何時か重なり合う未来(あした)へ  異伝



   MUV−LUV alternative イン・ザ・クロスワールド





                4話

12月1日


横浜基地戦術機シミュレーター区画シミュレーターデッキ・コントロールルーム




「……練度は上がってきているようだね」
画面上では207隊と臨時教官の2名、8機の戦術機が仮想空間内で大隊規模のBETA群と交戦中だ。
「はい、参加して戴いた藤木中佐と御神少佐の指導が良い起爆剤となってるようです」
まりもは戦域管制をしながら裕一に答える。
{……メビウス1から207Bへ。左翼の突撃級要撃級46体その他もろもろ、端から喰うぞ!付いて来い!}
{フェンサー1より207Aへ私たちは右翼だ。遅れるな!}
挟撃する形で進軍する8機。次々とBETAの存在を表す光点が消えていく。
「……実戦を経験させてあげられる機会があればいいんだが、そんな巧い話はないよな……」
(あと5日か……)
頬を人差し指で掻きながら呟く裕一。
「……閣下」
「なんだい、神宮司中尉?」
「207隊は私の教えた訓練兵の中でも最高の技量を持つ者達です。必ず生き残って結果を残し続けると小官は確信しております」
「僕もそう思いたいけどね。でも戦場は意外な事が度々起こるのは中尉も解っているはずだ」
「それでも……私は信じたいです。……彼女達を」



20:22
横浜基地管理棟1F通路



コツコツコツコツコツ

夜の管理棟の廊下。床を叩く靴音だけが響く。
(流石に疲れた……後は部屋に帰って書類の整理をして寝るだけ……)
考えに耽りながら歩を進める。
(素体の準備は万全。施術者も揃えた……。アフターケアの方もOK……)
外を見ると女性兵がグランドでランニングをしている。
「……あれは御剣冥夜か?」
足を止めて彼女を見る。
(がんばるなぁ……)
冥夜を見ていると視線と僅かに殺気を後ろから感じる。
「……誰だ?用があるなら早々に済ませたらどうだね。隠れてこそこそするのは良い趣味じゃないな」
そう言い放ち振り向く。すると鋭い表情で物陰から現れる赤い衣装…帝国斯衛軍制服を纏った女性士官。
「……」
「だんまりかね?帝を始め貴人の身を守る責を負った近衛の兵が、所属が違うとはいえ階級が上の人間に礼を取らないのは帝に恥をかかせる事になるぞ」
沈黙をしていた彼女は慌てて敬礼して敬礼し申告する。
「失礼しました、私は日本帝国城内省斯衛軍第19独立警護小隊隊長、月詠真那中尉であります」
「国連軍独立第一特務戦術機甲装備実験団司令、裕一・イサレリアス。……少将だ。で、用向きは?」
答礼して尋ねる。
「それは……」
「……護衛対象の御剣訓練兵に関してかね?」
「……はい」
「彼女の身の上は重々承知している。貴官には月並みだが任務ご苦労としか言えないな」
「!?……はい……」
「……貴官には申し訳ないがこっちも任務でな、彼女を特別扱いできん」
「……」
「他になにかあるかね?」
「……いえ、ありません」
互いに視線による腹の探り合いが暫く続く。
「……君の懸念は気宇だよ。すでに上とは話が付いているし」
緊張を先に解いたのは裕一だった。
「……どう言うことですか?」
警戒を解かない真那。
「帝……仁文陛下に極秘裏に拝謁言上して日本国内における全面協力の密勅を戴いた、と言う訳だ」
「な、なんと!?」
驚愕する真那。
懐から油紙に丁寧に包まれた書状を取り出し金箔押の十六弁八重表菊紋が入った面を真那に向ける。
「……この書状の意味、中尉なら解るはず」
「……はい」
懐に書状を戻す。
「僕は戻るけど……ふむ、貴官に一週間以内に起き得る事件のヒントをあげよう」
顎に手を当て真那を見る。
「え……?」
「……帝都守備軍の有志で結成された戦略研究会に気を付けなさい。後は自分で答えを探して行動するんだ」
「どうしてそれを?」
真那に背を向け歩く。
「僕の手は大きいようで実は小さいんだ。だからいろんな人の助けがいる。それだけさ……」



12月3日01:27

横浜基地軍港区画 X−00係留埠頭 特務艦『まほろば』メインブリッジ


「J−014計画に基づき本艦は横浜基地を隠密出航、作戦海域に向かう。地上要員を除くクルーはコンディション・オレンジ(準一級警戒配備)。出航準備完了次第出航する」
ヴァンデルノートは艦内放送で告げる。
『まほろば』各所では静かに出港に向けて動き出す。
「……恭也達大丈夫かな?」
「……クリステラ君、心配かね?」
ヴァンデルノートは近くのオペレーター席に座るブルネットの若い女性士官、フィアッセに声をかける。
「はい」
心なしか表情が沈んでる。
「まあまあ、フィー。恭也君達やったら大丈夫やって。そんな顔してたらあかんよ?」
「ゆうひ……。ありがと」
「まあ、気持ちわからんでもないが信じる事も大事だぞ」
「艦長……有り難う御座います」
ヴァンデルノートと同僚兼親友の椎名ゆうひの励ましに感謝するフィアッセ。
「……まあ、美由希ちゃんも忍ちゃんもおるし絶対大丈夫や〜」
「はぅうー」
「なんやー?……ははーん、忍ちゃんに恭也君を独り占めされるんがいやなんやろー

「あうー、やっぱり解る?」
「あったりまえや。フィアッセとの付き合い長いからな。まるわかりや」
ゆうひの指摘に赤面するフィアッセ。
「おいおい、そこまでにしてくれ。仕事だ仕事」
長引きそうな気配なので仕事に集中させようとするヴァンデルノート。
「「すいませーん」」
「コマンダー・オン・ザ・ブリッジ!!」
ブリッジ入り口の警備兵が叫ぶように告げ、手隙の者達が立ち上がり敬礼すると同時に裕一がさつきを伴って入ってくる。
「ご苦労。仕事に戻ってくれ」
裕一は艦長席の後ろに据えられた司令官席に座る。さつきはその横の席に座る。
「司令官、現在出航準備が進行中です。暫く掛かるでしょう」
「うん、みんな優秀だからそこは心配していないよ」
「そうですな」
二人は笑う。
「……時に陛下」
「なんだい?」
真剣な顔のヴァンデルノートにまたかと言うような顔をする裕一。
「やはりお戻りになって戴けませんか?」
「公爵……ここまで来てそれを言うのかい?」
「それが老臣としての努めでありますがゆえ」
「……答えが解っているのになぁ」
困り果てる裕一。
「それでもです」
「国元が心配なのは判るが」
「それも在りますが御身と王妃様の事が第一です。何か在れば国が立ち行かなくなる
一因となります」
「そう言う事に為らないように布石は打ってある」
「公爵殿、大丈夫ですよ」
「王妃様……しかしですな」
さつきの助け舟に焦るヴァンデルノート。
「ここまで来たんだ朕は最後までやる」
「……ああ、もう。判りました。ええ、判りましたとも!私も腹を括りました。毒喰わらば皿までです!最後まで付き合いますぞ!」
「そうか、それは重畳」
「今後ともよしなに、公爵殿」
諦め顔のヴァンデルノート。対象的に笑顔の夫婦。
「……艦長、出航準備完了しました」
ゆうひが笑いを堪えながら報告する
「……各機関出力10%、接舷・接岸アーム格納」
「了解!」
憮然とした顔で指示を出す。
艦に僅かながらも振動が走りアームが格納される。
「アーム格納完了」
「進路クリア!」
報告を聞き瞑目するヴァンデルノート。少しの間を置いて口を開く。
「……両舷微速前進、『まほろば』発進する!」






12月5日 03:59

日本帝国帝都霞ヶ関


暗闇に紛れて完全武装の兵士達が蠢く。
分隊ごとに事前に打ち合わされた場所に待機して銃を点検し初弾を装填する。
銃剣を鞘から抜き銃口に取り付ける。
兵士達は皆緊張で顔をこわばらせ銃を握り締め唾を飲み込む。
指揮官が腕時計を凝視している……。
「……そろそろだ」
小声で指揮官は部下に注意を促す。
「8、7、6……」
緊張が極限まで高まる。
「……3、2、1……状況開始!!」

後世に語られし『12・5』事件の始まりである。



04:30

下田沖9km 水深120M

特務艦『まほろば』CIC

「日本放送協会、占拠!」
「海軍庁守備隊、26%の損害!」
「陸軍庁、今陥落しました!」
「国会議事堂、占拠されました!」
「……総理大臣公邸占拠。榊総理大臣拘束された模様!」
「警察庁・警視庁、庁舎内において激しい抵抗。」
情報収集に努め、声を荒げるオペレーター達。
「……史実通り、始まったか……。相模湾のアメリカ艦隊はどうなっている?」
「現在、機動部隊を中核に陣形を構成中。その後方に揚陸部隊を配置しつつあり」
裕一の問いに答えるゆうひ。
「……現状を秘匿回線で横浜の香月博士に送っておけ」
「了解!」
「……総員起し、コンディション・レッド。EMCM(Electronic Magic Counter Measures 魔術的電子戦対策)即時展開!陸戦隊は即応待機。ロケットボーン担当整備員はカーゴバードのチェックを念入りにしろ」
「了解」



07:00
横浜基地 PX大食堂


「……ねえ、恭ちゃん。これからどうなるのかな?」
強化服の上にロングジャケットを着た、まだあどけなさが残る女性少尉……高町美由希が朝定食を突付きながら目の前で同じ朝定食を頬張る義理の兄であり従兄でもある高町恭也に尋ねる。
「……クーデター軍との戦闘になるだろうな」
口の中のものを飲み込んで美由希に答える恭也。
「……わからないよ……あの人たちがなんでこんな事をしたのか」
美由希は悲しい顔で呟く。
「……俺は彼らではないから解らんが只一つだけ言えるのは動機がどう有れ彼らの行動はテロリストと変わらん。人を傷つけ、殺し、自分の主張を通すやり方は……許せるものではない」
恭也は定食を平らげ美由希にそう語る。
「……迷うなよ、美由希……」
「……うん」
短く返事して定食を食べる美由希。
程なくして忍が定食を乗せたトレーをもって恭也の横に座る。
「おはよう、恭也、美由希ちゃん」
「おはようございます、忍さん」
「忍、おはよう」
挨拶すると忍は定食に手を付け、美由希も食べる事に専念する。
一通り食べ終わったところで忍が話し出す。
「あのね恭也。さっき香月博士に会ってさ、『あんた達は207隊に付いててくれ』って」
「そうか」
恭也は頷く。
「どうやら、後方の重要個所に回すみたいだよ。……夕呼さんの事だから何か在ると思ってるんだけどね」
「ふむ、……裕一さんから連絡は?」
「お兄さん達は下田沖で待機しているって」
「忍さん、ノエルさんは?」
美由希が自分達と一緒に横浜に残っているノエル……ノエル・綺堂・エーアリッヒカイト少尉の事を尋ねる。
「ハンガーで私達の機体の装備のチェックよ。恭也と美由希ちゃんは突撃前衛F装備、ノエルが強襲掃討装備、私が打撃支援装備ですでに換装終了しているわ。。砲弾、予備砲弾、衛士用装備は実戦仕様で搭載済み。後でチェックしといてね」
「わかった」
「はい」
恭也が無言で忍にお茶の入ったコップを渡すと忍は「ありがと」、と受け取って口をつける。
「所でさ……前々から思ってたんだけど、207の珠瀬壬姫って声がなのはちゃんにそっくりだよね」
「そうなんですか忍さん?」
「初めて聞いた時にびっくりしたもん」
「へー、そうなんだ」
恭也は首を傾け
「……そうか?微妙に違うと思うんだが」
「それは家族だから解るんだよ恭也。珠瀬の顔見ないで聞けば絶対区別つかないよー」
「それはちょっと楽しみかも」


18:25
横浜基地 第5戦術機搭乗員ブリーフィングル−ム

「敬礼!」
まりもの合図で全員が敬礼する。
「……これよりブリーフィングを始める」
この場で上位で指揮権を形式的に持つ恭也がブリーフィングの開始を宣言する。
「神宮司中尉、状況報告を」
「はっ。……現状を伝える。国連軍の軍事的支援を、仙台臨時政府が正式に受け入れた」
冥夜の顔がこわばる。
「珠瀬事務次官と臨時政府の全権特使との会談の結果だ。約十分前に公式発表された」
壬姫は何かを耐えている。
「臨時政府が国連軍の提案の受け入れに際し、絶対条件としているのは将軍殿下の安全と保護だ。これは今後展開される全作戦の最優先事項になる。クーデター軍は仙台臨時政府の決定を殿下の御心を蔑ろにする逆賊と国連に荷担する売国奴の共謀だと激しく非難している」
武は言葉に表さないもののクーデター軍の言葉と一部の国連上層のやり方に憤りを覚えたようだ。
「相模湾に展開中だった米軍第7艦隊はすでに東京湾に向け航行中だ。当横浜基地に先行上陸している米軍第132戦術機甲部隊は態勢が整い次第帝都に向け出撃する手筈になっている。当基地からも第1戦術機甲大隊、第5航空支援大隊が既に出撃している。現在、第4、第5戦術機甲大隊、第2航空支援大隊の出撃準備が進行中だ。また第三戦術機甲大隊が帝国軍部隊の抽出で手薄になった第二次防衛線の支援部隊として出撃準備中である。それ以外の部隊は敵……クーデター軍の後方攪乱を警戒し、戦闘態勢を維持したまま待機する事となった」
207隊の面々は待機と聞いて一様に安堵するが、しかし……
「尚、第3戦術機甲大隊の出撃予定時刻は1940。これに合わせ我が隊も出撃、後方警備任務に当たる」
「−!」
207隊の面々は驚く。
「任務の重要度、戦力バランス等様々な要件を考慮した結果、我が207訓練小隊も出撃せざるを得ない状況だと判断された」
一同を見回すまりも。
「任務内容は芦ノ湖にある塔ヶ島城の警備。作戦区域は芦ノ湖南東岸一帯とする」
まりもは恭也に目配せすると身を二歩ばかり左に寄せる。
「この任務に当たっては臨時で中隊を編成し俺が指揮を取る。編成内容は第一特戦機装実臨時分遣隊4機と207隊7機、計11機の戦術機で編成。後方支援に一個輸送中隊と機械化偵察小隊が随伴する。加えて当基地駐留の帝国斯衛軍第19独立警備小隊も随伴する」
恭也は全員の顔を個々に見る。
「諸君にとって初めて見る顔があるので少しだけ紹介しよう。月村大尉の横にいるのがノエル・綺堂・エーアッリッヒカイト少尉。そのまた横に、高町美由希少尉…俺の妹だ。宜しく頼む」
手で二人を指し紹介する。
「俺たちはこれから事務手続き等で中座する。神宮司中尉、後は頼んだ」
「了解しました」
恭也達はブリーフィングルームを出て行く。
「さて、貴様達に注意しておくことがある。……我々は米軍が進駐している横浜基地所属の部隊だ。その上我々は日本人だ。余計に帝国軍の反感を買う可能性がある。作戦区域では厚木基地の帝国軍部隊が周囲を固める事になっている。殿下を取り巻く状況が不透明な今帝国軍将兵の苛立ちは相当なものになっているはずだ。作戦行動中に何か言われるかも知れんが、絶対に挑発には乗るなよ」
「教官、質問があります」
「なんだ、榊。言ってみろ」
千鶴が手を上げまりもが許可する。
「……実際、帝国軍に武力による挑発や攻撃が遭った場合、防衛行動は認められるのでしょうか?この作戦は国連と臨時政府が決定したもので殿下の御裁可を戴いた物ではありません。帝国軍が我々を「侵略者」とみなす危険性があります」
千鶴は作戦行動で発生する危険性について質問する。
「答えはイエス……自衛行動は認められる。米軍のゴリ押しがあったとは言え、これは正式な手続きを踏んだ国連軍の作戦だ。それに手を出したらどうなるか簡単に想像がつくはずだ。同じ日本人として彼らの理性を信じよう。しかし、油断は禁物だ」
まりもは千鶴の質問に答えつつ釘を刺す。
「……引き続き、移動経路を説明する。1940、87式自走整備支援担架にて国道十六号跡を北上、東名高速道跡沿いを移動、旧海老名市まで前進。海老名パーキングエリア跡にて帝国軍厚木基地からの補給部隊と合流。補給が終了次第、小田原厚木道路跡沿いに旧小田原市まで前進。小田原西インターチェンジ跡を補給中継基地とし、全戦術機起動。出撃準備が整い次第全機で箱根新道跡を北上。芦ノ湖塔ヶ島城に展開、布陣する」
一旦言葉を切るまりも。
「最後に、本作戦は実戦が想定されている以上、私が戦術機で小隊の直接指揮を執る。コールナンバーは00だ。小隊を二分する。小隊運用上変則的だがやむを得ないだろう。編成はAが榊、綾峰、鎧衣で私が直接指揮を執る。Bは御剣を分隊長とし、珠瀬、白銀とする。各自30分以内に火器管制装置の調整を済ませ、ハンガー前に集合。それと以外に長丁場になるかもしれん、そのつもりで各自の個人装備に余裕をもたせておけ。……以上だ。解散!」
「敬礼!!」







22:05

静岡県芦ノ湖塔ヶ島半島付近


「フェンサー2より20700、1901」
恭也が秘匿回線で真那とまりもの2人に話す。
「先行した偵察部隊の報告によると作戦区域に敵影無し。予定通り屏風山を越え、旧関所まで前進。塔ヶ島半島を確保の後207隊、19隊は所定の位置にて哨戒任務に当たれ。ファルケン隊は塔ヶ島城三の丸馬周りに本部とデポを設営する。尚、現時刻を持って戦域管制は本隊特務艦『まほろば』の主任戦闘管制官、フィアッセ・クリステラ少佐が担当する。コールサインはまほろばCCPO」
[大尉、特務艦『まほろば』とは?]
真那が『まほろば』について尋ねる。
「本隊作戦母艦でスペックは公開できない。しかし現状で我々を支援できるのは『まほろば』だけだ。現在『まほろば』は下田沖で待機中」
[……了解した]
「以上だ」
恭也は通信を切り、真那とまりもは自分達の小隊に情報を回していく。
短く電子音が鳴る。『まほろば』から恭也達ファルケン隊だけに回線が繋がる。
[『まほろば』CCPOよりファルケン隊各機]
「こちらファルケン隊、フェンサー2。なにか?」
[恭也、そっちはどう?]
フィアッセは素の口調で恭也に尋ねる。
「静かなものだ。後、1時間で塔ヶ島に着く。そっちはどうだ?」
恭也は答え返す。
[こっちは恭也達の支援の準備で大忙しだよ]
「そうか。新しい情報はあるか、フィアッセ」
[クーデター軍は帝国軍厚木基地を攻撃中。陥落は時間の問題だよ。それに付随して
国連軍横浜基地、帝国軍横須賀鎮守府はデフコン1に移行、臨戦態勢。で、国連軍米軍帝国軍の帝都奪還部隊は千葉埼玉群馬県境と東京湾で待機中だよ]
「解った」
[フィアッセ、塔ヶ島戦区近隣の戦術情報で最新の情報はある?]
忍が新しい情報を求める。
[富士の戦術機甲教導団が即応態勢で待機中以外は判明していないよ]
[ありがとう]
[幾つか伝言を預かってるよ]
「誰からだ?」
恭也はちょっと驚いた。
[恭也と美由希には美沙斗から、忍とノエルにはさくらと真一郎]
[かあさんから?]
[窮地に追い込まれたら必ず助けに行く。御神の理を忘れず自分達の務めを果たして生きて帰ってきなさい、だって]
「……そうか。美沙斗さんは?」
[藤木中佐達と即応待機中だよ]
「解った」
[……フィアッセ。かあさんに有り難うって伝えてね]
[うん、わかった。ちゃんと伝えておくね]
フィアッセはにこやかに請け負う。
[フィアッセ、さくら達はなんて言ってるのかな?]
忍が尋ねる。
[…えっと。忍には……趣味に走って遊んでは駄目……と、ノエルには忍の御守は大変だけど頑張って、と]
フィアッセが預かった伝言を伝えると忍の表情が固まる。
[……なによそれぇー!!]
「……日頃の行動の差だな」
[あはは、恭ちゃん。それフォローになってないよ]
[自業自得です、忍お嬢様]
[恭也も美由希ちゃんもノエルも酷い〜]
忍は半泣き。
[私から忍に一言あるんだけど?]
[えっ?]
[……抜け駆け禁止だよ]
フィアッセの一言がどどめの一撃となる。
[……四方から楚の歌が聞こえる……]
忍はマッシロだ。
[……ごめん皆。最新情報よ]
フィアッセは真剣な表情で席上のキーボードを操作している。
間を置かずにこの場にいる全機に回線が繋がる。
[まほろばCCPOより横浜第2臨時編成中隊全機へ。最新情報を伝えます]
全員の緊張が高まる。



時間は僅かに遡る



[00より207各機。中隊長からの情報によると作戦区域には敵影無しの事だ]
小隊全員がまりもの説明に耳を傾ける。
(そうだよな。こんな所まで展開するほどクーデター軍も余裕は無いだろ)
[予定通りのコースを踏破し塔ヶ島半島を速やかに確保。小隊各機は所定の位置につけ。それから先ほどより我が中隊の戦域管制は国連軍特務艦『まほろば』のフィアッセ・クリステラ少佐が担当している。座学で習ったと思うがCPからもたらされる情報はしっかりと頭に入れるように。尚、偵察情報は更新毎に各自データリンクにて確認せよ。以上]
[01了解]
[02了解]
[03了解]
[04了解]
[05了解]
「06了解」
小隊内の通信が終わるが回線は生きたまま。
(しかし、基地から出てずっと誰も喋らないな……)
武は自機の吹雪を操りながら仲間の事を考える。
(実戦の緊張……死ぬ可能性が現実を帯び始めたからか?……俺は実際にBETAと戦いこそしなかったが、オルタネイティヴ5発動後の2年間の実戦配備で出撃の緊張感には慣れた。みんなだって初陣の緊張は在ってもその覚悟自体は在るはず……。だけど、BETA相手に命をかける準備は出来てもヒトと殺し合いする覚悟は……)
武は自分にも問い掛ける。俺自身ヤレるのか?と。
しばし考えて答えは是、と。
(……でもこの状況で一番大きいのはやはり皆の親や親族の複雑な立場と関係だろうな。それか複雑すぎてお互い下手に声をかけられないんだろうな……。仕方が無いとはいえ、今は作戦中なんだ……連携が取れなくなるのはまずいし……なによりも……
こんな状況で死んでたまるか!皆生きて帰るんだ!)
操縦桿を握り締める。
(でも、どうやって……うーむ……よし……)
「なあ、箱根って温泉がたくさんあるって知っているか?」
武はたわいも無い話を皆に振るが……返ってこない。
(まりもちゃんにも聞こえているはずだが…何も言われない。小隊の雰囲気を察してのお目こぼしか?……もう少しやるか)
「……皆で入るか、温泉?俺は一向に構わないぜ?」
他から見ればセクハラの台詞を言いつつ脳裏に映る情景……。
(………温泉……元の世界じゃあ、皆で行ったなぁ……たしか…)
[03より06。静かにしなよ。作戦中じゃないか]
03…美琴が呆れた様子で武に私語を止めるよう要求する。
「こちら06.やっと反応してくれたか」
[だめだってば、もう切るよ?」
美琴の通信と入れ違いに通信IDに上位割り込みが入る。
[まほろばCCPOより横浜第2臨時編成中隊全機へ。最新情報を伝えます]
20代前半の美女が真剣な表情で語る。


[先ほど帝都において戦闘が発生]
何人かが表情を歪める。
[情報を纏めると帝都城を包囲していたクーデタ軍の歩兵の一部が斯衛軍部隊に向け発砲。斯衛軍帝都城守備部隊全軍は全力で応戦。クーデター軍首魁、狭霧大尉の戦闘停止声明が出されるものの混乱は収拾出来ていません]
帝都東京の戦術情報が表示される。
[これにより待機中の国連軍横浜第一戦術機甲大隊及びアメリカ太平洋軍第117戦術機甲部隊が品川埠頭に敵前強襲揚陸を敢行、交戦中です。また、帝国軍群馬第2旅団が埼玉県境から、千葉第8師団が千葉県境から、そしてアメリカ太平洋軍第7戦術機甲部隊が幕張から帝都に向け進攻を開始、各地で戦闘が発生しています]
一旦言葉を切るフィアッセ。
[尚、中隊の作戦内容に変更はありません。中隊各機は通信機の回線をオープンで固定、予定に従い任務を続行してください。以上]
[フェンサー2、了解]
[1901、了解]
[20700、了解]


                   続く







               中書きと言う近況報告

どうも、超遅筆ss書きの都です。
いろいろ重なっていますが執筆速度落ちています(T-T)
最たるものは親知らずです(しかもそこに虫歯が……冗談無しに洒落ならん痛さだ)
近くの歯医者で匙投げられて大きい病院の口腔外科で手術待ちです。
治れば書く速度も何とか為るんですが……大変です
次話のアップは本気で未定……(あー、ユウイチとさつき?美姫さんとガチンコで斬り合うのは止めなさいよ。向こうさん、管理人さんのパートナーなんだし。怪我させたら大変なんだよ、俺が。管理人さんに謝らないといけないし、美姫さんに彼氏か旦那さんがいればそっちのほうにも頭下げなきゃ為らないからね。は?彼氏も旦那もいない?ああ、それは大変な失礼を。大丈夫、いつか素敵なヒトが現れますよ?って、あぶね)
後ろの状況が緊迫してきましたのでこれで失礼をば……



ぽつ〜ん。
たった一人の座談会〜。
って、盛り上がらねー! って、一人でも座談会って言うのか?
って言うか、ユウイチたち逃げるんだー!
し、死にたくなかったら逃げる事をお勧めいたします。それはもう、痛切に。
って、今言っても遅いかもしれないけど。
さて、いよいよ始まった12・5事件。
こっちではどんな展開を見せるのか。
次回も目が離せません!
非常に楽しみに続きを待っております。
ではでは。



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