あとがき物語 二つの伝説〜運命(みち)を行く者〜

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 第1話

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 わたしは学校へと連なる桜並木を歩いていた。

「学校はいつも通りみたいだ。よかった」

 これで学校まで変わってたらこの先やっていけないだろう。それにしても周囲の空気が異様に張り詰めているような気がするのは気のせいだろうか。なんだか今にも襲われそうな気がして落ち着かない。

「紀衣さ〜ん、おはようございます♪」

 むぎゅっ。

「わっ!?

 そんな時、急に後から誰かに抱きつかれた。

でも、この光景をわたしは知っている。いつも登校時に元気よく抱きついてくる可愛い後輩とおしゃべりをしながら登校する。それがわたしの朝の風景。

本当にそうだっただろうか……。う〜ん、どうにも思い出せない。

まっいっか。とりあえずこの後にいる困った後輩をなんとかしなくては。

「こらこら由衣、人が見てるでしょ」

「えへへ♪だってこれが私の日課ですもん」

「もう、ただでさえいつどこで誰に襲われるかわからないんだから」

「それは紀衣さんが学園のアイドルである証拠です。そんな人の傍にいられる私は幸せ者です〜」

 会話の節々に違和感と危機感を覚えながら桜並木を歩いていると、急に背中に悪寒が走った。

「うっ……」

「どうかしたんですか?」

「なんだか嫌な気配を感じたから……」

 それを聞いて由衣がはっとして辺りを警戒した。

「紀衣〜?」

「ひっ……!!

 茂みから黒い影が飛び掛ってきた。わたしは咄嗟によけた。

「あ〜ん、なんでよけるん?うち、悲しいで」

「そんなこと言いながらにじりよらないでよ。柚菜」

 襲い掛かってきたのはわたしの親友で幼馴染の秋桜柚菜(しゅうおうゆな)である。

明るくて優しい、とても良い娘なんだけど……。

「ああ、この抱きしめたときの温もりと柔らかさ……やっぱ紀衣は格別やな〜。このままずっとこうしとりたいな〜……」

 甘えた声を出してうっとりしながらわたしの制服の中へ手を入れようとする。

 パシッ。

「……この手をどこへ入れようとしてたの?」

「やあん、そんな怖い顔せんといてえな。ちょっとしたスキンシップやないか〜」

 良い娘なんだけど隙を見てはわたしを襲おうとする困った一面を持っている。

柚菜とは幼いころからの付き合いでよく一緒に遊んでいた。

わたしの数少ない女友達で一番信頼できる幼馴染である。

……本当にそれだけだっただろうか?なにか大切なことを忘れているような気がする。

 一瞬、脳裏に何かが過ぎったがそれがなんだったのかは解からなかった。

「むう、柚菜先輩だけずるいです」

「ほな由衣ちゃんも一緒にぎゅってするか?」

「はい、もちろんです」

 そんなわけで後と前ではさまれてしまった。

この二人も実はけっこう仲がよかったりする。

「ちょっと二人とも変なとこ触らないでよ」

「ええやん、うちら女の子同士なんやし」

「そうですよ」

「うう、くすぐったいからやめて」

 わたしはじわじわと身の危険を感じて二人を引き剥がし、学校へと逃げ出した。

「あ〜あ、逃げられてもうた」

「残念です。せっかく女の子になった紀衣さんをもっと抱きしめていたかったのに」

「あはは、そやな。じゃ学校行ったら第二ラウンドといこか?たぶんもっとおもろいことになっとるはずやから」

「はい、喜んでっ!!

 こうしてわたしの“地獄の一日”が始まった。

    *

 柚菜と由衣の魔の手から逃れて学校へやってきたはいいけど。どうやらわたしは間違っていたようだ。

校門をくぐって声をかけられた。

「おはようございますお姉さま」

 がんっ!!

「お……姉…さま?わたしが……」

 こればかりは頭にかかった靄でも誤魔化しきれなかったようだ。

自分が学校ではどうだったかを思い出す前に体があきらかに拒絶反応をおこしているのだ。

 やっぱりわたしは男だったんだ。よかった〜……。

じゃあどうしてこんなことに。ああ、また靄が〜。

「どうかなさいましたか?お姉さま、なんだか顔色がよくありませんよ。はっ!こんなに手が冷たくなってるじゃありませんか。風でもひいたら大変。少し待っててください今私が暖めますから」

 そう言って声をかけてきた少女は急に制服を脱ぎ始めた。

「わーっ!!ちょっと待った。どうしてこんな所で脱ぐんですか」

「暖めるにはやはり裸同士で温め会うというのが一番かと。ですからお姉さまも脱いでください」

「それ絶対まちがってますっ!ていうかおねがいだから脱がないで」

「でも脱がないと暖められません」

 そう言って怪しい手つきでにじり寄ってくる少女。

ふと周りを見ると、他の人たちがなぜか臨戦態勢に入っている。

「さあ、お姉さま一緒に温めあいましょう」

「ちょっちょっと待って……ここ学校だしそういうのは……」

 わたしの言葉は聞こえていないかのように、少女がわたしの服に手をかけたそのとき。

 かこ〜んっ!!

 わたしを襲おうとしていた少女の後頭部にアルミ缶がクリーンヒットした。

「こら〜!!抜け駆けは許さないわよ」

 そう言って茂みからわらわらと黒い群集が現れた。

ふう、助かった。

「お姉さまは皆のものよ、あんた一人に好きにはさせないわ」

 えっ?今なんて。

「そうだそうだ」

「だったら勝負よ。今日の放課後、一番最初にお姉さまの唇を奪った人が勝ち」

「ちょっと何勝手に……」

「お姉さまは黙っていてください。それでどうなの?」

 わたしに抱きつく少女が群衆を挑発する。

「ふん、面白い。いいわよその勝負のったわ。みんなもそれでいいわね?」

 群集のリーダー格らしいウェーブのかかった長い髪をリボンでまとめている気の強そうな人が回りを見回して言った。

 すると周りから歓声が上がった。皆さん、やる気満々である。

「それじゃあ皆放課後まで手出し無用だからね」

「ちょっと皆、わたしの意志は尊重してくれないの?」

「お姉さま、これも学園のアイドルの宿命です。おとなしくキスさせてください。たぶん全校生徒参加は必須ですね」

「えっ……うそ」

「だってお姉さまは全校生徒の憧れの的ですもん」

「そんな〜」

 死刑宣告を受けた気分でわたしはへたり込んでいると柚菜と由衣がやってきた。

「おお、ごっついことになっとるみたいやな」

「先輩の言った通りになってますね」

「柚菜〜、由衣〜。これはどういうこと?わたし放課後に襲われるんだけど」

「まっ、無理もないやろな。紀衣の人気は男女をとわへんからな。ええやん女の子同士なら。あっでも男子にはきいつけたほうがええかもね」

「なんで?」

「だって紀衣さん、学内で彼女にしたい女ランキング、ダントツで一位なんですから。この機に乗じて紀衣さんをゲットしようと考えている男子はいるはずですよ」

「が〜ん……わたしの学園生活が……一瞬にして崩れていく」

「そんな落ち込まんでも、大丈夫やって紀衣はうちと由衣ちゃんが死守するから」

「死守したあとで襲うんでしょ?」

「えへっ、解かる?」

 どうやらわたしに退路はないようだ。

 昨日までは平穏無事に学園生活を送っていたはずなのに……いったい何を間違えてしまったんだろう。

 こうして不安と身の危険を感じながら、今日も一日が始まった。




    *

 あとがきのあとがき

麗奈「さて登校早々、美味しい事態になってるじゃない」

佐祐理「まったくです。きっと柚菜さん達にあんなことやこんなことをしてもらっているのでしょうね」

知佳「わたしは紀衣さんがちょっと可哀想かな。理恵ちゃんにされてたからよく解かるよ」

真雪「別にいいんじゃない?禁断の愛に目覚めたって。あたしはそのほうが面白いけどな」

知佳「もう、お姉ちゃんったら」

佐祐理「そんなわけで、次回は紀衣さんの逃走劇です。果たして紀衣さんは逃げ切ることができるのでしょうか?」

真雪「いっそのことひとおもいにやられればいいんじゃない」

知佳「こらこら、人の貞操を勝手に売るんじゃない」

麗奈「次回もお楽しみに」

 





登校早々に大変な目に…。
美姫 「果たして、無事に逃げ切れるのかしら」
それとも、このまま女の子に掴まって、いや〜んな展開に!?
美姫 「何でそこで女の子に限定するのよ? おまけに、嬉しそうだし」
あ、あははは〜。そんな事はないよ、うん。
無事に逃げれるように祈ってるって。
美姫 「あまり説得力はないわね」
ひ、酷い…。
美姫 「ともあれ、次回はどうなるのか!?」
次回も楽しみにしてますね。
美姫 「それじゃ〜ね〜」



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