恭也's Monologue

俺たちは海鳴駅前で大量に発生した泥人形の化け物ゴーレム退治を行なっていた。
あらかた、そのゴーレムたちを退治したのはいいが、菜乃葉……
いや、並行世界のなのはがこの世界に現れた原因、古代遺産-ロストロギア-の機動兵器ヴォルクルスが出現。
なのはがこちらに来る前にかなりのダメージを与えていたこともあり、俺の力《御神流》でも通用し有利な状況になっていた。
だが、突然上空からもう一体のヴォルクルスが出現し、先に出現したヴォルクルスを吸収。
姿を変えたヴォルクルスには俺もなのはも手も足も出ない最悪な状況だった。
そして、ヴォルクルスの砲撃が俺を包むときに奇跡は起きた。
俺の目の前には、青白く輝く球体が俺を護るように魔法陣を展開しその砲撃を遮断した。

魔法少女リリカルなのは
−White Angel & Black Swordmaster−

Act:04「黒衣の魔導剣士・覚醒、なの」

恭也's View

新たに出現したヴォルクルスの砲撃に、俺たちは回避行動に専念しなければならない状態だった。
俺もなのはもなんとかその砲撃をかわし続けてきたが……
予想外の砲撃を受けなのはが吹き飛ばされて地面に叩きつけられるところで、俺は抱える事に成功した。
もっとも、その為に左肩は砲撃をかすめてダメージを負ってしまったが、まだ支障は出ていない。
だが、その影響で着地をミスって体勢が悪くなっているのも事実であった。
そして再びヴォルクルスの砲撃が俺たちを捉え襲ってくる。
俺は、とっさになのはを突き飛ばした。
驚いたなのはは俺に向かって叫ぶが、俺はそんななのはに向かって微笑む。
そういや、フィアッセを庇って散っていったとーさんはこんな気持ちを抱いたのかとこの時俺は思った。
本当の所、俺はまだ諦めてはいなかった。
とーさんを失って悲しむ家族を見た事もあり、また美沙斗さんとの戦いでも確信した事。
戦場において一番必要なのは-生きる-と言う意思である事。
だから、なのはを突き飛ばしたのも、確かになのはを助けたいと思ったのも事実だが、実際には神速……
俺にとって切り札である移動方法、神速二段掛けの使用をするためである。
神速二段掛けは抱えてながら発動できないからだ。
こうして俺は、神速の発動体勢に入ろうとしたのだが……
いきなり俺の目の前に青い球体が現れて、俺を護るように魔法陣を展開した。
俺は呆然とその光景を眺めていたが、さらにその球体が話し出し俺は驚愕した。

《ようやく見つけたぞ、我が主に相応しき器を持つものよ》

今、なんて言ったんだ?
俺が主だと?
俺が混乱しているとは露知らず、その球体は話を続ける。

《我が名は-サイフィス-。
 『風』の精霊王の名を持つデバイスなり。
 汝の名を示せ、我が主に相応しき者よ》

その球体はサイフィスと名乗った。
そしてデバイスとも……
先程の魔法陣といい、このサイフィスはなのはが使用するレイジングハートと同類なのは分かった。
だが、何故俺なんだ?
なのはならまだ分からんでもないんだが……
そんな事を考えていると、なのはがなにやら叫んできた。

「ゴメン、恭也君……
 今まで話していなかったのだけど、恭也君にも魔力反応があるの!」

なんだと?
なのはにある魔力反応が俺にもあるって言うのか?
さらに混乱する俺を無視するように、なのはは続ける。

「だけど、恭也君の魔力は完全に眠っているから、何かきっかけがないと覚醒しないの!」

つまり、俺は魔力はあるが使える状態ではないって事なのか。
そして、サイフィスとの出会いは俺の新たなる力が覚醒すると言うことか?
俺はしばし考える。
俺は護るべきものを護れるだけの力を求めているのは事実だ。
だからといって、無闇に振るったことは一度も無い。
実際にサイフィスの力がどれほどな物なのかは分からない。
俺が扱えるべき力の範囲を超えている可能性はある。
俺がそう考えていると、再び俺に問いかけるサイフィス。

《汝の名を示せ、我が主に相応しき者よ》

だが、サイフィスは俺を選んでいる。
現状、ヴォルクルスを倒す為にはサイフィスの力が必要なのは事実だった。
ならば、俺はサイフィスを……
俺に内包する魔力を確実に扱ってみせる!
護るべきものを護れる力を得る為に!
だから、俺は覚悟を決めた。

「俺の名は高町……」

そういって俺は一瞬考える。
今後こういった事件に関わって高町性がさらされると家族や俺の周りに迷惑をかける可能性がある。
そうなっては護るべきものを護るどころか、さらに危険をさらしかねない。
それでは本末転倒である。
それに、ヴォルクルスの砲撃は一向にやまない。
考えがまとまった俺は、今度こそ躊躇無く目の前に存在する青い球体-サイフィス-に宣言した。

「俺の名は、不破……
 不破、恭也だ!!」

高らかに宣言した俺に、サイフィスは反応する。

《不破恭也……
 しかと聞き届けた。
 我は汝を主と認めよう!》

サイフィスはそう答えて、激しく輝きだした。
俺はその光に包まれる。

初期化開始フォーマットスタート

サイフィスからの声と共に、俺の頭の中はフラッシュバックする。
そう、サイフィスが今までに蓄積した戦闘の記録。
その記録が俺の頭に焼き付いて消えていく。
俺が現実に引き戻されたとき、サイフィスの声が頭の中から響いた。

初期化終了フォーマットエンド
 戦術コンバットプログラム、攻撃ストライクモード。
 融合率ユニゾンパーセント30%で起動》

そして俺は魔導師として覚醒した。



なのは's View

光に包まれた恭也君が姿を現した時、私は恭也君の姿に見とれていました。
恭也君の服装は、先程来ていた薄いグレーのジャケット姿ではなく、黒いロングコートを着た姿に変わっています。
黒いロングコート、それが恭也君のバリアジャケット。
側から見れば、魔術師と言うよりボディーガードとか、暗殺者とか、特殊工作員なんかがしそうな服装ですが。
所々に青いラインや白いライン、銀色の装飾、赤、青、緑の魔力増幅装置ブースターが見えますが、クロノ君のバリアジャケットに比べてシンプルです。
どちらかと言うと、フェイトちゃんのバリアジャケットと同じで速度重視なのかもしれません。
もっとも、見た目と違って私のバリアジャケット見たいに防御力が高いかもしれないんですが……
だけど、明らかに先程の恭也君と違う部分があります。
髪の色は、黒一色だったのが全体的に薄くなっていますし、瞳の色が青色に変わって輝いています。

「ユニゾンデバイス?」

《そのようですね。それも融合率変動型です》

ユニゾンデバイス……
実際にそのデバイスを使用している人は私が知っている限り一人だけ……
八神はやてちゃん、彼女がユニゾンデバイスの使用者です。
でも、はやてちゃんのは完全融合なので、恭也君みたいに融合率を調整できるのは初めてみます。
心配した私は、ヴォルクルスの砲撃を気にすることなく恭也君の側によるのでした。

「恭也君?」

「心配するな、俺は大丈夫だ」

そういって苦笑する恭也君を見て、私も安心しました。
その顔には先程と……
いえ、先程以上に自信に満ち溢れた表情をしています。
とたんに、突き飛ばされた事を思い出した私は恭也君を問い詰めます。

「恭也君!?
 さっき私がどれだけ心配したか分かってるの!?」

「あ〜、そのことなら後で話す」

そういってあさっての方向に視線を向ける恭也君。
そんな事をやっていると、彼のデバイス-サイフィス-が私に話しかけてきました。

《お主が先程、主と共にあの量産型劣化コピーとやりあってた娘か》

「えっ?
 あっ、はい」

えっ、今なんていったの?
量産型劣化コピーって?
私が混乱していると、サイフィスが話しを続けます。

《アレは、オリジナルを基にした量産型劣化コピーだ。
 オリジナルと違って幾分制限を受けているから量産型劣化コピーなのだ》

つまり、アレを超えるオリジナルが確実に存在すると言うこと?

《そして我が目覚めたと言うことは、オリジナルも目覚め始めているという事だ》

「!!」

私は、絶句。
つまり今存在するヴォルクルスよりも凶悪な物がすでに目覚め始めているってことなの?
私が混乱していると、恭也君が話しに加わってきました。

「その事を考えても仕方ない。
 今は目の前に存在するアレを破壊することに専念するしかないだろ?」

その一言で私は現実に戻ります。

「うん、そうだね」

《主よ、詳しい話は落ち着いてから話そう》

「ああ、頼む」

そうして私と恭也君は視線をヴォルクルスに向けました。
不意に、サイフィスが私に問いかけます。

《ところでお主よ、先程の戦いでもそのデバイスの力を引き出していないが?
 なにか問題があるのか?》

「えっ、え〜と……」

確かに私はカートリッジの個数の兼ね合い上、全力で戦えていなかったのは事実です。
補給が出来る状況なら有無言わず使用しているのですが、現状では無駄弾を撃てる余裕はない……
私は、そうサイフィスに説明しました。

《ふむ、ならば今回は我の魔力を使用すれば問題あるまい。
 主は覚醒したばかりだから、我の魔力を全て使い切る事はないからの》

「えっ、サイフィス自身にも魔力があるの!?」

デバイス自体に魔力が存在するなんて……
って、ああ夜天の魔道書には魔力は存在していたな。
そんな事を思い出した私は苦笑するのでした。
サイフィスはさほど気にする事もなく、話を続けます。

《まあ、本来は危険な行為なのだが……》

「えっ、危険って!?」

《最悪デバイスが破壊するからの。
 我の魔力に耐え切れなくてな》

つまりレイジングハートが壊れる可能性もあるって事……
それはかなりまずい……
そんな事を考えている私を無視し、サイフィスは続けます。

《しかし、お主とそのデバイスなら問題あるまい。
 主ほどではなくともお主の魔力と我の魔力との相性は良好であるからな》

「え〜と、それって……」

私が考えていると、レイジングハートが答えてくれました。

《私も彼からの情報を元に計算して確認しました。
 破損確率は5%以下です。
 ただし……》

「ただし?」

《エクセリオンモードを起動した場合、10%まで破損率は上がります》

それって、余程の事が無い限り問題は無いって事。
あの時の……
闇の書と相対した時のエクセリオンモードは80%を超えていたけど、問題はありませんでした。
だから10%って言われても気にする必要はないし、気にしている状況でもない。
なので私は決断しました。

「サイフィス、頼める?」

《承知した》

サイフィスの言葉と同時に、レイジングハートから感じる魔力が変わるのを感じました。
だけどその魔力は心地よく力強く感じます。
私は与えられた魔力を使い、レイジングハートの最強モード・エクセリオンモードを起動させました。

「エクセリオンモード、スタンバイ」

《イエス、マスター》

そして展開されるレイジングハート。
レイジングハートに普段まとわりつくのは桜色の魔力。
だけど、今回は桜色だけではなく青白い魔力もまとわりついています。

《それと、お主のデバイスに我が今まで戦ってきた奴のデータを転送しておいた。
 有効に使ってくれ》

「ありがとう、サイフィス」

今まではヴォルクルスのデータが無くほとんど手探りで探している状況だった。
だけど、今は違う。
幾万の年月をかけてヴォルクルスと争っていたサイフィスからデータを手に入れた今、確実に有効な作戦が組める。

《マスター、ヴォルクルスのバリア解析終了しました》

「レイジングハート、ありがと」

バリアの解析も完了。

《ですが、現在の状態だとコアを直接狙うのは無謀です》

《うむ。
 先に魔力増幅装置ブースターを破壊する事を推奨する。
 あの多重バリアは魔力増幅装置ブースターによって増幅されておるからな》

レイジングハートもサイフィスも同意権。
恭也君はと言うと、ヴォルクルスを睨みつけています。

「今の状態なら、奴の懐に入るのも可能だな」

《主の近接戦闘能力は把握済み。
 そして我の力を得た今なら、それは可能だ》

「そうだな」

サイフィスの言葉を聞いた恭也君は不適な笑みを浮かべます。
そして恭也君は私に話しかけてきました。

「右の魔力増幅装置ブースターは俺がやる。
 左の魔力増幅装置ブースターはまかせるぞ」

「うん、まかせて」

先程の状態なら明らかに無謀な作戦。
だけど……
魔導師として覚醒しサイフィスと融合している恭也君。
そして、サイフィスからデータと魔力をもらった私。
今の私たちなら、ヴォルクルスを倒せるという確信を得ました。

「行くぞ!!」

「うん!!」

私たちは再び活動を開始します。
今度こそ、この悪魔を滅ぼす為に。



恭也's View

魔導師として覚醒した俺は、現在サイフィスと融合してヴォルクルスの魔力増幅装置ブースターの破壊をなのはと分担して行なう事になった。
魔導師となった俺は、なのは同様空を飛べるようになっている。
本当の所は、現在は俺の力ではなくサイフィスのフォローにより制御している状況だが。
実際に魔導師として覚醒した俺だったが、現状はなのはみたいに長距離から使える魔法はまったく無い。
サイフィスが固有で持っている魔法はあるそうだが、覚醒したばかりの俺が制御できるかは微妙な所だ。
そう考えながら、俺は魔力増幅装置ブースターの一つを目指して一直線に飛んでいる。
ヴォルクルスの砲撃は相変わらずしつこいが、サイフィスと融合した俺には穴だらけに見える。
そう、神速の領域に入ったのと同じのを俺は感じていた。
不意に、ヴォルクルスの直接攻撃担当部分である触手や鎌が俺を襲う。
だが、今の俺にはその動きが止まって見えた。

「まともに相手している時間が惜しい、一気に突き抜ける!」

《了解した、主》

俺の言葉に反応したサイフィスは数センチ単位で俺の制御を行い、俺が見つけた穴を的確に突き抜ける。
その防衛網を突破したとき、青く輝く宝玉・魔力制御装置が目の前に現れた。

「アストラルヴァイン」

アストラルヴァイン……
俺がサイフィスから教えてもらった現在使用できる魔法。
サイフィスと融合状態でなくとも俺自身が使える魔法。
その魔法で、俺の愛刀-八景-に魔力を上乗せる。
サイフィスが言うには、サイフィス起動時点で俺の愛刀と同じものを魔法で精製は可能。
アストラルヴァインも、本来は魔力で精製された武器をさらに強化する魔法なのだそうだ。
だが今は、俺が持ってきた愛刀があるのでそれを使用する。
八景の刃に青白い魔力が帯びる。

「御神流・奥義乃弐《虎乱》」

八景の刃に魔力が行き届いた事を確認した俺は、奥義を使いバリア共々魔力増幅装置ブースターを破壊した。
それと同時に、ヴォルクルスの身体が崩壊しだす。
そう、先程なのはとの共同作業と同様な事が起きた。
さらに、周りに展開していた反射する球体の幾つかも消滅していた。
俺は成り行きを確認した所で、体勢を立て直す為に一旦離脱。
そして、次のターゲットに向けて動き出す。
右側の魔力増幅装置ブースターは残り7つ。
ヴォルクルスが融合したため数も倍になっていたが、そんなものは今の俺たちには関係ないことだった。
不意にサイフィスが反応する。

《主よ、前方に魔力反応を確認した。
 この魔力は魔弾の類だな》

「威力はどのくらいだ?」

《一発の威力は主のフィールドで抑えられる。
 だが、連続で食らえば……》

「了解した。
 全弾回避する」

《承知した》

俺の周りに展開されている魔力防壁フィールド……
サイフィスが言うには-フォース・フィールド-と言うらしいのだが、そのフィールドのおかげでヴォルクルスからの魔法砲撃を遮断していた。
もっとも、本来は俺自身が展開しなければならないらしいのだが……
覚醒したての俺にはそんな余裕も知識もないわけだから、これもまたサイフィスが展開していてくれる。
だからといってその恩恵をそのまま受けるわけにはいかず、また、食らうたびに魔力を消費するのだから回避できるものに関しては回避に徹した方がいい。
俺は魔弾の軌道を見極める。
サイフィスは俺の見極めたルートを的確に把握し魔弾を突き抜ける。
何発かフィールドをかすったが、問題になる程でもなかった。
だが、魔弾を突き抜けた俺にヴォルクルスの触手が襲ってくる。

「御神流・奥義乃壱《虎切》」

俺は奥義の一つ-虎切-を使用し直進した。
俺の虎切を食らった触手はものの見事に綺麗に斬れそのまま地面に落ちる。
俺はそれを気に留めることも無く目的に向かって直進する。
不意にサイフィスが俺に語りかけた。

《あの娘、あの年で中々の使い手であるな》

ふむ、なのはの事か。
確かに、魔法と言う世界で戦ってきただけの事はあると思う。
まぁ、自分が有利な状況になると油断する悪癖もあるが……
俺は疑問に思ったことを口にしてた。

「何故俺を選んだ?」

《何、主の方が我との相性がよかっただけだ》

「そうか……」

サイフィスの言葉に俺は反応する。

《そもそも、あの娘と主の魔力容量にはあまり差が無い。
 そして、我の属性にもっとも近かったのが他でもない主だ》

俺は黙ってサイフィスの語りを聞いている。

《後は、融合して分かったことだが、主は身体的にも優れていたようだな。
 我を扱うには身体的にも優れていた方が良いのでな》

「つまり、お前の選定基準に俺は合致していたと言うことか?」

《そのとおりだ、主よ》

俺の反応に肯定するサイフィス。

「ならば俺は、お前の期待に応えるとしよう」

《主よ、楽しみにしているぞ》

サイフィスと会話している内に、二個目の魔力増幅装置ブースターに到着する。
俺は先程と同じ虎乱を使用し魔力増幅装置ブースターを破壊し、離脱。
二個目の魔力増幅装置ブースターを失ったヴォルクルスは先程と同じように崩壊。
さらに動きが鈍くなる。
残り六つ。



なのは's View

恭也君が右側を担当し行動している頃、私は左側の魔力増幅装置ブースターに対応する為に行動を起こしました。
相変わらず、ヴォルクルスの砲撃はしつこいのですが、先程サイフィスから頂いたデータのおかげでレイジングハートのフォローもありますが的確に回避できています。
私は、恭也君みたいに近接戦闘はできません。
ですが、先程もらったデータのおかげで私の持ち味である長距離からの砲撃でも対処は可能。
ですから、私は砲撃のタイミングを図っていました。
不意に、ヴォルクルスのバランスが崩れ攻撃が鈍化します。

「流石、恭也君。
 早くも一つ撃破だね」

そんな事を呟いた私は、その隙を突いて砲撃を行ないます。

「レイジングハート!
 エクセリオンバスター、スタンバイ!」

《イエス、マスター》

今まではバリアによって阻まれる可能性があったので使用していなかったエクセリオンバスター。
だけど、サイフィスから頂いたデータを元に作成した対バリア術式を組み込んだこれなら威力も落ちる事は無い!
レイジングハートからも力強い鼓動を感じる。
そして、レイジングハートの先端に魔力が凝縮される。
桜色と青白い色を合わせた魔力が……
凝縮された魔力が臨界点を突破すると同時に私は叫ぶ!

「エクセリオンバスター、シュート!!」

私の叫びと同時にレイジングハートの先端から魔力増幅装置ブースターにめがけて一直線に突き進む一筋の閃光。
その閃光を阻もうとヴォルクルスの触手が妨害してきますが、一瞬で蒸発し壁にすらなっていません。
そして、その閃光はバリアすらも破り魔力増幅装置ブースターに直撃。
魔力増幅装置ブースターは見事に消失していました。
その魔力増幅装置ブースターを失ったヴォルクルスは、先程と同じように崩れる部分が発生。
さらにバランスを崩し動きが鈍くなります。
左側の魔力増幅装置ブースターは7つ。
不意にレイジングハートが私に語りかけてきました。

《それにしても彼、やりますね》

「……そうだね」

私はレイジングハートと出会った時の事を思い出していました。
あの時は右往左往しながら魔法を使っていたと思う。
そして、フェイトちゃんと出会ってぼろ負けした私……
そんな姿を思いだして、恭也君と比べてたんですが……

「……なんか、少し悔しい」

《身体能力が全然違いますから》

「後、戦闘経験もね……」

そう、私はレイジングハートと出会う前は争いとかは関係ない世界に住んでいた。
でも恭也君は明らかに戦闘為れをしている。
私とレイジングハートの出会った頃と比べると、その差が明らかに大きい。

《ですが、貴方は実戦で学んできました……
 いくら私がサポートしていたとは言え、ほぼ独学で》

「うん、そうだね」

私の魔法はほとんど独学で学んでいったもの。
実際に魔法を学んで局に就職して来た人に比べたら、明らかに異端でした。

《ですから、貴方が彼を指導していけば彼はもっと伸びますよ》

「そうかな?」

《ええ、貴方の教導は優秀ですから》

「うん、ありがと」

私がこの世界にいる間は、恭也君に魔法技術を教えよう。
それが今後確実に起こるオリジナルとの戦いに役立つと思うから……
もっとも、その時は思ってもいませんでしたが。
恭也君に魔法技術を教えるのが新人よりも大変だったって事は……

《もっとも、戦術に関しては教える必要もなさそうですね》

「うん、そうだね」

確かに恭也君に関しては戦術を教える必要は無いと思う。
私よりも遥かに効率がいい戦術を組み立てる事が出来ているから。

《後、近接戦闘に関しては彼に師事して頂いた方がよろしいかと?》

「……レイジングハートのいぢわる」

私が近接戦闘を苦手にしているの知っていて言ってくるレイジングハートはホントいぢわるです。
まぁ、自分自身実感しているのでフェイトちゃんやたまにシグナムさんに師事をしてもらう事もあったんですが……
フェイトちゃんは直線的な攻撃ばかりで読みやすいし、シグナムさんは確実に真剣勝負になるので師事もへったくれもないんです。
最低限の技術は教導隊に入隊するための必須条件だったので覚えたのですが……
やはり実戦で使用するには心もとない。

「……取り合えず、考えておくね」

そういって私はレイジングハートとの会話を終了させた。
それと同時にヴォルクルスが再び異変を起こす。

「恭也君が二個目を撃墜したようだね」

《マスター、我々も次を破壊しましょう》

「うん」

バランスを崩したヴォルクルスの死角に私は移動。
そして私は次の魔力増幅装置ブースターに照準をセット。
それと同時にレイジングハートの先端に魔力を凝縮。
再び臨界点にきた魔力を目標にめがけて放出。
その一撃は先程と同じように目標を破壊。
それと同時に維持できなくなったヴォルクルスの身体は崩壊していきました。
残り六つ。



恭也's View

なのはが左側の魔力増幅装置ブースターの2個目を破壊したとき、俺は既に右側の3個目を目指していた。
先程と比べ明らかに攻撃力が低下しているのが実感できるぐらいに、ヴォルクルスからの砲撃頻度は低下していた。
反射する球体もかなり減ってきて、予想外の砲撃を受けることは先程に比べて少なくなっている。
もっとも、その砲撃のおかげで無傷とはいかず、俺はダメージを少なからず受けていた。
だが、サイフィスと融合している事もあり、ある程度の傷は自然回復する。

「相変わらずうっとうしい触手だ」

《主よ、まとめて斬りおとす事を提案する》

「了解した」

俺はサイフィスの提案にのってロングコート-バリアジャケット-から魔力を帯びた鋼糸を取り出し、触手の塊に向けて巻きつける。
鋼糸を巻きつけられた触手はじたばたしてるだけで脅威にはならないが、俺はあえて鋼糸に力をこめて引っ張った。
巻きつけられた鋼糸は触手に食い込むように進入し、そして切断。
切断された触手はなすすべもなく地面に落ちた。
その隙を突き、俺は三つ目の魔力増幅装置ブースターの目の前に行く。

《主、再び魔弾反応だ》

サイフィスの警告に、俺は再びロングコートの内側に手をいれ、飛針を取り出す。
その飛針も先程の鋼糸と同じく魔力を帯びているもの。
そして俺は、飛針を魔弾の幾つかに投げて迎撃。
その隙を見て魔弾の嵐から離脱する。
そして目の前には三つ目の魔力増幅装置ブースター
俺は躊躇無く虎乱を使用し破壊する。
一部分が崩れ落ちるヴォルクルスを気にすることなく俺は離脱し、4個目へ向かう。
残り5つ。
不意に反対側で爆発が起きた。
おそらくなのはの砲撃で魔力増幅装置ブースターを破壊されたのだろう。
それを肯定するように、さらにバランスを悪くするヴォルクルス。
だが、その光景を見ていた俺は奴の砲撃を見逃していた。
まだ存在する反射する球体から俺に向けて突き進む一筋の閃光を……

《サークルプロテクション、発動》

気づいた俺は回避行動を取ろうとしたが、サイフィスが防御魔法を掛けて防いだ。
俺を護るように展開される魔法陣。
その砲撃は、展開された魔法陣によって遮断され俺に当たることは無かった。

「……済まん、油断した」

《気にするな、主を護るのが我の役目だ。
 もっとも、今の魔法も本来は主自身が制御すべき魔法だが》

「ほぅ、初めてで行き成りの実戦を経験する俺に対する言葉か?」

《ふむ、主の意見ももっともだ。
 だから修行メニューに追加しておこう》

「むっ、了解した」

サイフィスは今後の為に俺様の特別メニューを作成している。
確かに今後もサイフィスの力を当てにしていたら対処を誤る可能性があると、俺は思う。
それにしても、サイフィスは人を食った性格をしている。
まぁ、俺の周りには……
というか、とーさんと一緒に武者修行していた時のことを思い出させてくれる。
そんな事を考えてながら再び行動を開始した。
そしてヴォルクルスは俺の行動を邪魔しようと、再び魔弾を使用してきた。
さらに、まだ存在する触手と砲撃のおまけつきで……

「ちぃっ、やっかいだな」

《回避に専念するか、主よ?》

「……試したいことがある」

サイフィスの意見に、俺は試したいことがあったのでサイフィスに言う。
俺はサイフィスとの融合形態になった後、一度も神速を使用していなかった。
神速の領域に入った感じはしていたが、俺自身が意図して入っていたわけではない。
なので、この状態で神速を使ったらどうなるか俺自身興味がある。

《主が使用する、肉体の限界を超える歩法か?》

「うむ」

サイフィスも俺の意図に気づいたようだ。

《我と融合したことにより、魔力によって身体は強化されている。
 だが……》

「身体にかかる負担は未知数ってことだな?」

《そのとおりだ、主よ》

魔力によってある程度俺の身体は強化されている。
それで神速を使用しても、普通は問題ない。
だが、今はと言うとかなりの速さで空を飛んでいる。
その上で神速を発動させるとなると身体への負担は予想できなかった。

「一回使ってみないことには身体への負担がどれだけかはわからん。
 そして、身体への負担が大きければ使用を制限する」

《了解した、主》

サイフィスの了承は得たので、俺は神速を発動させる。
風景がモノクロに変化する。
魔弾の動き、触手の動き、砲撃の動き……
それぞれの動きがコマ送りのように見える。
そして、俺はその動きの穴を見つけ……
一気に駆け抜ける!
その動きは、まさに風。
黒い疾風。
駆け抜けた俺がモノクロ領域から脱したとき、その衝撃で触手は崩壊。
眼前には、青い宝玉・魔力増幅装置ブースターが存在していた。

「御神流・奥義乃四《雷徹》」

俺の渾身の一撃で、魔力増幅装置ブースターは跡形も無く崩壊した。
身体への負担はと言うと、覚醒前に神速を使用してた時と比べてもあまり変わりない……
逆に言えば、身体強化した上で負担は同じだと言うことだ。

「……この状態での使用でも問題は無いが、多用は出来ないな」

《同感だ、主》

だが、この状態で使用した神速はというと、恩恵も馬鹿には出来なかった。
そう、神速で通った道は一種の旋風を発生させ荒れ狂うように暴れ妨害する物を破壊した。

《だが、副産物もあったようだな》

「そのようだ」

俺はサイフィスに相槌を打ち、魔力増幅装置ブースターが制御していた部分の崩壊を見届ける。

「残り4つだな?」

《我らの担当分だと、そのとおりだ、主よ》

「いくぞ」

《了解した》

俺は残り4つの魔力増幅装置ブースターを破壊する為に動き出す。
ここまで魔力増幅装置ブースターを破壊した影響か、ヴォルクルスの動きが明らかに鈍くなっている。
もっとも、コア自体抱えている魔力はいまだ膨大な為、まだ破壊することは出来ないが……
それでも、砲撃の頻度が緩くなっているので戦況は俺たちの有利に動いていた。
その分、俺たちの疲労もかなり蓄積されているが……
今更泣き言を言っても始まらないので、あえて身体に鞭を打つ。
……後でフィリス先生のお説教は確定だな。
そんな事を考えならが、ヴォルクルスの防衛網を突破し5つ目の魔力増幅装置ブースターの破壊も成功。
残り3つ。

《それにしても、主よ》

「なんだ?」

不意にサイフィスが問いかけてきた。

《我が選びし主たちの中でも、主はなかなか優秀な部類に入るぞ》

「そうか?」

サイフィスに褒められてもいまいちピントこない。
サイフィスは俺を無視して続ける。

《うむ、我を初起動でここまで扱えるものはそうは居ない》

「そうなのか?」

《そうだ》

あまり実感は湧かない。
実際に俺がサイフィスの力を借りて使用しているのは、飛行魔法、シールド系防御魔法、フィールド系防御魔法。
サイフィスが言うには武器強化魔法-アストラルヴァイン-は俺自身の魔力で具現化しているそうだが……

《まぁ、主の魔法は追々覚えていくしかないがの》

「そうだな」

覚醒して行き成りの実戦で覚えろって言う方がどだい無理な話だ。
しかし、今後も携わることになるだろうから考えておこう。
サイフィスと会話している内に6つ目の魔力増幅装置ブースターを破壊。
残り2つ。
ここまで来ると、魔力増強の影響が少なくなっているのか魔力増幅装置ブースター周りのバリア強度が格段に下がっていた。
好機だと判断した俺は、一旦離脱。
中距離まで離脱したところで停止し、飛針をそれぞれの魔力増幅装置ブースターに投げつける。
そう、魔力を混めた飛針をそれぞれ4つずつ。
魔力を混めた飛針は高速の弾丸。
それは、それぞれ一発はバリアを破壊して役目を終えたが、残りのそれぞれ三発は魔力増幅装置ブースターを直撃。
魔力増幅装置ブースターを失ったヴォルクルスは完全に右下半身を崩壊させた。
それと同時に、なのはの担当している方でも異変が起きた。



なのは' View

私が3つ目を破壊し終えると、恭也君の担当である右側はかなり崩壊していました。
その時、私は凄まじい風と黒い影に見とれていました。

「あれ、恭也君?」

《そのようですね。
 神速と言いましたか?
 それを発動させたようです》

「まるで、黒い疾風……」

私はそんな事を呟いていました。
神速自体は先程も見ていたのですが、私は彼の動きを完全には把握することが出来ません。
それに魔力が上乗せされた神速は、もはや一種の突撃魔法のような破壊力を伴っていました。

「生身と魔力の相乗効果がここまでとは……」

そう、先程の黒い疾風は恭也君の能力とサイフィスの魔力の相乗効果が生み出したもの。
実際、身体能力だけでもAAAクラスを叩き出していた恭也君だからこそ出来たもの。
だけど……

《身体への負担は相当なものだと判断できます》

「うん、そうだね……」

そう言いながら、私は過去を思い出していました。
魔法に出会ったときから事故に遭った時まで……
私自身、魔法の知識があまり無く身体に負担がかかっている事さえ知らなかった。
そして、自身の限界以上を引き出すエクセリオンモードを何も知らずに多用していた私。
その事を知らずに無理に無理を重ねた結果、一瞬の判断ミスで大怪我。
一時は歩行すら無理だと言われて絶望さえしていました。
だから、恭也君の魔法効果を得た神速を見たとき不安になりました。
恭也君が私と同じ末路に行かないかと……

《……マスター、貴方自身は大丈夫ですか?》

「えっ?
 私は平気だよ」

レイジングハートは今でもあの時の事件を気にしています。
ですが、あの事故の後の私はというと、以前に比べれば自分の実力を把握していますし体調も把握しています。
……たまに無茶はしますが。

「ここ最近はエクセリオンモードを使用することはなかったし、あの時と比べても身体は充実しているよ」

《ですが、貴方の身体は……》

レイジングハートは私の身体の事を正確に把握しています。
二度目が無いことを……

「大丈夫だよ。
 確かに今日は二度もエクセリオンモードを使用しているけど、今日一日で崩壊するようなやわな身体じゃないよ。
 あの後かなり鍛えたし……」

《そういえば、運動嫌いな貴方が目の色変えてやってましたね》

「むぅ」

そう、あの事故の原因は負担を溜めていた事が一番の原因ですが、私自身体力が無かったのも原因です。
あの時、しっかりと身体を作っていけば防げた可能性もあった。
その事もあって、今でも運動は苦手ではありますが必要最低限な運動はやるようにしています。

「それに、今はサイフィスから魔力を借りている分、前と違って魔力の消費が少ないからね」

《そうですね》

だから大丈夫。
そう考えながら4つ目の魔力増幅装置ブースターを破壊。
残り4つ。
そして、魔力増幅装置ブースターが破壊された影響かバリアの強度も減少。
今ならまとめて潰せる。
そう考えた私は、4つ目の魔力増幅装置ブースターの跡から一旦離脱し、ヴォルクルスの死角に回ります。

「レイジングハート、エクセリオンバスター・フォースバースト、マルチロック!!」

《イエス、マスター》

私の掛け声と共にレイジングハートの先端に魔力の塊が4つ精製されます。
ヴォルクルスが妨害しようと魔弾を発射しますが、直撃コースではないのであえて動かずにいます。
その為、何発かはバリアジャケットをかすっていったのですが、致命傷になる程のダメージにはなりません。
それぞれの塊に魔力が凝縮され臨界点に到達した時、私は解放させます。

「エクセリオンバスター・フォースバースト、シュート!!」

私の掛け声と共に、解放された魔力の塊たちはそれぞれの目標にめがけて一直線に進みます。
先程に比べ力を失ったバリアを容易く突破し、それぞれの魔力増幅装置ブースターに直撃。
魔力増幅装置ブースターを失ったヴォルクルスは左下半身を崩壊していきました。
それと同時に、恭也君のほうでも全て破壊できたようで、ヴォルクルスの下半身は完全に崩壊しました。
崩壊を確認した所で恭也君と合流するために移動を開始。
ヴォルクルスのコアが見える所で待機します。
遅れて恭也君も到着し姿を見たのですが、かなり激戦みたいで彼のバリアジャケットがかなりボロボロでした。
もっとも、私の方のバリアジャケットもボロボロなんですけど。

「恭也君、大丈夫?」

「……後一戦するぐらいの体力ならまだある」

恭也君の答えを聞いてもかなりの負担がかかっている事は想像できます。
魔導師として覚醒し、初めての戦闘を行なった私でもかなり疲労しました。
ですが、恭也君の場合、私の初めての戦闘とは比べ物にならないぐらいハードな内容。
それで負担しなかったら明らかに化け物です。

「だが、このチャンスを逃すわけにはいかない」

「うん、そうだね」

だけど、恭也君の瞳に疲れは見えません。
そして、この状況を逃すわけにも……

魔力増幅装置ブースターを失ったヴォルクルスの攻撃は、照準が定まっていないな」

「うん。
 本能のままに撃っている感じだね」

「そして下半身が完全に崩壊した今、動くすべも無い」

「うん」

恭也君の状況把握に私も同意します。
そして、その状況は私の最強魔法-スターライト・ブレイカー-が使用可能。
前回では使用することが出来なかったスターライト・ブレイカーですが、魔力増幅装置ブースターを失った今ならコアごと撃ち抜く事が出来る!

《むっ》

「どうした、サイフィス」

突然サイフィスが反応をしめしそれに気づいた恭也君が問います。

《あやつ、コアが二つあるぞ》

「えっ!?」

ヴォルクルスが合体していくのを私たちがなすすべも無く見ていた時には、コアは吸収されていたはずなんですが……

《時間差で再生させたか……
 分離されるとまずい》

「分離もできるのか?」

確かにアレが合体と言うのなら、分離も可能なんでしょうが……
流石に想像したくないです。

「コアの位置は?」

《目の前に見えているコアの真後ろだ》

それなら直撃コース。
もし完全に破壊できなくても恭也君にフォローしてもらえれば問題ない。

「恭也君、私がスターライト・ブレイカーを放つ!
 もし、破壊しきれなかったら、フォローをお願い!」

「了解した、まかせろ」

恭也君の力強い返事を受けた私は、スターライト・ブレイカーを使用するために詠唱に入ります。
恭也君は、私のちょうど正面の下側で待機。
不意にヴォルクルスから、魔弾が発射され私たちの方へ向かってきます。
ですが、その魔弾が届く前に恭也君が魔力を混めた飛針で魔弾を迎撃してくれます。

「お前の準備が完了するまで攻撃を通すつもりはない。
 だから心配せずに集中しろ」

「うん」

恭也君の不器用なやさしさに感謝しながら、私は臨界点まで魔力を凝縮します。
レイジングハートに集まる大量の魔力。
私は、その魔力を無駄にすることなく凝縮を続けます。
そして、集まった魔力が臨界点を突破した時、私はその魔力を解放させました。

「スターライト・ブレイカー!!」

私の叫びを乗せた一筋の閃光は、ヴォルクルスのコアに向けて一直線に突き進みます。
邪魔するものを飲み込んで、コアだけをめがけて……



恭也's View

なのはから放たれた最強の魔法……
スターライト・ブレイカー。
その一撃は周りのものを巻き込んで、コアだけを目指して直進した。
一筋の閃光が戦場を彩る。
そしてコアに直撃する直前、コアからバリアが展開された。
だが、そのバリアはなすすべなく破壊され閃光は突き進み、コアを捉えた。
その衝撃でコアの周りが爆発を起こし、噴煙が舞い散る。

《主よ、アカシックバスターの使用を》

「了解した」

サイフィスからの進言に、もう一つのコアが無事だと確信した俺は、融合状態で使用可能な魔法……
アカシックバスターの準備に入る。

《時の狭間に飛翔する霊鳥……
 風の精霊王・サイフィスの名において具現化せん》

サイフィスの詠唱が俺の頭に響く時、俺の眼前には魔法陣が展開される。
青白く輝く円の中に六芒星が描かれる。
そして、その魔法陣が描き終わったとき俺は両手に持った二刀を魔法陣の中心に突き刺す。

「アカシック、バスター!!」

俺の叫びと共に魔法陣の中心から霊鳥は出現した。
現れた霊鳥は、スターライト・ブレイカーの閃光を追うようにコアをめがけて飛翔する。
だが、現在の俺の状態だとアカシックバスターだけでコアを破壊することは無理なのは確実。
なので、俺は本日最後の神速を使用するために霊鳥の動きを目で追いながらタイミングを計っていた。
そして、具現化した霊鳥はコアが発生させるバリアを食いちぎりコアに直撃する。
再び起きる爆発と噴煙。

「サイフィス!」

《了解した、主》

俺はこのチャンスを逃すことなく神速を発動した。
モノクロの世界が構築される。
その先に見える、禍々しく白く輝く場所。
その場所を見つけた俺は、一気に駆け抜ける。
神速の影響で俺の周囲に旋風が発生する。
旋風は俺を護るように、俺を狙っていたヴォルクルスの魔弾を撃墜していく。
そして、モノクロの世界が終焉を迎えた時、俺はボロボロになったコアの目の前に居た。

「アストラルヴァイン」

俺の愛刀-八景-に魔力を上乗せする。

「御神流・奥義乃陸《薙旋》」

俺がもっとも得意とする、小太刀二刀による4連抜刀。
その一つ一つの太刀筋が全てコアを捉える。
そして最後の一太刀が決まったとき、コアは消滅した。
二つのコアが消滅した時、ヴォルクルスにも異変が起き光の粒子となって消えていった。
なのはが俺の側にやってくる。

「終わったね」

「今回はだがな」

そう、今回の戦いは新たな戦いの始まりでしかない。
だが今は、勝利の余韻に酔うとする。
俺となのはは無言で地上に降りた。
そして、俺となのははバリアジャケットを解除する。
ヴォルクルスによって発生していた広域結界も既に解かれている。
だが、町の被害は甚大であった。

「ビルにかなり被害が出てるね」

「そうだな。
 駅の方はあまり支障がないが、しばらくは交通規制がかかるな」

運がよいことに、人々が関わるショッピングセンターや商店街、駅前の被害はあまり大きくない。
だが、駅周辺に建てられていた高層ビル群は解体しないことにはどうしようも無い状況だった。
不意に俺の携帯が鳴る。
美由希からだった。

『もしもし、恭ちゃん?』

「あぁ、俺だ。
 どうした、美由希?」

『どうしたじゃないよ、恭ちゃん。
 今まで全然繋がらなかったんだから!!』

時計を見る。
夜中の1時を過ぎた辺りだ。
俺たちが家を出たのは9時過ぎだったから、かれこれ4時間ぶっ続けで戦っていたわけだ。

「……それは済まなかった。
 だが、俺も、菜乃葉も無事だ。
 心配するな」

『本当に心配ないんだね?』

そう聞いてくる美由希に俺は無愛想に答える。

「お前のほうこそどうなんだ?
 神咲さんに迷惑はかけてないだろうな?」

『こっちは大丈夫だよ。
 それと、那美さんから伝言。
 明日おまじないしにいきますだって』

「むっ、了解した」

ふむ、どうやら神咲さんにも心配かけたって事か。
まぁ、都合がいいし神咲さんにも菜乃葉を紹介しよう。

『じゃっ、後はリスティさんにも連絡入れといてね。
 流石に疲れたから私、寝るから』

「ああ、了解した」

そういって美由希は携帯を切った。
俺は続いてリスティさんに連絡を入れる。

「もしもし、リスティさんですか?」

『ハイ、恭也。
 どうやらそっちも終わったみたいだね』

「ええ、時間がかかってしまいましたが……」

『あぁ、気にすることないよ。
 外からでも駅一体に球体が取り込んでいたのを見えたから』

どうやら、あの結界は外からでも目視できたようだな。
だが、流石に遅いので詳しい話は後日にする。

「本当は報告をしなければいけないんですが……」

『あ〜、流石に遅いからね。
 明日、ボクがそちらに窺うからその時に聞かせてくれ』

「了解。
 じゃあ、おやすみなさい」

『ああ、おやすみ』

そういって俺は携帯を切った。

「ふっ〜」

「お疲れ様」

俺が一息つくと、なのはが微笑んできた。

「ありがとね、私の不始末の手伝いをさせちゃって……」

「気にする……」

気にするなといいかけて俺の意識は飛び、俺はなのはに向かって倒れた。



なのは's View

恭也君がいきなり倒れてしまいました。
驚いた私はなんとか恭也君を抱えます。

「きょっ、恭也君!?」

私が呼んでも返事がありません。
慌てて恭也君の顔を覗いたのですが、特に問題はありません。

「すー、すー」

というより、リズムよく寝息をたてています。
呼吸も整っているようですし、問題は無いようです。

《お主よ、心配することはない。
 主は眠っていた魔力を覚醒させた影響でバテているだけだ》

恭也君の首にかかっているペンダントが私に話してきました。
よく見ると左右対称になった紋章のような形。
これがサイフィスの基本形態のようです。

「あ〜、心配したぁ〜」

安堵した私は力が抜け地面に座ります。
恭也君が起きないように支えながら。

《まぁ、四・五時間眠れば主は回復するだろう。
 基礎体力は平均よりも遥かに上のようだしな》

「そうですか」

どうやら恭也君は本当に心配いらないようです。
確かに、目覚めた魔力をいきなりつかったらショックを起こす事は多々あります。
実際にはやてちゃんがその症状を起こしましたから。
そんな事を考えながら恭也君の寝顔を見てみました。

「くすっ、恭也君の寝顔って結構可愛いね」

安心して眠っている恭也君があまりにも可笑しくて私は笑っていました。
何時もの顔とは明らかに違う顔。
恭也君に見惚れていたら、不意にサイフィスが話しかけてきました。

《お主、先程のデバイスのモードの事なんだがな》

「はい、なんでしょう?」

《お主の身体に相当負担をかけるようじゃな》

「えっ、なんでそんな事がわかるんですか?」

あっさりエクセリオンモードの欠点を見抜いたサイフィス。
その眼力に私はただ驚くばかり。

《何、先程お主に魔力供給した時に分かったことじゃ》

「あっ、あれで分かっちゃったんですか」

《うむ》

どうやらサイフィスはただのデバイスだけじゃ無いようです。
驚いている私を無視し、サイフィスは続けます。

《まぁ、主ほどではないがお主のことも気に入ったんでな。
 後は、サポート人格に説明を任せる。
 我も結構疲れたのでな》

そういってサイフィスが沈黙し、恭也君の方に黒と白の猫が現れました。

「はじめましてにゃんだな」

「あにゃた、にゃんてゆうの」

え〜と、白猫、黒猫共に普通に話してきます。
先程サイフィスが言っていたサポート人格なのでしょうか?

「え〜と、御神菜乃葉……
 じゃなくって、高町なのはだよ」

私はあえて本名を名乗りました。

「にゃのはか、いいにゃまえだにゃ」

白猫が私の名前を褒めてくれます。
褒めてくれるのは良いんですが、明らかに誤字っています。
まぁ、猫たちだからしょうがないかも。

「あたしたちのにゃまえをにゃのらにゃかいけにゃいんだけど……」

「おいらたちは、サイフィスの主によっていろいろつけられるからにゃ、今はにゃのれにゃいにゃ」

そういって謝ってくる白猫と黒猫。
ちょっと可愛いかも。

「じゃあ、暫定的に白ちゃんと黒ちゃんでいいのかな」

「まぁしょうがにゃいにゃ」

「区別しにゃきゃにゃらにゃいし」

そういって頷く黒ちゃんと白ちゃん。

「で、さっそく本題にゃんだにゃ」

「うん」

「サイフィスがにゃのはの事も気にいったんで、にゃのはのデバイスに少し細工をほどこしたんだにゃ」

「えっ、何時の間に!?」

何時の間にレイジングハートに細工を施したのだろうか。
疑問に思っていると、黒ちゃんが教えてくれました。

「にゃのはのデバイス、レイジングハートも了承得た上でのことにゃんだが、先程サイフィスの魔力供給を終了した時にだにゃ」

「魔力変換システムの効率化とストッパーを設定したんだにゃ」

《彼らのおかげで、マスターの身体にかかる負担は軽減されます》

レイジングハート、ずっと気にしてたんだ。
私の相棒の心遣いに感謝します。

「ありがとうレイジングハート」

《いえ、例は彼らに言ってください。
 彼らの知識が無ければそもそも設定出来ませんでしたので》

「ううん、そんなことないよ。
 ずっと私の身体を心配してくれたんでしょ」

《マスター》

私はそういってレイジングハートをなでます。
不意に夜風が吹き、私の髪をなびかせます。
とても気持ちいい風が……

「でも、このまま余韻に浸っているわけにはいかないよね」

「流石ににゃ〜、このままこの場所に留まるのはまずいにゃ」

「だからといって、バテてる恭也を起こすわけにもいかにゃいにゃ」

「……しょうがない、もうひと頑張りしますか。
 レイジングハート、頼める?」

「了解です、マスター」

そういって私はバリアジャケットをまとい、恭也君を抱えて夜空を飛びます。
この世界の高町家に向かって。
本当は空からの景色を眺めるのが好きなんですが、今回はお預けで次回の楽しみに取っておきます。
数分のうちに高町家が見えたので着地し、バリアジャケットを解除して恭也君を部屋に運びました。
そして、恭也君の寝床を準備し終え寝かせた所で、私も疲労に襲われてそのままダウン。
この出来事が朝一で大騒ぎになるとは、この時露にも思っていませんでした。

to be continued




後書き

どうも猫神TOMです。

第4話です。
戦闘描写にかなり苦戦しました。
サイバスターもといサイフィスと融合した恭也はかなり強いです……
が、まだ完全に制御は出来ていない状況です。
まぁ、ようやく一段落ついた所で、次回はほのぼの一服編でもやろうかなぁと。

後、菜乃葉もといなのは(リリカル)なんですが、StS9話で感動しまして……
なのは修復フラグつ〜か、強化フラグがこの話で立ってしまいました(爆)

もともと、恭也の属性が「風」、なのはの属性が「空」だったんですが……
原作だと「空」方が上位だったり(爆死)

ちなみにサイフィスのサポート人格である猫たちはアレです。
日常編でバリバリ活躍する予定なんで。

では。



何とか無事に戦闘は乗り切れたが。
美姫 「まだ本命とも言うべきオリジナルが残っているのよね」
それでも、とりあえずは日常へと。
いやいや、次回がかなり楽しみなんだが。
美姫 「今回の終わり方は確かに気になるわよね」
きっと大騒動になるはず。
どうなるのかな〜。
美姫 「次回が待ち遠しいわね」
うんうん。次回も楽しみにしてます。
美姫 「待ってますね〜」



▲頂きものの部屋へ

▲SSのトップへ



▲Home          ▲戻る