前書(必ずお読みください):このSSは原作の設定とは違い、オリジナルの要素が含まれています。

そういうものが嫌いな方、許せない方はこれ以上読み進めないことをお勧めします。

それでも良いという方だけ先にお進み下さい。

 

 

 

 

 

 

-HiME〜運命の断罪者〜

プロローグ 夢、そして覚醒

 

虚無、光さえ刺さない闇。

いや、そもそもここにそんな光のさすような隙間があるのだろうか。

ただ黒いペンキを塗りたくったような闇の壁が視線を塞いでいた。

この空間がどれくらいの広さなのかそれさえ判らない。

雪山などで遭難したとき、遭難者を襲う吹雪。

それによって視界がすべて真っ白になったときそれをホワイトアウトというが、

ならばこれはブラックアウトだろうか。

すこし意味合いが違うような気がする。

そんなくだらない事を考えながら、闇の中をたたずむ一人の青年。

 

裸体、生まれたままの姿といえば聞こえはいいが。

このまま商店街などを歩いたら変質者だ。

だが自分の母である高町桃子は喜ぶかもしれない。

いや涙を流して喜ぶ。確実に。

まあ、そんな事は措いておこう。

 

傷だらけの体。

自分の背負った業によってついた傷。

その裸身で闇の中を佇む青年、高町恭也は考えていた。

普通ならば最初に考えるのは、ここは何処だ、といことだろう。

だが恭也は違った。

見覚えがあったのだ。

毎夜の如く恭也はここ訪れる。

この闇。

ここは恭也の夢の中。

本来ならば目覚めてすぐに忘れてしまうものだが、この夢だけは恭也は鮮明に覚えていた。

ならばそろそろ聞こえてくるころだ。

悲しみ怨嗟が――。

 

《なぜ――。なぜ私がこんな運命を背負わなければならないの―――。

私はただ普通にあの人と生きていきたかったのに。叶えたい願いなんてないのに大いなる力なんて要らないのに―――。》

 

それは叶わぬ願いを叶えようと逝った者たちの声。

 

《この思い――まだ告げていない。それなのに。

こんなところで――消えてほしくなんてないのに》

 

思いも告げられずに消えていった愛しきものへの非業の叫び。

 

《気づかないふりをしていった。

一族復興のためと己を謀っていた。わたしは本当にあの方が――。》

 

思いに気づいたときには愛しき人は光となっていた。

 

《どうして、どうして、どうして、どうして、どうして、

どうして、どうして、どうして、どうして、どうして、どうして、どうして―――――》

 

それは思いを遂げられなかった少女達の叫び。

 

《なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、

なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、――――――――――》

 

紅い刻印をその身に背負った

戦姫たちの愛しき人を失った悲しみ、嘆きの声。

 

それがすべて恭也へ。

恭也の頭の中へと流れ込んでくる。

決壊したダムの水のように、濁流となって。

声だけではなく、思いその記憶までもが。

恭也は酷い頭痛に襲われる。鋼鉄のハンマーで何度も何度も殴られたかのように。

だが恭也自身はそんなに痛みを感じない。

瞳から流れ、ソレが散る。

それは涙。止まらない。止められない。痛みなどより悲しみが先に来てしまう。

この世に生を受けて十五年余り。

父が死んだときも泣かなかった、自分が今泣いていた。

連日連夜この夢を繰りかしみて、今恭也は初めて泣いた。

 

『なぜだ。なぜこんな戦いをくりかえす。

無益だろう、彼女たちの願いはどうやっても叶わないではないか。』

 

ふと飛び込んできたのは男の声、想い、記憶。

昨夜までの夢には出てこなかったもの。

自分の声。されど自分ではない声。

恭也の中で浮かぶ虚像、それは鏡で見たかのような自分、服装、装飾品は違うがそれは恭也そのものに見えた。

烏のような漆黒の装束に身を包んだ恭也が今の自分のように泣いている。

自分の一族の非力さ恨んで、自分自身の弱さを憎んで。

石造りの巨大な祭壇。

その前に立つ虚像の恭也が持っていたのは二振りの小太刀。

自分にはとても見覚えがあるもの

自らの愛刀、八景。

 

『もし我が思い叶うならこの命差し出そう。

媛星の力を、黒曜の君の力を無に。

そして、この無意味な争いの連鎖を断ち切る力を――――。』

 

虚像の恭也は突き立てる。

己の心の蔵に二つの刃を、突き刺す。

背から突き出る八景の刀身。

刃が血で染まる。虚像の恭也の想い、倒れていった戦姫たちの想いとともに染み込んでいく。

血で染まった刀身

それが突然出現した光で包まれていく。

深緑の光。刀身を包んでゆく。

血の紅をまとう緑はなぜだろう?なんだかとても暖かい。

虚像の恭也が光となる。

それは魂。

光は半分に分かれ一つは天に昇っていく。

そしてもう半分は八景の周りを周回し形を成して行く。

光は集まり凝固する。

そこに立っていたのは翼を持った獅子。

身の丈十メートルはあろうかという巨大な獣

全身を緑の毛皮を包み、まるで羽の一枚一枚が翡翠石出来ているかのように神々しい。

同色の装具を纏っている。

獣王たるその貴き風貌。チャイルド、そう呼ばれるものに似て非なるもの。

悲劇の戦姫達の願いの結晶。

装具の間を抜ける風が心地よい旋律を奏でる。

それは昇天した自らの半身向ける鎮魂歌。

恭也の視点ふいに虚像の風景が消えていく。

そして、闇の中佇む恭也の目の前にその獅子が立っていた。

まるで覚醒を果たした自らの半身を迎えるかのように。

恭也は獅子を見上げる。優しい瞳で。

こちらもまた迎えるように。

恭也の両手に光が集まる。現れるは二刀の小太刀。

刀身は緑。全体的なホルムが機械的になっているがその感触は馴れ親しんだ。

八景の感触に相違なかった。

恭也はわかっていた。

この夢の意味を。過去の自分の記憶を通して。

自らの覚醒はその確固たる証拠。

「カグラ、始まるのだな――戦姫の戦いが・・・・・・。」

恭也は獅子の名を呼ぶ。

神楽。神をまつるため奏する舞楽。

戦姫たちの願いを奏でるそれから来た名。

過去、守りきれなかったものを守るため。

目覚めを感じる意識の中、恭也は決意を固めていた。

 

 

 

「母さん、話があるのだが。」

「何、恭也改まって。」

時間にして深夜、妹たちが寝静まったところを見計らい。

場所はテレビの置いてあるリビング。

目の前にいる母、高町桃子に話をきりだす。

「もしかして何?彼女でもできた?いつ紹介してくれるの?式は?孫はいつ頃抱かせてくれるの?」

ここ五年以内がいいわねと桃子は付け足す。

「話が飛びすぎだ、高町母よ。それにそんな話ではない。」

恭也は顔を赤くしながらも訂正する。

「え〜、桃子さん残念。」

っと、本当に残念そうにしてみせる。

「で、本当の用件は?美由希たちが寝付いた後話すということは大事なことなんでしょ。」

先ほどまでの態度はどこへやら?

いきなり真剣顔つきになる。

それを見た恭也は少し腑に落ちないながらも話を切り出す。

「俺の進学する高校まだ決まっていなかったよな、母さん。」

「うんそうだけど、このままだと近場の風ヶ丘に決定ね――えっもしかして恭也、行きたい高校あるの?!」

高町母は嬉々として聞いてくる。

いつも恭也は頼みごと滅多にしない為、桃子としてはとても嬉しいのだ。

もっと桃子が困った顔をする恭也としては少し以外だった。

「・・・実は――ある。」

恭也はおずおずと片手に持った入学案内を差し出す。

桃子はそれをとって眺めていた。

恭也としてはあのにこやかな笑顔が不安だ。

桃子の持っている冊子に書いている学校名。

『私立風華学園』

戦姫の戦いがはじまる風華の地に立つ学園。

恭也は自ら成すことのために行かなければならない。

御神の一族の止められなかった事態。想い半ばで消えていた戦姫たちのこと。

そして何より、過去の自分が守りきれなかったもののために。

恭也は行かなければならない風華の地へ。

 

 

 

 


こんにちは枕菊聖です。

 

そんなわけで書いてしまいました。

スートーリーは、舞-HiMEのアニメ版を中心にやっていきます。

多少、オリジナル設定が入ると思いますが、勘弁してください。

次回はいきなり恭也が風華学園高等部の三年生です。

・・・・ごめんなさい!!ごめんなさい!!だからゴミを投げないで(泣)

基本的にとらハのキャラは恭也しか出てきません。

それと恭也の性格が多少変わります。

ではまたいつか・・・・・・・。




初投稿ありがとうございます〜。
美姫 「ありがと〜」
舞HiMEとのクロス!
果たして、かの地で恭也はどんな物語を紡ぐのか!?
美姫 「早くも次回が待ち遠しいわね」
うんうん。早く続きが読みたい!
美姫 「次回も楽しみに待ってますね」
ではでは。



頂きものの部屋へ戻る

SSのトップへ