※ 1. 本作は真・恋姫†無双のネタバレを多量に含みます。
※ 2.真・恋姫無双、魏エンド後のストーリーです。
※ 3.原作プレイ後にお読み頂く事を激しく推奨します。
※ 4.華琳様の涙を拭い去るため頑張ります。
『天命を打ち破りし彼の者は、微笑みて我が前に舞い降りぬ。
絹の白く眩い衣を纏い、大斧を携えて眼に気高き魂を宿し、
我、心逸りて近こうなれば、御手を導き閨に入る』
孟徳秘龍伝・巻の壱「天望武」より
真(チェンジ!)
恋姫†無双
―孟徳秘龍伝―
巻の壱・天望武
ホンゴウカズト改め天一刀が曹操の元に戻ってから早三日が経った。城下町の民衆から熱烈な歓迎を受けた天一刀は今更ながら正式に軍への参加が決定し、五胡の侵攻阻止への大きな希望となっていた。しかし一方で他の武将からは彼の能力を疑う声も上がり、曹魏の猛将・夏侯惇との御前試合によってそれを計ることを両者に伝えた。
一方、天一刀帰還の報せは伝令によって方々に散っていたかつての仲間達にも届けられていた。中でもカズト直属の部下として幾多の戦場で生死を共にしてきた楽進(真名・凪)、李典(真名・真桜)、于禁(真名・沙和)の三人は、遥か遠方の視察任務を一気に片付け本城に帰還すべく街道を走っていた。
彼女らも『魏の種馬』の寵愛を受けており、三人仲良くカズトの愛人なのだったりする。そのカズトが消えてしまった時は揃って意気消沈し、仕事も手が付かない状態だったのだから……その影響力は計り知れない。
かつて城下の治安維持のため、カズトを隊長として編成された北郷警備隊の名は、都の住人ならば知らぬ者など居ないほど有名である。隊長戦死(表向きにはこう発表されていた)による部隊再編の際も、せめて名前だけでも、と警備隊全員が曹操に嘆願したほどだ。
「やはり隊長は無事だったのだな」
馬を走らせながら楽進が呟く。
「せやろな〜。やっぱ種馬の生命力は伊達やないっちゅうことや」
「沙和もぉ、きっと隊長はくたばるわけがないって思ってたよ〜」
楽進の後ろに続く李典と于禁もしきりに頷くと、馬に鞭をくれてさらに急がせる。正門を潜り、馬小屋の番に馬を預けた三人は階段を駆け上り、廊下を一直線に走りぬけ、ショートカットしようと中庭に出ようとして――――――
ズドゴオオオオッッッ!!!
「はっ!」
「ぬわっ!」
「あやわっ!」
爆発、衝撃。飛び散った立ち木の破片を払いながら爆心地に目をやると、
ズガシャアアアッッッ!!!
「はっ!」
「ぬわっ!」
「あやわっ!」
再び爆発、衝撃。粉々になった燈篭の残骸を避けながら爆心地に近づく三人。そこでは見るも無残に変わり果てた庭の池と、その上で今もなお死闘を演じる二つの影。そしてこの成り行きを(面白そうに)見守る曹操の姿があった。
「あら、戻っていたのね。凪、真桜、沙和」
「は、はい。ところで華琳様……これは、一体?」
楽進の見る先では愛用の大剣を振り回す夏侯惇将軍と、その猛撃を両刃の戦斧で辛うじて凌ぐ天一刀。
「ちょ……あいつってもしや!?」
「た、隊長なの〜!?」
「ええ。帰ってきたのよ、あの馬鹿が……春蘭もいい加減認めれば良いものを」
空中でぶつかり合ったのも束の間、池を挟んで着地し対峙する天一刀と夏侯惇。打ち鳴らした鋼の叫びに全身の血を滾らせ、次の一撃を見舞うタイミングを計っている。
「この夏侯元譲、華琳様のお側を守る将である限り貴様を認めるわけにゆかん! 死ねいっ!」
「だーかーらー! 俺は天一刀……じゃなくて、カズトだって言ってるだろ!っていうか親衛隊は季衣と流流じゃなかったのかよ! しかも最初から殺気全開はやめてくれえっ!」
「だ、黙れぇっ! 第一、あの男は一年前に死んだのだ、此処に居るはずがない! 証明したければその斧を使えいっ!」
そもそもこの勝負は夏侯惇ら一部の将が天一刀の技量を疑問視したことを発端に、曹操の「御前試合の勝敗如何で決める」の一言で試合が執り行われることになった。見聞役は言うまでもなく曹操。他にも見物人は多く居たのだが荒れる一方の様相に身の危険を感じ、夏侯淵の誘導で屋内へ引っ込んでしまった。
しかし夏侯惇は一年前にホンゴウカズトが勝手に消えたことがよほど腹立たしいようだ。帰還した天一刀を見るや賊と言って斬りかかり、今も同一人物とは認めようとはしない。夏侯惇は耳まで真っ赤に染まりながら大剣を振りかざし、跳躍の構えを見せる。恐らく次で決着を着けるつもりなのだろう、全身から吹き出す闘気が一気に膨れ上がった。
「げっ! 春蘭、まさか殺す気じゃないだろうな!?」
「問答無用! 死ねぇぇぇぇぇぇっ! くたばれ、無に返れ、裏切り者ぉぉぉぉぉっ!」
この時、初めて天一刀は彼女の心情を見た。そしてかつて夏侯惇、夏侯淵の二人と交わした約束を思い出していた。
(共に華琳のために……か)
彼女の覇業達成のために身命を賭して仕える。それが自分達の存在意義なのだと確かめ合った。にも拘らずホンゴウカズトは役目を終えたと言って、一方的に立ち去ってしまったのだ。ならばこの怒りは至極当然の事と言えた。
恐らく曹操がこの勝負を認めたのも、そういう理由があったからに違いない。
「っ……いいぜ、決着をつけるぞ! 春蘭!」
降り注ぐ連撃を後方へ退いて凌ぎながら夏侯惇の姿を追う。一瞬だけ視界に映る髑髏の肩当てを頼りに次の太刀筋を見切り、両手で握った戦斧で受け止めた。
「ふん! 防戦一方で魏武の大剣をどうにかできると思うな!」
好機とばかりに夏侯惇が神速の踏み込みでもう一撃を放ち、
「あっ! 華琳が扇情的な姿で誘惑を!」
「そんな何時ぞやの手に、私が引っ掛かるとでも思ったか!」
以前、カズトに同じ方法で不意打ちを喰らった経験を持つからか。夏侯惇は振り返ることも無く剣を振り上げた。
「あっ! 華琳の今日のおやつが賊に狙われている!」
「なんだとぉぅっ!?」
天一刀の典型的なフェイント「あんなところにUFOが!」にまんまと引っ掛かり、剣を止めて振り返る夏侯惇。曹操に絶対の忠誠を誓う彼女の心理を突いた巧妙な作戦はやはり効果絶大であった。
「えい」
「あいだっ!?」
賊を探して辺りを見回す夏侯惇の後頭部を、天一刀が戦斧の柄で軽く小突く。
「……勝負あったわね」
曹操が深い―――――それは深い溜息と共に試合終了を宣言した。
何とも情けない決着であったが、
「どこだっ! 華琳様のおやつを狙う賊はどこだぁぁぁぁぁっ!」
まだ術中にある夏侯惇将軍にはもはやどうでもいい様子である。
◇
泣き崩れる夏侯惇(敗北の罰として自分の分のおやつを没収された)を妹の夏侯淵に任せ、曹操は改めて楽進ら三人に天一刀を紹介した。あくまで彼の扱いは新参の将であり、かつての天の御遣いでも容赦無しという事を対外的に強調するためでもある。それは天一刀自身も承知の上。
「天一刀だ。真名はカズト……よろしく頼むわぷぁっ!?」
しかしこの三人にはそんな思惑も関係なかった。死んだと聞かされていた恋人が生きて帰ってきたのだから当然のことで、泣きじゃくりながら彼の胸を飛び込む楽進たちを止めるほど曹操も無粋ではない。無論、彼が帰ってきたその晩に閨を共にした自分がとやかく言えるわけも無く、という本心もあるが。
「隊長、よくぞご無事で……」
「生きとったんなら手紙の一つでも寄越さんかい!」
「沙和ね、隊長が戻ってきたら新しいお洋服を選んで欲しかったのぉ」
恥も外聞も無く、ただ想いばかりが堰を切って溢れ出す。それは彼女達に限らず夏侯惇も同じことで、
「お前は死んだ。死んだはずなのだ」
「姉者……」
「お前が死んだから私の中のお前も死んだ。もう思い出すまいと誓ったのだ……それを、こうも抜け抜けと帰って来おってどういうつもりだ!」
死んだ者に縋ることは無礼である、と彼女は考えたのだろう。覇業の礎となって散った者たちのために、なお前を向いて歩み続けるならば……立ち止まることは出来ない。そして思い出せばきっと立ち止まってしまう、振り向いてしまう。だから忘れようとした……悲しいまでの一途さだった。
「でも兄ちゃん、生きててよかったよ」
「そういう季衣も、春蘭と一緒に賊呼ばわりだったじゃないか」
「それはほら、ボクも春蘭様の肩を持たなきゃいけないし」
そう言って申し訳なさそうに(?)はにかむ許緒。この見た目幼い(ここ重要)少女も魏の猛将の一人であり、親衛隊を預かる身にある。そして当然の如く天一刀の寵愛を受けた一人でもあった。兄と慕った男が突然消えてしまえば、その不条理に憤りを感じても仕方なかった。
夏侯惇は極端な例だが、実際のところは皆も同じである。恋しい者を亡くしたことで受けた心の傷は決して癒されず、ただ眼を逸らす事しか出来なかった。
「みんな、ゴメン……」
頭を垂れる天一刀は、もう謝る事しか出来なかった。彼の中では皆が笑顔で迎えてくれるものとばかり思っていたのである。それを泣かれ、責められ、その原因が他ならぬ自分の注いだ愛にあることを自覚してしまった。半ば諦めて世界から『ホンゴウカズト』が消えたことで、残された想いはこうも悲しいものになったのだ。
「カズト。貴方が居ないだけでせっかくの三国平定も虚しいわ。貴方が居たからこそ為し得た覇業なのだから」
「華琳、俺は……最後まで足掻くべきだったのかな? 消えてしまうとしても」
「そうよ。貴方は自分の義務を一方的に放棄したんですもの。死罪でさえ生温いわ」
恐ろしいことを臆面もなく言う曹操の顔は、安らかな笑みを浮かべていた。
「例えどんな道を歩もうとも、信念を以って生きる。それが人の生涯果たすべき義務」
「…………」
「だから貴方は戻ってきた。やり残したことを為す為に。違うかしら?」
「当然、だろ」
苦笑さえせずに、天一刀は遥か夕暮れの空を見上げて答えた。
勢いで始まった御前試合は終わり、陽も暮れようとしていた。今夜は全員揃って夕食にしようか、と話がまとまりかけた所で遠くから蹄の音。
「ちょ、ちょ! タンマやタンマ! ウチらのこと忘れんでやー!」
魏随一の名馬に跨り現れたのは張遼(真名・霞。「しあ」と読む)だった。後ろには許緒と共に親衛隊を指揮する武将・典韋(真名・流流)の姿もある。二人とも背中に大きな袋を背負っており、余程重いのか乗られた馬も息を荒くしている。
「兄様〜!」
「おお、流流〜!」
駆け寄ってくる、これまた見た目幼い(やっぱりここ重要)少女の典韋を、両腕一杯に広げて迎えようとする天一刀。
しかし、
「兄様の……馬鹿ぁぁぁぁぁぁっ!」
次の瞬間には典韋の拳によって天高く打ち上げられ、天一刀はくるくると回転しながら屋根を突き破って兵舎の一つに落下した。さすがは典韋、怪力無双の許緒と肩を並べるだけのことはある。
「皆さんがどれだけ悲しんだと思ってるんですか、もうっ」
頬を膨らませ怒る典韋だが、すでに肝心の相手は遥か彼方だ。他の面々も天一刀を擁護するかと思いきや、「よくやったわ」「スカッとしたで〜」と典韋を褒めるばかり。
「お、俺が……何をした? ガクッ」
瓦礫の山に埋もれる彼が救出されたのは、曹操たちの夕食後のことであった。
◇
「へい、凪! 痛い、イタイイタイヨー!」
「じっとして下さい、隊長。包帯が巻けません」
自室として宛がわれた部屋の寝台で、寝転がる天一刀の体に包帯を巻きつける楽進。夜はまもなく日付も変わろうかという頃、ようやく助け出された天の御遣い様(?)の手当てに楽進が訪れたのであった。
天一刀も怪我自体酷いものではなかったが、被った精神的苦痛が彼の苦しみを倍加させていた。なんというか人肌恋しい、らしい。
「うぅ、俺が何をしたんだよぉ……」
処置が終わるや否や布団に潜り込む天一刀を、楽進は半ば呆れた様子で見つめている。
「隊長は、我々が貴方の死にどれほど悲しんだかご存じ無いのですか?」
「う……そりゃあ、知ってるつもりだよ」
戻ったその日の夜に、曹操から自分の居ない間に起こった出来事は一通り聞いていた。天一刀として戻るまで一年余りの月日が流れていたことも、彼女たちがショックから立ち直るまでに相応の時間を要したことも。
「いいえ、全くご存知在りません。霞さまも今でこそ明るく振る舞われていますが、最初の頃は毎日のように酒を飲んでは暴れて……」
「凪も大変やったんやでー。毎日布団に入ったまま泣いてんよ、それでウチが一緒に慰めあって今に至る、と」
「むむぅ。俺の居ない間にそんな美味しい展開が……って霞!?」
いつの間にやら部屋の中に入り込んだ張遼(潜入ルートは軍事機密)が「うっしっし」と笑みを浮かべながら凪の背後を取っていた。そして抱きつかれ、あれよあれよと言う間に『くんずほぐれつ』の展開に。
楽進の服の間に指を忍ばせつつ、張遼は至極真面目な表情で言った。
「カズトはもうちょっと自分の影響力っちゅうもんを自覚せなあかんよ。一部の例外は置いといても、みんなカズトに惚れてんねん。そら死んだと聞かされたら悲しいのは当たり前やんか」
「うん」
「そんでカズトがこない元気に帰ってきたら、嬉しさ半分怒り半分やわ。ウチら残してどこいっとったんや、このバカアホ胤野郎ってな」
女心は複雑である。もう会えないと思っていた男と再会できればそれは嬉しい。しかしそれ以上に、自分を悲しませた相手に対する怒りもある。昼間の夏侯惇はその怒りが先行した結果だと言えるし、許緒が記憶の無い振りをして夏侯惇に助勢したのも同じこと。
つまり、困らせたいのだ。
「あら、霞。分かり易い説明をありがとう。というわけで私も混ぜてもらっていいかしら?」
「華琳様!」
「あ、華琳やんかー。ほな、みんなで『くんずほぐれつ』――――――あいたっ」
何処からとも無く参上した曹操(やっぱり潜入ルートは軍事機密)はとりあえず後回しに、天一刀のハリセンが張遼の後頭部を直撃した。
こう、「すぱーん」と。
「『くんずほぐれつ』はやめいっ!」
「あたー。カズト、いつの間にそんな武器を」
「ふっふっふ。ツッコミを極めるならコイツは必須だぜ」
「ツッコミやて!? さすが天の国、ウチのまだ知らない奥義があるっちゅうことかい」
漫才の話題に花咲かせる二人。この時代にはまだ生まれていないツッコミ・アイテムであるハリセンを巡って議論が熱中する前に、曹操が問いかける。
「それでカズト……いえ、天一刀。貴方はどうやってこの世界に戻ってきたのかしら」
「あ、それウチも興味あるなー。教えてー」
「戦死されたはずではなかったのですか?」
首をかしげる楽進だが無理もない。曹操でもまさか「ホンゴウカズトは消えてしまいました」とありのままに説明するわけにはいかなかった。多くの将や臣は彼の正体や出自を知らない(正確には理解できていない)のである。要らぬ混乱を生まないためにも一部の側近を除いて、彼は戦死したと伝える他なかった。
「うーん、どうやってと言われてもなあ。実際死んでたし」
よほど説明が難しいのだろう、天一刀は眉間に皺を寄せながらとつとつと語り始めた。
曰く、再び目覚めた彼の辿り着いた場所は奈落の底だった。四方上下を闇黒に閉ざされた空間を彷徨い歩き、だが不思議なことに餓えも渇きもなくひたすら続く闇の道に心ばかり擦り切れていく。
もはや意識も途絶える寸前、ある男と出会った。その者は白磁の肌と藍玉の瞳、深海の如き蒼の長髪を持ち、まくわうり(天の国で言うところのメロン)を携えていた。名は瓜大王といい、これから始める友との酒宴に天一刀を招いた。
「これまた珍妙な人物に出会ったものね。今度紹介なさい」
「いや、無理だろ」
無茶な要求を繰り出す曹操はさておき、宴の席で天一刀は瓜大王に自分がここに来た経緯を語った。話を聞き終えた瓜大王は彼に新たな名前である「天一刀」と武器として「双戦斧」、さらには高級夕張瓜を包んで持たせた。
「聞いた話だと、俺がホンゴウカズトである限りこの世界には戻れないんだってさ。だから手っ取り早く名前を変えて別人になったってわけ」
「なるほどね。役名を変えれば……それから、その戦斧は貰い物だったの?」
「ああ。凪でもないのに素手じゃ武将にはなれないだろ。それに何か色々秘密があるらしい」
細身の彼には似合わないほど無骨な造りの斧は、部屋の片隅に立てかけられたままだ。元々剣道を嗜んでいた天一刀だが、本気の夏侯惇の猛攻を前にそれなりの戦いを見せることが出来たのはこの斧が至高の一品だからである。
「確かに、あの戦斧と真っ向からぶつかり合うたら、ウチの偃月刀なんか圧し折られてもおかしくないわ……」
「そ、そんなに?」
「まあ、カズトが持っとるうちは安心やけど」
天一刀の技量ではそこに至る前に勝敗がつくというわけだ。事実、天一刀には個人で大勢を相手に立ち回る技も力も度胸もない。今日のような事は戦場では万に一つも在り得ず、恐らく五分と持たずに八つ裂きにされるだろう。
「うう。宝の持ち腐れかよ……」
「安心しい。ウチが特訓したるで! 朝も晩も閨の中で、ぬっぽりうふふー、や」
「お、おい……!」
曹操を差し置いてなにやら桃色な雰囲気に突入する天一刀と張遼。
「あ、あの華琳様……」
「ありがとう、凪。とりあえずこの二人にはお仕置きが必要ね」
俯き加減の曹操の目元は影になって表情を窺い知ることは出来ない。しかし全身から噴き出す禍々しい闘気が全てを物語っていた。
「カズト! 霞!」
「わっ!」
「うひぃっ!」
この後、どのような結末が待っていたのかは(止むを得ない事情のため)割愛するとして、翌朝見かけた曹操、楽進、張遼の三人の肌が非常に艶やかだったことだけは確かである。
無論、天一刀の頬は痩せこけ、土気色の肌は死人のようであった。
あとがき
曹操「そこのへっぽこ作家! 私の名前を間違えるなど言語道断、この場で打首!」
ゆきっぷう「あぎゃああああああああああああっ!!!」
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天一刀「真(チェンジ!)恋姫†無双 ―孟徳秘龍伝― 巻の壱をお読みいただきありがとうございます。……で、結局いつもの対談形式なんだな」
ゆきっぷう(生首)「おう」
天一刀「その状態で喋るなよ。気持ち悪い」
ゆきっぷう(生首)「仕方ないだろう。当然の罰だからな」
天一刀「なんでよりにもよって、華琳の字を間違えるかな……」
ゆきっぷう(生首)「胃腸風邪だったんだ……と言っても信じてもらえるはず無いだろ」
天一刀「―――――うん、そうだね」
ゆきっぷう(生首)「読者のためにあえてツッコミどころを作るのも、作家の務め」
天一刀「それは絶対に違う」
ゆきっぷう(生首)「じゃあ、文字化け防止のため」
天一刀「今更もっともらしい理由をつけるなって。まあ、未登場キャラの何人かは常用外の字が入ってるから可能性はゼロじゃないけどね」
ゆきっぷう(生首)「ちなみにこのシリーズ。主旨は『如何に惨たらしくホンゴウカズトを血祭りに上げるか』なので」
天一刀「え、なんで!?」
ゆきっぷう(生首)「あれだけたくさんの可愛い子に手を出しておいて、天下のプレイヤー様方が許すとでも……よくも、よくも恋殿を、恋殿を誑かしおって!」
天一刀「ちょっと待て、呂布は魏ルートじゃ仲間にならないだろ!」
ゆきっぷう(生首)「ウルサイ黙れ! 今こそ貴様に作家特権で正義の鉄槌を下してやるぞ! 先生、お願いしまーす!」
陳宮「恋殿の敵はゆるさないのです! 喰らえ、大雪山ちんきゅぅぅぅぅぅぅぅきぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっく!」
天一刀「なぜ蜀ルートのお前がぶらっばはあぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
呂布「天の御遣い…………相手にとって、不足なし」
以下、捏造設定
登場人物
夏侯惇(真名・春蘭)
魏の武将の一人。魏随一の武を誇る将で『魏武の大剣』の異名をとる。如何なる相手でも、曹操の覇道を阻む者はすべて愛用の大剣で斬り伏せる。
「真・恋姫†無双」本編では董卓軍との戦闘で、曹操の命で張遼を生け捕るために一騎打ちを挑むが流れ矢で左目を射抜かれてしまう。その際に「父と母に貰い、華琳様に捧げたこの体は血の一滴も無駄には出来ない」とか言って左目をその場で抉り出し、食ってしまった。己の義と誇りに燃える熱血麗人。夏侯淵は双子の妹。
その実態は華琳命のすんげえ馬鹿。一年経っただけでカズトのことを完璧に忘れ去ってしまうぐらい。もっとも本人の思考としては「カズトを思い出す→悲しい→悲しいのは嫌→カズトを思い出さなければいい→カズト忘れる」という至ってシンプルかつ合理的なもの。
つまり、全部カズトが悪いんです。
夏侯淵(真名・秋蘭)
魏の武将の一人。弓の名手で智謀に長け、曹操の覇業を影から支える一人。
「真・恋姫†無双」本編では夏侯惇のサポートに廻ることが多いが、実際は夏侯惇の手綱を握れる人間が殆どいないのがその理由。物語中盤以降、優秀な軍師が参戦するまでは気苦労が絶えない……のだが、姉馬鹿な夏侯淵は夏侯惇の面倒を見るのが大好きなので問題無し。むしろ右往左往する姉を見て萌えるために、あえて困らせるというヒデえ妹でもある。
本来ならば定軍山で蜀の奇襲を受けて戦死するはずだったが、命を賭けたカズトの助言によって駆けつけた曹操率いる増援によって事無きを得る。ある意味、カズトの迎える結末を決定付けた人物とも言えよう。
ちなみに女心に気付かないカズトに溜息をつく夏侯淵は、凄く可愛いと思います。
楽進(真名・凪)
魏の武将の一人。曹操の軍勢に早い段階から参戦し、数々の武勲を挙げた猛将である。「真・恋姫†無双」本編ではホンゴウカズトの指揮する警備隊に配属され、彼の部下として城下の治安維持に従事することになる。
格闘戦に長じ、愛用の手甲付きの篭手と練り上げた氣を用いた攻撃を得意とする。非常に真面目な性格で、よく仕事をサボる同僚の李典と于禁を叱咤することもしばしば。しかし内面、華やかさに憧れる乙女でもあり、それがゆきっぷうのハートを打ち抜いた。こう、ブロウクンマグナム的に。さらに唐辛子ビタビタ料理を超旨そうにカッ喰らうスーパー中華乙女でもある。
カズトが戦死(消滅)してからは、その悲しみに耐えられず毎日布団の中で泣いて過ごしていた。やっぱりアイツには死んで貰うしかない。
李典(真名・真桜)
魏の武将の一人。曹操の軍勢に楽進、于禁の三名で参戦した。史実では不明だが、「真・恋姫†無双」本編ではからくりに精通しており、魏軍が運用する投石器などの兵器の開発・運用を任されている。
胸のサイズも中々のもの……ゲフン、武人としては決して突出はしていないが愛用のからくり武器『螺旋槍』を振るって戦場を駆ける。螺旋力が使えるかどうかは分からないが、天を衝くことができるらしい。
カズトが戦死(消滅)してからは、その悲しみに泣き伏せる暇も無く新しいからくり制作に没頭し、なんとか立ち直っていた。
于禁(真名・沙和)
魏の武将の一人。早い段階から楽進らと共に参戦。ファッショナブルな女性で、服の見立てや流行の先読みなどに秀でる。当然の如く軍人として有能とは言い難い部分が多いが、仲間の二人と共に困難を乗り越えていく。特に新兵訓練のため、カズトから授けられた海兵隊式訓練法を元に編み出した『沙和式罵倒訓練術』は傑作。秀逸ではなく傑作。理由は原作プレイにてご確認を。武器は二刀を使うが、決して強いわけではない。
ちなみに楽進、李典、于禁の三人は揃ってカズトの愛人である。
カズトが戦死(消滅)してからは、彼に買ってもらった服をもう一度着てみたりして過ごしては胸の空隙に泣き崩れていた。やっぱりアイツ殺す。
張遼(真名・霞)
魏の武将の一人。董卓と反董卓連合の戦闘の終盤、夏侯惇との一騎討ちに敗れて曹操に降った。史実の通り、誇り高き武人で数々の主を渡り歩いた経歴を持つ。個人の戦闘能力もさることながら、張遼の指揮する騎馬隊は非常に強力であった。
「真・恋姫†無双」本編ではその猫のような人懐っこく、また誇り高い性格で周囲を翻弄することもしばしば。楽進がお気に入りで膝枕……果ては抱き枕になってくれと懇願していた。愛用の飛龍偃月刀を振るい戦場を駆け、その男気溢れる弾け方がゆきっぷうの心を揺さぶったので贔屓気味。
一応、カズトとは恋仲のような戦友。
カズトが戦死(消滅)してからは、完全に酒浸りの荒んだ生活を送っていた。その内、楽進と慰めあうようになってようやく立ち直るきっかけを掴んだ。やっぱりアイツ、許すまじ。
用語
大雪山ちんきゅーきっく
呂布お抱えの軍師、(オトモ)陳宮の放つ必殺技「ちんきゅーきっく」をゲ○ター風にアレンジしたもの。あらゆる次元を飛び越え、呂布の敵を打ち砕くために血の滲むような修行を耐えた陳宮が編み出した。グルグル回転しながら回避しようとする相手の動きを利用して威力を最大限に引き出すんだとか。
主にあとがきで天一刀やゆきっぷうを叩きのめす際に使用される。
凪たちとも再会して、うんうん。
美姫 「やっぱり皆の落ち込みは酷かったみたいね」
そりゃそうだろう。とは言え、何とか戻ってきたしな。
しかし、軍師の三人がまだ出てきていない。
次ぐらいに出番があるのかな。
美姫 「それも気になるわね」
おうともさ。次回も待っています。
美姫 「待ってますね〜」