まず始めにこの小説を読む上での注意をさせていただきます。この物語の主人公はオリジナルキャラです。オリジナルのキャラクターが苦手な方はご遠慮ください。また、この物語の本編キャラは多少壊れ気味なところがあります。キャラのイメージが壊れるのが嫌な方は読まないほうがいいかもしれません（そんなに酷く壊れることはないと思いますが;;）。最後に作者はマリみての原作を読んだことがありません。ＴＶアニメと他の作家さん達が書いた二次創作、またはマリみて関連ＨＰのＤＢを元に小説を書かせていただきました。原作と細部が異なることがあるかとも思いますがその点はご了承ください。ここまでのことを気にしないという寛大な方は是非先にお進みください。
私立リリアン女学園、 明治三十四年設立のカトリック系お嬢さま学校、幼稚舎から大学までの一貫教育を受けられる乙女の園。
そんなリリアン女学園に今足を踏み入れようとする一人の男子生徒がいた。すらりとした長身に細身ではあるがひ弱さを感じさせない均整のとれた体型。そしてどことなく幼さを残しつつもきりっとした凛々しい顔つき。花寺学院の制服を身につけ校門の前にたたずむその姿はリリアン女学園という乙女の園においては浮いた存在ともいえる。
時間的に放課後のため帰宅しようとする多くの女生徒たちとすれ違う。女生徒たちは女子高であるリリアンの校門に他校の男子生徒がいることに首を傾げつつもその人物をみて頬を紅く染め黄色い声援をあげる。
そんな周りの状況にまったく気にした様子もなくその男子生徒は誰にともなくつぶやく。
「あいつの代役としてどうしてもというから仕方なく来たのはいいが、よくよく考えるとリリアンに知り合いなんていないんだがなぁ。」
正確に言えば１人いることはいる。知り合いなんてもんじゃなく自分にとって限りなく近くにいる少女が一人。しかし今から自分が向かうところにはその少女は無縁のはずである。きっと今頃は自分とすれ違っていく女生徒たちと同じように帰路へとついていることだろう。
「まぁ、ここで立ち尽くしていてもしょうがない。帰りが遅くなってもアイツが心配するし、サクっと行ってみるとしますか。」
男子生徒は見慣れた少女の心底自分を心配し今にも泣き出しそうな顔を頭に浮かべ、苦笑いしながら乙女の園へと足を踏み入れるのだった。
マリみてｉｆ〜お兄様もみてる？〜
第一話 衝撃の事実と波乱の幕開け？
なぜこうなってしまったのだろう・・・
今の自分の置かれている状況を考えて彼女、福沢祐巳は何度目かのわからないため息をつく。つい先日まで自分はこの時間は家への帰路を歩いていたはずだ。そして自分の世界で一番大好きな人の帰りを家で待つのが自分の日課だったはずだ。それがいったいどうして・・・
「ほら、祐巳いつまでも百面相をしていないでしっかり働きなさい。」
「は、はい祥子さま。」
心ここに非ずといった様子の祐巳を一喝したのは紅薔薇の蕾こと小笠原祥子。今の祐巳の状況を作り出した張本人である。
先日祐巳が友人でありの写真部所属の武嶋蔦子と写真の掲載許可をもらいに薔薇の館を訪れた際、ビスケット扉を開けて飛び出してき小笠原祥子と衝突してしまった。突然のことにびっくりした祐巳だったがその後の祥子の行動にはもっと驚かされることになる。床にしりもちをついたままの祐巳に手を貸して助け起こすと祥子はおもむろに口を開く
「あなたは？」
「えっ？あっはい！１年桃組35番福沢祐巳です！」
突然のことに裏返った声で答える祐巳。
「そう、ときに貴方、お姉さまはいて？」
「い、いませんけど・・」
思ってもみなかった祥子からの質問にわけがわからないといった感じで祐巳が答える。
しかし祥子はその答えに満足したように頷きさきほど飛び出そうとした室内を振り返りこう宣言したのだった。
「お姉さま方、さきほどの約束を果たさせていただきます。」
祥子のその言葉に祥子の姉であり紅薔薇様である水野蓉子と山百合会メンバーの面々は訝しげに、祐巳は呆然としながら耳を傾ける。
「私はこの祐巳を妹にしますっ！！」
「「「「「「「ええぇぇぇぇ〜〜〜〜〜っ！！」」」」」」」
祥子の突然の爆弾発言に乙女の園には不釣合いな絶叫が薔薇の館に響き渡ったのだ。
「はぁ〜･･」
あの祥子による衝撃の姉妹宣言を思い出してまたひとつ祐巳はため息をつくのだった。あの後祐巳は祥子の申し出を断った。祥子のことが嫌いなわけではない、突然の申し出に驚かされはしたが祐巳はリリアンに通うほとんどの生徒がそうであるように、山百合会メンバーに憧れを抱いており、その中でも紅薔薇の蕾である祥子のファンであった。だからといって妹になりたいかといわれるとそうではない。祐巳が祥子に抱く気持ちは年頃の女の子がアイドルに抱くそれであり、実際にスールの契りを結ぶとなると祐巳には違和感があった。また祐巳には自分が勝手に思い込んでいる使命がある。祐巳は部活に入っていない。それは毎日家で世界で一番大好きな人の帰りを待つという何事にも換えがたい壮大な使命なのである。家に帰ってきたあの人を笑顔で迎える。家族、特に弟の祐麒などは毎日その様子を呆れながら見ているがそんなことは祐巳にはまったく気にならない。笑顔でおかえりなさいと出迎え、ただいまと笑顔で返ってくる言葉に祐巳は最高の幸せを感じるのだ。
そういったこともあり祥子の申し出を断った祐巳だったがそう簡単に諦める祥子ではなかった。祥子の姉妹宣言を呆然と聞いていた山百合会メンバーも話しに加わり何故か祥子が祐巳を妹にできるかどうか賭けを行うことになってしまった。そして祥子が賭けに勝ったときの賞品というのが・・・
「ほら、二人とももうすぐ花寺の生徒会の方がいらっしゃるのだからいつまでも掃除してないでお出迎えの準備を始めて頂戴。」
一緒に作業をしていた蓉子が二人を促すように言った。
なぜ花寺学院の生徒会の人間が薔薇の館を訪れるのかというと、今年のリリアン女学園の学園祭において山百合会主催で行われる劇の打ち合わせに来るのである。今年の劇の題目はシンデレラでありその王子様役を花寺学院の生徒会メンバーにお願いしているのである。しかしその配役に異論をとなえる人物がいた。シンデレラ役の小笠原祥子である。大の男嫌いである祥子はこれまでに行われてきた花寺学院との打ち合わせをことごとく避けていた。しかしそれがいけなかった。王子様の役は黄薔薇の蕾である支倉令がやると思っていた祥子は王子様役が花寺学院の生徒会メンバーだと聞かされ激怒し、リリアン女学園の生徒会長である三人の薔薇様達に抗議をしたのだが妹もいないような人間には発言権はないと一蹴されてしまったのである。そして今すぐ妹を探してくると言ってビスケット扉を開けた祥子は蔦子と共に薔薇の館に訪れた祐巳と出会い姉妹宣言にいたったというわけである。その結果祐巳にスールの申し出を断られてしまった祥子であったが薔薇様達の救済処置（賭け）により祥子が祐巳を妹にすることができればシンデレラの配役を変更するということになったのである。
そのため祐巳は現在、祥子の妹候補として山百合会の手伝いをしていた。本音を言えば日課を行うために早く家に帰りたかったのだが・・・
「祥子ぉ〜、今日は逃げ出さないんだねぇ」
白薔薇様である佐藤聖がからかうように祥子に話しかける。
「白薔薇様、私は逃げていたわけではありませんわ。たまたま用事が重なっていただけのことです。それに祐巳がいるのに姉になる私が参加しないわけがありませんわ。」
堂々と言う祥子。彼女は自分が賭けに負けるとは微塵にも思っていないのである。彼女はなかなかの負けず嫌いのようであった。その祥子の言葉を聞いてまた一つ祐巳はため息をつくのだった。
「そういえばお客様ってどなたが来るんですか？」
急遽手伝いをすることになり詳しい状況をしらない祐巳が疑問を口にする。
「花寺の生徒会の方がいらっしゃるのよ。今度の劇の王子様、つまり祥子のお相手ってわけ。」
「黄薔薇様っ!!まだ私がシンデレラをやると決まったわけではありませんわ。私は勝負に負けるつもりはありませんから。」
祐巳の質問に答えつつ意地の悪い笑みを浮かべる黄薔薇様こと鳥居江利子にすかさず祥子が反論する。
「でも一度は断られているわけだからちょっとやそっとじゃ祐巳ちゃんを妹にはできないと思うけどねぇ。」
「そんなことはありません。私は祐巳を必ず妹にしてみます。」
クスクスと笑いながら言う聖にまたもや反論をする祥子、そんな光景を見ながら自分の置かれた立場を再認識し祐巳は少し逃げ出したくなった。
「ほら二人とも祥子をあまりからかわないで、祥子もすぐにムキニなるのはおやめなさい。もうすぐお客様がいらっしゃる時間よ。」
他のメンバーがどうすればいいかわからないこの状況を蓉子の一言が治める。さすがは三人の薔薇様のリーダー的存在であり祥子の姉である。
「でも少し到着が遅れているようですね。予定ではもう来ていてもおかしくないのですが･･･」
時計を見ながら首を傾げる志摩子。
「実は迷子になっていたりして。」
「花寺の方たちはもう何度か来ているのだし心配ないわよ。」
冗談っぽく言う由乃にまさかといったように令が答えるのだったが由乃の考えはそう間違ったものでもなかったのだ･･･
「ふぅ、なんとかたどり着いたか。」
花寺学院の制服を身にまとった男子生徒は疲れたように息をついた。実は由乃が言ったように迷っていたのだ。考えてみれば初めて来たリリアン女学園、案内もなしに薔薇の館まで行くのは困難なことである。そんな様子で校内をさまよっていた彼だがリリアンに男子学生がいることを不振に思い話しかけてきたひとりの女教師に状況を説明し薔薇の館まで案内してもらい事なきをえたのである。そして別れ際笑顔でお礼を言う男子生徒に女教師の頬は彼と道すがらすれ違って行った女生徒と同じように紅く染まったのだった。
「さっきの先生には本当に感謝しなくてはいけないな。しかし目的地に着いたのはいいがここからがまた大変そうだな･･･、リリアンの生徒会の方たちもいきなり俺みたいに面識のない人間が来たら驚くだろう。あとはあいつが先方に話を通しておいてくれればいいのだが･･･」
男子生徒は自分が今ここにいる原因をつくった自分の学校の生徒会長を思い出しため息をつくのだった。
「いつまでもここに立ち止まっていてもどうにもならないし中に入るか･･･」
男子生徒は覚悟を決めたのか両手で頬を叩き薔薇の館へと足を踏み入れていった。その先に何が待つのかこのとき彼にはまだ知るよしはなかった。
由乃の迷子発言から約10分後、薔薇の館のビスケット扉をノックする音が室内に響き渡った。
「すいません、花寺学院から来たものですが。」
「お待ちしておりました、どうぞお入りください。」
ビスケット扉の向こう側から聞こえてくる声に全員を代表して蓉子が答える。
「それでは失礼します。」
ビスケット扉を開けて一人の男子生徒が入ってくる。そこで山百合会のメンバーは入ってきた男子生徒は初めてみる顔であることに気がついた。花寺学院の生徒会とはこれまでにも何度か打ち合わせもしているし、三人の薔薇様にいたっては花寺学院に足を運ぶこともあった。それなのにも関わらず彼女たちの記憶をたどっても彼の顔はどれにも該当しなかった。もっともこれまでの花寺学院との打ち合わせを逃げてきた祥子にはそんなことは分からなかった。しかし、ただ一人例外はいたが･･･
「遅くなってしまって申し訳ありません。」
ビスケット扉を開けて中に入った途端、自分に集まる視線に気恥ずかしさを感じたのか照れ笑いを浮かべながら謝罪の言葉を述べる男子生徒に山百合会のメンバー全員の頬が紅く染まる。
「あ、あのぉ･･･」
男子学生の言葉に頬を染めて一瞬呆然としてしまった山百合会のメンバー達はハっと我に返り、やはり全員を代表して蓉子が口を開いた。ちなみに頬はまだ紅いままである。
「あ、すいません(////。リリアン女学園生徒会の水野蓉子と申します。失礼ですがこれまでの打ち合わせにはいらっしゃらなかったと思うのですが、えぇと･･･」
「すいません申し送れました、自分は･･･（ドンｯ!!）･･ぐっ」
蓉子の問いかけにまだ自己紹介をしていないことを思い出した男子学生が自己紹介をしようとしたところに突然何者かが飛びついてきた。力いっぱいの突撃にもなんとか踏みとどまり自分の腰に抱きついている物体を確認した男子生徒は驚きの声を上げた。
「ゆ、祐巳どうしてここにっ！？」
「お兄ちゃ〜〜〜〜ん♪」
「「「「「「「お、お兄ちゃんですってぇ〜〜〜〜！？」」」」」」」
男子生徒の腰に満面の笑みを浮かべ抱きつく祐巳に言葉もなく固まってしまった山百合会メンバー達だったが祐巳の爆弾発言聞いて全員が驚きの声をあげるのだった。後にリリアン女学園という乙女の園に不釣合いなその絶叫は学園中に響き渡っていたとリリアンかわら版に掲載されたのはまた別の話である。
つづく
あとがき
ついにやってしまいました(汗
はじめましてみなさん、シュウというものです。昔からこちらのＨＰに掲載されている作品をはじめ数々のＳＳを読んできました。そんな中読んでみたいと思う作品がありました。マリみての世界を舞台に祐巳の兄がオリキャラとして登場し祐巳や山百合会メンバーと物語をつくっていくというものでした。しかし私の思いとは裏腹にそういった作品をみつけることは出来ませんでした。そこで私はふと思いました。ないのなら書いてしまえばいいんだと(爆
そういったわけで今までまともに文章など書いたことのないくせにこの作品を書いてしまったのですｗ しかし書き始めてしまったからにはなんとか完結へ向けてがんばっていきたいと思います。つたない文章ですが最後までお付き合いしていただければ幸いです。これからがんばっていきますのでよろしくお願いいたします。ｍ(＿ ＿)ｍ
グッジョブ！
美姫 「いきなり！？」
うん。祐巳の兄か。考えた事なかったな。
でも、あんな妹なら楽しいと思わないか。
美姫 「確かにね。可愛いでしょうね〜」
だろう。しかも、ブラコンっぽいし。
美姫 「次回からがとても楽しみね」
うんうん。また一つ、楽しみが増えた。
美姫 「それでは、シュウさん。これから、頑張って下さいね」
ではでは〜。