『ヘタリア大帝国』




                 TURN54  ハワイの酋長

 ハワイは陥落し太平洋軍は駐留をはじめた。その中でだ。
 東郷はまずはフィリピンと会った。彼は日本と共にフィリピンの前に来て話した。
「ここに来た理由はだ」
「うん、僕にそちらに入って欲しいっていうんだね」
「太平洋軍にな。いいか?」
「まあね。本土はもうそっちだし」
 既にマニラ2000は占領されている。このことは否定できない。
「それに独立もだよね」
「ああ、ガメリカと同じくな」
「保障してくれるね」
「勿論だ。保障する」
「それじゃあ。僕としてもね」
 フィリピンは特に悩むことなく東郷の言葉に頷いた。そしてこう答えた。
「それでいいよ。じゃあこれからはね」
「宜しくお願いします」
 日本が応える。こうしてフィリピンは太平洋軍に加わることになった。
 彼の加入はつつがなく収まった。だが。
 イザベラはきつい顔でこう東郷に言った。
「お断りします」
「そうか。それならだ」
「拷問の類にも屈しないのであしからず」
 イザベラは腕を組みきつい顔で答える。
「私はあくまでガメリカ軍人です」
「ではだ」
「何をされるおつもりですか?」
「それでいい。君を捕虜、将官の待遇で受けよう」
「拷問等はされないのですか?」
「それともされたいのか?」
 東郷はあっさりとした感じでイザベラに返した。
「君が望むのならそのサービスも用意するが」
「いえ、いいです」
 流石にそれは断るイザベラだった。
「では私はこのまま」
「気が変わったらまたな」
「祖国さんにでも言われない限りはありません」
 彼女の祖国であるアメリカにだというのだ。
「そういうことであしからず」
「ではな」
 イザベラは今は加わらなかった。そして中帝国でも。
 ハワイでのガメリカの敗北を受けて皇帝は苦々しい顔で中国兄妹と軍事顧問であるキャヌホークに対してこう言っていた。
「まさかとは思ったがな」
「申し訳ありません」
 キャヌホークが頭を下げて皇帝に謝罪の言葉を述べる。
「我々が至らないばかりに」
「貴官が謝る必要はない」
 皇帝は憮然としながらもそれはいいとした。
「だがこの敗戦でだ」
「こちらからの反攻作戦はですか」
「中止しよう」
 皇帝はこの作戦についてはこう述べた。
「今はな」
「また次の機会にですか」
「ガメリカが反撃に出てからだ」
 その時に反攻作戦を行なおうというのだ。
「今は仕掛けても敗れるだけだな」
「お言葉ですが」
 その通りだとだ。キャヌホークも答える。
「日本も強いです。ですから」
「この状況で仕掛けるのは愚だな」
「その通りです。機を待ちましょう」
「それではな。それでキャヌホーク中将」
 皇帝は彼の氏名と階級をここで口にした。
「貴官に本国への帰還要請が出ているそうだな」
「ゲイツランド防衛艦隊の司令官に任命されました」
「では間も無くこの国を後にするか」
「申し訳ありませんが」
 参謀格である軍事顧問がいなくなる、中帝国が反攻作戦を執れない理由はここにもあった。
「戦局が好転すれば戻ってきますので」
「ではその時にだな」
「はい、反攻作戦に移りましょう」
「わかった。それではな」
 皇帝も不機嫌であるがそれでも頷いた。そして今度は中国兄妹に対してこう命じたのだった。
「では今はだ」
「軍を整えるあるな」
「その時に備えて」
「何時でもそれに移れる様にしてくれ」
 こう命じたのである。
「そうする様にしてくれ」
「わかったある。それでは」
「今は機を伺うある」
 こうして中帝国は反攻作戦に移らず今は待つことにした。皇帝はキャヌホークの送別の宴も開き彼を送った。中国兄妹はその宴の後でキャヌホークにこう話した。
「また戻って来るあるよ」
「待っているあるよ」
 大使館に入る二人に言う。
「けれど今はある」
「お別れあるな」
「そうだね。けれどすぐにまた会えるよ」
 キャヌホークはあえて明るく二人に述べた。
「中国さん達ともね」
「戦局が好転したらあるな」
「その時に」
「まさかハワイで負けるとは思っていなかったけれど」
 これはキャヌホークにとっても想定していないことだった。まさにまさかの敗北だった。
 しかし敗北は事実だ。それならだった。
「挽回するよ。その時にね」
「また会うある」
「そうしようある」
 こう話してそのうえでだった。キャヌホークは中帝国を後にする。選曲は明らかに変わってきていた。
 そのハワイを占領した太平洋軍はハワイの治安回復に努めると共に次の作戦に移ろうとしていた。次の攻撃目標はというと。
「カナダ、そしてだ」
「ケベックとアラスカですね」
「この三つの星域を攻めよう」
 東郷は作戦会議の場で秋山達にこう述べた。
「カナダからな」
「USJからは攻められないのですね」
 日本妹が東郷に問うた。
「そうされないのですか」
「USJは今現在ガメリカ軍の主力が展開しているな」
「はい」
「しかも防衛施設が半端じゃない」
 ガメリカ本土の玄関口だ。それでそうなっているのだ。
「そこに正面から攻め入るよりな」
「まずは、ですか」
「カナダ方面を固め」
 そしてだった。
「ゲイツランドも占領してだ」
「それからですか」
「USJ攻略にかかろう」
「そしてUSJで、ですね」
 ここで日本も言う。
「第二の決戦ですね」
「そこでおおよその決着がつく」
 ガメリカとの戦いがだというのだ。
「だからカナダ方面を攻略してだ」
「戦力をさらに拡充させますか」
「そうするとしよう」
 こう言ってそのうえでだった。太平洋軍は次の戦略目標も決めたのだった。
 その彼等は遊びもした。ハワイの海は眩しい。
 宇垣は赤い褌姿でこう言うのだった。
「水練は欠かしてはならんぞ」
「あの、外相」
 日本がその宇垣に対して引きながら言う。
「前から思っていたのですが」
「むっ、祖国殿何か」
「長官は今も下着はそれですか」
「これは水着用ですぞ」
「それでも褌なのですか」
 その見事な赤褌を見ての言葉だ。
「トランクスではなく」
「日本男児ですから」
 それでだと豪語する調子で返す宇垣だった。
「この格好なのです」
「そうですか」
「祖国殿はもう褌ではないのか」
「下着も水着もトランクスです」
 それだというのだ。
「ですから。今褌というのは」
「快適ですぞ」
 宇垣は笑顔で言う。
「いや、やはり褌が一番です」
「しかし。浮いていますが」
「そうでしょうか」
「ですからせめてです」
 日本は困った顔で宇垣に言う。
「トランクスタイプのものに」
「いえいえ、日本男児たるもの」
「褌ですか」
「そうでなければなりませんぞ」
「祖国殿、やはりです」
 山下もいる。抜群のスタイルが見事に出る競泳水着だ。黒をベースにして黄色と白の配色が鮮やかである。
 その山下もこう日本に言う。
「宇垣殿はこれでよいかと」
「褌がですか」
「私も褌は日本男児の象徴だと思いますが」
「だからですか」
「はい、それに褌ならです」
 山下は褌についてさらに話す。
「長いですから泳いでいても」
「それで大きく見えてですね」
「鮫よけにもなるではありませんか」
「よくそう言われていますね」
「はい、だからいいと思いますが」
「そうなりますか」
 こう応えても日本は今一つ浮かない顔をしている。そのうえで傍らで準備体操をしている田中に顔を向けた。彼は黒のトランクスタイプだ。
 その田中にこう声をかけたのである。
「田中さんはトランクスですね」
「俺は下着もこれだぜ」
「褌ではないですよね」
「いや、褌も嫌いじゃないさ」
「そうなのですか」
「やっぱり漢の下着だろ」
 こう言うのである。しかも笑顔で。
「褌ってのはな」
「そうですか」
「ああ、それで祖国さんも昔はだろ」
「はい、褌でした」
「だったらいいじゃねえか」
「それはそうなのですが」
 また宇垣の褌を見て言う日本だった。
「周りがトランクスやビキニの中でこれは」
「猥褻です」
 黒のスクール水着姿の小澤も言う。
「褌の持つ猥褻さが出ています」
「わしが猥褻だというのか」
「やらないか」
 小澤はこんな言葉も出す。
「くそみそテクニック」
「何か随分不吉な言葉だのう」
「もっと言えば布団を敷こう、な」
「それ位で止めて下さい」
 日本は小澤の暴走をここで止めた。
「どんどん気持ち悪くなりますから」
「そうですか。では」
「しかし。外相があくまでそう言われるなら」 
 日本もそれで止めるというのだった。
「私からは何も」
「そう言って頂けますか」
「はい。では泳ぎますか」
「水練も重要な鍛錬ですからな」
「それでは」
 こうして一同は泳ぐ為に海に入ろうとした。だが。
 その海が急に騒がしくなった。見れば海に十メートルはある海蛇型の怪獣が出てきて暴れだしていた。かなり凶暴そうだ。
 宇垣はその怪獣を見てすぐにこう言った。
「では私が成敗してきましょう」
「しかしあの大きさでは」
「何、かつてはより大きな怪獣を退治したことがあります」
 意外と武道にも秀でているらしい。ただ口うるさいだけで提督にはなれない。
「ですから今から」
「私も行きましょう」
 宇垣と同じく生真面目で災害を放置できぬ山下も出て来た。
「この菊一文字で一刀両断です」
「長官の今の刀はそれですか」
「はい、虎徹は実家に置いています」
「正宗もですね」
「祖国殿より授かった刀は全て大切に置いています」
 日本は山下家の代々の将軍達に刀を授けてきている。その数はかなりのものになっており山下はその全てを大切に保管しているのだ。
 その中の菊一文字を手にして言うのである。
「この刀ならあの程度の怪獣なぞ」
「造作もありませんか」
「私と外相がいれば」
「うむ、では二人で参ろうぞ」
「そうしましょう」 
 二人で海に入り今まさに砂浜まで上がり暴れようとする怪獣に向かおうとする。
 しかしそこに一人の大男が来て怪獣に向かい。
 海の中で闘いだした。そして一瞬で。
 怪獣をノックアウトした。これには日本も驚いた。
「何と、あれだけの怪獣を一瞬で」
「強いですぞ、それもかなり」
 宇垣も驚きを隠せない顔で言う。
「あの御仁は一体」
「あれは確か」
 山下も驚きを隠せない顔で怪獣を倒した男を見ている。
「このハワイの酋長ギガマクロです」
「ギガマクロ酋長。確か」
「はい、ガメリカに統治を譲った南洋の盟主です」
「そうだったな。あれがそのギガマクロ酋長か」
「噂では生身で銀河にも出られるとか」
「おい、そりゃ化け物だろ」
 田中は山下の今の言葉にこう突っ込む、
「生身でかよ」
「そうらしい」
「ハワイの酋長ってのはどんなのなんだよ」
「そこまでの怪物だからですね」
 驚く一同の中で小澤だけはいつも通り淡々としている。
「あれだけの怪獣を素手で殴り」
「倒せたのですね」
「そうだと思います」
 小澤は日本にも話す。
「とにかく凄い人がいるものですね」
「確かに。こちらに来られていますが」
 その怪獣を担いで海に向かってきている。深い筈の海を何なく立って泳いでいる。
 日本はそのギガマクロを見てこう言うのだった。
「一度お話してみましょうか」
「そうですな。ハワイの酋長ですしな」
 宇垣は外相として己の祖国の言葉に頷く。
「今から」
「はい、お会いしましょう」
 こうした話をしてだった。日本は自分から海にあがったギガマクロに声をかけた。
「あのギガマクロ酋長ですね」
「そういう貴殿は日本殿か」
「はい、宜しくお願いします」
 後ろに宇垣達を置いての応対である。
「それでなのですが」
「怪獣は退治した。安心してくれ」
 怪獣は砂浜に放り出される。確かに十メートル以上ある。
「泳げるようになったからな」
「いえ、それよりも」
「むっ、わしに用か」
「はい、お話をしたいのですか」
「日本殿が話をするとなると」
 ギガマクロも日本が何を話したいか大体わかった。そうしてだった。
 両者は東郷も呼んでそのうえで海辺での会談に入った。ギガマクロはその場で開口一番こう言ったのだった。
「わしはもう隠居じゃ」
「だからですか」
「お誘いの前に言っておく」
 こう日本にも言う。
「気ままに暮らしたいのでは」
「そうですか」
「そういうことじゃ」
 豪快な笑顔での言葉だった。
「ではよいな」
「そうですか。それでは」
「今ハワイの統治はアメリカさんから離れたな」
「日本の統治下になります」
「日本殿、さんでもよいか」
「はい、どうぞ」
 それはいいとする日本だった。このやり取りも入れて話をしていく。
「では日本さん」
「独立のことですが」
「それもいい。ハワイの国民もじゃ」
「ガメリカ領のままでいいですか」
「戦争の後でアメリカさんに返すじゃろ」
「その予定です」
 日本には領土的野心はない。このことはアメリカにも既に打診している。ただしまだこれといって返答はない。
「独立されないのなら」
「ではわしもハワイもこのままでいい」
「アメリカさんと一緒に過ごされますか」
「そうしたい。では独立のこともな」
「わかりました」
 独立の話もなくなった。しかしここで。
 ギガマクロは少し困った顔になってこう言うのだった。
「実はのう」
「何か」
「わしも娘がおらんようになったのじゃ」
「娘さんがおられるのですか」
「そうじゃ。これが可愛い娘でな」
 楽しげに笑って親バカなところも見せる。
「いつも一緒におったのじゃガ最近な」
「おられないのですか」
「何処におるのか」
 ギガマクロは暗い顔になって日本に言っていく。
「さて、不安じゃ」
「その娘さんってのはどういう人だろうか」
 東郷はそのギガマクロに問う。
「それがわかれば捜索に協力させてもらいますが」
「つぶらな瞳でじゃ」
 ギガマクロはまずここから話した。
「そして薄紫の長い髪でな」
「髪はそうで」
「そして可愛らしく大きさは」
「どれ位ですか?」
 東郷も年配者には礼儀を見せて応える。
「それは」
「大体三十センチか」
「随分小さいですね」
「わしの一族は大人になり一気に大きくなる」
「成程、だから娘さんはその大きさで」
「空を漂うこともできる」
 この銀河の主流の人類とは明らかに違っていた。
「そしてふよふよといつも言う」
「かなり目立ちますね」
「そうだな」
 日本と東郷はギガマクロの話をここまで聞いて述べる。
「それだと見つけやすいのでは」
「俺もそう思う」
「では今から」
「手配をするか」
「わしは確かに隠居しておるが」
 ギガマクロはここでここうも言う。
「それでも娘を探し出してわしの前に連れて来てくれれば」
「その時にはですね」
「礼として戦う」
 太平洋軍に入りそうしてだというのだ。
「そうさせてもらおう」
「いえ、そうしたお約束がなくともです」
「娘を捜してくれるか」
「そして酋長に返させてもらいます」
「そうしてくれるか」
「義を見てせざるは勇なくなりです」
 日本はギガマクロにこの言葉もだして言う。
「ですから」
「噂通りじゃな。仁義のある御仁じゃ」
 ギガマクロは日本の心も見て楽しげに微笑む。
「では頼む」
「お任せ下さい」
 こうしてハワイの治安を回復させるj中でギガマクロの娘の行方を調べることになった。捜査は難航すると思われた。 
 だがすぐに話を聞いた田中が日本のところに来てこう言ってきた。
「なあ祖国さん」
「何でしょうか」
「あの酋長の娘さん捜してるんだよな」
「はい、そうです」
 日本はその田中に答えた。
「外見の特徴はお聞きしていますね」
「もうな。そいつはな」
「田中さんは見掛けられたのですか?」
「こいつじゃねえのか?」
「ふよよ〜〜〜」
 声がした。見れば田中の左肩の上に妖精みたいなものが飛んでいた。その妖精みたいなものこそまさにだった。
「そうだよな」
「モンタージュそのままですね」
「だよな。ずっと俺のところにいるんだよ」
「そうだったのですか」
「ハワイ占領前からな。何かと思ってたけれどな」
「酋長の娘さんだったとは」
「俺もびっくりだぜ」
 実際にこれは田中の想定範囲外のことだった。
「まさかこいつがな」
「ですが見つかったからには」
「ああ、今からな」
「この方を酋長のところにご案内しましょう」
「早速んな」
 こうしてだった。日本はその妖精の様な不思議な娘を田中と共にギガマクロの下に案内した。ギガマクロもその少女を見て。
 即座に満面の笑顔になりこう言ったのだった。
「おお、娘よ!」
「ふよふよ〜〜」
「よく戻って来た!そうか、遊びに行ってか!」
「ふよよ」
「道に迷ったのだな」
「この娘さんも銀河を行き来できるんだな」
「その様ですね」
 日本は親娘のやり取りを聞きながら田中の言葉に頷く。
「どうやら」
「そうだよな。けれどな」
「はい、何はともあれですね」
「親娘の対面だよな」
「よかったです」
 ギガマクロは娘とあっさり再会できた。そして。
 そのうえで彼はこう日本達に言った。
「では約束は約束じゃ」
「太平洋軍に加わって頂けますか」
「そうさせてもらう。では今からな」
「お願いします」
「ではわしは何処にいればいい」
「とりあえずはハワイに駐留して下さい」
 つまり今のままでいいというのだ。
「今はここが最前線ですから」
「わかった。それではな」
「しかし。本当にですか」
「艦隊は率いたりはせぬ」
 ギガマクロにそういうことはなかった。
「わしが一人でビームを放ち戦う」
「銀河の中でも」
「わしは銀河の中でも普通に動けるのじゃ」
「ふよよ」
「娘もじゃ」
 ギガマクロは自分の右肩に止まる娘も見ながら話す。
「そうなのじゃ」
「ではご自身だけで」
「やらせてもらうぞ」
 こうしてギガマクロも太平洋軍に加わった。こうした話も挟み。
 太平洋軍はカナダへの侵攻準備に取り掛かりだしていた。東郷は作戦会議の場で提督達にこう話した。
「ハワイにはUSJへの備えとしてある程度の艦隊を置いておこう」
「どれだけの艦隊だい?」
 南雲が東郷に問う。
「それで」
「六個だな」
 それだけの艦隊を置くというのだ。
「残るのは酋長に」
「わしだな」
「それにインドさんにも残ってもらうか」
「僕たいな」
「ああ、それにハニートラップ提督にネクスン提督だ」
 この二人もだった。
「後は韓国さんと韓国妹さんだな」
「俺もなんだぜ?」
「そうしてくれるか」
「やっぱりハワイ戦のダメージが影響してるんだぜ」
「まあそうなる。艦隊の修理も兼ねてな」
 ハワイには修理工場もある。この面からも重要な軍事基地である。
「暫く残ってくれ」
「それで東郷さん達はその間に、ニダな」
「まずはハワイに残す以外の全ての戦力でカナダを攻める」
 そうするというのだ。
「そこからケベック、アラスカも攻略し」
「それからニダな」
「ゲイツランドも攻略する」
 ガメリカ本土のこの星域もだというのだ。
「そしてゲイツランド、ハワイの二方向からだ」
「USJを攻めるニダな」
「そのつもりだ。一方向から攻めるよりもな」
 戦力が許せば二方向から攻めればいいというのだ。
「だからそうする。どうだ」
「異論はねえぜ」
 田中がまず答えた。
「それでな。じゃあ今回も派手に行くか」
「そうする。無論潜水艦艦隊も全て出撃だ」
「ああ、わかったぜ」
「カナダにはハルゼー提督がいたな」
 東郷が彼女の名前を出すとキャシーが言ってきた。
「強いよ、あいつは」
「ガメリカ軍の艦載機運営の専門家だったな」
「占いも得意だけれどね」
「何でもそうした種族の血を引いているそうだな」
「耳見ればわかるだろ。あいつはな」
「そうした人か」
「そうだ。結構直感もあるんだよ」
 キャシーは常に彼女といただけによく知っていた。
「空母使わせたら右に出る奴はいないよ」
「そうか、わかった」
「まあやり方はあるだろうけれどね」
「なくて攻めはしない」
 東郷はあっさりとキャシーに返した。
「策は既にある」
「そうかい。じゃあ安心して攻められるんだね」
「そして勝てる」
 東郷はこうも言う。
「今回もな」
「そうかい。それじゃあね」
「全軍カナダに入る」
 東郷はあらためて言った。
「そうしよう」
「よし、それじゃあ今度も」
「やるか」
 こうして太平洋軍はハワイからカナダに進むことになった。そのカナダではドロシーがカナダ兄妹と話をしていた。
「貴方達は確か」
「だからカナダだよ」
「妹です」
 影の薄い二人はドロシーにも忘れられていた。
「何で覚えてくれないのかな、誰も」
「そうよね。私達だって連合国なのに」
「人は忘れるものだから」
 無慈悲なまでにクールなドロシーの言葉である。
「だから仕方ないわ」
「いや、仕方なくはないから」
「それはね」
「けれど。二人共」
 カナダだけではなく妹もだと言うドロシーだった。
「祖国さんと比べると本当に」
「目立たないっていうんだね」
「存在感がないって」
「というか連合国ね」
「っていつも会議に参加してるけれど」
「それでも気付かないのね」
「祖国さんとはいつもお話をしてるわ」
 ドロシーはあくまでアメリカを見ている。しかしカナダはだというのだ。
「それで済むから」
「うう、どうしたら目立てる様になるのかな」
「多分無理」 
 ドロシーの言葉には微塵の容赦もない。
「諦めるべき。けれど目立たないから」
「僕のところに作ったんだね」
「この研究所のことは私と祖国さんと」
「僕達だけが知ってることだよね」
「祖国さんはいいとは思っていないけれど」
 アメリカは反対しているというのだ。
「けれどいざという時は」
「僕も止めた方がいいと思うよ」
 カナダはドロシーに親身に注意をした。
「そうしたことはね」
「犯罪者の頭脳だけを出して機械の身体に入れて」
「それで兵士に仕立てる」
「あらゆる能力が生身の人間を超越してるんだよね」
「しかも互いに瞬時に情報を交換して強くなっていく」
「それって確かに凄いよ」
 カナダもそうした兵士が完成すればかなりの戦力になると思っている。だがそれでもだというのである。
「けれど。人道的にもどうかと思うし」
「相手は死刑判決を受けた凶悪犯だから」
「どっちにしても死刑にするからだっていうんだね」
「そう。それにそうした兵士が前線に立てば」
 ドロシーはさらに言う。研究所の中は無機質で三人の左右には無数の機械の身体が林立している。その中を進みながらのやり取りだ。
「一般の兵士が傷付かない」
「一理あるかも知れないけれど」
 今度はカナダ妹が曇った顔で言う。
「それでもやっぱり」
「いえ、ガメリカの為に」
 淡々と言うドロシーだった。
「手を打つわ」
「どうしてもなんだね」
「この兵士達を開発するの」
「もうすぐ完成するから」
 ドロシーはカナダ兄妹に述べる。
「そして勝つから」
「じゃあもうすぐ枢軸軍が来るらしいけれど」
「守りきるわね」
「お願いするわ。ハルゼー提督もいるから」
 ガメリカ軍もカナダに援軍を出している。その彼女もいるというのだ。
「安心して」
「うん、まあ戦うからにはね」
「勝つから」
 二人はドロシーの計画とその完成により出て来るものについて危惧を覚えていた。だがそれでも彼等は今は戦うしかなかった。戦争はカナダにも及ぼうとしていた。
 その中でドロシーはこう言うのだった。
「ただ。私の予想では」
「予想?」
「予想っていうと」
「太平洋軍はUSJから攻めて来ると思っていたわ」
 四姉妹のドロシーもそう読んでいたのだ。
 しかし彼等はカナダから来る、このことについてこう言うのだ。
「ハワイからカナダへのルートを彼等が見つけたことは」
「向こうの戦略が広がったね」
「それもかなり」
「そう。正面からUSJに攻め入ってくれれば」
 ドロシーはガメリカの事情に基き言う。
「正面から全力でぶつかり勝てた筈」
「僕達も頑張るから」
「頼むわね」
「うん、折角の出番だし勝たないといけないからね」
「そうね。若しここで負けたら」
 カナダはどうなるか。ただ占領されるだけではなかった。
「カナダさん達の存在感は今以上になくなるわ」
「どうしても目立てないんだね、僕って」
「韓国さんみたいに起源の主張をすれば目立てるかも知れないわ」
「何の起源を主張すればいいのかな」
「色々」
 それについては一概に言えなかった。
「言えばいいから」
「けれど人類の起源はとか言ってもね」
「すぐにあの犬の神様に論破されるわね」
「僕論破されたら言えないから」
 それで終わるのがカナダだ。そこからも言うのが韓国だ。
「だから駄目なのかな」
「多分」
「まあとりあえずはね」
 二人の話が一段落したところでカナダ妹が口を開いた。
「ここはもうすぐ戦場になるけれどドロシーさんはここにいて」
「この研究所はシェルターでもあるから」
「そう。ただね」
「万が一のことがあったら」
「その時は逃げる用意をしておいて」 
 そうして欲しいというのだ。
「そうしてね」
「退避できるだけの時間は僕達が稼ぐよ」 
 カナダも微笑んでドロシーに言う。
「その時はね」
「有り難う」
「お礼なんていいよ。長い付き合いだしね」
 ドロシーはアメリカとだけでなくカナダとも古い交流がある。例えその存在を忘れることが多くともそれでもだ。
 だからカナダも微笑みで返す。こうしたやり取りも経て。 
 カナダでの戦いの時を迎えようとしていた。しかし彼等はここにいるのは連合の者達だけと思っていた。密かに黒服の、しかも怪しい者達が潜り込んでいて彼等を見ていることには気付いていなかった。


TURN54   完


                            2012・9・16



ハワイの統治に関しても終わったみたいだな。
美姫 「ギガマクロも娘の件で提督になったしね」
これでハワイの防衛もある程度は楽になるかな。
美姫 「重要な拠点だけに防衛にも手を抜けないものね」
ああ。で、次はいよいよカナダか。
美姫 「相手の意表を突けるかと思ったんけれどね」
無理っぽいな。それに、最後に気になる所が。
美姫 「一体、何なのかしらね」
次回も待っています。
美姫 「待ってますね〜」



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