『月は踊る、漆黒の闇の中で・・・』




第一幕 「血に塗れた出会い」



「はぁ、、はぁ、、、クソ・・・」

 

果てしなく続く深い闇の中、闇夜を照らす光に反射した二つの月の軌跡が見える。

 

   ダダダダダダ!  ダダダダダ!

けたたましい銃の咆哮、漆黒をまとった青年の姿がその中心にある、、

 

「はぁ・・はぁ・・ク、、あと、、何人いるんだ・・」

  青年はスゥっと息を吸い、意識を集中させる。

「4、、いや。5人か・・」

  スゥっともう一度息を吸い込み漆黒は闇に溶けた。

 

 黒服のスーツを着た男達が叫ぶ。

「いたか!?」

「いや、、見失った!。。クソ!」

「こっちもだ!すばしっこい奴だ・・なに!?ぐぁ!」

「どうした!!くそ・・そこか!」

 ダダダダダダダダダ!

  一瞬見えた影に黒服は狙いなど定めずただひたすらに乱射する。

(後四人・・)

「そっちか!!」

  銃声を聞きつけて他の3人もそちらに銃を向けそして撃つ。

 ダダダダダダダ! ダダダダ!

  漆黒の青年は息を切らして駆ける。否、その速度は翔けると言うべき速度だった。

 しかしその成年の速度をもってしても四方から注がれる弾丸の雨に追い詰められていく。

「ちぃ!、、さすがに避けきれないか・・」

  青年は舌打ちしながら一本の大木の影に身を隠す。

(どうする。。リスティに応援を頼む、、いや、、彼女を持ち場から離すのは危険だ・・)

「あそこだ!あそこの木の陰にいるぞ!!」

(くぅ、、やるしかないか。。)

   青年は覚悟を決め、息を潜め、目を閉じ、大木ごしに背後の気配に意識を集中させる。

「はぁはぁ、、やっと追い詰めたぜ!出て来い!投降すれば命まではとらん!」

   言葉とは裏腹に四人は銃を大木の方へと向ける。。

(良く言う。。殺る気満々って感じじゃないか・・まぁ、、そうでなくても投降なんてしないけどな・・)

   青年は苦笑しながらもう一度意識を集中させる。。

「だんまりかよ。。。おい!」

   黒服はもう一人の黒服に何かを合図した。

(今だ!!!!)

   青年はカッ!!っと目を見開くと大木の枝へと跳躍する。

   大木の深い緑の中から細いワイヤーが一人の黒服の首に喰らいつく

「ぐぁぁぁああああああ!!」

「なに!?」

   他の黒服があっけにとられている間に首にワイヤーの絡みついた男は泡を吹き意識を失う、

「くそ!!おい!やるぞ!」

   黒服達は混乱しながらもすぐに冷静さを取り戻し、手榴弾のピンを抜き大木へ投げた。

         

                どがぁぁん!!!!

   

   不快なほどに重く腹に響く激しい音とともに爆炎が広がる。その炎は木へ燃え移り

   深い緑をどす黒い炎の色で包んでいく、、

 

「殺ったか!?」

「この威力の爆発だ。。生きてはいまい。。」

   燃える大木を見ながら黒服は敵のいたであろう燃える大木を見る。

「な!!」

   一人の黒服が炎の中から黒い何かが自分に飛んで来るのを見て銃を構えるが、、

(遅い!!)

           小太刀二刀御神流 斬

       ズガ!!

「ぐは!」  

  黒服は避けるどころか目でも追いきれない剣線をまともに受け、吹き飛ぶ。

  それを見た他の黒服は錯乱し、悲鳴をあげながら銃を乱射する。

「うあああああああああ!!!!!」

  青年は一瞬何かに躊躇した、しかしその次の瞬間に青年は消え黒服が二人崩れるように倒れた。。

「なんだ・・消えた?・・いや。。テレポーテーションか?・・羽(フィン)持ちか?」

  黒服は一人呟くように言う。

「残念だが違う、これはれっきとした技だ。」

  答えるように青年は黒服の背後から首に刃をつきつけた。

「な!!」

  振り向こうと黒服は身を翻らせようとするが、、青年の顔も見れないまま意識を落とした

 

「はぁ・・・終わった・・か。。」

        キン!っと心地よい高い音と共に青年は二刀の刀を鞘へ納める。

「くぅ、、無理しすぎたか、、」

    ズキズキと軋み、痛む膝に手を添えながら苦悶の表情を見せる。

     ふぅっと一息つくと黒いコートから携帯を取り出し誰かにかける

  プルルルルルルルル プルルルルルルル プルル__ガチャ

「恭也!!無事か!?」

「ああ、無事だ。こっちは全てかたずいた。そっちはどうだ?」

「かたずいたって。。相手は30人近くいただろう!」

「ああ、一応全部倒したはずだ。」

「あのなぁ、恭也。お前の役目はシンガリだったろ、、別に適当な所で逃げちゃっていいんだぞ・・」

  あきれた様にリスティは言った。

「そうは言っても、下手に逃げたら民間人に被害が出るかもしれないだろ?それに・・」

「それに、なんだよ?」

  促すようにリスティが問う

「やはり許せないからな、、」

  低い声で、何かをこらえる様に言った。。

「恭也・・・」

「それよりもリスティ、疲れたからホテルに戻るが後は任せていいか?」

  話題を変えるように用件を告げる

「あ?・・ああ、分かった。後はこちらで処理しとくよ。それより恭也!さっきの・・」

「すまないが後で聞くよ、また明日連絡する。おやすみリスティ。」

「あ、、おい!恭也!!」

  疲れからか、少し苛立たしげに携帯を切る。

「ふぅ、、」

  この青年の名は高町恭也、小太刀二刀御神流の一流の使い手だ。御神ときけば裏の社会では

  恐れられる程の流派で、若干21歳にしてその師範代の腕を持っている。父の跡を継ぎボディガードを

  しながら。母の経営する喫茶『翠屋』の手伝いをしている大学生だ。

「後でリスティにあやまらないとな・・」

  先ほどの会話を思い出しながら恭也は自分の言動を反省する。

  恭也は最近の護衛の仕事に疑問を感じていた。自分の御神の力で悪しき者から尊い人を守る。

  その筈なのだが、今回の護衛に関してもそうだ。大企業の会長が敵対企業の恨みを買い

  それから護る。。雇い主の企業は裏でも評判の良くない企業で、襲った黒幕であろう企業共々

  相当な人々から恨みを買っているであろう企業だ。

  そんな者を護るという事に恭也は納得がいかなかった。無論リスティも納得はしていないだろうが

  その会長の発言力は彼女の上司が断れないほど大きいのだから。やらざるをえないのだろうが。。

「さて、、どうするかな。膝が痛む。。何処かで休むか。。」

  そう呟いて片足をかばうように歩き出す、、10分ほどあるくと人気のない公園にたどりついた。

  白塗りのベンチが見えそこに座ろうとした時、彼の目がすっと細く釣りあがる。

(殺気だ。。1人・・のようだな。。さっきの連中より強いな。。)

「誰だ!出て来い!」

  言いながら小太刀を抜き構える。

      コツ__コツ__コツ__

  足音が迫る。やがて姿が電灯に照らされあらわになりはじめる。

「こんばんわ、御神の双剣士」

  長い白髪の長身な男が姿を晒し、低い声で紳士的に挨拶をする。__殺意を微塵もかくさずに。

(膝の痛みがまだひけない・・やれるか・・っといっても逃がしてくれそうにないな。)

  苦笑しながら恭也は覚悟を決める。キッ!と相手を睨み言う

「何の用だ?さっきの奴らの仲間か?」

「いやなに、確かに同僚ではあったけど仲間ではありません。

 用件はわかるでしょ??君と殺し合いたい・・」

  クックックっと不気味に笑いながら馬鹿にしたように言う。

「同僚が戦ってる時は出て気もしないで、それにお前らの仕事も終わりだ。会長は既に安全な場所に・・」

「ははは!関係ないですよ・・君の姿を見た時から仕事なんてどうでもよくなりました。

 CSSのボディガードをやっていた日本人の御神流の双剣士。。噂で良く聞ききますからね・・殺ってみたかったんですよ・・

 前からずっと・・ずっと。。ね。」

   クククと笑いながらさらに殺気を高ぶらせていく。

「「・・・・」」

   両者が無言でにらみ合い沈黙が流れる。

   先に仕掛けたのは恭也の方だった。ダン!!っと地を駆け一息で間合いをつめ相手に切りかかる。

           ガギィン!

   相手の片手には大ぶりなナイフが握られ、小太刀はうけとめられていた。もう一振りの小太刀で

   横凪に首を狩りに行くがチクリと嫌な予感がして身を翻し横へ飛ぶ。

           パシュン!

   音が聞こえた時、恭也の肩に激痛が走る。

「くっ!!」

   恭也の苦悶の声と表情に男がニヤリと笑う。

「フム、かすっただけか・・殺ったと思ったんですけどねぇ。」

   ナイフと逆の手には何時の間にか銃が握られていた。

(速いな、、美由紀と互角か。。それ以上だ。膝の事を考えると余裕が無いな、、次で決める。)

   考えを切り替え、男を睨みつける。

「名前が売りたいのか?」

   唐突に恭也が聞いた。

「そんな者に興味はありませんよ。ただ・・あなたとの決闘は楽しそうだったのでね。」

   ニコリとわらって今か今かと隙を狙ってくる。

「ならば、、遠慮はいらないな。。いくぞ!」

「はっはっはっはっはっは!いい顔ですね。さぁ殺リ合いマショウ。」

        プシュン! 

   男の銃が恭也の額に狙いを定め撃った瞬間、恭也はそれを紙一重でかわし男へと駆ける。

   駆ける恭也に男はさらに撃つ。プシュン!プシュン!  それを交わし体勢が微妙に崩れる恭也に

   男は狙いを定める。

(捕った!)

(神速!!)

               プシュン!

   恭也に狙いを定めとどめに撃った弾丸はむなしくアスファルトに沈む。そして恭也は男の視界から消えていた。

「な!どこへ、、後ろか!!」

   恭也の気配に気づき男は後ろにナイフを振り下ろす。

(神速の領域の俺の動きに反応するとは、、だが!!)

「遅い!!」

                小太刀二刀御神流 虎切

                  ズバ!

    男のナイフと共に塊が中に舞った。

「ぐああああああぁぁぁ!」

    先ほどの紳士的な声とは違った獣のような悲鳴が響いた。男は血を撒き散らしながらのた打ち回る、、

「まだ、、やるか?今ならまだ助かると思うが。」

    小太刀を構え男に問い掛ける。冷静な言葉とは裏腹に膝はズキズキと悲鳴をあげていた。

    見ると男は醜く怒り狂った形相で叫んだ。

「てめぇえええ!殺す!ぶっ殺してやる!!ぐぁぁぁ。俺の腕をぉぉおお!!」

    先ほどとはうって変わった様子にさすがに恭也も同様した。その時

「キャーーーーー!!」

    甲高い悲鳴が聞こえ、そちらをふと見ると髪の長い少女がこちらを見て腰を抜かしたように座り込み

    悲鳴を浮かべていた。

(クソ!!何故こんなトコに!!)

    一瞬気を取られた恭也に再び銃口が向けられる、殺気を感じ回避に移る

        プシュン!

「そんな状態で俺に当てられると思ってるのか?」

    いまいましげに恭也を見つめ。。

「くそ餓鬼が・・」

    そういうと男は座り込んでこちらをみている少女をみると、ニタァっと笑った。

「青年、、これならいかがかな?」

    突然紳士口調に戻り男は少女に銃口を向けた。

「え?」

     少女はわけも分からずこちらを見ていた。

(しまった!!!)

「護れずに悔しがりやがれ御神のくそ餓鬼がああああ!」

    撃つ前にあいつを倒す、いや間に合わない!!

(ならば!!神速!!)

    ビキッ膝に強烈な痛みが走る・・が、かまっていられない。少女の下にコマ送りの世界の中

    駆ける。

(間に合う!!)            プシュン!!

    少女を抱きしめ、銃弾を避けるため跳ぼうとした瞬間、膝に更に激痛が走り一瞬行動が遅れる

「シマッ!!」

    恭也が言葉を発する途中で恭也の肩がはじけた。それと共に肩に熱い者が広がる。

「ぐぅ!!」

    少女を護るように抱きながらごろごろと転がる。

    痛みに耐え少女をみるとほおけた顔でこっちを見ている。何がおこったかすら分かっていないだろう。

    再度男の方を見ると男は血を流しながらも立ってこちらに銃を向けていた。

「逆転だな、青年。」

    フっと微笑を浮かべトリガーに指をかける。

(殺られる!せめてこの娘だけでも。。)

    抱く腕に力を込め大丈夫だと言わんばかりに少女に微笑みかける。

    少女は涙を浮かべながら目をつぶりコクッと頷き恭也の胸に顔をうづめた。

(フランス人形みたいな綺麗な娘だな。。それにいい匂。。何考えてんだこんな時に俺は!)

    少女を庇いながら男を見る。最後の瞬間を感じながら。

    ニタァっと笑う男の顔が脳に焼きつく  瞬間

            

           カチッ!

     

    小気味のいい音を立てて男の銃が鳴った。

「「・・・・」」

    沈黙・・・二人の間に変な空気が流れる。

「弾切れ・・・か?」

    撃とうとした本人が誰に問うでも無く言った。

「運が良かったな青年。さすがにこちらも腕の止血をしないとまずそうだ。。

 またこちらから連絡をいれよう。次はもっと楽しいSHOWを演じようじゃないか。

 さてさて君の名を聞いてもよろしいかな?」

    恭也は少し混乱しながらも答える。

(高町の姓を名乗れば皆に危害がおよぶかもしれない。。)

「不破・・不破恭也だ。。」

「ふわ・・だと・・?ククク、そうか。これはまたとんだ巡り合わせだ。

 まぁいい、これで君と踊る理由が増えたよ。私の名前はホーンだ。

 また会おう、次の舞台は私が用意するよ。」

   そう言うとホーンは闇に駆けて行った。

「御神に恨みを持つ者か?・・・または。。」 

   色々な考えが頭に浮かび混乱する。

(今、考えてもどうしようもないな。。今は。。)

   そう考え腕の中の少女を見ると。震えながら目を瞑り恭也のコートを必死に掴んでいた。

「もう、大丈夫ですよ。怪我は無いですか?」

   優しく柔らかな笑顔を少女に向ける。

   パッと目を見開き恭也と見つめ合う形になる。

   少女は顔を真っ赤にして口をパクパクさせる。

「・・ぁ・・・ぅ・・」 

   慣れない男性に吐息が届きそうな距離で囁かれ

   言葉にならない声を発し顔を真っ赤にしたままうつむく。

   

   恭也はというと肩と膝から激痛が走っていて顔がひきつりそうになっていた。

   必死に耐えながら更に微笑み、彼女に言う。

「立てますか?」

   

   コクコクと少女は首を縦に振った。

 

   握っていた手を、抱いていた手を離して二人は立ち上がった。

「グッ・・ク・・」

   立ち上がる時に痛みで顔をしかめてしまった。

   

   少女は青年の苦悶の声を聞き驚き恭也の全身を眺めて驚いた。

「そんな、、ひどい怪我・・どうしよう、、そうだ!、救急車を」

「駄目だ!救急車はよばないでください。。。」

   少女は恭也の大きな声に驚いて目を見開く、、しかし冷静になり

「どうしてですか!?こんなに血がでているのに!」

   恭也も恭也で少女の反撃に何と説明したらいいか分からないでいた。

   なにか言わなければと恭也は焦る。

「いや、、そんなに大した怪我でもないので。」

   どうみても大した怪我であった。

「銃で撃たれてるんですよ!?あ・・・。」

   どうやら察してくれたらしい。

「とりあえず、あそこのベンチへ!」

   少女は恭也の腕を自分の首へ回して寄り添うようにして

   恭也をベンチへ連れて行く。明かりのあるベンチの方へ行くと

   二人の姿は徐々にはっきりとしていった。   

         




まずは投稿ありがとうございます〜。
美姫 「ありがと〜」
いきなり戦闘の最中に出会った少女。
美姫 「彼女は誰なのか」
それは、恐らく次回で分かるかな?
美姫 「ああ〜、続きがとっても気になるわね」
うんうん。とっても面白い作品をありがとうございます。
次回も楽しみです。
美姫 「それでは、次回を待ってますね」
ではでは。



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