終わらない物語ーマリア様のいたずらー

 

 

 

 

パーン!

 

 

イベント終了の合図が鳴り響いた。

 

このとき、会場にいた参加者・・・・・・及び主催者から落胆のため息が漏れた。

 

なんと、3枚のカードは誰も発見することができなかったのだ。

 

これでは、企画した新聞部も形無しである。

 

『えー、まことに残念なのですが・・・・・・カードは1枚も発見されませんでした』

 

アナウンスをする三奈子も、声に開始時のような力が無い。

 

そのまま、なし崩し的にイベントはお開きになった。

 

 

 

その後の薔薇の館。戻ってきた聖と蓉子を加えてお茶会が開かれていた。

 

「本当にうれしかったわ・・・・・・この館が人でいっぱいになってるなんて」

 

蓉子が満足そうに微笑んでいた。

 

「蓉子は、薔薇の館の敷居を取りたいって言ってたわね・・・・・・適ってよかったじゃない」

 

江利子も蓉子の微笑みに対して笑顔で答えた。

 

「祐巳・・・・・・それに令たちもそんなに落ち込まないの」

 

イベントに参加したのだが、結局カードを発見できなかった一同はがっくりとしていた。

 

だが、その中で一人平気そうな顔をした聖が

 

「そうだよ。だって恭也は誰のものでもないってことなんだし・・・・・・まだ間に合うよね」

 

そう言って恭也の首に腕を回すと

 

「ねえ、恭也。姉妹なんてまどろっこしいもの通り越して・・・・・・恋人同士ってのどう?」

 

「ま、ちょっ・・・・・・落ち着けって聖!」

 

「うふふ、何を慌ててるのかな恭也は」

 

「お前・・・・・・分かってて言っているだろう」

 

「もちろん。祐巳ちゃんの百面相もいいけど恭也の子供っぽい顔も楽しいな〜」

 

「もう、お姉さま・・・・・・恭也さんが嫌がってます!」

 

「そうですよ白薔薇さま!私に抱きついてもいいですから離れてください!」

 

祐巳の言葉に聖の目が光った。

 

「馬鹿・・・・・・」

 

祥子が頭を抱えた。白薔薇さまの作戦に見事に引っかかってしまったのだった。

 

「ふふふ、祐巳ちゃんの許可が出たならOKだよね〜」

 

「え、ろ、白薔薇さま・・・・・・?」

 

「ゆ〜み〜ちゃ〜ん。おねーさんとたくさんいいことしようね〜」

 

「そ、そ、そんな〜」

 

祐巳は、白薔薇さまに抱えられて部屋を出て行った。

 

「だ、大丈夫よ。聖もそんなに無茶はしないと思うよ」

 

藤代はそう言うが

 

「いえ、残念ながら・・・・・・聖に限りそれは通用しないわ」

 

蓉子が顔を顰めながら、聖の後を追って館を後にした。

 

「ほら!いつまでうなだれてるの令ちゃん!」

 

「あう・・・・・・由乃ぉ・・・・・・」

 

先ほどからまるで発言もなくうなだれている令に由乃は発破をかけた。

 

「私はまだあきらめませんよ。ここでヘタレている姉とは違いますから」

 

ニヤっと笑って令を見ると

 

「わ、私だってあきらめたわけじゃないよ・・・・・・」

 

令が起き上がる。

 

そのとき、館のドアが開いた。

 

祐巳が祥子の隣に駆け足で座り、蓉子が聖の首根っこを掴んで帰ってきた。

 

聖は、「反省しています」と言うのが分かる顔をしていた。

 

その顔にみんなの雰囲気が和んで、自然と笑いが漏れた。

 

 

 

帰り際、赤星が恭也に

 

「そういえば・・・・・・お前はどこに隠したんだ?」

 

「そういうお前こそ・・・・・・」

 

「それがな・・・・・・実は」

 

 

 

赤星の話によると

 

 

 

なんと、赤星のカードを発見した生徒がいたとのことだった。

 

だが、その生徒はカードを持ってくるに持ってこれなかったそうだった。

 

後で聞くと、その生徒はリリアンの中等部の生徒だったそうだ。

 

姉の制服を借りて来たそうなのだが、姉と会ってチョコレートを一緒に食べているところ、

 

カードを発見してしまったらしいのだ。

 

 

 

「それで、さすがに公表するわけにも行かないから、みんなに内緒でロザリオはプレゼントしたよ」

 

「そうだったのか・・・・・・」

 

「目的の人に見つけてもらえなかったのは残念だけど、その子も喜んでくれたからよかったさ」

 

赤星はさわやかな笑顔でそう言った。

 

「で、お前はどうなんだ?」

 

「俺は、手の届くところだが、絶対に見つからないところだ・・・・・・」

 

「おいおい、そんなところが本当にあるのか?」

 

「ああ。だって見えないんだからな」

 

「・・・・・・は?」

 

「これは、俺のカードの色が黒だからできたのだけどな」

 

「・・・・・・わからん。どういうことだ?」

 

「実は、暗幕にカードを貼ったんだ。図書室のな」

 

「はー、なるほど。それはうまいな・・・・・・」

 

そう、人の死角を突くのが御神流だ。

 

 

 

俺はまだ、誰か一人なんて選べない。

 

みんなのことが好きだし、俺はみんなを護りたい。

 

いつか結論を出す・・・・・・。だから、それまでは時間をもらってもいいよな?

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日

 

 

「はぁ・・・・・・本当に気が滅入るなぁ・・・・・・」

 

校舎から一人の少女が出てきた。

 

今日はリリアン女学園高等部の入学試験日なので、一般生徒はお休み。

 

少女は受験生なので、試験を受けて面接を終え今に至る。

 

(まあ来週は20年に一度の観音様を見に行けるんだから、このくらいは我慢しないと)

 

そう思って、銀杏並木に足を踏み入れると、強い風が吹いた。

 

「うわっ」

 

捲れあがりそうなスカートを抑えた。まあ、どうせ女しかいないからいいんだけど。

 

教室の窓に「4月からよろしく」と書かれた受験生向けの文字があった。

 

「おいおい、よの棒が逆だよ」

 

苦笑しながらそれを見ていると、空から何かが降ってきた。

 

なんだろう、と思ってそれを手にとってみた。

 

それは黒いカードで『St.Valentine 恭也』とかかれていた。

 

どっから飛んできたのかな・・・・・・そう思ったのだが、裏の文字を見てがっくりと来た。

 

『よろしく』

 

ただ一言が書かれていた。

 

(いや、私は別によろしくしたくはないんだけどね)

 

そう思うのだが、なんとなく捨てられずにカバンの中にしまいこんだ。

 

そんな少女の姿を、マリア像は慈愛の微笑みで見ていたのだった。

 

 

 

その1ヵ月半後、本当によろしくしてしまうことになったのだ。

 

忘れられたそのカードから新たなドラマを紡ぐのは、また先の話となる・・・・・・。

 

 

 

 

 

To Be Continued

 

 

 

 

 

 

 

 


あとがき

 

 

えー、一応オールエンドみたいなものですね。

終わり方に何か疑問を持った方。

期待しないでくださいね。

 

一応、言えることは・・・・・・出来たら頑張ります・・・・・・




ALLエンド的な位置にあるこのエンディング。
美姫 「一番、気になるのは、最後の少女よね、やっぱり」
うんうん。一体、この後、どんな騒ぎが巻き起こるのか。
美姫 「まあ、その時には、恭也は居ないんだけれど」
それでも、きっと騒ぎが起こるであろう事は、想像に難くない。
美姫 「確かにね」
とりあえず、これも一つの未来の形。
美姫 「うんうん」



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