『ドリトル先生と伊予のカワウソ』




              第十二幕  先生の四国への贈りもの

 カワウソさん達と狸さん達はすっかり仲良くなることが出来ました、先生は長老さんにお願いしてもらったことを見事成し遂げました。
 このことにです、先生は加藤さんそして動物の皆とお祝いをしていました。旅館でこれ以上はないまでのご馳走を食べてです。
 お酒も飲んでいます、先生は鯛のお刺身を食べながら笑顔で言いました。
「いや、よかったよ」
「全くですね」
 加藤さんもお酒を飲みながら笑顔で応えます。
「万事解決です」
「元々狸さん達がカワウソさん達と親しく」
「カワウソさん達も別に争う気がなかったので」
「お話はすぐにでしたね」
「まとまりましたね」
 そして無事に解決出来たというのです。
「よかったですね」
「本当に」
「一番よかったことはあれかな」
 トートーが言ってきました、鶏肉を食べながら。
「カワウソさん達が日本に住むことを決めていることかな」
「あっ、それだね」
 先生もトートーのその言葉に応えます。
「それが大きかったね」
「そうだよね、そこは先生と一緒だよね」
「僕にしてもね」
 先生もだというのです。
「ずっと日本にいるつもりだよ」
「永住を考えてるよね」
「仕事も日本にあるしね」
 だから余計にというのです。
「少なくともイギリスに帰ろうってつもりはないね」
「そうだよね」
「そう、そのことが先生と一緒よね」
「そうだね、カワウソさん達も日本で住みたかったから」
「今回のお話は上手にいったよ」
 先生は笑顔で言いました、海老の天ぷらをおつゆに入れてそうして食べながらトートーに応えたのです。
「確かにそのことが大きいね」
「全くだね」
「それにですよ」
 ここで、です。加藤さんが言ってきました。
「素晴らしいことに」
「素晴らしいとは」
「いえ、カワウソさん達が日本に住んでくれるんですよね」
「はい、そうですね」
「日本にカワウソが戻って来たんですよ」
 加藤さんは先生達にこのことを笑顔で言うのでした。
「これは素晴らしいことですよ」
「あっ、そういえばね」
「そうだよね」 
 動物達もこのことに気付きました、勿論先生もです。
「日本にはカワウソはね」
「もういないかもって言われたんだ」
「だからね」
「あのカワウソさん達が日本に住んでくれたらね」
「日本にカワウソがまた住む」
「そうなるんだね」
「そうだね、本当にね」
 先生も言います。
「僕も今気付いたよ」
「そうそう、よかったよ」
「このこと自体もね」
「ずっとこのことに気付かなかったけれど」
「イギリスと同じみたいに考えてて」
「日本のカワウソは長く見付かっていなかったんだ」
 また言う先生でした。
「本当に絶滅していないといいけれどね」
「確かにこのことは残念ですが」
 それでもとです、加藤さんは先生に言うのでした。
「先生のお陰で」
「カワウソがですね」
「はい、 日本に戻ってくれました」
 そうなったというのです。
「これは催行のプレゼントですよ」
「プレゼントですか」
「はい、先生から松山、四国の。ひいては」
 さらに言う加藤さんでした、その目を輝かせて。
「日本への」
「それは幾ら何でも大袈裟では」
「大袈裟じゃないですよ」
 全く、というのです。
「これは本当に凄いことですよ」
「そうなんですか」
「日本人も日本にカワウソがいなくなって残念に思っているのです」
 まだ絶滅とは言われていないかも知れません、しかしです。
 あのカワウソさん達が日本に移住してくれたからです、日本に再びカワウソがいる様になったのです。だから加藤さんも喜んでいるのです。
「それが先生のお陰で」
「だからですか」
「二百人おられますね」
「はい」
「その二百のカワウソさん達がです」
 加藤さんはお酒を飲むのを止めて先生に言うのでした。
「増えてそうして」
「松山からですね」
「四国全体に広がってくれて」
 そして、というのです。
「やがては日本中に」
「再びカワウソさん達が住むのですね」
「夢みたいなお話ですよ」
「夢ですか」
「いなくなった生きものが戻って来てくれたんですから」
 だからだというのです。
「本当に夢みたいなお話ですよ」
「何か先生凄いことしたんだね」
「そうみたいだね」
 ジップとダブダブも加藤さんのお話を聞いて言うのでした。
「日本全体にって」
「そんなに凄いことだったんだ」
「カワウソさん達と狸さん達を仲良くさせることって」
「そこまでだったんだ」
「いや、何かね」
 先生は戸惑いながら言いました。
「僕の思わぬ事態になったね」
「最初はね」
「あれよね」
 ホワイティとポリネシアが先生に言ってきました。
「ただカワウソさんと狸さん達が仲良くなれる様にって」
「間を取り持っただけだったよね」
「だからお互いにパーティーで楽しんでもらって」
「それだけだったんだよね」
「そうなんだ、確かに日本のカワウソが見られなくなったことは知っていたよ」
 だから動物園でも残念に思ったのです。
「けれどそれがね」
「凄いことになったね」
「日本にカワウソさん達が戻って来てくれたんだね」
 あのカワウソさん達が日本に移住して完全に住むと決めたからです、狸さん達と仲良くなれて不安がなくなったので。
「狸さん達とお友達になれて」
「松山も日本も好きになってくれて」
「だから不安がなくなってね」
「住むって決めたから」
「ううん、僕はそこまで考えていなかったけれど」
「あれだよ、先生」
 チープサイドのご主人が先生に言うことはといいますと。
「思わぬ結果になるってことがあるじゃない」
「何かをしたらだね」
「そう、そういうことってあるよね」
「それがこのことなんだね」
「このこともね」
 そうだというのです。
「それなんだよ」
「成程、そういうことなんだ」
「そうだよ、けれどいい思わぬ結果だよね」
「僕も意識していなかったけれどね」
「最高のハッピーエンドだよ」
 まさにというのです。
「本当にね」
「それでだけれど」
 ガブガブが先生に言うことはといいますと。
「先生これからどうするの?」
「どうするって?」
「いえ、何時神戸に帰るの?先生と私達は」
「今日で学会のシンポジウムも終わりだしね」
 だからだとです、先生はガブガブにお話しました。
「明日にはね」
「もう神戸に帰るのね」
「うん、そうだよ」
「元々は今日は最後のお祝いでした」
 加藤さんが先生にお話します。
「シンポジウムが終わった打ち上げに」
「それで開くつもりだったのですね」
「はい、しかし」
「それがですね」
「カワウソさん達と狸さん達がお友達になれたお祝いに」
「日本のカワウソさん達が戻って来た、ですね」
「そうしたお祝いになっています、ですから」
 それでだというのです。
「予定より豪勢なお祝いになっています」
「そうですか」
「そうです、ですから」
 加藤さんは先生にさらにお話しました。
「是非お楽しみ下さい」
「何か悪いですね」
「悪くないですよ」
 全く、とです。加藤さんは先生にまた言いました。
「私も楽しんでいますし」
「だからですか」
「はい、では」
 こう言ってです、加藤さんは先生に一杯注ぎました。先生は頭を下げてその杯を受けてです。
 そのお酒を飲みました、そうして言うのでした。
「また松山に来たいですね」
「そう思われますか」
「はい、とても素晴らしい場所ですね」
「観るべきもの、食べるべきものが多く」
「ですからまた」
「この松山に来られて」
「楽しみたいです」
 是非にというのです。
「機会があればまた」
「そうですか、では」
「その時はですね」
「またお迎えさせて頂きます」 
 加藤さんも先生に明るい笑顔で応えました。
「先生と動物さん達を」
「そうして頂けますか」
「喜んで。しかし」
「しかしとは」
「先生とずっと一緒にいて思ったことですが」
 それが何かというのです。
「先生は本当に日本についてよくご存知ですね」
「確かに先生はね」
「凄い日本通になったからね」
 オシツオサレツも言います。
「日本に来るまではそうじゃなかったのに」
「日本に来てからね」
「凄い日本に詳しくなったよね」
「本当にね」
「そうだよね、今じゃね」
「立派な日本通だよ」
「言葉だけでなく歴史や文学についても」
「日本にいるので日本のことを学んでいますが」
「おっと、それでもだというのですね」
「はい、それ程までは」
 謙遜してお話する先生でした、ここでも。
「褒めて頂くと」
「いやいや、先生はまことに」
「日本通だと」
「今も浴衣がお似合いですし」
 見ればです、先生は今も浴衣を見事に着こなしておられます。その浴衣姿を見てそうして言うのでした。
「日本人の様ですよ」
「物凄く親しんでるのは確かだね」
 老馬も先生に言います。
「日本の全てに」
「ううん、大好きなのは確かだよ」
「そう、それでね」
「僕は日本通になってるんだね」
「僕達から見てもそうだよ」
 先生はすっかり日本に親しんでいるというのです。
「日本生まれみたいだよ」
「日本酒もお好きですね」
 加藤さんは先生にまたお酒を勧めました、そのうえでの言葉です。
「こちらも」
「かなり」
「そのこともです、では今度松山にいらした時も」
「その時もですね」
「一緒に楽しみましょう」
「ではその時も」
「再会を約束して」
 こうお話をしながら今はお祝いをするのでした、そしてです。
 皆で楽しんで飲んで食べてその夜を過ごしました。それからでした。
 先生達は朝に船に乗って神戸に戻るのでした、その時にです。
 加藤さんに長老さんと老紳士、それに狸さんとカワウソさん達が来てくれてでした。
 皆で港から船に乗ろうとする先生達に笑顔で言いました。
「またね、先生」
「松山に来てね」
「そうして一緒にね」
「また楽しい時間を過ごそうね」
「うん、絶対にまた来るからね」
 先生は笑顔で皆に応えました。
「その時は」
「うん、じゃあね」
「またね」
 こう言い合ってでした、そして。
 お互いに手を振り合って笑顔で一時のお別れをするのでした、先生も動物の皆も松山に名残惜しいものを感じながら神戸の我が家に戻ったのです。
 神戸に戻った先生は日常生活に戻りました、すると。
 その先生のところに妹のサラが戻った次の日に来ました、そのうえで先生に対してこう言ってきたのです。
「昨日まで松山にいたのね」
「うん、そうだよ」
 居間で紅茶とティーセットを楽しみながらです、先生はサラに答えました。
「四国のね」
「松山ねえ」
「サラは行ったことがあるかい?」
「ええ、あるわよ」
 サラの返事はあっさりとしたものでした。
「一度ね」
「そうだったんだ」
「そうよ、主人と一緒にね」
「ご主人と二人きりだったんだね」
「まだ子供達が生まれる前のことよ」
 その時にだというのです。
「日本に旅行に行ってね」
「松山にも行ったんだね」
「九州に行って松山にも寄ったのよ」
「成程ねえ」
「長崎よかったわよ」
 サラは微笑みつつミルクティーを楽しみながら先生にこの街に行ったことをお話するのでした。
「坂道が多かったけれど」
「坂道はちょっとね」
「それが多かったけれど」
「楽しかったんだ」
「兄さんも一度行ってみるといいわ」
「機会があればね」
「そうしたらいいわ、それで松山ね」
 サラはその松山のことをです、先生にさらにお話するのでした。
「いい場所だったでしょ」
「とてもね」
「あんないい場所はそうはないわ、よかったわね」
「うん、楽しい旅だったよ」
 お仕事で行ったにしてもです、先生にとっては最高の旅行でした。だから今も明るい笑顔でサラに答えています。
「また行きたいよ」
「そうよね、まあ私はね」
「サラは?」
「主人のお仕事に同行してよく日本に来る様になったけれど」
 それは今回もです、だから今先生とお話しているのです。
「イギリスにいるから」
「日本のあちこちに行くことは」
「そうそう出来ないから、けれど兄さんは日本にいるからね」
「もっとあちこちを旅しろっていうんだね」
「機会を見付けてね、そうすべきよ」
「絶対になんだ」
「日本にずっと一緒にいるつもりよね」
「そうだよ、お仕事もあるしこのお家もあるし」 
 それでというのです。
「動物の皆もトミーも王子もいるからね」
「だったらよ」
「余計になんだ」
「そう、日本のあちこちに行くといいわ」
「長崎にもだね」
「長崎だけじゃないわよ」
 他の場所にもというのです。
「大阪や京都には行ったわよね」
「うん、もうね」
 特に大阪にはです、先生は結構行っています。
「楽しい場所だよね」
「だったらね」
 それならと言うサラでした。
「もっと巡るべきよ」
「日本のあちこちを」
「旅行も学問のうちでしょ」
「その通りだよ、いいフィールドワークだよ」
「それならよ、私の分まで行ってきたらいいから」
 サラは少しやっかみを入れて先生に言いました。
「折角旅行に縁があるんだからね」
「昔からね」
「サーカスしたりもしてたし」
「思えば色々してるね、僕も」
「正直兄さんどうなるのかって心配にもなったわ」 
 病院に動物ばかりがいる様になって患者さんが来なくなったこともあったからです、サラにしても心配だったのです。
「けれど日本で教授になって」
「王子の推薦でね」
「よかったわ、定職も出来ていいお家にも住める様になって」
「いいことだね」
「後は結婚だけね」
 サラも言うのでした。
「早く相手の人見付けてね」
「サラもいつもそう言うねえ」
「当たり前よ、何時まで独身なのよ」
「何時までって言われてもね」
「とにかく早いうちにね」
 何とかと言う口調で言うサラでした。
「いい人を見付けてね」
「誰かいるかな」
「誰かいるでしょ、まして今の兄さんは大学教授でしょ」
「結婚に立場が関係あるのかな」
「あるもあるも大ありよ」
 サラの今の口調は断言するのでした。
「ない筈がないでしょ」
「そうなんだ」
「そうよ、定職があってしかもそのお仕事の社会的地位がいいと」
「結婚しやすいんだ」
「今の兄さんはかなりの好条件よ」 
 結婚相手をお仕事から見ると、というのです。
「これ以上はないまでのね」
「そうだったんだね、僕は」
「そう、だからね」
「結婚すべきなんだね」
「絶対にね、いいわね」
「いつもそう言われても」
 またこう言う先生でした。
「こればかりは縁だからね」
「縁もあるけれどまずは努力よ」
「努力なんだ」
「そう、努力よ」 
 まさにというのです。
「結婚することもね」
「そこでも努力しないといけないんだ」
「私だって努力して結婚したのよ」
 つまり頑張ったというのです。
「それに今もね」
「結婚してからもなんだ」
「そう、努力してるから」
「人生全てにおいて努力だね」
「その通りよ」
 まさにというのです。
「だから兄さんは結婚についても努力するのよ」
「どうにかなるかな」
「なるわよ」
 一言で返したサラでした。
「何とでもね」
「皆そう言うけれどね」
「兄さん、男の人は外見じゃないわよ」
 いささかぴしゃりとした感じの言葉でした。
「中身よ」
「そのこともいつも言われるよ」
「兄さんはその点問題ないから」
 先生の性格はサラもよく知っています、何しろ先生の実の妹さんですから。
「絶対にね」
「相手の人が見付かるんだ」
「見付けるのよ」
 こうも言うのでした。
「いいわね、いい人をね」
「悪い人だったら?」
 見付けた人がそうだったらとも言う先生でした。
「若しも」
「そんな人とは一緒にならないの」
「絶対にだよね」
「そう、何があってもね」
 そうしなければならないというのです。
「いい人を見付けるのよ」
「日本にいるかな」
「兄さん日本人は嫌い?」
「いや、別に」
 そう言われてもすぐに答えた先生でした。先生にとって人種的な偏見とは全く縁のないものだからです。
「日本人でもいい人がいれば悪い人がいるよ」
「イギリスと一緒でね」
「どの国でも一緒だよ」
 世界中を巡ってきたからこそ言えることです。
「だから日本人でもね」
「そうよね、いい人がいれば悪い人もいるから」
「だから僕も」
「そう、いい人を見付けるのよ」
「この日本でも」
「そうしたら私も安心出来るし」
「サラもって」
「だって、兄さん日常生活はまるで駄目だから」
 このこともよく知っているサラでした、先生が世の中のことには本当に疎いことも。
「だからよ」
「奥さんがいたら」
「大丈夫でしょ、動物達と一緒にいるのもいいけれど」
「家族も必要なんだね」
「そうよ、確かなお仕事にも就けたし」
 大学の教授にです。
「後は結婚だけだから」
「じゃあ探すよ」
「そうしてね、頼むから」
「まあ何とか。そういえばサラって」
「私がどうしたの?」
「いや、よく日本に来るよね」
 先生が今サラに言うのはこのことでした。
「本当にね」
「だからお仕事の関係でよ、主人の」
「それでだね」
「そう、日本のお茶もイギリスで売ってるし」
「日本のお茶の種類は多いね」
「凄くね、最近はグリーンティーが人気よ」
 お抹茶です、それが売れているというのです。
「茶道をしている人も出て来てね」
「へえ、茶道を」
「そうよ、日本のね」
「それは凄いね」
「あの渋さに最初はびっくりするけれど」
 それでもだというのです。
「慣れるとね」
「美味しいね、あのお茶は」
「本当にね、僕も最近よく飲むよ」
「三時にかしら」
「三時にも飲むね、それでティーセットもね」
「日本のお菓子になってるのね」
「ははは、そうなんだよ」
 先生はサラに笑顔でお話しました。
「いや、こっちも中々いいね」
「兄さんどんどん日本人になってきてるわね」
「そうだね、この国は凄くいい国だよ」
「兄さんに合ってるみたいね」
「というか僕が日本に受け入れてもらってるのかな」
「懐の広い国でもあるのね、日本は」 
「そうだよ、この国は本当に凄いよ」
 先生はサラに日本のそうした一面もお話するのでした、そうしてこの日は二人でお茶を楽しみました、それから数日後。
 今度は王子とトミーがでした、先生の研究室に着て言うのでした。
「先生、何かね」
「松山が大騒ぎになってますよ」
「先生がこの前に行った場所だけれど」
「あそこが」
「大騒ぎ?何かあったのかな」
 先生は丁渡講義の後で休憩しているところでした、そこで玄米茶を飲もうとしたところで二人が来て言ってきたのです。
「地震とかじゃないよね」
「ああ、そういうのじゃないから」
「災害の話じゃないよ」
 二人はそうした不吉なことではないと断りました。
「どっちかっていうといいお話だから」
「そうしたお話だよ」
「いいお話?何かな」
「カワウソだよ」
 王子が言ってきました。
「松山の川で野生のカワウソが見付かったんだ」
「それも何匹もね」
 トミーも先生にお話します。
「目撃されたんだよ」
「絶滅したんじゃないかって思われてたけれど」
「野生のカワウソ達が何匹も泳いでいてね」
「写真にも動画にも撮られたんだよ」
「あっ、カワウソさん達だね」
 先生も言われてわかりました、それではっとしたお顔になって言うのでした。
「あの人達が」
「凄いよね、日本でカワウソが目撃されなくなってかなり経つんだよ」
「それが出て来たんだよ」
「これって凄いよ」
「本当にね」
「そうだったね、あのカワウソさん達が日本に移住してくれたから」
 先生はここで完全に気付きました、それで言うのでした。
「そうなるね、当然として」
「?当然って」
「先生どうかしたの?」
「いや、何でもないよ」
 このことは言わない先生でした。
「別にね」
「とにかく。日本にはまだ野生のカワウソがいたんだ」
「それも何匹もね」
「それで松山が大騒ぎになってるんだ」
「他にもいるんじゃないかってね」
「いるよ」
 先生は笑顔で二人に答えました。
「もっとね」
「そうだよね、まだね」
「一杯いるよね」
 二人も先生に笑顔で応えます。
「いや、本当にね」
「凄いことになってますよ」
「あとトミー」 
 ここで王子はトミーに言いました。
「今喋り方がね」
「あっ、先生に対して」
「いつもより砕けてるね」
「そうなってたね」
「それだけ興奮してるのかな」
「ちょっとね」
 トミー自身もです、王子にこう答えました。
「あんまり凄いことだからね」
「我を忘れてだね」
「そうなっていたかも、すいません」
「いやいや、いいよ」
 先生はトミーの謝罪に笑顔で応えていいとしました。
「気にしないでね」
「有り難うございます」
「それにしても。思わない結果になったね」
 先生はしみじみとして言いました。
「日本にカワウソが戻って来てくれたんだね」
「戻って来たっていうか」
 トミーが先生にお話します。
「いたんですね」
「ははは、そうなるのかな」
「そうですよ、これだと若しかして」
「若しかして?」
「ニホンオオカミもまだいるかも知れないですね」
 この動物もだというのです。
「ひょっとしたらですけれど」
「そういえばそんなお話もあるよね」 
 王子もニホンオオカミのことを聞いて言います。
「まだいるんじゃないかって」
「うん、何処だったかな」
「奈良県の奥だね」
 先生が二人に言ってきました、トミーだけでなく王子にも。
「そこにまだいるんじゃないかって言われているね」
「奈良県ですか」
「そう、あの県にね」
「奈良県っていうとあの物凄く大きな仏像のある」
「東大寺の」
「はい、あの県ですよね」
「あの仏像だけじゃないよ」
 奈良の大仏だけではありません、奈良県にあるものは。
「他にも沢山の有名なお寺や神社があるんだよ」
「日本の宗教施設がですね」
「それが奈良県だよ、その奥のね」
「南の方にですね」
「うん、ニホンオオカミがまだいるんじゃないかっていうね」
「本当にいたらいいですね」
「そうだね、僕はいて欲しいと思っているよ」
 にこりと笑ってです、先生はトミーに答えました。
「本当にね」
「そうですよね」
「いたらね」
 それならというのです。
「カワウソさん達みたいに大騒ぎになるね」
「いい大騒ぎにですね」
「なるよ、けれど本当にね」
「カワウソさん達はですね」
「よかったよ」
 いてくれて、というのです。先生にしてみれば移住してくれてです。
「誰にとってもね」
「ですよね、日本の人達もほっとしてますよね」
「いなくなった人がいてくれてるとわかったらね」
「やっぱり嬉しいですよね」
「誰でもね」
「そうですよね、じゃあ先生」
 トミーはお茶、玄米茶を入れて先生に言いました。
「お酒じゃないですけれど」
「乾杯だね」
「そうしますか?」
「いいね」
 先生はトミーのその申し出に笑顔で応えました。
「それじゃあ今からね」
「お茶で乾杯しましょう」
 こうして三人で、でした。カワウソさん達のことでお茶で乾杯しました。先生は日本に思わぬ贈りものをしましたがそのことについては内緒にして笑顔のままでいるのでした。


ドリトル先生と伊予のカワウソ   完


                               2014・5・14



松山での一仕事も終えたみたいだな。
美姫 「学会も含めてね」
しかし、カワウソと狸の間を取り持っただけのつもりだったのにな。
美姫 「確かにね。でも、よく考えたら絶滅したカワウソが移住とはいえ、住み着いたらね」
結果として、かなりの大仕事になってしまったな。
美姫 「それを自慢しないのはやっぱり凄いわね」
だな。これで先生の松山でのお話は終わったけれど。
美姫 「他にどんな話があるのか楽しみね」
だな。次章も楽しみにしてます。
美姫 「待ってますね〜」



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