『極上とらいあんぐる!』




私立宮神学園には教職者達よりも権限を持つ美しき乙女達がいる。
 私立宮神学園極大権限保有。
 最上級生徒会。

 略して――。

 極上生徒会!





「俺は無実だぁ!」



 珍しく両手足を縛られた恭也は、鉄格子の奥から絶叫したのだった




第二話 有罪!?無罪!? 極上裁判!

「それでは第一回極上裁判を行います」
 裁判長の席についた奏の開廷合図に、弁護士席の奈々穂と検事席についた久遠は、互いに視線を一度だけ交差させると、神妙な面持ちで起立した。
「では検事、冒頭陳述を」
「はい。今回の事件は今から三日前に起きた」

         ※                ※

 その日は、九月半ば過ぎにも関わらず、蒸し暑い朝だった。
 極上生徒会第二寮で生活する事になった赤星は、珍しく夜更かしした影響で口をつく大きな欠伸を必死に噛み締めながら、隣に立つ第一寮にある食堂へと向かっていた。
「あ、おはよーございます」
「おう。赤ピーマン」
「ん? ああ、りのちゃんおはよう」
「俺には挨拶なしかよ」
「プーもおはよう」
「ちゃんをつけろ」
 微妙なイチャモンをつけながら、三人(?)は三ツ星ホテルですら諸手を上げて降参すると噂の食堂へと入った。
 すでに八時近かった事もあり、準備を整えた生徒会メンバーの大半が食事を取っている最中であった。
 思い思いの挨拶をかわしながら、何となくりのと相席した赤星の前に、管理人のまあちが今朝の定食をテーブルに置いた。
「あ、純和風だ〜」
「何々、白米、ワカメの味噌汁に焼き鮭、味付け海苔に生卵……。見事な和風定食だぜ」 美味しそうな湯気を立てている御膳を、文字通り瞳に星を浮かべて茶碗に顔を近づけて喜ぶりのを微笑ましく眺めながら、赤星はまあちに小さく礼を述べた。
 しかしさすがは赤星女性殺しの異名がある笑顔は、まだ小学生のまあちにすら影響を及ぼして、お盆で顔の半分以上を隠して台所に走り戻ってしまった。
「あれ? 管理人さんどうしちゃったんだろう?」
「さあ……。俺がお礼を言うといつも走って言っちゃうんだよな」
「はぁ〜。これだから自覚なしは性質が悪いぜ」
「自覚なし?」
「いや、何でもないさ。とにかく飯にしようぜ」
 自分勝手に納得してしまったプーちゃんに、互いに顔を見合わせて首を傾げた二人だったが時間がないのも事実のため、そのまま食事に取り掛かった。
「そういえば神宮司さんは今日は一緒じゃないんだね?」
「はい。奏会長は早朝会議で先にでました」
 言われてみれば奏と奈々穂、久遠の執行部上位三人の姿が見えない。
「……でも、普通そう言うのって執行部全員じゃないの?」
「え?」
 ツッコまれて、ぐるりと食堂で他にいない人員を探すと会計のまゆらもいなかった。
 それまでの美味しいご飯を見て輝いていた星入り瞳がとたん真白に変わる。
「ああ、そう言えば会長さんからりのを起こしてくれって頼まれてたっけ」
「うそ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!」
「りのちゃん、頑張ってね……」
「うわ〜ん! 管理人さんのご飯ー!」

         ※                ※

「と、このように平凡の一日の始まりであったというのが聖奈の調べでわかっている」
「そうだったの。プーちゃん、今度はちゃんと起こしてくださいね」
「ああ。約束するよ」
 裁判官補佐として奏の横に座っているりのとプーちゃんに満面の笑みで三日前の遅刻を許した奏は、甘甘な雰囲気を漂わせながら奈々穂に続きを促す。
「それで、何故恭也さんが私のロッカーの中で眠っていたのか? その事件の真相に迫る部分の陳述をお願いします」

         ※                ※

 朝食を半分以上残し、プーちゃんに体を引っ張られながら坂道を爆走し、何とか八時十五分に到着したりのはそのまま生徒会専用のロッカールームに飛び込み……校内に響く絹を裂く悲鳴を上げた。
 
 その頃、生徒会会議室ではりの抜きで始まった早朝会議の結論が出るところだった。
「では、本日の議題、島の商店街からの要請の提携による新名物の作成は、料理クラブと全国御土産研究会に申請するという事で……」
 悲鳴はこのタイミングで四人の耳へと届いた。
「りの?」
「何処からだ!」
「反響の度合いから見てロッカールームですわ!」
 一番最初に飛び出した奏を筆頭に、執行部四人はロッカールームへと駆け込み、今度はまゆらが小さく悲鳴を上げた。
 窓から差し込む日差しの中で、ロッカーにもたれながら肩を震わせて泣いているりのと、そして頭からブラジャーや体操着を被りながらも幸せそうに眠っている恭也の姿があったのだった。

         ※                ※

「以上が、今回の事件の全容です。我々隠密はすぐに高町恭也容疑者を逮捕、本日まで監禁した次第です」
 白いA4サイズの紙に記された文章を読み終えて、久遠は瞼閉じて椅子に座った。
 奏は小さく頷くと、続いて反対の席に座る遊撃隊長でありもう一人の副会長である奈々穂へと視線を動かした。
 それを受けて今度は奈々穂が立ち上がった。
「では続けて弁護人の冒頭陳述をお願いします」
「はい。今回、状況証拠ばかりであり、一番の注目点になるべき『何故被告人はあのような場所で寝ていたのか?』という部分が抜けていると思われる。従って今回は検察側の主張の無理を証明したい」
「ふふ……」
 久遠の小さな微笑に、奈々穂が視線を鋭く撓らせる。
 二人の中間で小さな火花が弾けあうのを見て、傍聴人席の赤星は小さく苦笑を洩らした。だがおかしい部分はある。
 第一、恭也は海鳴最高の鈍感としても、女子ロッカールームで寝ていたというのはありえない。
 親指の爪を噛みながら、彼は親友の無罪の為にこれから行われる証人喚問にじっと目と耳を凝らし始めた。
「ではこれより証人喚問を開始します。では最初に……本当に大丈夫?」
「はい! プ〜ちゃんもるので大丈夫です!」
「いい子ね」
「会……いえ裁判長。進めてもらえますか?」
 コメカミに指を当てて、少し眉毛をひくひくさせている奈々穂に、ごめんなさいと悪気のない笑顔を返して、一度咳払いをした。
「では検察側。最初の証人を」
「はい。では最初は当時ロッカールームで寝ていた被告人を発見した蘭堂りのを召還します」
 絶対的に場にそぐわない元気な返事を全校生徒と檻にはいった恭也もいる講堂に能天気に響く。
「俺は何もしていないのだが……」
「大丈夫だ。高町の無実は我々が実証する」
「いや、元々無実……」
「例えあそこに居ても私達が助けちゃいますから〜」
「何で隠密のお前が答える?」
「今回は隠密ですけど、ただの情報収集係ですので、こっちで高町さんの応援もします」
「反面、有罪も?」
「もちろん、思ってます」
「オイオイ」
 あっけらかんとした聖奈に呆れかえる奈々穂と、思わずその隣に座っていた御付の香がジト目で先輩に裏手でつっこんだ。
 完全に今日は無視になっている恭也は、難しい顔でどうしたら開放されるかとこちらも考え始めた。






「では証人、被告人発見時の証言をお願いします」
「わかりましたー!」
「りの、ファイト!」
「だからそれはもういい」
 更に続きそうなコントを何とか止める事に成功して、奈々穂は先を促す。
「では証人。証言をお願いします」
「はい!」
 返事だけは元気がいいようで。



〜証言・蘭堂りの。発見時の恭也について〜

 私が朝の会議に遅刻しちゃって、慌ててロッカーに入ると奥のほうでガタンって音がしたんです。
 で、奥の方は奏会長や副会長さんのロッカーなんで、誰か遅刻したのかなぁ? って思って覗いてみたら高町先輩が倒れてたんです。それで……。



「そこまでで結構よ。蘭堂さん」
 止めたのは久遠だった。
「久遠、何で止めたの?」
「必要ないからです。今必要なのは高町さんがあの場にいたと言う事実をしっかりと皆さんに認識を貰うためです」
 そんなの明らかな策略だ! 常に宮神学園の影を行う部署の奴なんだ!
 心の中で高らかに舌打して、奈々穂は少し眉を跳ねた。
「裁判長。以上の証言から高町恭也の女性に対する行いが、宮神学園という女子高に来た結果発露されたというのが理解頂けたでしょう」
 傍聴人席からざわつきと、恭也に対する非難が波となって表立つ。
 ここで木槌がなった。
 奏は力強く打ち鳴らしたのだ。
 ざわつきはぴたりと止まり、一同が裁判官に意識を集中させる。
「ではこれより尋問を行って頂きます。なお、証人は優しい性格で傷つきやすいので気をつけるように」
「……了解した」
 





〜尋問・発見時の恭也について〜

 私が朝の会議に遅刻しちゃって、慌ててロッカーに入ると奥のほうでガタンって音がしたんです。

「待った!」
 奈々穂が尋問のために話し出したりのを止めた。
「はい?」
「音がした……と言ったが、確認したか?」
「いえ、そんな余裕ありませんでした〜」
「何故だ?」
「弁護人、そんな事もわからないかしら? 目の前に誰が居たと思うの? 驚きが先に立つ状態で些細なものは気にならない」
「く……」
「り……いえ証人、先を続けて」
「は〜い」

 で、奥の方は奏会長や副会長さんのロッカーなんで、誰か遅刻したのかなぁ? って思って覗いてみたら高町先輩が倒れてたんです。

「待った!」
「またですか?」
「まただ。さっきは久遠に止められたが、『倒れていた』時の状態を詳しく教えてくれ」
「意義あり! 倒れていたという事は高町さんが『その場にいた』事を示します! 無駄な時間をかけている余裕などありません」
 奈々穂と久遠が三度火花を散らす。
 その様子にりのがぷっちゃんを抱えて涙目になってしまう。
「……弁護人、検事の言うように倒れていた事実があれば今回の法廷は終了ですが……」
「重要でなければ聞きません」
「わかりました。りの、もう少し詳しく話してくれる?」
「は、はい……」

 高町先輩はロッカーの頭をもたれるようにしてました。





「意義あり!!!!!!!!!!!!」




 一段と大きい凛とした声が、講堂に響いた。
 右手の人差し指を空気を裂くように突き出して、奈々穂は威風堂々とりのを一点に見つめた
「ふぇ〜」
「今蘭堂は頭をもたれるようにと言った。何故だ?」
「奈々穂、別におかしくないんじゃないかしら?」
「かいちょ……いえ裁判長。おかしいのです。あの状態であるなら……先に女性ものの下着を発言するはずです! しかし、一番目立つこの『下着』が話に出てこない!」

『あ!!!!!!!!』

 奏だけではなく、傍聴人席の全員から驚きの溜息が零れた。

「り……いえ証人、下着の事は……どうだったの?」
「え? あ、そういえば……」
 唇に指を当ててしばし考え込むと、あはは〜と愛想笑いを浮かべながら後頭部を掻いた。
「そういえば、その時に下着はなかったかも」




『なにぃぃぃぃぃぃ!』



「じゃあ、あの場所にもう一人居たという事?」
 奏の予測に、久遠が小さく溜息を洩らした。
「? 久遠?」
「いえ、こういう反応が出るから蘭堂さんに言わないようにお願いしていたのだけれど……」
「どういう事だ?」
「簡単な事。蘭堂さんの右手には誰がいるかしら?」


『…………』




『プッチャン!!??』


「ああ!」
 今度は奈々穂が驚愕の声をあげ、よろりと一歩後ろによろめいた。
「プッチャン、どうなの?」
 奏がこれまで静かにしているプッチャンに、問いかけた。
「あ?」
「いえ、だから高町さんに下着をかけたのは……」
「おう。俺様だぜ。中々の演出だろ?」
 あっけらかんと言い放ったプッチャンに、講堂中が沈黙した。
「と、とりあえず、十分間の休憩を取ります。弁護人はこの事実を含めて次の時間の方向性を考え直してください。検察側は少し事情聴取します」
「わかった」
「了解です」


  次回に続く!!!!!!!



「俺はどうなるのだろうか?」
「高町、成り行き任せなんじゃないか?」
「ふむ。それもいいか」




夕凪「さて、こんなSSを希望してくれた人に感謝の言葉を……って璃斗さん?」
(反応がない。屍のようだ)
夕凪「……最近忙しくて極上見れてなかったからキャラの感覚戻すのが大変だったって聞いたけど、ここまで……。南無南無」
死んでないやい!
夕凪「あ、おはよう」
何故に平然と?
夕凪「それはそうと、時間かかったね」
うん。忙しいのと、違うSSを複数書くのと、脳みそのキャパシティが限界に達しちゃって。それでとら剣中心にやってたのよ。
夕凪「ふ〜ん。で、まさか要望があるとは思わなかったと」
そのとおり!
夕凪「だったら最初から書くな!」
ぐはぁ!(バタリ)
夕凪「ふう。とにかく、今回は更に逆転○判風にしています。キャラの性格や話方違う! という苦情はshirfide@yahoo.co,jpまでお願いします。
誠心誠意もって変更とかします」
で、ではでは〜。(再度ガクリ)



いきなり、なにやら事件が発生〜。
美姫 「果たして、恭也はどうなるのかしら?」
下着はぷっちゃんの仕業だとしても、何故、あんな所で寝ていたのかな。
美姫 「次回が非常に気になるわね」
うんうん。次回を首を長くして待ってます。
美姫 「それじゃ〜ね〜」



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