フェイト's Monologe

母さん……
いえ、プレシアによって精神的ダメージを受けた私は、完全に自分を見失っていました。
しかし、フィリスさんと出会い、自分だけが特殊な存在ではない事を知り、おかげで立ち直る事ができました。
また、フィリスさんが目的を持って強く生きているのを知って、自分が情けないと思いましたけど……
でも、フィリスさんと出会ったおかげで、なのはとはやてとの関係も修復できました。
なのはもはやても、あそこまで酷い事を言ったのにあっさり許してくれたので、二人には本当に感謝です。
そして、先の戦いの影響で今日明日は御神提督もとい静馬小父様の命令で休みを頂きました。

魔法少女リリカルなのは
−White Angel & Black Swordmaster 〜Side Story〜−

Side:04「魔導師三人娘の海鳴市探索記」



はやて's View

あたしは現在、並行世界の高町家にやってきていたりします。
というのも、先の戦いでフェイトちゃんが精神的にダメージを負った為、その回復のために訪れた訳です。
そして、フィリス先生のおかげでフェイトちゃんも何とか回復、何時ものフェイトちゃんに戻りました。
その後、高町家の人々に暖かく迎え入れられてドンちゃん騒ぎをやったのが昨日……
私とフェイトちゃんは客間を借りて、そこで一泊していました。
なのはちゃん……
あっ、こちらの世界では菜乃葉ちゃんですけど、並行世界のなのはちゃんと一緒に寝ていたりします。
目が覚めたあたしは、昨日の事を思い出し開口一番呟いていました。
身体全身を震わせながら……

「恭也さんのマッサージ……
 あれは、マッサージやない!
 拷問や!!」

「……何をぶつくさ言っているかと思えば、昨日の事ね。
 あれは、なのはの警告を無視したはやてが悪いと思うよ」

隣で寝ていたフェイトちゃんは、眠い目を擦りながらも話してきます。
それも、呆れたように言ってくるフェイトちゃん。
昨日まで、事故崩壊手前まで進んでたのが芝居じゃないのかってぐらいの変わりようです。

「うう、フェイトちゃん……
 起きてたんか?」

「いや、はやての呟きで起こされた」

フェイトちゃん、やけに機嫌が悪いです。
というか、そんなに大声で呟いていたのかなと思うわけです。

「だいたい、夕食時にあんなネタを話されたら当事者は誰だって怒るよ?
 まぁ、私はあの時はそれどころじゃなかったし、詳しい現場見てないからなんとも言えないけど……」

昨日の夕食時、桃子さんが恭也さんとなのはちゃんの関係を聞いてきたので、あたしは嫉妬まじりで先の戦闘の後に起きた出来事を話したんですが……
それが、どうも恭也さんの逆鱗に触れてしまったようで、握力90Kgの全力マッサージを受ける羽目になりました。
恭也さんのマッサージが終わった時、あたしはというと部屋で芋虫状態で横たわっていました。
いや、動かそうとすると身体が悲鳴を上げるんですよ。
そのくせ、フェイトちゃんはあたしを助けるどころか見捨てて、なのはちゃんもとい菜乃葉ちゃんと恭也さん争奪戦を仕掛ける始末。
色恋沙汰になったとたん、みんな薄情です。
その事があったので、あたしはフェイトちゃんに聞いてみました。

「なら、フェイトちゃんはなのはちゃんの事、羨ましくないんか?」

「……流石に時と場所ぐらいは考えるよ。
 まぁ、羨ましいのは事実だけど……」

うわ、何て真面目なんやフェイトちゃん。
フェイトちゃんの表情は苦笑していますが、妬みとかは現れていないです。
リンディさんはどちらかっつ〜と、こちらの桃子さんやあたしとウマが合うタイプやのに……

「なんや、リンディさんに育てられてるのに……
 何故、くそ真面目に育ってるんや!?」

「う〜ん、人としてのあり方は兎も角、性格は反面教師なのは事実だね」

そう言い切るフェイトちゃんに迷いの顔はありません。
どちらかと言えば、クロノ君の影響を受けてるのかも知れません。
そういえばこちらの恭也さんも、クロノ君と似たような雰囲気をしています。
なので、嫉妬半分からかい半分で話した訳なんですが……
その結果が、先程出てきた全力マッサージの刑……
クロノ君に比べて、恭也さんは攻撃的です。

「そういや、フェイトちゃんも裏切りもんやったな。
 あたしが酷い目あってる中、しっかりとポイント稼いでるし……」

「何が裏切り者なのよ……
 まったく、あれは完全にはやての自業自得でしょう?」

あたしの呟きに、フェイトちゃんは呆れて反論します。
まぁ、側から見ればあきらかに自業自得なのは事実ですけど……

「まっ、桃子さんが私の母さんと似てるから、恭也さんに共感したのは事実だよ。
 でも……」

苦笑しながらも話していたフェイトちゃんですが、ふと表情を曇らせました。
フェイトちゃんの表情に気づいたあたしは、疑問に思って聞きます。

「でも……
 なんや?」

「……やっぱり、こっちの恭也さんはなのはの言っていた通り、私たちが知ってる恭也さんとは別人だよ」

フェイトちゃんの言葉を聞いて、納得するあたしでした。
あたしたちが知っている恭也さんに比べて、こちらの世界の恭也さんは感情を表に出してません。
それに、向こうの恭也さんはあたしらのからかいに笑って対処するのに、こちらの恭也さんは容赦ない制裁を加えてきます。
もっとも、その制裁を受けているのが桃子さんと美由希さんらしいんですけど……
そして、どうやらあたしは恭也さんに目を付けられたみたいです。

「そうやな、あたしらの知ってる恭也さんなら、あたしに対してあんな酷い事せ〜へんよな」

「……その意見には、ノーコメント」

私の言葉に、同情のかけらも無く呆れたように返答するフェイトちゃん。
少しぐらい同情してもええんやんかって思うぐらい、フェイトちゃんは容赦ないです。

「うな、フェイトちゃん!?
 薄情や、薄情すぎるで〜」

「いや、だから……
 それは自業自得だっていってるでしょ。
 だいたい、二人のなのはから警告受けてたのに無視したのははやて自身だよ?」

あたしの言葉に、容赦ない言葉で返すフェイトちゃん。
そりゃ、警告を無視して話題を振ったのは事実ですけど……
それにしても、あんまりな対応です。
不意に、客間の戸が開いて誰かが入ってきました。

「おはよ〜、フェイトちゃん、はやてちゃん」

「なのは、おはよ〜」

「おはよ〜や、なのはちゃん」

入ってきたのはなのはちゃん……
あっ、いや、あたしたちが日頃から知っているなのはちゃんの方ですけどね。
そして、当のなのはちゃん……
もとい、菜乃葉ちゃんは苦笑して指摘します。

「あははは……
 まぁ、誰も居ないからいいけど、こっちでは菜乃葉だから」

「あっ、ゴメン……
 つい、何時もの癖で……」

フェイトちゃんは、慌ててなのはちゃんに謝ります。
そんなフェイトちゃんに、なのはちゃんは許すもなにも無いようなって感じで対応してます。
ですが、あたしを見る視線が痛いんですが……

「しょうがないよ、それは。
 それにしても……」

「なっ、何かな、菜乃葉ちゃん?」

「う〜ん、朝からまた何かやらかして制裁でも受けるのかなと思っただけ」

してやったりの表情であたしに言い切るなのはちゃん。
それにしても酷い言いがかりです。
だから、あたしはなのはちゃんに反論しました。

「うな!?
 酷いで、菜乃葉ちゃん……
 あたしが、そんな事するように見えるんか?」

「うん!」

「何時もの事だからね」

なのはちゃんはあっさりと肯定しました。
それだけじゃなく、フェイトちゃんまで肯定されるとは……

「……あたしらの友情はここで崩壊やね」

「そんな事で崩壊するような友情なら、とっくに崩壊していると思うけど?」

「そうだね〜、毎度毎度トラブルを起こしてるのは、はやてちゃんかアリサちゃんぐらいだし」

「そして、そのとばっちりを受けるのが私と菜乃葉とすずかだもんね」

「……二人とも、覚えておいてな」

私の言葉に、ここぞとばかり反論してくるなのはちゃんとフェイトちゃん。
この二人、本当に一心同体ですわ。
そしてあたしはというと、ぐうの音も出なくなり捨て台詞を吐いて会話を打ち切るのでした。
あたしのそんな姿に苦笑するなのはちゃんですが、思い出したように話し出しました。

「ああ、そうだ。
 朝食がもうすぐできるから準備してって」

「あっ、うん。
 わかった、直ぐに準備するよ」

「はいな〜」

「じゃ、伝えたよ」

なのはちゃんはあたしたちに連絡するなり、部屋を出て行きました。
残されたあたしとフェイトちゃんは、朝食に間に合うように準備してリビングに向かいました。
まぁ、そんなこんなで朝食は無事終了になり、あたしたちは高町家で暇をもてあましている所です。
恭也さんをはじめ、みなさんは学校やら翠屋の仕事に行きました。
あたしらは、静馬の小父様の命令つ〜か配慮してくれたので、今日一日はお休みなわけです。
なので、どうせ休暇なら楽しまなきゃ損なので、二人に提案するあたしです。

「なぁ、なのはちゃん、フェイトちゃん」

「うん、何かな、はやてちゃん」

「どうかしたの、はやて」

あたしの呼びかけに、二人は疑問顔で問い返してきます。
そんな二人に、あたしは笑って答えます。

「どうせなら、ここの海鳴市でも探索しない?」

「あっ、それって良いかも……」

「そうだね、今日一日静馬叔父さんの心配りで休暇もらってるからね」

あたしの提案に、喜んで乗ってくる二人。
そしてあたしたちは、海鳴市探索に行くのでした。
まず最初に行った所はお墓です。
それも、こちらの世界のアリサちゃんのお墓です。
あたしやフェイトちゃんは、なのはちゃんから話を聞くまでこっちでも生きているとばかり思っていたのですが……
そういえば、こっちのなのはちゃんのお父さんも亡くなっていました。

「なんや、こっちの世界のアリサちゃんって亡くなっているんか?」

「うん、そうなの。
 そして、これが当時の新聞記事のコピーなんだけど……」

「……酷い」

なのはちゃんから、新聞記事のコピーをもらったフェイトちゃんが絶句しています。
あたしは、フェイトちゃんからコピーをもらいその記事を読みました。

「……身代金目的の誘拐の上、幼女に対する仕打ちか、これ!」

「私も、読んだ時はあまりにも酷いと思ったよ。
 ……でもね、驚く所はそこじゃないんだ」

「えっ?」

その記事を読み終えたあたしは、怒りに震えていました。
明らかに人として許される行為じゃない!
フェイトちゃんも、あたしと同じ気持ちなんだと思います。
だけど、なのはちゃんは遠くを見つめるように呟きました。
そして、なのはちゃんの呟きに反応するフェイトちゃん。
そんなフェイトちゃんに、なのはちゃんは苦笑して指摘します。

「その記事の年号を見たら分かるよ」

なのはちゃんの指摘を確認するように、あたしは年号を見ます。
え〜と、今の日付と見比べると……

「え〜っ、40年前!?」

「そんな!?
 じゃあ、なんで……
 こっちのなのははアリサの事を知っていたの?」

そう、アリサちゃんが亡くなったのは40年前の話。
だから、こっちのなのはちゃんとは出会うはずが無い……
しかし、こっちのなのはちゃんはアリサちゃんの事を知っていたどころか、友人として認識しています。
驚くあたしたちをみて、なのはちゃんは苦笑しながらも話してくれました。

「私も聞いた話だから、どこまで本当なのかは分からないけど……
 この世界では、現世に心残りがあると幽霊として存在するんだって」

「ゆっ、幽霊?」

なのはちゃんの話に、フェイトちゃんは鸚鵡返しで聞き返します。
あたしとて、なのはちゃんの話には驚いています。
なのはちゃんは、あたしらから視線を外し空を見上げて話を続けます。

「うん、一種の自縛霊って話なんだけどね……
 それで、アリサちゃんが現世に留まっていた理由が――親友を作りたかった――だったんだ」

「……まぁ、私たちが知っているアリサと同じ性格なら、なかなか友人は作れないよね」

「……確かに、性格きついしなぁ」

なのはちゃんの話を聞き、あたしらが知っているアリサちゃんを想像してみました。
あたしらの知ってるアリサちゃんも、結構過激な性格していますからあたしら以外だと同年代の友人は少ないようです。
ただ、あたしらの知っているアリサちゃんは努力を惜しまない娘なんですけどね。

「……こっちの世界のアリサちゃんは、本当に天才だったんだ。
 その為、周りを見下していたみたいなの……」

「資産家の令嬢に天才、そして友人がいない……
 狙う対象としては、これ以上無い好条件だね」

フェイトちゃんは執務官として事件を追っているため、こういった犯人の思考に関しては分かるようです。
そして、その意見に肯定するなのはちゃん。

「確かにその通りなんだけどね……
 それは兎も角、自縛霊として現世に留まったアリサちゃんに気づいたのが、他でもないこの世界の私であるなのはちゃんだったわけ」

「なるほどなぁ〜。
 それで、なのはちゃんという友人が出来たアリサちゃんは、心残りが無くなり成仏したわけやな?」

「うん」

なのはちゃんは、あたしらに話し終えると同時にアリサちゃんのお墓にお花を沿え、黙祷しています。
しばらくじっとしてたなのはちゃんですが、終わったのか立ち上がりました。
少し暗くなった雰囲気を消そうと、フェイトちゃんは話題を変えなのはちゃんに話しかけます。

「それで、なのはとアリサはこちらの世界でも存在しているとして、はやてとすずかはどうなのかな?」

「こっちの世界のはやてちゃんは分からない。
 居るかもしれないし、居ないかも知れない……
 だけど、すずかちゃんはこっちの世界には存在していなんだ」

なのはちゃんは、フェイトちゃんの問いに困惑したように答えました。
こっちのあたしは、どうも高町家の面々との接点が無いようなので存在しているかどうかは分からないみたいです。
まぁ、戸籍でも調べたら判明するんでしょうけど……
だけど、すずかちゃんはどうも存在していないようです。
アリサちゃんみたいに、存在していたけど今はいないのとは違うみたいです。
そのことに疑問に思ったフェイトちゃんが、戸惑うようになのはちゃんに質問します。

「……存在していない?」

「うん、存在していない。
 忍さんはいるんだけど、忍さんのご両親は幼い時に事故で失っているんだって……
 それも、すずかちゃんが生まれるよりも前にね」

フェイトちゃんの質問に、なのはちゃんははっきりと答えました。
どうも、こちらの世界の忍さんはあたしと同じ境遇みたいです。
だから昨日あった時に、ウマが合ったのかなとも思うわけですが……

「なるほどなぁ〜。
 アリサちゃんとは違うわけやな」

「うん」

あたしの言葉に、苦笑して肯定するなのはちゃん。
その時、不意に風がふきあたしたちの髪をゆらしていきました。
あたしたちみんなで青い空を見上げます。

「さてと、そろそろお昼だしどうする?」

「う〜ん、そのまえにちょっと行きたい所あるんだけど、いいかな?」

なのはちゃんの提案に、フェイトちゃんは戸惑ったように聞いてきます。
そんなフェイトちゃんに疑問をもったなのはちゃんは、聞き返しています。

「行きたい所?」

「うん、海鳴大学病院にね。
 フィリスと話がしたいから……
 それに今日は、フィリスがね午後からオフだって言っていたんだ」

フェイトちゃんは苦笑して話しました。
昨日の一件いらい、フェイトちゃんはフィリス先生を呼び捨てにするぐらい仲が良くなっています。
まぁ、似たような境遇だからなんでしょうね。
フェイトちゃんの提案に、断る理由も無いのであたしたちは海鳴大学病院に向かいました。



フェイト's View

こちらの世界のアリサのお墓参りを終えた私たちは、フィリスが勤める海鳴大学病院に向かいました。
そしてちょうど私たちがついた時、フィリスはお勤めを終えて帰り支度をしている最中でした。
なので私はフィリスを食事にさそい、現在私たちはフィリスのお勧めのレストランで昼食を取っていたりします。

「それにしても、貴方たち三人って仲がいいよね」

「まぁ、苦楽を共にした友人ですからね」

「出会い方は、最悪ですけどね……」

「ほんまやな。
 あんな出会い方するのは、あたしらだけやね」

フィリスの言葉に、私たちは苦笑して答えます。
それにしても、私となのはの出会いは、本当に最悪な出会い方だったわけです。
何せ、ジュエルシードと呼ばれるロストロギアをめぐって争っていたわけですから……
はやての時も、闇の書の主だったとは思ってもいなかったわけで……
でも、そんな事があったから今の私たちが存在しているのも事実です。
フィリスはそんな私たちを見て微笑んでいましたが、不意に私に質問してきました。

「ところで、フェイトちゃん。
 ちょっと聞いておきたかった事なんだけど」

「フィリス、聞きたいことって?」

フィリスの態度に疑問を持った私は、聞き返します。
フィリスは困ったような表情を現しながらも、話してきました・

「うん、あのね……
 昨日のあの状態で、よく私の話を信じてくれたのかなって思ってね。
 普通は胡散臭く感じるかなって思ったんだけど……」

「あ〜!
 それ、分かります……」

「そうやな。
 確かに、いきなり私もクローンですって言われても、あたしだったら直ぐに納得は出来へんわ」

フィリスの疑問に、なのはやはやては肯定しています。
今思えば、確かにあっさり納得したのはなんだったんだろう。
でも、あの時の私はフィリスの言葉を疑いを持たずに信用していた。

「……多分、無意識に同じ存在を求めていたのかも知れません。
 だから、嘘でも信じたかったんだと思います。
 それに……」

「それに?」

自分を見失っていた私に対して、時間は短かったけどあれ程真剣に対応してくれたフィリス。
それに、あの時の私……
周りを拒絶していた私でも、フィリスの表情を見て嘘じゃないと心のどこかで確信していました。
だから、信用できたと思います。

「フィリスの表情を見てたら、嘘じゃないって分かりましたから」

「ふふ、ありがと、フェイトちゃん」

私は、フィリスに対して満面な笑みで答えます。
そして、私の答えを聞いたフィリスも納得するように笑みをこぼしました。
しばらく談笑していたら、人影が私たちのテーブルに近づいてきました。
フィリスはその人影に気づくなり、ゲンナリした表情をします。

「げっ、リスティ!?」

「ハイ、フィリス。
 ……って、なんだその嫌そうな顔は?」

「また、集りに来たんでしょう?」

「失敬な!?」

その人影は、リスティさんでした。
まぁ、私たちはリスティさんと昨日、高町家の夕食で出会っているんですが……

「ども、リスティさん」

「ハイ、はやて。
 今日は休みか?」

「ええ、そんなところです」

ええ、リスティさんははやてとウマが合うようで既に意気投合しています。
それで昨日は桃子さんを初め、忍さんにリスティさんとはやてが夕食の時に大暴れしたわけです。
もっとも、四人とも度が過ぎたので恭也さんに制裁を食らっていましたが……

「……で、そこの二人はフィリス同様嫌な顔をする?」

「いっ、いや〜」

「そっ、そんな事はないですよ……」

リスティさんのジト目攻撃に、私となのははから笑いをするしかありません。
昨日の夕食のおりに散々ダシにされた手前、どうも苦手意識が出来てしまいました。

「はやてちゃんは、リスティとそっくりだよね。
 特に、周りをかき乱す所とか……」

「おい、リスティ……
 誰が周りをかき乱しているって?」

「そや!
 楽しませてるって言って欲しいな?」

フィリスの言葉に、リスティさんとはやては真っ向から反論します。
それも、息がぴったりで……
だけど、私としてはリスティさんやはやては周りを困らして楽しんでるようにしか見えませんけどね。

「息ピッタリ……」

なのはも私と同じ事を考えていたようで、呟いています。
はやてはお返しとばかりに、フィリスに指摘してきます。

「そういうフィリスさんだって、フェイトちゃんとそっくりやん」

「そうだな、くそ真面目で堅物な所とかな」

はやての指摘に納得するリスティさん。
フィリスはというと、はやての指摘に苦笑して返します。
なかなか毒舌を入れていますけどね……

「リスティみたいにチャランポランよりかは、よっぽどマシね」

「うんだと、この愚妹……」

フィリスの指摘にリスティさんは怒ってますが、当のフィリスは平然としています。
明らかにフィリスの方が有利でした。
そんな二人のやり取りを見て、私となのはは苦笑するだけです。
はやては、ふと思い出したように話題を変えました。

「そういや、リスティさんとフィリス先生には妹がおったな?」

「うん、セルフィって名前の妹がね。
 まぁ、通常はシェリーって呼んでるんだけど……」

「こいつがまた、とんでもない奴でさ。
 無茶やらかして、周りに迷惑かけてるんだ」

フィリスの言葉にリスティさんが続けます。
聞いていた私は、その話を聞いてなのはの事が浮かびました。

「……菜乃葉にそっくりだ、妹さんって」

「ちょっ、ちょっと!?
 私、無茶な行動なんて……」

私の言葉に、慌てて否定するなのはですが説得力はないです。
何せ、散々私やはやてに迷惑かけてるんですから……
だから、ここぞとばかりになのはを責めます。

「何時もしてる」

「うん、菜乃葉ちゃんの無茶は毎度のことや」

「うう……
 そんなにしてるかな……」

私たちの指摘にショックを受けるなのは。
その様子だと、あまり自覚はしていないみたいです。

「……自覚が無い所も、シェリーにそっくりね」

フィリスは、なのはの姿を見てボソっと呟きました。
なのははフィリスの言葉に、完全に固まっています。
リスティさんは、なのはの姿を見て苦笑していましたが、思いついたように上を見上げて呟きました。

「まぁ、これも何かの縁だな。
 ボクら三姉妹とこれほど条件が一致してるんだから」

「確かに、言われてみればそうだね」

リスティさんの言葉に、フィリスも肯定します。
確かに、言われてみるとそうなのかなって思いますけどね。
話に付き合っていたフィリスですが、こちらも思い出したようにゲンナリしてリスティさんと話しています。

「それで、リスティは結局何しにきたわけ?」

「何、昼飯食いに来たら見知った顔がいたから来ただけだ」

リスティさんは、何食わぬ表情でしれっと言いますが、何か企んでいるのは事実です。
フィリスは、リスティさんの行動がわかるのか念を押しています。

「……まさか、挨拶したついでに伝票を置いてくって事は無いでしょうね?」

「愚妹よ、ボクに喧嘩売ってるのか?」

「だったら、その左手に持ってるものは何かな?」

リスティさんはフィリスの指摘に表情を歪めますが、フィリスは笑顔でリスティさんの左手を指摘します。
指摘されたリスティさんは、ぐうの音も出ないぐらい敗北感を漂わせていました。
その表情から察するに、押し付ける気満々だったようです。

「くっ、安月給なボクに対して奢るのが妹の役目だろ?」

「年下から集る姉なんて聞いたこと無いけど?」

フィリスとリスティさんの間には、火花が散っているように見えます。
私となのはは、その光景を見て苦笑いするしかありませんでした。
はやては面白そうに見ていますけどね……

「ちっ、今日のところは引き下がってやる。
 覚えて置けよ、愚妹……」

「はいはい。
 わかったから、さっさと仕事に戻る」

リスティさんは不機嫌そうに、私たちのテーブルから去りました。
フィリスはというと、リスティさんの姿が無くなるのを確認してから壮大な溜息を付いています。

「まったく、リスティと来たら……」

「フィリス……
 リスティさんって、何時もああなの?」

私は、リスティさんの行動に疑問を持ったのでフィリスにたずねてみました。
フィリスは、慌てて苦笑しながらも返事をくれます。

「えっ?
 ああ、日常は何時もああだよ。
 仕事している時は、凄く真面目なんだけどね……」

「あ〜、確かにそうですね。
 仕事時と日常で、雰囲気が変わりすぎますから」

フィリスの言葉に、何故かなのはが分かっているように続けます。
リスティさんに会っているのは分からない事もないのですが、一緒に仕事をしたとなると疑問なわけです。
なので、なのはに聞いてみる事にします。

「えっ、菜乃葉って、リスティさんと一緒に行動した事あるの?」

「一緒に行動したと言うより、恭也君と一緒に事件に巻き込まれただけなんだけど……
 その時の仕事ぶりは凄かったよ、今の姿とは思えないぐらいにね」

なのはは、思い出すように話します。
その様子だと、なのはもリスティさんのギャップに戸惑ったみたいです。
詳しく聞こうと思った矢先、なのはから念話が届きました。

《詳しい話は後でするよ。
 何せ、魔法絡みというより、ガジェット絡みだから…》

《えっ、ああ、うん。
 って、ガジェットまで出現してたの!?》

《うん……
 だけど、結果を知ったら呆れるのは保障するし、その過程でも驚く事はたくさんあるけどね》

私は、この世界にもガジェットが現れていた事に驚いたのですが、なのははさらに驚く事があると言っています。
まさか、そんな事は無いだろうとこの時は思っていました。
事件解決後に、その思いは完全に砕かれる事になりましたけどね……
……素手でガジェットと対等に戦えるどころか、破壊まで行なっている人を見たら普通は驚きます。
というより、Aクラスより以下のランクの魔導師が自信喪失するのは、目に見えています。
まぁ、そのことは置いといて、しばらく4人で雑談を行なっていました。
そして、デザートを食べ終えて少しした後、フィリスが話してきます。

「さてと、そろそろお開きにしますか?」

「そうですね。
 結構、長く話し込んでいましたし」

フィリスの提案に、なのはは肯定します。
まぁ、流石にこのまま占拠していたら待っている客に迷惑なのも事実ですので。
私は、この後のフィリスの予定が気になったので聞いてみました。

「それで、この後フィリスは?」

「う〜ん、夜勤明けだからこのまま直帰して寝る。
 流石に、眠いからね」

「おつかれさまです」

そういうフィリスに、私たちは労わりの言葉をかけます。
まぁ、私たちもたまに夜勤をしたりするので、フィリスの苦労が分かるんですけどね。
だから、早めに切り上げる事にします。
こうして私たちはお店を後にするのでした。



なのは's View

フィリス先生と別れた私たちは、海鳴臨海公園に来ていました。
しばらく海を見ながら歩いていた私たちですが、少し休憩する為にベンチを占拠します。

「それにしても、あたしたちの海鳴市とは違ってるなぁ」

「そうだねぇ、知っている店もあるにはあるけど……
 やっぱり、違っているよね」

フェイトちゃんとはやてちゃんは、今まで見て回った場所と私たちの世界と比べて感想を述べてます。
私の家族構成も違っているとおり、同じ海鳴市でも結構相違はあります。
……それに、私を次元転移に巻き込んだ量産型の影響で駅前なんかは破壊されていますしね。
だけど、やっぱり同じ部分もあるわけです。

「……でも、ここから見る景色は同じだよ」

「そうだね」

私の呟きに、フェイトちゃんは肯定します。
私が見つめている場所。
そこは、私の世界でフェイトちゃんと本音を言い合いながら全力で争った場所。
今ではよき思い出になっています。
しばらく思い出に浸っていた私ですが、フェイトちゃんが何かに反応したようです。

「なのは、はやて。
 あの家族……」

「えっ、なんや、フェイトちゃん?」

「どうかしたの、フェイトちゃん?」

フェイトちゃんの言葉に現実に引き戻された私は、フェイトちゃんの指す方向に目を向けます。
そこには一組の家族が存在していました。
父親に母親、そして娘とその娘に連れられている黒い子犬……
だけど、その娘にはどこか見覚えがあります。

「……って、あれ、並行世界のあたし?」

「見事なまでに、昔のはやてにそっくりなんだよね」

はやてちゃんやフェイトちゃんに指摘されて、私もようやく気づきました。
そう、その娘は昔のはやてちゃんにそっくりです。
でも、その家族を見る限りとても幸せそうに見えます。

「それにしても、こっちのあたしは幸せそうやな」

はやてちゃんも同じ事を感じたようで、言葉に表していました。
私は、はやてちゃんの表情が気になり、はやてちゃんの方へ顔を向けました。
だけど、はやてちゃんは微笑んでいるだけです。

「はやて、大丈夫なの?」

「うん?
 何がや、フェイトちゃん?」

フェイトちゃんははやてちゃんの態度が気になって、聞いています。
だけど、当のはやてちゃんは疑問顔で対応しました。

「いや、だって……」

フェイトちゃんが言葉を濁していますが、はやてちゃんはフェイトちゃんの態度に何が言いたいのかが分かったみたいです。
だから、はやてちゃんはフェイトちゃんにはっきりと言いました。

「こっちのあたしの両親が生きてるって事か?
 こっちはこっちだし、あたしはあたし。
 それだけの事やで」

「うん、それはそうなんだけど……」

フェイトちゃんははやてちゃんの言葉に、まだ承服しかねているようです。
そんなフェイトちゃんを見てたはやてちゃんは、苦笑して話を続けています。

「それにな、確かにあたしは両親いないけど、そのおかげであたしの子たちに会えたんや。
 それと、なのはちゃんとフェイトちゃんにもな」

「……そっか、そうだよね」

はやてちゃんの言葉に私は納得します。
まぁ、フェイトちゃんが家族に拘るのも分かるんですけどね。
だけど、二人の境遇を知っていて、さらになのはちゃんの強さを知った私は、自己嫌悪に陥っています。
私の姿を見たはやてちゃんは、心配そうにたずねてきました。

「どっかしたんか、なのはちゃん」

「えっ、あ……
 うん、ちょっと考え事をね」

「考え事?」

私は、苦笑してはやてちゃんに返答します。
私の言葉を聞いたフェイトちゃんも、心配そうに聞いてきます。
まぁ、今更隠してもしょうがないので二人に話すことにしました。

「そっ、考え事。
 二人に比べて、私はまだ幸せな境遇だったんだなと気づいてね……」

「何かあったんか、なのはちゃん?」

はやてちゃんは、興味深そうに相槌を入れて聞いてきます。
逆にフェイトちゃんは、黙って聞いています。
そんな二人に苦笑しながらも、私は話を続けます。

「何かあったって訳じゃないんだけど、私が小さい頃に私のお父さんが大怪我した事があったんだけどね……
 その時、家族はお父さんに付きっ切りだったり働いたりしたため、私に構ってくれる事が少なかったんだ」

「……あの時、私に声をかけてくれたのは、なのは自身も体験していたからなんだね?」

「うん、あの時のフェイトちゃんの目をみて、昔の私に重ね合わしたのは事実だよ」

フェイトちゃんと初めて出会ってから、私が問いかけていた言葉。
それは孤独だった昔の私と重ねていたから……
でも、今はその話は関係ないので省きます。

「それは置いとくとして、当時の私は自分が要らない子だと思っていたんだ。
 それに、今でもあの場所に自分の居場所は無いって思っていた……」

「なのは?」

私の言葉に心配そうに見つめるフェイトちゃん。
はやてちゃんも、私の言葉を聞いて呆然としています。

「だけど、その考えは自分のわがままだって気づかされたんだ。
 他でもない、ここの世界の私によってね……」

そういって、私は力なく笑いました。
フェイトちゃんは、私の言葉に驚いて聞いてきます。

「こっちの世界のなのはがどうかしたの?」

「うん、こっちの私……
 なのはちゃんは、生まれる前にお父さんを亡くしているんだけどね……
 私と違って、家族を怨むどこか家族を心配するぐらいに心が成長してたんだ」

そう、なのはちゃんと一緒に遊園地へ遊びに言った時に、私はなのはちゃんの強さを知りました。
そんな私に、はやてちゃんとフェイトちゃんはフォローを入れてくれます。

「でも、なのはちゃんとこっちのなのはちゃんとは境遇が違うやろ?
 なのはちゃんの昔は分からないけど、こっちのなのはちゃんは、昨日の夕食で言っていたけど晶ちゃんやレンちゃんと幼馴染やし」

「それに、晶やレンも似たような境遇をしてるから……
 なのはも、その時期にそういう友達と出会っていたら変わっていると思うよ?」

「二人ともありがと。
 だけど、こっちの私に比べたら、私は情けない存在だよ」

二人の優しさが心にしみます。
だけど、こっちの私に比べたらやっぱり自分が情けないのは事実です。

「……確かに、アリサちゃんやすずかちゃんが言っていたなぁ。
 フェイトちゃんと出会うまでは、将来の事を悩んでいたってな」

「そういえば、こっちのなのはって既に将来を見据えているよね。
 というか、翠屋二代目店長の自覚があるみたいだし……」

「……反論できない自分が悲しい」

二人の言葉に、反論できない私です。
当時の私は、将来の事について悶々と考えていたのに、こっちの私は堂々と宣言していましたし……
それに、翠屋以外の夢はって聞いたら、なのはちゃんは映像監督とあっさり返してきました。
はやてちゃんは、落ち込む私を励ますように話をしてくれました。

「まぁ、でも……
 四六時中万年新婚バカップル振りを見せられたら、誰だってなのはちゃんの気持ちになると思うで?」

「そうだね、私たちの世界の美由希さんはどちらといえばブラコンだしね……」

「あはは、そう言って貰えると癒されるかな?」

フェイトちゃんも、はやてちゃんの話に同意して続けます。
そんな二人に、私は感謝しています。
だけど、はやてちゃんは何か思い出したようで、呆れたように呟きました。

「向こうの美由希さんは兎も角、こっちの美由希さんはえらい酷い目に遭わされてるようだけどな……」

「まっ、自業自得だから良いんじゃない?
 はやても似たようなものだし……」

「うな!?」

はやてちゃんの呟きに、同情の余地なしって感じでばっさり切り捨てるフェイトちゃん。
まぁ、昨日の件があるわけですから同情する気にはなれないのですがね……
昨夜の出来事で恭也君の制裁を受けたのは、桃子さん、忍さん、美由希さん、はやてちゃんの4人。
リスティさんはHGS能力を使って逃げ出しましたけどね。
……思い出しただけで寒気がきました。

「……まぁ、昨日の出来事ははやてちゃんが悪いよ」

「いや、だってなぁ……」

私たちの指摘に、落ち込むはやてちゃん。
そんなはやてちゃんの姿に、苦笑する私とフェイトちゃんです。
しばらく笑っていた私たちですが、不意にフェイトちゃんが話してきました。

「それにしても、なのは?」

「何かな、フェイトちゃん?」

「昨日の夕食で思ってたんだけど、こっちの高町家に完全に溶け込んでいるよね。
 私が招待されて、なのはの家族と一緒に食事した時よりも……」

「自分でもわかんないけど……
 多分、なんだかんだいってこっちのお母さん、桃子さんのおかげだと思う」

そう、こちらの世界に飛ばされてから高町家に居候させて頂いているんですが……
それがどうも、昔から居るような感じになっていたりします。
それは、あっさりと居候を許可してくれた桃子さんのおかげかも知れないんですけど……
はやてちゃんは思い当たる節があるらしく、私の意見を肯定します。

「あ〜、なんとなく分かるな、それ。
 なのはちゃんの両親は新婚バカップルぶりを見せ付けられるんで引くんだけど、こっちの桃子さんはそのパワーを家族に与えてるんや」

「それに、あの家は居候も居るからね。
 全てひっくるめて家族になってるから……」

桃子さんはフィアッセさんや晶ちゃん、レンちゃんの事を血の有る無しに関わらず、家族として扱っています。
だからなんでしょうね、フェイトちゃんやはやてちゃんが現れたときもあっさりと許可してくれましたし……

「……でも、人をダシにしてからかうのは止めて欲しい」

「それは無理だと思うよ。
 散々恭也君の制裁を受けてるのに、一向に変える気ないから……」

フェイトちゃんはボソっと呟きます。
フェイトちゃんは、桃子さんによってえらい目にあってますから。
かくいう私もなんですけど……
まぁ、こちらの世界のお母さん、桃子さんの欠点ですね。
大半が恭也君絡みなんですけどね。
そして昨日の事を思い出したフェイトちゃんとはやてちゃんは、何故かあたしを睨みつけるように見ます。

「だけど、こちらの恭也さんは恋人いないみたいだし……」

「なのはが有利な展開みたいだけどね」

「そっ、そんな事ないよ……
 私よりも那美さんの方が、恭也君と付き合い長いし……」

私が恭也君の事が好きだって事は、フェイトちゃんもはやてちゃんも周知の事実です。
それに、那美さんも薄々気づいていると思います。
でも、はやてちゃんはまくし立てます。

「恭也さんが、なのはちゃんを見る目……
 明らかに意識してるで!」

「まっ、恭也さんに敵視されているはやての戯言は放っておくとして……」

「そうだね、恭也君は桃子さんのようなタイプは苦手にしているみたいだし……」

フェイトちゃんの鋭い指摘と、私の言葉にはやてちゃんは固まってしまいました。
まぁ、事実を言ったまでなんですがね。
しかし、フェイトちゃんは私に宣戦布告をしてきました。

「……でも、負けるつもりはないよ」

「……その様子だと、お兄ちゃんとは別人だと認識してるんだね?」

「うん、なのはのお兄さんとはまったく別な人だとは認識したよ。
 だけど、あの人の過去を聞いて惹かれてるのも事実だしね」

どうやらフェイトちゃんは、私のお兄ちゃんと恭也君とで完全に区別をしたみたいです。
その上で、惹かれていると言うのなら私がとやかく言うことは出来ません。

「そっか。
 なら、私がとやかく言うことはないね……
 でも、恨みっこは無しだよ?」

「うん、恭也さんがなのはを選んだら絶対に祝福するよ。
 だけど……」

一人の男をめぐって泥沼な関係になるのは、ドラマでは良くある事。
だけど、私とフェイトちゃんの友情はそんな事では壊したくないです。
だから、正々堂々と勝負する事にしたんですけど……

「うん……
 一番の強敵は那美さんなんだよね……」

恭也君をめぐる戦いで一番の強敵は、他でもない那美さんだったりします。
何故なら、恭也君ともっとも付き合いが長いので。
フェイトちゃんは私の意見を肯定しつつも、他にも有るみたいです。

「確かに那美さんは強敵なのは事実だけど……
 一番の問題は、恭也さんが気づくかなんだよねぇ。
 聞いてる話だと、なのはと同じくらい鈍感みたいだし……」

「……何か酷い言いがかりな気がするんだけど?」

「べっつに〜」

フェイトちゃんの言葉に、不満を持つ私です。
なので反論した所、フェイトちゃんは私から視線を外してしまいました。

「でもね、恭也さんはなのはの事を意識しているのよね……」

フェイトちゃんは空を見上げて小声で何か言っています。
私は聞き取れなかったので、非常に気になりますので聞いてみました。

「うん?
 何か言ったかな、フェイトちゃん?」

「えっ、いや……
 何でもないよ、何でも……」

フェイトちゃんの慌てぶりで隠してる事はバレバレですけど、それ以上聞いても帰ってこないのは分かってますのであえて聞きません。
と言うより、背後から凄いプレッシャーを感じています。
そう、先程から固まっていたはやてちゃんが負のオーラを漂わせていました。

「なのはちゃんにフェイトちゃん……
 あたしの事をわすれてない?」

「う〜ん、今の話は既に脱落している人とは話す事はないし」

「既に、恭也君のブラックリストに載っちゃっているしね、はやてちゃんは」

そんなはやてちゃんに、私とフェイトちゃんは満面な笑みで答えました。
だけど、そんな私たちにはやてちゃんはキレちゃったようです。

「ふっふっふ……
 二人とも、ここで亡き者にしてあげようか?」

「はやてが殺り合うって言うなら、私は乗るけど?」

「え〜と、流石にここで魔法はまずいと思うけど……」

二人の態度に、私は慌てて止めに入ります。
だけど、二人とも既に臨戦態勢に入っています。
流石に、暴走状態に入った二人を止める事は……

「フェイトさんにはやてさん?
 何をやっているんですか?」

意外な方向から、天の助けがやってきました。
その声に反応するようにフェイトちゃんもはやてちゃんも固まって、声がした方向に顔を向けます。
そこには、なのはちゃんと子狐状態の久遠ちゃん、そして恭也君が居ました。

「いっ、いや……
 なっ、何でもないんや、何でもな……」

「うん、何にもしてないよ……」

なのはちゃんに気づいた二人は、慌てていい訳しています。
だけど、なのはちゃんは二人の態度に疑念を持っているみたいで鋭く聞いてきます。
恭也君は、携帯電話で誰かと話しているみたいですけど……

「え〜と、なにか争う気配がしたんですけど、なのはの気のせいだったんでしょうか?」

「そっ、そんなことあらへんよ」

「うん、そんなとこはないよ」

なのはちゃんの態度に、フェイトちゃんとはやてちゃんは冷や汗をかいています。
伊達に、晶ちゃんとレンちゃんの喧嘩を毎日止めてるわけじゃないんですね……
そして、電話を終えた恭也君が二人に向かって話しました。

「静馬叔父さんからの連絡だ。
 魔法を使って喧嘩するなら、それ相応の代償は覚悟しておけ……
 だそうだ」

「……はい」

「……申し訳ないです」

恭也君の言葉に、フェイトちゃんとはやてちゃんは力なく答えています。
どうも、クラウディアから私たちの覗かれていたようです。
私ははやてちゃんの挑発に乗らなくて正解だったと、心の中で思っていました。
それで恭也君は何があったのかが分からないようで、私に聞いてきました。

「で、菜乃葉。
 二人の間に、一体何があったんだ?」

「う〜ん、良くあるじゃれあいみたいなものだよ。
 ほら、晶ちゃんとレンちゃんみたいにさ」

私は恭也君の質問に、一番分かりやすい例を交えて答えました。
恭也君は私の答えに納得したようですが、どうも誤解まで与えてしまったみたいです。

「ふむ、そういうことか。
 それにしても意外だな、フェイトが喧嘩っ早かったとは……」

「いや、それは誤解だよ。
 喧嘩売ったのは、はやてちゃんの方だし……
 フェイトちゃんは、私や恭也君と同じで負けず嫌いだしね」

私はフェイトちゃんのフォローをしておきます。
まぁ、はやてちゃんは自業自得なんで放っておきますけどね。
ただまぁ、フェイトちゃんの場合、試合とか訓練とか言うと率先してやるのは事実ですけどね。
恭也君は周りを確認した所で、動き始めました。

「そろそろ夕食の時間だから、帰るぞ。
 今日もお客は多いみたいだからな」

「あはは、昨日の二の舞にならなきゃ良いんだけどね……」

「……そうだな」

私と恭也君は、昨日の事を思い出し一緒に溜息をつきました。
まぁ、昨日制裁されている分、今日はそれ程被害はないと思うのですが……
だけど、明日にはクラウディアに戻るわけで……
そして、ルオゾールとの決着が待っているのも事実。
だから、今夜だけは思いっきり楽しむ事にしました。
再び平穏な日常に戻るためにも、早く事件を解決すると心に秘めながら今日と言う日は過ぎていきます。

Side04 Fin




後書き

ども、猫神TOMです。
横道シリーズ第四弾。
魔法少女三人娘による、並行世界海鳴市探索記でした。
アリサ、すずかはとらハ基準で存在しておりませんが、ちびはやて登場(爆)
まぁ、今のところは関わる予定はないですけどね(マテ)
それにしても、三人娘の立ち位置がものの見事にリスティ三姉妹と同じなですよね。
お祭り大好きでかつ責任感が強いリスティとはやて。
几帳面すぎるフィリスとフェイト。
無茶ばかりするシェリーとなのは。

因みにオチに出てきたちびなのははデフォって事で。
それにしても、書いてるとはやてが黒くなるつ〜か、なんて言うか(爆)
それが関西人キャラの宿命なのかもしれません(激しくマテ)

では




和気藹々とした感じがとっても良かったです。
美姫 「仲良し三人組みよね」
うんうん。ほのぼのと癒される〜。
美姫 「戦いの前の平穏」
こうしていると、本当に普通の女の子だな、やっぱり。
美姫 「それはそうよ。今回もいいお話でした」
本編の方も楽しみにしてますね。
美姫 「待っています」
ではでは。



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