、生活が先生達から見れば相当に変わっているものであろうともというのです。
「そうしたものだよ」
「ううん、何かね」
「神様から見るとね」
「僕達の違いなんて」
「本当に些細なものなんだ」
「結局は」
「そうだよ、僕はいつもこのことを頭に入れているよ」 
 そして生活をして学問をしているというのです。
「この世で偉大な存在は神」
「人も他の生きものもそうじゃない」
「結局はなんだね」
「偉大でも何でもない」
「小さなものなんだね」
「そうだよ、神を認めずに自分を偉大だと思うと」
 人がです、そう考えるとというのです。
「もうそれでね」
「おかしくなるんだね」
「それで」
「もう完全に」
「独裁者に多いね、あと神を認めえいてもカルト教団の教祖もだね」
 神を信じていてもというのです。
「自分を神に等しいとか神の生まれ変わりと思うと」
「おかしくなる」
「人は小さなものだってわかっていないと」
「勘違いしてなんだね」
「おかしくなるんだね」
「そうだよ、そのことをわからないと」
 本当に、というのです。
「駄目だと僕は思うよ」
「何かね」
「先生の言うことって時々難しいけれど」
「今回のこともそうで」
「何かわかりにくいね」
「少しね」
「けれど」
 それでもとも言う皆でした。
「それでいてね」
「何かわかるよ」
「人も生きものも皆同じ」
「神様が創ったもの」
「そして神様が偉いんだね」
「つまりは」
「そう考えてくれたらいいよ」 
 先生も皆のその考えに正解を出しました。
「神のことを忘れないこともね」
「うん、じゃあね」
「そのこと覚えておくよ」
「先生の今のお話もね」
「頭の中に入れておくわ」
「そうしてくれたらいいよ、それじゃあ診察を進めていこう」
 さらにとです、先生は皆にお話してでした。
 深海生物の診察をしていきました、どの生きものも診察してです。
 この日の診察を終えてでした、先生は研究室に帰ったところで皆に言いました。
「さて、最後の最後は」
「うん、ダイオウグソクムシさんだね」
「僕達が一番気になっている」
「彼の診察だね」
「最初から最後の最後のつもりだったんだ」
 グソクムシさんへの診察は、というのです。
「何しろこの水族館一番の謎だからね」
「神様の前では些細なことだけれど」
「僕達にとっては一番の謎だからね」
「何年も食べていない」
「そのことが」
「講義と論文の執筆もしてるけれど」
 それでもとも言う先生でした。
「その中でね」
「いよいよだね」
「その診察も最後の最後」
「グソクムシさんへの診察」
「その時は間も無くだね」
「そうなってきたよ。じゃあお家に帰って」
 帰り支度をして、です。
「今日は休もう」
「晩御飯を食べてお風呂に入って」
「それで歯も磨いてだね」
「後はくつろいでね」
「ゆっくり寝るんだね」
「睡眠も大事だからね」 
 このことも忘れていない先生でした。
「身体の全てをじっくりと休めることも」
「そうだね、じゃあね」
「身体もじっくりやすめて」
「そしてね」
「また明日だね」
「明日の活力は食事と休息だよ」
 この二つともです、先生は温和な笑顔で皆に言いました。
「休息には睡眠も入るからね」
「だから先生は徹夜はしないんだね」
「夜はじっくりと寝るんだね」
「そして朝に起きる」
「そうしてるんだね」
「そうしているよ、じゃあお家に帰って休もう」
 先生は自分の鞄を手に取りました、そうしてでした。
 皆と一緒にお家に帰って休みました、明日の為に。



いよいよ深海の生物たちに。
美姫 「まずはアンコウからね」
みたいだな。しかし、それが良かったか。
美姫 「他の言葉を教えてもらえたしね」
これで他の深海生物とも話せるようになったみたいだし。
美姫 「次はいよいよダイオウグソクムシかしら」
次回も待っています。
美姫 「待っていますね〜」



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