―――――EDEN暦3年5月13日。

 

 戦火によって紅蓮に燃える中央公園で、アプリコット・桜葉は今や絶体絶命の窮地にあった。負傷によって歩くこともままならず、撃ち尽くした護身用のレーザーガンは敵に碌な傷も負わせられず、眼前に立ちはだかる機械仕掛けの巨人に抗う術はもはや無い。

 人型機動兵器・ヘクトールの右手がゆっくりと動き、よどみない動作で持っていた大型ライフルの銃口を少女へと向けた。ここから撃ち出される銃弾は一瞬の内にアプリコットを粉微塵にしてしまうだろう。

(そんな……)

 無垢な少年の仇も討てず、

 目の前の悪を弾劾することも出来ず、

 姉の背中に追いつくことさえも―――――

(死にたく、ない――――――)

 ヘクトールのマニピュレーターの駆動音を聞き、いよいよ引き鉄が引かれる瞬間を感じてアプリコットは瞼を強く閉じた。

「あ、れ?」

 何かよく分からない轟音が少女の鼓膜を打ち、しかし自分の体が無事であることに違和感を覚えてきつく結んだ瞼をほんの少しだけ開いてみる。

 あり得ない、事が起こっていた。

 右腕を肩から失ったヘクトールが公園の向こうのビル街で倒れている。まだ動けるのだろう。巨人は駆けつけてきた仲間のヘクトールたちに助けられながら、のそのそとみっともない動作で立ち上がろうとしていた。そしてアプリコットを護る様にヘクトールと対峙する巨人――――恐らくエンブレム・モジュールなのだろうが、彼女が見たことの無い機種だった。シャープなシルエットと、やや不釣合いな大型のビームソードを携える姿は剣士そのものだ。黒と見間違えるほど深い蒼に染められた装甲が陽光を反射して鈍く輝き、対照的にビームソードからは白銀の粒子が炎のように吹き上がっている。

 この突然現れた敵対勢力にテロリストたちは激しく動揺し、混乱していた。まず相手の正体がまったく不明だった。相対するEMはぱっと見た限り軍の正式機の物とはあまりにかけ離れた姿に、実戦向けとは思えない偏った兵装。セルダールかEDEN、いずれかの軍の非公式の特殊部隊が擁する戦力と見て間違いないだろう。新型機の設計・開発が行えるのは現状において各国軍直属、あるいは提携している研究機関ぐらいだからだ。

 だが何より気がかりなのは、この敵が単独で自分達に戦闘を仕掛けてきたと言う点である。セルダール軍における人型機動兵器の運用は最小単位でも二機編成(コンビ)で次いで三機編成(マルチ)、四機編成(チーム)となっている。単機編成(アローン)は戦時下の臨時編成でごく稀に採用されたケースがあるぐらいで、それも多数の出撃回数と撃墜数を持つエース級のパイロットに限られた運用法だ。

 そしてヘクトールを操るテロリストたちは全員、かつての呪怨戦争においてセルダール軍の人型機動兵器パイロットとして幾度も視線を潜り抜けてきた元兵士という肩書きを持っていた。先述の運用法は全員周知している。

 結論としてはその場に居合わせた誰もが、この乱入者が単独で自分達を撃破し得る強敵であると一瞬の内に判断したのである。時間にしてほんの数秒も無かったろう。

 しかし……黒蒼の剣士にとっては必殺の構えを取るに十分すぎる時間だった。

『!?』

 ヘクトールの外部スピーカー越しにテロリストたちの驚愕する息遣いが漏れる。

 EMの剣士は両手で構えるビームソードを真横に寝かせて大きく振りかぶり、何の躊躇いも無く横殴りの一撃を放った。全身の骨格が、関節が軋んで悲鳴を上げるほどの抜刀はまず計五体のヘクトールを焼失させ、そのまま市街のビル群までも打ち払う。攻撃の瞬間にビームソードの刃が一瞬の内に何十倍にも伸びた結果だ。

 まずビジネス街のビルが次々に光刃の中に消え、さらに未だ逃げ惑う市民の残る歓楽街が高出力ビームの刀身によって焼き尽くされた。そして市内最大の高さを誇るコーデルト・ルミナス・タワーもまた土台部分を完全に失い、その最上階にテロリストによって監禁された人質二百余名は地上400メートルの高度から崩壊するフロアと共に空中へ投げ出された。

 爆ぜ、砕け、蹂躙される街並みを薄れ往く意識で見つめながらアプリコットの記憶は其処で途切れたのだった。

 

 

第二次銀河天使大戦

Love Destroy

第一章 二節『銀河、再び』

 

 

 

――――市街強襲の三十分ほど前。

 

 昼食を終えたカズヤとベングリンたちは機体の整備に立ち会っていた。パイロットにとって自分の命を預ける機体は生死を共にする相棒であり、そのメンテナンスに立ち会うことは極めて重要な意味を持つ。各々の搭乗機の前で整備兵と真剣な遣り取りを繰り返すベングリンたちの横で、自分のマシンを持っていないカズヤはその様子を遠巻きに観察するしかない。

 そして専門用語が飛び交う彼らの会話をまだ新米の少年兵が理解するには知識も経験も圧倒的に不足していた。フォルテのこれまでの教練のおかげか、体力面ではシミュレーターでの訓練にはまだついていけたものの、機械弄りの話になると完全にお手上げのカズヤだった。

「大分お困りのようですね」

「え? ええ、まあ」

 そんなカズヤに声をかけてきたのはブロンドの髪を靡かせる美女だった。しかもフォルテに勝るとも劣らないスタイルの持ち主である。服装が整備兵のツナギなのでそこまで目立ってはいないが。

「私は特別技術顧問のアンス・ネイバートといいます」

「僕はカズヤ・シラナミといいます」

「…………そう、貴方がMk‐Uの」

 カズヤの名前を聞いたアンスはしばらく黙考を続けた後、手を打ってこう言った。

「ちょうどいい機会ですから貴方の乗る機体も含めてレクチャーしましょう。今此処で」

 ギラリ、と目を輝かせるアンス。いきなりの超展開にカズヤの目が点になる。

 自分が担当する機体については殆ど塗りつぶされた書類でしか知らないので、教えてもらえるのは非常にありがたい。だがせめてメモとかノートとかを取らせて貰う準備をしたかった。

 そんなカズヤの想いも空しく、特別技術顧問によるレクチャーが幕を開けた。

「貴方の搭乗機を説明する前にまず、エンブレム・モジュールの何たるかを知ってもらう必要があります」

 エンブレム・モジュール、通称『EM』。

 銀河連邦EDENの前身であるトランスバール皇国が開発した全長20メートル弱の人型機動兵器のことだ。導入されてからまだ四年程しか経っていないが、トランスバールでは幾度も国難を救った英雄の象徴として受け入れられており、その配備拡大も進められている。

 人型兵器ならばNEUEでも『リィオゥ』などが長年運用されているが、EMの最大の特徴はその動力源に『クロノ・ストリングス・エンジン』を使っている点にある。このエンジンは高出力・高効率を誇る反面、不安定で制御が難しく、また整備には専門の設備と人員が必要になる、といったネックも存在する。その為、NEUEでは本星の部隊でのみ導入され、属僚惑星ではまだ旧式のリィオゥを使っているのが現状だ。

 また一機当たりのコストが高く、大量投入が難しくなっていると言う問題もあり、運用可能な設備を持つ基地や拠点も旧型機に比べて限られている。

 しかし長期化した戦争によって各軍事拠点の大半を失っていたセルダールにとって、軍内部に新戦力を編入するスペースを確保することは容易とは言い難かったが決して難しいものではなかった。失った部分を新しいモノで丸ごと補填するのであれば、従来の方式を無理矢理組み替える必要も無い。なにより国軍は疲弊して人材と装備の拡充を渇望していたし、政府も戦後の経済回復の為に雇用を創出する必要があった。

 結果、EDENから生産ラインを導入し、生産工場を失職した市民の雇用に充てる方向でEMの導入が決まった。兵器の生産工場とは必ずしも褒められる仕事ではないが、戦後の復興の中で失業者に安定した収入を少なからず約束することは出来た。

 かくしてライセンス生産の始まった『ヘクトールU』はセルダールの経済復興に一役買う形になる。特にEDEN側が干渉を技術供与のみに留め、主体性をセルダールの現地企業に委ねた事もあって住民の反発もある程度緩和出来た。

 これに連鎖する形で他の産業も活気付いていく。

 工場が稼動すれば人が集まり、より快適な住宅地が必要になって建築業が賑わう。

 人が集まって生活を始めれば各種日用雑貨や食料が必要になり、各産業と運送業の需要が高まる。

 そして人にそれらを効率的に供給する卸業と小売業が居住区へ展開することで売買の遣り取りは加速度的に増加する。

 結果、戦争に疲弊した街はにわかに活気を取り戻していったのである。

「じゃあ、ニュースとかで景気が上向いているっていう報道は……」

「あながち間違いではなく、そしてヘクトールはその一端を担っています。とはいえ問題が無いと言えば嘘になるけれど」

 戦火を生む兵器が国を復興する原動力となるなど、皮肉としか言いようが無い。かといって工場で働いている人々を責められるか、と問われればカズヤは首を横に振るしかないと思った。もし『兵器を作るなど論外だ』と仕事を取り上げてしまったら、糧を得られなくなって彼らは明日から飢えてしまうだろう。緩やかにしか進まなかったセルダールの戦後復興を劇的に促進させたのは間違いなくEDENの力なのだ。

「さて、話を続けましょう。貴方の乗るMk‐Uですが―――――」

 言葉をつむごうとしたアンス・ネイバートを大音量の警報が遮った。

「な、なんなんだ!?」

「……第一級警報、ですって?」

 基地の格納庫にけたたましく鳴り響く警報が示しているのは第一級警戒態勢、そして機動兵器部隊の緊急スクランブルの命令だ。何の前触れも無しに発令されるものではない。

 慌しく整備兵たちが用意していた精密検査を中断し、出撃準備のそれへ切り替え始める中でベングリンは壁に備え付けられた通信端末を使って管制室とコンタクトを試みていた。

 平穏無事な日常から一転して緊急出撃命令。

 あまりに状況が不明瞭すぎる。

 事前に出来る限りの情報を取得しようとする彼の思考は、かつての紛争の中で身についた生き残るための術。

 敵部隊の戦力、構成、行軍速度、針路、予想される行動目標など……それらを如何に把握できるか否かで勝率も生存率も変わってくるのだから。

「機動部隊長のベングリン大尉だ。管制室、状況の説明を」

 管制室は今や蜂の巣をつついたような大騒ぎになっているはずだ。第一級警戒態勢が発令された今、発着陸のスケジュールは全てキャンセル。その上機動部隊の発進誘導に、何よりトラブルの観測と対応に追われているのだから。

 管制室に問い合わせてからきっかり一分後、通信機の向こうで飛び交う怒号とコール音をBGMにオペレーターの一人が報告を始めた。

 ベングリンの側では部隊の面々やシロガネにくっついて、カズヤが固唾を呑んで自分を見つめている。ベングリンは通信機を操作し、スピーカーで通話の内容が彼らにも聞こえるように切り替えてやった。

『テロです、大尉』

 開口一番、カズヤの表情が凍りついた。

「簡潔に話せ。静かに、落ち着いてな」

『……コーデルト港湾区に所属不明のヘクトール6機が出現。無差別破壊行動を行っています。被害は現在も拡大中。市民は警察の誘導で避難していますが、港湾区に隣接している工業区は完全に壊滅。敵戦力は隣の商業区へも侵攻しており、まだ多数の市民が取り残されています。さらに所属不明の艦船が当基地へ接近中で、恐らくこちらもテロリストのものと思われます』

 ギリ、と少年の口元が激しい怒りに歪む。

 それを察してかは分からないが、ベングリン部隊長は即座に号令を下した。

「全機出撃用意! 市街地のテロリストを鎮圧するぞ! ビハマとジェドロはカバーに回れ、前衛は私とケドゥックで詰める。速攻で相手を潰さんと明日から町で買い物が出来なくなるからな!」

 基地司令の判断を仰ぐまでも無く、己のすべき事を成す。

 ベングリンの独断専行は今に限ったことではない。あの虐殺のような戦争の中で身についた決断力の賜物だった。

「ハッ、違いない」

「よっしゃ。じゃあルーキーとシロガネはここのお守りを頼むぜ」

 ニヒルに笑う隻眼のビハマの隣で、ムードメーカーのジェドロがカズヤの肩を叩いた。パンチパーマの黒人パイロットは未熟な少年兵が自分のポジションを言われなかったことによる動揺をすかさず見抜いていた。

 ジェドロの軽いジョークのような口調は一転、重く鋭いものへ変わってカズヤの耳を打つ。

「いいか、ルーキー? 何も気休めで言ってんじゃねえ。こういう時は大抵、敵はこっちの尻をマクろうとすんのさ。現に得体の知れない野郎が海から来てるしな。だから俺たちはバックも固める必要がある。分かるな?」

「不意打ち、奇襲、挟撃、ですね」

「分かってんならいいさ。俺たちのねぐらを頼むぜ、カズヤ(・・・)

 交わす言葉はそれきり、四人のベテラン兵は各々の機体へ向かって走り出した。何せ時間が無い。一分遅れれば百人が死んでもおかしくない。

 その背中を見送って、カズヤは呟いた。

「ここを、守る……この場所を」

 経緯や目的はどうあれ、この基地もあの街もまた人々の生活する場所だ。寝て、起きて、仕事をして。そんな誰かの居場所を奪い合うのが戦争だ。

 そして今、それを奪い取ろうとする奴が居る。

(守りたい!)

 強い願いだった。

 これまでの何よりも、そうしたい、と願った。

 しかし今の自分のなんと無力なことか。生身のまま飛び出したところで、旧型のリィオゥに踏み潰されて何も出来ないまま人生終了だろう。

(…………力が、欲しい)

 ハンガーに佇むヘクトールUを見上げる。あんなにも憎かった機械仕掛けの巨人が、これほど頼もしく思えたのは初めてだった。それでも握った拳は空しく震えるだけで、現実は何も変わらない。

「カズヤ! カズヤはどこにいる!」

「……フォルテ先生?」

「アンタ、そんなところで一体何を……っ!?」

 格納庫の二階部分の通路から姿を見せたフォルテ・シュトーレンは瞬く間に表情を強張らせたかと思うと、懐のホルスターから拳銃を引き抜いていた。狙う先はカズヤの背後―――――アンス・ネイバート技術顧問の額、その一点のみ。

「せ、先生!?」

「どけ、カズヤ!…………何故アンタが此処に居る、アンス・ネイバート? いつNEUEに渡った?」

 顎でしゃくってカズヤに退くように促しながらフォルテが問いかける。

 対して問われたアンスは銃で狙われているにも関わらず、涼しげな態度を崩していなかった。

「私はセルダール軍の特別技術顧問ですから」

「あの男の、差し金かい」

「残念ながらあれから四年間、未だに音信不通です。此処に居るのはあくまで生計を立てるためですから」

 それだけ告げてアンスは踵を返した。

 もはや話すべきことはない、と言わんばかりに。

「待ちな! まだ聞きたい事が……」

「そんな時間はありません。行きますよ、カズヤ・シラナミ君。貴方の機体を―――――Mk‐Uを出します」

 カズヤの腕を引いてアンスは駆け出す。その背に向けた銃口を、しかしフォルテは下ろすしかなかった。両者の距離は既に100mを越えようとしており、彼女の拳銃にはその位置から対敵のみを狙撃しうる性能が無い。もし撃つのならば、傍らのカズヤ少年を誤射する覚悟が必要だ。

「くそっ!」

 仇敵を前に打つ手無く歯軋りするフォルテ・シュトーレンの胸中を察してか、カズヤと共に乗り込んだエレベーターの中でアンスは眉を細めた。

 言われなくとも分かっている。

 自分は彼女たちの敵なのだから。

「あ、あの……」

 彼女のあまりに険しい表情に傍らの少年が戸惑いの声を上げた。

「気にしないで下さい。それよりも操縦マニュアルは覚えましたか?」

「え? いや、それがまだ読んだことも……シミュレーターでヘクトールUの起動手順はやりましたけど」

 カズヤの返答にアンスは今度こそ心の奥底から忌々しげに舌打ちをした。

 肝心のパイロットに最低限の資料も渡していないなど、彼女にとっては論外もいいところだ。いざと言うときの為の訓練だというのに、普段からの備えを怠っていては何の意味も無い。

 まあいい。それならここで全てを彼に託すのみだ。

 エレベーターはすでに公式上の最下層を越えて更に下、最深部の機密ハンガーに到着している。三重構造のドアが開き、二人の眼前にストロボライトで照らし上げられる巨人の姿が現れた。

「これ、は――――――」

 先ほどまで見ていたヘクトールUよりもやや華奢に見える。

 全体的に重量の軽い印象だ。

 しかしその双眸は、やはり猛禽類を髣髴とさせるツインカメラである。さらに特徴的なV型アンテナと鋭く磨き上げられた全身のシルエットが、より凶暴なイメージを色濃くしていた。

「アンスさん、これが……」

 答えを知りながらカズヤはあえて問う。

 いや、問わずに入られなかった。

 これが。

 この鋼のマシンが自分のものなのか、と。

「ええ、そうです。これがEMN01Galaxy(ギャラクシー) Mk-Uで―――――ぶっ!?」

 自信たっぷりに答えようとするアンスの顔面に小さな何かが豪快に着地した。その反動で豪快にアンスは尻餅をついてしまい、やや短めのタイトスカートの奥が見えそうになっている。対してカズヤはまじまじと見つめること数秒、耳まで真っ赤になってあたふたと明後日の方向へ視線をそらした。せっかくのカッコイイシーンが完全に台無しである。

「ぶいっ! です!」

 一方、アンスの胸の上でもぞもぞと動く黒い影はやがてすっく、と立ち上がってカズヤに小さな右手でVサインを作って見せた。手のひらのサイズは1cmも無いだろう。

 小人……いや、可動式の人形だろうか。長い金髪をポニーテールにした、実に可愛らしいフィギュアである。親友のランティはこういうのが好きだった。

「『ぶいっ』じゃないわよ! 何やってるの、アンジー!?」

「えー? 敵機襲来による状況:危険域を確認して出撃待機してたんですよー。そしたらアンスお姉様がマスター引っ張ってくるのが見えたので合流した次第です」

 えっへん、と胸を張るポニーテールのフィギュア―――――アンジーが答えた内容にアンスとカズヤは今が緊急事態だったことを思い出した。

「アンスさん。解説を」

「この子はアンジー……Mk-Uの総合支援A.I.(エー・アイ)。いわゆる人工知能ね。この人形は外部活動用の端末なの」

「ずいぶん、あれなデザインですね」

「…………可愛いでしょ?」

「はあ、まあ」

 グッ、と親指を立ててみせるアンスにカズヤは言い知れぬ不安を押し殺して頷いておいた。

(父さん、母さん、僕は進む道を盛大に誤ったみたいです)

 亡き両親に胸の内で土下座しつつ、カズヤは更に問いかける。

「で、乗るにはどうすればいいんですか?」

「え? この子と二人で乗ればいいわよ。タラップ降りてるし、ハッチ開いてるし、問題ないでしょ」

 予想通りの回答にカズヤはいよいよ意識が遠のいてきた。

 おまけにアンスはなにやら凄く無邪気な笑顔で「GO! GO!」と急かしてくる。

 そして目の前の全長20cmほどの自律人形は、カズヤへそっと右手を差し出してきた。柔らかく微笑み、まるで迷い児に手を差し伸べるように。

「お姉様のせいでだいぶ緊張感が削がれましたけど、この基地は今全滅するかどうかの瀬戸際にあります」

 その折、激しい震動がハンガー全体を揺らし、避難誘導を報せる警報が鳴り響く。

「もう猶予はありません」

 敵が迫っているのだ。

「此処に居る人達を助けられるのは貴方だけです。マスター」

 アンジーの言葉に幼少の記憶がフラッシュバックする。

 父と母が殺されたあの日、周りの誰もが襲い来る敵に抗う術を持たず、両親と同じように踏み潰されていった。

 そして彼らを守るべき軍隊は、あろうことか逃げ惑う市民を囮にして真っ先に撤退していった。

 遠ざかる味方と、近づいてくる死の恐怖。

 同じことが今此処で、自分の目の前で再び起きようとしている。

「―――――――こう」

 答えは最初から決まっている。

 あの惨劇を繰り返す存在は何であろうと許せない。

 だから。

「行こう、アンジー」

 そのあまりに小さな手を握る。

 カズヤの心にもはや最初の疑心は欠片も無かった。

 

 

 

 

 

 

――――――セルダール軍第七駐屯基地より洋上2km地点

 

 

 三年前に退役した大型タンカー『ジュビランス号』はその胎内に最後の荷を抱えたまま真っ直ぐに海原を最大速度で突き進む。もう既に陸は近く、何故か浅い海を航路に設定にしているためいつ海底に乗り上げてもおかしくはない。タンカーという船はもとより遠洋航海用に設計されており、その自重ゆえに船底部は深く沈むため浅い海を航行すると座礁する危険性が極めて高まる。

 その基本的なルールを無視してジュビランス号が往くのは理由がある。

 船倉の積荷の中でただ黙々と時が満ちる瞬間を待つ男があった。名はディビッド・オーゲン。元セルダール軍の将兵でかつてはリィオゥに乗って激戦を潜り抜けた猛者でもあった。

 にも拘らず、何故こんなタンカーの中に居るのか。

 それは彼が他ならぬ―――――

「む」

 コックピットの中でアラームがけたたましく反響する。

 オートパイロットシステムに指定した地点に到達したのだ。コース通りならば基地まで500mほどの地点に来ているはずだった。艦首に取り付けた急ごしらえの監視カメラで外の様子を覗き見ると、基地は上に下にの大混乱でこちらへの対処どころではないようだ。加えてなけなしの防衛戦力もすべて市街地の迎撃へ回したらしい。

 この状況はむしろ当然だ。自分が敢えてそうなるように仕向けたのだから。少し食い違いがあるとすれば街から盛大に火の手が上がっていることだろう。通信網を封鎖しているので状況は分からないが、恐らくメンバーの中に例の組織の人間が潜り込んでいた結果か。

 さらにアラーム、基地まで300m。

 全システムを立ち上げ、戦闘モードへ。

(いよいよか)

 オーゲンは今日と言う日を渇望してこれまで生きてきた。あの戦争で己の全てを失ってから、これだけが生きる支えだった。

 かつての悲劇の真相を知る、限られた人間として。

 これから母国が歩もうとしている危難の道に警鐘を鳴らすために。

 何より、全てを奪ったモノたちへの復讐のために。

 彼はテロリストへと身を窶したのだ。

「!?」

 先程とは別種のアラートがオーゲンの耳を打った。

 船体が海底に接近していることへの警告ではない。手元のサブディスプレイに点滅する表示を見て、彼は迷う事無く船倉側面の搬入出ハッチを開け放った。スイッチによる操作ではなく、自らが乗る機械の巨人の両腕で突き破る。

『前方に高熱源反応』

 オーゲンにそこまで強引な手段を強いたのはその一文だった。

 タンカーの右側に空いた搬出口から一機のヘクトールが飛び出し、それから一秒も経たずに巨大な粒子ビームが船体を直撃した。鋼鉄の外装は瞬く間に溶解し、船体の最後部にあったエンジンがビームに貫かれて爆発する。

 一瞬の内に轟沈したタンカーを横目で見つつ、オーゲンは自分のヘクトールを基地に上陸させていた。ビームによる閃光とタンカーの爆発がいい隠れ蓑になってくれたのは怪我の功名というべきか。

 海面をすべるように飛ぶオーゲンのヘクトールは強襲用にミサイルコンテナと各種火砲を限界まで搭載し、さらに重量を増加に伴う機動力の低下を補うための補助ブースターまで装備している。完全な突撃仕様となっていた。

 しかし彼に喜んでいられる時間は微塵も無い。これでこの基地には大型タンカーを一撃で屠るだけの兵器が稼動状態にあり、オーゲンの接近を感知して迎撃に現れた、という事実が明らかになったからだ。

EDENのテコ入れか……忌々しい商人共め)

 事前に収集した情報では、この基地に配備されている稼動戦力は小隊規模のヘクトールUと王宮警備隊の新型機三機のみ。あれほどの大出力ビームを備えた人型兵器は存在しないはずだった。宇宙戦艦用の主砲を流用するなどの例外も考えられなくはないが……

(いや、違うな)

 被弾する直前の艦首カメラから送られてきた映像では、推定30m以上の巨大な人型からビームが発射される瞬間がはっきりと映っていた。表向きは輸送基地としながらそんな代物を運び込ませていたとなると、あの基地の司令官はよほどの食わせ物に違いない。

 海上で機体をホバリングさせながらオーゲンは決断を迫られていた。

 あと数秒もしないうちに敵はこちらに再度照準を合わせ、あのビーム砲を撃ってくるはずだ。先程はタンカーと言う盾があったから事無きを得たが、直接狙われた場合に無傷で居られる保証はない。あれほどの大出力だ、掠めただけでもこちらを行動不能に陥らせるには熱量・衝撃共に十分すぎる。

 つまり撃たれたら最後、オーゲンに勝機は無い。

 逆に言えば撃たせなければいいのだが物理的にあの砲撃を防ぐ必要は無い。相手にビームの発射を躊躇させる何かがあれば―――――

「元より打算など捨てている。行くぞ!」

 ターゲット・ロックオン。

 相手のビームの再チャージが完了する前に両肩に搭載した十六連装ミサイルを全弾発射。もちろん標的は基地内に居座る迎撃兵器だ。その威力たるや全弾命中すれば宇宙巡洋艦を撃破せしめるほど。

 だがオーゲンの狙いはその破壊力に任せた敵機の撃墜ではない。基地の自動防衛システムがすぐさま対空機銃でミサイルを迎撃し、その爆風が大量の粉塵を巻き上げて彼と基地の間を遮った。自分の姿を覆い隠す瞬間こそが彼に残された唯一の勝機。

 全ての推進器を最大稼動させ、敵の射角から逃れるべく海面を飛ぶオーゲン機を再度ビームが狙うが辛うじて凌ぐことが出来た。時速300km近い急加速のGに耐えながら機体を上陸させ、そのままスライディングの要領で基地の建造物に隠れて停止。

 機体の損傷を確認する。

 粒子ビームの余波と高熱で左肩のミサイルコンテナと左手に持っていたサブマシンガンは変形し、使用不能。左腕の駆動系も一部破損しているらしく上手く動作しない。

 避けたつもりでこれなのだ。事前にミサイルによる牽制をしていなければ腕どころかコックピットまでやられていただろう。

(しかも最初より威力が落ちている)

 ビームは明らかにタンカーを砲撃したときよりも出力が弱くなっていた。

 ミサイル攻撃による装備の損耗とは考えにくい。恐らく視界を遮られることを察知して不十分なチャージのまま発射したのだろう。それで腕一本を使用不能に追い込まれたのだ。

 そしてオーゲンは確信した。

 敵は間違いなく歴戦の猛者である。

 如何に優れた兵器を持ったところで雑兵には扱いきれるはずも無い。使いこなすだけの技量と明確な殺意を以って自分に相対している。

 その事実に彼の背筋は凍りついた。

(だが、これが戦場の空気と言うものだ)

 もはや体はその恐怖に慣れきっている。今更萎縮するほど正気ぶるつもりも無い。

「ぬおおおおおおおおっ!」

 跳躍。

 ブースターを噴かして地上50mの高さまで舞い上がったヘクトールはすかさず腰に備え付けられたビームセイバーを動く右手で抜き放つ。その視線の先には敵を探す寸胴な薄緑の大型機動兵器。

 相手は完全にオーゲンへ背を向けていて、空中に現れた彼に向き直る動きさえない。その無防備な背中へ光線剣を突き立てようと繰り出されたヘクトールの右腕は、

「!?」

 真っ二つに切り裂かれて爆発した。

 バランスを失って半身から地面に叩きつけられたヘクトールのコックピットでオーゲンは何が起こったのか、即座に理解した。

 全高30mはあるだろう敵の巨大な薄緑の体、その左右に申し訳程度に生えている両腕の先端からレーザーが撃ち出されたのだ。威力は粒子ビームには遠く及ばないが、近距離ならばEMの装甲を破断するには十分過ぎる。

 残った両脚も関節の動作がおかしい。それでも何とかヘクトールを立ち上がらせるとオーゲンは機体の外部スピーカーのスイッチを入れた。もちろん目の前の『デカブツ』のパイロットと話すためだ。本来なら機体が行動不能に陥った段階で自爆する腹積もりだったのだが、自分をねじ伏せた相手の名前ぐらい聞いておかなければパイロットとして気が済まなかった。

『一方向から大規模な攻勢を掛けると見せて、逆側から敵を突く。お前の……いや、我々の十八番だったな。そうだろう、オーゲン』

「やはりアンタだったか―――――ゲリュゴン司令」

 オーゲンにとってこの基地の司令官であるゲリュゴンはかつての上官であり、戦中は幾度も同じ死線を潜り抜けてきた。

『久しぶりだな。だが世間話をしに来たわけではないか。狙いは何だ?』

「この基地にEDENの新型機があるだろう。そいつを、破壊するためだ」

 スピーカー越しにゲリュゴンはくぐもった声を漏らした。

 常識的に考えて敵の新兵器はまず奪取することが優先される。上手くいけば敵側の新技術などを解析する材料となるし、何より即戦力となる可能性もある。まして兵器の調達の難しいテロリストという立場にあれば尚のことだ。

 だがオーゲンはまず『破壊する』と宣言した。彼の最優先事項、最終目標は奪うことではなく、壊して完全に使用不能にすることだった。

 そんなゲリュゴンの困惑を察して、オーゲンは言葉を続けた。

「あの新兵器はセルダールとEDENの双方に害を為す。その為に造られた」

『馬鹿な、何を根拠に……そもそも何故、お前があれを知っている?』

「これ以上教える義理は無い。何より、時間だ」

 オーゲンのヘクトールが基地の港へ視線を向けると、そこにはすでに三機のEMが上陸を果たしていた。黒塗りのボディに複合センサを搭載した頭部。見る限り特殊部隊仕様のヘクトールUだった。

 それが今、オーゲンとゲリュゴンへ手持ちのライフルの銃口を向けている。

「作戦は失敗。口を割ったテロリスト諸共に基地を殲滅するという段取りだ」

『保険と言うわけだな。お前ではなく、お前のスポンサーの』

 損傷しているヘクトールはもちろん、ゲリュゴンの機体……ゾックもこの距離からの一斉射に耐えられる保証は無い。このゾックはEDENで発掘された機体を現在の技術で強引に復元したもので、データベースに残されていた設計図面が不完全なこともあって脚部が本来のサイズより倍以上肥大化し、武装の配置なども変更されている。腕部のフォノンメーザー砲も元々頭頂部に設置されていた。しかもMk‐Uの輸送任務に合わせて第七基地へ緊急に運び込まれた上、テロリストの急襲により最終調整も覚束ない状態での出撃となったのである。

 特に致命的なのは、表面の装甲材の大半が発掘当時のままだということだ。現代のEMの火力に耐え得る要素は一欠けらも無かった。

 そして対抗しようにもゾックの胴体部の粒子砲は発射にチャージが必要だ。腕のメーザー砲は近距離用で、残念ながら射程外。オーゲンのヘクトールは度重なる被弾と損傷で使用可能な兵装は残っていない。

 

―――――万事休す。

 

 そして死を覚悟した二人の視界に映ったのは、空を煌々と照らして薙ぐ銀色の光。市街地から放たれたそれは幾つものビルを薙ぎ倒して一帯を蹂躙していた。

 驚きの色を隠せないのは黒いヘクトールUも同じだ。僅かだがたじろぎ、状況を把握しようと頭部センサで周辺を走査している。

 そして、その決定的な隙を突いたのは、

 

『う、うわあああああああああああっっっ!!!』

 

 あの少年兵の悲鳴にも似た叫びだった。

 

 

 

 

 

 

 

 メインシステム・オールグリーン、戦闘モードで稼働中。

 Hi‐クロノ・ツインエンジン、フルドライブ。

 発進用カタパルト作動完了。

 カズヤが今居るのはMk‐Uのコックピットだ。球形の室内の中央にあるシートには操縦桿とコンソールを左右に備え、着座すると両脚の間からアンジー用のシートがせり上がってきた。アンジーの場合は「座る」と言うより「接続する」と言うべきか。

H.A.L.O.Uシグナルオールグリーン。GSフレーム活性化完了まであと20秒。同調係数クリア……っと。初陣には問題ありませんよ、マスター」

 ついにその時がきた。

 緊張に指が震える。

「いいですかマスター、しっかり操縦桿を握り締めて歯を食いしばってくださいね? 発……進っ!」

「う、うわあああああああああああっっっ!!!」

 アンジーの忠告どおりに身構えた瞬間、世界が弾けた。

 全身に掛かるGにカズヤの喉から悲鳴が飛ぶ。機体は電磁カタパルトで時速数百kmの速度で地下格納庫から地上へ打ち出されたのだから当然だろう。

 暗い壁に埋め込まれたガイドビーコンの光はあっという間に眩い青空へ変わり、高度計の表示がマイナスからプラスへ反転する。開けた視界には、あちこちから黒煙を噴く基地の姿があった。

「マスター、地上に出ました! 基地司令の搭乗機が包囲されています!」

「ゲリュゴンさんが!?」

 すぐさま手元のディスプレイで自分とゲリュゴン、そして敵の位置を確認する。今カズヤはゲリュゴンと敵部隊のちょうど中間点におり、援護に入るならば絶好のポジションと言えた。

「敵は黒塗りのヘクトールUが三機。特殊部隊向けのカスタマイズが施されていますね」

「つまりどういうこと!?」

「難敵、強敵ってことです」

 アンジーからの報告を聞き流しながらカズヤは全身のバーニアを逆噴射して地表へ向かって機体を加速させた。遮るものが何も無い宙に浮いていては狙い撃ちにされてしまうだろう。着地と同時に襲い掛かるGに耐えながら右手のレーザーライフルを構える。

 しかしアンジーの分析は正鵠を得ている。敵は各々三方向に散開してカズヤを取り囲むように移動していた。それもカズヤの急降下と同時に行動し、かつ兵舎などの障害物を巧みに利用して少年兵の照準から逃れている。明らかに戦いなれている兵士の動きだ。

 危険。

 僅か数日足らずのシミュレーター訓練で叩き込まれた感覚にカズヤは喉をごくりと鳴らした。

 左右から敵機が一機ずつ迫ってきている。

 じっくりと、何度もステップを踏みながら確実に距離を詰めてきている。右が隠れたと思えば左が近づき、左が隠れたと思えば右が来る。ご丁寧にも威嚇射撃付きだ。

 牽制なのは最初から分かりきっている。こちらに姿を見せているのは二機で、相手は最初三機いた。では残りの一機は……?

「正面! 敵機接近!」

 そうだ、左右は囮だ。

 こちらの注意を散漫にさせ、そのタイミングをついて真正面から奇襲する。シミュレーターの仮想敵として何度も相手をした珍妙な怪獣の良く使う手法の一つだった。

 ただ惜しむらくは。

「しまっ―――――」

 相手の戦術を読むことに夢中になりすぎて、肝心の迎撃のための照準を疎かにしていた事だ。咄嗟にトリガーを引くがライフルの銃口は僅かに狙いを外していた。相手はバーニアの推力を最大出力に上げており、加速のついた敵機はほんの1秒足らずでカズヤの視界から消えうせるだろう。

 目前の倉庫を跳び越える形で黒いヘクトールUが頭上から迫る。

 追いついているのは思考と視線だけだ。体は迫り来る敵への恐怖に萎縮し、硬直していた。

 その瞬間、カズヤの操縦とは無関係にMk‐Uの右腕が大きく上へ動いた。ちょうどレーザーライフルの銃口が敵の回避軌道の先に重なる位置だ。

「うあっ!」

 反射的にトリガーを引き絞る。

 三連射されたレーザー光線が中空のヘクトールUの胸部を射抜き、射抜かれた機体は糸の切れた人形のように墜落した。幸い動力源に直撃しなかったようで、黒塗りのヘクトールUは爆発を起こすことは無かった。

「い、今の……」

 思わず操縦桿を握る両手を見やる。

「勝手に、動いた?」

 トリガーを引いたのは自分だ。

 しかしライフルの銃口が敵機を捉え切れていない状況で、ギャラクシーMk‐Uの腕は確かに、独りでに、ずれた照準を補正した。

「マスタァッ!」

 アンジーの声で我に帰るが時既に遅く、左右二手に分かれていたヘクトールUがこちらに向かって、それぞれ両手で構えたライフルから正確かつ容赦ない射撃を繰り出してくる。呆けていたカズヤの操縦で数百m毎秒の弾速から逃れられるはずもなく、着弾の衝撃にコックピットが激しく揺さぶられた。

 新兵であるカズヤの最大の弱点の一つが、この『集中力の途切れやすさ』である。

 戦場において兵士は絶えず生死の境目に立ち続けることになり、その様は終わりの無い綱渡りに例えられることが多い。運悪く風に煽られ、或いは疲労などから生まれた気の緩みで、命を繋ぐ一本の綱から足を踏み外して死という谷底へ堕ちていく。

 生き残れるのは己の死に抗い続けるタフさを持っている人間だけであり、今日初めて戦場に立つカズヤ少年にそれを求めるのはいささか酷でもある。それでも戦場では一切の例外はない。

 Mk‐Uが集中砲火に晒されることになったのも、その中でカズヤが健在であることも全て必然に基づく事実なのだ。

「…………?」

 普段のシミュレーターならばここで撃墜されて訓練終了になる。もちろん今は実戦なのでこのまま機体諸共バラバラになってしまうはず。

 だがカズヤも、Mk‐Uもまだ無事のようだ。少なくともコックピットのカズヤはピンピンしている。手元のサブディスプレイには『GSF:D‐MODE・Active』の表示。

「な、何だよ、これ!?」

 大気が渦巻く音が聞こえる。

 空間がねじれる音が聞こえる。

 地面が潰れる音が聞こえる。

 そしてすぐ近くから、何かを凄い勢いで巻き込んでいくような駆動音。

「何とか間に合いました。いやもう起動テストもまだの代物を使うのはドキドキですね」

 カズヤが視線を落とすと専用のシートの上で「ふぃー」などと大仰な仕草で額の汗を拭ってみせるアンジーの姿があった。

「これぞギャラクシーMk‐Uの秘密兵器、グラビティ・スタピライズド・フレームです。両腕両脚の骨格に内蔵された『重力干渉による慣性制御装置』は機体の姿勢・機動のサポートのみならず、フルドライブさせることで一時的に重力偏向フィールドを作り出してあらゆる攻撃をストップさせることが可能なのですよ」

 んがー、とカズヤは開いた口が塞がらない。

 あらゆる物を曲げて遮る重力のカーテン。

 それがこのMk‐Uの切り札だ、と言わんばかりに小さな胸を張るアンジー。確かにMk‐Uも自分たちもまったくの無傷のようだからその効力は確かだろう。

 驚いているのは敵も同じのようで、撃ち出したライフル弾がすべて防がれてしまって狼狽している様子が機体の挙動にまで現れていた。一歩、二歩と後退する敵機はついにこちらへ背を向けて逃げ出した。よほどショッキングなものを目撃したのだろう、機体各部の推進器を使うことさえ忘れてよたよたと走る。

「マスター、敵が逃げます。追撃を」

「あ、ああ」

 アンジーに言われるまま、恐怖に駆られて走るヘクトールの背にライフルの銃口を向ける。

 発砲。相手の左腕が肘の関節から千切れて飛んだ。

 更に発砲、発砲。頭部の左半分がレーザーによって溶解し、左足も股関節を撃ち抜かれて脱落。

 四肢を次々にもがれたヘクトールがバランスを崩して半壊した兵舎に背中から倒れ込んだ。ちょうどカズヤに向かって尻餅をつく格好になる。

 もう一度発砲。発射された光線がヘクトールの腹部を貫通した。

「っ―――――――――!?」

 閃光、一瞬遅れて爆発音がカズヤの視界と聴覚を塗りつぶす。

 ヘクトールを巨大な火球が一瞬の内に飲み込み、猛烈な風圧と衝撃を辺りに撒き散らした。EMを稼動させるクロノ・ストリングス・エンジンンジンはその強大なエネルギー出力ゆえ、万が一にも暴走すれば基地一つを粉砕せしめるほどの爆発を起こす。通常の運用状態でも被弾などでエンジンが損傷すれば半径十数メートルのクレーターを作ってしまいかねない。

「そうか、エンジンに当てると……被害がっ!」

 カズヤがたじろぐ。

 残る敵は一機。手持ちのライフルにはまだ残弾があるのでこれを使えば撃破不可能ではない。だがそれは同時にもう一度先程のような爆発を引き起こす可能性も孕んでいる。迂闊に相手を撃って動力部を破壊すれば、今度は基地のシェルターに被害が及ぶかもしれない。

 振り返れば最後のヘクトールUがあと二十メートルほどにまで迫っている。相手は弾切れのライフルを捨ててビームセイバー―――――エネルギー刃を作り出す近接用の格闘兵器を右手で振り上げた。

「くそぉっ!」

 繰り出される縦一文字の斬撃を一歩退いて凌いだカズヤはライフルの銃口を相手の右腕に向けてトリガーを引いた。かなり荒っぽい照準だったがレーザーは敵のヘクトールの右腕をビームセイバーごと粉砕してくれた。

 それでも相手は止まらない。残った左手でMk‐Uの頭を掴んで地面へ引き倒すと、そのまま馬乗りになる。

 対してMk‐Uは倒された衝撃でライフルを手放してしまい、完全に手足を押さえ込まれてしまっていた。カズヤがレバーを動かして押しのけようと試みるも、組み伏せられた状態からでは上手くいかない。

 そして装甲越しでも響いてくる甲高い駆動音がカズヤたちを焦らせる。

「マスター、早く脱出を!」

「分かってる!」

 駆動音は敵機の腹部辺りからのもので、最早相手の狙いは明白だ。エンジンを暴走させて自爆し、自分諸共にこの基地を破壊しようとしている。

 もう猶予は殆ど残されていない。

「格納庫から通信です、マスター!」

「か、格納庫!?」

『聞け、カズヤ・シラナミ!』

 コンソールを操作して通信の発信源へカメラを向けると、格納庫の入り口で基地の備え付けの通信端末を掴んでこちらへ叫ぶミツルギの姿が見えた。

「ミツルギさん!?」

『むやみに体を捻るな! 渾身の力を全身のただ一点に集中するのだ!』

 そうだ。

 闇雲に手足を動かしたところで馬乗りになっている敵の姿勢は崩れない。相手が全力で押さえに掛かってくるのならば、こちらも全力を注ぎ込む必要がある。自分を押さえ込む状況に対して、もし突き崩せる箇所があるとするならば……『敵機は右腕を失っている』という不利条件こそ違いない!

 だがこちらの劣勢はそれ以上とも言える。左腕は機体と地面の間に挟まれてまったく動かせず、残る右腕は相手の左手によって拘束されている。

 そう。右腕を、左手で。

「アンジー!」

「はい! ライトアーム回路開放! グラビティ・スタピライズド・フレーム、ディフェンスモード・アクティヴ!」

 重力のカーテンがGalaxy Mk‐Uの右腕を包み込み、異物であるヘクトールの左腕をバラバラにして弾き飛ばした。

 突然巻き起こった不可視の嵐に敵のヘクトールは大きく仰け反ってMk‐Uの脱出を許してしまった。だがそれでもすぐさま姿勢を立て直して相対する。そもそもエンジンが臨界に達すれば自爆によって本懐は遂げられるのだ。今更十数メートル間合いを離されたところで何の問題もなかった。

 ただ万全を期すために再度間合いを詰めようと一歩踏み出した瞬間、

『うおおおっ!!!』

 カズヤとヘクトールの間を駆け抜ける一陣の風と激昂の叫び。戦場に割って入った深紫の装甲を纏いし機械仕掛けの巨人は振り抜いた刃を淀みない動作で背負った鞘へ戻し、

「シロ―――――ガネ、さん?」

 一際高い金属音と共に黒塗りのヘクトールは胴を横一文字に切断されてその場に崩れ落ちた。基地を丸ごと吹き飛ばすような爆発が起こる気配は微塵もない。

「すべての敵勢力の撃破を確認。周辺の安全は確保されました」

 機体のレーダーシステムの索敵結果を確認したアンジーにカズヤが問い返す。

「…………基地は?」

「シェルターにダメージは確認できません。人的被害は最終報告待ちです」

 Mk‐Uの頭部を動かし、改めて周囲を見渡してみる。建物はいくつも倒壊し、あちこちで火災も起きているが、その中で確かに何人もの人間が基地の復旧のために動き出していた。

「マスター、帰還しましょう。格納エレベーターまで誘導します」

 戦闘が終わった以上、機体を外に放り出しておく理由はない。何よりパイロットであるカズヤ自身、すっかり疲弊しきっている。アンジーの提案はもっともだった。

「わ、分かった」

「では此処から東に20メートルの地点に……あ、ちょっと待ってください。全ての通信周波数帯に向けて放送が発信されていますね」

 誘導を中断すると、アンジーはテキパキとモニターを操作して件の放送を表示させた。画面に映っているのは剣聖王ソルダムの謁見の間。EDENの人間ならともかく、セルダールで生まれ育ったカズヤやゲリュゴンたちはニュースなどで何度も目にした王室を象徴する場所だ。

 しかし不思議なことにフロアの中央から見える玉座に王の姿はなく、セルダール軍の総司令官である女将軍・メジェストゥの姿のみ。

『我らが偉大なる剣聖王に代わり、全国民の皆様に申し上げる』

 大仰な仕草と芝居掛かった台詞回しで女将軍が語り始めた。

『先の戦争終結から四年……復興を遂げんとする我らの祖国を飢えた野獣の如く付け狙う輩が居る。奴らは経済援助の名の下にこのセルダールの大地を我が物顔で闊歩し、次々と忌々しい兵器を造る工場を建て、政府に賄賂を送り、この国を意のままに操ろうとしているのだ。すでに議員の大半は傀儡と化して政府機関は正常に機能していない。故に私は今日という日に決起し、我が同胞達と共に政府中枢を掌握した次第である』

 画面の中の将軍は声高らかに語り続ける。

『しかし誤解しないで頂きたい。我々の敵はEDENの民ではなく、EDENという国家組織にある! 戦火に焼かれたセルダール復興のために異邦の地へ移ってきた彼らはすでに我らセルダールの民も同然だ! 苦楽を共にしてきた仲間を疑うようなことは決してしないで頂きたい。そのような悪徳はすべてこの私が引き受けよう。セルダールの民らしく、友を信じる気高き心を忘れるな!』

 

 

 

 続く演説を聴きながらゲリュゴンは事態の深刻さに歯軋りした。基地の殆どの人間は女将軍のパフォーマンスに釘付けになっているせいもあるだろうが、基地の通信ネットワークがいつの間にか完全に外部から遮断されているのだ。基地内の無線やデータ通信などは問題なく使用できるが、他の基地との連絡が一切出来ない。電波障害ではなく、システムそのものが何者かによって支配され、アクセスそのものを拒否されている。

 たった今、第七駐屯基地は陸の孤島も同然となった。例え敵に襲撃されたとしても助けを呼ぶことも出来ない。恐らくこの事態はL・J・メジェストゥの意図したもので、狙いは―――――

「直ちにシュトーレン少佐とシラナミ少尉を司令室に招集。それから整備班にEMキャリアーを一基、2番のリニア・カタパルトに用意させたまえ。今夜中に打ち上げる」

『了解しました……それから市街地に向かったベングリン小隊は未確認EMとの交戦で全滅した模様です。市街地は壊滅状態。隊員の安否も不明で、大破したヘクトールUしか確認できません』

「……明日、残骸の回収と調査をさせよう。今はあれの打ち上げが最優先だ」

 基地の防衛戦に気を取られていたが、今のコーデルトは完全に廃墟と化していた。テロリストの仕業なのか、件の未確認EMのものかは分からないが、市街地の大半は完全に崩壊していた。ベングリンたちも恐らくその大破壊に巻き込まれてしまったのだろう。

 管制室のオペレーターに指示を出し、ゲリュゴンは改めてその姿を見やる。

 その圧倒的なまでの高性能で敵を屠った、二つの銀河の混血児を……

 

 

 

 

 

 崩壊したコーデルトで生き残ったのは市内の地下シェルターへ運よく避難出来た人間と、敵EMの攻撃範囲に入らなかった外周区の住民の一部を合わせて5000人程度であった。

 すでに時は夕暮れ、そんな大惨事の跡地を海に向かって歩く二つの影が見える。アイスクリーム屋台の店員(♂)とその上司と思しき女性は、あの地獄の中央公園から奇跡の生還を果たしていたのであった。

「地図の通りならもうすぐ湾岸道路に出るはずだぜ」

「道が残っていれば、の話だが」

 そして二人に歩いている場所は地図の上では街のメインストリートに当たるのだが、辺りを見回す限り瓦礫の渓谷となっていた。通り沿いのビルがすべて倒壊した結果である。

「しかしあの子も無事で良かったぜ。軍の連中に預けちまったけど」

「彼女は軍人のようだったからな。間違いではない」

 瓦礫の山を登りながら店員(♂)が零すと、女性は「仕方ないさ」と返した。

 テロリストのミサイルやら剣士型EMの一撃やらを何とか凌いだ二人が、先刻屋台に立ち寄った客の少女を見つけたのは幸いだった。意識のない少女に応急手当を施し、近くの基地から派遣されてきた救助部隊に引き渡したのがつい三十分ほど前である。クーデターがあれやこれや、と物騒な会話が車の中から聞こえてきたが二人は聞こえないふりをしておいた。

 しかし二人の目下の問題は、収入も貯蓄も失ってしまったことである。公園内に建てた自宅の掘っ立て小屋は見るも無残な姿に成り果て、中にしまってあった一切合財は灰となってしまった。

「問題は我々がこれからどうするべきか、だ」

「そうだなぁ。おでの熟女白書も全部燃えちまったしなぁ」

「貴様の破廉恥な書籍など知ったことではない! 路銀も何もない状態ではファンタズマゴリアに帰れんではないか!」

「いやまあ、そうなんだけどな」

 熟女白書の扱いの酷さにがっくりと肩を落とす店員(♂)。

 そんな遣り取りを繰り返すうちに二人は湾岸道路に辿り着いた。市内に比べれば道路も綺麗なものだが状況が状況だけに一般車は一切走っておらず、軍の車両の姿も見えなかった。沈む夕日を映す海原だけがただ広がっているばかりだ。

「んう?」

 店員(♂)の視界が黒い人影を捉えた。砂浜の茂みと防波堤の影で巧妙に姿を隠し、何やら機械を操作しているようだ。話し声も聞こえるので、これは暗号通信の類ではないだろうか。

 何故か軍事知識の豊富な店員(♂)は気配を殺して背後から人影に近づいていくと、聞き耳を立てて会話の内容を探ろうと試みた。

「―――――ああ、そうだ。実行部隊は全滅。ヘクトールUは三機とも潰されたよ」

 人影は全身黒のパイロットスーツを着た兵士のようだ。ヘルメットも真っ黒で中の顔は見えない。声色を聞く限り、性別は男。今回のテロリストの仲間だろうか。

「いや―――――市街を強襲したテロリストは―――――まだ分からん」

 会話の内容から察するにこの兵士はテロリストとは直接関係は無さそうだ。しかし正規軍の兵士がこんな人気のないところでコソコソと通信したりするだろうか。

 ふと、店員(♂)の脳裏に救助部隊の兵士の言葉が過ぎった。

『総司令指揮下の部隊がクーデターを起こし、政府機能を掌握したらしい』

 その時だった。店員(♂)は何か妙案でもひらめいたらしく、ただでさえ不気味な顔をいっそう歪ませて笑みを浮かべた。

 それも束の間、

「動くな」

 店員(♂)はそのごつごつした手で指鉄砲を作ると兵士の背中に押し当てた。

「!?」

「話は聞かせてもらった。お前、クーデター側の兵士だな?」

「…………」

「答えろ。尻、もとい腹に穴を開ける趣味もないだろう」

「…………そうだ」

 兵士の答えに店員(♂)は満足げに頷くと、茂みの外で待っていた女性を手招きして呼び寄せた。

 そして一言。

「というわけで、俺たちを雇いなさい」

「「何が『というわけで』だぁっ!」」

 女性と兵士、両サイドからの右ストレートというダブルつっこみを受けて店員(♂)の顔は一際激しく変形したと言うが、それはまた別の話である。

「お、落ち着けよアイリス! いいか? 従軍経験のある俺たちが外貨を稼ぐにはこれが一番なんだ! しかも戦果次第では出世も出来る! 悪い話じゃないだろ?」

「だから何だ。よりにもよって反乱側に加担して勝ち目があるのか」

「いや、その方が面白そうじゃん?」

 今度は女性の右アッパーだった。綺麗に弧を描いて宙に舞う男の巨体。

 対して兵士の方は怪訝顔で聞き返した。

「軍に居た経験があるのか……実戦も?」

「おう! もちろんだぜ! ボブァッ!」

 地面に落下しながら返答する店員(♂)。

 何やら兵士が黙考し始めたので女性は改めて店員(♂)に制裁のスタンピングを浴びせかけた。そのまま過ぎること五分……

「いいだろう。人手は多いに越したことはないさ」

 そう言って兵士は二人に握手を求めた。普通は上司に掛け合ったりしそうなものだが……

「おう、よろしく頼むぜ。俺は桜坂柳也で、あいつはアイリス」

 紹介された女性―――――アイリスが軽く会釈した。

 二人と握手を交わすと、兵士は被っていたヘルメットを脱いで素顔を晒した。潮風に束ねた蒼の長髪が揺れ、同じ色の双眸が柳也たちを見つめ返す。

 

 

 

「メジェストゥ将軍直轄軍・第三軍所属、アヴァン・ルースだ。君たちを歓迎する」

 


あとがき

 

カズヤ「主人公なのにカッコよく敵を倒させてくれないなんて、酷すぎます! うわぁぁぁぁぁん!」(ステージから走り去る)

 

柳也「いや、主人公なのに台詞どころか一行も名前がない方が酷いって」

 

タハ乱暴「あぁ、うん、ごめんな。その節は。具体的には、ゼロ魔刃のEPISODE48あたり」

 

ゆきっぷう「というわけで第二次銀河天使大戦第一章二節をお読み頂きありがとうございました! 今回はあとがきに代わりまして、前回未収録だった政策発表記者会見&トークショーをご覧下さい!」

 

 

それは、七月某日、暑い深夜のことだった……

 

 

 

北斗「みんなー! 酒は好きかー!」

 

アヴァン「みんな! メロンは好きかー!」

 

柳也「諸君! 熟女のおっぱいに顔をうずめて死にたいか!?」

 

スタッフの皆さん「「「「「好きだー!!」」」」」 「柳也死ねー」

 

柳也「ちょっ、誰だいま死ねとか言った奴は!?」

 

アイリス「柳也死ねー」

 

柳也「お前かアイリス! こ、この記念すべき発表記者会見の場でなんという暴言を……」

 

アンス「というわけで、発表記者会見を始めたいと思います。司会は私、前作ヒロインのアンス・ルースがお送りします。では製作の中心スタッフを紹介しましょう。総合監督・ゆきっぷう、監督補佐および作品改め方・タハ乱暴、出演のカズヤ・シラナミ、アヴァン・ルース、闇舞北斗、桜坂柳也の五名です。これ以外の方はステージからご退場下さい」

 

ガヤの皆さん退場中(「な! こ、このあとがきでも私は冷遇される運命なのか!?」、「ちょ、ちょっと! メインヒロインが追い出されるってどういうことですか!?」、「こらシロガネ、退場の指示がかかったんだから、さっさと行くよ」、「ちょっと待ってくれって。いまタンドリーチキン食ってるところだから」)

 

アンス「ではまず作品改め方のタハ乱暴氏より開会のご挨拶をお願いします」

 

ゆきっぷう「え? 俺じゃないの!?」

 

アンス「センスがありませんので」

 

ゆきっぷう「あべし!?」

 

タハ乱暴「ちなみにいまいちばん驚いているのは他ならぬ俺自身だからな……。さて、ご紹介に上がりました作品改め方のタハ乱暴です。今日は皆さん忙しい中お集まりいただきたいへんありがとうございます。本日、皆さんに集まっていただいたのは他でもありません。ついに……、そう、ついに! あのゆきっぷうの新作企画がスタートしました! その名も……」

 

 

第二次銀河天使大戦

Love Destroy

 

タハ乱暴「……です!」

 

出演者一同「おおー! やんややんや」(白々しい合いの手)

 

タハ乱暴「本日はこの新作『第二次銀河天使大戦』の政策発表記者会見です。なお、誤字ではないです。ゆきっぷう曰く」

 

アンス「えー、『政策』は『勢作』ですので訂正します。では作品の概要についてアヴァン。お願いします」

 

ゆきっぷう「いや、今度こそ俺だろ!?」

 

アンス「このところ貴方はケータイを売るのに手一杯であまり作品に触れていないでしょう。彼の方が適任です」

 

ゆきっぷう「ぎゃふん!」

 

アヴァン「哀れだな……さて、作品の舞台設定は前作から四年後。惑星アビスフィアにて発見された巨大時空転移門『クロノゲート』によってNEUEと呼ばれる宇宙とつながった世界。トランスバール皇国は完全民主連邦『EDEN』に統合され、新たな宇宙文明との交流をスタートさせた。様々な陰謀を孕みながら……」

 

出演者一同「ごくり……」

 

アヴァン「NEUEでは国交が開かれるまで惑星国家間の戦争が行われており、EDENはその復興支援を軸に各国家に接触していく。その中で惑星国家の一つ、セルダール出身の主人公であるカズヤ・シラナミはある理由から軍の秘密パイロットに選出され、EDENNEUEの共同開発した新兵器に搭乗することになる。今作は彼の成長と戦いの日々をベースに、これまで展開されてきたゆきっぷう・タハ乱暴サーガの集大成として展開していきます」

 

タハ乱暴「タハ乱暴サーガが普通に含まれている!?」

 

北斗「まあ、俺達も出ているしな」

 

アンス「ゆきっぷう・タハ乱暴サーガと言うと、前作『第一次銀河天使大戦』や、『MUV-LUV Refulgence』になります。タハ乱暴作品で言うと『Heroes of Heart』や、『永遠のアセリアAnother』シリーズですね?」

 

タハ乱暴「『Heroes of Heart』のことは忘れてください!」(迫真)

 

アンス「いえ、そういうわけにもいかないでしょう。……続いて出演者の皆様に質問したいのですが、今作における役どころなどを、話せる範囲で答えていただけますか? では、まず……闇舞北斗から」

 

北斗「どうも、前作ではガンダムで言うところのスレッガー・ポジションだった、闇舞北斗です。このたびはゆきっぷうの厚意(野望)で、今作にも出演が決定しました。今作での俺は、まだ明かせない設定の方が多いのですが、色々と暗躍させてもらっています。前作よりも、だいぶ腹黒くなる予定です。……あと、もしこれをお読みの方の中に、前作の読者がいらっしゃれば、声を大にして申し上げたい! 俺は、ランファとは何もありません! ない! ない、はずだ! ない……と思う。ない。うん。ない、はずなんだ。だからバネッサ! 幕の外から狙撃銃をこちらに向けるのはやめるんだ!」

 

ランファ「きゃー! 北斗さーん! 秘密工作の陰謀に私を巻き込まないためにそんな嘘を……惚れ直しちゃいますぅ!」

 

ぱきゅーん ぱきゅーん

 

アンス「(銃声は無視して)続いて、アヴァン。お願いします」

 

アヴァン「前作ではガンダム0083で言うところのガトー・ポジションだったアヴァン・ルースです。今作では今のところクーデター軍の所属という所だけは明かされているけど、前作よりかは人道的になるはずです。きっと、うん、きっとそうなるはずなんだ。そう、信じてる……もうヒロイン惨殺とかやりたくないよ」(膝を抱えてガクガク震える)

 

アンス「あまりヒロイン惨殺なんてしていると、読者の人気をますます下げますよ? まあ、私はちゃんと信じてますけど……」

 

柳也「かー! ペッ。ノロケかよ」

 

アヴァン「ストナーサーンシャーイーン」

 

柳也「あるまぽげろー」

 

アンス「お、お見苦しいところを失礼しました。では今作の主人公。今作の主人公のカズヤ・シラナミ君、お願いします」

 

カズヤ「どうも、主人公です。監督さんたちからは『原作がダメ過ぎる』『使い物にならんぞ』『完成度80%どころの騒ぎじゃない』って言われてますけど精一杯頑張りますのでよろしくお願いします! きっと最後には『ジオンの理想が形になったようだ!』とか『このガンダムなら敵を叩ける!』とか言われるようになりたいです!」

 

アンジー「マスターならきっと大丈夫ですよ! このパイロット総合サポートシステムの私が保証します!」

 

アンス「そうですね。読者の皆さんに、『カズヤが主人公でよかったよ』と、思わせられるよう頑張ってください。……では最後に、そこの消し炭、ほら、出番よ」

 

柳也こと消し炭「お、おうよ。ゆきっぷうサーガ作品には、今回正式には初参加の桜坂柳也です。『永遠のアセリアAnother』で主人公やってます。今作には人材補強のため、ゆきっぷうがタハ乱暴に懇願しての参加だそうです。相方のアイリスともども、可愛がっていただけたら嬉しいですサンキューベイベーあかちゃぁぁぁぁんんッ!!」

 

北斗「うるさい」(ハカイダーショット連射)

 

アヴァン「黙れ」(ゲッタービーム連射)

 

柳也「OUT! キリマンジャロの憂鬱!!」

 

カズヤ「……な、なんですかいまの悲鳴は!?」

 

タハ乱暴「ああ、あれ? うん。ウチの柳也の悲鳴は、あれがデフォだから」

 

カズヤ(なんて濃い人たちなんだ。……上手くやっていけるかな?)

 

アンス「ではこれにて発表記者会見&トークショーを終了いたします。この後は少し質疑応答の時間としますので、質問のある方は挙手してください」

 

ゆきっぷう「ハイ! なんで僕の出番がないんですか!?」

 

アンス「他に質問のある方、いらっしゃいますかー?」

 

柳也「おいおい無視かよ。アレ、数あるいじめの手段の中でもいちばんダメージあるんだが……」

 

ゆきっぷう「…………死のう」

 

カズヤ「ちょ、まっ、作者さん! み、みなさん大変ですよ! 作者さんが一二階の窓から飛び降りようとしてます! は、速く止めないと――――――」

 

柳也「あー、ジュース美味ぇー」

 

北斗「あー、酒が美味ぇー」

 

アヴァン「ああ、放っておいていいよ。どうせ窓には鉄格子ついてるし」

 

カズヤ「ホントだ。じゃあ大丈夫ですね」

 

タハ乱暴(減点一。そこはこういう事態を想定して鉄格子を張っていたことに突っ込むべき。まだまだ主人公への道は遠いなぁ)

 

アンス「質問のある方、いらっしゃいますかー」

 

純夏「はい! 今作はゆきっぷうサーガ作品の集大成ってことですけど、わたしやタケルちゃんの出番もあるんですか?」

 

ゆきっぷう「あるよー。サブエピソードが大半だとは思うけど」

 

ミルフィーユ「はい! たぶん、読者の皆さんも気になっていると思うんですけど、わたしたちムーンエンジェル隊の出番はあるんですか?」

 

ミント「そうですわね。前作『第一次銀河天使大戦』は、原作の『ギャラクシーエンジェル』とはだいぶ異なった結末でしたし……」

 

ミルフィーユ「もしかしたら出番ゼロとか……」

 

ゆきっぷう「出番はあるよ。でもエンジェル隊としての出番じゃなくて、それぞれ個人としての活躍になったりすると思うけど」

 

レスター「質問だ。出演者一覧の中に前作主人公の名前がなかったが……」

 

北斗「そういえば、彼だけでなくあの娘もいないな。それに、彼女も……」

 

アヴァン「ち、違う! 俺じゃない! 俺は何もしていない!」

 

ゆきっぷう「出番はあるよ。それも、一番想像し難い形でね。クックック……」

 

柳也「様々な謎を孕みながら進む物語……定番中の定番。まさにドリームな展開だぜー」

 

タハ乱暴「煽ってる、煽ってる」

 

アンス「原作ファンにとってはナイトメアもいいところでしょうけど」

 

タハ乱暴「ナイトメア団のことは忘れてください!」(迫真)

 

アイリス「質問がある。『銀河天使大戦』はスペースオペラものらしいが、同時にロボットものでもあるそうだな? わたしはその、機械はあまり得意ではないのだが……」

 

アンス「機械音痴の女の子ハァハァ」

 

アウトロー「(アンスの反応は無視して)読者としても気になるところですよね、メカニック部分は。前作では、ガンダムでいうところのMSEMという名前で登場しましたけど、今作でもEMは出るんですか?」

 

ゆきっぷう「出るよ。EMに関しては量産体制が整ったことでEDEN側では全軍に配備される格好になっている。NEUE側でも加速的に普及が進んでいるね。まあ、それが今作の戦争のネックになるんだけど。あとバリエーションは色々作りたいけど何処まで登場させるかは状況次第かな」

 

フォルテ「MSといえば、前作ではザクとか、グフとかのMSが、発掘兵器として登場してたけど、今回も出るのかい?」

 

タハ乱暴「つまり読者サービスはするのか? と」

 

ゆきっぷう「サンラ○ズが騒がなかったらね。最近は特に五月蝿いらしいし。ゾックを筆頭にジュアッグやゾゴックも出したいなぁ。あと出来ればガンダム作品のキャラクターも」

 

柳也「なんか、ジャブローを攻略しそうな面子だなぁ……。しっかし、全部水陸両用機だな。もしかして今作のメインの舞台は宇宙じゃなくて……」

 

ゆきっぷう「地上戦の割合は前に比べて増やしたいとは考えている。ドワッジとかとギャラクシーMk‐Uが撃ち合うとかロマン溢れるぜ。しかも砂漠の砂に足をとられてMk‐U劣勢な感じで」

 

アンス「なるほど。色々なシチュエーションを書きたい、と。……そろそろお時間ですね。では、最後に何か質問あれば……」

 

GAUヒロイン‘s「「「「「ハイ! 結局誰がメインヒロイン(いちばん出番の多いキャラ)になるんですか!!?」」」」」

 

ゆきっぷう「出番の回数で言えば全体で其処まで大差はないと思うよ。ただシナリオによって濃い・薄いは出るかもしれない」

 

タハ乱暴「きみたち気をつけろよ。ゆきっぷうは、たとえ相手が原作のメインヒロインだろうと容赦なく惨殺し、出番を奪い、挙句サブキャラだけをひたすら持ち上げるような話を唐突に書く鬼畜だ。うかうかしていると、マジで出番なくなるからね」

 

カズヤ(え!? そうなの?)

 

ゆきっぷう「じゃあアイリス惨殺で」

 

柳也「…………おい。ちょっとお前、屋上来い」

 

ゆきっぷう「な、何をする柳也!? う、は、放せ。この手を放せ!」

 

柳也「さあ♪ 楽しい楽しいパーティの始まりだ。行こうぜ、俺たちのEDEN(屋上)へ」

 

ゆきっぷう「それで上手い事を言ったつもりなら大きな間違いだぞ! 第一、お前こそヒロイン(サブキャラ)惨殺の常習犯だろうギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア嗚呼嗚呼アアアアアアアアアアアアアアアアアアアア嗚呼アアアアアアアアアアアアアアアアああああああああああああああああああああアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアああああああああああああああああああああああああアアアアアアアアアアアアアアアアアああああああああああああああああああああああああああ亜あアアアアアアアアアアアアアアアアアああああああああああああああああああああああああああアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアああああああああああああああああアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア」

 

タハ乱暴「あえて文字変換をおざなりにすることで凄絶な苦痛を味わっていることを表現している! なんて高等テクニックなんだ!?」

 

アヴァン「俺も出来ればアイリス君を手に掛ける真似はしたくないものだ。髪の色、同じだし」

 

アンス「……さて、そろそろお開きの時間ですね。さて最後に、ゆきっぷうには今作にかける意気込みを語ってもらいたかったのですが……」

 

ゆきっぷう「ぜえぜえ、最後に一つだけ宣言しよう……今回はメインキャラはよほどのことがない限りは殺しません! メインヒロインと主人公は生存します!」

 

タハ乱暴「……多分」

 

アルフィ「悪・即・斬」(タハ乱暴を日本刀で袈裟斬りに)

 

タハ乱暴「うぎゃぱあああ嗚呼嗚呼ああああああアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア亜ああああああああああアアアアアアアアアアアアアアアアアああああああああああああああああアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアああああああああああああアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアああああああああああああああああアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアああああアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアあああああああああああああああああああああああああああああああああああッッッ!!!」

 

カズヤ(で、出番がなくなる?! え? メインヒロインでさえ!? っていうことは、主人公も! ……が、頑張れ僕。超頑張れ!)

 

 

アヴァン・北斗・アンス・バネッサ「「「「第一回! なぜなにギンテン〜♪」」」」

 

北斗「…………って、勢いでやったはいいが、何なんだ、これは?」

 

バネッサ「え? 第二次銀河天使大戦のいろんなメカニックの解説をしちゃうコーナーですよ。毎回やるらしいです。あと私もここの出番貰いました。レギュラーで」

 

北斗「そ、そうなのか……なんて読者を置いてきぼりの面子なんだ」

 

アヴァン「タハ乱暴が新約『Heroes of Heart』を完成させれば認知度も上がるさ。何より解説できる面子がこの四人しか居ない」

 

アンス「では今回の解説を始めますよ。皆さん準備はいいですか?」

 

三人「「「おー」」」

 

アンス「今回紹介するのはカズヤ君待望の主役機、ギャラクシーMk‐Uです。以下解説テキスト」

 

 

NEUEを構成する国家の一つであるセルダールにて、セルダール軍とEDENの研究チーム合同で開発された新型EMEDENからの技術提供を受け入れたセルダール王が発動した軍備推進計画『N Plan』において、EMX-01G(ギャラクシー)とEMS-02(ヘクトール)をベースに設計・開発された。

指揮官専用機ではなく、純粋に兵器としての性能を追求しており、Galaxyの致命的欠陥だったフレーム強度や稼働時間、機動力、地形適応性の改善によってGAU開始時では全軍中でも最強クラスのカタログスペックを誇っている。

最大の特徴は紋章機との合体ジョイント『ブレイブ・ユニット』である。『ブレイブ・ユニット』は紋章機『ブレイブハート』のコアユニット及び接続機構を統合・小型化したもので、損傷が酷く使用不可能とされ廃棄された『ブレイブハート』から必要なパーツ類を回収、製作された。搭乗者の精神波を感知・増幅し、機体の駆動系と共振させることで反応性を劇的に向上させる他、合体した紋章機の時空震動効率を増加させることで性能を強化できる。

さらに両腕と両足のフレームは擬似的な重力制御までも可能とする運動力制御機構を内蔵した『グラビティ・スタピライズド・フレーム』となっており、単体でも極めて紋章機に近い特性を持つ。

武装は主にレーザーライフルとシールド内側にマウントされたビームセイバー。他に66o対物高速貫通弾を使用するアサルトライフルや、対艦装甲無反動砲も携行可能。

動力源は最新式のクロノ・ストリングス・エンジン『Hi-クロノ・ツインエンジン』。お約束の高出力かつ不安定という事情から、改良型HALOとの併用が前提となっている。

なおパイロットへの負担を考慮し、HSTLは搭載されていない。専属パイロットはカズヤ・シラナミ。

 

 

バネッサ「……製作用設定資料をそのままコピペしただけじゃないですか!」

 

アヴァン「手抜き解説は止めなさい」

 

アンス「てへぺろ」

 

北斗「ちゃんと読者用に解説しようや」

 

アヴァン「概要としてはセルダールとEDENの合同開発計画によって誕生したハイスペックモデルのEMだ。旧型機のギャラクシーが実験機だったのに比べて純粋に兵器としての性能を追求している。基本スペックもそうだが、稼働時間、地形適応ともに劇的に改善されている」

 

北斗「高性能を誇る本機だが、最も特徴的なのは紋章機との合体機構を備えていることだ。原作で主人公機として活躍した紋章機『ブレイブハート』はこの世界でも発掘されていた。だが残念なことに状態が酷く、原作のようにそのままレストアすることは不可能だった。とはいえ、一部のパーツとデータの回収には成功したため、上層部はこの機体に搭載されている、他の紋章機との合体機構に注目した」

 

バネッサ「具体的にはコアユニットと接続機構に関連する部品ですね。Mk‐Uにはこのコアユニットと接続機構を統合・小型化した合体ジョイント『ブレイブ・ユニット』が搭載されています。これにより、パイロットの精神波を感知・増幅し、合体した紋章機の性能を強化できるみたいです。あとMk‐Uの基本性能も上がるらしいですよ、北斗」

 

北斗「本機のもう一つの特色は、機体の構造部分に、『グラビティ・スタピライズド・フレーム』という技術を使っていることだ。『銀河天使大戦』シリーズに登場するEMは基本的にフレーム構造で、人間でいう骨格にフィールドモーターやら推進器やらをかぶせて造られている。Mk‐Uでは、このフレーム部分の両腕と両足に、特殊な運動力制御機構が内蔵されている。これは小型ながら擬似的な重力制御までも可能とする優れた代物で、機動制御のみならず攻撃や防御にも応用することが可能だ。この技術により、機動性に関してのみ言えば、Mk‐Uは紋章機に近い特性を持つに至った」

 

アンス「さて、機体の概要説明の後は、普通の兵器解説なら開発経緯の説明にいくところですが……」

 

アヴァン「ネタバレになるんで武器解説へ。え? バラして欲しい? だめだめ。バラすとゆきっぷうおじさんが死んじゃうからね」

 

北斗「バラすが二重の意味を持っているわけだな。……Mk‐Uの兵装は、基本的にはヘクトールシリーズの物と同じだ。これは武器の共有化による生産性・整備性・コストダウンを狙ってのことだ。前作から四年が経ち、EM用兵装は様々な物が造られた。勿論、任務内容や戦術、バトル・ドクトリンなどによって装備する兵装は異なる」

 

バネッサ「最もスタンダードなスタイルは、レーザーライフル一挺とシールド、シールド内側にマウントされたビームセイバー二本です。このビームセイバーはレーザーライフルの予備用マガジン(バッテリー)にも換装できます。他には、66mm口径のアサルトライフルや、対艦・対拠点用のバズーカ砲などがあります。これら実弾兵装には、対物高速貫通弾や榴弾など、弾種にもいくつかのバリュエーションがあります。ところでスナイパーライフルは無いんですか?」

 

アヴァン「要望書は各企業に出しておこう」

 

アンス「あ、あとエンジンは最新式のクロノ・ストリングス・エンジン『Hi-クロノ・ツインエンジン』になってます。お約束の高出力で不安定な仕様なので改良型H.A.L.O.との併用が必須なのですね」

 

アヴァン「ただし、旧型機のギャラクシーに搭載され、方々でさんざん問題を起こしたHSTLは付いていない。むしろ外させた、全力で。なあ、アンス?」

 

アンス「そ、そうですね。あれで私たちも一時、破局しかけましたからね」

 

バネッサ「うぇっ!? そんな曰くつきの代物なんて……」

 

アヴァン「じゃあアンス。閉めの挨拶を」

 

アンス「はい。それでは皆さん、また次回も楽しく正しく兵器開発しましょう! さようなら〜!」

 

バネッサ「……なんか色々と突っ込みたくなる内容の挨拶ですね?」

 

北斗「存在自体が兵器そのものの俺たちはどうすればいいんだろうな?」

 

アンス「もう一回、改造しません?」

 

アヴァン「す・る・な!」

 

北斗「ゴメン被る! 前作でアウトローと再会したときはそれはびっくらこいたわ! 犬耳美少年とかはどうでもいい。なぜ、アウトローに栓抜きが必要だったんだ!?」

 

アンス「え? 御主人もといフォルテさんの要望です。ビンビール開けるときに要るとかなんとか」

 

アウトロー「フォルテさんの役に立つことこそボクの喜びなんです!」




あ、やっぱりあの店員は柳也だったんだ。
美姫 「途中から何となくそんな感じはしてたけれどね」
まあ、途中と言っても名乗る寸前だがな。
美姫 「アヴァンも最後に出てきたし」
前作の人物たちがどういう形で出てくるのか、ちょっと楽しみです。
美姫 「にしても、アプリコットは初っ端からピンチだったわね」
だよな。結構、危ない所だった。でも、ピンチと言えばカズヤもそうだったような。
美姫 「いや、マニュアル読んだ事がないってね」
いや、思わず二話目にして退場とまではいかなくても重体ぐらいにはなるのかと思ってしまった。
美姫 「無事に生還できて良かったわね」
うんうん。次回も楽しみだし。
美姫 「次回も待ってますね」
ではでは。



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