※ 1. 本作は真・恋姫†無双のネタバレを多量に含みます。
※ 2.真・恋姫無双、魏エンド後のストーリーです。
※ 3.原作プレイ後にお読み頂く事を激しく推奨します。
※ 4.華琳様の涙を拭い去るため頑張ります。
※ 5.一部、登場人物の名前が違う漢字に変更されている場合があります。
真(チェンジ!)
恋姫†無双
―孟徳秘龍伝―
巻の九・天狼牙(後)
大地震が魏の都を襲った直後、鬼襲来の報と同時に曹操たちの居た玉座の間へ巨大な紅蓮の柱が落ちてきた。落下の衝撃で天井は殆ど吹き飛び、見上げれば柱と思ったそれは、龍の背に陣取る魔神の指だった。
「―――――――――」
趙雲はあらゆる言葉を絶たれて息を呑むしかない。
五胡撃退戦の折に姿を見ていたが、改めてその巨大さに圧倒されるばかりだ。もしもこのまま魔神が腕を薙げば、自分達など一瞬で粉微塵になってしまうだろう。
孫権たち呉の一行も同じ考えに至ったのか、魔神を見つめたまま身動き一つしない。下手を打てば魏どころか三国諸共滅亡しかねなかった。相手の目的こそ分からないが、協同的な姿勢で相対すべきだろう。
「何者だ、名を名乗れ! 我は曹孟徳である!」
だというのに、肝心の曹孟徳はいつも通りの高圧的な態度で円卓の上に仁王立ちしていた。あまりの『覇王』っぷりに後ろの荀ケが蕩けた表情になっていた。まあ彼女は状況をあまり把握できていないだけなので放置して、趙雲は曹操を制止するべく行動を開始した。
「そ、曹操殿! ここは穏便に往くべきだ!」
「戯け! 我が城に強襲をかけて和平の二文字は在り得ぬ!」
「だが戦ったところで勝ち目はない!」
「では趙子龍、あれに屈服して生き残れる算段がどれほどあると?」
うぬ、と趙雲は言葉を詰まらせた。
彼女の言うとおりだ。もし相手に交渉の意図があるならばわざわざ城に直接乗り付けることも在るまい。ましてや城の天井を突き破ってくるなど……どの越えた破天荒か、端からこちらを殲滅する意図だろう。
その時、魔神の額から碧の雷光が奔り、突き立てられた柱の前に炸裂した。吹き荒れる噴煙の中に曹操たちが見たのは長身の女の影。
龍の髪飾りで左右に結わえ、螺旋の形に整えた黄金色の髪は大地に触れんばかりに長い。長身かつ細身でありながら豊かな乳房と臀部は艶やかさをもたらし、失われて久しいらしいその右目は黒革の眼帯に覆われている。
魏の居城に単身乗り込んできた彼女は、まるで其処に在る全てを懐かしむかのように深く息を吸い、吐き出す。その動きの、細やかな指の流れまで宿る高貴さと覇気、そして残った左の眼に宿る鋭い意志にその場の誰にも心当たりがあった。
「私の、名を問うたな……『私』よ」
空気が萎縮する。
女が視線を動かしただけで大気が歪んだ感覚に囚われ、趙雲も孫権も呼吸さえままならない。
「私の名は、そう――――――」
ボロの様な黒の外套をはためかせ、女は吼える。
「かつて捨てた我が名は曹孟徳。だからこそ今の私はこう名乗ろう……私は魔王! 魔道に身を窶し、全てと引き換えに只一つの幻想を狂信する! 私は魔王・華琳!」
信じられないことだった。
信じられるはずがなかった。
龍の魔神と共に魏を強襲した者が、魏の王たる曹操であるはずがない。彼女は己の理想を信じ、民を愛し、天下の太平を担う覇王なのだから。
しかし眼前に立つ女は紛れも無く曹操と同じ覇気、闘気を放っている。かつて曹操と命を懸けて戦いを繰り広げた蜀呉の将たちは、彼女の全てを戦場で見たからこそこの魔王の言い分を否定できない。眼光、声、立ち振る舞い、気配の全てに至るまで、紛れも無く曹操本人に違いなかった。
この世に居るはずのないもう一人の『王』に、しかし曹操だけは動揺することなく問いかけ、魔王もまた淀みなく答えを返していく。
「どこから来た」
「古から」
「どうやって来た」
「龍の魔神と共に」
「あの鬼は」
「我が尖兵」
「目的は」
「ホンゴウカズトの奪還」
ぴたり、と……玉座の間に流れる空気が今度こそ時間諸共に停止した。筆舌では到底描写し得ない闘気と狂気が、二人の『華琳』の真ん中で激しく渦を巻く。
たっぷり数分をかけて覇王が再び問う。
「理由は」
「長くなるけれど」
「構わないわ」
らしいと言えばらしいが、律儀に了承を取った上で魔王はゆっくりと語り始めた。
「私はかつての貴女と同じように覇道を目指し、仲間やカズトと共についに理想を達成した。そこへ至るまでに私はカズトと愛し合うほど深い絆で結びついていた……」
もはや互いを失っては生きていけないほどに、少女の心は彼を必要としていた。
「けれど、カズトは消えてしまった! 天命か、宿命か……違う! 彼は、カズトは奪われた! 『斯く在るべし』という、只それだけの理由で! 天に!」
曹操の覇業達成の影には常にホンゴウカズトの存在があった。定軍山、赤壁……顧みれば戦乱の大局を制する場面において、彼が曹操に与えた知恵によって魏軍は大勝を収めたのだ。戦だけではなく、統治面においてもカズトの能力は大きな影響を与え、三国の中でも特に治安の良い国として民を集めた。
しかし天の知恵を乱用したことで、二人は代償を支払わねばならなくなった。
「私とカズトの愛……そしてカズトの命。それが覇業の代償となったわ。事実、私のところにカズトは還って来なかった。一年経っても、五年経っても……」
正史と全く異なる結果を出したことで、ホンゴウカズトは存在する為の寄る辺を失ったのだ。理屈は全く矛盾していない。ある筈の無い成果を得るために相応の対価を支払う。男一人の命で歴史を覆したのだ、安い買い物だったと思うべきだろう。
だが…………
だが、それは『覇王』にとっての話だ。
曹操が恋する乙女として現実に向き合った時、耐えられるはずが無かった。恋人を失ってどうして「仕方が無い」「安い買い物だった」などと納得できよう。この世で最も尊いものがカズトなのに、それを生贄になど出来るはずが無い。
こうして『王』と『女』の間で生じた矛盾は、時間の経過と共に魂を蝕む『業』となっていった。
別段可笑しい話ではない、と覇王・曹操は思う。思い返せば、自分もまた同じだったのだから。
「けれど」
「ええ」
「「譲れないわ」」
同じ声色が重なり、同じ闘気が激突する。
男一人に対して、求める女は二人。女の間で醜い奪い合いが始まることは必然だった。
◇
……本城襲撃の数分前。
迫る鬼の数はゆうに百に上る。一匹ずつが精兵云十人に匹敵する化け物は徒党を組み、一糸乱れぬ隊列で天一刀を取り囲んだ。楽進たちや夏侯惇に向かっていた鬼達も踵を返し、天一刀へ殺到する。
もはや漆黒の波と化した悪鬼の群れに三羽烏は躊躇った。ここで自分達が天一刀の援護に行くことは出来る。しかし満身創痍の夏侯惇を置いていくことは出来ない。戦力を分割すれば此処の生存率が致命的に下がる。
そこへ、駆け寄る声があった。
「無事か、お前たち! 姉者も!」
「しゅ、秋蘭様!?」
まだ片腕が動かぬなら、小刀一本だけで夏侯淵は戦場となった市街地へ身を投じた。鬼相手に余りに無謀とも言えるが、この状況では怪我人だからと何もしない事は将としてありえない話だ。
「姉者は私に任せろ」
息も絶え絶えの夏侯惇の肩を抱き、夏侯淵が「大丈夫だ」と頷いてみせる。
「お願いします……!」
「うっしゃ! 秋蘭様がついててくれるんや、心置きなくやったります!」
「沙和も、まだまだ頑張るの〜!」
楽進、李典、于禁も各々に構えて突入に備える。
不意に于禁が浮かんだ疑問を口にした。
「そーいえば隊長、ちゃんと正気だよね?」
「あ」
「や、沙和……凪もそこは信じたらなあかんやろ」
恐る恐る三人が鬼の包囲陣の中心へ視線を向けると――――――
――――――長裾の軍服をなびかせ、不敵に笑う青年と視線がぶつかった。
「なんだ三人とも、俺のことを疑ってたのかー。隊長としては悲しいなー」
「隊長……そんな棒読みで仰らないでください」
鬼の大群を間に挟んでそんな談笑が飛び交う。
「たいちょー、うちはちゃんと信じとったで」
「真桜ちゃん? 昨日は隊長の貯金を山分けしようって……むぐー! むぐー!」
「あ、あかん! 沙和、そこは黙っとらな!」
天一刀は一瞬で激昂しかけて、しかし込み上げてきた可笑しさに苦笑を漏らした。ついさっきまで戦いの事で深刻に悩んでいたのに、相も変わらず好き勝手な部下に怒りを爆発させてしまう自分が、あまりにも馬鹿っぽく思えてしまった。
「まあいいさ。先にコイツらを片付けよう。その後で真桜と沙和はお仕置きな」
真面目に応答する楽進の隣で仕置きを宣告された李典と于禁が抗議の声を上げる。しかし宥めてやる時間はもう無い。鬼達はすでに獲物を引き裂かんと跳躍していた。倒すべきは只一人、天一刀のみ。
対してくるり、と手の内で双戦斧を回して天一刀は一歩踏み込み、跳んだ。瞬き一つの間に狙い定めた標的を見失い、しかし優れた身体能力故に鬼たちは次々に誰も居ない地面へ次々に激突する。
「今だ!」
敵が一点に集中するそこ目掛けて楽進の全身全霊の氣弾が炸裂した。一軒家を丸々飲み込むほどの火球が群れの大半を薙ぎ払う。もちろん全滅させられた訳ではないので、生き残った鬼達が楽進たちへ向かうことは必然だ。
「行かせへん!」
「よいしょ〜!」
李典の新型螺旋槍『大嵐螺旋槍』と于禁の双曲刀が向かい来る鬼達の首を次々に砕き、跳ね飛ばした。三人は決して夏侯惇のように突出した能力を持ってはいないが、連携行動によってそれを補っている。もちろんそれは鬼にも通用する。
必要だったものは一つだけ、攻めに転ずるための好機である。
「そういや、沙和は武器を新しく発注したんだってな」
四人で挑んで片付くまでものの五分と掛からなかった。他の部隊の兵たちは鬼一匹仕留めるどころか人員の大半を失う有様だったが、そも魏で鬼と戦った経験があるのは天一刀と三羽烏の部隊だけ。
ろくな作戦も無くいきなり鬼との大決戦に放り出されては、仕方の無いことだろう。
それはさておき、現在于禁が振るっているのは中東から取り寄せたという曲刀だ。
「そーなの。向こうの国の人だと『しょぅてる』って呼んでるの」
「『しょぅてる』……ショーテルか。―――――沙和、これからは戦う前に降伏勧告をするんだ」
「え?」
「そして戦いが終わったら最後にこう言うんだ。『言ったよ。私は降伏しろっ――――グハバッ!?」
言いかけた天一刀の後頭部に楽進の拳が炸裂する。氣こそ籠められていないが鋼の手甲は充分すぎる威力を発揮した。
「隊長に降伏勧告を説かれることに矛盾というか違和感を覚えます」
呉の野党を討伐した際、逃げ惑う相手を片っ端から切り捨てた天一刀である。
楽進の指摘はもっともだった。
「しかし、あれだな。凪たちは出し惜しみをしていたのか?」
完全に敵の猛攻を防ぎきったことを確認しつつ、夏侯淵がポツリと呟いた。確かに天一刀が現れるまでは防戦一方だった三羽烏だ。合流後のあまりの強さの違いにそう思われても仕方無かった。
だがその夏侯淵に首を横に振ったのは李典だった。
「そらちゃいますよ、秋蘭様」
「ほう」
「うちら三人の時は自分の限界ギリギリまで戦えるんやけど、隊長がおる時はその限界を越えられるんや……いや、越えさせてくるっちゅうんかな」
ただ、隊長の為に。
三羽烏はホンゴウカズトの部下であると同時に恋人でもある。
偏に愛の成せる業という事か。
「ホンゴウ……」
「いや、秋蘭? そんな恨めしい目で見ないでくれよ」
「違う、アレを見ろ!」
夏侯淵に言われて大空へ視線を向けると、今まさに自分の頭上を街ごと飛び越えて本城へ迫る真ドラゴンの姿があった。息一つ吐く間もなく真ドラゴンの右手の指が城へ深々と突き刺さる。
見るからに、指が刺さったのは玉座の間だった。
「か、華琳様!?」
まだあの場所で呉蜀の面々と会議中のはずだ。いくら覇王と言えどアレだけのものを真っ向から受け止められるとも思えない。
青ざめる夏侯淵たちの視界には、なお街へ攻め入ろうとする鬼の群れもある。すぅ、と深呼吸をしてから状況を改めて吟味し、天一刀は結論を下した。
「秋蘭、華琳のところへ行ってくれ。凪たちもだ」
夏侯両将軍が負傷している現状、最大戦力は三羽烏だ。夏侯惇は意識朦朧だが、夏侯淵は弓を射れないだけで指揮は出来る。ならば彼女達を華琳の元へ向かわせた方がいいだろう。
鬼は……自分でも対処できる。
「だが、お前一人では相手が多すぎる!」
「心配要らないよ」
砂塵を踏み分ける影が二つ、不敵に笑う天一刀の背後に駆けつける。一人は可憐な侍従服を纏った呂奉先、もう一人は蝶を象った黄金の仮面を着けた戦士だ。
「急いでくれ秋蘭!」
「……分かった!」
姉を肩に担ぎ、楽進たちを引き連れて夏侯淵は城へ向かって駆け出した。どの道、夏侯惇の手当てもしなければならない。最初から城へ戻る必要はあったのだ。
「さて、と」
「………………御遣い様、恋、おこってる」
「へ?」
「………………勝手にいなくなると、恩返し、出来ない」
背後に立つ呂布から凄まじい怒りの闘氣が噴き出している。どうやら天一刀失踪の話は彼女達の耳にも届いていたらしい。ちなみに隣の華蝶仮面はあんまり怖くなかった。
「それで布陣はどうするのですか、この能無し種馬廃人!」
「とりあえずその呼び方をどうにかしてくれ、陳宮」
「お前みたいな変態にはお似合いなの、で、す……あれ?」
首を傾げるのも一瞬で、自分の正体がやっぱり見抜かれている事実に陳宮は激しい衝撃を受けていた。いや、声で普通に分かるから、ね?
「じゃあ布陣は、そうだな……俺が先頭で切り込むから、両脇を二人で固めてくれ」
「……分かった」
「恋殿ぉ、軍師であるねねの意見も聞いて欲しいのですぅ」
天一刀の提案を全面的に受け入れ、呂布は陳宮の懇願を受け流した。これは別段、恋愛フラグが成立しているからではない。三人三様の戦い方を見れば、天一刀が対多数への攻撃力に優れていることは明白である。
故に彼を中心に攻撃型の隊列で迎撃することがもっとも勝率の高い選択だと言えよう。呂布はこれだけの思考をおよそ瞬き一つの間に完了させていた。
「さて、じゃあ行こうか」
天一刀がもはや定番となった、斧を右肩に担ぐ上段の構えを取る。お喋りの所為だろうか、鬼の動きを見れば天一刀の攻撃が発動するよりも相手が彼らに到達する方が僅かに早そうだ。
「………少し、時間を稼ぐ」
「ぶぅ、仕方が無いのです。くろっくあっぷ!」
【Clock Up!】
旋風が駆け抜け、爆音と共に先頭の鬼達が一斉に宙へ投げ出される。呂布の一撃が巻き起こした衝撃波と真・華蝶仮面の「れんぞくちんきゅー・はいきっく」による破壊力は、天一刀の『天覇招雷』に匹敵せんばかりだ。
そして狙い通り、鬼達の足が止まった刹那を見切って天一刀が踏み込む。
「でぇぃやぁぁぁっ!」
碧の雷が巨大な波となって残った全ての鬼を飲み込んでいく。
波は都の全域を覆い、今もなお人々へ牙を剥こうとする野獣たちを退けた。
◇
互いに同じ大鎌『絶影』を手に、真っ向からぶつかり合う二人の曹操を緑の閃光が照らし上げた。天一刀の双戦斧が放つ、勝利の光だ。
「ふふっ」
「くっ……さすがね、カズト」
外の異変に気付き、余裕の笑みを見せる覇王に対して魔王は臍を噛むような表情を浮かべた。しかし予測の範疇だったらしく、すぐに冷静さを取り戻して相手を弾き飛ばし、宙空へ舞い上がった。
「逃がすかいなっ!」
高らかな蹄の音と共に、崩れかけの屋根から跳躍したのは張文遠だ。愛刀を振りかぶって玉座の間から脱出しようとする魔王へ斬りかかる。
「……霞?」
「この声―――――――大将!?」
空中で交差する刹那、敵が『もう一人の華琳』であることに気付いて咄嗟に張遼が刃を引く。魔王も敢えてその隙を突くことはせず、そのまま真ドラゴンへ戻っていった。
「な、何なんや……いったい」
着地した張遼は本物の曹操ともう一人とを見比べ、混乱する思考に頭を振った。ちょうど同じく駆けつけてきた夏侯淵たちも、動揺を隠せない様子だ。
『フハハハハハァッ! 覇王よ、もう一人の『私』よ! 私は南蛮の果てにある真王山で待っている! そこが我らの決着の地、心して来るがいい!』
確かに南蛮地方には未開の山麓がある。その山で魔王は決着をつけようと言うのだ。
「なるほど……瓜大王め、こういうことかよ」
「カズト……」
「俺を取り戻せなかった華琳が……敵なのか」
鬼を全て片付けて、天一刀もまた曹操の安否を気に掛けて城に戻ってきていた。呂布と陳宮も一緒だが、こちらの二人は疲労困憊で状況の把握よりも息継ぎに必死だった。
ともかく魔王・華琳は手勢を失ったこともあってか、真ドラゴンと共に再び地中へ消えた。地響きが遠のいていくことからも南蛮へ向かったのだろう。
それでも今、一つの戦いが終わった。
決着はまだだが、今回は自分達の勝利だ。
「カズト、なの?」
見つめられていることに気付いて、天一刀は微笑と共に曹操に手を振った。『天覇招雷』の反動で全身がキリキリと痛んだが、彼女の視線に応えないという事はいろいろな意味で致命傷になりかねない。
「ただいま、華琳。ちょっと出遅れたみたいだったけど、みんな無事だよな―――――わぶっ!?」
曹操に神速の踏み込みで胸に縋りつかれては、思わず天一刀も足元がふらついて尻餅をついてしまう。
「んむ……おお、秋蘭?」
「姉者よ、どうしてこういう時に目を覚ますのだ」
肩に担がれたままだった夏侯惇が意識を取り戻し、さも寝起きのように振る舞うので夏侯淵も苦笑するしかない。
「どうやら元の鞘に納まったようだな」
「ふ、そうだな。事後は我らが引き受けねば」
「そうだった、こうしてはおれん!」
粗相をした部下をしつけなければならない曹操に代わって、夏侯惇と夏侯淵は各部署に指示を飛ばし始める。普段から厳しすぎるのだから少しぐらいは甘えていただかねば、というのが姉妹の本音なのだ。
「もう、大丈夫なのよね?」
ひし、と両腕を背中へ回して温もりを確かめる。
「もう、何処にも行かないわよね?」
離れないように、放さないように。
「私の、カズト―――――――」
あとがき
ゆきっぷう「えー、今回は『真(チェンジ!)恋ひバブレボォッ!? ギャバババッ! ビギィッ!?」
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しばらくお待ちください。
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天一刀「今回は『真(チェンジ!)恋姫†無双 孟徳秘龍伝 巻の九 天狼牙(後)』をお読み頂きありがとうございます! ゆきっぷうは現在、北郷警備隊の名誉に掛けて抹殺しておりますのでご安心ください!」
ゆきっぷう「ガァッ!? ゲブッ!? ドワォッ!?」
天一刀「凪、真桜、沙和! 攻撃の手を緩めるな! 桂花に投石器の支援要請を出せ!」
楽進・李典・于禁「「「了解!」」」
覇王・華琳「それでカズト、今回はいったいどういうことかしら?」
程c「それについては私がご説明差し上げます。ずばり……ゆきっぷうのやりたかったネタ・その二」
覇王・華琳「爆薬の使用も許可する! 焼き尽くせ!」
魏軍全兵士『さーいえっさー!』
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しばらくお待ちください。
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覇王・華琳「……で、詳しく聞きましょうか」
程c「事の詳細は今後の展開に支障が出るので伏せますが、我々『恋姫の世界』は無数の外史が乱立する形になっていますね?」
覇王・華琳「ええ。それが?」
程c「ゆきっぷうは『魏ルートアフターでホンゴウカズトが生還する外史が存在する以上、生還しない外史もまた確実に存在する』とのたまいまして」
覇王・華琳「ふむ」
程c「恐らく今回出てきたのは、その『ホンゴウカズトが戻らなかった世界』の華琳様かと」
覇王・華琳「見分けつくのかしらね」
天一刀「何を言うんだ、華琳!」
夏侯惇「我らの目は誤魔化されません! なぜならば華琳様は!」
天一刀「そう、なぜならば華琳は!」
天一刀・夏侯惇「「小さくて(背が)! 小さくて(胸が)! 小さい(お尻が)!」」
覇王・華琳「ほう、それはあの『魔王』の体付きと比べているのね?」
天一刀・夏侯惇「「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」」
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郭嘉「今回は『真(チェンジ!)恋姫†無双 孟徳秘龍伝 巻の九(後)』をお読み頂きありがとうございました。ちなみに私は、華琳様は小さくあるべきだと思います」
いや、本当に予想してませんでしたよ。
美姫 「まさか、鬼たちの背後にいるのが違う外史から来訪した華琳だなんてね」
流石に激しい直接対決はなかったみたいだけれど。
美姫 「挑戦状を叩き付けられたものね」
敵の本拠地まで聞かされたらな。
美姫 「やっぱり行くしかないわよね」
だと思うが。さて、どうなるのかな。
美姫 「次回も楽しみにしてますね」
待ってます!