IF&番外編その1の3  『特別教官Xs〜最終日〜』


長い長い地獄の訓練の日々も途中の描写を端折ってはや7日目、
明日はなのはが帰ってくるので今日が最終日と相成った。

「さて、明日の朝にはなのはも帰ってくる、
 そこで今日は総合を見る意味も含めて模擬戦一回だけで終わりにする」

「え?」

「一回だけですか?」

いきなり数が減ってキョトンとする面々。

「ああ、その代わり内容は濃いぞ。
 今までの訓練だとディバインバスターも竜召喚も使ってきてないからな」

「いや〜、使ったほうが良いっていうのは解ってるんですけど」

「生身相手だとどうも……」

「はぁ……まぁ解らんでもないがな……」

少し困った顔で答える二人にため息をつく恭也。

「ルールは少し変えていく、使用スキルと魔法に制限をつけないのは変わらん、
 また今回は先に隠れた俺を探すのではなく正面からの試合となる」

「今回は向かい合っての戦闘になるんですか?」

「ああ、俺が先に隠れて奇襲するとモロいからな」

「うっ……」

反論したいがその通りなので黙り込むティアナ。

「そして今までとは違い、完全な実戦形式での模擬戦とする」

「完全なって、どういう意味ですか?」

「それは自分で考えろ」

スバルの質問に明確な答えを与えない恭也。

「まぁ変更点はそれくらいか……それじゃあ始めよう」

フィールドに入り4対1で向かい合う。

「ああ、それともう一つ」

「なんですか?」

対峙したところで恭也が思い出したように言う。

「お前たちの装備は殺傷設定にしたうえでロックしてある、模擬戦が終わったらシャーリーに頼んで再設定してもらえ」

「ええっ!?」

「きょ、恭也さん!殺傷設定なんて危険すぎます!」

「安心しろ、俺の装備は非殺傷設定のままだ」

「余計危ないですよ!訓練を中断して再設定しないと!」

恭也の恐ろしい発言で慌てて止めようとする4人、しかし恭也は気にした様子も無く体をほぐす。

「たんなるハンデだ、少しはマシな模擬戦になるようにな」

「だからって!」

「ガディン」

《Yes Riderbelt Wake up》

「えっ?」

恭也がベルトを身に着けたのを見て皆が止まる。

「流石に俺も殺傷設定の相手4人で生身のままやりあうほど無謀じゃない、だから……」

《Program Drive!!》

ガディンをベルトに差し込むと同時に恭也は眩い光に包まれる。

「これで相手をさせてもらおう」

光が収まるとそこには黒い戦士、スバル達が教本やデータでしか見た事が無い、
生きた伝説とも言うべきオリジナルアーマードデバイス、仮面ライダーXsがそこに居た。

「で、でも、いくらデバイスを装備したからって殺傷設定は……」

「陸戦SSSランクをなめるなよ?殺す気でかかってこんと10秒ももたんぞ」

マスクで見えないはずなのに確かに感じられる凄まじい眼光、それを受けた4人は固まってしまう。

「本気とは言わんが7分以上は出してやる、お前たちは俺を殺すつもりで攻めて来い。
 いくらこちらが非殺傷設定とはいえ俺の攻撃手段は殆どが打撃と斬撃だ、
 気を抜いてると大怪我するぞ」

「…………」

まだ皆が戸惑っている中、スバルだけが構えをとった。

「スバル?」

「どうせあたしたちが本気で殺しにかかっても絶対殺せないんだ、
 だったら遠慮なく全力全開でぶつかった方が訓練になる!」

「スバルの言うとおりだ、普段は相手の安全や周囲への被害を考え抑えている力、それを解放しろ。
 お前たちの最高を……この俺にぶつけて来い!」

「「「は、はい!!」」」

「先手必勝!ディバイン・バスタァァァ!!」

返事をすると同時にスバルが先制攻撃をかける。
不意打ち気味に放たれた一撃は恭也を捉え爆発する。

「ちょっ!スバル!?」

「まだ開始の合図は……」

「さっき恭也さんは完全な実戦形式って言った、だったらこれで正解のはず!」

「え?」

皆がキョトンとなった瞬間、エリオの背後に黒い影が現れた。

「その通りだ」

「なっ!?」

至近距離からの強烈なパンチを受け吹き飛ばされるエリオ、しかしすばやく受身を取り立ち上がる。

「ほぅ、自ら飛んでダメージを軽減したか、良い反応だ」

「エリオくん、大丈夫!?」

「はい!」

エリオに声をかけるも、キャロは視線を恭也からは外さず既に間合いを広げていた。
他の二人も同様にすばやく間合いを広げ恭也の動きに対応できるようにしている。

「間合いの取り方もよく出来ているな」

「散々体に叩き込まれましたから」

「ふっ、言うようになったな」

ティアナの言葉に嬉しそうに呟く恭也、そしてそのままスバルの方へと向き直る。

「スバル、良い判断だ。
 実戦において開始の合図なんて物は無い、さっきのはアレで正解だ」

「はい」

さっきから余裕をもって話している恭也だがその佇まいには隙は無く、迂闊に攻め込めない状況を作り上げていた。
この膠着状態を打ち破るべく最初に動いたのは以外にもキャロであった。

「いきますっ!フリード、ブラストフレア!」

「くきゅ〜!」

高熱の火炎弾が恭也に迫る、それを素早くかわすが、

《Cross Fire》

「続けて!クロスファイア、シュート!!」

間を置かずにティアナが追撃する。

「ちぃっ!」

Xsブレードを展開し迎撃しようとするが、飛来した無数の魔力弾はすべて着弾前に自爆した。

「なに!?」

凄まじいまでの粉塵が舞い上がり恭也の視界を奪う。

(攻撃ではなく眼眩ましが目的か、なら次は……)

「えぇぇいっ!」

「はぁぁぁぁっ!!」

粉塵の中から突如現れたエリオとスバルが左右から同時攻撃を仕掛ける。

「やはりそうきたか!!」

恭也はその攻撃を左右のXsブレードで受け止めるが、二人はそのまま押し切ろうとはせず素早く連続攻撃に移る。

「なかなかの連携だ、攻撃後の判断も良い」

息もつかせぬ連続攻撃をしかける二人だが、恭也はそれをものともせず攻撃を裁いていく。
そのうちに粉塵が晴れてくると、

「エリオ!」

「はいっ!」

スバルの合図で二人は恭也から間合いを離す。

(む?なぜこのタイミングで離れる必要がある?)

恭也が疑問に思ったのもつかの間、上空に強大な魔力を感じとった。

「この感じ……竜召喚かっ!?」

「いくよフリード!」

「グギュアァァ!!」

見上げた先には巨大な白き竜と化したフリードとそれに跨るキャロの姿。

(眼眩ましだけではなく魔力的なジャミング魔法も仕掛けてあったのか!)

「ブラストレイ!!」

ブラストフレアとは比べ物にならないほどの獄炎が恭也に襲いかかる。

「決まった!?」

「ちぃっ!ガディン!」

《Magnum Cannon》

恭也の手元に突然巨大な大砲が現れる。

「え!?」

「カートリッジロード!」

重厚な音とともに排出された薬莢は直径12cmという異常なまでに巨大な物、
それと同時に凄まじい魔力が収束していく。
火炎が恭也に当たるまであと僅かとなった瞬間、

「マグナムキャノン、シュート!!」

放たれた巨大な光線が炎を押し返していく。
フリードの火炎以上の攻撃力を持った光線はそのまま押し切りフリードとキャロを飲み込み吹き飛ばす。
あまりの威力に竜召喚は解けキャロも気を失ってしまいリタイアとなった。

「ふぅ、流石に危なかったな、予想以上だ」

「い、今のはいったい……?」

「遠距離戦が苦手な俺の切り札さ、あまりの大出力故に砲身がもたんので一発しか撃てんがな。
 それともう一つ……」

「えっ!?」

さっきまで眼前に居たはずの恭也の姿が掻き消える。
次の瞬間ティアナの背後から声が聞こえた。

「仲間がやられたからといってボーッとするな、隙だらけだぞ」

「しまった!いつの間に!?」

「遅いっ!」

「くあっ!」

御神流奥義『雷徹』、衝撃を通す事を追求した必殺の一撃がティアナに直撃する。
背中から全身に突き抜ける衝撃を受け吹き飛ばされつつも、

「くっ、このぉ!」

強引に体を捻り数発発射する。

「むっ!?」

正確に恭也へと弾は向かったが篭手で軽く弾かれた。

「きゃうっ!」

無理矢理体を捻ったせいで不安定なまま壁に突っ込んだティアナは気絶こそしなかったものの、ダメージは大きく体が動かなくなりリタイア。

「あの体制から反撃してくるとはな、だが着地がイマイチだったな」

軽く笑ってスバルとエリオに向き直る恭也。
二人は先ほどの驚異的なスピードを警戒する。

「残り二人……そろそろ幕引きといこうか!」

《RiderKick Fullcharge》

恭也の右足に光が収束していく。

「ガイドサークルは無しだ、止めてみろ!」

「か、回避しないと……」

「違う!攻めないと!」

「えっ!?」

エリオとは対照的に攻めの姿勢を見せるスバル。

「マトモに戦っても勝てないんだ、なら一か八かでカウンターを取る!!
 恭也さんも『攻撃している間が一番隙がある』って言ってたし」

「なるほど……」

「それに、一人じゃ無理でも二人なら!」

「はいっ!」

二人して構えを取りカートリッジをロードする。

「ほう、攻めるか……それも良し!いくぞッ!!」

高くジャンプし攻撃態勢をとる恭也。

「一撃必倒!」

《Divine Buster!》

「一閃必中!」

《Speer Angriff!》

二人も必殺の一撃を放つ体制になる。

「ライダァァァァァ……」

「デバイィィィン……」

「スピアァァァァ……」

一瞬の静寂の後、

「キィィィィィィック!!」
「バスタァァァァァァ!!」
「アングリフッ!!」

恭也の蹴り、エリオの槍、そしてスバルの拳がぶつかり合い戦場は眩い光に包まれた……



「これで一週間の訓練課程は修了だ。みんなご苦労だった」

「「「「はい!」」」」

並んでいる六課フォワードの面々一人一人に話しかける恭也。
まずはキャロ、

「キャロ、体力的に不利な身でありながらよく頑張った。
 お前のブースト魔法と竜召喚は大きな力になる。攻撃と補助、そのどちらでも活躍できる立ち回りを心がけろ」

「はい!」

次にエリオ、

「エリオ、お前も体躯としては不利ながらもよく耐え抜いた。
 お前はそのスピードが最大の武器だ、神速に近い速度でソニックムーブを制御できるやつはそうは居ない。
 加速距離が重要な技も多いが、離れすぎず接近しすぎず、スピードでかく乱しつつ己にベストな距離を保つのを忘れるな」

「はい!」

続いてティアナ、

「ティアナ、この過酷な訓練の中をよく潜り抜けたな。
 お前は決して火力があるわけでは無いがその多彩なスキルと手数の多さは下手に火力があるだけよりずっと力になるだろう。
 そして訓練中に見せた指揮能力もなかなかのものだ、自分を見失う事無く精進してくれ」

「はい!」

そしてスバルに、

「スバル、おそらくお前がこの訓練で最も成長しただろう。
 柔軟な発想力と戦闘における勝負勘は天性のものだ、
 パワーとスピードのバランスも良く切り込み役としては申し分無い資質を持っている。
 そして諦めない強い心も持っている、その精神を忘れる事無く真っ直ぐ突き進んでくれ」

「はい!」

真剣な表情で、そしてどこか優しさを湛えた瞳で話していく。
そして恭也がもう一度全員に視線を送る中、一台のヘリが降下してくる。

「それではこれで一週間に及ぶ特別訓練期間を終了とする。
 できればこの後ゆっくり話でもしたいところなんだが生憎と忙しい身でな。
 明日からはまたなのはが訓練を担当する、みんな本当によく頑張ってくれた。
 以上、解散!」

「「「「ありがとうございました!!」」」」

そろって頭を下げる4人に軽く頷くと恭也はヘリへ向かう。

「隊長、お迎えに上がりました」

「ああ、ご苦労」

恭也が乗り込むとヘリは飛び去っていく。
スバルたちはヘリが見えなくなるまで眺めていた。


ヘリの中。

「シグナム?なんでこの機に?」

「武装連隊本部に届ける書類があってな、ついでだから同乗させてもらった」

「なるほど」

「それでどうだった?ウチの連中は」

シグナムが少し笑いながら聞いてくる。

「そうだな、正直予想以上だった。潜在能力だけならAAA+は固いな」

「実際は?」

「努力しだいだな、だがまぁ、期待はできる」

「ほぅ、随分と買っているな」

「最後の一撃、ガイドサークルのエネルギーを攻撃に回していなかったら危なかった。
 加減していたとは言え危うく致命傷を負うところだった」

「油断大敵だな」

「全くだ」

言い合ってひとしきり笑う二人。

「なんかいい雰囲気だなぁ……」

「こらっ!ちゃんと前みて操縦せんかい!(ポコッ)」

「いてっ!」

ヘリのパイロットの女性二人がそれを見てワイワイ騒いでいる。

「いってぇなぁ、半オートパイロットなんだしちょっとくらいいいじゃんか」

「あほ、客も乗っとるんやから真面目にやり」

「ちぇ〜」

合間合間に言い争うがそれでもヘリはちゃんと飛んでいった。


「はぁ……結局一回も勝てなかったなぁ……」

「当たり前でしょ、相手はSSSランクの猛者よ?あれだけもっただけでも良しとしなきゃ」

「そうですね、貴重な経験ができました」

「そういえば……」

キャロが何かを思いついたように呟く。

「ん?」

「さっきのヘリのパイロットさん、スバルさんに似てませんでした?」

「え?そうだった?」

「あんまりちゃんと見てなかったなぁ」

「ボクもハッキリとは……」

キョトンと首をかしげる4人であった。






あとぅがくぃ

おわった〜……
バトルシーン苦手なせいかものすごく難儀しました。
他の部分すぐに完成したのですがバトル部分に5日も……しかもこんな荒い内容……
バトルがかける人って尊敬しますわ。
とりあえずStS訓練編は終了です。なんか最後に伏線?のような物がありますがネタが出来れば次のStS編で回収する予定です。
しかし難産だったなぁ……



訓練もついに終わりを。
美姫 「この訓練でスバルたちも成長したみたいね」
鬼教官2もお役目御免か。
美姫 「でも、またなのはによる訓練が始まるんでしょうね」
あははは。うーん、次はどの話になるのかな。
美姫 「次回も待ってますね」
ではでは。



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