第2話 長い1日
*
俺達は一箇所に集められていた。どうやら人質にされたようだ。
外には警察がビルを取り囲んで、何か呼びかけている。
そんな中、俺は冷静にテロリストの分析をしていた。
数は……出入り口に2人。エレベーター側に2人。窓際と壁際に10づつ、中央に3人……あいつがボスか?ずいぶんな団体さんだな。だがやれない数じゃない。
さてこれからどうするか。
そんなことを考えていると、隣にいた子供の泣き声で思考が中断された。
「あー、ほら。泣かないで」
アイリーンさんがあやすが泣き止まない。
「おい、静かにしろ」
見張りの一人が泣き止まない子供に腹を立てて、銃を向けてきた。
「ちょっと、あんた!子供に銃向けるなんてどういうつもりよ」
「なんだ、おまえも死にたいのか」
男はドスの利いた声でそう言ってアイリーンさんを睨むが、彼女はそれに怯むことなく逆に相手を睨み返した。
「止めてください!」
男が引き金を引こうとした時、誰かがそう叫んで飛び出していた。
「どうしてあなた達はそうなんです。自分達の主張が通らなければ、すぐ武力に訴えて。そんなだから闇にまけちゃうんです」
それはリーアだった。
アイリーンさんの前に立って精一杯腕を広げて庇おうとしている。
俺はその行動に驚いてしばし呆然となってしまった。
「こ、このガキ!」
「やらせない。アイリーンは友達だから。初めてできたわたしの……大切な友達だから!」
その時、リーアの眼が赤く輝きだした。
髪がふわりと舞い上がり周囲で静電気が発生している。
あれは“裁きの真眼”。完全に人間になったと思っていたけど、あれは残っていたのか。
裁きの真眼とは聖鎧にはまっていたクリスタルのことで、人間に置き換えると眼に当たるものだ。
「アイリーンはわたしが守る!」
いっそう電気が強まり、収束し、そして放たれた。
「がっ……!?」
強烈な電撃を受けて銃を向けていた男はあっという間に吹き飛ばされた。
「な、なんだ、何が起きた!?」
たちまちテロリスト達が慌て出す。
「皆、伏せろっ!」
俺の上げた声に何人かが反応し、遅れた者たちを庇いながら身を伏せる。
俺は動揺している出口側の二人に向かって、力を押さえた衝撃波を放った。
「なっ、なんだあれは」
「おい、武器なんてどこに隠してたんだ」
「慌てるな!」
いかつい顔のボスらしき男が怒鳴っている。
「ねえ祐介、今のって」
「話は後です。俺が奴らを引き付けますからその間に逃げてください」
「そんな、危ないよ」
「このままじゃ皆殺されてしまいます。そうなる前に早く!」
真剣な表情でそう言う俺に、フィアッセさんは無言で小さく頷いた。
「美優希、護衛は任せるぞ」
「わたしもまだやれるよ」
そう言ってリーアは真眼を軽く解放してみせる。
「リーア」
「お姉ちゃんだけじゃ厳しいでしょ。それに、わたしだって元聖鎧だもん。誰も死なせないよ。絶対に」
「そうか。そうだな」
俺は笑って頷いた。
「美優希、これを持っていけ」
「これは?」
「いいから持っていけ。お守り代わりだ。きっと役に立つ」
「うん、解かった。祐介も気をつけてね」
そうこうしているうちに混乱から立ち直ったテロリストたちがこちらに銃を向けてきた。
「奴らを逃がすな!」
――再び轟く銃声。
「させるか!」
そう言って俺は衝撃波を放ちながら駆け出した。
「それじゃあ、わたし達もいきましょう。皆さーん、落ち着いてわたし達の後についてきてくださーい」
仁村さんの声でぞろぞろと皆が動き出す。
「おい、おまえ達は人質を追え。残りはあのガキだ。他の階にいる奴らにも連絡しろ」
ボスらしき男の指示で武装した男のうちの何人かが美優希達を追いかけようとする。
だが、そいつらは駆け出した途端に何もない空間に頭をぶつけて悶絶した。
どうやら美優希かリーアが機転を利かせて逃げ際に不可視の結界を残していったらしい。
俺はそれに便乗する形で幾つかの鱗状結界を障害物として展開させた。
当然こっちも不可視だ。
「ボス、何かが邪魔してて前に進めません!」
「はあ!?何わけのわからんことを言っている。早く追いかけろ」
「残念だが、それは無理だな」
苛立たしげに怒鳴る男に向かって、俺はさも残念そうに言ってやった。
「何だと!?」
「ちょっとした細工をしたんでな。あんた達じゃ、通れないよ」
「見え透いた嘘をつくな。そんな暇が何処にあったって言うんだ?」
「まあいいさ。説明してやる理由も義理もないしな」
そう言って剣を構え直す俺を見て、男たちはあからさまな嘲笑を浮かべた。
「周りをよく見てみろ。逃げ場などどこにもない。死にたくなければおとなしく従え」
「そんなこと言って、従ったところで自分たちの立場が危うくなったら結局は殺すんだろ」
「なら、今死ぬか?」
そう言って男は軽く銃を持ち上げてみせる。
「こんなところで殺されてやる義理はないな。かと言って、逃げ出す気も最初からないが」
「小僧、自分の立場をわきまえるんだな。貴様はどこぞのファンタジーに出てきそうな胡散臭い刀一本、こっちには最新鋭の武器がある。どう足掻いたところで無駄な抵抗よ」
「本当にそう思ってるんなら、どうして撃ってこないんだ。人質の一人や二人減ったって気にはならないんだろ?」
「ぬぬぬっ、ならば望み通りに殺してやる。もの共かかれ!」
それを合図に俺に向けられていた銃が一斉に火を噴いた。
その動きは力を解放した俺の目にはひどく緩慢で、遅い。
刹那、弾丸よりも後に動いた俺の刃は一瞬で弾を全てなぎ払っていた。
あまりに非現実的なその光景を前に、男達は何が起きたのか理解できずに固まっている。
その隙を逃さず、俺は連中の無防備な鳩尾へと掌打を叩き込んで意識を刈り取る。
そうして二人を倒したとき、ようやく復活した数人が再び俺に向かって発砲してきた。
俺は飛んできた弾を竜王剣で叩き落しつつ、軽いステップで相手へと肉薄する。
そういえば久しぶりにあれを使ってみるか。
永全不動八門の原型であり、今では零一のみが使うことの出来る幻の流派。
そして、それを元に編み出した俺の技。その名は……。
――竜王破斬剣・衝――。
俺はまず数を減らすために衝撃波を放った。
それであっけなく5、6人吹き飛んで動かなくなる。
「ちっ、小賢しい真似を……まずは貴様から始末してやる」
「できるものならやってみろ」
「この、なめるなよ!」
案の定、男たちは激昂して飛び掛ってきた。
俺は飛来する弾丸を剣の平で受け止め疾走する。
間合いを一気に詰めて切っ先を相手の鳩尾に突きつけた瞬間。
「はあっ!」
気合と共に収束した衝撃波を放つ。
ドンッ?
「ぐかっ!」
「安心しろ。切れてない」
崩れ落ちる男を蹴り飛ばし、横から飛んできた弾丸を顕現させた鱗で弾く。
そのまま間合いを詰めると足に力を込めて発砲してきた男の鳩尾を蹴り上げる。
「ぐほっ!」
男は垂直に舞い上がりワンバウンドして動かなくなった。
*
私達は普通の人を守りながら1階を目指していた。
「サイクロン・サンダー!」
「ウインド・スラッシュ!」
物陰から飛び出してくる敵をリーアが雷で焦がし、仁村さんが風の刃で薙ぎ払う。
仁村さんの背中には光輝く4枚の羽。HGSというらしい。
二人の活躍で私たちは何とかデパートを下へと降りていくことが出来ていた。
けれど、敵も相当数がいるようで倒しても倒しても追っ手が途絶えない。
「次から次えとぞろぞろ出てきて!」
業を煮やした私はついに“それ”を開けてしまった。
「うそっ!」
サブマシンガンを乱射していた男が思わず銃を取り落とした。
展開した木目によって弾がはじかれたのだ。
あまりといえばあまりの出来事に仁村さんたちも唖然としている。
しかし、そんな周囲の様子などお構いなしに、私は攻撃を続行した。
「いっけええええええ―――?」
気合と共に木箱に納められていた物がテロリストたちに向かって襲い掛かる。
「ひっ……!くっくるなー」
男は断末魔の悲鳴を上げて“それ”に吹き飛ばされた。
「いっ、いま木目からなんか白いのが……」
「あかん。あかんでアイリーン。気にしたら負けるんや!」
前方を指差して震えるアイリーンさんをゆうひさんがなだめている。
そう、気にしては負けなんですよアイリーンさん。こんなのまだ序の口なんですから。
そのとき恐慌状態に陥った男たちが一斉に飛び掛ってきた。
「なら……」
私は前方を睨み呪文を唱え始めた。
――我は始まりの翼なり。
大地に眠る古の巨人よ。我が意に従いその眠りを覚ませ。
契約の下、我が前に立ちふさがりし全ての愚かなる者をなぎ払え。
瞬間、木目が輝きを放ったかと思うとそれは何かのカタチを成して男たちをなぎ払った。
「うわあああああ、くるなー化け物」
「ひー、助けてー」
「ぎゃあああああああ!」
断末魔の悲鳴を残して男たちは全員気絶していた。
「さっ、終わりましたよ。これでもう追ってはこないはずです。今のうちに急ぎましょう」
私の言葉にフィアッセさんと仁村さんが引きつった表情で頷き、アイリーンさんは青い顔をしつつも皆を促してくれた。
ただ一人、ゆうひさんだけはその隣で気にしたらあかん……と呪文のように繰り返していたけれど。
*
「ぐあぁ!」
俺は最後の男を蹴り飛ばすと一息ついた。
「破斬剣を使うまでもなかったか。ん?あのいかつい男がいないな」
辺りを見回してすぐに気がついた。
窓ガラスが割れている。まさか、ここから飛び降りたのか!?
そこから下を見れば幾つか下の階の窓を破って男が中に入っていくところだった。
急いだほうがよさそうだな。美優希、無事でいてくれよ」
俺は踵を返すと階段を駆け下りた。
*
「ボス、無理です。あいつ等化け物です。こっちはもうもちませ……うわー」
突然、無線が切れた。
「ちっ、どいつもこいつも使えない奴らだ。こうなったら、スレイン、ヒイロ。お前達であの小僧達を始末しろ」
スレインとヒイロと呼ばれた男はしかし動かなかった。
「おい、どうした!なぜ動かん。む……なにをしている?ヒイロ」
ヒイロと呼ばれた男は無線を取り出して誰かと話している。
「……任務了解」
「貴様、誰と話している!」
「どうやら終わったみたいだな。つまりあんたに付き合ってやる義理はもうないってことだ」
スレインと呼ばれた男が淡々と語る。
「なっ!?貴様ら裏切るきか」
「裏切る?はっ、俺たちは元々お前をとっつかまえる為にわざわざ香港からきたんだ。世界規模での指名手配ものだからな」
「そういうことだ」
「殺すなよ」
「奴次第だ」
「おのれ、好き勝手いいおって」
いかつい男が銃を構えようとした瞬間、ヒイロが発砲した。
「言ったはずだ。おまえ次第だと」
「ぐっ」
両手足を派手に打ち抜かれ男はもがいている。
「こちらワルツ1、ターゲットを捕獲した。負傷しているので至急、救助ヘリを要請する。………了解、直ちに帰還する」
そう言ってヒイロは無線を切った。
「どうだった?」
「救助ヘリを手配するのでそれで帰還せよとのことだ」
「まっ、後はいつも通りってところか。そういえば“例の件”については?」
「変化なしだ」
「しばらくは副業ってところか」
「だが捜査は怠るな」
「わかってるって。そういや、おまえは帰ったらまたゼロを磨くのか?」
「ああ、オイル交換をしなくてはならないのでな」
「その前に指令の所に出頭か、面倒だ」
「ジャムの餌食になりたいのなら、行かなくてもいいんだぞ」
「それだけは遠慮したい」
そんなことを話しながら二人は去っていった。
*
敵は思ったほど多くはなく、ほどなくして皆と合流できた。
「皆、無事か?」
「う、うん。大丈夫」
俺の問いに美優希がなぜか少々バツが悪そうに答える。
ゆうひさんたちが蒼白になっているのが少し気になったが今は脱出するほうが先決だ。
とりあえず、普通に出て行っても大丈夫だろう。
皆を促して俺たちは表にでる。
警官たちが狐につままれたような顔をしていたが、民間人の無事に安堵して事情聴取を始めた。
その傍らを抜けて突入部隊が中に入って行ったが、戦闘になることはもうないだろう。
俺たちも軽い事情聴取を受けただけであっさりと開放された。
俺はそのことに少々疑問を抱いたが面倒なことにならなかったので助かった。
とりあえず、フィアッセさんやゆうひさんのことに気付かれると面倒なのでそうそうに退散することにする。
スクールに着くとようやく安心したのか、皆の間にどっと疲れたような空気が漂う。
「う〜、死ぬかと思うた」
「本当だよ」
しばらく休憩を入れて皆が落ち着いたのを見て俺は口を開いた。
「すみません。驚かせてしまったみたいで」
「ううん、いいんだよ。たしかにびっくりしたけど。祐介たちはわたしたちを守ってくれたんだから」
「そうだよー。それにびっくりさせちゃったのはお互い様だよ。わたしの力、驚いたでしょ?」
「そっ、そや。うちも祐介くんらが怖いんとちゃうよ?祐介くんは薫ちゃんみたいやし、美優希ちゃんのは……ちょう、ごつかったけど。うん、平気や」
「アタシも常識外れなのはフィアッセや知佳たちで慣れてるから。それにリーア、カッコよかったよ。」
「ありがとう、アイリーン♪」
皆はとくに深く追求することもなく笑って受け入れてくれた。
すごく暖かい人達だ。
「ありがとうございます」
俺は深々と頭を下げた。
「それじゃあ、お買い物はまたの日にということで、今日は皆でお話しよ♪」
[さんせ〜」
「ほな、どこにしよか。フィアッセのお部屋あたりがええかな」
「それじゃ、お茶の用意もしようよ」
「あっ、いいねー」
「それで夜はコンサートの打ち上げと祐介くん達の歓迎パーティーや♪」
皆、何事もなかったかのように楽しくわらってる。
……こういう暖かい場所があいつにも必要だったのかもしれないな。
*
その夜、宴は盛大に行われた。
皆思いっきりはしゃいでいる。
中でもゆうひさんが一際めだっているように見えるのは俺の気のせいじゃないだろう。
「知佳ちゃん、一緒に歌お♪」
「あはは、わたし、ここにいていいのかな?」
「かまへんかまへん。それより歌お」
「リーア、このジュース美味しいね」
「はい〜」
リーアの頬のあたりが上気してなんだかふわふわしている。
「ねえフィアッセ。あんたリーアになに飲ませたの?」
「もものジュースだよ〜♪」
何気にブランデーと一緒に置いてある。
「これ混ぜたでしょ」
「なんのことかなー」
アイリーンさんがブランデーを指差すと、フィアッセさんは微妙に眼を逸らした。
「眼をそれすな!もう、未成年にお酒飲ませてどうすんのよ」
はあー、とアイリーンさんがため息をつく。
「まあまあ、いいじゃないですか。リーアはああ見えても俺たちと同じなんですから」
「何わけのわからないこと言ってるのよ。てっ、あんたも未成年でしょうが!」
ワイングラスを片手に仲裁に入る俺に、アイリーンさんが鋭いツッコミを入れてくれる。
「というわけで、没収」
そう言ってアイリーンさんは俺から飲みかけのグラスを取り上げると、それをぐいっと飲み干した。
「あっ、それ」
「わー、アイリーンが祐介と間接キスしてる〜」
「なっ!」
それに気付いてアイリーンさんが赤くなってる。いちおう意識してるんだ。
そんなことを考えていられたのもつかの間。
「ゆ〜う〜す〜け〜」
「ぐおっ!?」
いきなり美優希に横から木箱でどつかれ、崩れる俺。
「あれ?どうしたの祐介」
伸びている俺を美優希が笑顔で突っつく。
「あははー。祐介、浮気はダメだよー」
笑いながらフィアッセさんまで俺をぺちぺちと叩いている。
「いいわね、若い子は元気があって」
「でふが、こーふょー、みへいねんの飲酒はいひょうれふ」
「あら、イリアだって充分酔っ払ってるじゃない。舌がまわってないわよ」
「ほれは、こーふょーが」
「私のお酒が飲めないの?」
「ふぃえ、ひょんなことは」
ティオレさんはお酒が飲めないイリアさんに無理やり飲ませて遊んでいる。
*
俺と美優希は気分転換に散歩をしていた。
リーアはアイリーンさんと一緒にはしゃいだり歌ったりしている。
ゆうひさんが何かのビンを持ったフィアッセさんに追いかけられている。
「ここの人達はすごいな、活力の塊みたいだ」
「ふふふ、そうね。たぶん皆楽しいことが好きでしょうがないんだと思う」
「だろうな。皆表情がいきいきしてる」
どうやらゆうひさんが捕まったらしく何か食べさせられようとしている。だけど必死に抵抗しているようだ。
「あっ、そうだ。これ返しとくね」
そう言って美優希は俺に刀の入った包みを返してきた。
「いや、それは美優希が持っててくれ」
「そう?でもこれ何だったの」
「俺の鱗だ。けっこう痛いんだぞ」
「ふふ、じゃあ、一生大事にしよ。ありがとう祐介」
俺達は後ろの喧騒をよそにそっと唇を重ねた。
*
宴の後、皆が寝静まった夜更けに俺は先輩に電話をしていた。
柱の所在とフィアッセさんとその周りの人達についての報告だった。
「なるほどね。どうやらあたしの狙いは外れてなかったようね」
「先輩?」
「あたしもとある人物に依頼して、その周辺と繋がりのありそうな人物を調べてたのよ。“に村知佳”と“セルフィ・アルバレット”っていうんだけど」
「知佳さんとシェリーさんですね」
「あんた。仁村知佳のこと知ってるの?それにシェリーって」
「こっちで知り合いました。シェリーはセルフィさんの愛称です。彼女のほうは直接会ってはいないんですけど、知佳さんの知り合いだそうです。そういえば、俺たちが帰るのと同じくらいにフィアッセさんや知佳さん達は海鳴に行くそうです」
「なら都合がいいわ。あんた達はそのまま彼女たちに同行して。今ちょうど海鳴に静香がいるから話を通しとくわ。そうすれば理由づけできるでしょ?」
「解かりました。ありがとうございます、といっても一緒に行きたいといえば快く承諾してくれそうな人達ですけど。それにもう知らない仲じゃないし」
「ずいぶんと仲良くなったみたいね」
「はい。結構古い付き合いの人もいるので」
「そう。………報告ありがとう。他の子たちにはあたしから伝えとくからゆっくり楽しんできなさい」
「はい、それじゃあ失礼します」
そう言って俺は電話を切った。
「ふう、このまま何も起こらなければいいが」
*
「それでは、報告してください」
「まずは今回のターゲットである、指名手配中の“外宇宙知的生命体・ボルシェイド”に接触、捕獲に成功。次に警戒レベルAAAコードさざなみは、ハイレベルの精神感応者2名発見、登録リスト“仁村知佳”“フィアッセ・クリステラ”と認知、接触には至っていない。また“セルフィ・アルバレット”は現在捜査中、次元振動計に若干の変化は見られるがすぐにもとに戻った。報告は以上だ」
「ありがとうございます。“仁村知佳”と“フィアッセ・クリステラ”にはSPをつけます。あなた達は“セルフィ・アルバレット”およびその他のHTL適合者の捜査をお願いします」
HTL適合者とは離れた所からの特定の事物に干渉できる人間のことだ。この適合者はHGS患者におおく見られる。
「任務了解」
こうしてヒイロとスレインは司令室を後にした。
「ふう、まだなんとも言えませんね。そういえば麗奈さんが所在をつかんだと言っていましたね。しかも“フィアッセ・クリステラ”に依存していると。彼女の周りで不穏な動きがあるという情報もあることですし、今の任務が終わったら2人に彼女の身辺警護をお願いしましょう。それにしてもいっこうに姿を見せませんね。この人も」
秋子は書類を眺めながら呟いた。
その書類には顔写真とその下に“特殊武装組織・龍総帥シュウ・シラカワ”と書かれていた。
あとがき
こんにちは堀江紀衣です。今回はリーアさんがかっこよくてテロリストが舞い上がり、椎名さんが謎ジャムの餌食になるお話です。
ゆうひ「あれはすごかったで、思い出しただけでも寒気がする味やったわ」
アイリーン「うんうん。あれは人の食べるものじゃないわ」
紀衣「それはそうとお二人は今回人質でしたが」
ゆうひ「そうなんよ。もう、めっちゃ怖かったで」
アイリーン「でもリーアが庇ってくれて心強かったな」
紀衣「そうですか」
ゆうひ「それより、紀衣さんにほんまもんのニャン子の耳があるってほんと?」
紀衣「また、あの人ですね。そうです、ありますよ(ひょこ)」
耳が飛び出す。
ゆうひ「おお、ほんまや」
アイリーン「でもってメイドね」
紀衣「だからそれは違います。もう元には戻れないんですよ……うう〜」
紀衣、しゃがみこんでのの字を書いていじける。
由衣「紀衣さん、しっかりしてください。私がついてるじゃないですか。それに私は紀衣さんがどんな姿でも一生愛し続けます。だから泣かないでください」
紀衣「う〜、ありがとう由衣。わたしには由衣がついていてくれる。めげずに頑張ろう」
アイリーン「百合だね」
ゆうひ「百合やね。真雪さんあたりが喜びそうや、今度連れてこよう」
リーアが大活躍。
美姫 「雷に風が舞う!」
そして、永全不動の原型ともいえる流派が!
美姫 「色んな出来事がちらほらと見える中、何と言っても、アレの存在」
アレ、な。
美姫 「そう、アレよ」
いやー、流石は了承主婦。
美姫 「所で、アレがここにあるんだけど」
そうか。じゃあ、ありがたく頂こうかな。
美姫はどうする?
美姫 「私は遠慮しておく」
そうか? 美味しいのにな。
美姫 「ああ〜、昔は食べれなかったはずなのに、今では平然と口にし、あまつさえ、それを美味しいだなんて」
何を一人でブツブツ言ってるんだ。
美姫 「べ、別に何でもないわよ。それよりも、この量をどうするのよ!」
うん? いやー、たくさんあって嬉しい限りじゃないか。
美姫 「アンタが、美味しい、美味しいって食べる所為でしょうが!
お陰で、あの人が喜んで大量に作って困っているって娘の万年眠り苺娘と、その従姉妹の奇跡の仕掛け人から苦情が来てるわよ」
まあまあ。美味しいんだから、仕方がないだろう。
それよりも、本当にいらないのか。
美姫 「ええ、いらないわ。と、とりあえず、落ち着いて…。ス〜ハ〜。
よし! それでは、また次回も楽しみにしてますね」
パクパク。うん、美味い! また、味に深みが増したな〜。
流石だ。
美姫 「……そ、それでは、また次回!」
楽しみにしてます〜。あ、お代わりしよ〜。
美姫 「…………」