注意:今回の作品には、卑猥な言葉や性的表現が若干含
まれております。
そのため、15禁とさせていただきます。
性的表現などが苦手な方や嫌悪感を感じる方は申
し訳ありませんが戻っていただくか、ご留意の上
ご覧ください。
職業・護り屋
――ああ、何て僕は卑しいんだ。
耳元で鳴り響く剣戟。
頬を掠める飛針。
己を捕縛しようと縦横無尽に走る鋼糸。
その全てに身体の奥底から湧き上がる快感を感じながら、イカれた銀髪の蜘蛛はまるで重力など無視するかの如く宙を舞った。
逆立った銀髪は夜の闇に浮かび上がり、左目によって上下に二分されている蜘蛛の刺青は、まるで血を求める生きた捕食者のようだ。
銀髪の蜘蛛は、もう何度目かになる剣戟を身を捻って回避すると、距離を取るべく大きく飛び退いた。
元々蜘蛛は接近戦よりミドルレンジを得意とした戦闘スタイルを持つ。それは使う武器『蜘蛛の糸』と呼ばれる伸縮自在の、まるで糸のようにしなやかな剣からきている。
伸びた蜘蛛の糸で敵対者を円状に囲み、三百六十度全方位から圧迫して切断……つまりは輪切りにしてしまう。
それが蜘蛛には心地良かった。
肉の繊維が一本一本切断されていく感触。
少し太めの血管から、血液が垂れ漏れていく音。
消えていく獲物の悲鳴。
まさに殺気と戦闘に見事な彩りを与える負のオーケストラは、勃起した陰部を更に拡張させるのだ。
だが、今蜘蛛が相手にしている青年は違った。
久しぶりに合間見えた好敵手と言える獲物で、本来のターゲットとは違うが、そんな弱い獲物を狙うよりも心地良い殺戮を楽しめる相手だった。
口元が怪しく歪み続ける。
陰部の拡張が最大限に達しようとしている。
このまま青年を殺す事ができれば、間違いなくその瞬間に膣の中ではなく、卑しいズボンの中に射精してしまうのは明白だった。
その瞬間を脳裏に思い浮かべて、思わずうっとりとしかけたが、すぐに最愛の獲物に意識を呼び戻した。
「ん〜☆ ひさびさだね。うん。ちょっと今のは本気だったのに防がれて無傷なんて、少しショックかな」
言葉とは裏腹に、混じっている恍惚の感情を受けて、肩で大きく息をついた高町恭也は両手に持った小太刀を強く握り締めた。
先にリスティに忠告されたのは二日前。
龍壊滅後、フィアッセに逆恨みをしている連中がいると言う連絡だった。
だが、海外ではエリス達が、日本ではそれに高町兄妹が護衛につくフィアッセ=クリステラは、鉄壁とも言うべき護衛陣を敷いていた。
しかし、そんな護衛陣も、とある二人組の前にあっさりと瓦解した。
それが――。
「職業・殺し屋。か……」
蜘蛛から意識を逸らさず、それでも顎に伝った汗を手の甲で拭い取ると、ぐっと腰を落とした。
すでに数分の立会いの中で理解したが、HGSでもないのにとてつもない動きをする蜘蛛は、恭也を持ってしてもまとも捕らえきれていなかった。更にそこへ蜘蛛の糸による縦横無尽に空気を裂いて行く必殺の一撃が飛び交うのだ。
気を抜いた瞬間に、そのまま死地へと旅立ってしまうくらい激しい立会いは、これまでも何度かあった。だが、その全てから快楽を感じさせる相手とは今まで戦った事がない。
正直に言って相手の思考を補足できないのは、かなり精神的なプレッシャーを与えていた。
それでも、負けられない理由があるのだと心を奮い立たせると、鞭のように振るわれた蜘蛛の糸を回避しながら、銀髪の蜘蛛へと突進した。
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はっきり言ってしまおう。
高町美由希は怯えていた。
目の前にいる長い髪を大きなリボンでポニーテールにした、少し童顔で全身を黒一色のフラワースカートタイプのワンピースで揃えた彼女に。
眼鏡をすらりと細い指で押し上げた彼女は、身に付けた手袋についた折畳式の鎌を一度振るうと、そのまま血走った眼で美由希を射抜いた。
途端に背筋に悪寒が走る。
しかし、ここで恐怖に負けてしまえば、間違いなく自分はあの鎌に微塵切りとされるだろう。
そんな感情に負けぬよう、歯を食いしばった時、彼女はその小さな口を耳元まで引き伸ばした。
――なんてすごい笑顔だろう。
幼い頃、都市伝説として聞いた口裂け女を彷彿とさせるくらい、三日月に歪んだ微笑は、美由希にとって寒々しくも妖艶なる美しい彫刻を見ている錯覚に襲われた。
「――なぁ」
唐突に。
本当に唐突に、彼女は美由希に声をかけた。
「な、なんですか?」
自分の肺から流れ出た空気が喉を通り、声となって声帯を振るわせる。だが、口をついた己の乾ききった声に、驚いた。
「あっちでよ、蜘蛛とヤってるのって、てめぇの何だ?」
質問の意味がわからない。
たった今まで互いの命のやり取りをしていたのに、された質問は美由希の事ではなく少し離れた場所で、銀髪の蜘蛛と闘っている恭也の事だ。
今度は言葉にせず、警戒しながら小首を傾げた。
すると、その仕草が気に入らなかったのか、彼女は「けっ」と小さく吐き捨てるように唇を鳴らすと、整えたばかりの眼鏡の縁を指でなぞった。
「嫌な仕草しやがって。どっかのデコっぱちと同じだ。何となくそうかと思ってたけど、テラむかつくぜ」
どうやら本当に気に入らなかったようだ。
口の中に溜まった唾液を無造作に地面に吐くと、ゆっくりと鎌のついた手を身体の前で交差させた。
「ま、そんなむかつく、穴すらまだ開いてねぇ糞ジャリでも、強ぇ。あたしをイかせるくらい、いけるかもなぁ」
交差した鎌が持ち上がる。
その途中で見せたのは、快楽を貪る恍惚とした雌の顔。
整った唇を艶かしくねっとりと濡れた唾液で潤いを与えると、スカートの中で自重移動を見せなかったバネが跳ねた。
「!」
あまりの速さに、美由希には一瞬だけ姿が消えたように見えた。
だが彼女の黒いスカートが、目の端に映るや、条件反射的に小太刀が下腹部付近に落ちる。
瞬間、持っていた左手に鈍い金属音と重い衝撃が走った。それを僅かに傾げた刃の上を滑らせると、右の小太刀で一番短い距離を突く。
しかし相手もその程度の単発の攻撃は予測済みなのか、半歩左足を下げて上半身のバネを使い、身体を流しつつ刺突を回避すると同時に、美由希の後方へと飛び込んだ。
と、同時に宙に浮く足の踵同士をぶつけた。
硬い皮がぶつかる軽い打撃音。
普通ならばそれで終わる音だが、打撃音に混ざって聞こえた、小太刀を鞘から抜く時に聞く音に似た金属音に、刺突の姿勢だった美由希も即座に流れていた左小太刀を自分の首筋に向けて手首を返した。
そこに金属音の正体が衝突した。
先程の鎌以上の衝撃に、溜まらず前に転がりながら威力を受け流すと、すぐに身体を起こした。
「ちっ!」
彼女の舌打ちが聞こえた。
それもその筈だろう。
小型ハンドガンのデリンジャーに良く使われた、飛び出し式仕掛けに大振りで肉厚のナイフが取り付けられ、それが背後から美由希を襲っていたのだ。
だがそれ以上に驚嘆するのは、逆立ちに近い状態で必殺の一撃を放てるその胆力と瞬発力だ。
彼女は、美由希にナイフが受けられたと見るや、舌打ちしながら腕力のみで水平に飛び込む。
それにあわせて、美由希もまた飛び出した。
左の鎌を右小太刀で受け止め、流す。
流れた先で、左小太刀が振り上げられるのを、右の鎌が同じように流し受けた。
足元にナイフが奔る。
それを手首に備え付けていた飛針数本を地面に打ち込み、数秒のタイムラグを生み出している間に、また右小太刀が大気を凪ぐ――。
それは、まるでダンスを踊っているようだった。
上下左右。
平面状の動きから突っ込み、回避と三次元の動きをプラスした動きに、二人は全くの無駄もなく、それでいて微塵も死合いと思わせない優雅さをもって互いの武器をぶつけ合う。
「っだらあああぁぁぁぁぁぁ!」
「はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
周囲に響き渡る咆哮が、交わり、溶け合い、そして空気中に掻き消える。
それでも剣戟は止まらない。
――イイ!
心が快楽に震える。
乳房の先端が男性の陰部の如く立ち上がり、股間部は下着を染みを描き始める。
――コイツは女だ。それも凄腕の。蜘蛛の相手もイイが、こいつも極上だ。
脳内麻薬のアドレナリンは、壊れた蛇口の如く分泌し続けているのを脳髄で直に感じながら、心の中身が垂れ流される。
「ッハハ! 切り取った男のツラ見ながら、SEXするのがいいけどよ! おまえみたいな強い奴をたっぷり切り刻んだ後で、牝とやるものいいかもな!」
「な! 何て事を……! 私は恭ちゃん以外は嫌だから!」
「ンダト? お前、近親相姦かよ! この○○○ン!」
「煩い! 変質者!」
次第に剣戟の間に流れ出す会話には、怒りと欲望しか含まれない。
それでも二人は止まらない。
すでに自分で止あるためのブレーキは、互いに放棄している。
「美由希! 闇に飲まれるな!」
だから、妹の気配の変化に気付いた恭也は、銀髪の蜘蛛との鍔迫り合いを腕力と脚力で吹き飛ばすと、その勢いに乗って頭上から鎌の彼女へ刃を向けた。
「!」
しかし、彼女もまた職業・殺し屋。だ。
美由希との戦闘に心奪われても、己に被った影に即座に反応するや、バック転で高速回避すると、そのまま二十メートルは離れたところで膝をつきながら止まった。
「おや、蟷螂、まだあっちを殺してなかったんだ?」
「けっ! テメーだって一番美味しいの譲ってやったのに、まだバラしてねーじゃねーか」
ふわりと足音なく彼女――蟷螂の隣に降り立った銀髪の蜘蛛は、それもそうだね。と頷きながら、対峙する小太刀ニ刀流を使う兄妹を見た。
銀髪の蜘蛛ほど凶悪ではないにしても、鎌で相手を切断し、それが男であったなら、そのまま血の海の中で死姦する事でエクスタシーを得る事を生き甲斐の一つにしている蟷螂は、かなりの凄腕だ。
どうしたら自分が気持ちいいのか?
どうしたら暖かな鮮血を纏えるのか?
どうしたら最高のSEXを味わえるのか?
それを追求するために、殺害方法を日々向上させていくのが彼女だ。
勉強家で、職業・殺し屋。の辞典のようにルールを守る蟷螂が、あれだけの時間をかけて、なお殺せない美由希に、白目を向けながら銀髪の蜘蛛は邪悪に微笑んだ。
――ああ、何て彼女は美しいのか。
是非ともヤり殺したくなるじゃないか。
同じ事を考えていた螳螂も、恭也を見つめて股間部を熱く濡らした。
「恭ちゃん」
「ああ、こいつらは危険だ。これ以上時間をかけると、こちらが不利になる」
不利になる。
ひしひしと肌に感じる殺し屋の重圧が、その言葉に隠れた真実を告げる。
即ち、倒さねば殺されるのだと。
「おや? あちらさん殺る気だね♪」
美由希に危うく絶頂寸前まで持ち上げられていた銀髪の蜘蛛は、ふと兄妹から漂う雰囲気が変わった事に気付いた。
「ああ。次はトンデもねぇのが来やがるな」
口では硬くなりながらも、螳螂は嬉しげに舌なめずりした。
「そうだね。ならこちらもしっかりきっかり答えないとね。でないと――」
『楽しい楽しい殺し合い(お仕事)が興ざめするから』
殺し屋二人も、それまで持ち合わせていた快楽な気配が消え、それだけで一般人は殺せてしまいそうな強大な殺気を放つ。
「くっ……」
「負けるな。強い者と闘える喜びは俺にもわかる。だが、それだけを求めてはいけない。先までのおまえのように、な」
恭也に言われ、先程までの蟷螂との打ち合いを思い出す。
それまで何度か戦闘狂と闘ってきたが、それが直接性欲を満足させるだけに殺戮を求めていく姿に、どこか羨望があったのではないか――?
「気持ちはわかる。だが、剣術と暗殺術を手にする人間は、己を強く抑制し、手にしているものの重さを理解しなければならない。『命』を扱う者として」
思い出すと身が震える。
蟷螂のように性欲を求めている訳ではないが、それでも強者と打ち合う喜びは、何者にも邪魔されはしない。
だが……と思う。
恭也の言うとおり、力あるものが己の欲望のまま力を振るってしまえば、導き出される結果は悲劇以外の選択肢はなくなってしまう。
そして、飲み込まれた者を止めるのもまた、力ある者だけなのだ。
背後で気の質が変化したのを感じ、恭也は満足げに微笑んだ。
「美由希」
「何?」
「あの二人は強い。だから、倒すとなると方法は限られる」
恐らく、神速を使っても本能で動く職業・殺し屋。は、回避を成功させてしまうだろう。
最大の攻撃速度を誇る射抜でも、捕らえられる自信はない。
「だから――今やるぞ」
それは、初めて恭也から受けた信頼の言葉だった。
いや、これまでも信頼の言葉は受けている。ただ、実力を見た上でかけられていた言葉だ。
相手と闘う信頼ではなく、技を求める信頼の。
「うん!」
だから頷いた。
初めて兄である恭也の隣に立つ事ができたと感じられたから。
兄妹は、互いに小太刀を鞘に納めた。
銀髪の蜘蛛と蟷螂は、そのまま前傾姿勢に移行していく二人に、居合いと読んだ。
居合いならば、突進は少ない。また突進をしかけるなら、連檄になるだろう。
「でも――」
「こんな美味しい殺気、待ってるなんてもったいない♪」
二人は殺人愛好家である。
その中でSEXでも肉と血の感触でもなく一番欲しているのは、鳥肌が立つ程に研ぎ澄まされた殺気を心置きなく堪能する事こそ、最大の快楽である。
それならば、兄妹を待つ道理など微塵もない。
銀髪の蜘蛛と蟷螂は、同時に駆け出した。
重心が低く、正に蜘蛛と蟷螂と思える鋭い動きで、恭也と美由希を射程圏内に入れた。
その瞬間、兄妹の姿がまるで蜃気楼が消えるように掻き消えた。
「!」
これまでのように隙をついたというのではない。
完全に二人の姿が視界から消え失せた。
思わず蹈鞴を踏む銀髪の蜘蛛と蟷螂だったが、それが勝敗の分け目となった。
それはまるで瞬間移動したかのようだった。
視界から消えた二人を再び認識したのは、銀髪の蜘蛛と蟷螂の合間に、風切り音と闘志を感じたためだ。
止まっていた意識がフルスロットルで回転し始め、視覚と聴覚が獲物を捕らえる前に、鋭い一撃が蜘蛛の左脇腹と蟷螂の右二の腕を直撃した。
「ぐあぁぁぁ!」
「がふぅう!」
狩猟者の苦痛を交えた声が毀れた。
「はぁぁぁぁぁぁ!」
「いっけぇぇぇぇ!」
そして敵対する護衛者は、牙を力の限り振り切った。
相手の死角を利用し、奥義の歩法である神速と神速から繋げる超高速の斬檄による御神流・奥義之極。
――閃。
銀髪の蜘蛛と蟷螂は、そんな凶悪極まる一撃の直撃を、数メートル吹き飛ばされなら、空中で体勢を立て直して無事着地した。
「くっ」
打撃箇所を触れると、女性特有の柔らかい筋肉の下にある骨の感覚がない。
どうやら完全に複雑骨折したため、指先では粉砕された骨片を探し出せないらしい。それは合わせて二の腕の筋肉もズタズタに断裂した事を意味した。
「っろう! ぜってぇ殺す!」
元々大きな団栗眼が、全体の八割を充血させながら、美由希の姿を中心に据える。
使えないのは右腕だけであり、まだ足につけたナイフと左手の鎌は使える。
三本の鎌で細切れではなく、血液と脂肪が入り混じって橙色になるまでミンチしてやる! と、内心で殺害方法を決定するや、兄と背中合わせに油断なく構えている美由希へと飛び掛ろうと――!
ピリリリリリ。ピリリリリリリ。
場の空気を全て隅に追いやる機械音が、銀髪の蜘蛛から鳴り響いた。
蟷螂だけではなく、恭也と美由希、そして銀髪の蜘蛛までも固まって発信源を見つめた。
ただ、そのままにしておく訳にもいかず、視線だけで恭也に出る事を伝えると、四本も持っていかれた左脇腹を抑えつつ、ポケットから携帯電話を取り出した。
「はい。こちらお仕事中の蜘蛛ですけどー?」
『僕だ』
「オーナー?」
職業・殺し屋。
その大元は、一人の中学生が父親を殺すために作られた一つのアンダーグラウンドサイトから始まった。
サイトは、如何に安い値段で殺しを請け負う事が出来るかを競う逆オークションの形式を採用し、今日まで途切れる事無く日々新しい依頼が舞い込んできていた。
そんな依頼を精査し、オークションにかけていくのがサイトオーナーである宮内啓の仕事だ。
またその他に色々な各殺し屋との連絡、大型・特殊依頼のバックアップ等、裏方が多い彼が依頼遂行中の殺し屋に連絡を取るのは、何かトラブルが発生したか緊急を要する連絡事項が発生した場合である。
そしてこの連絡も多分にもれず緊急連絡であった。
『蜘蛛、この依頼、中止となった』
「……それはまたどうして?」
『情報までも含めてかなりダミーが走っていて、僕も引っかかってしまったが、今回の依頼者は、龍というテロ組織の偽依頼だ』
「オーナーが引っかかりましたか」
『すまない。現在、死条と赤松が依頼者と背後にある組織に報復に向かっている。我々は、依頼を受ければ殺人を実行する殺し屋だが、テロ組織等の組織の仕事を請けてしまえば、どんなにプライドがあろうとも、ただの手駒に落ちてしまう。そのため、特例による依頼中止だ。すぐに戻ってくれ』
「まぁ、自分は問題ないんですが、蟷螂が言う事聞いてくれるかな?」
『戻り次第代わりの依頼を斡旋する。とにかく依頼は中止だ』
「りょうかいしましたっと」
携帯の通話終了ボタンを押して、電話を切った。
「……と、言う事らしいんで、依頼は中止だ」
「んだと! 蜘蛛! ここまでやっておいて中止だと! ふざけてんのかぁ!」
普段は職業・殺し屋のルールブックとなっている彼女も、今は痛みと血の匂いに本能が勝っていた。
即ち、敵対者を血で染め上げ、満足いくまで快楽を享受せよと。
だが銀髪の蜘蛛は、冷静な眼差しで蟷螂を制した。
「今回の依頼は龍というテロ組織による報復活動? なのかな? とにかくそんなのらしいんだよ。だからオーナーが特例処置で依頼中止にしたそうだ」
「龍?」
「まだあの人達……」
怒りに唇を噛み切った蟷螂ではなく、恭也と美由希の口から苦虫を噛み潰したような言葉が聞こえた。
「そういうことだから、楽しい楽しい殺しはここまで。また機会があれば心行くまで殺し愛ましょう」
「殺し合いなぞしたくないが、また来るならば相手しよう」
「はぁ、羨ましいですね。そうやって胸を張れるんだから。それに比べてこっちは卑しいお仕事ですからね。……ま、楽しいんですが」
どこまで本気か底を見あぐねている恭也と美由希の頭上を飛んで、蟷螂は銀髪の蜘蛛の隣に降りたつや、未だに萎えていない一物を握り締めた。
「しかたねぇから、今回は従ってやる。ただ、戻ったら朝までSEX三昧決定だからな!」
「え〜?」
そんな何処にでもある日常会話のような軽さであっても、職業・殺し屋の二人は高町兄妹から視線を外さなかった。
「……次は、殺す。首ねっことオ○○○洗って待って」 そう残して、先に蟷螂が暗闇に消えた。
それを見定めてから、蜘蛛も踵を返し――そして一度だけ振り返った。
「次は心行くまで。ボディ・ガード――いや、職業・護り屋。さん」
そうして、銀髪の蜘蛛も闇へと消えていった。
数日後、新聞に龍の残党が殺害されたというニュースが流れた。
体内からの圧迫による圧死と、頭蓋が吹き飛ぶ程の凶悪な撲殺という殺害方法から、敵対組織の報復ではないか。と予測が飛び交ったが、恭也と美由希にだけは真相はわかっていた。
いつか、再びあの殺し屋と闘う事になる予感を抱えながら……。
と、言うわけで、職業・殺し屋ととらハのクロス〜
夕凪「随分と卑猥な表現多いわね」
うん。元々ほぼ毎回Hシーンがあるというトンでも作品なのだ。
夕凪「どスケベ」
う、煩い! でもアクションなのはすごく面白いんだぞ!
夕凪「どスケベ」
いや、だから……。
夕凪「どスケベ」
だから……。
夕凪「どスケベ」
……ゴメンナサイ。
夕凪「最初からそう言え」
うう……。
夕凪「まぁ、そういう訳で、15禁です」
言っておくけど、15禁といっているのに見て後で怒っても責任持たないわよ!
夕凪「ま、それもそうね。怒るのは美姫さんくらいか」
何で?
夕凪「どスケベだから」
ち〜が〜う〜〜!
あ、えっと、あの〜。
美姫 「ふふふ〜」
いや、そんな笑顔で凄まれても。
美姫 「はぁ、とんでもない人たちも居るわね」
確かにな。戦闘力は凄いみたいだけれど。
美姫 「確かにね。とりあえず、私からも一言。どスケベ」
いや、何故俺に言う?
美姫 「それよりもこれってアップしても良いのかしら」
多分、ギリギリセーフだろうと判断したんだが。
美姫 「まあ、良いけどね」
夜上さん、投稿ありがとうございました〜。