『ヘタリア大帝国』




               TURN142  最後の出撃

 全ての超艦艇が完成し選ばれた精鋭達が乗り込む、彼等はチェリノブのホワイトホールから別世界にいるラムダスの女王を倒しに行くのだ。
 その彼等を総員で見送る、東郷と日本に帝が声をかける。
「ではお願いします」
「はい、勝ってきます」
「そのうえで帰ってきます」
「待っていますね」
 帝は二人にこれまでにない優しい微笑みで告げた。
「最高のご馳走を用意して」
「ははは、それは嬉しいですね」
 東郷は帝のその言葉に笑顔で応えた。
「それでは」
「はい、では健闘を祈ります」
「お兄様、お帰りになられたらお寿司ですね」
「それでお願いします」
 日本は妹にそれでだと返した。
「様々な種類のものを」
「それでは」
「では後はお任せ下さい」
「チェリノブは守っておくからね」 
 小澤と南雲も彼等に声をかける。
「スカーレットさんも行かれますし」
「負けない筈がないね」
「負ける気はしないわ」
 スカーレットも自信を以て答える。
「全くね」
「それだけの超艦艇だからですね」
 古賀はスカーレットの自信の理由をそこに見ていた。
「だからですね」
「そうだ、しかも乗るのは選び抜かれた精鋭達だ」
 各国軍からのだ。
「俺達が指揮してな」
「わしももう少し若ければ行けたかもな」
 山本は悪戯っぽい声で言った。
「そう出来たかもな」
「いや、山本さん今生きてるだけで凄いよ」
「普通にね」
「身体がたがただったのに回復したし」
「六十八歳で現役の提督さんだし」
「そうですよ」
 コーギーにアストロ猫、手長猿、パンダ、〆羅も言う。
「それで戦争の後古賀さんと結婚するんだよね」
「幸せになるし」
「そこまでってね」
「やっぱり何ていうか」
「凄いことですが」
「ははは、百歳まで生きて孫の顔を見るか」
 こうも言う山本だった。
「そうするか」
「別世界のことはもうですね」
「柴神様が」
「安心してくれ」
 柴神は平良と福原に答えた。
「あちらの世界のワープ航路も宙形も全て頭の中に入っている」
「それでは道案内をお願いします」
「女王までの」
 二人もそれを聞いて安心する、そして。
 韓国は自分の妹にだ、こう言っていた。
「焼肉の用意となんだぜ」
「冷麺ニダな」
「冷麺は欠かせないんだぜ」
「それを最後に食べないと駄目ニダな」
「だからなんだぜ」
 麺類は別腹で〆に食べなければならない、韓国ではそうだからだ。
「用意なんだぜ」
「了解ニダ」
「さて、それじゃあね」
「僕達もね」
 台湾も兄と話す。
「点心も何でもね」
「用意しておきましょう」
「先生達の帰りが待ち遠しい的な?」
「そんな感じ的なよね」
 香港兄妹も台湾兄妹と共に用意をしている。
「それじゃあ的な」
「ご馳走の用意的な」
「さて、それではです」
「私達もですね」
 マカオ兄妹もここで話す。
「広東料理だけでなくです」
「他の三つの料理も」
「北京、上海、四川もある」
 中国妹もその料理に追われながら言う。
「全部用意するある」
「何か大変なことになってるあるな」
「そうですね、宴を用意する方々も」
「大騒ぎよね」
 リンファとランファは中国に応えながら宴の用意を見ていた。
 そしてだ、その彼等にシュウ前皇帝が来て言う。
「ではな」
「あっ、万歳爺久しぶりあるな」
「お元気でしたか」
「最近どうしていたんですか?」
「隠居して普通に暮らしていたがな」
 皇帝は禅譲してからは人前に出ず隠居していた、それで今は久しぶりに公の場に出て来たということなのだ。
 それでだ、こう言うのだった。
「帰って来たら満漢全席だな」
「楽しみにしているある」
「では今から行ってきます」
「楽勝で勝って来るからね」
「さて、じゃああたしも色々作るからね」
 ハニートラップも料理の用意をしている、既にその手には中華鍋がある。
「待っていてね」
「そういえばハニーさんはお料理も出来ましたね」
「それもかなり得意よね」
「軍を引退したらお店やるつもりなのよ」
 その料理の腕と外見、人あたりのよさを利用してだというのだ。
「だから楽しみよ」
「そうですか、それでは」
「そっちも頑張ってね」
「そうするからね」 
 中帝国の面々も楽しく話をしていた、そして。
 ダグラス達も送迎を受けていた、まずはハンナが出る彼等に言う。
「ではね、皆ね」
「頑張って来てね」
「最高の兵器を用意したから」
 クーとドロシーも言う。
「帰って来たら最高のパーティーよ」
「お酒もあるから」
「楽しみにしていて」
「何か三人にこう言われるとはな」 
 ダグラスは三人の閣僚達の言葉にまずは苦笑いを作って返した。
「意外だな」
「そうかもね、私もそう思うわ」
「けれどプレジデントも祖国さんも行かれるから」
「キャロルも」
 だからだとだ、四姉妹の面々は彼等に言うのだ。
「こうした送迎になるのね」
「本当に帰って来てね」
「待っているわ」
「安心しなさい、あたし勝つパターンしか考えてないから」
 ダグラス達と共に行くキャロルはこれまで以上に明るい調子である、それは言葉だけでなく顔や仕草もだ。
「皆安心していいのよ」
「おお、我等の女神の言葉か」
「だったらこっちは最高のパーティーの用意だな」
 ドワイトとキャヌホークはキャロルのその言葉に明るく応えた。
「それじゃあ心配はいらないな」
「さて、俺も出しもののマジックの用意をしておくか」
「ええ、面白いパーティーになりそうね」
 クリスも明るい顔である。
「結果は占ってないわよ」
「占うまでもないからだね」
「負ける筈がないわ」
 クリスはアメリカ妹にくすりと笑って返した。
「これだけの顔触れと兵器、精鋭があればね」
「じゃああんたはステーキ焼くの手伝う用意をするんだね」
 キャシーは大量の冷凍肉が入った発泡スチロールを抱えている。
「ティーボーン、来たぜ」
「兄貴、凄いパーティーになるからね」
 アメリカ妹は右目をウィンクさせて兄に言った。
「楽しみにしておきなよ」
「ああ、そうしてるぞ」
 アメリカも陽気に応える。
「何を食べるか迷いそうだな」
「祖国さん、パーティーで太るなよ」
 ダグラスは笑ってアメリカに言った。
「最近ガメリカ人は太ってるって言われるからな」
「ははは、それは気をつけないとな」
「ああ、皆来ているのか」
 ここで意外な声が来た、それは。
 前大統領セオドア=ルースだ。ルースは高性能の自動車椅子に乗って来た。イザベラは彼を見て驚きの声をあげた。
「まさか、もう」
「身体は動かないよ、まだね」
 ルースは元気のない年老いた笑顔でイザベラに答える。
「それでも人類の運命を賭けた戦いに向かう祖国さんと大統領達を見たくてね」
「来られたのですか」
「そうなのだよ」
 こう話すのだった。
「いや、皆元気そうだね」
「悪いな」
 ダグラスはそのルースに感謝の言葉を述べた。
「その身体で来てくれるなんてな」
「これでも心配だからね」
 それで来たとだ、また言うルースだった。
「では皆頼んだよ」
「ミスターは身体を回復させてくれ」
 アメリカはそのルースの肩に手をやって告げた。
「最高のビクトリーを持って帰るぞ」
「楽しみにしているよ」
 ガメリカ組の送迎も賑やかだった、その三国を見てだった。
 タイは微笑んでベトナムに言った。
「僕達も色々と用意しましょう」
「料理でだな」
「負けないですよ」
 タイは微笑みつつベトナムに告げた。
「お料理では」
「望むところだ、私もとっておきの料理を出す」
「ベトナム料理ですか」
「そうだ、タイ料理には負けない」
「期待していますよ」
「じゃあ祖国さん、手伝わせてもらいます」
 フェムもそのベトナムに言う。
「最近お料理もしてますから」
「共に作るか」
「そうしましょう」
「さて、戦後も色々あるけれどね」
「うん、今はね」
「皆が帰って来た時の用意よ」
 インドネシアとマレーシアはラスシャサに話す。
「そっちも戦争だから」
「頑張りましょう」
「久しぶりに女らしいことをしているな」
 ラスシャサは笑みを浮かべて料理の用意をしていた、彼女にとっては久しぶりの料理等だった。
 ララーも色々動きながらフィリピンに話していた。
「皆明るいね」
「うん、負ける筈がないからね」
 だからだとだ、フィリピンも明るい。
「あれだけの面子だからね」
「絶対に負けないよね」
「さて、羊は用意出来たでごわす」
「キーウィもばい」
 オーストラリアとニュージーランドも食材を用意している、どれも山の様だ。
「では盛大に作るでごわす」
「皆でやるばいよ」
「うん、僕も手伝うよ」
 総督も包丁を手にしている。
「エイリス生まれだけれど料理は得意なんだよ」
「総督さん、怪我しないでね」
 トンガがその総督に言う。
「それは気をつけてね」
「うん、楽しいパーティーの為にね」
 オセアニアの面々もパーティーの用意をしている、そしてその横ではアステカの面々も賑やかにしていた。
「さて、シャラスコや」
「タコスや」
「牛肉用意してや」
「フルーツも一杯用意してな」
「ジャガイモとかも出して」
「香辛料もな」 
 ブラジル、メキシコ、アルゼンチン、キューバ、チリ、ペルーが用意をしている。
「かなり参加者多いしな」
「一杯用意せなあかん」
「酒も用意して」
「カクテルも作ってな」
「中南米の料理作るで」
「盛大にやるで」
「そうだホーーー、東郷さん達が帰って来たら好きなエロゲを欲しいだけ差し上げるホーーー」
 ケツアルハニーは今これだった。
「その用意もするホーーー」
「ハニーさんはやっぱりそれなんですね」
 のぞみがそのハニーに言う。
「何ていいますか」
「それがおかしいかホーーー?」
「いえ、ハニーさんらしいと思いまして」
 それで言ったというのだ。
「それだけです」
「エロゲは文化だホーーー」
 ケツアルハニーの持論である、それも言うのだ。
「だからプレゼントにいいホーーー」
「だからですね」
「そうだホーーー」
 こう話してだった、ケツアルハニーは彼等にそうしたゲームを送るというのだった。
 インドはその彼等を見てクリオネにこう囁いた。
「そういえば僕はたい」
「まさかと思いますが」
「そうしたゲームはまだ少ないたいな」
「あの、ああしたゲームは」
 どうかとだ、クリオネはインドに困った顔で返す。
「どうも」
「クリオネさんは嫌いたいか」
「あまり」
 好きではないとだ、クリオネはこう答えるのだった。
「ですから」
「ううん、そうたいか」
「どうも私を見てです」
 ここでだ、クリオネは一緒にいるゴローンを見て言うのだった。
「変なことを考える人もいますから」
「俺か?」
「貴女私をどう見ているの?」
「コスプレが似合う熟女だ、悪いか?」
「そういうことを思う人がいるからよ」
 だからだというのだ。
「ああしたゲームばかりしてるとそうした想像する人がいるから」
「それは偏見では?」
 サフランがここでクリオネにこう言う。
「ゴローンさんは特別ですよ」
「そうだっていうの?」
「はい、あとクリオネさんパーティーの予算の決算が出ましたので」
「あら、安いわね」
 クリオネはサフランが出した帳簿を見て少し驚きの声をあげた。
「思ったよりも遥かに」
「大量発注、しかも仕入先を安いものにしましたので」
「それでなのね」
「はい、安くしました」
「伊達に財務大臣だけはあるわね」
 インドの財務大臣はサフランだ。尚彼女は副首相も兼ねている。
「太平洋全域でこれなんて」
「欧州の方はわかりませんが」
「あっちはあっちでやるからね、だからいいわ」
「そうですか」
「ええ、太平洋はこれでね」
 こう話してだった、それはいいと言うクリオネだった。
「これで各国に恩を売れればいいけれど」
「それはこれから次第ですね」
「そうなるのね」
「クリオネ様、カレーはどうなってますか?」
 アグニはクリオネに料理のことを尋ねた。
「そちらは」
「今作ってるわ、祖国さんがね」
「そうですか」
「ええ、だから大丈夫よ」
 カレーはインドだった、見れば彼がぐつぐつと似ている。ゴローンは妹と共に彼の手伝いをしている。
「包丁を握ることはな」
「慣れていませんか」
「どうもな」
「ですが頑張りましょう」
 こうした話をするのだった、そして。
 ランスは相変わらずだった、戦いがないので昼寝をしようとしている。その彼に言うのはコアイだった。
「ランスさんは何もしないの?」
「料理出来ないからな」
「だからなの」
「ああ、ここで寝ている」
「それじゃあそこで休んでいてね」
 モンゴルも彼にこう言う。
「ゆっくりと」
「そうさせてもらうな」
「お料理は私達でしておきますから」
 シィルが鍋を持ちながらランスに言ってきた。
「それでは」
「吉報は寝て待つか」
 こうしてだった、ランスはゆっくりと休んでいた。戦いがなく女の子とも遊ぶことのないランスは寝るだけだった。
 エジプトはその彼を見てからパルプナに言った。
「楽しみ?」
「パーティーが」
「そう、どうだ」
「結構」 
 そうだとだ、パルプナはエジプトに気弱な声で答えた。
「こうしたパーティーの用意をするのは」
「おうよ、こうしたことも楽しむに限るからねい」
 トルコが二人のところに来て威勢よく言って来た。
「そうしなよ」
「それじゃあ」
「さて、それでは」
 ラディンは女の姿から男の姿になって言った。
「皆が帰ってからが本番だな」
「そうでい、俺も腕によりをかけて料理を作るんでい」
 そうすると話して自分も用意をするトルコだった、皆日本達を見送っていた。
 無論欧州組もだ、今まさに出撃しようとしていた。レーティアはグレシアに対して確かな声でこう言うのだった。
「留守は任せる」
「ええ、それじゃあね」
「帰って来る、すぐにな」
 レーティアはグレシアに言い切った。
「スパゲティを待っている」
「レーティアの大好物ね」
「ケーキも用意しておいてくれ」
 それもだというのだ。
「チョコレートもな」
「ええ、わかったわ」
「では総統」
「行かれて下さい」
 マンシュタインとロンメルは敬礼をして彼等の敬愛する総統に告げた。
「留守の間は我々が宣伝相と共にドクツを支えます」
「総統は心置きなく勝利を収めて下さい」
「わかっている、諸君等がいてこそのドクツだ」
 レーティアも彼等に応える。
「頼んだぞ」
「では行って来る」
 ドイツも彼等に言う。
「そして勝って来る」
「勝利の後はヴルストですね」
 ドイツ妹は微笑んで兄に言った。
「それですね」
「ああ、頼む」
 ソーセージをだとだ、ドイツも妹に応える。
「やはり何といってもまずはな」
「それですね」
「そしてジャガイモだ」
 それもだというのだ。
「潰してな」
「そしてビールも」
 これもだというのだ。
「頼むぞ」
「おい、ザワークラフトもだよな」
 プロイセンがここでこう言う。
「それもだな」
「そうだな、それは忘れてはならないな」
「アイスバインも用意しておくからな」
 プロイセンは笑顔でさらに言うのだった。
「楽しみにしておけよ」
「あとビールは黒もあるからね」
 プロイセン妹はこれを出す。
「楽しみにしておきなよ」
「うむ、ではな」
「さて、演奏の用意をしておくか」
 ベートーベンはそちっらについて言うのだった。
「私も暫くぶりに指揮をするか」
「マエストロの指揮ですか」
 トリエステはベートーベンの指揮を聴けると聞いて微笑んで言った。
「それは楽しみですね」
「うむ、頑張らせてもらおう」
 こう言うのだった、そしてエルミーはというと。
 レーティアの前でドクツ式の敬礼をした、そのうえでレーティアに対して言う。
「総統、待っていて下さい」
「待てとはどういうことだ?」
「必ず」
「言っている意味がわからないが、だが」
 それでもだとだ、レーティアはこう言うのだった。
「エルミー、御前には今後政治にもあたってもらいたい」
「政治ですか」
「そうだ、、そのうえで見たいものがある」
 だからだというのだ。
「そちらでも頑張ってもらう」
「わかりました、それでは」
 レーティアはエルミーにあるものを見ていた、それでこう言うのだ。
 ドクツの周りの国家達はそのレーティア達を見て話をしていた、その話はというと。
「やっぱりドクツだしーーー」
「うん、戦後は何といってもね」
 リトアニアがポーランドに応えて言う。
「欧州はドクツが中心になるよ」
「総統さん戦争前より凄くなってね?」
 ポーランドはここでこう言うのだった、レーティアを見て。
「前は一人で立ってる感じだったけど今は皆の力を信じてる感じがするんよ」
「うん、一人だけでなくみんなの力も引き出してね」
「凄くなってるしーーー」
「今のドクツに対抗出来る国は欧州にはないよ」
 リトアニアはこう言い切った。
「そのドクツとどう交流するか」
「それが大事になるね」
「ポーランド、俺がいるから」
 リトアニアはこのことは確かな声と顔でポーランドに告げた。
「後ろは任せてね」
「リトも俺がいるし大丈夫ちゃう?」
「いや、そうした油断が危ないからね」
 このことは注意するリトアニアだった、そして二人だけでなく。
 ギリシアは茫洋とした声でだ、ブルガリアとルーマニアにこう言った。
「これからのドクツは無敵」
「ううん、どうしていこうかなこれから」
「ドクツとどう付き合うかずらな」
「俺はドクツとは仲良くしていきたい」
「それがいいね、やっぱり」
「これからのドクツは侵略もしてこないずら」
 欧州共同体が出来る、その共同体の中で戦争は起こらないからだ。
「それならもうね」
「交流していく方が楽ずら」
「それじゃあドクツと付き合っていこう」
「仲良く、かつ国益を守っていくずら」
「それがいい」
 ギリシアも言う、そうした話をする彼等だった。それはオランダとベルギーもだった。
 オランダもレーティア達を見てこう言うのだった。
「ドクツは無敵になる」
「欧州ではやな」
「流石に日米中程国力はないわ」
「けどあの総統さんにあれだけ人材が揃ってるしな」
「ドクツが欧州の軸になるわ」
 絶対にだというのだ。
「そのドクツとは今後揉めずにな」
「仲良く、かつ譲られへんところは守ろうか」
「そうするしかないやろな」
 ここでスペインも出て来て言うのだった。
「まあ伊勢志摩も欧州共同体に入ることになったし」
「うむ、これからは孤立しては話にならないからな」
「そのことを正式に決定したわ」
 イスパーニャとローザもこう言う。
「伊勢志摩は欧州共同体に正式に加入する」
「そうしてその中で生きていくわよ」
「それは私もです」
「私もそうなったわ」
 その伊勢志摩と縁のあるオーストリアとハンガリーも出て来た、かつての神聖ローマ帝国、ハプスブルク家の面々だ。
「ではこれからあらためて」
「宜しくね」
「まあ過去は過去ってことやな」
 オランダはハプスブルク領にいた頃のスペインとの関係を思い出しながらそのうえで言った、そのスペインを見ながら。
「これからはまた身内か」
「何か含むところあるやろ」
「ないって言うたら嘘になるわ」
 オランダはスペインにこう返す、いつも通り煙管で煙草を吸いながら。
「それでもそれはそれ、これはこれでや」
「やってくんやな」
「そや、一緒にな」
 こう話すのだった、欧州の面々も今一つになろうとしていた。
 その中にはイタリアもいる、だが彼とロマーノはというと。 
 ユーリにだ、複雑な顔で言われていた。
「本当に、本当に大丈夫ですね」
「だから大丈夫だよ」
「俺達じゃ不安なのかよ」
「妹殿ならそうではないのですが」
 イタリア妹、ロマーノ妹ならというのだ。
「しかし、ドゥーチェも」
「えっ、私もなの」
「御三方は」
 どうかというのだ。
「どうも」
「安心していいわ、私はやる時はやるのよ」
 ムッチリーニは明るい笑顔でユーリに返す。
「だから安心して待っていてね」
「だといいのですが」
「まあ兄貴達だってそうだしね」
「ユーリさんは安心して見ていていいよ」
 イタリア妹とロマーノ妹は二人でユーリに左右から言う。
「兄貴達は本当にいざとなればやるから」
「安心していいよ」
「戦争の後もね」
「兄貴達を任せてね」
「では私はその皆さんを支えましょう」
 ユーリは不安ながらも確かな顔でイタリア妹達に答えた。
「戦争の後も」
「うん、頼むよ」
「正直頼りにしてるからな」
 イタリアとロマーノがユーリに返す。
「戦争の後も楽しくやりたいから」
「だからな」
「そうさせて頂きます」
 イタリンは何処か不安な感じだった、しかし彼等も最後の戦争と戦争の後に向けて歩きはじめていた。そしてそれは北欧もだった。
 アルビルダは相変わらずといった顔でこう言っていた。
「最後に行けないのは残念だぞ!」
「仕方ないっぺよ、このことは」
「んだ、選ばれなかったからだ」
 そのアルビルダにデンマークとノルウェーが言う。
「だから今はバイキングの用意っぺ」
「戦争の後に備えるだ」
「こっちも料理一杯作るっぺよ」
「あの缶詰も用意するだ」
「缶詰は出さない方がいいだ」
 ノルウェーはスウェーデンがぱんぱんに腫れた缶詰を出してきたのを見て彼を止めた。
「大惨事になるだ」
「そか」
「んだ」
 それでだというのだ、その横ではアイスランドがフィンランドに尋ねている。
「それでエストニアとは」
「はい、仲良くしてます」
 フィンランドは明るい笑顔でアイスランドの問いに答える。
「スーさんと三人で」
「それはいいことだと思うよ」
「頭がよくて落ち着いていてしかも面白い人です」
「これから宜しくお願いします」
 そのエストニアが笑顔で出て来た。
「バルト三国はソビエトから独立して欧州共同体に入ります」
「じゃあこれからはですね」
「いつもフィンランドさんと一緒ですね」
 もう完全に打ち解けている二人だった、だがアイスランドは一人でいるラトビアを見てこう彼に言ったのだった。
「君は?」
「誰かお友達がいてくれたら」
 こう寂しそうに言うラトビアだった。
「そう思ってます」
「そうなの」
「一応欧州共同体に入りますので」
 エストニアと違い苦しい顔で言うラトビアだった。
「宜しくお願いします」
「それじゃあ」
 バルト三国も欧州共同体に入るのだった、それはオフランスも同じだが。
 国王のルイ八十一世は微妙な顔でだ、フランス妹にこんなことを言っていた。
「今回ばかりは仕方がない」
「相手が相手だからですね」
「戦うしかないからな」
 ラムダス相手ならというのだ。
「化物ではな」
「ですからお兄様もシャルロット様も出撃されます」
「頼むぞ、まことに」
 国王はシャルロット達に顔を向けて言う。
「勝って帰ってくれ」
「はい、それでは」
「行って来るな」
 シャルロットは丁寧に敬礼をしフランスは砕けた声で返す。
「必ず帰ってきます」
「それで欧州共同体のリーダーになってやるか」
「残念ですがそれは無理では?」
 ビジーはあえてといった感じでフランスに告げた。
「今のオフランスは」
「植民地もないし戦争のダメージもあってかよ」
「三番手か四番手かよ」
 トップはどの国かはもう言うまでもなかった。
「そうなるんだな」
「はい、エイリスかイタリンの次に」
「せめてイギリスの奴より上に立ちたいんだがな」
「これから頑張りましょう」
「辛いことだな、おい」
 フランスにとっては戦後も辛かった、この戦争における自分のことも考えると実にだった。しかしその彼とシャルロットにセーシェルが言ってきた。
「何かあればうちに来てバカンスして下さいね」
「海で裸になったら鮫を呼ぶけどね」
 ビルメはフランスを見て言う。
「遠慮なく遊んでいいよ」
「おい、そこで鮫かよ」
「ハワイでも同じだからな」
 今度は太平洋からギガマクロが来た。
「フランスさんはすぐに全裸になるからな」
「見苦しいものを見せないといい国なんだがね」
 ビルメも全く容赦しない。
「あと勝率が暗黒時代の阪神タイガース以下だけれどね」
「何かそう言われると滅茶苦茶弱い気がするな」
 フランスは自分への言葉だけに余計にそう思えるのだった。
「最初の頃の楽天とかTBSが親会社の頃の横浜よりもな」
「あんたも日本さんのところの野球に詳しいね」
「最近やりはじめて勉強してるんだよ」
 日本の野球もだというのだ。
「それで知ってるんだけれどな」
「そうなんだね」
「しかし阪神が弱いと余計に目立つな」
「弱くても華があるからだろうね」
「それってかなり凄いことだよな」
「阪神ならではだね」
 ビルメは阪神についても言うのだった、そうして。
 そうした話をしつつだ、フランス達も出撃するのだった。ギガマクロは太平洋に戻るところでハルマに声をかけた。
「御前さんも頑張れよ」
「はい、兄さんの秘書として」
「そうか、その役職でだな」
「頑張ります」
「さて、僕もですね」
 カメルーンはマウマウ、ベホンマを見て言う。
「これからは独立しますから」
「一緒ニ頑張ル!」
「ソウスル」
「はい、そうしていきましょう」
「ドンナ国ニスルカハコレカラダ」
「皆デ力ヲ合セテヤッテイクゾ」
 建国からどうしていくか、カメルーンはこれからのことを考えていた。
 エイリスもセーラとイギリスが出る、エリザは微笑んで彼等を見送りつつ言うのだった。
「セーラちゃんも立派になったわね」
「いえ、私は」
 謙虚なセーラは母の言葉に頬を赤らめさせて応えた。
「とても」
「私から見てよ、だからね」
「気にすることはないですか」
「ええ、けれど娘ならば誇らしいわ」
 セーラのその成長がというのだ。
「これからのエイリスは大丈夫ね」
「もうエイリスに植民地はないですが」
「ああ、もうなくてもいいのよ」
 エリザはもう政策を切り替えていた、これからのエイリスに対して。
「世界の盟主ではなく欧州の一国としてね」
「生きていくのですね」
「貴族の利権、膨大な軍事費の元となる植民地が全てなくなってね」
「植民地の民も苦しめることがなくなって」
「かえっていいわ」
 エイリスにとっても植民地だった国々にもというのだ。
「貴族達もその力を完全になくしたしね」
「エイリスは生まれ変わります」
 この言葉はイギリス妹が言う。
「女王陛下の手によって」
「だから戦争が終わった後は頑張ろうね」
 マリーは微笑んで姉と自身の祖国に言った。
「僕達も頑張るから」
「ええ、それでは」
 セーラも微笑んで妹に応えて言う。
「皆で」
「そうしていこうね」
 マリーもいる、そしてだった。
 騎士提督達もだ、こうセーラに言うのだった。まずはモンゴメリーが言う。
「では陛下、我等も」
「これからもエイリスの為に」
「及ばずながら」
 ロレンスとネルソンも言うのだった。
「この剣を捧げます」
「女王陛下とエイリス、そして祖国殿の為に」
「そうさせて頂きます」
「ああ、宜しく頼むぜ」
 彼等にはイギリスが笑顔で応える。
「これからもエイリスは生きていくからな」
「それが為にですね」
「我等エイリス軍、そして騎士提督も」
「エイリスの為に」
「戦争が終わって平和になってからも軍隊は必要だからな」
 災害維持、そして抑止力としてだ。軍の存在は国家にとって不可欠なものであることは変わらないことなのだ。
「頼むな」
「はい、それでは」
「これからもですね」
「共に」
「まあ各星系に行ける航路は閉鎖になったがな」
 それはだった、技術的にも国際条約でも永久に使えなくなることが既に決まっている。まだ条約は結ばれていないが。
「エイリスは欧州の一国としてやっていくからな」
「そしてそのエイリスの未来を拓く為にも」
 セーラもイギリスに確かな声で応える。
「この戦い、勝ちます」
「それで帰ろうな」
 エイリスも未来を見ていた、他の国々と同じく。それはソビエトもだった。
 出撃するカテーリンとロシアにだ、ゲーペが確かな声で言う。
「では待っています」
「うん、給食のメニューをたっぷり用意しておいてね」
「今回は特別だからね」
 カテーリンとロシアはそのゲーペにこう返した。
「帰ったら皆で祝勝会よ」
「それで楽しもうね」
「はい、今から給食係は全員用意をはじめています」
 今の時点でだというのだ。
「期待しておいて下さい」
「じゃあミーリャちゃん行ってくるね」
 カテーリンは親友であり第一の側近でもあるミーリャにも声をかけた。
「私が行ってる間待っててね」
「私達いつも一緒だからね」
 ミーリャは真相を隠してカテーリンにこう返した。
「そのこと忘れないでね」
「うん、それじゃあね」
 カテーリンはまだ気付いていなかった、だがミーリャは既に決意していた。そのミーりゃの後ろにはジューコフ達がいる。
 ジューコフが最初にだ、カテーリンとロシアに言った。
「戦後ですが」
「ソビエトは太平洋にも欧州にも入らないけれど」
 カテーリンが答える、どちらも資産主義、ドクツやイタリンは実際は共有主義にかなり近いがそれでもなのだ。
「共有主義だからね」
「それでもですね」
「どっちともお付き合いしていくから」
「バランサーになりますか」
「そうなっていくつもりよ」
 これが戦後のカテーリンの政策だった。
「もう共有主義は外に広められないけれどね」
「一国だけで、ですか」
「それでもそうした国があってもいいよね」
「いいと思いますよ」
 コンドラチェンコは赤い顔でカテーリンに言った。
「資産主義ばかりじゃ面白くないですからね」
「うん、そうしていくから」
「じゃあ俺達もそういうことで」
「ソビエトでやっていきますね」
 リディアもカテーリンに言うのだった。
「ソビエト軍人として」
「私も」
 冬将軍スノーもいる、彼女もソビエトにいるというのだ。
「皆でやっていこう」
「はい、共有主義国家として」
「これから何かと大変だけれど」
「皆でやっていきましょう」
 ロシア妹の言葉にウクライナとベラルーシが続く。
「それではですね」
「書記長さん、ロシアちゃん頑張ってきてね」
「必ず勝てますから」
「ちょっとイモムシ君達を皆凍らせてくるね」
 ロシアは明るい笑顔で怖いことを言う。
「容赦しなくていいんだよね」
「相手は人間じゃないから」
 カテーリンも容赦しない、実に彼女らしい。
「徹底的にやってね」
「うん、わかったよ」
 ロシアはその冬将軍も使うつもりだった、その彼にロリコフが話す。ウナギとリョウコもいる。
「はい、連中は寒さには弱いですから」
「そのことをです」
「念頭に置いて下さい」
「じゃあ丁度いいね」
 ロシアも三人に応える。
「僕の冬将軍はあちらには」
「容赦なく凍らせて下さい」
「それで勝って下さいね」
「待ってますから」
「シベリア並にいくからね」
 ロシアの無邪気な笑顔がそこにあった、別世界に吹雪が吹こうとしていた。
 そしてここにだ、クワトロ=亜空も来て言うのだった。
「私は日本軍にいるが」
「我が国にも来られますね」
「軍事交流でな」
 それでだとだ、亜空はゲーペに話す。
「時々来ることになる」
「ではその時は」
「宜しく頼む」 
 ソビエトは共有主義を維持したまま第三勢力として生きていくことになった、だがその政策はかなり穏やかになり共有主義の問題点も訂正し資産主義の要素も入れたものになっていた。対立ではなく融和、それがカテーリンが選んだ政策になっていた。
 そのソビエトまで見てだ、宇垣が言う。
「うむ、戦後は三つ巴か」
「太平洋、欧州、ソビエトだな」
「はい、そうなります」
 こう伊藤に話すのだった。
「その太平洋と欧州の中も大変ですが」
「それでもだな」
「世界は三つの経済圏のそれぞれの競り合いです」
「しかし武力を用いての戦争は起こらない」
「経済力のぶつかり合いです」
「言うならば経済戦争だな」
「武力は使われません」
 このことは間違いないというのだ。
「ソビエトも共有主義を広められません」
「問題点が明らかになったからな」
「ソビエト自体も大きく変わっています」
 実質的には社会民主主義と言うべき国になろちとしている、それが今のソビエトの状況だ。
「ですから」
「最早恐ろしい存在ではないな」
「そうかと」
「太平洋と欧州があり」
 伊藤はさらに話す。
「そしてそのバランサーとしてソビエトが存在するか」
「まさに三つ巴ですな」
「うむ、ソビエトは面白い国になるな」
「かつての不気味さはなく」
「ははは、そうですね」
 ここでゾルゲが影の様に出て来て二人に言うのだった。
「私もこれからが楽しみです」
「そういえばゾルゲ大佐は軍に留まられるのだったな」
 宇垣はそのゾルゲに彼の今後のことを問うた。
「諜報部に」
「その予定です」
「そうか、では我々ともだな」
「これからは時として味方、時として敵になります」
 ソビエトの国益に従って動く、だからそうなるというのだ。
「敵になった場合はお覚悟を」
「これは強敵だな」
「そうですな」
 伊藤と宇垣はゾルゲの言葉を受けて今は笑顔で言う。
「こちらも明石大佐がいるが」
「油断しないでいきましょう」
「この御仁には私しかいませんな」
 明石も出て来た、それで言うのだった。
「では」
「うむ、その時はな」
「頼むぞ」
「おっと、そうでしたね」
 ゾルゲはライバルである明石を見て楽しげに微笑んでまた言った。
「日本には貴方がいます」
「遅れは取りませんぞ」
 明石も思わせぶりな笑みを言葉に込めて話す。
「その時は」
「そして戦争の後だが」
 平賀は今も久重の口から話す。
「夕霧達はドッグで暫く休養をしてだ」
「その間にですね」
「私達は再改造ですね」
「そしてパワーアップをしてですね」
「日本軍において」
「頑張ってもらう」
 平賀は映像として出ている四人に告げた。
「それでいいな」
「はい、お願いします」
「これからも頑張ります」
「東郷さん達と一緒にこれからも」
「日本軍の提督ですね」
「正確に言うと太平洋軍だな」
 それになるというのだ。
「日本軍はその中に入る」
「太平洋共同体か」
 伊藤はこの組織についても思いを馳せて言うのだった。
「わしが長年望んだものが実現した」
「亜細亜の曙と共に」
「素晴らしいことだ、そしてだ」
「そしてとは」
「外相も伴侶を得た」
 伊藤はここで宇垣と平賀を見て微笑んで言った。
「このことも喜ぶべきことだ」
「むっ、私のことですか」
「私もか」
 宇垣だけでなく平賀も反応した、伊藤のその言葉には。
「確かに私達はこの戦争の後は結婚しますが」
「式も挙げるが」
「ここでこのことをお話されますか」
「それは少し」
「これがですね」
 久重がここで言う、今度は自分の口で。
「津波様今から楽しみで仕方がなくて」
「・・・・・・・・・」
「みぎゃっ!?」
 平賀は自分にとっていらないことを言おうとする久重にスパナで頭に圧迫を加えた、今も無表情のままである。
「つ、津波様何を!」
「・・・・・・静かにすることだ」
 いらないことを言うなというのだ。
「いいな」
「は、はいわかりました」
「とにかく式の準備もしております」
 宇垣もその久重と平賀を見つつ二人に話す。
「仲人は予定通り」
「うむ、任せてくれ」
 伊藤が二人の仲人だ、それでこう返すのだった。
「それではな」
「はい、その時もまた」
「そして私が巫女役ですか」
 山下も出て来て言う。
「確かに巫女の資格も持っていますが」
「山下長官だけではない、帝も来られる」
 伊藤は釈然としない感じの山下に述べた。
「帝が祭事を行われる」
「では外相と長官の式は」
「盛大なものになる、戦争が終わってすぐにはじめる」
 こう話す伊藤だった、東郷達の出陣前に戦士達はそれぞれの話をしていた。
 東郷達は遂に出撃した、人類の希望を背負いそのうえでホワイトホールから別世界に赴く、遂に最後の戦いが幕を開けた。


TURN142   完


                          2013・10・8



いよいよ別世界へと。
美姫 「遂に反撃の開始ね」
ああ。流石に簡単にはいかないだろうけれど。
美姫 「それでも現状で揃えられる戦力は整ったしね」
いよいよ最終決戦だな。
美姫 「一体どうなるのかしらね」
気になる次回はこの後すぐ!



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