月がまだ見える夜更け、雲が流れる海鳴市のビルの屋上に、一人の少女と一匹の獣が佇んでいる。

少女は金髪の髪をツインテールにまとめ、その身を漆黒の衣装で包み、手には杖のようにも斧のようにも見える器物を持っている。

獣はオレンジ色をした毛並みを持ち、その姿は犬、というより狼のように見える。

 両者ともに、おおよそこの世界、この国の住人としては不釣り合いだ。それもそのはず、二人は本来ならこの世界にはいないはずの者たちなのだから。

 ならば、なぜこの世界にいるのか……。

 

「ロストロギアは…、たぶんこの付近にあるんだね……」

 

 彼女の目的は探し物を見つけること。

 

「形態は青い宝石、一般呼称は“ジュエルシード”」

 

 探し物を見つけて、あの頃を取り戻すこと。

 

「そうだね…、すぐに手に入れるよ」

「ウォーーーン!!」

 

狼は応じるように吠え声をあげる。

 

それは始まりの合図。

 

さあ、行こう。

 

願いを叶えるために……

 

 

 

 

 

リリカルなのは――力と心の探究者――

第五話『異世界からの来訪者!?』

始まります

 

 

 

 

 

 う〜ん、う〜ん、ホッタラカシニシテスイマセンゴメンナサイ、オレガワルウゴザイマシタ、ユルシテクダサイ……ハッ!? ハア…、ハア…、ゆ、夢か……。

 くっそ〜〜、あれから何日もたつのにまだ夢に見るのか。

って、 何があったんだっけ……? あ…あれ!? か、体が震えて……、やめとこう!思い出さないほうがいい、それがきっと俺自身のためだ! うん!!

 

 

 

さて、あれから体の震えが収まった俺は朝食を済ませ、外に出ている。何が目的かって?なーんもなし。今日は休日だし、翠屋のバイトも入っていない。何をやろうか。いくら修行が好きだからって、毎日を修行漬けにするつもりはない。

あの人がいたころはそりゃあもう時間があれば修行三昧の日々だったけど、世間には面白いものはいくらでもある。

いくら蓬莱式が本来は俗世間と関係を断たなければいけないとはいえ、俺が今世間で生きている限りはいろんなものに触れていきたい。

 と、その前に伸びてきた髪でも切ろうかな。鬱陶しくなってきたし、また桃子さんが切ってくれるなんてことになったらかなわない!!

俺は忘れやしない! あの『お坊ちゃんヘアー事件』を!

 あれは去年の夏休み中のこと。高町家で団欒しているとき、俺の散髪の話になった。

その話の流れで、桃子さんが切ってくれるっていう話になった。恭也さんがやめておけって言ってたが、断るのも悪いと思ったので受け入れた。

それが間違いだった! 

そうして俺の髪形は前髪や両側を切り揃えられた、『ザ・オボッチャン・マークU』にされたっ!

 『マークT』は言わずもがな。

あの人は小学生の頃、その髪型にされて一週間ほどマジで登校拒否をしたそうだ。

気持はよーく判る。俺もあの髪形は自分でも「なんじゃこりゃーー!!」と嘆いて人前に晒したくなかった。あの髪形を否定するわけじゃないが、少なくとも俺には似合わなかった。

夏休み中だったから帽子をかぶったりできたから良かったものの、学校じゃあさすがに無理だ! ぜってー登校拒否ってただろう!!

桃子さんは善意でやってくれたんだろうけど。俺は絶対、あの屈辱は忘れられない……。

 

 恭也さんとなのはは、今頃忍さんの家に行ってる頃かな。なんでもお茶会をやるんだとか。

昔こそは、お茶会は他の家に対して自分達の嗜みを、自分たちの力を見せつけるものだって教えられた。だが、今でこそは本当は紅茶を飲みながら会話し、静かなひと時を過ごす。決してイヤミなものじゃないというのが判る。あんなやり方をする俺ん家が捻くれているだけだな。

にしても、恭也さんたちはともかく、なのは達がやると、どうもませてるなぁって気持ちがわいてくる。あの子たち、精神年齢何歳だよ!? 恭也さんといい、この街の人って見た目が若くても中身は……なんて。まあ絶対に口走るなんてことはしないけどね。ヘタレだなんて言うなよ? ここの人たちを怒らせる事は、死につながるってことを俺は知ってるだけだ!

それはともかく、俺があの年頃の頃は……、やば…、ほとんど修行してた記憶しかない! 休日になれば近場の修行できる場所に連れられてみっちりしごかれ、長期になれば、山に連れられて籠りそりゃあもう……。 充実してはいたけど、なんとも味気ない日々だったのかもな……。

 んで、恭也さんも今頃忍さんと恋人同士の時間を満喫しているだろうし。わざわざお邪魔するなんてそんな野暮な真似はしない。というかあの二人が揃ってると弄られるんだよな〜俺。

この前なんて、俺と神崎の関係が怪しいとかなんだとかワケわかんない話になって、口を割らすために新開発した自白マシーン。

名付けて『あることないこと全てばらしなさい、ヘルズティクル(くすぐり地獄)、忍ちゃんバージョン』。

俺を磔にし、どこからともなく伸びてきたマジックアームで俺の体中をくすぐってきた。 

あれは地獄だった! ばらすも何も、ばらすものなんて何もないんでからどうしようもなかった……。

 しかもこの開発には恭也さんが提供した、人体のくすぐりに弱い場所の知識が使われたとかなんとか。御神流は暗殺に優れているから、人間の身体のことは把握しているとか言ってたけど、そんな知識を忍さんに教えるなーっと俺は叫びたかった! つーかなんで暗殺とくすぐりが結びつくんだか……。ほんと、あの人たちって最凶カップルだよ……。

 

それはともかく、散髪を終えたらあの青い石のこともあるし、それらも兼ねてぶらつくとするか。たまには一人でいたいし……。

決して休みの日に相手してくれる人がいないもんだからの暇つぶしじゃあない! 違うんだからね!

 

 とりあえず散髪を終えた俺はその足で行きつけの骨董品店へと向かった。

といっても買うんじゃなく、ほとんど見て回るだけなんだが。この手のものは高い物が多い。無計画に買って行けばたちまち家計は火の車だ。もちろん安ければ買うが。

 今の俺は翠屋でバイトして自分である程度は稼げるから、生活する上でどうしても必要でない限りはあの(・・)()には手を出したくない。悔しい話だが、翠屋でのバイトだけでは家の家賃や学費は賄いきれない。どんなに息まいても、俺がちゃんと社会に出るまでは無力な子供なのだ。だから親に頼らざるを得ない。たとえどんな親でも……。

それはさておき、俺がバイト代をやりくりして買った中でも、一番のコレクションは朱雀や青龍といった幻獣の装飾が施されてる中国の古い銅鏡や、勾玉の首飾り(レプリカ)とか。

神秘な感じや味のある光沢がいいのに、美由希やなのは達は、恭也さんの盆栽と並んで、「年寄り同盟」と言ってくれた。いくらなんでも恭也さんの盆栽に比べればマシだと思うんだが……。ふっ、まぁ「お子様同盟」には判らん世界さ!  

っと、今日は目ぼしい物はなし! ここの店主さん、変わった形だったり、綺麗なものなら石ころでも拾って商品にする。あの青い石を拾っていたら置いてあるかもと思ったけど、外れたみたいだな。

 

 

 

 ふう、あれから街を散策してはみたけどなーんもなし! 俺は桜台にある草原(くさはら)でごろんと横になる。

あぁ〜、気持ちいい! まだ四月だけど今日は陽気で暖かい。これなら外でも昼寝ができるだろう。そう思いながら俺はポケットの中に入れていた、札の付いている小瓶からあの青い石を取り出す。空にかざしながら眺めてみても綺麗な宝石にしか見えない。若干、この世界とは違う異界の神秘、青い光沢を放ち、“魔”の輝きを放つそれに、俺は自然と目を奪われていく。

やっぱりコレクションにしちまうか!? …てほんとはまずいんだろうけど。こいつは俺個人にどうこう出来る代物じゃない。

ただ見るだけなら。それがあんな強い力を持っているだなんて傍からじゃわからないだろう。もし、この石を使って何か碌でもないことをしようとする奴が現れたら、どうするべきなんだろうな……。

 

『あんた……、その手に持っているのはジュエルシードだね』

「ん!?」

 

 突然耳にではなく、頭に直接声が響いてきた。これは、伝心術か……!? 魔法を使うものが近くに!?

 ボーっとしていた意識を覚醒させ、俺は慌てて起き上がり、相手の気配と魔力を探る。そして見つけた! 視線の先に、オレンジ色の髪をした女を。

だが、犬耳と尻尾を持っているところを見ると普通の人間じゃない! 感じる気配も普通の人間のものではないし、さっきも伝心術を使ってきた。 久遠のような妖か!? それとも……。

 にしても、いくらボーっとしてたといえ、伝心術につい反応しちまった。これで相手にも俺が魔法を使う者だってことがばれただろう。気付かないふりしてれば、一般人だと思って警戒されることもなかったろうに。咄嗟のことについ反応しちまったか……、まだまだ修行が足りないな……

 

 

 

〈謎の女視点〉

 ラッキー! この世界に来て別行動している最中に、都合よくロストロギアをかざしてる奴を見つけられるなんて!

 あの子も見つけたって連絡くれたし、ここはあたしもロストロギアゲットと行きますか! 

あいつも念話に反応したところをみると、魔導師みたいだけどそんなの関係ないね。だいたい、この魔法がない世界にあの子ほどの魔導師なんてそうそういないだろうし。

さーて、感激ばかりもしていられない。さっさとあいつからロストロギアを手に入れて、援護に行かないと。

あたしはあの子の使い魔、あの子を守る者なんだから!

 

 

 

〈第三者視点〉

「俺になんか用かな!?」

 

 門口一番に竜馬が問う。だいたい見当は付いているが、確認のためにも聞くしかない。

 

「あんたが今手に持っているロストロギア……、ジュエルシードをもらいに来たのさ!」

「ジュエルシード!? これはジュエルシードっていうのか……」

 

 手に持つ青い石、ジュエルシード。ようやく名前を知ることができた。

名前を知っているところを見るとやはり異世界出身者の可能性が高くなってきた。竜馬は再び口を開く。

 

「それで!? 君はこのジュエルシードってのを手に入れてどうしようっていうんだ!?」

「そんなの、あんたには関係ないだろ! おとなしくそいつを渡しな!」

「と言われてもなぁ……。こいつで何をするかわからないのに、はいそうですかってなわけにはいかないさ」

 

 女性はなかなか渡して来ない竜馬に対して、噛みつくように返してくるが、ジュエルシードの力の一端を、竜馬はその目で見ている。この力を使って何をやらかす気なのか、それも判からない相手に渡そうとするほど、竜馬も呑気ではない。

 

「ゴチャゴチャうるさいよ! こっちは急いでいるんだ。渡さないってんなら、アンタには悪いけど力づくでいくことになるよ」

「おもしろい。やれるもんならやってみな」

 

 挑発で返してきた竜馬に頭にきたのか、女性は軽く宙に浮くと一気に迫ってくる。スピードはかなり早い。おそらく常人では対処しきれないだろう。そしてその勢いで正拳を繰り出そうと拳を引く。

 そして、勢いに乗って放たれた正拳はかなりの威力があるだろう。

 

「セヤァアアアアアーーー!!!」

「よっと」

「!?」

 

 竜馬は迫ってきた拳を手でいなすように逸らす。女性は勢いに乗ったまま竜馬の後方へすっ飛んで行くが、慌てながらも体勢を立て直す。

 女性は自分の攻撃をあっさりと防がれて驚くが、竜馬にしてみればこれくらいは造作もないことだ。

 

「威力も速さもあるけど、いくらなんでもそんな勢いだけの拳なんてそうそう当たりゃしないぞ」

「このぉー!」

 

 竜馬に小馬鹿にされた(本人にそのつもりはないが)と思ったのか、拳と蹴りの連撃を仕掛けてくる。一発一発は速いし、どれも人体の急所にめがけてきている。鳩尾への正拳、脇腹への回し蹴り、側頭部を狙ったハイキック、どれも意識して狙っているとは思えない。それだけの目まぐるしい高速の連撃だ。鍛えてきた故の経験か? それとも野生の勘か!? 威力ももちろんあるだろう。だが……、

「(力も速さもあるし、結構できるが、ちょっと我流気味だな……)」

 

 攻撃の殆どが直線的で工夫があまりない。これでは竜馬に当てるのは難しいだろう。

 正拳を掌で止め、回し蹴りを腕で受け止め、ハイキックを頭を反らしてかわす。そうしていくことで、焦れてきたであろう相手の両手を手に取り、組み合う形になる。

 

「ぬ……」

「この……」

 

 かっちりとつかんでの力比べ。相手は魔力を使って力を引き上げているが、竜馬もまた気(霊力)を開放し力を高めている。互いに常人ならざる力を発揮させているため、足元の地面が埋没していく。だが竜馬の方が押しているようだ。

 

「う、くくく〜〜〜」

「ど…どうした。力づくでいくんじゃないのか!?」

 

 挑発してるが、実際竜馬も相手の力に内心で驚いてるのだ。魔力を使っているとはいえ、女性でありながらの腕力は目を見張るものがある。これに技が加わるとどうなるか……

 膠着してたかのように見えるが、竜馬はとたんに力を抜く。女性はつっかえ棒が取れたかのようによろめき、隙ができる。

 

「おわっ!」

 

バランスが崩れたところで右手を捻りあげ背に周り、取り押さえる形となった。

 

「アイテテテ!!」

「ここまでだな。え〜と、俺の名前は朝霧竜馬って言うんだが……」

「アンタの名前なんかどうでもいいっての!」

「まぁ、それもそうなんだけど、一応礼儀だからさ…、っとそれは置いといて。どうやら色々と知っているみたいだから聞かせてくれないか? ジュエルシードのこととか、君の目的のこととか」

「だ、だれが……」

 

 不利な状況でもその気概は衰えることなし。しかし、がっちりとつかまれた腕は、そう簡単にははずれない。だが、女性は身体を光らせその姿を変えていく。

何が起きたか、警戒した竜馬は手を離し、距離を取る。

 光が収まると、そこにはオレンジ色をした狼の姿が現れた。

 

「これは…、変化か!? つーかそれが本当の姿ってわけか!」

「そうさ、あたしは狼の使い魔。あたしの御主人さまのためにも負けるわけにはいかないんだよっ!」

 

 オレンジ色の狼は吠え声をあげながら、威嚇するようににらんでくる。だが、竜馬は怯みはしない。それどころか……、

 

(ご主人様のため…か……。使い魔だからそうしなければいけないっていうんならどうかと思うんだが、それが心からなら……いいのかもな、そういうのも)

 

 狼の誰かのためにという意思に疑問と感動を覚える。何の臆目のなく、誰かのためにと言い切る姿勢に感心しているのだ。

 

(おれにはそいうのないもんな……、いや思っちゃ…いけない……)

 

 自分にはそんな気持ちはない。いや自分にあるはずがない。あったとしてもきっとまやかしだろう。あのときそれを思い知らされている。

 なにより、今の自分がそんなことをしたら証明できなくなる。あれを……。

 

「その意気や良し! そんなにこいつが欲しけりゃ奪ってみなっ!」

 

 今の竜馬に誰かのためにという意思はない。だがもし相手の言うご主人様とやらがジュエルシードを使って何か企んでいるとしたら? もし悪用しようとしていたら? それは魔法を使うものとして放っておけることし、放っておきたくない。

自分の中にある矛盾を感じながらも、竜馬は渡さないことを選ぶ。

 

「そうさせてもらうよっ!」

 

 そう言うやいなや、狼は飛びかかって来る。本来の獣の姿に戻ったせいか、その瞬発力は格段に上がっていた。右前脚の爪を突きたてようと向かってくる。

 

「くっ!」

 

 竜馬は半身を逸らすことでかわし、その流れで左足の回し蹴りを放つ。狼は身体を捻ってかわし、地面に降り立つと、すぐさま追撃を掛けてくる。その姿勢は低い!?

 その場をバックステップで飛び退く。爪が突き立てられた地面は大きくめくれていた。狼の動きは獣なだけにかなり素早い。力を素早さに乗せてくるのだから。くらったらひとたまりもないだろう。

 今度は高い機動力で複雑に走り回りながら竜馬と残りを詰めていく。竜馬の眼を幻惑させ、反撃方法を絞らせずに仕留める気だ。だが……。

振りあげられてくる爪が竜馬に当たらない。狼の姿になったことで、攻撃の仕方が人間体の時より乏しくなっているため、余計に見切りやすくなっている。力も速さも増しているが竜馬とて気を開放して力を上げていくことができるのだ。その差は簡単には埋まらない。

 

「このっ!……」

 

そして、狼の方も驚きを隠し切れていない。無理もないだろう。さして魔力を使ってない相手に思うように攻撃を当てられずにいるのだから。

 

「グウゥ〜〜〜」

 

 狼は唸り声をあげ、周囲に光球を浮かび上がらせている。魔力の塊、魔力スフィアだ!

 

『フォトンランサー・マルチショット』

 

 オレンジ色の光は見た目通り弾丸となって竜馬に迫っていく。その数七つ。威力はそこそこだろう。竜馬はかわそうと身構えるが、あることに気づく。

 

「(なんだ!? 弾道が……)」

 

その多くは竜馬の身体を逸れ、周りの地面に着弾し煙が巻き上がる。

 

「外れた!? いや……」

 

 撃ってきたはずなのに当たらない魔法、巻き上がる爆煙。狙いは……、

 

「目くらましってわけかっ!!」

 

 相手は直接狙っても竜馬が防ぐか、かわすと踏んでいたのだろう。ならば確実に仕留めるための繋ぎとして撃ってきたのだろう。良い作戦だ。だが……、

 

「(落ち着け! 目の前で起きていることに気を取られずに相手の気配を探れ! )」

 

 竜馬は自分に言い聞かせるようにしながら背後から迫る気配を感知し、その身を屈ませる。すると突然飛びかかってくる影が。煙にまぎれて仕掛けてきたのだ。しかし、その顔には驚愕が浮かんでいる。自分の狙いが外れたからだ。

 竜馬は屈んだ体勢からの蹴り上げを狼の腹に直撃させる。

 

「ガハッ!!」

 

 直撃を受けた狼は大きく放物線を描くように吹き飛ばされ。何とか着地するもその勢いのまま地面を滑って行く。

 

「くっ!」

 

 すぐさま起き上がるが、その隙を竜馬は逃さない。相手は強い。思いっきり行かなければこちらがやられる。

『発足』で一気に狼に接近を仕掛ける。瞬時に間を詰めてきた竜馬の瞬発力に狼は反応できていない。そして竜馬は横っ腹に掌を当て内気を集中する。

 

気功勁衝(きこうけいしょう)!』

 

震脚を行い、そこから伝わった全身の力、そして体内で練られた“内気”が掌から放出され狼へ炸裂される!

 

「ガハッ!!」

 

 その衝撃に狼は弾き飛ばされる。地面に叩きつけられてもその勢いは止まらず、十数メートルは滑っていた。

ようやく止まり、なおも立ち上がるもその足元はおぼつかない。ダメージが大きいのだ。

 

「グルルル」

 

 ダメージはあってもその瞳から力強さは消えていない。狼は唸り声をあげながら睨んでくる。だがやがて、狼は背を向け、飛びあがり去って行った。

 気勢はあってもダメージの大きさから、このままでは不利だと判断したのであろう。なかなか冷静だ。

竜馬は追おうとするも……、

 

「……やめとくか。どうもジュエルシードとやら、相当手に入れたがってたからまた来るだろう。その御主人さまと一緒に」

 

とりあえず撃退できたことに安堵しよう。

 

「にしても、あれほどの奴が使い魔か……。だったらその主ってのは一体どれほどなんだろうな……」

 

 勝ちはしても相手の力もなかなかのものだった。あれで技術を積んで行けばもっと凄くなるだろう。

一応敵対してきたとはいえ、あの狼の潜在的な可能性に、竜馬は胸を高鳴らせずにはいられなかった。もちろん自分もまだまだだが……

 そしてそのご主人さまとなれば、当然レベルも高いだろう。いったい何者なのだろうか……。

 

 

 

いたたた〜〜、ちくしょ〜、どうなってんだい! あいつ、魔力は大したことないはずなのに……、いやそれ以前にあんまり魔力を使ってなかった!? ムチャクチャ速かったし、最後のあれだって一体何なんだい!? あたしの身体の中に直接ダメージが来た! あれって魔法? もう! ほんとにワケ判んないよ!! 

ここで少しでもジュエルシードを手に入れておけばあの子も喜ぶ。でもそれだけじゃないんだ! あの子のためにも絶対手に入れておかなきゃいけなかったのに……。

 

 

 あたしらがこの世界で活動するために借りたマンションに戻ると、もうあたしの御主人様、フェイトは帰ってきていた。

 

「アルフ、お帰り……!? どうしたの!? 何かあったの?」

 

 あたしのそばに駆け寄り、心配をしてくれてる。嬉しいよ。でも見た目にはあんまり傷は付いてない。きついのは身体の中だよ。でも動けるってことはあいつ……、手加減してくれたのか?

 

「大丈夫だよ。ちょっとドジ踏んじゃっただけさ」

「ドジって…、一体何があったの?」

 

 う〜〜、そんなつらそうな目で見ないでおくれよ…。これじゃあ隠し事なんて出来やしない。やっぱり正直に話すしかないか……。

 

 あたしが事の顛末を話し終えたら、この子は信じられないっていう顔をしている。

 

「そんな…、アルフに勝つなんて、その人、一体何者なの……」

「あたしにも判んないんだよ。魔法はてんで使ってこなかったし、でも魔導師ではあるみたんだけど…。ごめんよ、あいつからジュエルシードを手に入れるつもりだったのに……」

 

 あたしはもう自分が情けなくてしょうがなかった。あたしは誰の使い魔だ!? 今目の前にいる子の使い魔だろ!! なのにこの体たらく……。

 

「気にしないで。無事でよかったよ。本当に……」

 

 そう言ってあたしの頭をなでてくれる。それがとても心地よくて……

 

「それより、大丈夫だったの? ごめんよ、手伝いに行けなくて……」

「うん、大丈夫だったよ。少し邪魔が入ったけど」

「邪魔って!?」

「私と同じように、ジュエルシードの探索者がいたの。でも勝てたから」

 

 さっすがあたしの御主人様! なのにあたしときたら…、ハァ〜〜

 

「大丈夫、アルフが言ってた人に会ったら、私も一緒に戦うから」

「フェイト〜〜」

 

 そうだね、悔んでばかりでもいられないよ。あいつ……今度会ったら絶対負けない! 次はブチのめしてやる! そしてジュエルシードを手に入れる。あいつには悪いけど、そうすることがフェイトのためだ。 この子があの人に虐められたりしない為にも……。

 あたしはアルフ! フェイト・テスタロッサの使い魔なんだから!

 

 

 

〈フェイト視点〉

 アルフ…、無事でよかったけどその人、ホントに一体何者なんだろう? 今日会ったあの子みたいにジュエルシードを探している人がいる。

 いくつか持ってるのかな? だとしたら……。

 いや、どんな人が相手でも私は負けない! 負けられない!!

 母さん、待ってて。白い服の子やその人から手に入れたら、すぐに帰るから。そうしたらあの頃みたいに……。 

 

 

 

 

 

蓬莱式説明

・伝心術

 光属性

 ミッド式における念話。自分の心と相手の心をつなげ、会話を行う。 

心は光属性に位置し、その心で会話を行うために“光”に属している。

 

・気(霊力)の開放

 体内で練り上げた気(霊力)を全身に流し、煉装身のように肉体強化を行う。

 竜馬は単純な魔力量は多い方ではない(あくまでなのは達と比べたらだが)ため魔力の消費を少しでも抑えるためこの状態で戦うこともある。煉装身に比べれば素早く出せるので扱いやすく、とある状況下でも高い戦闘力を発揮できる。

ただし、魔力攻撃・防御はできない。

 

気功勁衝(きこうけいしょう)

 体内で練り上げた気(霊力)を相手に接触した掌から相手に送りつける技。

 壁通しが出来るため、相手の一段目の防御をすり抜けることができる。つまり、バリアジャケットを通り抜け、相手の体自身にダメージを与えることができる。(今回の場合は、アルフが狼形態であり、魔法生物であるため元からの防御が高いことからバリアジャケットがなかった)本来普通の人間である場合、体内にダメージを与えられている。

 ただし、バリアジャケットの上からさらに障壁を張られると、障壁は通り抜けられるが、バリアジャケットに阻まれる。(威力によってはダメージを与えられる)

 相手に密着しなければならない上に、放つ際の前後は隙ができるため危険が伴う。

 

 


あとがき         

 みなさん、第五話『異世界からの来訪者!?』いかがでしたでしょうか。フェイトの前にアルフと出会う話となりました。といっても殆ど敵対だけする形でしたが。

 原作の第四話、月村家でのお茶会、そしてなのはがフェイトと初めて会った日にリンクしています。フェイトがなのはと会っているころ、アルフは何をしていたのかを考え別行動している内に竜馬と接触したという流れにしました。

 竜馬は最初の方で“坊ちゃんヘアー”にされたという話がありましたが、これはとらハ3にあった話を持ってきました。この話を聞いた時、「えー、そんな話があったのかよ」と笑ってしまいました。そこで自分も欠けている笑いのネタとしてのっけてみました。 

今回、バトルは竜馬がアルフに圧勝しましたが、これは彼女(フェイトを含む)を教育したリ二スは、プレシアから受け継いだ魔法技術に対する知識はあっても、格闘技のノウハウはなかったのではないのかという解釈です。これでアルフに圧倒されたのでは竜馬は一体何をしてきたのか? という話になりますので(笑)。

 さて次回は『黒衣の少女の目的は!?(仮)』です。

 予定ではついに彼女と竜馬が接触します。バトルになってしまうのか!? それとも……

 今回はここまでです。それではまた。




ジュエルシードを狙う謎の影(笑)
美姫 「アルフたちの登場ね」
だな。竜馬とアルフが先に出会い、しかもバトルっちゃいましたか。
美姫 「次に会った時、果たして話し合いという手段が取れるのかどうかね」
竜馬は闘いたそうな感じではあったけれどな
美姫 「さてさて、どうなっていくのかしらね」
次回も待っています。



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