何時か重なり合う未来(あした)へ  異伝



   MUV−LUV alternative イン・ザ・クロスワールド





                三話




11月28日  22:30


横浜基地 地下19階



「香月博士」
裕一が部屋に入ると夕呼は端末の前で一心不乱で作業している。
「……お邪魔みたいですね」
「……何か用?」
「00ユニット義体に関する最終報告と搭載スケジュールの報告書持ってきたんだけど」
「早いわね」
「まあ、急がせましたから」
端末の画面を見ながら裕一の相手をする。
「机の空いている所に置いといて頂戴。後で見るわ」
「決済は明日貰いに来ますよ」
「解ったわ。……そうそう、明日の模擬戦、白銀の頼みで榊と綾峰の機体にXM3を入れるんだけど、そっちでやっといてくれない?」
裕一は暫く考えて、
「朝一に間に合えば良いのかな?」
「それで十分よ、出来るわね?」
「やりましょう」
「模擬戦の後、白銀達をあんたに預けるわ。あんたの所の機体の事もあるしその方が好都合よ。いいわね?」
「いいですよ。ああ、そうそう。新機体ですけど都合8機明日の午後には搬入できる。まず博士直属のAー01部隊に供給したいんだがどうだろう?」
「わかったわ」
承諾して踵を返す裕一。
「ちょっとまちなさい、聞きたい事があるの」
「なんですか?」
「……やっぱりいいわ。明日の朝、格納庫で会いましょう」
「了解」


11月29日

横浜基地戦術機格納庫


裕一は忍とさつき、後もう2人女性を伴って格納庫に入る。
向かう先には夕呼と武、少女二人…榊千鶴と綾峰慧が夕呼の説明を受けていた。
「おはよう、博士」
「はい、おはよう」
裕一が声をかける。
「……!?敬礼!」
場違いの5人の姿を見た千鶴は4人の階級章を見て驚き慌てて敬礼する。武と慧も続いて敬礼する。祐一達は答礼した。
「おはよう諸君」
「紹介するわと言いたい所だけど私の知らない顔がいるから階級順でそっちでしてくれない?」
苦笑する4人。
「いいですよ……私が裕一・イサレリアスだ」
裕一から自己紹介を始める。
「エリザベート・ドロワーテ・フォン・エッツェンシュタインよ」
准将の階級章をつけた淡いピンクが混ざった銀髪の妖艶な美女が微笑む。
「さつき・イサレリアスです」
「月村忍よ」
「忍は新OSの開発の協力者よ」
忍の自己紹介に夕呼が付け加える。千鶴と慧が値踏みするような視線を向ける。
夕呼が手を叩いて全員の注目を集める。
「で、続きなんだけど?」
「……お話は解りましたけど、いきなり新しいOSなんて言われても……」
千鶴が不安を口にする。
「大丈夫よ〜大げさでもなく冗談でもなく乗ればなんとかなる様にしたから」
「そうそう!操縦も前と基本的には変わらないしな」
武が不安を和らげるように言う。
「白銀君、君にとってはそうかもしれないが彼女達は今回が初めてだ。それではフォローしてるとは言えないぞ」
高志が咎める。
「すいません」
「……ホントに使えるの?」
「うわっ……お前チャレンジャーだな?」
慧の呟きに武が呆れる。
「フフ……別に構わないわよ。その落ち着きが驚きに変わる瞬間が面白いんだから…
ねぇ忍?」
「ええ博士、楽しみだわ」
マッドサイエンティストとマッドエンジニアが怪しい笑みを浮かべる。
「…………」
「……綾峰。今、意地でも驚かねーとか思ったろ?」
「……ううん」
慧は僅かに首を振る。
「機体制御用のデータ収集も兼ねてるけど新OSの優位性を実証するためにも勝って頂戴?!」
「そうだ!頼むぞ!」
夕呼と武が発破をかける。
「あのねえ……」
「榊、貴女だって白銀の才能、認めているんでしょ?」
「……はい」
千鶴は渋々肯定する。
「今は白銀にしか出来ない特殊な機動がこのOSによって誰にでも再現できるの。ゆくゆくはこのデータが全ての戦術機に活かされる事になるのよ?」
「え……?」
「……」
スケールの大きさに驚く千鶴と慧
「これを栄誉と思ってもらえないんじゃ、軍人としてはどうかと思うんだけどね?」
「……全人類の代表」
千鶴が呟く。
「……どう?楽しくなってきた?」
不敵に笑う夕呼。
「……いいね」
にやりと笑う慧。
「まあ、普通にやれば勝てるはずだから、楽しむつもりでね……私たちは指揮車でモニターするから。じゃあ、全員搭乗!」
「「了解!」」
千鶴と慧は自分の機体に向かう。
「……白銀、人はこうやって使うのよ」
「ハア……勉強になります」
「白銀君、君も行きたまえ。外に出る前から彼女達にアドバイスしないと模擬戦の前に機体を壊してしまうぞ?」
「そうでした!行って来ます」
裕一の言葉にしまったと言う顔をして慌ててて武は千鶴達の後を追う。
「なんか心配ね。大丈夫かしら?」
エリザの言葉に一抹の不安がよぎる一同であった。


横浜基地近郊 旧横浜市 市街演習区域


祐一達は指揮車に乗り演習場にて武達をモニターしている。
武のアドバイスがあるのかぎこちない動きが見られるものの戦闘機動で演習場を動き回る千鶴達の吹雪。先頭はもちろん武だ。
接敵して変則なツートップの隊形で近づく。
近接状態に入り相手の頭を押さえ込んだ矢先前方の遮蔽物に隠れていた壬姫が狙撃するがかわされる。
射点が露呈した壬姫はすぐに移動するが武に捕捉され弾幕で移動経路を塞がれ、
{珠瀬機動力部、下腿部に被弾。致命的損傷、大破!}
通信機のスピーカーからまりもの声が入る。
そして美琴を挟撃する慧と千鶴。
{鎧衣機、右腕破損左脚部に被弾!……動力部に被弾致命的損傷、機能停止!}
「あの二人中々ね」
「順応性が高いのかも」
エリザと忍が感心する。
御剣機が慧に突貫してくるが跳躍でかわしカバーに入った千鶴と武の十字砲火を受ける。
{御剣機機関部に被弾、致命的損傷大破!}
慧は空中で突撃砲からナイフに武装を換装させ美琴を斬って止めをさす。
{鎧衣機コックピット部に致命的損傷、撃破!}
「状況報告して〜」
間延びした声で夕呼が報告を求める。
{榊分隊……任務完了!!}


横浜基地戦術機格納庫


「以上、市街地模擬戦闘演習を終了する」
「敬礼!」
まりもが訓練の終了を宣言して207全員が敬礼する。
「午後はこの演習のデータを……」
「軍曹」
裕一がまりもの言葉を止める。
「……なんでしょう」
「午後のスケジュールは全てキャンセルだ」
「!?……しかし!」
「学校本部、11軍司令部、基地司令部には了解を取っている」
「……解りました」
苦渋の表情で引き下がるまりも。
「さつき」
「はい閣下。……午後のスケジュールの変更についてですが、1330時に神宮司軍曹以下207隊は第六会議室に集合していただきます。その後は予定の訓練予定に復帰となりますが変更がありますので留意してください」
「白銀君には話があるから我々と共に来て貰う。質問は午後から受け付ける、以上だ。解散してよろしい」
「敬礼!」



11:48

横浜基地軍港区画6番倉庫 独立第一特務戦術機甲装備実験団仮司令部司令官執務室


裕一と武は執務室の応接用のソファに差し向かいで座り無言で日本茶を飲んでいる。
「…………」
「……さて、君だけを連れ出した理由は想像つくかな?」
おもむろに話し掛ける裕一。
「……解りません」
武は裕一の真意を探ろうと裕一の目を凝視する。
「……ま、いいけどね。薄々気付いてるんじゃない?」
「……じゃあ、聞きます。貴方は誰で何を何処まで知っているんです?」
苛立った表情で尋ねる武。
「名前はもうちょっと長いけど本名だよ。で、立場は君と一緒」
「……立場って?」
「君がこの世界で簸た隠しにしている本来の立場だよ」
「……もしかして!?」
「そう、平行世界の住人。これは僕達独立第一特務戦術機甲装備実験団全員に言える事なんだけどね」
「……でも俺は貴方との面識や繋がりは無いはず……」
うろたえる武。
「そりゃそうだ、だって本来君達が居なかった世界の人間だもの」
しれっと答える裕一。
「……じゃあ、なぜ」
「今、聞いたらすべてがパーになるから教えられる事だけ教えるけどそれで良いかい?」
「すべて教えてください」
「却下」
「何故です!!」
「虚勢張って人を頼らず薄っぺらな覚悟で物事を一人で抱え込んで自滅してしまうような人間にとてつもなく重大な話が含んだ用件をべらべら話すと思うのかね、白銀武訓練兵?朕を侮るなヒヨッコッ!!!!」
「……ぐっ」
裕一が発する鋭い眼光と膨大な気の圧力、人としての格の違いに怯む武。
「これでも極秘事項の開示は香月博士より緩い方なんだけど?ちゃんと前置きして断っている事柄は素直に聞くべきだよ」
「……」
武の湯飲みに茶を注いでいく。
「まずお茶でも飲んで落ち着きなさい」
「……はい」
新しく注がれたお茶を冷ましまがらゆっくり飲む武。
「……話し、続けて良いかい?」
「……はい、お願いします」
頭を下げる武。
「ちゃんと素直になれるのは君の美徳だよ。……今の君に話せるのは数点」
「……」
「まず、僕達は君の知らない君に出会ってこの世界の事を知ってここに来ている」
「……」
「僕達の目的は今の君の支援だ」
「……なぜです?何の関わりの無いアンタ達が……」
「知ってしまったら放って置けないのは君も同じだろ?君を助けたい、世界は別でも同じ人類が滅びようとしているのに座して眺めるのは嫌だ、だから自分達の力で出来る事はしたい。大なり小なりそう言う想いで僕達は来た」
「……」
「我が名、イサレリアス皇国建国王ユウイチ・アレクサンドル・ゼオ・ラティオ・イサレリアスの名において白銀武に誓約しよう!僕達は全員君の味方だ!君が、君自身を見失わず前を向いて血反吐を吐いて這いずってでも前に進む限りはな」
「……」
「?なにかな、鳩が豆鉄砲喰らったような顔して」
「……いや、驚いたし嬉しいんだけど……」
目が泳ぐ武。
「貴方がとても国王だとは思えなくて……」
「……白銀君?」
ゆら〜りと立ち上がる裕一。
「へ?」
「君はもうちょっとっ」
瞬時に武の背後を取る。
「場を考えた方がっ」
裕一が武の首と左腕を巻きつけて抱え込む!
「ななな?!」
「いいよっ!!」
締め上げて搾る!
「……く、首!入ってるッ!?いっいてて!ギッ、ギブッ〜!!」


「……三途の川が見えた……」
「自業自得だ」
武はダメージが抜けてない。
「酷いッス」
「気を付ける事だ」
「……ウッス」
「……後少し話す事が有ったのに……また今度だな。飯、喰いに行くぞ」
「……了解です」


13:30

横浜基地 第六会議室


食事を終え、関係者は会議室に集まっていた。
演壇傍に裕一・さつき・忍・高志・夕呼。
演壇前の席群にまりもをはじめとする207隊。何事かとひそひそと話し合っている。
「207訓練部隊総員起立!!気を付けっ!!」
高志が大声を出し207隊が立ち上がり姿勢を正す。それを見て裕一は演壇に立つ。
「独立第一特務戦術機甲装備実験団司令、裕一・イサレリアス少将閣下に敬礼!!」
夕呼を除き全員が敬礼する。
「着席していいよ」
答礼して着席を促し207隊の面々は席に座る。
「……予定を変更してこんな所に呼び立てて何事と思っていると思うがまあ、行き成り卒業させて最前線に放り出すとかそんなんじゃないから」
裕一は207隊の面々を見渡す。
「前置きはこれくらいにして、今日の模擬戦はどうだったかな……誰に質問しようか?……はい、御剣君?」
行き成り質問されて驚きながら立ち上がる冥夜。
「はっ!……今までの榊分隊の機体機動が劇的に向上していると推察します。正直驚きました」
「珠瀬君と鎧衣君もそう思うかい?」
「は、はい」「はい」
「だってさ、香月博士」
夕呼と忍は裕一の横に立つ。
「そこまで驚いたなら大成功ね。スペックデータも当然だけど、やっぱり見た目の美しさも重要よね〜〜」
してやったりと言う顔をして笑いあう夕呼と忍。
「あ、あのぅ……」
壬姫が何かを言おうとするが夕呼には届かないのか。
「榊達の戦術機には新しい概念で構築されたOSが実装されているの」
「……新しい概念……?」
冥夜が呟く。
「みんな、白銀の戦術機機動がとても奇妙な事は知っているでしょう?」
白銀以外頷く。
「その集大成が今日の戦術機の動き。あれが白銀が本当に目指した戦術機の機動よ」
「……なんだって!?」
美琴が驚きの声を上げる。他の娘達も目を丸くしている。
「今までは旧来の制御システム上の問題からそれが不可能だったわけ。白銀は自身の直感でそれに気付いて私に新OSの話を持ちかけたってこと。白銀がどうしてもって言うから、協力者に手伝ってもらって作ったのよ……フフッ……思っていた以上のインパクトだわ」
「……何と……言う事だ……」
冥夜は呆然としている。
「博士、……私、全然聞いてないんですけど?」
まりもは肩を震わせて怒りににじんだ言葉を連ねる。
「あら、えっと……言わなかったかしら?」
夕呼の言葉に頷く祐一達。
「まあまあ、細かい事は気にしても始まらないわよぅ?」
まりもは溜息をついて項垂れる。
207隊の面々は武を誉めはやしている。
「はいはい、そこまで。こっちに注目〜」
手を叩いて注意を裕一に向ける。
「模擬戦の結果を踏まえて、香月博士と事前の協議してた上でだ」
一旦言葉を切る。
「207隊は訓練校在籍のまま、次世代戦術機……第4世代機の開発部隊として国連の極秘計画及び我が独立第一特務戦術機甲装備実験団の一翼に組み込まれる事となった!」
「「「「「「「!!!!」」」」」」」
「若干の人事異動はあるが陣容は今までと変わらない。……神宮寺まりも軍曹!!」
「はっ!」
まりもは起立する。
「貴官の功績、今後の任務を考慮し……口頭ではあるが階級を教官任官前に戻す。引き続き207隊を統率するように。課業終了後、基地総務課に出頭し手続きを行う事」
「了解しました」
「207隊の諸君は今後過密スケジュールとなるので健康管理は十分注意すること。わかった?」
「「「「「「はい!!」」」」」」
「真面目な話はここまで。……ここまで頑張ってきた諸君にご褒美の話をしようか。……忍、交代」
「はい!」
裕一と入れ替わりで忍は演壇に立つ
「私が新OS…正式名称『高機能機軸連動制御システムXM3』略称『XM3』のメインプログラマーの月村忍よ。これからよろしくね」
一同を見回す。
「司令官から話を渡されたんだけど……さつきさん、準備できた?」
武達の後ろでプロジェクターにノートパソコンを繋いで準備しているさつきに声をかける。
「……はい、いいですよ」
「OK〜。じゃ、お待ちかね。『ご褒美』の話をするね」
ウォールスクリーンを引っ張り下ろし照明が薄暗くなり武達の知らない少々無骨さが残る戦術機が映し出される。
「これは今私達の部隊が装備している戦術機『TSF−4X1グリフォン』まだどこにも発表していない世界最初の第四世代戦術機。でもあなた達へのプレゼントはこれじゃないわ」
画面が切り替わり別の機体が映し出される。
「これが吹雪を『卒業』してあなた達の『靴』になる『TSF−4X1A』よ!」
画面をパンと叩く。207隊の一同はどよめいた。
「これはグリフォンの内部構造を若干変更して装甲を空気抵抗をより厳密に考慮したものに変えたの。いわばグリフォンの弟……いや、スタイルが女性っぽいから妹ね」
忍が揶揄した通り女性に見えない事も無い。
「…………」
「TSF−4Xの特徴はエンジンが通常に使われている物からパラジウム・重水素反応炉、パラジウムリアクターに変わっている事。そして跳躍飛翔用ジェットが2基から3基になっていることが大きな特徴よ。これにより高い出力、強武装、高速高機動を実現しているわ」
画面が切り替わる。
「そして武器の目玉は47mm高収束電子エネルギービーム砲と57mm機関砲を一体化したツインアサルトライフルよ!ビーム砲は突撃級要塞級を4000m以内ならば確実に正面撃破できるわ。ハードポイントは吹雪とかと変わらないけど追加兵装もより強力なモノを用意したわよ」
「すごい……」
千鶴が呟く。
「どう?励みになるかな?」
にんまりと笑う忍。
「すごいよ武!」
「ああ、これなら……!」
「……BETAを倒せる」
「人類の力はここまで……」
「初期ロットの8機はすでに試験運用に入っててあなた達のは第二ロット分になるの。完成次第引き渡す事になるからその間吹雪を自分の手足のように扱えないと振り回されるわ、がんばって訓練に励んでね」
「「「「「「はい!!」」」」」」
忍は壇上を降りる。
「実機、シュミュレータの訓練の際、手が空けば僕を含めた団所属の衛士達が君達を鍛える。容赦は無いから気を引き締めてな」
裕一は最後の締めに入る。
「「「「「「はい!!」」」」」」
「この後シュミュレーター実習が有ると思うが、彼…藤木中佐とあと数名が特別に参加して指導する。しっかり学ぶように。それから白銀君は引き続き香月博士と僕からの特別任務が有る。きついと思うが頼んだよ。以上、今回はこれまでだ」
「敬礼!」
まりもが起立して敬礼し207隊全員がそれに続いた。


横浜基地   地下19階


「……あれが貴方達の切り札かしら?」
夕呼は裕一に尋ねる。
「単に使える札の一つに過ぎないですよ博士」
「……まったく。いくら札を持っているのかしら?」
「世界のバランスを考慮しなければいくらでも用意しますけど僕らに課せられた枷は大きいですからね。枷を外すとなると00ユニットが無いとどうにもならないですね」
「……どういうこと?」
夕呼の目つきが険しくなる。
「00ユニット……鑑純夏はBETAとのコミュニケーションとスパイツールですが世界システムへの干渉ツールにもなるんですよ。極めて低位の端末ですが。だからこそ因果媒体として選ばれた白銀君がなんども平行世界移動できるんです」
「簡易的で著しく狭い限定された範囲だけど世界に干渉できるってわけね?」
「そう言う事です」
「あんた達の枷を外すとどうなるかしら?」
「僕達個人の能力が大幅に上がりますね。それと制限を受けますが人材の増員と物資の大量搬入、移動ですね」
「……この世界を征服するつもりかしら?」
「たかが4000万人の国力しかない国家がBETAと10億の人間が住む世界を押さえられるとでも?誇大妄想が過ぎますね、実にくだらない。それに面白くない」
「……現実的なのかしら?」
「うつけ者はうつけ者なりに冷静に物事を見てますよ?」
「その中でアンタは大うつけってところかしら?」
「誉め言葉として受け取っておきますよ」
「あっ、そ」
「ま、今のうちに鑑純夏をシリンダーから隔離すればBETAに対して大幅なアドバンテージが出来ます」
「レポートにあったあの事ね」
「ええ、シリンダーに直結しているBETA反応炉は通信端末でもあるんで正史のままだと全人類の戦術戦略が全部BETAに流れますからね。それだけは防がないと」
「……冗談じゃないわ、まったく」
「ここの反応炉はハイヴ攻略ごとに休止するほうがいいですね」
「……どういう事?」
「知っているんじゃないですか?」
「!……BETAの帰巣本能のことかしら?」
「そう言うことです。佐渡の甲21、ピョンヤンの甲20の攻略時が特に危険でしょう」
「憂鬱な事ばかりね……」
「と言うと?」
「他にも有るけど今は白銀の事よ」
「ああ、記憶の一部がフラッシュバックで思い出し始めている事とですか。それに白銀君の元の世界の博士が量子電脳の理論を持っている事ですね?」」
「そうよ」
「それは適当にして戴いても結構ですが……」
「何よ?」
「彼を元の世界に帰還させて隔離するのは駄目です」
「なぜかしら?」
「因果が駄々漏れになりますよ」
「……そうね」
夕呼は椅子に背を預けて力を抜く。
「次の大きなイベントはクーデター。これを207隊の試練としましょうか」
「……あんた容赦が無いわ」
夕呼は笑う。
「予防措置は取りますよ。巧く立ち回れば帝国上層部に貸しが出来ると思っているのは博士も思っている事では?」
夕呼は溜息をつく。
「……アンタと喋ってると遣り難くてしょうがないわ」
「割り切ってください」
「小憎たらしいのも程があるわ」
「はっはっは。まあ、捌け口は白銀君にやってください」
「見てなさい!絶対負けないから!」
指を突きつける夕呼。
「楽しみですな」





色々と動き出しましたよ。
美姫 「にしても、あの香月博士がやり込まれてるのって」
いやいや、珍しいものを見たって感じだな。
美姫 「さて、次はクーデターの話になるのかしら」
どうだろうな。
美姫 「次回が気になるわね」
うんうん。次回も楽しみにしてます。
美姫 「それじゃ〜ね〜」



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