「さて、どうするよ?」

「どうしよっか?」

 

 帰る事は出来るも、この世界でする事のない大河とロッテは暇を持て余していた。待つだけがこの二人の仕事であり、それ以外には何もできない。無論、食事などの生命維持に必要な事は行わなければならないが、そんな物はそれほど時間はかからない。

 

「ならば、私の用事につきあってくれるか?」

 

 そんな二人に前にクレアが姿を現す。その手には文庫本が握られていた。

 

「待つしかないのに動いていいのか?」

「世界間移動は大きなマナを必要とする。前兆はトレイターが発見するだろう」

 

 クレアの言葉を正解だというように大河の魂のどこかが音を鳴らせた。

 世界から直接力を取り込んでいる召喚器ならば世界の異変にもいち早く反応できる。それをクレアは知っていた。

 

「それで、どこよ?」

「図書館だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

外伝 喪失の調、諦念の嘆き 5

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふむ、大河。すまぬが政治や経済に関する本をここからここまで」

「うへっ、こんなにたくさんの本を運んでどうするんだよ」

 

 クレアが示したのは本棚の一列を示し、二十近くの本がそこには並んでいた。一度に頼む量としては破格すぎる。

 

「何、すぐになれるからな。それにこれぐらいの量を読めなくては王女など勤まらん」

「ほへぇ〜」

 

 王女という仕事の辛さをクレアから聞かされてロッテは安堵のため息をついた。逃げ出してよかったと心底、ロッテは思った。

 

「だが、さすがに一冊ぐらいはつきっきりで教えてくれ」

 

 クレアの手の中にはすでに大河に指定した本とは別のジャンルの本が握られていた。表紙には海辺で口づけを交わしている男女。どう考えても恋愛小説だ。

 

「分った」

 

 クレアの前に本を積んだ大河はクレアの横に座り、一字一字、どういう意味を示すのかあまり学を詰め込んでいない頭で説明していった。言語は翻訳されているので意味は通じるのが幸いだった。

 

 さすがに体を寄せるのは苦労するのか、何度かクレアの肩に大河の肩が当たり、文字を差す時に本を握っている時のクレアの手に触れたりしていた。

 その姿をロッテは嫉妬を含ませた視線で睨んでいた。どう考えても今のクレアは大河を独占しているし羨ましい。ついでにわずかに大河の体が触れるたびに頬を薄く赤く染めていた。

 このままではまけてしまうかもしれないという焦燥感がロッテの中に募る。

 

 一通り教えこんだお陰でクレアはすでに理解したのか、大河を開放していた。

 

 

「大河、これを読んでほしいの」

 

 その手にはガラスの靴をはいた少女が踊る絵本。そう、シンデレラだった。

 何の意図もなく選んだ絵本だというのに、なんという皮肉だろう。この物語はシンデレラに似ているが……シンデレラストーリーにはなり得ないというのに。

 そんな事は大河も、ロッテもクレアも知らない。だが、ロッテがこの本を選んだというのは皮肉としか言いようがない。

 

「おぉ、なんてベタな。いいぜ」

「ちょっとごめんね」

 

 そういいつつ、ロッテは大河の膝の上にまたがる。隣同士で一冊の本を見るよりも同じ視点で物語を読んだ方が楽ではある。大河とロッテの年齢がもう少し離れていれば、の話だが。

 

「いや、あの……」

 

 大河の膝の上には薄いながらも微妙な柔らかな感触、鼻にかかる若々しい匂い。ロリコンではないと公言している大河だが、この状況は危険すぎる。

 

(つか、俺は当真大河(21)なんてつけられたくねーーーーっ!!)

 

 リコに手を出している時点でアウトだと何故気付けないのか。大河は最後の一線を護り続ける。踏み越えてしまえば楽なのに。

 

 

 大河とロッテがにぎやかにしている場所から少し離れた席には異常なまでのスピードで本をめくりながら憎々しげな表情を浮かべているピンク色の髪の少女が見られたそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 日差しはすでに赤く染まって、一日の終わりを告げ始めている。

 図書館が閉館してしまったため、追い出された三人は(奇跡的な事に大河とロッテの行動はちゅういされなかった)並んで家路についていた。

 昨日よりも二人の少女達と大河の距離は近い。一日しかたっていないが、それでも濃密な時間は心の距離を縮める。

 

「さ〜てと、今日は俺が料理するぜっ!」

「「出来るの(か)?」」

「ひでぇ!?」

 

 二人同時に首を傾げられ大河はかなり心にダメージを受けた。

 確かに、日頃から日常のこまごまとした事は未亜が自然と行ってくれ、普段は何もしていないに等しい。特にアヴァターに来てからは家事は何もしない事が当たり前になってしまっていた。

 だが、未亜と二人で暮らしていた時は大河とて料理はしていた。洗濯こそ諸々の事情があって出来なかったが、掃除ぐらいはしていた。

 無論、未亜と比べれば月とすっぽん。雲泥の差だが、まったく出来ない訳ではない。

 

「ふふっ、日本の伝統料理で目にものを見せてやるっ!」

 

 不敵な笑みを浮かべながら大河はスーパーへ足を向ける。その姿に二人の少女は互いに向かい合って笑みを浮かべて、大河の後を追った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「包丁の場所が分かんねぇ」

 

 料理は第一歩目から躓いていた。

 帰ってきて料理を作ろうと土鍋を用意したのはいいが、材料を切る為の肝心の包丁が見つからない。本当にたまにしか料理をしていなかった大河に包丁の場所が分かるはずもない。たまにする時とて未亜に場所を教えてもらいながら行っていたのだから。

 

「ロッテ、包丁の場所しらないか?」

「ごめん、大河。私も分らなかったから昨日はリゾットだったの」

orz

 

 昨夜の食事事情にそんな裏話があったとは知らなかった大河はかなりショックを受けながら刃物を探す。最悪、ハサミを火であぶってから使えばいいかなぁ〜とか考えていたのだが、そのハサミすら見つからない。

 この世界でどれほど未亜に依存していたかこの時、大河はいやという程理解した。これからはしっかりしようとは微塵も考えていないところがとても大河らしい。

 

「まぁ、いっか。トレイターで切れば」

 

 呼び出したトレイターが噴気の音を立てていた。あくまでも敵を切る為の存在として生まれたのに、為すべき事を成す為にこのようになったというのに違う用途に使われるのが我慢ならないとトレイターは魂の声を荒げるのだが、大河の意思は強く、悲しくも届かない。

 

「…………………召喚器をこのように使うのはお前が初めてだろうよ」

「あんがとよ」

 

 褒め言葉では決してないのに大河は気をよくしながら水菜を切っていく。ざくりざくりするたびにトレイターが魂の悲鳴を上げていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「という訳でハリハリ鍋の完成っ!」

 

 鍋の中では水菜と豚肉が昆布の出汁の中でぐつぐつと煮えている。水菜はシャキシャキ感を残すために出汁につけられている時間は僅か、しかし、昆布の出汁は水菜の束の間に入り込んで、よく味が出る。

 簡素ながらも素材の良さをうかがえる一品。

 尚、豚肉なのはさすがに大河もクジラ肉を用意できなかっただけの話である。普通のスーパーには並んでない。

 

 ロッテとクレアは揃って水菜と豚肉を同時に引き揚げ、息を吹きかて熱を取りながら異世界の料理を味わった。

 

「はぁ〜、やっぱこっちの料理はなんつーか和むな」

「そうなのか?」

「アヴァターにはなかったりする食材とか調味料があるからな。こっちの味を完全には再現できないんだよ」

 

 しかも、基本的に調理当番はアヴァター出身者ばかり。未亜がたまに夜食を作ってくれるがそれもアヴァター料理を極めて日本料理に近づけているだけでやはり違う。十七年以上慣れ親しんだ味にはさすがに勝てない。

 

 リコに頼んで持って来てもらえばいいとかいう考えは大河にはない。

 

「アヴァターで作るとなると作り方を持ち帰ったとしても、味を再現するには年単位の時間がかかるか……」

 

 これまでと全く異なる体系の技術をほぼ同じように作り出すには手間がかかる。職人の一人でも連れていけば話は別になるが、味があっているかどうかを確認できる人間が三人(カエデは少し別の世界なのでカウントしない)しかいない状況ではさすがに難しい。

 

「大河は、アヴァターの料理、嫌いなの?」

「いや、そんな事はねぇんだけどよ。お袋の味っていうのかな、俺にとって根っこにある味なんだよ。だから、かな」

「そっか」

 

 大河に言葉にロッテとクレアはあまりうなずけなかった。二人とも母親の料理というものを味わった事がない為に大河の言いたい事があまり理解できない。ニュアンスの違いが受け取れなかったと言った方がいいとも言える。そもそも、大河とて母親の料理など覚えていないのだから。

 

「まぁ、向こうの方が大切な仲間がいるし、お前らを放っておけないからな」

 

 クレアとロッテの頭をがしがしと力強く、髪が乱れるのも気にせず撫でる。少年のようないたずらっ子の笑顔を浮かべていてはクレアもロッテも子供扱いしないでほしいとはいえなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さてと、風呂は沸かしたから先に入ってくれ。俺は皿洗いしておくから」

 

 雑炊まで楽しんだ三人はテレビを見ながらくつろいでいた。無論、テレビ越しの音声にまで翻訳魔法が掛かっているわけはなくロッテとクレアは映像だけを楽しんでいた。

 

「ふむ、一緒に入りたいとか思わないのか?」

「狭いんだよ」

 

 昨日と同じ言葉を大河は口にする。無論、三人で入れるほどの風呂であったとしても大河は入る事はないが。

 

意図ぐらい察しろ。この愚か者が

「なんか、また悪口言われた気がするんだが」

「なんでもない。ロッテ、早く入るぞ」

「えっ? ま、待って!」

 

 大河と同じ風呂に入る事を想像していたのか若干、ロッテの頬は赤く染まっていた。

 

「ロッテ、想像したのか?」

「へっ!? してない、してないよ!?」

「しかし、頬が赤いぞ? その上、肌まで熱を持っている。くっくっくっ」

「お湯が熱いから……」

「姉妹の間に隠し事は無しだっ!」

 

「疎外感がやっぱりあんなぁ〜」

 

 未だに大切な事に気付けていない鈍感な大河だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「蛍火、今日はどこに行くの?」

「昨日はゲームセンターに行きましたからね〜。水族館にでも行きましょうか。ちょっと遠いので時間がかかりますが。一日を潰すにはちょうどいい時間ですし」

「うん」

 

 昨日購入したレンの服を着こませ、少し大きな帽子にレンの髪を折りたたんで隠す。銀の髪はどう考えても目立ち過ぎる。静かなバカンスを楽しみたい蛍火としては当然の措置だった。

 普段とは違う髪型にレンは随分と戸惑っていたが蛍火の必死の説得もあって許容してくれた。黒染はさすがに許してくれなかったが。

 

 

 

 手をつないで家を出る。レンの髪を隠した事によって周りからは不審な目で見られる事は少なくなり、仲のいい親子として周りから認識される事は蛍火にとって幸いだった。若干、憐憫の視線が混じっていたのは蛍火の外見がまだ二十代前半に見るからだった。

 

「水族館ってどんなところ?」

「魚がいっぱいいるんですよ。生きて泳いでいる姿が、といってもまぁ自然の姿をそのまま持ってこれるわけじゃないですけど」

「お魚? たまに食べてるアレ?」

「えぇ、学園と王都は海から遠いですからね〜。生きている海の魚を見るのは初めてになりますね」

 

 中世に近い文化形態のアヴァターでは活魚の輸送ができていない。というよりも生魚がほぼ流通していない。海から離れた場所に届くのは干物など、良くて一夜干しなどである。川の魚と海の魚はそれこそあまり形態は変わりはないが、それでも何か違うものがある。

 

 

 水族館の話をしながら駅で切符を買う。レンが切符の使い方を分らずに改札口の前で四苦八苦している姿に蛍火は微笑んでいた。

 時間帯をラッシュ時から少しずらしたお陰で席は空いていて、席に悠々と座りながらのんびりと窓の外を見る。立ち並ぶビルの群れ、コンクリで固められているマンション。アヴァターにはなく、もう二度と眼にかける事もできない光景。だからといって蛍火はそんな事で感傷に浸れるような人間はない。

 窓からの景色を楽しんでいたのはレンの方だった。早く動く景色というものを初めて見るレンは窓に顔をはりつけて外を楽しそうに見ていた。周りもそのあまりにも楽しそうな姿をほほえましそうに見守っていた。

 

 窓から見える変った建物が何かを楽しそうに尋ねてくるレンに蛍火も律義に知っている限りの知識を纏めて簡潔に話していた。さすがにラブホテルについて何と聞かれた時は冷や汗が止まらなかった。

 

 入ってすぐに見えるのは大きな水槽。種々様々な魚が水の中を泳いでいる。熱帯魚水槽ではない為に青魚が大半を占めているが、見上げるような場所に魚が泳いでいるのは圧巻。

 

「すごい」

「まぁ、人の娯楽への追及は恐ろしいという事ですね。物事が楽になっていく機械文明が進めば進むほど」

「??」

「こういう施設は楽しいという事です」

「うん」

 

 水槽の上から降り注ぐ蛍光灯の光が水の中で反射して、光の柱を作り、また光が乱反射して光の玉が見えたりなど、水の中を外から見れる水族館ならではの光景。ただただ、そんな蛍火にとってある種当たり前の光景を本当に楽しそうにしているレンの姿を蛍火はただ、静かに見守っていた。

 

 

 

「ふわぁ〜っ」

「綺麗ですか?」

「うん!!」

 

 熱帯魚を飼育しているスペースに移動すると本物のサンゴの中で生息している色とりどりの魚が泳いでいるのが見える。

 食べられる魚は少ない為に、食卓で見る事の少ない魚。それらは眼の保養となる。

 

「ひらひらして可愛い」

「まぁ、そういう種類ですしね」

「むぅ〜」

「??」

 

 ほっぺをリスのようにふくらませてレンは怒っていた。何が悪かったのか蛍火には一切理解出来なったがそれはある種仕方ない。周りが大人しかいない為に予想以上に情緒面の成長が著しいレンが考えている事を男が理解するのは不可能というモノ。

 

 具体的にはレンの方がもっと可愛いよと言ってほしかった。成長しすぎじゃないか、レン?

 

 

 

 水族館なのになぜかペンギンがいる場所があり、そこでレンはよちよちと歩くペンギンの姿を楽しみ、蛍火はペンギンをおちょくっていた。具体的にはガラスに両手の指先をくっつけ指を同時に反対方向に伸ばす事によってペンギンを固まらせるというある種悪質ないたずらだ。

ちなみに水族館のガラスに触っていると職員に怒られるので注意。ガラスが弾みで傷付けたりなんかしたら弁償モノである。普通のガラスとは違うのでかなり金がかかるのであまりやらないように。

 

「蛍火、ペンギンさん。いじめちゃダメ」

「ん〜、面白いのですけどね。レンもやってみたらどうです?」

「いじめちゃダメ」

「片方だけだったらいじめる事にはならりません。指先を追ってついてくる姿も可愛いと思います」

 

 蛍火にそこまで言われてレンもペンギンの前でガラスに指をくっつけペンギンがよちよちとレンの指先を追って歩いてくる。その姿には母性や父性本能が刺激される。とんでもなく愛くるしい。

 

 ほわぁっと感嘆のため息をつきながらレンは職員に怒られるまでガラスから指を離さなかった。

 

 

 

 

 

 

「食べちゃうの?」

「頼んでしまいましたからね」

「…………食べるの?」

「もう食材として出てきていますから。レン、食べましょう」

「…………うん」

 

 目の前には魚の活造り。水族館にそれがあるというのはある種情緒が欠けている気がしないでもないが、水族館の意向である。

 蛍火としてはアヴァターでは食べる事のできない刺身をレンに味わってほしかったつもりだったのだが、水族館の中で食べるものではない。というか水族館を後にしても数日中は食べない方がいい。どこまでも情緒に疎い人間だ。

 

「…………美味しい」

 

 かなり複雑な表情をしながらレンは呟いた。先ほどまで可愛いと思っていた魚が今口の中にいると思うと心中かなり複雑になる。

 

「良かったです。さて、午後はちょうどイルカのショーがありますからそれを見ましょうか」

「どんなの?」

「見てからのお楽しみです。まぁ、イルカは賢いので楽しい事をしてくれると思いますよ」

「食べないよね?」

「…………現代では(日常的には)食べません」

 

 魚料理がよっぽど尾を引いているのか涙目で訴えられては本当の事を口にできなかった。イルカとほぼ同種のクジラをアヴァターにくる前に何度か食べましたとは口が裂けようとも言えない。

 

「良かった」

 

 安堵したレンの姿にこの嘘を貫き通そうと蛍火は決意した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 イルカショーとクラゲの水槽、川魚の水槽など色々とめぐって、最終的には魚とのふれあい水槽にたどり着いた。

 海にいる魚をその手で触って生きている魚がどんなのかを体験してもらう為のプールの事だ。

 

「ん、逃げる」

「魚もびっくりしてますからね」

 

 バシャっと大きな音を立てて水の中に手を入れるもレンはなかなかに捕まえられない。物おじせずに触れらるというのはいいことだと蛍火は心の中で感心し、喜んでいた。

 

 バシャバシャと何度か音がなるがレンは一向に捕まえられない。

 その理由として挙げられるのはレンが音を大きく立てて、モーションを大きくしているから捕まえられないのと、ふれあい水槽の中の魚がつい最近入れ替えられたばかりだという事を。

 実は、このふれあい水槽の魚は人に触られて弱って死んでしまうので結構頻繁に入れ替えられている。

 

「蛍火、捕まえて」

「自分でやらなくていいですか?」

「触りたけど捕まえられない」

 

 悔しそうにうつむくレンに仕方ないと嘆息して蛍火は腕をひと振り。一瞬で魚を捕まえた。

 

「はい」

「蛍火、凄い」

 

 眼をきらきらとさせて蛍火の手の中にある魚を指先でちょんちょんとつつきながら生きた魚を堪能していた。

 生きた魚を捕まえるのは別のマンガの中だけの事ではない。現実にできる人間はかなりいるのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一日中、水族館をはしゃいで歩き回ったレンは疲れてしまったのか眠ってしまっていた。

 レンを優しくおんぶしながら蛍火は家路につく。肉体的能力が下がって尚、軽いと感じるレンの重さ。物理的にはとても軽く感じるのに、心理的にはとても重い。この命にどれほど救われたのか、この命にどれほど己にとって意味があるのか…………そして、レンに与えられてしまった役目はいかほどに重いのか。

 

「このままここで今代の救世主戦争が終わるまで過ごせればいいんだがな」

 

 それは妄言だと蛍火も理解している。叶うはずもない願い。誰よりもこの物語の本質と深奥を知っている蛍火だからこそその願いがかなわない事を知っている。そして、この物語に必ず終わりが来る事も…………誰よりも理解している。

 

「んう?」

「あっ、起きましたか、レン」

「うん」

「疲れましたか」

「うん、でも楽しかった」

「それは良かった」

「自分で歩きますか?」

「このままがいい」

「クスクス、えぇ、了解しました」

 

 静かに笑いながらレンの悲しい願いをかなえる。とても簡単なはずの願いを蛍火はやはり叶えきる事はいつだって出来ない。それでもこのどこまでも何も無く普通の世界の中でだけでも叶えるべきだろう。

 

「レン、熱が出てきたりしたらすぐに言ってくださいね」

「?? 私、風邪引いてない」

「えぇ、ですが世界が異なりますから免疫ができていないとも限りませんしね。まぁ、ようはレンに病気になってほしくないから前兆が現れたらすぐに言ってほしいんです」

「分った」

「えぇ、お願いしますね」

 

 少々過保護すぎるかもしれない会話。だが、蛍火はとても真剣に語り、レンもその重さを理解した。

 

もう少し、大丈夫か…………

 

 十二時の鐘はまだ遠い――――そう、思っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「にゃ〜♪」

「レン?」

 

 料理をしている最中にレンが背中からトンっと抱きついてきた。レンらしいと言えばらしい行動なのだが、どこかレンらしくない。特に言動が普段とは全く違う。考えられもしないほどに甘えた声だった。

 

「にゃ〜にゃ〜」

「あの……レン?」

 

 振り返ってレンの顔を覗き込んで見ると耳まで真っ赤にしながらレンはごろごろと咽喉を鳴らしながら甘えてきた。そしてレンのさらに後ろにあるテーブルを見ると、酒瓶の封が切られている。度数が結構高めの酒だった。

 

「まさか、呑んだのか!?」

「にゃ〜?」

 

 蛍火に頭をこすりつけるのを止めて赤く潤んだ瞳でレンは小首をかしげながら甘え続ける。

 その姿に蛍火は己の失態を悔いた。眼に見える所に酒はおいていないつもりだったのだが、レンが手を出してしまった時点でアウトだ。

 

 深くため息をついて、ご飯を作るのを一時中断した。

 包丁はすでに握っていなかったがそれでも火を使う。万が一を考えて蛍火はおとなしくその日の夕食を抜く事を決めた。蛍火にとって一食を抜くぐらいはどうという事はない。

 

「にゃ〜」

「はいはい、分かりました」

 

 猫のように蛍火を下の方へ引っ張るレンに蛍火は諦めを含んだため息をついてあぐらをかく。待っていましとばかりにレンは膝の上に飛び乗りごろごろと甘え始めた。

 何もする事の出来ない蛍火はレンが眠りにつくまでの時間つぶしの為にテレビをつけ、封が切られた瓶からそのまま酒をあおった。

 

 右手に酒瓶を持ちながら左手でレンの頭を撫でる。時折、喉元や首筋、耳の後ろなど人によっては性感帯になるところを遠慮なく撫でまわし、レンがうっとりとした声を上げるのを楽しんでいた。

 

 嘆息しながらも、今まで一度もされた事のない、遠慮のない甘えを嬉しく思いながら相手をする。その時、手に感じたレンの頬の熱さがアルコールだけではない事に気付けはしなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「レン!?」

 

 熱が下がらない。解熱剤として薬局から購入してきた薬すらも効かない。

 その理由が蛍火とて知っている。知りすぎているぐらい知っている。そもそも蛍火とレンはアヴァターから離れる事など出来ない。

 

「くっ、早過ぎるっ! まだもう一日ぐらいは大丈夫だと思っていたのに」

 

 無論、後一日と言わずにレンはあと一週間はこの世界にとどまる事は可能だろう。布団から一歩も出られないという条件がつけば。

 

「まさか、ここまで依存しているなんて…………いや、理解していたことか。それとも■、お前がこの娘がこの世界に興味をもつ前に戻したいと願ったのか? だとしたら…………っ!」

 

 憤りしか生まれない。無力な己が恨めしい。この世界では魔法を使えず、対処方法などが一つしかないと知っているから余計に腹が立つ。それはアヴァターに戻ること。アヴァターに戻らない限りレンの症状は止まらない。

 

「レン、すみません。どうやらバカンスはここまでのようです」

「ふあ?」

「眠っていていいですよ」

 

 優しく頭を撫で、レンを背負う。扉を勢いよく開け、深夜の街に躍り出る。部屋の鍵を閉める時間などおしかった。部屋の中にはレン以上に大切なモノなど一つとしてないのだから。

 

 

 

 

 人を抱えながら走る事の苦しさを、前回以上に感じながらこの世界から旅立った、この世界にもう一度きた場所に足を向ける。

 

「遊園地にも、動物園にも名産品も案内できなかったというのに……鐘が鳴るのが早過ぎる」

 

 悔みながらも蛍火は走る、人目を気にしながら今出せる最高速度で走り続ける。

 しかし、これはある種仕方のない事なのかも知れない。レンはそもそも■の■■となる為に産まれた存在。その為に、彼女がマナ濃度の薄い世界で存在する事は出来ない。そしてそれは蛍火とて同じ。■となるべく存在構成を作りかえられてしまった蛍火もマナ濃度の薄い世界で生きる事など不可能。

 

 

 息が切れる程に早く走り続け、やっと路地裏につく。警察官にも見つかる事はなく、通報される事もなくたどり着けたのは僥倖としか言いようがないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 観護を呼び出して、話しかける。アヴァターと違いマナ濃度の違いから観護の口からは会話がない。その事を寧ろ蛍火は僥倖と考えた。今は一刻を争っているのに、会話などで時間をつぶしてなどいられない。本当はまだまだ本当のタイムリミットは切れていない。だが、それでも蛍火にとって一となる少女の苦しい顔は見たくない。

 

「座標固定、アヴァター、学園」

(座標が、王家の下にしかないわ)

 

 観護の言葉にふむと頷き、納得した。今回は蛍火にとって正規の手段ではなくイレギュラーで飛ばされてきた。本来なら飛ぶ前に戻ってくる場所の指定をしておくのだが、今回は違う。

 もし、飛ばされた場所に戻るとすれば戦闘は必至。可能な限りレンの前で戦闘は避けたいが……そこ以外に座標がないのならそこに飛ぶ以外はない。

 

「そこでいい。観護、頼む」

(了解)

 

 目の前の景色がひずんでいく。ゆっくりとゆっくりと彼が生まれた世界の姿が眼に映らなくなっていく。本当にもう二度と、この世界には来る事は出来ない。

 その事に蛍火は寂しいとは思わない。何故なら彼は新城蛍火だから。この世界は新城蛍火ではなく、そう名乗る前の彼が生まれた世界にすぎない。新城蛍火になり果てた蛍火にとって、この世界は故郷ですらない。新城蛍火が生まれたのはアヴァターなのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 歪んだ景色が色を取り戻し、像を結んだその先には二日前の朝に飛ばされた場所と一寸も変わらない。一つ変わるところがあるとすれば、モンスターが二体いるという事。幸いな事にモンスターの数が少ない。転移してきたのが深夜という事も大きかった。

 

(ちっ、体がアヴァターに戻ったのにあの世界準拠になってやがる)

 

 時差ボケならぬマナボケともいうべきか。マナの薄い世界からマナの濃い世界に一瞬にして移動したために、体内のマナや魔力が少ないままだった。二日とはいえ、マナの薄い世界で活動した為に、魔法を使う際のマナ代謝率が効率がよすぎて過剰な魔力を使いかねない。いくら、壊れない体とはいえ、後ろには大切な者がいる。無茶は出来ない。

 

「こい、愚物ども。殺してやる」

 

 筋肉が切れる程に酷使してレンを壁際に寝かせて、レンを背にして装着しなおした小太刀を二本引き抜き、挑発する。力が出ない蛍火には今はカウンターか、隙をついて貫通力のある攻撃しか相手にダメージを与えられない。目の前にいるのはリザードマンやガーゴイルのみなのだ。表皮が硬くて今の筋力では斬撃で相手を斬り裂く事は出来ない。

 

(レン、目を覚まさないでくれ)

 

 戦っている姿を見てほしくなかった。血に濡れてしまう己の姿を見てほしくなどなかった。どこまでも日常の象徴であるレンに醜い姿を見てほしくなどなかった。

 蛍火にとって戦いは決して誇れるものではない。否、今まで逃避手段として使ってきたモノ。そんな姿を見てほしくなどない。

 

 息を整える。世界間移動はマナ、魔力、体力の全てを消費する。全快には程遠い体、魔力で底上げする事も出来ない筋力、使う事の出来ない魔法。

 ないない尽くし。だが、負ける事は許されない。背中に大切な人がいるのだから。

 

 声と共にガーゴイルが進んでくる。空から滑空しながらのとび蹴り。加速力のついたその蹴りは当たれば肋骨が折れるであろう一撃。されど、それは当たればの話。動体視力で追え、体の事を無視すれば合わせて動ける範囲にあり、一直線にしか動けないのなら恐怖など感じない。

 体の軸を少しずらす。相手の攻撃が頬をかする程度の最小限の回避。だが、それで充分。攻撃の余波で真空を作り出したり、余波で肉が奪われる事もないのなら紙一重でよけるので十分。

 軸をずらすと同時に、右の小太刀を前に突き出して敵を刺し貫く。自重と加速力がそのまま刺突の力となる。

 案の定、ガーゴイルは心臓を貫かれて事切れる。

 

 

 

 

 リザードマンはガーゴイルの攻撃を大げさに回避した蛍火を攻撃するつもりだったのか、中途半端な形でしか動いていなかった。まさか、真正面から迎撃されるなどあまり思わない。

 敵との距離と後ろにいるレンとの距離を考えつつ、蛍火は突進する事を選んだ。伏兵の存在を考えたが、気配はこの場所には二人分しかない為に安心して迎撃に向かった。

 

 突進と共に体を捻り、腕を捻転させ、バネのように力を溜める。己を一筋の矢に変えて突進する。止める事など誰も出来ない殺人技巧。唯々、相手を穿つことのみを考えた一つの技の完成形。余技などいらぬ、必要なのは一撃で殺すだけの力。一刺しで相手を抉り、穿つ事が出来る堅牢な刺突。

 

(我流・奥義乃参・牙穿っ!!)

 

 激突の瞬間に捻り抉る。インパクトの瞬間に力を加えて貫通力と貫通した後、直しにくい傷跡を作る為に腕を捻転させる。

 だが、リザードマンもただ突っ立っていたわけではなかった。眼を狙ったはずの一撃を腕で受けて止めていた。

 魔法で底上げしていたのなら、観護であったのなら確実に抉り捻り、穿てていた。しかし、残念ながら今の蛍火には一般人に毛が生えた程度の力しかない。そのため、その堅牢な鱗を穿つ事が出来なかった。

 

「ちぃっ!!」

 

 敵の攻撃を考えて大きく後ろに下がる。リザードマンは鱗の鎧と手に持つ剣の重量で素早く動けず、追撃はなかった。

 だが、このままでは危険すぎる。増援が今のところないが、何時来るかもわからない。定時の交代時刻があってその時刻が近い可能性もある。そうなったら敵がさらに増える。早急に敵を殺す必要がある。

 

 蛍火は懐を確認した。現在ではそれほどの素早く動けず、威力のある攻撃も出来ない。だが、手持ちの武器の中で唯一音速近くで動くことができ、貫通力の高い武器がある。それをうまく使えば一瞬で終われる。問題はタイミング、どんなに速くとも、どんなに貫通力があろうとも攻撃の瞬間を見極められては発射するよりも速く回避されてしまう。

 

 すぐに出して使える武器を確認する。使えるのは飛針と投げナイフ。敵に気付かれないように両方の小太刀を納刀する。これから戦うのには右手に武器を持っているのは障害にしかならない。

 

 

 相手が一定の間合いに入るまで待つ。いつもならすでに殺害範囲に入っているのに今の体のスペックではまだその距離では一足刀の範囲ではない。肉体能力が下がるというのは感覚を随分と狂わせられる。

 

「シッ!!」

 

 呼気と共に飛針を数本相手の眼めがけて投げつける。現在ではリザードマンの皮膚を貫通するほどの力はない。眼を狙っても瞼を閉じられるだけで防がれてしまう。 だが、それが狙い。

 さらに足を進め、左の小太刀で逆手の抜刀。筋肉が落ちて尚その速さだけは落ちていない。抜刀術は腕で抜くのではない、腰で抜くのだ。体のバランスとタイミングを間違えなければ誤魔化しながらでも相当の速度で放つ事が出来る。無論、それは何度も抜刀術を行ったからこその芸当。

 

 リザードマンも、射程内に入った蛍火を見て、その手に握る剣を振り下ろす。だが、重量のある剣だけあって初速が蛍火の小太刀に比べて明らかに遅い。速度は力となりてリザードマンの剣の根元を打ちすえ弾き飛ばす。浸透頸の逆verも込められていたのか大きく剣は後ろに下がる。

 蛍火は抜刀の勢いを利用して体をさらに回転させて、一回転しながらリザードマンの側面に移動する。その瞬間、左胸にあった膨らみ――コルトパイソンを右手で引き抜く。回転を終え、側面に移動した時にはすでにパイソンはリザードマンの眼に照準が向いていた。

 

「さよならだ」

 

 ただ一言。無感動に放たれた言葉と共に銃口が火を噴き、弾丸が発射され、その眼を打ち抜き、脳を破壊した。

 

 

 

 

 

 

 

「ツゥっ」

 

 崩れ落ちたリザードマンの傍らで銃をホルスターに収めながら蛍火は右手を振る。ほとんど打つ事のない銃を撃ったために右手には火傷を負っていた。

 

「いつもに比べれば無茶でもなんでもないというのに……それほど俺が人間から離れてしまったという事か」

 

 シュウシュウと音を立てて火傷の跡が治っていく。アヴァターの中での蛍火の再生力は守護者や破滅に染まったダルトに近い再生力を示している。否、大河と蛍火はそもそも、この物語中では本当に死ぬような状況に追い込まれない。

いくら体が異世界酔いをしていても供給されてくる力はアヴァターである限り変わらない。

 

「皮肉……だな」

 

 こんな力は欲しくなどなかったのに、助けられている。レンが眼を覚ました時に傷一つない姿で迎え入れられる事が出来、心配させる事もない。普通の人間なら週単位でしか治らない傷もこの呪いのお陰で一時間とたたずに小さい傷は姿を消す。

 

「さて、お姫様はまだ眠っているご様子。もう少し寝心地のいい所に運びますかね」

 

 

 

 

 

 

 

「独りはやだよ」

 

 背負いなおした愛しい重みから漏れる声。レンに似て、レンとは僅かに違う声色。

 僅かでも温もりを失っていた事に恐れてか、レンからの小さく悲痛な叫びが漏れていた。その言葉に蛍火は静かに頷き、レンを抱き上げた。

 

「そうだな。独りは辛いな」

 

 人は独りでは生きていけない。思考するが故に独りである事に耐え切れない。会話し、他者を確認し、他者によって自己を確認する事でしか人は生きていけない。人は一人で生きていく事は出来ても独りで生きていく事は出来ない。

 

「だからこそ………………………俺達は狂ってしまったんだろうな」

 

 呟く声は誰に聞かれることもなく消える。彼の独白は、独白にしかならずに世界に吸い込まれた。

 

 

 

 

 

 

 レンを路地裏に運んだ時よりも慎重に、より音を潜めて蛍火は王宮を後にする。

 

 

 

 

 レンと蛍火のバカンスは終わった。十二時の鐘が鳴って魔法は解けてしまった。

 なら後は仕事が残るのみ。この物語で課せられた己の使命を蛍火は果たすだけ。ディクロス以外の王宮に根付く膿をミュリエルや議長と共に絞り出すこと。

 これからの行わなければならない裏仕事に蛍火はひっそりとため息を吐いて……静かに眠るレンの横顔を見て、ほほ笑んだ。

 

 

 

 


後書き

 

 大河側は相変わらずほのぼの。そして、蛍火側はというと、二日目にしてアヴァター帰還(涙

 実を言うともう少しレンの願いを叶えてあげたかったのですが、無理でした。設定の根幹に関わる部分の所為で。ですが、念願のデート! 短いですが、確実にデートです! 残念ながら次はありません(涙

 レンがエロイとか言わないで下さい。本当のレンのエロはもっと凄いのですw

 

 そして、蛍火の逆フルボッコ寸前タイム。普段は敵を容赦なくフルボッコしている蛍火ですが、今回は恐らく初めて? フルボッコされる危機でしたw あれ? いつもと蛍火の戦い方違うんじゃないと思った方。その認識は正しくもあり、間違いでもあります。そもそも、蛍火の本当のスタイルは大河とは正反対の弱い存在が強い存在を打ち砕くために磨き上げた技術なので、今回みたいに罠で絡め取るほうが得意です。本当はもっとセコイ戦い方が出来ます。する必要が無いからしないだけで。

実を言うと銃を使った戦闘が書きたかっただけなのですがね。銃を持っているのに一回も使わなかったですから。実際に、蛍火は銃を使うよりも他の技術を使ったほうが強いので使わなかったのと、大河にどうして持っているのかと問われたら答えられないから使えませんでした。といっても止めの一発だけなのですがねw

 

 次回はどうなるのかは内緒の方向です。




トレイターが大活躍(笑)
美姫 「トレイターにしてみれば災難だけれどね」
大河たちはまだ日常を楽しめるようだけれど。
美姫 「蛍火の方はタイムアップね」
ちょっと過保護にも取れるけれど。
美姫 「まあ、寝たまま過ごすぐらいなら、って事よね」
だな。さてさて、ここから蛍火はまたお仕事モードへ。
美姫 「次回がどうなるのか楽しみね」
うんうん。次回も待っています。



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