『ドリトル先生と二本尻尾の猫』




                  第八幕  彼のことを聞いて

 一週間経ってです、先生はホワイティ達から男の子のことを聞きました。ホワイティとチープサイドの家族、そしてトートーが言うのでした。
「ずっと見てたけれどね」
「とても優しい子だよ」
「誰にも親切よ」
「明るい子だよ」
 こう先生の研究室に来てそこにいる先生にお話するのでした。
「意地悪なところもなくて」
「あっさりしててね」
「裏表がなくて」
「公平な子だよ」
「そうなんだ」
 先生はホワイティ達のお話を聞いて満足してこう言いました。
「それじゃあね」
「うん、じゃあだね」
「いい子だと思うんだね、先生も」
「そう思ったんだ」
「そうだよね」
「そうだよ」
 まさにその通りだとです、先生はホワイティ達に笑顔で答えました。
「皆が言うと間違いないよ」
「それじゃあ」
「あの娘とだね」
「一緒になれる様に」
「頑張るんだね」
「そうするよ」
 先生の笑顔での言葉を聞いてです、ホワイティはです。
 すぐにです、先生にこんなことも言いました。
「あとね」
「あと?」
「あの子のお部屋も見たけれど」
「何かわかったのかな」
「うん、あの娘の写真飾っていてね」
 そしてというのです。
「お財布の中にも入れてるよ、携帯の待ち受けもそうでね」
「それじゃあ」
 ここまで聞いて先生もわかりました、
「彼もだね」
「あの娘のことがなんだ」
「そう思っていいね」
 恋愛は苦手な先生にもわかることでした。
「相思相愛だね」
「そうなんだ」
「そう、だからね」
 それで、と言う先生でした。
「ここは彼と彼女を会わせて」
「そしてなんだな」
「あとは背中を一押しかな」
 先生はこれまで読んだ恋愛小説から述べました。
「それでいいかな」
「一押しだね」
「そう、一押しでね」
 まさにそうすればというのです。
「二人のそれを。そうすれば」
「いけるんだ」
「そう思うよ」
 これが先生の見立てでした。
「無事にね」
「それじゃあ」
「会ってもらおう」
 二人にというのです。
「是非ね」
「そして告白?」
「うん、それがいいかな」
 こうホワイティに言うのでした。
「この場合はね」
「ううん、どうかなあ」
「ちょっとね」
 ここで他の動物の皆も言いました。
「これはね」
「中々難しいんじゃ」
「何ていうかね」
「僕達ってこうした経験ないしね」
「恋の橋渡しとか」
「これまではお二人を調べてきたけれど」
「ここからはね」
 こうそれぞれ言うのでした。
「ちょっとね」
「具体的にどうするか」
「そのことはね」
「ちょっとねえ」
「はじめてのことだから」
「どうしたものかな」
「先生だってね」
 その先生にしてもというのです。
「恋愛経験はね」
「実際にはないし」
「恋愛小説とかは読んでるにしても」
「それでもね」
「そうだね、僕は実際にそうした経験はないからね」
 先生もご自身で言うのでした。
「僕の知り合いの人もね」
「トミーもそういう縁ないしね」
「今のところは」
「王子はどうかわからないけれど」
「あの人はね」
「ちょっと王子に聞いてみようかな」
 少し考えて言う先生でした。
「こうしたことに詳しいかどうか」
「うん、じゃあね」
「ちょっと王子にね」
「ここに来てもらって」
「それでね」
「うん、それがいいかな」 
 先生は動物の皆の言葉に頷いて王子に相談してみることにしました、これから二人をどうしていけばいいのかを。
 先生は程なくして携帯で王子に連絡をしました、すると王子はすぐに先生の研究室に来てくれました。その王子にです。
 先生はすぐにです、お二人のことをお話しました、すると王子はすぐにこう言いました。
「じゃあここはね」
「ここは?」
「うん、デートをしてもらえばいいよ」
 こう言うのでした。
「ゲームみたいにね」
「ゲーム?」
「うん、ゲームみたいにね」
 こう言うのでした。
「恋愛ゲームみたいにね」
「そういえば日本には」
「うん、そういうゲームも多いよね」
「恋愛ゲームだね」
「プレイステーションでも携帯ゲームでもね」
 そうしたゲームで、というのです。
「あるから。最近僕も楽しんでるんだ」
「へえ、そうなんだ」
「うん、面白いから」
 それで、というのです。
「結構やってるけれど」
「デートをしてなんだ」
「一緒にいたりお話をすればいいんだよ」
「そうすればなんだ」
「もう二人共相思相愛なんだよね」
 王子は先生にそのことを確認しました。
「お話を聞くとそうだけれど」
「間違いなくね」
「それじゃあね」
「それならだね」
「ここは二人にね」
 是非にというのです。
「お話してもらってデートしてもらって」
「いきなりデートなんだ」
「どっちかが誘ったら」
 そのデートにです。
「もうそれでね」
「お話が進むかな」
「断る筈がないよ」
 誘われた方が、というのです。
「だからね」
「ここはなんだ」
「うん、お話をして」
「そしてだね」
「そう、デートだよ」
 それをすればいいとです、王子は日本の恋愛ゲームをプレイしてきた経験から先生に対してお話するのでした。
「それでいい雰囲気になったら」
「そこでなんだ」
「どっちかが告白すれば」
「いいんだ」
「僕はそう思うよ」
 こう言うのでした。
「まあ僕は女の子と付き合ったことはないけれど」
「いやいや、王子もてるでしょ」
「そうだよね」
「美形だしお肌も奇麗だし」
 ここで動物の皆が王子に言います。
「整った顔立ちが褐色の肌に似合ってるよ」
「縮れた髪の毛も奇麗に整えていて」
「服もお洒落だし」
「背もそれなりにあってスタイルもいいし」
「しかも文武両道じゃない」
 この辺りはイギリス等に留学して備えたのです。
「それでもてないって」
「ないんじゃない?」
「まあ僕達女の子の間での王子の評判は知らないけれど」
「それでもね」
「王子はもてるよ」
「プリンスだし」
「いや、お付き合いはしたことがないんだ」
 このことを強く言う王子でした。
「執事や使用人の人がいつも周りにいて」
「ああ、それでなんだ」
「自由にお付き合いはなんだ」
「出来ないんだね」
「王子だからだね」
 何故そうなのかをです、先生が言いました。
「だからだね」
「うん、これでも次の王様だし」
 王子の王位継承権は一位です、それだけに余計に周りにお付きの人が何人もいていつもお世話をしているのです。
「だからね」
「自由なことはだね」
「今は別だけれど」
「僕といるから」
「先生は僕の友達じゃない」
 それこそ最も親しい、です。
「こうしてお話も出来るんだ」
「そうだね」
「けれどそれでも」
 ここで王子はご自身の後ろをそっと振り返りました、そこにはいつも一緒にいてくれている執事の人が立っています。
「こうしてね」
「お付きの人はだね」
「一緒だよ」
 そうだというのです。
「だから。自由な恋愛は」
「出来ないんだね」
「だから恋愛ゲームが好きなんだ」
「実際には出来ないから」
「憧れなんだ」
 王子にとって、というのです。
「そうした経験もしてみたいね」
「だから実際にはなんだ」
「王子も恋愛経験ないんだ」
「そういうことなんだ」
「結局は」
「そうだよ、けれどね」
 先生達と同じく実際の経験がなくとも、というのです。
「僕は恋愛ゲームのことから言わせてもらうよ」
「お話をしてデートをして」
「そこでいい雰囲気になってだよ」
 王子は先生達に笑顔で言い切りました。
「そこで、なんだ」
「告白だね」
「これで決まりだよ、大事なのはムードだよ」
「それなんだね」
「そう、恋愛は自分達が主人公じゃない」
 愛し合う二人が、です。
「それじゃあ周りの雰囲気も大事だから」
「成程ね」
「だからだよ」
 是非に、です。王子は先生達に確かな声でお話します。
「僕はそれでいくべきだと思うよ」
「お話、デート、そして告白」
「恋愛ゲームの王道だよ」
「王道こそがいいっていうね」
「そうだよね」
 ジップとチーチーは王子のお言葉を聞いてお話しました。
「オーソドックスでもね」
「それこそがってね」
「確かにね」
「そうかも知れないね」
 ガブガブとダブダブもこうお話するのでした。
「決まりきったっていうと聞こえが悪いけれど」
「普通が一番かな」
「奇をてらうよりは」
「普通ってことなんだね」
 ポリネシアとトートーも鳥同士でお話するのでした。
「恋愛についても」
「そういうことなのかな」
「僕達色々調べたけれど」
「それからはね」
 老馬は自分の頭の上にいるホワイティと会話をするのでした。
「オーソドックスにね」
「進めていけばいいのかな」
「相思相愛だし」
「後はね」
 チープサイドの家族の会話です。
「普通にやっていけば」
「いいかな」
「王子のお話を聞くと」
「そうなるね」
 オシツオサレツは二つの頭でお互いに会話しています、自分とお話をするという彼にしか出来ないお喋りです。
「これからは」
「そうしていけば」
「相思相愛になるまでが苦労するんだ」
 ここでこうも言った王子でした。
「これがね」
「恋愛ゲームだとだね」
「うん、最初はどっちも恋愛感情がなくてね」
 先生にです、やはり恋愛ゲームのことからお話するのでした。
「そこから動かすのが大変なんだ」
「恋愛感情を」
「それこそ何度もお話してプレゼントしてデートを重ねていって」
「恋愛ゲームも大変だね」
「うん、それでね」
 そうしてというのです。
「やっと相思相愛になるから」
「じゃああの子達は」
「もう既にそうならね」
 そのレベルに達しているのなら、というのです。
「あと一押しだから」
「少しお話をしてデートをしたら」
「そしてムードのある場所で告白イベントになったら」
 それこそ、というのです。
「もう決まるよ」
「そうなるんだね」
「だからね」
 それで、というのです。
「ここはね」
「二人にそうなる様に」
「先生達は動けばいいんじゃないかな」 
 こう先生達にアドバイスするのでした、そして。
 ここで、なのでした。また研究室に来た人がいました。お静さんはどろんとお部屋の中に出て来てでした。
 そのうえで王子にです、こう言いました。
「そこの人中々いいわね」
「あれっ、貴女は」
「お嬢さんのお家に仕えている猫でございます」 
 王子に一礼してから答えるのでした。
「もう長い間生きています」
「人間じゃないんだ」
「猫又です」
「ああ、日本の妖怪の」
「この通りです」
 ここでまたどろんとなってでした、服を着て後ろ足で立っている猫になりました。尻尾が出ていますがその尻尾は二本です。
 その姿を王子に見せてそうして言うのでした。
「私は猫なのです」
「そうなんだね」
「正確に言うと妖怪ですね」
 自分で笑ってのお言葉でした。
「私は」
「そうなんだね」
「はい、それでなのですが」
「うん、それでだね」
「そのお考えはいいですね」
「デートでだね」
「はい、いいと思います」
 こう王子に言うのでした。
「後はそれを何処でしてもらうかですね」
「僕の案でいいっていうんだね」
「はい、まさか恋愛ゲームとは」
「君は知らないんだ」
「うちの家族の方々はそうしたゲームをしないので」
「そうなんだ」
「格闘ゲームやシュミレーションをされていますね」
 そうだというのです。
「お嬢様は推理やRPGですし」
「好きなゲームのジャンルってあるからね」
「はい、ですから」
 それで、というのです。
「私もそうしたアイディアはありませんでした」
「デートは恋愛ゲームの醍醐味だからね」
「デートをして、ですね」
「そう、恋愛感情を高めるから」
「お嬢様とあちらの方もう」
「うん、相思相愛だね」
 このことも言う王子でした。
「もう先生達にお話してもらったよ」
「ではお話が早いですね」
「うん、そこまで進んでいたらね」
「あと一押しですね」
「そうだよ」
 その通りだというのです。
「だからね」
「ここは、ですね」
「僕の聞いた限りだと一回のデートでね」 
 それこそ、というのです。
「もう決まるよ」
「そして告白まですれば」
「決定打だよ、ただね」
「そこまでお話をもっていくことですね」
「デートでもね。それが問題だね」
 具体的な実行にです、二人をさせていうことがというのです。
「この場合は」
「そうなのですね」
「さて、どうしたらいいかな」
 王子は腕を組んで考えるお顔で言いました。
「この場合は」
「中々難しいところですね」
「そういえば君妖怪だね」
 王子はお静さんにこのことを問いました。
「そうだよね」
「はい、猫又です」
「猫又ならね」
 それならというのです。
「妖力とかあるかな」
「ありますよ」
 お静さんは王子の問いにはっきりと答えました。
「九尾猫さんにはとても及ばないですけれど」
「尻尾がある分だけなんだ」
「私達も妖力が強まっていきます」
「狐さんみたいにだね」
「そこは同じですね」
 実際に、というのです。
「狐さん達と」
「そうだね、まあとにかくだね」
「妖力は使えます」
「じゃあその妖力を使って」
「そうして、ですか」
「二人をお話させてね」
 まずはこのことでした。
「それからデートをして」
「最後の告白まで」
「君が進めていけばいいかな」
 こう言うのでした。
「ここはね」
「成程、そうすればいいんですね」
「二人の耳元にここぞという時に囁いたりして」
「お二人に動いてもらえば」
「いいと思うよ」
「そうですか、じゃあ」
「うん、これでどうかな」
 王子はお静さんに微笑んで尋ねました。
「このやり方で」
「私は賛成です」
 まずはお静さんが答えました。
「それで」
「そう言ってくれるんだね」
「いいお考えだと思います」
「先生達は」
 動物の皆も入れての問いです。
「どうかな」
「うん、僕もね」
 先生は首を少し傾げさせつつ王子に答えました。
「それでいいと思うよ」
「賛成してくれるんだね」
「うん、僕も恋愛ゲームは知らないけれど」
 それでも、というのです。
「それでね」
「いいんだね」
「うん、お静さんが囁いてね」
 二人のお傍で、です。
「そうして進めていけば」
「上手くいくね」
「それでいいと思うよ」
 こう言うのでした。
「それでね」
「じゃあ他の皆は」
「うん、僕達もね」
「いいと思うよ」
「それでね」
 動物の皆も王子にそれぞれ答えました。
「デートまでもっていってね」
「それで告白までいくとね」
「いいと思うよ」
「それでね」
「そうだね、それじゃあね」
 動物の皆の賛成の言葉も受けてでした、それで。
 どうするのかが決まりました、先生はお静さんに言いました。
「それじゃあね」
「はい、後はですね」
「デートにね」
「お二人を導いて」
「その前にお話もしてね」
「そして最後は」
「ムードのある場所で」
 まさにそこで、というのです。
「二人を」
「告白まで、ですね」
「導けば」
「それでいいですね」
「僕達は妖力がないから」
 先生はお静さんにこのことも言いました。
「だからね」
「姿を消したりですね」
「出来ないからね」
 それで、というのです。
「そこはお静さんのお仕事になるね」
「その通りですね」
「じゃあね」
「はい、お任せ下さい」
 お静さんは先生ににこりと笑って答えました。
「お嬢様の為ならです」
「まさにだね」
「一肌でも二肌でも」
 それこそ、というのです。
「やってみせます」
「それじゃあね」
「やってみせます、恋とはです」
 こんなことも言うお静さんでした。
「結ばれてこそです」
「いいものだっていうんだね」
「それが私の考えです」
 恋愛に対する、というのです。
「もっとも浮気はいけませんが」
「そうした恋愛はだね」
「私は駄目だと思いますが」
「今回みたいな時はだね」
「是非です」
 何としても、というのです。
「結ばれるべきですから」
「だからだね」
「私は頑張りますよ」 
 猫のお姿のまま言うのでした。
「絶対に」
「そうしてね、ただね」
「ただ?」
「僕達もね」
 先生達もというのです。
「見守るから」
「お二人と私を」
「その時はね」
「そしてね」
 ジップがお静さんに言ってきました。
「何かあれば」
「その時はなのね」
「僕達でよかったら」
「助けてくれるのね」
「そうさせてもらうよ」
 是非に、というのだ。
「僕達にしてもね」
「じゃあ頼むわね」
「うん、それじゃあね」
 こうお話してこれからのことを決めたのでした。そして。
 ここで、です、先生はお話が一段落したところで皆に言いました。
「一ついいかな」
「あっ、もうね」
「いい時間だね」
「その時間になったね」
「お茶の時間だよ」
 それになったからというのです。
「飲もうか」
「先生お茶は絶対なのね」
「うん、そうだよ」
 その通りだとです、先生も答えます。
「だから今もね」
「お茶にするのね」
「そうしよう」
 こうお静さんにも言うのでした。
「お静さんもね」
「お願いするわ、けれど」
「けれど?」
「先生レモンティーは飲まないわよね」
 お静さんがここで尋ねたのはこのことでした。
「そうよね」
「うん、それはね」
 実際にと答える先生でした。
「飲まないよ」
「ミルクティーかストレートティーだけね」
「紅茶はね」
 他の色々なお茶を飲むにしてもです、紅茶の場合はです。
「それだけだよ」
「そうよね」
「イギリスにいるとね」
「あちらはミルクティーだから」
「そうなるんだよ」
 だからというのです。
「けれど日本はどちらも売ってるね」
「普通にね」
「アメリカだと逆になんだ」
 こちらのお国ではといいますと。
「レモンティーだけなんだ」
「そこが違うわね」
「うん、それがね」
 どうかといいますと。
「イギリスとアメリカの違いの一つなんだ」
「あちらはコーヒーも多いしね」
 王子もこう言ってきました。
「だからね」
「そうだよね、そこも違うよね」
「うん、日本はコーヒーもよく飲むけれどね」
「というか日本人はそうなのよ」
 お静さんがここで言うことはといいますと。
「何でも飲むのよ」
「日本のお茶だけじゃないからね」
「そこがまた面白いの、お茶だけじゃなくて」
 さらに言うお静さんでした。
「お酒もそうだから」
「ああ、お酒も」
「そう、日本酒だけじゃないのよ」
「ビールもワインも飲むからね、日本人は」
「ウイスキーもね。スコッチあるわよ」
「あっ、それはいいね」
 スコッチと聞いてです、先生は笑顔で応えました。
「じゃあ今度買いに行くよ」
「プレゼントするわよ」
「いや、買わせてもらうよ」
「いいの?」
「うん、そうしたことはね」
 先生はこう言うのでした。
「ちゃんとしないと、って思ってるから」
「だからなのね」
「自分でお金を払うから」
「先生はそうしたところは凄くしっかりしてるんだ」
 チーチーがお静さんに答えます。
「とてもね」
「そうみたいね」
「律儀なんだ」
 先生はです。
「凄くね」
「じゃあ贈りものをしても」
「そう、先生も贈りものをしてね」
「返すのね」
「それが先生なんだよ」
「それはいい人ね。その律儀さならね」
 それこそというのです。
「絶対にいい人が見付かるよ」
「最近そんなお話がよく出るけれど」
「どうなのかな」
 ガブガブとダブダブがお静さんに言います。
「そこはね」
「ちょっとね」
「あまりね」
「先生は」
 首を傾げさせる二匹でした。
「そいうしたことは」
「縁が」
「僕は野暮ったいしね」
 それに、と言う先生でした。
「恋愛にも疎いし」
「そうした人でもよ」
「大丈夫なのかな」
「だって。子供を虐待する様な人でも結婚してるじゃない」
「そうしたお話もニュースで出てるね」 
 先生は悲しいお顔になりました、そのお話については。
「よく」
「ええ、悲しいことにね」
「そうした人でもなんだ」
「結婚してるのよ、それで酷いことをしてるけれど」
 それでもというのです。
「先生は子供いじめる?」
「そんなことは絶対にしないよ」
 当然にと返す先生でした。
「とんでもないことだよ」
「そうよね、先生みたいなお心の人だと」
 それこそ、というのです。
「大丈夫よ」
「だといいけれどね」
「ええ、きっといい人と結婚出来るわ」 
 間違いなく、というのです。
「安心してね」
「まあ先生はね」
「こんないい人そうそういないから」
 ポリネシアとトートーもこのことはよくわかっています。
だからね」
「何時かきっとね」
「いい人と一緒になって」
「そちらでも幸せになれるね」
「私もそう思うわ、絶対によ」
 お静さんも太鼓判を押すことでした。
「先生は幸せになれるわ」
「間違いなくね」
「そうなれるよ」
 オシツオサレツも二つの頭でお静さんに続きます。
「僕達以外にもね」
「結婚相手が出来て」
「それでそちらでもね」
「仲良くなれるよ」
 こうお話するのでした、そして。
 ホワイティがです、先生にこう言いました。
「じゃあお茶をね」
「うん、皆で飲もうね」
「そうしようね」
「お茶を飲むとね」
 それこそ、と言う先生でした。
「何か生き返るんだよね」
「先生って本当にお茶好きだよね」
 王子も楽しげに笑って先生に言います。
「イギリスにいた時から」
「そうだね、お茶が一番好きかな」
「飲みものの中では」
「食べものは色々だけれどね」
 好きなものは、というのです。
「飲みものはね」
「紅茶だね」
「やっぱり一番好きだよ」
 そうだというのです。
「最近は日本のお茶も飲むけれどね」
「特にミルクティーだね」
「何といってもね」
 先生はこう王子に言いながら実際にミルクティーを淹れています。
「これだね」
「そうだよね」
「うん、一日一回は飲まないと」
 それこそとも言うのです。
「何か気がね」
「済まない?」
「調子が出ないっていうかね」
「そこまで好きなんだね」
「そうなんだ、あとティータイムには」
 お茶だけでなく、です。
「セットもだね」
「一緒にないと」
「うん、よくないよ」
「最近はね」
「日本のお茶もだよね」
 ここでこう言ったのは老馬です。
「最近はよく飲むね」
「お抹茶もね」
「そうだよね」
「けれどね」
「一日一回はだね」
「紅茶、特にミルクティーを飲まないと」
 それこそ、というのです。
「何かしっくりいかないね」
「先生はだね」
「うん、そうなんだよね」
「だから今もだね」
「飲むよ」
 そうするというのです。
「そうするよ」
「それじゃあ」
「さて、お茶を飲んで」 
 皆にお茶を出してからまた言う先生でした。
「それからね」
「まただね」
「飲んでから」
 そしてというのです。
「僕は論文を書くよ」
「ああ、またなんだ」
「論文書いてるのね」
 チープサイドの夫婦が応えます。
「それでだね」
「じゃあ飲んでから」
「目を覚まして」
「それで論文を書くのね」
「書くよ」
 実際にと言ってでした、そのうえで。
 先生達は実際に皆と一緒にお茶を飲みました、それからです。
 お静さんは紅茶を飲み終えてから先生にまた言いました。
「じゃあ後はね」
「うん、後はだね」
「明日からお嬢様に囁くわ」
「そうしてだね」
「お二人を幸せにするわ」
 こう言うのでした。
「そのことは約束するわね」
「じゃあ僕達もね」
「見守ってくれるのね」
「それでね」
 そのうえで、というのです。
「いざとなれば」
「頼むわね」
「それじゃあね」
 こうお話してでした、お静さんはお茶を飲んでからお部屋を後にしました。その後で先生は論文を書きはじめました。
 そこで、です。王子も言いました。
「じゃあ僕もね」
「帰るんだね」
「論文を書くのならね」
 お仕事をするからだというのです。
「もうこれでね」
「じゃあまた明日だね」
「うん、そうしよう」 
 こうお話してでした。
 王子もお部屋から出てでした、先生達は。
 動物の皆に周りを囲んでもらいながらご自身の席で論文を書きました。それが終わってからそうしてお家に帰るのでした。
 けれどお家に帰ってです、今度はこんなことを言うのでした。
「今の論文を書き終えてからね」
「またなんだ」
「また新しい論文を書くんだ」
「そうするんだ」
「今の論文を書き終えたら」
「そうなんだ」
 その通りだというのです。
「今は日本文化、室町時代のを書いてるけれど」
「その後でだね」
「また別の論文を」
「次は歴史だよ」
 そちらの論文を書くというのです。
「イギリスのビクトリア期の前期の」
「ああ、今度はなんだ」
「イギリスについてなんだ」
「書くんだ」
「そうするんだね」
「うん、そしてね」
 そのうえで、というのです。
「英語で書くから」
「今の論文は日本語だよね」
「そうだよ」
 その通りだというのです。
「それを書いてからね」
「次はなんだ」
「英語なんだ」
「英語の論文を書くんだね」
「今度は」
「うん、あちらに発表する論文だから」
 イギリスの学会にというのです。
「だからなんだ」
「何か先生ってね」
「最近英語ばかりじゃないね」
「元々色々な言語を喋って使って」
「それでよね」
「日本j語でも論文書くんだね」
「そうするよ」
 こう言ってでした、先生は居間でテレビを観ているトミーに尋ねました。
「もうお風呂入っていいかな」
「はい、どうぞ」
 トミーは先生にすぐに答えました。
「何時でもいいですよ」
「それじゃあね」
「じゃあ先生が入られてから」
「トミーもだね」
「入ります、いや日本のお風呂は」
「いいよね」
「おトイレと一緒になってなくて」
 イギリスのバスルームとは違ってです。
「湯舟にも入りやすくて」
「ゆっくり出来てね」
「冬なんか特にですよね」
「温まるよね」
「あれがいいです」
 とても、というのです。
「本当に」
「そうだね、だからね」
「日本のお風呂もですね」
「お気に召されてますよね」
「特に温泉はね」
 日本のそれはというのです。
「いいね、サウナもね」
「日本のサウナも」
「うん、いいよ」
 それこそ、というのです。
「あれもね」
「そうですよね」
「日本のお風呂文化は偉大だよ」
「日本の文化のうちの一つですね」
「全く、日本人は幸せだよ」
「お風呂も楽しめるので」
「うん、素晴らしいよ」
 本当にというのです。
「じゃあ今日もね」
「お風呂もですね」
「楽しませてもらうよ」
「何か先生色々と」
「そうだね、日本に来てからね」
「楽しみが増えましたね」
「僕自身驚く位にね」
 それ程まで、とも言う先生でした。
「楽しみが増えたよ」
「余裕が出て来ましたか」
「イギリスにいた時以上にね」
「食べることについても」
「服もね」
「和服もよく着られて」
「いや、あれもいいね」
「よく似合ってますよ」
「甚平さんもだね」
「とても」
「あれもいいね、和服が似合うことは僕もね」 
 先生ご自身もというのです。
「嬉しいよ」
「そうですね、じゃあ」
「お風呂に入るよ」
「あったまって下さいね」
「そうさせてもらうよ」
 こうしたことをお話してでした、先生達はこの日はお休みするのでした。



皆の調査も済んで。
美姫 「特に問題なしって事ね」
更には実は彼の方もという良い状況だよな。
美姫 「とは言え、それだけですんなりといくはずもないんでしょうけれどね」
次の策としてはデートをさせる事にしたみたいだけれど。
美姫 「それこそ、どうやってその約束を取り付けるのかが問題よね」
だよな。お嬢さんの方からは難しそうだし。
美姫 「どうするのかと思ったら、その辺りはお静がどうにかするみたいね」
さて、計画は上手くいくのか。
美姫 「次回も楽しみにしてますね」
待っています。



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