『Fate/Triangle night』




Capt:2 現状

「大丈夫ですか?」
「あ、ああ……」
 肩を担がれながら、恭也はセイバーの問いに力なく頷いた。
 先程の戦闘現場より歩き離れて十数分。
 今だ木々の上に月が昇っていく最中である。
 当初、セイバーの身元より先にリスティの安否を気遣い、探索に赴こうとしていたが、逆に傷だらけではあるが空から探索していた彼女に発見された。
 どうやらリスティもあの黒い巨人に襲撃された様子だったが、捜査員も含めて無事な様子であった。
 もちろん、その時に甲冑を纏ったセイバーに気付き、不審気に眉を顰めたが、恭也は命の恩人であるという理由で、何とかその場は不問にしてもらった。
 恐らく後日改めて事情聴取はあるのだろうが、少なくとも今は鈍った思考回路を休めていたかった。
 黒い巨人は何者か?
 途中で出てきた二刀流の人物は?
 美由希は何処へ連れ攫われたのか?
 だが、一番の疑問は――。
(彼女が何者か? というところだな)
 二刀流の人物……アサシンと名乗った男と同じで、光の柱より出現した。
 普通であれば敵として疑うところなのだが、何故か恭也にはセイバーが敵とは思えなかった。
 敵と思わなかったのは何故なのだろうか?
 疑問は浮かべど、漠然と彼女は敵ではないと本能が理性に訴えている。リスティに明日の聴取にしてもらった一番の理由はこの点が大きい。
 ようやく山道から、坂ではあるが舗装された坂道へと出た時、ちらりとすぐ隣に顔があるセイバーの横顔を見た。
 整った顔立ちは幼さを残すも引き締まった瞳が静謐な印象を与え、それでいて高貴な雰囲気を醸し出している。このまま何処かの国の王族であると言われても信用してしまうだろう。
 次に彼女の服装を見る。
 蒼のスカートタイプの衣装の上に銀色の見事な意匠の施された甲冑を身に纏っている。美術や芸術に疎い恭也から見ても、見事な出来栄えだ。
 つまり、こちらも王侯貴族と言われても納得できる代物だ。
 ただ、問題は何故光の柱から出てきたのか? また現代日本に全時代的な甲冑を纏っているのか? の二点になる。
 そんな事を考えていると、唐突に膝から力が抜け落ちた。
「マスター?」
「いや、大丈夫だ。それより、そのマスターとは?」
「貴方は私を召還した主(マスター)だ」
「召還と言われてもな……。確かに、知り合いに魔術や霊術関係の友人はいるが、俺自身にそんな力は無い」
「いえ、貴方はマスターです。しっかりとラインも繋がっている」
「ライン?」
 体勢の崩れた恭也を担ぎなおして、坂道から平坦な道へと変化した。
 ここまで来ると高町家までは後数分もかからずに到着するだろう。
「ラインとはマスターと私を繋ぐ魔術的線と言いましょうか……。そうですね。瞳を閉じていただけますか?」
 セイバーが説明を一旦口にするが、上手く纏まらなかったのか、目蓋を閉じるよう指示してきた。
 普段であれば従う事はないが、やはり本能から発生する無意識な信頼からか、恭也はゆっくりと瞳閉じた。
「そのままゆっくりと心を探るようにしてください。何処と無く繋がっているという感覚はありませんか?」
 心を探る。
 ようするに精神統一の類と判断し、心を静かに保って違和感を探す。
 すると、心の一箇所に何か光のようなものが外部へと伸びており、その先にセイバーがいるのを感じた。
「……セイバーがいた?」
「ええ。それがラインです。召還されたサーヴァントとマスターは、ラインによって互いの存在や状態を感じ取れます。そしてこれが繋がっている事こそが、召還主である証拠となります」
 つまり、どう否定しようとも、セイバーのマスターは恭也となるという事だ。
 他人には照明できないが、当事者同士で認知できる証拠に、大きく溜息が漏れる。
(と、なると、家族になんと説明するか?)
 隠して家に匿う。
 その選択肢は無い。
 第一、女性関係に関して隠し事をするなど、生命の危機に繋がるのは、女系家族の唯一である男性として身に染みて理解している。
「素直に助けられたと言うべき、か」
「は?」
「いや、なんでもない。ああ、そこの門がある家がそうだ」
 何だかんだと時間はすでに十二時を超えようとしている時刻。
 喫茶店という早朝営業の仕事をしている家主に合わせ、基本的に家族の就寝は早い。
 セイバーに教えるために指差した家の窓は何処も光が無く、眠りに最適な闇があるばかりだ。
 それを見て説明は明日になるかと考えていた恭也の隣で、突如セイバーの体が震えた。
 驚いて視線を戻すと、瞳は引き締められ、体から発せられる気は、間違えようも無い剣気だ。
「セイバー?」
 だが答えず、彼女は恭也から体を離すと、一度目蓋を閉じて心から謝罪を述べた。
「申し訳ありません。マスターのお住まいからサーヴァントの気配を感じます。斥候を務めますので、ここでしばしお待ちください」
「サーヴァント? 斥候って……ま、待て!」
 疾風というのは彼のような動きを言うのだと理解した。
 言葉の意味を脳が把握した時には、夜の帳の中を突き進む蒼き疾風は家人が戻るのを待っている門を潜り抜けて突貫した。
 マスターと呼ぶ割に、言葉を聴かずに消えていったサーヴァントの後を、痛む体に鞭打って慌てて追う。
 門が近づくにつれて、恐らくセイバーが気付いたサーヴァントなのだろう。ぶつかり合う金属音が耳に運ばれてくる。
 彼女の口ぶりからすると、サーヴァントとは互いに闘うべき存在なのだろう。
 だが、何の理由も無く闘うなど、恭也には許せない。
 それはただのテロリズムと大差ないのだから。
 だから止めようとした。
 少なくとも、自宅の門を潜り、セイバーを目にするまでは。

☆★    ☆★    ☆★    ☆★    ☆★    ☆★    ☆★    ☆★    ☆★

 突然ランサーと名乗った古代中国甲冑に身を包んだ武人と呼ぶに相応しい男性が実体化した事に、手元のスタンドの明かりを元に料理の本を読んでいた蓮飛の心臓は、手術前では耐え切れないくらい大きく音を鳴らした。
「ちょ、ラ、ランサー?」
 彼が現れた経緯と現象については大まかに説明を受けた。
 その中でサーヴァントと呼ばれる七人の使い魔が闘い、どんな願いも叶える事ができる聖杯を生み出す魔術的儀式が海鳴市で発生した事。そして蓮飛がサーヴァントを維持するためのマスターの一人に選ばれた事。
 しかし、蓮飛にはどうしても叶えたい望みは無く、聞くとランサーも心から願う事が無いという。だから率先して闘わず、襲ってきた敵を迎え撃ち、撃退、場合によっては完全消滅させるという方針となった。
 勿論、ランサーは闘いを主だった役目としているサーヴァントの中でも三騎士の一角に数えられているため、多少なりとも眉を顰めた。だが、互いに願いが無い以上、率先して闘う理由は無い。
 そのため、待ちの姿勢となった。
 ……のだが。
「ちょ、ランサー、どないしたんや?」
「サーヴァントが近づいて来ます。このまま通り過ぎれば良いのですが――」
 が、ランサーはそれ以上何も言わず窓の外を見つめるや、突然霊体化すると外へと飛び出していった。
「ランサー!」
 温厚で何故か忠誠を誓ってくれている彼が何も言わずに飛び出していく位に緊急を要する出来事。
「そんなの戦闘しかないやんか!」
 コートの女性に襲われ、ランサーに助けてもらってから帰宅するまでの間、ライン経由で説明を受けた。
 聖杯戦争。
 納得などできない。
 だが、自分は間違いなく巻き込まれていて、下手をすると己自身も死に巻き込まれてしまう恐ろしい儀式に。
 そして、そんな儀式から蓮飛を守ってくれると言ってくれたランサーが闘いに行ってしまった。たった数時間しか経っていないが、仲の良い親友が遠くに行ってしまった。それに似た感覚に気付いたら、蓮飛の足は動いていた。
 閉じていた扉を開け、足音を気にせず階段を飛び降り、一階に降りた途端響いてきた金属のぶつかり合う音に引かれ、庭へと向かって――。
「ぁ……」
 目に飛び込んできた闘いに、心が釘付けになった。
 双龍槍が高速の突きを間断なく繰り出す。
 それを目に見えぬナニカが、こちらも無駄な動き無く全てさばき切っていく。
 ランサーの相手は美しいと形容しても差し支えない金髪の美女であった。
 もちろん、その美女はセイバーである。
 蒼い衣に銀色に月明かりを反射する甲冑をつけ、大きな瞳に宿る決意に満ちた真っ直ぐな眼差しで、ランサーを射抜いている。
 だが、何もせずに受けているだけではない。
 上下左右容赦なく繰り出される槍の隙間を縫うように、セイバーは不可視のナニカを振っていく。
 しかしランサーも一筋縄ではいかない。
 槍の戻り際に石突を使ってナニカの命中先を器用にずらしていく。
 互いに一歩も交代せず、命中すると間違いなく必中となる一撃に身を晒していく。
 このままでは勝負がつかぬと感じたランサーは、それまで緩急を排除した高速突きを止め、突きから薙ぎ、微弱な叩きから半回転からなる斬檄を放つ。
 さりとてセイバーも三騎士の一角。
 最良と言われるサーヴァントだ。
 その全てにナニカを合わせ、若干甲冑が削られるも微塵も白い肌に傷がつかない。
「その手にしている獲物、長さから剣か?」
「ふふ。斧かもしれんし、槍かもしれん。いや、もしかしたら弓もあるかもしれないぞ?」
「戯れを! セイバー! 我がマスターが望んでいる平穏な生活のため、ここで禍根を絶たせて頂く!」
「こっちこそマスターと我が願いのために、ここで倒れてもらう!」
 裂帛の気合と共に、槍とナニカが鍔競り合う。
 額がぶつかりそうな距離の中で、それでも互いの眼に灯る輝きをしっかりと受け取ったのか、命の取り合いというのに自然と笑みが浮かぶ。
「しかして、このままでは決着は着かぬな」
 攻撃速度は圧倒的にランサーが上をいく。
 それでも決められないのは、セイバーの戦闘技術の他に、彼女が有している直感と幸運が多大に影響している。
「そのようだ」
 だが戦闘には直感が有効に反映される場合が多い。迷いがあれば打ち倒されるのは自分になる。だからこそ、直感に全てを賭けて一撃を繰り出すのだ。
 二人は同時に後ろに退くと、セイバーは正眼に、ランサーは上段に武器を構えた。
「貴殿のように美しく、それでいて激しくも心躍る武人と闘えるのは、私としても嬉しい限りだが……」
 言葉が切れると同時に、槍が震えた。
 それはまるで長い間眠っていた獣が、獲物に出会えて喜びに打ち震えているかの如く、細かく、それでいて歓喜に身を焦がしているようだ。
「私も同じだ。前回といい前々回といい、ランサーに選ばれる騎士はいつも心地良い」
 対してセイバーの言葉も切れると同時に風が変わった。それまで大気と共に停滞していた風は、セイバーに呼応するように外へ外へと流れていく。
 それまでの数分間、まるで舞踏を見ているように心が躍った闘いは唐突に終焉を向かえ、逆にそれまで心を捉えて放さなかった空気は、一気に冷え冷えとする殺気と闘気の塊へと変貌した。
 ――いけない!
 蓮飛の直感が二人に攻撃を繰り出させるのを止めようと警告を発する。
 しかし、必死にランサーを止めたとしても、セイバーは止まらない。
(それでも止めなアカン!)
 恐らく、二人が繰り出そうとしているのは、文字通り必殺の一撃だろう。
 そしてそれが決まれば、最悪相打ちだ。
 胸いっぱいに空気を吸い込む。
 例えどんな結果になろうとも止めなければならない。そんな思いを強く考え、左掌が光り輝いているのにも気付かずに声を発しようとした瞬間。
「止めろ! セイバー!」
 それは門のある玄関口から響き渡った。
 庭で闘っていた二人の視線が同時に門へと向かう。
「マスター! 終わるまで待つように言った筈……」
「あれがお主のマスターか」
 それは彼女の耳元をするりと過ぎていく獣のように、耳朶を打った。
 はっと気付いた時には、ランサーはセイバーの横を駆け抜け、恭也へと槍を突き出し――。
「止めぇや! ランサー!」
 蓮飛の左掌で輝いていた三つの令呪の内、一つが閃光の後に魔力を開放する。魔力は数百からなる残滓と魔力の糸と化しながら、ランサーの体内でマスターの命令を強制的に実行する鎖となって荒れ狂った。
 結果。
「ぐ、ぬぅ……」
 ランサーは槍の切っ先を恭也の額前僅か一ミリの場所で、まるでビデオの一時停止をしたように微塵も動かず停止していた。
「マ、マスター! ここでこやつを討てば、また平穏なる生活を続けられるのですぞ? 何故止めるのです!」
 一歩も動けぬまま、ランサーは背後に移動してきた気配から、蓮飛に直訴の叫びを放つ。だが、蓮飛は小さく首を振るだけだった。
「その人はウチのお師匠みたいな人や。例えそれがランサーのいう敵だとしても、あの人だけは討ちとうない。いや、そうやなくてや。その人は絶対に無用な刃を人には向けへんお人やから」
 穏やかな言葉。
 隣には呆気に取られているセイバーがいるにも関わらず、蓮飛はランサーの隣まで歩むと、そっと彼女を守るために尽力を尽くそうとしてくれた新しい友人の体に手を添えた。
 甲冑の上から、そんな蓮飛の体温など感じるはずは無い。しかし、この時のランサーにははっきりと暖かな温もりを感じて、小さな主へと視線を落とした。
「だからな? 大丈夫や」
 そこにあった微笑みが、ようやくランサーの槍を退かせた。
「御意。我が主」
「うん。ありがとぉ。まぁそんなこんなですが……お帰りなさい。お師匠。えらいボロボロですなぁ。それに美由希ちゃんは?」
「ああ、ただいま。……どうやら色々と話さなければならない事があるようだ」
 蓮飛に返した返答に、セイバーもとりあえずではあるが、戦意を抑えた。
 いや、何処か二人のやりとりに、羨望と望郷が相混じったような……深い色を瞳に称えているのに気付いた者は誰もいなかった。
 それも正確ではない。
 正確には……。
「そうね〜。とりあえず、そちらの鎧着てるカッコイイお二人にも色々とお話聞きたいわね〜」
「へ?」
「か、かーさん……」
 気付く間もなく、四人の様子を見ていた残りの家人の乱入により、あやふやになってしまったという事実が正しいのだが。

☆★    ☆★    ☆★    ☆★    ☆★    ☆★    ☆★    ☆★    ☆★

「……と、言う訳で、美由希はアサシンと名乗った相手に攫われた」
「……攫われたって……そんなに落ち着いて言わなくても」
 時刻はすでい深夜一時を回っていた。
 真夜中の決闘に、家族が誰も知らない中国風、西洋風甲冑を着込んだ男女と、それぞれを見知っている恭也と蓮飛が大声で騒いでいた時間から、すでに三十分が経過していた。
 とりあえず暴れる意思なしと家長である高町桃子女史に判断されたセイバーとランサーは、マスターの意向もあり、甲冑を魔力へと戻して脱ぎ去ると、蒼いドレスと紫色の拳法着姿となって居間に通される運びとなった。
 現在は眠たそうにしつつも、物珍しさからなのはが二人の相手をして色々と話をしている。
 そんな三人とは別に、恭也と蓮飛。桃子と晶の四人は食堂でこれまでの経緯を説明されていたのだが、蓮飛から経緯と聖杯戦争の説明が終わり、恭也の話が終わった時点で出てきた感想が呆れた桃子の一言だった。
「いや、最初は俺も慌てた。しかし、セイバーの話を聞いて、危害は加えないだろうと判断した」
「その根拠は?」
「つまり、ランサーもやけど、サーヴァントというのは、マスターと呼ばれる人から、何某かの力を供給されんと肉体を維持できへんのです」
「その話はまだ聞いていなかったが、少なくともアサシンと名乗ったという事は、セイバーと同様の存在と思った。つまり、マスターと呼ぶ存在には危害はないだろうと」
 蓮飛は情報として、恭也は直感として理解したらしい。そう判断した桃子は、とりあえずではあるが、安堵の息と零した。
「貴方達二人がそういうなら問題ないでしょ。それじゃ美由希の話は一旦保留にしましょう。あの子の家はここなんだから、そのアサシンという人を連れて戻ってくるかもしれないしね」
 戻ってきたとしても、セイバーとランサーのように真っ当な決闘になり、止めやすいとは限らないが、その場に居れば少なくとも相手の真意を読み取る事は可能だろう。そうなれば、今後の対策も立てやすくなる。
 同じ思考をしたのか、蓮飛と晶も桃子の話に頷くと、次の議題として居間にいる三人へと視線を向けた。
「問題はあっちだな。ししょーと亀っていうストッパーが居れば良いんだろうけど、居ない場合にオレ達だけじゃとまらねーぞ?」
 先の闘い。
 武に少しでも足を踏み入れた経験のある人間であれば絶対に目を逸らせない、いやそんな愚かな行為を行う経験者は格闘者ではない。そう言い切れる程に精錬された美しい闘いであった。
 しかし、裏を返せば並の武芸者では止める事など叶わない事実を示している。
 蓮飛と晶の喧嘩程度であればなのはが止められるが、そんな次元など超越していた。
「その事なんだが……」
 晶と桃子が頭を捻り出して、恭也はちらりと隣に座る蓮飛を見た。
 すると蓮飛もまた小さく頷く。
 どうやら彼と同じ提案を思いついていたらしい。高町家の三女としてすっかり色の染まった彼女に小さく微笑んでから、恭也は口を開いた。
「何?」
「レンと協定を結ぶ事で、抑えにならないかと考えている」
「協定?」
「ランサーとセイバーの戦闘不可。但し聖杯戦争末期に残った場合、格闘家として試合をしたいと望むならその場合により可。他のサーヴァントから襲撃を受けた場合、共闘。また同じく家族が襲われた場合は無条件。とりあえずこんなところを主軸にして、色々と付け足していく」
「なるほど〜。マスター同士が協定するならサーヴァントは従う、か」
「どうだろうか? 少なくともああしている姿は敵というより、仲の良い友人だ」
 なのはが用意したクッキーが余程気にいったのか、こくこくと何度も頷きながら食しているセイバーと、隣で苦笑しつつ宇治茶を飲んでいるランサー。そして楽しげに見つめているなのはの様子は……。
「友人より、ペットと飼い主?」
「かーさん、それはちょっと……」
「とりあえず、そういう事なら明日の朝飯は多めにしないとな」
「そうね。折角だし、桃子さんが二人の歓迎祝いで朝と夕飯も作っちゃう」
「へ? 桃子ちゃん、ええの?」
「良いも何も……二人の命の恩人じゃない。お礼は必要でしょ」
 さも当然といわんばかりにあっさりと言い放つや、晶と献立の相談をし始めた家長は、あっさりと受け入れられて目をぱちくりしている二人を放っておきながら、楽しげに談笑を始めた。
 その様子をしばし眺めた後で、恭也と蓮飛は互いに小さく苦笑した。
「さて、協定の話をしにいくか」
「そうですね〜。なのちゃんも喜びそうですしな」




――同時刻。

 聖杯戦争の説明は、全てのサーヴァントからマスターへと伝わった。
 その中には願いがある者。
 願いがなくとともサーヴァントの願いのために協力を決意した者。
 何となく流された者など様々であった。
 しかし、間違いなく一人は一番大切な者のために、血の道を歩む事を決めた者がいた。
 それが結果として大切な者の側にいられなくなる選択だとしても、一向に構わないと心に誓った彼女が。
「待っててね真君。今他のサーヴァントを殺してくるから」

 闇は急速に深みを増していった―― 



同じ家の者たちが三人もマスターに。
美姫 「かなり面白いわよね」
うーん、どうなるんだろう。
それに、それぞれの前に現れたサーヴァントの謎もあるし。
美姫 「更には小鳥よね」
闇に落ちるのか。
うーん、一体どんな展開が待っているのか。
美姫 「次回も楽しみにしてますね」
待ってます。



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