『月は踊る、漆黒の闇の中で・・・』




第四幕 「幕間劇」



「いやぁ申し訳ありませんね。」
   
   青い空と立ち並ぶビルの頭が見える部屋、二人の男性の姿がある。

「かまわないよ、今回の事であちらがここまで辿り着く事はないからね。だが・・
 
   とんだ失態だな。。『白い牧師』の名が泣くぞ?」
   
  、、良く言ったものだ、男、女、老人から赤子まで全ての人間を平等に殺してきた。
  
  そんな彼を皮肉ってつけられた呼び名。彼なら天の使いが舞い降りようとも躊躇無く殺すだろうと。。 

「耳が痛いですね。まさか失敗するとは思いもよらなかったので。高みの見物と洒落込んでいたのですが・・」

   目を細くし、嫌らしい笑みをうかべる。  

「高い金を払って雇っているんだ。。まじめに働いてはくれまいか?・・っと言いたいところだったが・・
 
 その様子だと働こうとはしてくれたようだね。」
                     
   日本人であろう、黒い髪の男性は白髪の異人のあるべきはずの左腕を見つめて言う。

「任務は失敗、いやはや謝罪のしようがありませんね。」
   
   他人事のようにせせら笑う。

「申し訳ないついでに一つお願いがあるのですが。。。」
   
   表情ははんせいしてますって感じだが瞳からはまったく反省の色が見えてはいない。

「何かね?報酬は半分だ、失敗しているのだから全額などと戯けたことをいわないでくれよ?」
                
「いえいえ、そのような。。ただ・・次も私を雇っていただけないかと思いまして。」

「ほう。。次・・とはまた。よく知ってるね。どこでそれを・・?」
 
   白髪の異人はニヤリと笑った。

「私は鼻がききましてね、、。それで、いかがです?」

「ふっ、血の匂いでもしたのかね?まぁいい、仕事を失敗した君を雇うのは心苦しいが
 
 残念なことに君よりも良い仕事をできそうな人物に心当たりがないのが現状でね。」

   薄い笑みと濁った瞳。男性はさて、どうするかな、、と言った感じで異人を見る。

「仕事の報酬はいりません、必要経費のみいただければ。」

「ほぅ、そこまでこの仕事に御執心とは。何かね?その腕の誰かに復讐でも?」

   フンっと鼻で笑い男性は再度彼の左肩から下の部分をチラッと見て答えた。

   異人は真面目な顔になると、そんなような物です。っと小さな声で答えた。

「いいだろう。次の計画も君の鼻のことだ、何をするかという事嗅ぎつけているんだろう?OK、君にまかせよう。
 
 君の好きなように演出してくれたまえ。次の舞台は。。期待していいんだね?」

   フッっと白の異人は笑みを浮かべ男性に向かって深く頭を下げ部屋を退出していった。

(御神の双剣士。いや、不破士郎の息子よ。。次の舞台の準備をしようじゃないか、楽しみにしていてくれたまえ・・
 
 まずは招待状を送ってさしあげましょう。)
   
   楽しそうに笑いながら異人は廊下を歩いていく。








「このホテルだ。部屋は二階にとってある。」

「わかりました。ではエレベーターに乗りましょうか。」

   ああ、っと短く言って入り口の回転扉を通りホールへそしてエレベーターに足を向ける、。
   
  幸いに夜も遅いせいかホールにもカウンターにも人の姿は見られなかった。

  エレベーターで二階へあがり恭也の指示通りに廊下を歩いていくと。恭也が立ち止まった。

  どうやらここが目的地らしい。『206』と書かれたプレートがある。

「ここだ。タクシーを手配しよう。それまでお茶でも飲んで待っていてくれ。」

  そう言って鍵を開けドアノブに手を掛け様としたら急にドアが開いた。
 
 ドアノブを掴もうとした手は宙を彷徨い、不思議そうに顔をあげると。そこには心配そうな表情のリスティがいた。

「恭也!!」

「リスティ!?なんでここに。。?」

   チラッと志摩子の顔を見て恭也に視線を戻す。今度は何故か怒った顔をしている。

「お前が気になって来たにきまってるだろ!携帯にもでやしないし、それで来たんだよ!」

   リスティの激昂ぶりに驚いて呆然とした表情の二人。その二人に追い討ちをかけるかの様に
  
  更にリスティ怒鳴る。

「だってのに。。。お前は人の気も知らないで。。仕事が終わったら町でナンパとは。。いい度胸じゃないか!ええ!?」

「いや、ちが、、」

   恭也に喋る暇などなかった。。

「随分と綺麗な娘じゃないか?恭也・・・」

   志摩子を見て、少しトーンを落とした声でそう言うと。恭也に視線を向けた。

「あ。。え・・っと、あの。。ありがとうございます。」

   訳もわからず混乱した志摩子は綺麗と言う言葉にとりあえずお礼をした。

                 ブチッ!

   何かが切れたようだ。

「・・・かに。。やがって。。!」

「「え?」」

   二人は状況に圧倒され、聞き取れなかった言葉に疑問の声を重ねた。

「馬鹿にしやがってぇぇぇぇええええ!!」

              
   ヒューッと密閉されたはずの室内で風が巻き起こる。。瞬間

              ブワッ!!

   リスティのフィンが展開された。

「待て!リスティ!誤解してる!そんな危ない物しまえ!」

   恭也の必死の叫びにリスティは答えた。
   
  釣りあがる目と薄く笑った笑みで。

  駄目だなこれは・・と冷や汗をかきつつ、俺はこんなところで死ぬのか、、なんて思っている恭也。

(って違う!逃げるんだ!)

「志摩子!逃げるぞ!」

   咄嗟の事に名前に敬称をつけるのもわすれ志摩子に逃亡を促す。

  一方志摩子は恭也の顔を見て顔を赤くして固まっていた・・

  恭也に呼び捨てにされてうれしかったご様子。まぁ恭也はそんな事にきづくはずもない。。。

(何赤くなって固まってるんだ!?えぇい!)

   志摩子の手を取って痛みに耐えながら外へ出てドアを閉める。恭也と志摩子はドアの隣の壁に身を隠した。

                   ばがあああああぁぁん!

   轟音と共に鉄のドアが恭也と志摩子の横を通りすぎて廊下の壁にぶち当たる。ずぅぅんっと激しい重低音と共にドアは

  廊下に沈んだ。

   唖然とした二人の表情、、呆気にとられるのもつかの間。煙の中からフィン展開中のリスティ、表情はまさに鬼のそれだった。
    
「恭也ぁぁぁ〜・・・」

   手を恭也の方へかざし、いや。。恭也に照準をとって手のひらに力を集めていく。。

(これは死ぬな・・・・すまない、志摩子。。)

   そんな事を考えながら目を閉じて行く。

                「待ってください!!」

(え?)

     恭也の手が振りほどかれる感触。そして目をあけると自分とリスティの間に志摩子が恭也を庇うように
    
    十の字の形で立っていた。今度呆気にとられたのは恭也とリスティの二人だった。

「恭也さんは私が護ります!!」

   状況悪化、リスティの雰囲気がさらに険悪になる。。黒いオーラが見える気がした恭也。

「そうじゃなくて。。確かに護りたいんですけど・・。ああ、もう!!恭也さんは怪我をしているんですよ!?やめてください!」

   志摩子も混乱していたらしい。わけがわからい、咄嗟に頭で考えている事と言うべき言葉を間違えてしまったようだ。

   必死の志摩子の言葉に促され、恭也を見る。あっ!いう様な表情をしてフィンが消えていった。

「恭也!すごい怪我じゃないか!どうしたんだ!?」

   すごい切り替わり方だ・・それに。。

「最初に気づいてくれ!!」
「最初に気づいてください!!」

   綺麗にハモりながらリスティに突っ込む二人だった。



今までとは違い、少し騒々しい今回のお話。
美姫 「これはこれで面白いわね」
うんうん。リスティに突っ込む二人とか良いよな〜。
美姫 「さて、次回はリスティへの事情説明になるのかしら?」
その辺も楽しみだが、次の仕事という言葉も気になるな。
美姫 「ええ、そうね。一体、何が起ころうとしているのかしら」
そして、あの男が呟いた士郎の名前。一体、どんな関係があったのか。
美姫 「益々目が離せなくなる展開!」
次回も非常に楽しみにしてますね。
美姫 「それでは、また次回で」



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