注意書き これは『重なる想い』の続編的なものです。前回以上に切なく悲しい話になっています。

ですので読まれる場合は前回よりもさらに覚悟を決めてからにしてください。

     また、幸せとは誰に対しても平等に訪れ、無償で手に入るものだと思われている方は戻る事をお勧めします。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 十字架は真ん中から折れ、ドアは朽ち果て、座席もボロボロとなり誰も座れないような状況。

 

 神聖であり、清潔であるべきはずのこの教会はすでに終わっていた。

 

 しかし、外から注ぐ陽光。

 ステンドグラスを通して教会の中に入ってくる光だけは神々しかった。

 子供を胸に抱いた慈悲深い表情が二人を祝福しているようで………、

 今この時、この場所でだけは、この場にいる二人を祝福しているようで………、

 

 朽ち果てた十字架の下に白のタキシードを纏った恭也が、

 もはや祝福するためのヴァージンロードと呼べぬ花道を歩いてくるウェディングドレスのなのはが、

 

 十字架の元に集い、向かいあう。

 

 神父も親族も、友人もいない結婚式。二人だけの結婚式。

 誰にも祝福されず、誰からも祝福を受ける事が許されなかった二人だけの結婚式。

 

 

「私、高町恭也は病める時も、健やかなる時も、例え何時如何なる時であろうとも、

 妻であり、妹であり、娘であるなのはを愛し、共に幸せを目指し続ける事を誓います」

「私、高町なのはは病める時も、健やかなる時も、例え何時如何なる時であったとしても、

 夫であり、兄であり、父である恭也さんを愛し、共に幸せを目指し、辛くとも苦しくとも今を精一杯恭也さんと生きると誓います」

 

 その誓いを聞き届ける者は互いのみ。

 傍聴する者は誰もいない互いのみの誓い。

 されど、その誓いは誰も聞く必要などない。この誓いは互いだけが知っていればいい誓い。

 互いの胸に刻み付ける誓い。

 

 破る可能性などないが、それでも口にする通過儀礼。

 

 互いに指輪を相手の左の薬指にはめ合い、唇を交わす。

 深く、心さえも繋がるキス。

 

 

 唇が離れた二人の表情はこんな状況でさえも幸せそうに微笑んでいた。

 

 

 

 

最果ての幸せ

 

 

 

 

 

 

 遊園地で告白しあった二人はその後、関係を伏せ続けた。

 隠しとおせない事など知っている。

 しかし、それでも家族みんなで一緒にいたいと願った。

 

家族と共に生きたいと思う気持ちは悪いことなのだろうか?

悪いことではない。しかし、それは二人が外れていなければの話

 

 二人は成るべく家以外では近づかないようになった。

 もしかしたら家族は祝福してくれるかもしれない。

 しかし、近隣の住人達は?

 

 心無い噂を口にし、誹謗中傷を井戸端会議でするかもしれない。

 子供達から辛い一言を言われるかもしれない。

 

 恭也はなのはを愛している。なのはも恭也を愛している。

 だが、同時に家族も大事だった。

 

 

 時が立つに連れて周りの眼が彼を怪しんできた。

 近づいていないのにふとしたきっかけで漏れてしまう。

 

 それは翠屋の帰り道。それは買出し。些細な事の積み重なり。

 本当に些細な事の積み重なり。

 

 だが、周りは気付いてしまった。

 

 

 

 そして告げられる。

 誰よりも信じていた家族から兄妹なのだ、正気に戻れと…………、

 

 痛かった。苦しかった。悲しかった。

 家族だけは祝福してくれると思っていたのに………、

 

 だが、同時に向けてくる彼女達の視線で分かってしまう。

 それは家族が二人を思っての事だと。

 

 利己的な理由ではなくこのまま行けばいずれ外に知られ、烙印を押され、誹謗中傷に会うと。

 その真摯な態度が何よりも二人を想ってくれている事を告げていた。

 想いを間接的に認められているようで嬉しくもあった。

 

 

 しかし、それでもその関係は認められていない。

 愛し合う事を許されたわけではない。

 

 だから二人はその日、旅立った。

 どんな障害があろうとも二人で幸せになると誓った二人は互いの幸せだけを願い、旅立った。

 

 それを誰が非難出来るだろうか?

 幸せとは掴み取るものだ。奪い取るものだ。勝ち取るものだ。

 そして、それ相応の対価を支払って手に入れるものだ。

 彼らは最も許されない相手と想いを結んだ。

 周りに認められずとも想いを結び合い、幸せを願った。

 二人の幸せを願うのならば他の全てを捨てなければ手に入らない。

 

 恭也となのははそこまでしなければ幸せを掴めないのだ………

 

 

 

 

 

 

 

「お帰り………お兄ちゃん」

「ただいま、なのは。…………いい加減、お兄ちゃんと呼ぶのはやめないか?」

 

 日本ではあるが海鳴とは程遠い地で、誰にも二人の血が繋がっている事など知られずに過ごせる場所に二人は落ち着いた。

 人と触れ合う事も少ない場所で二人は二人だけの世界を作り生きている。

 

 家族にも知られず、親友にも触れ合えず、唯、二人だけがいる世界で、

 

 

 

「さすがにもう父になるんだからな」

 

 恭也はなのはの膨らんできたお腹を優しく、愛おしげに撫でる。

 恭也が撫でるなのはのお腹は臨月間近というほどに膨らんでいた。

 

 掌に伝わるもう一つの鼓動が恭也に笑顔を齎す。

 

「ふふっ、そうだったね。でもお兄ちゃんは何時までたっても私にとってはお兄ちゃんだよ」

 

 なのはも恭也の上に手を重ねそこから自らの新たな生命が宿るお腹を撫でる。

 お腹の子供と恭也の二人を同時に大切に思っているかのように、優しく優しく。

 

 

 止める者のいない二人は最大の繋がりを求め、実行した。

 

 想いが通じ合っているだけで心は満たされない。想いを言葉にしても心は満たされない。

 

 止まる事無く想いを確かめ合い、想いを囁きあった。

 そしてその果てになのはは身篭った。

 

 成されたのは禁忌の子。

 

 だが、それでも二人は幸せそうだった。

 たとえ、禁忌の子であろうとも二人の真剣な想いの証であり、二人の幸せの象徴だった。

 

 

 身重のなのはを支えるようにして部屋に入る。

 窓から見えるのは広大な海。まだ誰にも知られていなかった頃に何も気負う事無く眺められたものと同じ海。

 

 窓から吹き込んでくる風がなのはと恭也の髪を揺らす。

 静かに、優しく、二人を小さくも祝福する。

 

 二人しかいないこの世界で二人は間違いなく祝福されていた。

 

 

「ねぇ、お兄ちゃん。お兄ちゃんは生まれてくる私たちの子供に何を願うの?」

「俺か?………何だろうな?」

 

 苦笑を浮かべながら思案する。

 恭也としては自分達と同じように険しい道を選んで欲しくない。

 出来るのならば、誰からも祝福されるように育って欲しい。

 

「私はね……、自分の思う様に生きて、自分の幸せを掴んで誰にも屈しないようになって欲しいな」

「………なのは…………」

 

 それは今、二人きりという幸せを享受しているがその反面捨ててきた物を憂いている想いなのだろう。

 周りに屈せずに認めてもらえるように努力し続ければ家族みんなで今笑い会えていたかもしれない。

 なのはとて捨てたくて捨てたわけではないのだから。

 

 それは恭也とて同じだろう……

 

「大丈夫だ。きっと俺たちの子は……………」

 

 

 

 

 最果ての地にて互いに寄り添いあう二人。

 それが幸せなのかどうかは部外者にはわかり得ない。

 確かなものは唯二つ。

彼らの薬指に輝く銀色の指輪とお互いがお互いに微笑んでいる事だけ…………

 

 

 

 


後書き

 さて、二人の想いが重なったその後のお話しとなりました。

 様々な障害がある中、二人がすべての人に祝福されて幸せになる。

 そんな物は私の中には思い描かれませんでした。それが例え、二人の血が繋がっていないという事だったとしても。

 幸せを掴むにはそれと同等の代価の物を払わなければならない。

 それは恭也となのはの場合は家族だったわけであり、今までの人間関係だったわけです。

 酷い、あまりにも悲しすぎるという意見は百も承知です。

 しかし、この作品も元々終わっているのです。してはいけない恋をして、結ばれてはならない想いが結ばれた。

 だとするのなら、この終わり方は必然だったのでしょう。

 繰り返し言いますが私は彼らが好きです。

 しかし、それでも二人が結ばれるには逃げるか、狂うか、壊れるかその三択しかないと私は思います。

 これでもまだマシなエンディングなんですけどね(苦笑

 後、これ以上この話のリクエストは叶えられません。さすがにこれ以上は思い浮かびません。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

という訳でハイパーゼクターさん、シンフォンさん、猫神TOMさんのリクエスト〜。

いつの間にか『硝子越しの想い』もシリーズ化してしまった。短編を書く度にこうなるのか心底不安です。

ちびざから「………………」

 どうかしたの、ざから?

ちびざから「戯けが!!!!」

 ぐぼほぅ!!

ちびざから「誰がバッドエンドを希望した!!」

 バッドエンド言うな!!これはまだ幸せなエンドだぞ!!

ちびざから「まさか、お主、これ以上のバッドエンドを考えて………」

 (汗)さ〜て、そろそろ締めようか。

坐空「吐け!!!」

 ちょっ、ざから!?なんで魔獣化してるの!?

坐空「いい加減のお主の作る作品の切なさ加減に頭が来たのじゃよ!! 少しは二人を幸せにしろ!!」

 無理だよ。最初から破綻してる物語なんだから

坐空「だとしても桃子殿は祝福するはずじゃろうが!!」

 無理だよ。裏設定で桃子も恭也に好意を寄せているんだから

坐空「だとしても周りから祝福される話があってもいいじゃろ!!」

 まぁ、そうだね。………言えない、あるにはあるけどそれがこれを越えるバッドエンドだなんて

坐空「聞こえたぞ?」

 ひぃ!?!?!?

坐空「言え!! 一体どんな物を考えた!?」

 怒らない?

坐空「内容次第じゃ、しかし言わなければ確実にお主を屠る」

うぅ、実は家族とか近しい人からは祝福されるけど、その代りに子供は作らないっていう約束をさせられて、

でも体の繋がりがないと心は不安になるでしょ? その上、近所の人の陰口とか子供の心無い言葉とかがなのはを傷つける。

坐空「死ね!!!!!!」

 毎度、毎度死ねるか!! 私だってあの二人は好きさ!! けどな、現法とか今の倫理観を考えてみろ、どう考えても無理だろ!!

坐空「これは二次創作じゃろうが、そんなもん捨てろ!!」

 無理だったんだよ!!

坐空「というかいい加減『守護者』の続きを書け!!」

 戦闘シーンで詰まってるんだorz ぎっ、ぎにゃぁああああああ!!!

ざから「ふっ、悪は滅びた。ん? 身体が元に戻っておるな。なるほど、一度魔獣化したことで体内の毒が完全に解毒されたのか」

 最後に、私は恭×なの派よりも恭×桃派ダーーーーーーー!!!!





これもまた一つの結末だな。
美姫 「まあ、確かに二人だけになっちゃったけれど、これはこれで」
バッドエンドとは一概には言えないかもな。
美姫 「ともあれ、お疲れさま〜」
お疲れ様でした〜。



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