『ホフマン物語』




              第二幕 オランピア


 そこは豪華な家具や調度品で飾られた書斎であった。重厚な樫の木の扉は壁掛けによって閉ざされており、それが沈黙をあらわしていた。見れば部屋の中にはギターやハーブといった書斎にはいささか場違いなものまで置かれていた。だがそれでも沈黙が支配する世界であり蝋燭の灯りで照らされた部屋はぼんやりとした朧な雰囲気を漂わせていた。しかしそこには何か得体の知れないものまで存在していた。
「よし、ここだ」
 その書斎の下から低い声が聞こえてきた。
「奴のせいでかなりの金を失ったが。今度こそ取り戻してやる。あの二枚舌にも負けはしないぞ」
 どうやらペテンにかかって財産をう失ってしまったらしい。その声からは無念さが滲み出ていた。
「あの悪質な人形師が。そもそも何であんな奴がこのローマにいるんだ」
「先生」
 そこで若い男の声が聞こえてきた。この書斎に誰かがいればそこから誰が来たのか見下ろしたかも知れない。そこにはホフマンがいたのである。ここはローマのある道の側にある書斎であった。そこには白い科学者の服を着た白髪の男がホフマンと並んで立っていた。いささか小柄で滑稽な黒い目と浅黒い顔の男であった。
「おお、ホフマン君」
 彼はホフマンの姿を認めて嬉しそうな声をあげた。
「よく来てくれたね」
「少し早く来過ぎたようですが」
「何、これ位がいいのさ」
「宜しいのですか」
「そう、物理学は速さを求める学問だからな」
 彼は笑いながらホフマンに対して言った。
「その点君は合格だ。君には素質がある」
「有り難うございます」
「詩や音楽だけではない。君には物理の才能もある。このままいくとこのスパランツェーニを越える大学者になれるな」
「いえ、そこまでは」
 これだけおだてられると謙遜してしまった。
「先生、褒め過ぎですよ」
「わしは人を褒めたりはせんよ」
 それでも彼は笑いながらこう返した。
「まずは家に入ってゆっくりと話をしよう。少し待っていてくれ」
「はい」
 どうやらこの書斎がある家はスパランツェーニの家であるらしい。彼はいとおしそうにこの家を見ていた。
「やることがあるからね。話はそれからだ」
「わかりました」
 こうしてスパランツェーニは一人家に入った。ホフマンはそれを見送った後で家を見上げた。すると書斎の隣の部屋に人影が見えた。ほっそりとした女性の影であった。
「今日もいるんだな」
 彼はそれを確かめて笑みを浮かべた。
「そしてまた彼女に会えるんだ。今は勉強中だけれど」
 どうやら彼は真剣に物理学を学んでいるらしい。
「彼女に釣り合うだけの学者になって。それから愛を告白するんだ」
 彼は青雲の志に燃えていた。そしてそれで以って愛を成就させようとしていた。だがそこにまた一人やって来た。
「ホフマン、そこにいたか」
「ニクラウス」
 見ればニクラウスがそこにやって来たのであった。ホフマンは彼に顔を向ける。
「捜したぞ、全く」
「また何でだ」
 少し肩で息をする彼に対して尋ねる。
「僕の居場所はわかっていたと思うけれどね」
「だけどだ。全く、酒場と彼女にぞっこんみたいだな」
「酒はまた特別だけどね」
 彼は粋に笑ってこう返す。
「けれど。それだけじゃないんだ、今は」
「彼女か」
「そう、彼女さ」
 彼は頷いてから言った。
「オランピア。君も彼女のことは知っているだろう?」
「ああ」
 うっとりとした声のホフマンに対してニクラウスの声は覚めたものであった。
「一応ね」
「何かあまりよさそうな言葉じゃないね」
「君は彼女をどう思っているんだい?」
「天使さ」
 彼は言い返した。
「それ以外の何だっていうんだい」
「あのなあ」
 ニクラウスはそれを聞いて呆れたような声を漏らした。
「君はそこまで言える程彼女を知っているのかい?」
「勿論だよ」
 ホフマンは胸を張って答えた。
「そうじゃなきゃどうしてこんなことが言えるんだい」
「僕にはわかっていないから言えるとしか思えないね」
 彼はそれに対してこう返した。
「わかってない、僕が」
「そうさ」
 そして答えた。
「何もかも。そもそも話だってしていないんだろう?」
「そんなの話さなくてもわかるよ」
「ホフマン、悪いことは言わない」
 今度は忠告めいてきた。
「一度よく見てから考えるんだ」
「何を考えるっていうんだい」
 しかしホフマンはまだわからなかった。
「僕は物理学で名を挙げたいんだ」
「それはいい」
「そして彼女に告白するんだ。それの何処が」
「それを待てと言っているんだよ。いいかい、君は物理学と同時に法律、そして詩と音楽、あと絵を学んでいる」
 色々学んでいる。ホフマンは多芸と言っていい男だった。
「うん」
「けれど恋についてはまだ知らない。彼女のエナメル色の目を知っているか」
「エナメル色!?」
「そうだ。これが人間の目の色か」
「まさか。まるで人形じゃないか」
 ホフマンは笑って答える。
「そしてそこの大通りにある時計屋」
「うん、あそこだね」
「あそこにある木製の大きな時計だけれど。そこから出て来る小さな鶏は彼女に似ているんだ。どういうわけかね」
「一体何を言っているんだ」
 ホフマンには訳がわからなくなってきていた。だがそれでもニクラウスは言う。
「その鶏も。エナメル色の目も。人間のものではない」
「そんなこと位わかるよ」
「どれも機械だ。彼女はそれにそっくりなんだ」
「つまり君は彼女が人間じゃないって言いたいのか。馬鹿馬鹿しい」
 ホフマンはそう言って彼の言葉を否定しようとした。
「人間じゃなかったら何だっていうんだ。人形のわけがないじゃないか」
「身動き一つしなくてもか」
 ニクラウスはそう言って上にたたずむオランピアを指差した。
「今まで彼女が動いたことがあったか?」
「僕達が気付かなかっただけだろう」
「声を聞いたことがあるか?」
「無口なんだろう。スパランツェーニ先生は静かなのが好きなんて」
「それで納得できると思うのかい?」
 そう問われた。
「これで納得できなきゃ何に納得するっていうんだい。君の言っていることはやっぱりおかしいよ」
「そのうちわかるさ」
「そのうちって」
「人間と人形の違いが」
 ここが重要なのだが。わからない者はわからない。
「今の僕にはわかっていないっていうのかい」
「その通りさ」
 そして言い切った。
「このままだと後悔することになるぞ」
「後悔なんかしないさ」
「何でそう言い切れるんだい?」
「僕にはわかるんだ」
 そう言ってまたオリンピアを見上げた。
「彼女は本物だ。本物の女神だ」
「馬鹿馬鹿しい」
 ニクラウスはその言葉を一笑に伏した。
「女神なんて案外側にいるものなのに」
「側に。彼女のことだ」
「いや、それは違う」
 違うと言われた。
「じゃあ誰だ」
「そうだね。実は男に化けているかも知れない。若しかしたらね」
「それが君だったら面白いんだけれどね」
「面白いと思うかい?」
 ニクラウスはそれにやけに真面目に応えてきた。
「本当に。そう思うのかい?」
「どうしたんだ、急に態度を変えて」
「いや」
 しれっとした態度になって誤魔化す。
「ちょっとね。からかってみたくなっただけさ」
「人が悪いな、相変わらず」
「長く生きているとね、意地も悪くなるものさ」
「よく言うよ、僕と大して変わらない癖に」
「まあいいさ。それじゃあ後悔はしないんだね」
「ああ」
 ホフマンは頷いた。
「もとよりそのつもりさ。何で後悔するんだよ」
「それじゃあわかった」
 ニクラウスは自分が決心したように頷いた。
「じゃあ君に任せる。いいね」
「あ、ああ」
 ホフマンは戸惑いながらも頷く。何故ニクラウスが急に態度を変えたのかわからないからだ。
「ただ、いつも側にいるから。いいね」
「助けてくれるのかい?」
「若しかしたら、ね。そんなことはなって欲しくはないけれど」
 それは友人としてホフマンを気遣う気持ちだった。ホフマンもそれに応える。
「それは僕もさ」
「じゃあちょっと飲み物を買って来る。何がいい?」
「ワインといきたいけれど。この辺りに酒屋はったかな」
「まあなかったら水でも飲んでいればいいか。それじゃあね」
「ああ」
 こうしてニクラウスは左手に消えて行った。ホフマンはその後ろ姿を黙って見送っていた。そして上にいるオランピアを見上げていると隣からすうっと出て来る者がいた。
 怪しげな男であった。長身で鞭の様な身体を白い科学者の服で包んでいる。だがその下にある服はどれも黒であった。
 ネクタイもカッターも靴も全て黒であった。黒々とした髪を後ろに撫でつけ、吊り上がった黒い目を持っていた。とかく黒い男であった。その彼が突如としてホフマンの横に現われたのである。
 そしてホフマンに気付かれないように彼に近付いてきた。それから声をかけてきた。
「もし」
 地の底から聞える様な低い声であった。
「ホフマンさんですか」
「おや、貴方は」
 ホフマンは彼に声をかけられて顔を向けてきた。そしてその名を呼んだ。
「コッペリウスさんじゃないですか。どうしたんですか?」
「いえ、ちょっとね」
 彼はその手に持っている黒い鞄を弄びながら笑っていた。
「スパランツェーニに用事がありまして」
「先生に」
「ええ」
 コッペリウスはそれに答えて頷いた。丁度そこにニクラウスも帰って来た。
「赤を二本買ってきたよ」
「ああ、有り難う」
「あれっ、コッペリウスさんもいらしてたのですか」
「はい」
 彼はにこやかな笑みを作ってニクラウスにも挨拶をした。
「スパランツェーニに用事がありましてな」
 そしてまた言った。
「一体何の用事ですか?」
「いや、大したことはありません」
 笑みを作りながら言う。
「売りたいものがありまして」
「売りたいもの」
「気圧計や温度計、湿度計ですよ。いいものを作りまして」
「けれど先生はもうそういったものは全て持っておられますよ」
 ホフマンが答える。
「ですから。あまり売れないかと」
「今までのものよりずっとよくとも、ですか」
「先生は物理学者ですからねえ」
 ホフマンは今度はこう言った。
「そういったものはそれ程重要ではないと思いますよ」
「左様ですか」
「はい。残念ですけれど」
「だったら別のものはどうでしょうか」
「別のもの」
「はい、これです」
 そう言いながら鞄に手を入れる。そしてそこから二つの丸く小さいものを出して来た。
「それは」
「目です」
 コッペリウスは答えた。
「目」
「はい、目です」
 そしてまた答えた。
「義眼でしょうか」
「そう、私が作ったものです」
 彼は胸を張ってこう言った。
「青のものもあれば、黒のものもあります。如何ですかな」
「生憎僕は目はもう二つありますから」
 ホフマンは笑いながら言った。
「それはいいです」
「いいのですか」
「はい。少なくとも目は間に合っています」
「今の目よりよく見えますぞ」
 そう宣伝する。
「本物がもうありますから。別の方にでも売られればどうでしょうか」
「やれやれ。残念なことです」
「他には何かありますか?」
「眼鏡があります」
「眼鏡」
「はい、これです」
 そして目をなおして眼鏡を出して来た。赤い縁に緑がかった少し妖しげな眼鏡であった。ホフマンとニクラウスはその眼鏡をいぶかしげに見ていた。
「これですか」
「はい」
 コッペリウスは頷いた。
「これです。如何ですか」
「何か面白い外見の眼鏡ですけれど」
「面白いのは外見だけではありません。中身も面白いのです」
「つまりよく見えるようになると」
「はい」
 彼は頷いた。
「如何ですか」
「面白そうですね。幾らですか」
「三デュカです」
「安いですね。それでいいんですか?」
「はい」
 彼はここで悪魔的な無気味な笑みを浮かべた。
「出血価格です」
「それはいい」
「付けられると。どんなものでも見えますよ」
「どんなものでも」
「はい。如何ですか」
「わかりました。買いましょう」
 ホフマンはこうしてコインを彼に差し出した。それで買ったのであった。眼鏡以外のものも。
 かけてみる。だが今までと大して変わりはないように思えた。
「あの、これは」
「まあすぐにわかります」
「そうですか」
「とりあえずはお持ち下さい。きっと貴方にいいことがありますから」
「わかりました。それでは」
「はい」
 ホフマンは眼鏡を上着のポケットにしまった。ニクラウスもそれを見ていた。従ってこの時コッペリウスの顔から目を離してしまっていた。まるで悪魔の様に邪な笑みを浮かべたその顔から。
 家の扉が開いた。そしてスパランツェーニが出て来た。
「待たせたね、ホフマン君」
「いえ」
「ニクラウス君も来てくれたのか。これはいい」
「そして私も」
「・・・・・・あんたものか」
 スパランツェーニはコッペリウスの顔を見てあからさまに嫌な顔をした。
「一体何をしに来たんだ」
「いや、何」
「何の用だ、一体」
「貴方に祝福を届けに参りました」
 恭しく一礼して述べる。
「私はあんたから今までそんなものを貰ったことはないが」
「それでもです。お金という名の祝福を」
「オランピアなら会わせんぞ」
「まあまあ」
「あれはわしの娘ということになっているからな」
 思えば変わった言葉であるがこの時ホフマンはそれには気付いていなかった。ニクラウスもそれは同じであった。ただぼんやりと二人のやり取りを聞いていただけであった。
「違うか」
「まあ確かにそうですが」
「だからわしの方は用事はない。これでいいか」
「いやいや」
「だが、わしも鬼ではない」
 彼はこう言ってコッペリウスの耳に自分の顔を近づけさせてきた。
「話があるのだが」
「はい」
「あれの目のことでな」
「目、ですか」
 コッペリウスはそれを聞いてニヤリと笑った。
「そう、目だ。実は最近調子が悪いようなのだ」
「それはそれは」
「緑の目はあるか」
 次に問われたのは目についてであった。
「あれば」
「わしは御前に祝福をやれる」
「幾ら程」
「五〇〇デュカだが」
 金額が提示されると顔が変わった。
「有り難い祝福です。ですが保証人は」
「会社だが。どうだ」
「個人よりは信用がおけそうですな。そしてその会社は」
「エリアスだ。ユダヤ人が経営している」
「ユダヤ人が」
 それを聞いたコッペリウスの顔色が変わった。
「用心しておいた方がいいやも知れぬな。あの連中は下手をすれば我等よりも手強い」
 この時代もユダヤ人は欧州においては商業、とりわけ金融業に従事することが多かった。手強い商人として小説や戯曲の題材にもなっている。
「どうじゃ」
「考えさせて下さい」
 彼は考える顔でこう返した。
「まずは詳しいお話を」
「うむ」
「何か色々と話をしているみたいだな」
「そのようだね」
 ニクラウスはホフマンにワインを一本手渡しながらこう述べた。
「取引みたいだけれど」
「それもすぐわかるよ」
 彼はこう答えた。
「すぐにね」
「まあ僕には関係ないか」
 だが関係あった。スパランツェーニはホフマンをまるでたらし込む様な嫌らしい笑みを浮かべて見た後でコッペリウスに囁いた。
「これでどうじゃ」
「また悪いことを」
 そう応えるコッペリウスも邪悪な笑みを浮かべていた。
「何、世の中とはそういうものじゃ」
 彼はこう言ってうそぶく。
「騙される方が悪いのじゃ。違うか」
「確かに」
「あれとオランピアを結婚させてな」
「名案ですな。確実に乗ってきますぞ」
「真相も知らずな。馬鹿なことにな」
 二人はそう言い合って笑っていた。そしてあえてにこやかな顔を浮かべてホフマン達に声をかけてきた。
「ホフマン君」
「はい」
 ホフマンは二人に応えた。
「それでは中に入ろうか。もうすぐ他のお客さん達もやって来るしね」
「わかりました。それでは」
「君はまだ若い。これからの若者だ」
「何かおかしいな」
 ニクラウスはそれを聞いて不思議に思った。何か胡散臭いものを感じていたのだ。
「何があるんだ?」
「では中に来てくれたまえ」
「わかりました」
 しかしホフマンはそれに気付くことなくそれに従った。
「では大広間に」
「はい」
 こうしてホフマンとニクラウスはスパランツェーニとコッペリウスに案内されて家の中に入った。そして大広間にまで案内されたのであった。
 大広間は赤いカーテンと緋色の絨毯で色彩られた綺麗な部屋であった。右端に軽食や酒が置かれたテーブルがあり左端に客達が入って来ていた。その中にホフマンとニクラウスもいた。
「綺麗な部屋だな」
「うん」
 何も知らずただ喜びを露わにするホフマンに対してニクラウスは慎重に周りを見ていた。
「今のところ何もないか」
「ニクラウス」
 ホフマンはここで彼に声をかけてきた。
「何だい?」
「いや、何か気になってね」
「何に関してだい?」
「君のことがだ」
「僕のことか」
 それを聞いて内心少し残念に思った。
「うん。何かそわそわしていないか」
「別に」
 彼はこう言ってそれを否定した。
「君の気のせいだろ」
「そうか。ならいいんだが」
「だけど。気をつけてはおいた方がいいね」
「何に関してだい?」
「それもすぐわかるよ。その時後悔はしないようにな」
「何だかよくわからにけれどわかったよ」
 ホフマンは頷いた。
「まあもうすぐ天使もここに来るしね。その加護を期待しようよ」
「天使、かい」
「ああ」
「それが・・・・・・いやいい」 
 ニクラウスはそれ以上話そうとしなかった。そうしている間にスパランツェーニが大広間の中央にやって来た。
「皆さん」
 彼は客達に対して言った。
「私は今日皆さんに紹介したい者がおります」
「それは一体」
 客達がそれに問う。
「我が娘です」
「娘!?」
 客達の中にはそれを聞いて不審に思う者もいた。
「娘さんですか」
「はい」
「貴方に娘さんがおられたのですか」
「言いませんでしたっけ」
「初耳ですぞ」
「やっぱりおかしいな」
 ニクラウスはそれを聞いて一人呟いた。
「何かあるのか」
「そして娘さんの御名前は」
「オランピアです」
「彼女のことだ」
 ホフマンはそれを聞いてその顔を晴れやかなものにさせた。
「ニクラウス、聞いたな」
「ああ」
 ニクラウスは疑わしげな目でスパランツェーニを見ながらそれに応えた。
「どうにもね。はっきりと」
「そう、僕もはっきりと聞いた」
 二人の聞いているものは同じものでも考えているものはまるで違っていた。
「確かにね。もうすぐだ」
「ではオランピアがここに来ます」
「いよいよだ」
「いよいよだね」
 二人の表情は完全に異なるものとなっていた。ホフマンは飛び上がらんばかりであり、ニクラウスは用心という鎧を纏った顔であった。二人はその顔のまま右手の扉が開くのを見守っていた。
 やがてまるで蝋の様に白い顔の少女が入って来た。プラチナブロンドの髪に大きな緑の目を持っている。唇は赤くまるで薔薇の様であった。
 顔立ちはこの世のものとは思えない程美しかった。まるで童話の挿絵の中の妖精がそのまま出て来たようであった。
 身体も細くまるで針の様である。その身体を白い絹のドレスで包んでいた。
「何て美しいんだ」
 ホフマンはその姿を見て思わず息を飲んだ。
「そうだな」
「君もやっと納得してくれたんだね」
 ニクラウスが頷くのを見て嬉しそうに応えた。
「ああ」
 ニクラウスは頷いた。そして言った。
「まるで」
「まるで。何だい?」
「この世のものじゃないみたいだ」
「皆さん、こちらにいるのがオランピアです」
 スパランツェーニは彼女が横に来たのを確かめてからまた言った。
「如何でしょうか」
「嘘の様な美しさです」
 客達もホフマンと同じ様な返答であった。
「幻みたいだ」
「美しいのは姿だけではありませんよ」
 スパランツェーニは思わせぶりに笑いながら述べた。
「歌も。素晴らしいのです」
「まことですか」
「はい」
 スパランツェーニは頷いた。その間オランピアは表情一つ変えてはいなかった。それどころかピクリとも動きはしない。ただ父の横に立っているだけであった。
「どんな楽器の演奏にも合わせますが。どれが宜しいですかな」
「そうですな」
「ハープなんかはどうでしょうか」
 ここで若い男の客が言った。
「おや、コシュニーユさん」
 それを聞いて他の客が声をあげた。どうやらこの若い客の名はコシュニーユというらしい。
「ハープがお好きでしたか」
「あの様にこの世のものとは思えない方にはハープの声こそがいいと思いますが」
「成程」
 客達はそれに納得した。
「それではハープで宜しいでしょうか」
「はい」 
 客達はスパランツェーニの声に頷いた。
「私共に異存はありません」
「それで宜しいです」
「わかりました。ではハープを」
「畏まりました」
 主の言葉に従い使用人達が下がる。そして暫くして大きなハープを持って来た。
「それではいいな、我が娘よ」
「はい」
 オランピアは父の手が肩に触れると頷いた。まるで機械の様に向き質な動作と声であった。ニクラウスはそれも見ていた。
「では皆さん御静粛に」
「静粛に」
 場が静まりかえる。案内されてきた演奏者のハープの序奏がはじまる。オランピアの口がゆっくりと開いた。その間にスパランツェーニは彼女の後ろに回っていた。
「クマシデの並木の鳥達や空の太陽が娘達に話し掛ける」
 彼女は歌いはじめた。
「皆愛する娘達に話し掛ける。それを聞いて娘達は心を高鳴らせる」
「おっと」
 声が弱まりそうになるとスパランツェーニが彼女の後ろで少し動いた。すると声は元に戻った。
「!?」
 ニクラウスだけがその動作と声の弱まりに気付いた。そして目を顰めさせる。
「どういうことなんだ」
「やるせなさを歌い上げ、さざめく心を突き動かす」
 オランピアの歌は続く。信じられないような高音で、しかも複雑な技巧が続く。まるで宝石を転がせるような。モーツァルトのオペラのアリアのそれのように。
「何て難しい歌なんだ」
 ホフマンにもそれはわかった。だからこそこう呟いた。
「それを何なく歌えるなんて。天才だ」
「人間のものとは思えないね」
 ニクラウスも真剣な顔で答えた。
「ああ」
「まるで」
「まるで?」
「機械みたいだ」
「本当だね」
 やはりホフマンは彼の言葉の意味には気付いてはいなかった。これは他の客達も同じであった。そして歌は続いた。
「愛に震える心を動かせる。それが歌なのです」
 歌い終わった。場は拍手と歓声に支配された。
「いや、素晴らしい」
 客達は皆賞賛の言葉を述べる。
「ここまで素晴らしいとは。人間業とは思えません」
「左様でしょう」 
 スパランツェーニはそれを聞いて満足気に頷いた。
 オランピアは父が客達の受け答えをする間ずっと左右に会釈をしていた。それもやはり機械的な動きであった。
「ところで皆さん」
「はい」
 彼はまた客達に声をかけてきた。
「食事などどうでしょうか。丁度スープがいい具合に出来上がっていまして」
「スープですか」
「はい。まずは腹ごしらえということで」
「悪くないですね。それでは」
「はい」
 客達はテーブルに向かおうとする。一人を除いて。
「あの」
 ホフマンはオランピアに声をかけてきた。だが彼女は返答しない。
 それに気付いたスパランツェーニがそっとオランピアの肩に触れた。すると彼女は気付いたように彼に顔を向けてきた。
「はい、何か」
「素晴らしい歌でしたよ、本当に」
「有り難うございます」
 感情のない声でそう返す。
「また歌って頂けますか」
「はい」
「それは何よりです」
 彼女は頷いた。ホフマンはそれを聞いて満足そうに笑った。だがそれを見て他にも哂う者がいた。他ならぬスパランツェーニ本人であった。
「上手くいきそうじゃな」
 邪な笑みを浮かべて笑った後でホフマンに声をかけてきた。
「さあ貴方も」
「スープをですね」
「はい。さあどうぞ」
 そう言って奥の部屋に案内しようとする。
「彼女はいいのですか?」
「節制しておりまして」
 彼はこう言って誤魔化す。
「あまり食べないのですよ」
「そうでしたか」
「はい」
 オランピアは頷いた。そしてここでもスパランツェーニは彼女の肩に触れていた。しかしホフマンはそれには気付かなかった。
「では皆さん参りましょう」
「はい」
 客達は隣の部屋に消えていく。部屋にはオランピアだけが残った。彼女が一人いるとすぐそこにホフマンがやって来た。
「あの」
 ホフマンはおずおずと彼女に近付いてきた。
「オランピアさん、申し上げたいことがあるのですが」
「はい」
 彼女はそれに応えた。
「実はですね」
「はい」
「貴女のその眼差しと声が」
「はい」
「とても気に入りまして」
「はい」
 彼女は無機質に頷き続ける。
「僕は今一人です。そして貴女も一人でしょうか」
「はい」
「それは有り難い。神の配剤だ」
 ホフマンはそれを聞いて神に感謝の言葉を述べた。
「では申し上げましょう」
「はい」
「これから。二人で生きていきたいのですが」
「はい」
「宜しいのですか?」
「はい」
 彼女は相変わらず頷き続けるだけであった。
「何ということだ。夢ではないのか」
「はい」
「僕達の魂は一つになれるんだ。永遠に」
「はい」
「貴女は僕の太陽だ。僕の心を照らし出す」
 しかしオランピアはそれには応えなかった。
「どうかしたのですか?」
 応えるかわりに部屋のあちこちを動きはじめた。まるでホフマンを避けるように。
「オランピアさん、どうしたんですか」
 ホフマンはそれを見て自分が避けられているのでは、と危惧を覚えた。
「僕を避けられるのですか?」
「やっぱりここにいたか」
 ここでニクラウスが部屋に入って来た。
「ニクラウス」
「何をやっているんだ、一体」
「聞いてくれ」
 呆れた様な声のニクラウスに対して情熱的に語り掛けた。
「彼女は僕を愛しているんだ」
「彼女がかい?」
「ああ。今告白をしたら頷いてくれた。これが何よりの証拠だ」
「はい」
「ほら」
 立ち止まって頷いたジュリエッタを指差してこう言った。
「なっ、本当だろ」
「あの声で言ったのかい?」
「ああ」
 彼は頷いた。
「何度もね。君も聞いただろう?」
「うん」
「この通りさ。彼女は僕を愛してくれているんだ」
「君は正気なのか?」
「!?一体何を言うんだ」
 ホフマンはそこの言葉に頭を打ち据えられたように感じた。
「僕が正気じゃないとでも言うのかい?」
「少なくとも目は覚めてはいない」
 ニクラウスはなおも言った。
「違うかい?」
「違うね」 
 彼は憮然とした顔で言い返した。
「僕だって馬鹿じゃない。分別はあるさ」
「これまではね。だけれど今はどうかな」
「本当に疑っているんだね」
「そうさ。今の君はあの眼鏡のせいで盲目になっている」
「これかい」
 それに応える形で懐からあの眼鏡を取り出した。
「これのせいでというのかい?」
「そうさ。君がその眼鏡で彼女を見てからおかしくなった。最もその前から心を奪われていたみたいだけれどね」
「心は最初から奪われていたさ」
 彼はしれっとしてそう返す。
「けれどね。分別まで失ったつもりはないよ」
「自分でそう思っているだけてことはよくあることだぞ」
「ニクラウス、一体どうしたんだ」
 ホフマンは友人のあまりにも冷たい態度と言葉にたまらなくなった。少なくとも彼にはそう思えた。
「そんな態度で。何があるんだ」
「すぐにわかるよ」
 彼がこう言うと客達が戻って来た。その中にはスパランツェーニもいた。
「すぐにね」
「皆さん」
 スパランツェーニは上機嫌で客達に声をかけていた。
「スープの後は腹ごなしにダンスといきましょう」
「はい」
 客達は笑顔でそれに応えた。
「ホフマンさん」
「はい」 
 彼はスパランツェーニに顔を向けた。
「曲は何が宜しいですか?」
「ワルツを」
 彼は答えた。
「先程のハープとフルートで。宜しいでしょうか」
「畏まりました。それでは」
 スパランツェーニはそれを受けて後ろに控える使用人達に声をかけた。そして彼等はそれを受けて暫し部屋から出るとハープとフルートを持って来たのであった。
 オランピアはそれを見るとまた動きはじめた。まるでそれ自体に反応しているようであった。
「見ろ」
 ニクラウスは密かに彼女を指差してホフマンに声をかけた。
「彼女の動きを」
「変わったところはないけれど」
「まだわからないのか。おかしいとは思わないのか?」
 そう問うた。
「全く。君の方こそどうしたんだ?」
「もう手に負えない。では君自身で確かめてくれ」
「言われなくても。実際に彼女と踊ってみればわかることさ」
「ただし。後悔はしないね」
 彼はホフマンに問うてきた。
「満足はしてもね」
 ホフマンはニヤリと笑ってこう返した。
「そうか。じゃあいい」
 ニクラウスはそれを聞き遂げてこう答えた。
「だが。後ろは任せてくれ」
「!?よくわからないけれどそれじゃあ」
「うん」
「さあ、そろそろはじめましょう」
 スパランツェーニは前奏を命じた。
「今宵は楽しい夜。踊って過ごしましょう」
「はい」
 客達もそれぞれペアを組んで用意をする。
「貴方も。ほら」
「有り難うございます」
 ホフマンはスパランツェーニ自身の手でオランピアとペアになった。
「それではそろそろ」
「はい。ニクラウス、君は?」
「僕はいいんだ」
 彼は一人部屋の端にいた。そしてホフマンの言葉にこう答えた。
「ここで見ているから」
「そうか」
「それじゃあね」
「うん」
 こうしてワルツがはじまった。ホフマンは彼女をよりはっきりと見たい為かあの眼鏡をかけていた。そしてワルツに乗って踊りはじめたのであった。
 皆ダンスを踊りはじめる。その中央にはホフマンとオランピアがいた。彼は今幸福は自分と共にあると思っていた。
 音楽が次第に速くなっていく。それにつれてオランピアの動きも。ホフマンはそれに合わせていたがやがてオランピアの動きはどんどん速くなっていった。そして遂には信じられないまでになった。
「!?おかしくないか」
 客達もそれに気付き踊りを止める。
「おい、このままだと」
「ああ」
「いかん」
 スパランツェーニもそれに気付いた。そして使用人達に顔を向けて言う。
「おい」
「は、はい」
 彼等は主の言葉に慌てて演奏を止める。これでワルツは終わる筈であった。
 しかしオランピアの動きはまだ止まらなかった。それどころかさらに激しくなりホフマンはそれに振り回されていた。それを見たニクラウスがそこに飛び掛かった。
「ホフマン、離れるんだ!」
「け、けれど」
 だが離れることはできなかった。何とオランピアの腕が彼を完全に掴んでいたのだ。その手はぞっとする程冷たく、固かった。
「離れることが」
「それなら!皆さん!」
 ニクラウスは客達に声をかけた。
「オランピアさんを止めて下さい!お願いです!」
「わ、わかった!」
「止むを得ん!」
 客達はそれに応えオランピアに駆け寄る。そして彼女の身体を押さえその動きを止めた。こうしてホフマンは何とか彼女から離れることができた。そこにスパランツェーニがやって来た。
「娘が。申し訳ない」
 そう言ってホフマンに謝罪する。
「いえ」
 ホフマンはまだ完全に冷静さを取り戻してはいなかった。肩で息をしながら半ば呆然としてスパランツェーニに応える。
「怪我はなかったかね」
「はい、何とか」
 服は破れている部分もあったがそれでも怪我はなかった。
「そうか。ならよかった」
「はあ」
「オランピア」
 彼は娘に顔を向けた。
「はい」
 あれだけのことがあったというのに彼女は汗一つかいてはいなかった。そして表情も全く変わってはいなかった。そう、全くであった。
「もうワルツを踊ってはならない」
「はい」
 彼女は相変わらず無機質に応える。
「よいな」
「はい」
「わかったなら後ろで座っておけ」
「はい」
 こうして彼女が後ろに下がった。スパランツェーニが側に付き添っていた。ホフマンにはニクラウスが付き添っていた。
 彼はまだ床にへたり込んでいた。呆然としたままである。額の汗はまだ拭ってもいずそれが彼の狼狽した様子を如実に現わしていた。
「ホフマン」
「何だい」
 彼はニクラウスの呼び掛けに応じて顔を彼に向けてきた。
「眼鏡が」
「ああ」
 ニクラウスは床に落ちていた眼鏡を差し出した。それはもう完全に壊れていた。レンズは割れフレームは曲がっていた。もう使い物にならないのは誰の目からも明らかであった。
「もう駄目だね」
「そうだな。だけれどもういいや」
 ホフマンは汗を拭いながら言った。
「彼女は僕の側にいてくれるんだし」
「あんな目に遭ってもまだわからないのか」
「何がだ」
 彼はムッとまって言い返した。
「死にそうになったのに。それにあの手は」
「確かに信じられない強さだったけれどそれがどうしたっていうんだ」
「わからないんだな」
「ああ、わからないね」
 立ち上がりながら応えた。ニクラウスもそれに合わせて立ち上がる。
「君の言うことは」
「そうか。じゃあ仕方がない」
「えっ!?」
「これで今回は終わりだ」
「一体何を言っているんだ、君は」
「スパランツェーニ!」
 そこで誰かがこの屋敷の主を呼ぶ声がした。地の底から響く様な邪悪な感じのする声である。
「この詐欺師が!エリアス社は破産していたではないか!」
「クッ、ばれたか」
 その声はコッペリウスのものであった。スパランツェーニはそれを聞いて舌打ちする。
「覚悟しろ!今そこに行ってやるからな!」
「一体どうしたんだ?」
「詐欺師がどうとか」
「皆さん、これは」
 スパランツェーニは客達に対して言い訳をしようとする。しかしそこに大きな金槌を持ったコッペリウスがやって来た。
「金を返せ!さもなければ」
 そう叫びながら金槌を振り被る。その目は血走り怒りで釣り上がっていた。元々釣り上がっていた目がさらに上がりまるで悪鬼の様であった。
「こうしてくれる!」
 そして隣に座っていたオランピアに金槌を振り下ろしたのであった。
「オランピア!」
「駄目だ、ホフマン!」
 ニクラウスは慌てて彼女を助けようとするホフマンを後ろから掴んで制止した。
「今行けば君も!」
「けど!」
 金槌は無慈悲に振り下ろされた。そしてオランピアは粉々になってしまった。
「え・・・・・・」
 ホフマンだけではなかった。コシュニーユも他の客達もそれを見て呆然となった。粉々になってしまったオランピアの破片が辺りに飛び散るのを見て。
「これはどういうことなんだ・・・・・・」
「フン、こいつは人形だったんだ」
 コッペリウスは金槌を両手に持ったまま不敵に言う。その目も顔も完全に悪魔のそれであった。
「人形」
「そうさ、人形だ。わしが作った人形だ」
「はい」
 その足下にはオランピアの首が転がっていた。空を見詰めながら空虚にコッペリウスの問いに答えていた。
「それをスラパンツェーニに売ったのだ。はした金でな」
「はい」
 オランピアは空虚な声でまた答えた。
「それがオランピアだったのだ。彼女は人形に過ぎない」
「人形・・・・・・」
「それじゃあ僕は人形を」
「そうさ」
 ニクラウスが答える。
「信じられないだろうが本当のことだ」
「・・・・・・・・・」
 彼はそれを聞いてガックリと肩を落とした。そしてそこに倒れ込む。その足下にも周りにもオランピアの破片が転がっていた。ゼンマイや歯車、ネジ、そして白い壊れた指が彼女が何者であったかを何よりも雄弁に物語っていた。
「人形だったなんて」
「地の底からの報いだ、スパランツェーニ」
 コッペリウスは金槌を置きスパランツェーニに対して誇らしげに言った。
「ざまを見よ。わしを騙したからこうなる」
「この悪党が」
 スパランツェーニはその身体をワナワナと震わせながら言葉を返した。
「こんなことをして只で済むと思っているのか」
「どうするつもりだ?」
「知れたこと。殺してくれる」
 そう言いながら彼に掴み掛かろうとする。
「覚悟しろ」
「そんなことをしてもオランピアは元には戻らんぞ」
「こんなものどうでもいいわ」
「こんなもの」
 ホフマンはその言葉に我に返った。
「人形なぞ。どうなってもいいわ」
「どうなってもいい・・・・・・」
「そうさ、オランピアはそうした存在だったんだ」
 ニクラウスはホフマンに対して語った。
「心を持たない人形だったから。その程度の存在だったんだ」
「そんな・・・・・・」
 その言葉が止めとなった。ホフマンはもう立ち上がれなかった。
 後ろでスパランツェーニとコッペリウスの掴み合いの喧嘩がはじまった。客達はそれを呆然と見る。だがホフマンはそれを見ることはできなかった。ただ絶望の中に沈んでいた。





一人目の女性は人形だった。
美姫 「ちょっと気の毒よね」
ニクラウスが必死に忠告してたけれど、それは届かなかったみたいだな。
美姫 「これが一つ目の恋のお話なのね」
後二つ。今度はどんなお話が待っているんだろう。
美姫 「次回も待ってますね」
ではでは。



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