IF&番外編その1の2 『特別教官Xs〜二日目夜、三日目〜』
二日目訓練終了後。
「うあぁ……体中いたいぃぃ……」
「昨日より基礎トレは減ったけどその分実戦訓練が……」
「回避訓練に攻撃訓練、それに模擬戦闘……何時間やりましたっけ?」
「きゅぅ〜……」
二日目も案の定生ける屍となった新米フォワードの4人、夕食の前にぐったりしている。
「今日も相当シゴかれたようだな」
「気持ちは解るけどあんましダラダラすんなよ〜」
「シグナム副隊長にヴィータ副隊長!」
たれぱ○だのようにたれてた4人は慌てて佇まいを正す。
「みんなヘロヘロだなぁ」
「無理も無いさ、あの恭也の鍛錬を受けたんだ。
私でも出来れば遠慮したい」
「シグナムしゃんれも遠慮しらいレベルにゃんれすかぁ?」
半分魂が抜けかかってるキャロが問いかける。
「キャロ、目が虚ろだが大丈夫なのか……?」
「らいじょうぶれしゅ……」
「全然大丈夫じゃねぇよ、ほら、横になっときな」
もう色々とヤバいキャロをソファーに寝かせるヴィータ。
「ごめんにゃしゃい……」
「気にすんな、休めるときに休むのも仕事だかんな」
「ふぁい……」
「それで、やっぱり副隊長たちでもあの訓練は辛いんですか?」
キャロが落ち着いたのを確認してからエリオが話を切りなおす。
「ああ、昔あいつの山篭りに付き合った事があったんだが……」
「へぇ〜、どうだったんですか?」
「恭也の妹も参加してたんだが、私の方が先にネをあげそうになったよ。
数時間に亘る基礎鍛錬の後に5、6時間打ち合ったりするからな」
「5、6時間!?模擬戦をですか!?」
「ああ、しかも非殺傷設定なんて便利なものは無い。
木刀を用いた当たれば傷つくし骨も折れる、そんな超実戦形式での戦闘だ」
「うわぁ……」
感心するを通り越してげんなりするスバル。
「だが、彼の訓練はやって損は絶対に無い」
「え?」
「そだな、無茶苦茶ハードなのに不思議と体は壊れないし、
終わったらしっかりマッサージして体を休めれば翌日にも響きにくいしな」
「それに、辛いだろうがやっただけ確実に強くなれる。
恭也を信じて頑張れば必ず結果はついてくる」
「あいつは体壊すような無茶や意味の無い事は絶対にしねぇ。
まぁ、キツいだろうけどさ、頑張れよな」
「は、はい!」
そういい残して去っていく二人。
4人はさっきの言葉を受け恭也への認識を『ものごっつい訓練をする怖い人』から『副隊長たちに信頼されてる凄いひと』に改めた。
そんな事があった翌日、お約束の基礎トレが終わったところで恭也は長めの休憩をとった。
「え?」
「休憩は30分だ、じっくり休め」
「ずいぶん……長いですね……?」
「不満か?」
「い、いえ!ただそんな長い休憩があるとこの次が大変そうだなぁって……」
「ほぅ、スバルは感がいいな」
「え゙?」
にやりと笑った恭也を見て4人が固まる。
「ここ二日でお前たちの戦闘力はおおよそ把握したのでな。
基礎的な鍛錬はなのは相手に散々やってるだろうしな、俺は実戦訓練を主にやっていく事にする」
「というと?」
「休憩が終わったら俺と模擬戦だ」
「ええっ!?」
「加減はしてやるが容赦はせん、頑張れよ」
「え……?」
呆けてる4人を尻目に木陰で休む恭也。
その間に4人で話し合う。
「特殊部隊の隊長と模擬戦なんて……」
「かなりハードでしょうねぇ」
「でもさ、考えようによってはいいことだよ!」
「どうして?」
「だってさ、恭也さんほどの人と直接戦える機会なんてそうは無いんだよ?」
「あのね、いつも教導隊のなのは隊長と模擬戦してるでしょうが」
なんだかはしゃいでるスバルにあきれたように突っ込むティアナ。
「でもさ、クロスレンジはなのはさん以上って話だし、
あたしやエリオはもちろんティアナやキャロも懐に入られないようにする訓練になるじゃん」
「まぁねぇ……」
そんなことを話してるうちに休憩が終わる。
「さて、そろそろ始めようか」
「まずは誰からですか?」
「4人まとめて来い」
「え!?」
てっきり一人づつの指導だと思っていた4人は驚く。
「お前たちは個々の戦力よりチームワークが重要になる、だから一緒に戦う感覚を養うんだ」
「で、でも……」
「ガディン、Xsライザーブレードモードで単体起動だ」
《Yes XsRiser Wake up》
恭也は変身せずに武器だけを取り出す。
「え?あ、あの、デバイスは?」
「無しでやる、無論お前たちは好きに使って構わん」
「そんな!?いくら恭也さんでもデバイス無しで4対1なんて!」
スバルが声を荒げるが恭也は意に介さない様子でポツリと言う。
「陸戦特務武装連隊の必修項目に『デバイスを用いない状態での戦闘力Bランク以上』というのがある」
「えっ?」
「強靭な肉体に精神、そして技術がなければアーマードデバイスは扱えん。
つまり、生身でお前たちと一対一で渡り合えなければウチの部隊じゃやっていけん訳だ」
「でも……」
「言っておくが俺の生身の戦闘ランクはAAだ、心配してくれるのは有難いが甘く見てるとすぐに終わるぞ」
「AA!?」
「戦闘範囲はトレーニングフィールド内、使用する魔法やスキルは制限しない。
俺が先に市街地に設定したフィールドに入る、それから3分後にスタートだ。
質問はあるか?」
驚くティアナをスルーして説明をしたあと4人を見る。
「制限しないって……?」
「ディバインバスターでも竜召喚でも好きに使うといい、解りやすく言えば全力で来いって事だ」
「だ、大丈夫なのかな?」
「相手は生身とはいえAAランクよ、正直ディバインバスターありでも厳しいかもね」
不安そうにいうスバルにティアナが緊張した面持ちで返す。
「そういうことだ、それでは開始する。俺が入ってから3分後にスタートだ」
そう言ってさっさと市街地フィールドに消えていく恭也。
残された4人は開始までの間作戦を考えるが、3分は意外と短くすぐに開始を知らせるシグナルが響く。
「っ!始まった!」
「散開すると各個撃破されるわ、スバルとエリオを前衛に固まって行動するわよ!」
「「「了解!」」」
ティアナの指示で集合陣形をとってフィールドに飛び込んでいく4人、恭也はそれをビルの中からモニターしていた。
「ふむ、纏まって行動か、セオリーどおりだが、スバルとエリオを先頭にキャロが中央、殿がティアナか……
キャロは探査魔法を展開しているな、無防備なキャロをガードしつつ接近したらすぐに反応して3人が迎撃か、良いフォーメーションだ」
モニターを見つつ嬉しそうに微笑む。
「だが、探査魔法に頼りすぎるのは減点だな」
そう言って恭也は静かに立ち上がった。
「反応は?」
「まだありません」
キャロの言葉を受け一旦止まる4人。
「おかしいなぁ、もうそろそろ反応があってもいいはずなんだけど……」
「でも、魔力反応はまるで感じられません」
「もしかして魔力の放出を無くして感知できないようにしてるとか?」
「スバルさん、そんな事が可能なんですか!?」
スバルの言葉にエリオが驚いて反応する。
「ステルス機能のあるデバイスはあるけど生身でそんな事は……」
「それがさ、なのはさんから聞いたんだけど気配を抑えると魔力反応も弱まるんだって。
完全に気配を消せるような達人になると魔力を消すのも可能なんだってさ」
「それを先に言いなさいよ!」
「あうっ!ご、ごめんティアナ」
「キャロ、探知魔法を熱源探知に!人間の体温を探って!」
「は、はいっ!」
ティアナの指示で慌てて魔術式を書き換えるキャロ。
「反応……ティアナさんの真上!!」
「しまっ……!?」
「遅い!」
「きゃあぁぁ!」
ティアナは着地と同時の蹴りを受けて吹っ飛ばされた。
「くっ!ストラーダ!」
《Speerangriff!》
強力な魔力の噴射で加速したエリオが恭也に突っ込むが、
「甘い!」
「なっ!?」
その一撃を右の一刀のみで受け止めた。
「お前のその技は十分な加速があって初めて生きる技だ、咄嗟に出しては意味を成さん」
「エリオ!」
スバルが慌てて駆け寄る。
《Something coils around the foot(足へ何かが巻きついています)》
「え?」
「ふん!」
「わわっ!?……きゃうっ!」
マッハキャリバーが警告すると同時に恭也が左手を引くとスバルの足が引っ張られ思いっきり転んでしまった。
「スバルはクロスレンジ主体ではあるが射撃魔法もあるんだ、無理に接近するのは危険だぞ、
それと……足元に注意だ」
「〜〜〜っ!こ、後頭部がっ……!」
スバルの左足にいつの間にか鋼糸が巻きついており、それに引っ張られたスバルは後頭部を痛打したのだ。
「フリード!ブラストフレア!」
「クキュゥ〜!」
「ふっ……」
「え!?うわっ!」
火炎弾の発射と同時に恭也はストラーダの先を逸らしエリオのバランスを崩させると、
すばやく蹴りを打ち込み弾き飛ばしその反動で飛び火炎弾を回避する。
「クロスミラージュ!」
《Cross Fire!》
「むっ!」
「シューート!」
蹴りが浅めだったのかすばやく復帰したティアナがいくつもの魔力弾で攻撃してくる。
「キャロ!今のうちに恭也さんの動きを止めて!」
「はい!ケリュケイオン!」
《Yes!》
ティアナが恭也を引き付けている間にキャロは召喚魔法の体制を取る。
「我が求めるは、戒める物、捕らえる物。言の葉に答えよ、鋼鉄の縛鎖……連結召喚!」
キャロの呼び声に答え魔方陣から無数の鎖が恭也に襲い掛かる。
しかし恭也は射撃と鎖の波状攻撃をものともせずどんどん間合いを詰めていく。
それどころか、まるで恭也が鎖を操っているかのように鎖を魔力弾の射線上に誘導し、
鎖の破壊と魔力弾の回避を同時にこなしていった。
「嘘でしょ!?」
驚くティアナをよそに恭也はあっという間にキャロへと接近していく。
「くっ!」
ティアナは援護すべく慌てて構えるが、
「痛っ!?」
いつの間にか放たれていた飛針がクロスミラージュに当たり落としてしまう。
「ティアナさん!」
「余所見をしている場合か!」
「っ!?」
既に一刀足の間合いに入った恭也に対し咄嗟にキャロはシールドを張るが、いきなり正面に居た恭也の姿が消えると背後から衝撃を受け倒れる。
「きゅぅ……」
スバルはそうとう強く後頭部を打ったらしくまだ悶えている。
エリオは不安定な体制で食らった蹴りがそうとう効いたらしくまだ動けない。
キャロはのびている。
もう少し時間が稼げればスバルは復活するだろうがそんな時間を与えてくれるような相手じゃないのはティアナも理解している。
急いでクロスミラージュを拾い恭也が居た場所に照準を合わせるが既に姿は無い。
「えっ!?ど、どこに?……っ!?」
あたりを見回すと背後から首筋にすっと刃があてがわれた。
「チェックメイト、だな」
「……まいりました……」
ティアナはうなだれ降参の意を示す。
それを確認してから恭也は刃を収めた。
「奇襲に弱いようだが、まぁいきなりでこれだけもてば良しか」
「これだけって……1分ちょっとしかもたなかったんですよ?」
「安心しろ、以前特別研修で相手をした連中は同じ形式で20秒しかもたんかった」
「に、にじゅうびょう……」
絶句するティアナ。
「みんな大丈夫か?」
「はい……なんとか」
「私もだいじょうぶです」
エリオとキャロがすぐに返事をするがスバルはまだ後頭部を抑えて蹲っている。
「大丈夫か、スバル?」
恭也が駆け寄って覗き込む。
「うぅ……まだ痛いですぅ……」
スバルは涙目で見上げる。
「受身を取らなかったのか?」
「あわててうっかり……全体重が後頭部に……」
「ふむ……どれ」
「え!?」
恭也はスバルを抱き寄せるとぶつけたところを診ていく。
ちょうど胸に顔を埋める形になり真赤になるスバル。
「むぅ……結構腫れてるなぁ」
優しく髪を掻き分け患部を調べる恭也。その感触がまるで撫でられているようでますます真赤になるスバル。
「キャロ!治療を頼めるか?」
「あ、はい!」
キャロを呼びスバルから離れる恭也、そこでやっとスバルの顔は真赤になっているのに気づく。
「む?どうした、顔が赤いぞ」
「え!?あの、さっきの体制が、その……」
「ん?ああ、スマン、汗臭かったか?」
「いえ!そうじゃなくってその……なんでもないです……」
恭也は?マークを浮かべたままキャロと交代する。
そんな様子を見ていたティアナとエリオは、
「ねぇエリオ、あれ本気だと思う?」
「さ、さぁ、どうなんでしょう?」
「冗談なら最悪だし本気なら性質悪いわね」
「あ、あはははは……」
そんな失礼だが本当の事を言っていた。
恭也は幾つになっても恭也であった。
「さて、それじゃぁ……第2回戦といこうか」
「「「「ええっ!」」」」
「なんだ?まさか一分やそこらの模擬戦一回で終わると思ってたのか?」
「いえ、そうじゃないですけど……」
「まぁこれくらいなら休憩もいらんだろ、とりあえず今日は15分持つようになるまで頑張ってもらうぞ」
「「「「ええ〜〜〜〜っ!?」」」」
結局模擬戦は数時間に及び、日が暮れるまで続けられたとさ。
「シグナム副隊長……身につく前にボク死ぬかもしれません……」
「うきゅぅ〜……」
あとがき
今回はStrikerS編その2をお送りしました。
StrikerSはあんましちゃんと見てないんで変なとこあっても見逃してNE?(蹴
今回も随分書きあがるのに時間がかかりましたがやっぱりOGsです。
やりだすといろいろコンプせんと気がすまない性格のせいで元のペースに戻るのはいつになるやら……
何気なくバイト数見たら過去最長っぽい、まぁそれでも短いんですが。
うーん、相変わらず恭也の戦闘力は高いみたいだな。
美姫 「殆ど生身であれだもんね」
この場合、スバルたちがよく喰らいついたとみるべきなのか……。
美姫 「それにしても、シグナムさえも根を上げる鍛錬って」
それを考えると、美由希はやっぱり凄いんだな。
美姫 「そうよね〜」
さ〜て、次回はどんなお話なのかな〜。
美姫 「次回も待ってますね」